(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】患者転倒検出のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20240119BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
A61G12/00 E
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2022155638
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2019520147の分割
【原出願日】2017-10-12
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500000212
【氏名又は名称】マシモ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン、ウク
(72)【発明者】
【氏名】アル-アリ、アマー
(72)【発明者】
【氏名】カシーフ、ファイサル
(72)【発明者】
【氏名】ウスマン、ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】キアニ、マッシ ジョー イー.
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-065640(JP,A)
【文献】特開2013-034511(JP,A)
【文献】特表2013-544616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0254956(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が該患者の身体の一部分上で褥瘡性潰瘍を発症するリスクを減少させるために該患者の背部の体位をモニタリングするためのシステムであって、
該患者の加速度を測定するように構成された加速度計と、プロセッサと、第1のワイヤレス・トランシーバとを含むセンサであって、該患者の身体の他の部分上のたるんだ組織の動きに関連した体位の変更の誤った示度の量を減らすために、肩甲骨の間のほぼ中央の位置にある、該患者の背部の一部分の上に固定されるように構成され、該患者の背部の該部分の上に置かれたときに該加速度計によって測定された該加速度に応じた信号を出力するように構成され、該出力される信号は該患者の背部の体位の可能な変更を示す、センサと、
信号プロセッサと、メモリ・デバイスと、記憶デバイスと、第2のワイヤレス・トランシーバとを備える患者モニタであって、該第2のワイヤレス・トランシーバが、該患者の背部の該部分の上に該センサが配置されたとき、該センサから該信号を受信するように構成され、該信号プロセッサが、該可能な変更が、該患者の背部の該体位の実際の変更に対応するかどうかを判断するように、該患者の背部の該体位の該可能な変更を示す該信号を処理するように構成され、該実際の変更が発生したとき、該信号プロセッサはさらに、患者ターンイベントを記録し、該患者ターンイベントを患者ターン・プロトコルと比較するように構成され、該可能な変更が該実際の変更でなく、該患者ターン・プロトコルにより患者ターンイベントが発生しないとき、該患者モニタは、介護者に患者ターン・プロトコル違反を通知するように構成される、患者モニタと、を備え、
該信号プロセッサが、該信号に少なくとも基づいて以前の時間と現在の時間における該患者の背部の該体位の差を決定し、該差が閾値を上回るとき、該患者ターンイベントを記録することにより、該可能な変更が該実際の変更に対応するかどうかを判断するように構成される、システム。
【請求項2】
前記患者モニタの前記信号プロセッサが、前記プロセッサが前記患者ターンイベントを記録するとき、患者体位継続時間タイマをリセットするようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第3のワイヤレス・トランシーバであって、前記センサからの前記信号を受信し、前記信号を前記患者モニタに送信するように構成された第3のワイヤレス・トランシーバをさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサまたは前記患者モニタのための電源とは異なる前記第3のワイヤレス・トランシーバのための電源をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサがジャイロスコープをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサが音響センサをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサが温度センサをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサがECGセンサをさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサが、音響センサ、温度センサ、およびECGセンサのうちの1つまたは複数をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記患者モニタが、以下のパラメータ、すなわち、角速度、磁場、呼吸数、温度、インピーダンス値、水分値、オキシメトリ値、および心電図、のうちの1つまたは複数の測定値を決定するようにさらに構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記患者の背部の前記部分がほぼ平坦である、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサが、
本体と、前記本体の下部の全周から外側に向かって延びるリムとを有するハウジングと、
前記ハウジングに接続され、前記ハウジングを前記患者の皮膚に固定するように構成された1または複数の基板と、を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ハウジングの前記本体の上部の周縁全体が丸みを帯びている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1または複数の基板は、
前記ハウジングの前記本体の周りに配置された開口部を有する上面基板と、
接着性の底部表面を有する底面基板と、を備え、
前記上面基板と前記底面基板とのそれぞれがフォーム材料を含み、前記上面基板と前記底面基板とが互いに固定され、前記ハウジングの前記リムが前記上面基板と前記底面基板との間に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記上面基板および前記底面基板の外周は、前記センサの実質的に楕円形形状の外周を規定する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
対象者が該対象者の身体の一部分上で褥瘡性潰瘍を発症するリスクを減少させるために該対象者の背部の体位をモニタリングするためのセンサであって、
該センサは、該対象者の加速度に応じた1または複数の信号を生成するように構成された加速度計と、プロセッサと、第1のワイヤレス・トランシーバとを含み、
該センサは、該対象者の身体の他の部分上のたるんだ組織の動きに関連した体位の変更の誤った示度の量を減らすために、該対象者の肩甲骨の間のほぼ中央の位置にある、該対象者の背部の一部分の皮膚に固定されるように構成され、
該センサは、該対象者の背部の該一部分に固定されるとき、該加速度計により生成される該1または複数の信号を出力するように構成され、
該出力される1または複数の信号は、該対象者の背部の体位を示す、センサ。
【請求項17】
前記センサは、
本体と、前記本体の下部の全周から外側に向かって延びるリムとを有するハウジングであって、前記本体の上部の周縁全体が丸みを帯び、それにより、センサが被験者の背中と被験者が横たわっているベッドとの間で押されたときの被験者への不快感を最小限に抑える、ハウジングと、
ハウジングのリムに固定された1つまたは複数の基板であって、1つまたは複数の基板がセンサの実質的に楕円形形状の外周を画定し、それによって、センサが肩甲骨の間の被験者の背中に固定されたときの被験者への不快感を最小限に抑える、1つまたは複数の基板と、
前記センサが被験者の肩甲骨の間でほぼ等距離である前記位置で被験者の背中の皮膚に固定されている場合、被験者の前記方向を決定するために、前記生成された1つまたは複数の信号を患者モニタに送信するように構成されるワイヤレス・トランシーバと、
回路基板であって、前記加速度計および前記ワイヤレス・トランシーバが前記回路基板に取り付けられており、前記回路基板、前記加速度計および前記ワイヤレス・トランシーバが前記ハウジングおよび前記1つまたは複数の基板によって囲まれている、回路基板と、を備える、
請求項16に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年10月13日に出願された米国仮特許出願第62/407,935号に対する優先権を主張するものである。本出願の出願データ・シートにおいて外国または国内の優先権の主張が識別されるありとあらゆる出願は、それがある場合、連邦規則集第37巻第1条第57項に基づき参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、患者モニタリングの分野に関する。より詳細には、本開示は、とりわけ、患者の位置、体位(orientation)、および移動を測定し、測定された情報を患者モニタリング・システムにワイヤレスで通信するウェアラブル・センサについて説明する。
【背景技術】
【0003】
病院、ナーシング・ホーム、回復期保養所、高度看護施設、術後回復センターなどの臨床設定では、患者は、長期間にわたって病床についていることが多い。時には、患者は、ベッド内での位置を変更または制御するために限られた能力を有する程度まで意識不明であるまたは鎮静させられている。これらの患者は、患者の健康および幸福に重大なリスクをもたらす褥瘡性潰瘍を形成するリスクがあり得る。褥瘡性潰瘍は、「床ずれ(bed sore)」、「床ずれ(pressure sore)」、および「床ずれ(decubitus ulcer)」とも呼ばれることがあり、患者の皮膚の損傷、多くの場合は基礎となる組織の損傷を含み、これは、患者の身体上の箇所に加えられた長期にわたる圧力から生じる。頻繁に、褥瘡性潰瘍は、それに加えられた、ベッドまたは椅子の表面との長期にわたる接触から生じる圧力を分散させるために、表面の下により少ない筋肉および/または脂肪組織を有する身体の骨エリアを覆う皮膚上で発症する。そのような身体部位の例としては、頭部の後部または側部、肩、肩甲骨、肘、脊柱、臀部、下背部、尾骨、かかと、足首、および膝の後ろの皮膚がある。
【0004】
褥瘡性潰瘍は、部位の近くの皮膚および他の組織への血流を妨げる解剖学的箇所における圧力の印加によって引き起こされる。印加された圧力が、酸素および他の栄養分を皮膚および他の組織に送達する毛細血管を流れる血圧よりも大きいとき、(ベッドなどの)構造表面と患者の身体上の特定のポイントとの間の持続した圧力によって、血流が制限可能である。酸素および栄養分が奪われると、皮膚細胞は、損傷を受け、わずか2~6時間で組織壊死につながる場合がある。一般に高齢の集団および可動性が損なわれた集団において発生するにもかかわらず、病院内獲得性褥瘡性潰瘍は、防止できると考えられ、「ネバー(never)イベント」と称されている。保険業者は、病院に褥瘡性潰瘍治療を償還する量に対して制限を課し、州および連邦の法律は現在、病院に、施設内での褥瘡性潰瘍の発生を報告することを要求する。
【0005】
褥瘡性潰瘍のリスク・ファクタは、修正可能および修正不可能と分類可能である。修正可能なリスク・ファクタとしては、医療提供者がとることができる行動があり、修正不可能なリスク・ファクタとしては、患者の健康および挙動の局面がある。褥瘡性潰瘍を発症するリスクがある患者を介護者が識別して気を配ることができように、そのような修正不可能なリスク・ファクタを文書化することは、有益である。介護者が、患者が褥瘡性潰瘍を発症するリスクを予測するために、文書化されたリスク評価ポリシーを策定することが推奨される。そのようなアセスメントは、患者の健康および環境のすべての局面を包含することができ、ブレーデン・スケールおよびノートン・スケールなどの、その分野において一般に使用される尺度を用いてよい。リスク・アセスメント・ツールは、患者がベッドで休息しているときだけでなく、手術を受けたときにも、防止戦略を指図するために使用されてよい。
【0006】
褥瘡性潰瘍の形成に寄与することができる追加の要因としては、摩擦力および剪断力がある。摩擦は、皮膚が表面上を引きずられるときに発生し得、これは、患者が移動されたとき、特に皮膚が湿っているときに起こり得る。そのような摩擦力は、皮膚を損傷し、皮膚を、褥瘡性潰瘍の形成を含めて、より負傷しやすくし得る。剪断は、2つの力が反対方向に動くときにある。たとえば、ベッドのヘッド部分が、ある傾斜で上げられるとき、患者の脊柱、尾骨、および臀部領域は、重力により下方に摺動する傾向がある。患者の身体の骨部分が下方に移動するので、エリアを覆う皮膚は、その現在の位置に留まり、それによって、骨格構造の反対方向に引っ張ることができる。そのような剪断運動は、その箇所における皮膚および血管を負傷させ、皮膚および他の局所的組織が褥瘡性潰瘍の形成をしやすくすることがある。
【0007】
褥瘡性潰瘍を形成するリスクがある患者のための確立された慣例は、患者の身体のさまざまなポイント上に置かれた圧力を再分散させるために患者が周期的に位置変更(reposition)される、すなわち「ターン(turn)」される、ターニング(turning)・プロトコルに従うことである。褥瘡性潰瘍のリスクがある人は、定期的に位置変更される。患者は、2時間ごとに特定の傾斜角度で位置変更されるべきであること、およびそうする方法によって、患者の皮膚上での摩擦および剪断の量が最小になることが、一般に提案される。位置変更ログは、維持され、時間、身体体位、および転帰などの、鍵となる情報を含むことができる。
【0008】
褥瘡性潰瘍防止プログラムは、効果的であり、治療と関連づけられた長期コストを減少させることができる。2002年の試験は、2つの長期ケア施設において包括的な防止プログラムを用い、入所者ごとに1か月あたり519.73ドルかかった。このプログラムの結果から、2つの施設において褥瘡性潰瘍有病率が87%および76%減少したことが明らかにされた。後の試験から、防止戦略によって、褥瘡性潰瘍有病率が、医療集中治療室において29.6%から0%に、病院のすべてのユニットにわたって9.2%から6.6%に減少することがわかった。これらの介入は、手動による患者の位置変更およびロギング、組織の可視化および触診、減圧マットレス、ならびにリスク・アセスメント・ツールの使用などの戦略を用いる。
【0009】
しかしながら、ターニング・プロトコルは、観察も記録もされない、確立されたターン間隔の間に患者によってなされる位置変更を考慮に入れない。したがって、いくつかの環境では、ターン・プロトコルに従う行為は、意図しない臨床的な悪影響を有することがある可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、とりわけ、1つまたは複数の褥瘡性潰瘍を形成するリスクがある患者の位置および体位をモニタリングするためのシステム、デバイス、および方法の実施形態について説明する。
【0011】
一態様は、患者が該患者の身体の一部分上で褥瘡性潰瘍を発症するリスクを減少させるために該患者の背部の体位をモニタリングするためのシステムを含むことができる。このシステムは、センサと、患者モニタとを含むことができる。センサは、加速度計と、プロセッサと、第1のワイヤレス・トランシーバとを含むことができる。センサは、前記センサが患者の背部の一部分の上に配置されるとき前記患者の背部の体位の可能な変更を示す信号を出力することができる。患者モニタは、信号プロセッサと、メモリ・デバイスと、記憶デバイスと、第2のワイヤレス・トランシーバとを含むことができる。第2のワイヤレス・トランシーバは、患者の背部の部分の上に配置された前記センサから前記信号を受信することができる。信号プロセッサは、前記可能な変更が患者の背部の前記体位の実際の変更に対応するかどうかを判断するために、前記信号を処理することができる。前記実際の変更が発生したとき、プロセッサは、患者ターンイベントを記録し、前記患者ターンイベントを患者ターン・プロトコルと比較することができ、前記可能な変更が前記実際の変更でなく、患者ターン・プロトコルにより患者ターンイベントが発生しないとき、患者モニタは、介護者に患者ターン・プロトコル違反を通知することができる。信号プロセッサが、前記可能な変更が前記実際の変更に対応するかどうかを判断することができることは、前記信号に少なくとも基づいて以前の時間と現在の時間におけるにおける前記患者の背部の前記体位の差を決定することが可能であることと、前記差が閾値を上回るとき、前記患者ターンイベントを記録することとを含む。
【0012】
センサは、患者の背部で患者の肩甲骨の間に固定可能である。患者の背部の部分は、患者の背部の上部部分とすることができる。患者の背部の部分は、患者の背部のほぼ中央にあることができる。前記患者モニタの前記信号プロセッサは、前記プロセッサが前記患者ターンイベントを記録するとき、患者体位継続時間タイマをリセットすることができる。
【0013】
システムは、第3のワイヤレス・トランシーバであって、前記センサからの前記信号を受信し、前記信号を前記患者モニタに送信するように構成された第3のワイヤレス・トランシーバを備えることができる。システムは、前記センサまたは前記患者モニタのための電源とは異なる前記第3のワイヤレス・トランシーバのための電源を備えることができる。センサは、ジャイロスコープを含むことができる。センサは、音響センサを含むことができる。センサは、温度センサを含むことができる。センサは、ECGセンサを含むことができる。センサは、音響センサ、温度センサ、およびECGセンサのうちの1つまたは複数を含むことができる。患者モニタは、以下のパラメータ、すなわち、加速度、角速度、磁場、呼吸数、温度、インピーダンス値、水分値、オキシメトリ値、および心電図、のうちの1つまたは複数の測定値を決定することができる。前記患者の背部の部分は、ほぼ平坦であることができる。
【0014】
本開示の別の態様は、1つまたは複数の褥瘡性潰瘍を形成するのリスクがある患者を管理する助けとなるように構成された患者ターンおよび移動モニタリング・システムを備える。患者ターンおよびモニタリング・システムのいくつかの実施形態は、患者の体位について説明する情報を取得し、感知された体位情報を示す情報をワイヤレスで送信するように構成された1つまたは複数のセンサを有する、患者により装着されたワイヤレス・センサを含む。システムは、ワイヤレス・センサによって送信された情報を受信し、記憶し、処理するように、および介護者が1つまたは複数の褥瘡性潰瘍の形成の患者のリスクを管理する助けとなる、患者の体位を示す情報(またはデータ)を表示し、送信するように構成された患者モニタも含む。いくつかの構成では、ワイヤレス・センサは、患者の背部に固定される。患者ターンおよび移動モニタリング・システムは、患者の現在の体位を識別し、どれくらい長く患者が現在の体位にあるかを判断することができる。患者が、あらかじめ定義された、臨床医により定められた患者体位継続時間を超えて、体位であるままである場合、システムは、患者が位置変更されるべきあることを患者および/または看護者に通知することができる。ある実施形態では、患者体位継続時間タイマは、そのような体位時間をモニタリングするために使用される。開示される患者ターンおよび移動モニタリング・システムのある実施形態では、ワイヤレス・センサの受信範囲内に設置された信号反応器は、感知された体位情報を示す情報をワイヤレス・センサから受信し、ネットワーク・ベースの処理ノードに転送するために使用される。
【0015】
本開示の別の態様によれば、ワイヤレス・センサは、患者の背部で患者の肩甲骨の間に固定可能である。本開示の別の態様によれば、ワイヤレス・センサは、患者の背部の上部部分に固定可能である。
【0016】
本開示の別の態様は、位置、体位、および動き情報を患者から取得するように構成された1つまたは複数のセンサを含むワイヤレス・センサを含む。1つまたは複数のセンサとしては、3次元空間内での患者の位置および体位を決定するように構成された、加速度計、ジャイロスコープ、および磁力計があり得る。ワイヤレス・センサは、センサ・データ、および/またはセンサ・データを表す情報を患者モニタにワイヤレスで送信するように構成される。患者モニタは、受信されたデータを示すまたはこれから得られた情報を表示するために、受信された情報を処理し、表示、アラーム、アラート、および通知を含む情報を、たとえばナース・ステーションに設置されることがあるマルチ患者モニタリング・システムに送信するように構成可能である。
【0017】
本開示の別の態様は、ワイヤレス・センサを患者モニタと関連づけるためのシステムおよび方法を対象とする。いくつかの実施形態では、このワイヤレス・センサは、取り外されるときワイヤレス・センサをアクティブ化するアクティブ化・タブを含む。アクティベーション時、ワイヤレス・センサ内のワイヤレス・トランシーバは、最高約3インチのペアリング信号送信範囲を有する低電力ペアリング信号を発する。いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサは、押されたとき、ペアリング動作モードであるワイヤレス・センサを置き、ワイヤレス・センサに低電力ペアリング信号を発させる、スイッチまたはボタンを有する。患者モニタがワイヤレス・センサの範囲内(たとえば、約3インチの範囲内)にあるとき、ワイヤレス・センサと患者モニタは関連づけられ、それによって、互いと通信するようにワイヤレス・センサおよび患者モニタを構成する。ワイヤレス・センサと患者モニタとの間のペアリングが完了されると、ワイヤレス・センサは、ワイヤレス・センサが患者パラメータ感知信号を送信する、患者パラメータ感知動作モードに変化する。患者パラメータ感知信号は、ペアリング信号送信範囲よりも実質的に大きい患者信号送信範囲を有する。次いで、ワイヤレス・センサは、患者の上に置かれる状態にある。
【0018】
本開示のいくつかの態様では、患者の位置および体位がモニタリングされ、記録される。ワイヤレス・センサが、たとえば、患者の胴などの患者の身体に固定されると、患者の動きに対応するセンサ・データ(たとえば、加速度および角速度)が、取得され、あらかじめ処理されて、患者モニタに送信される。患者モニタは、受信されたデータを記憶し、患者の体位を決定するためにさらに処理する。例示的に、患者モニタは、患者が立っているか、座っているか、または腹臥位、仰臥位、左側臥位、もしくは右側臥位で横たわっているかを判断することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、患者モニタは、患者の身体の精密な体位を決定する。たとえば、患者モニタは、患者の身体が垂直方向および/または水平方向に傾斜している程度を決定し、それによって、患者が横たわる(ベッドなどの)支持構造に対する患者の位置の正確な説明を生成することができる。
【0020】
本開示の別の態様では、患者モニタは、決定された位置および体位情報を記憶し、どれほど長く患者が各決定された位置にあるままであるかを把握し、それによって、患者の位置履歴の連続的な記録を作成する。患者モニタは、患者のケア提供者に臨床的に関連のある行動可能な情報を提供するために、記憶されたデータを分析し、処理する。例示的に、患者モニタは、患者によって実行されたベッド内ターンの数をカウントし、患者が最後にターンして以降経過した時間の量をモニタリングし、表示する。経過時間が、臨床医により定義された継続時間(たとえば、2時間)を超えたとき、患者モニタは、患者のターン間の最大時間が超えられたという標識を表示する。患者モニタは、たとえば、マルチ患者モニタリング・システム、臨床医通知デバイスなどを介して、患者をケアすることを担当する1つまたは複数の臨床医に通知を送信することもできる。患者モニタは、たとえば24時間などの、所与の、臨床医により定義された時間期間にわたるターン間の時間の平均量、最小量、および最大量などの統計情報を決定し、表示することもできる。患者モニタは、臨床医により定義された時間の期間にわたる同じ位置および体位におけるターンの数を決定し、表示することもできる。同様に、患者モニタは、臨床医により定義された期間内に患者が各特定の位置にあるままであった時間の総量を表示することができる。さらに、患者モニタは、患者が臨床的に定義された許容できる位置にあるままであった期間の頻度および継続時間を決定することができる。
【0021】
さらに本開示の別の態様では、患者モニタは、患者の可動性ステータス、たとえば、患者が歩行しているか、立っているか、座っているか、リクライニングしているか、または転倒しているかを判断する。ある態様では、ワイヤレス・モニタリング・システムは、患者が転倒している、ベッドから出ている、または禁止された様式もしくは介護者の注意を必要とする様式で移動していると介護者にアラートを出すアラート・システムを含むことができる。アラートは、モニタリング・システム上の可聴アラームおよび/もしくは視覚的アラームとすることができ、または、アラートは、介護者(たとえば、ナース・ステーション、臨床医デバイス、ページャ、セルラー式電話、コンピュータ、または別のもの)に送信可能である。例示的に、患者モニタは、患者の可動性ステータスを表示し、患者がアクティブであり、ベッドから離れているという通知を送信することができる。いくつかの環境では、患者モニタは、たとえば、ベッド内にいるままでいる、または付き添い人の補助のみで浴室まで歩くという指示などの、臨床医の命令を患者が破っているかどうかを判断することができる。そのような環境では、通知、アラート、またはアラームは、適切な介護者に送信可能である。
【0022】
ある態様では、ワイヤレス・センサによって受信された情報は、患者の移動の時間順に並べられた表現(time-sequenced representation)を作成するために使用可能である。この表現は、患者モニタ上に表示可能であり、または介護者が患者をモニタリングすることを可能にするために、ナース・ステーションもしくは他の処理ノードに送信可能である。この時間順に並べられた表現は、リアル・タイムで見られ得る、および/または再生のために記録可能である。たとえば、アラームが、患者がベッドから落ちたと介護者にアラートを出した場合、介護者は、その時間の期間の前およびその間の患者の移動の履歴シーケンスにアクセスして検討することができる。
【0023】
本開示の別の態様は、患者の歩行および(たとえば、患者の現在の投薬レジメンなどの)他の情報に基づいて患者の転倒のリスクを予測することを対象とする。患者モニタが、患者の転倒のリスクが所定の閾値を上回ると決定したとき、患者モニタは、患者の転倒を予期し、したがってそれを防止しようとして、識別されたリスクをケア提供者に通知するために、アラームまたはアラートを発行することができる。加えて、患者モニタは、いつ患者が転倒したかを判断し、ケア提供者の補助を命じるために適切なアラームおよびアラートを発行することができる。
【0024】
本開示の一態様では、患者モニタは、ネットワークを介して、患者の健康記録と、臨床医による入力にアクセスする。例示的に、患者の健康記録に鑑みて分析された患者の位置履歴データは、特定の患者に対する有利な臨床的転帰をもたらす可能性が高いターニング・プロトコル(または他の治療プロトコル)を明らかにするまたは提案することがある。したがって、患者モニタは、ワイヤレス・センサから受信された情報に関連した、アクセスされた情報を分析して、患者に推奨される患者ターン・プロトコル(または他の治療プロトコル)を決定する。
【0025】
さらに本開示の別の態様では、患者モニタは、患者のために確立された、臨床医により定義された患者ターン・プロトコルに関する介護者および施設の遵守をアセスメントする。たとえば、患者モニタは、患者ターン・プロトコル違反を示す、定められた継続時間よりも長い期間にわたって患者がある位置にあるままである時間の数、ならびに各そのような過剰露出の長さを識別することができる。患者モニタは、通知、アラート、またはアラームの発行時の臨床医の反応時間を追跡することもできる。
【0026】
本開示の別の態様によれば、ケア提供者ワークフローの生産性、効率、および有効性は、複数の患者に対応する集められた位置履歴データに基づいて決定可能であり、各患者は、開示されるワイヤレス・センサを装備する。加えて、スタッフに対する患者の比が比較的高い、病棟またはナーシング・ホームのフロアなどの特定の場所内の患者のケアは、決定された褥瘡性潰瘍の形成のリスクに基づいて優先可能である。したがって、最高リスクを有すると決定された患者は、最初に注目を集めるように指定される。
【0027】
さらに本開示の別の態様では、ワイヤレス・センサは、追加の生理学的測定値を患者から取得するセンサを含む。たとえば、ワイヤレス・センサとしては、温度センサのまわりの患者の皮膚表面を絶縁することによって患者の中核体温を測定するように構成された温度センサが含まれ得る。温度センサを取り囲む絶縁の結果として、患者の皮膚表面と中核との間の自然温度差は、平衡に到達し、それによって、患者の中核体温(一般的には、温度は患者の皮膚表面よりも高い)に到達する。ワイヤレス・センサとしては、患者の胸部によって生成された振動運動を感知するように構成された音響呼吸センサも含まれ得る。音響呼吸センサは、感知された振動をデバイスの剛性構造を通じて加速度計に機械的に送信するように構成される。加速度計信号の処理は、とりわけ、患者の呼吸および心拍数を提供することができる。患者の胸部と電気的に接触する2つ以上の電極から電気信号を感知するように構成された心電図(ECG)センサも、ワイヤレス・センサ内に含まれてよい。ECG信号は、徐脈、頻脈性不整脈、心室細動などの不整脈を検出するために処理可能である。加えて、加速度計信号(音響呼吸センサからの機械的に送信された振動を示す情報を含む)および/またはECG信号は、限定するものではないが、いびき、咳嗽、窒息、喘鳴音、無呼吸イベント、および気道閉塞を含む、呼吸窮迫症または機能障害を識別するために処理可能である。
【0028】
本開示の別の態様では、患者モニタは、「Halo指数」とも呼ばれることがある患者のウェルネス/病気状態について説明するスコアを決定することができる。例示的に、患者モニタは、患者の健康記録、臨床医による入力、ワイヤレス・センサによって提供された位置履歴データ、表面構造圧力データ、およびワイヤレス・センサによって収集および提供された他の生理学的パラメータデータ(非限定的な例として、患者の温度、呼吸数、心拍数、ECG信号など)にアクセスし、分析して、患者の全体的な健康状態をアセスメントする。
【0029】
本開示の一態様では、患者モニタは、患者の身体の特定の解剖学的箇所に及ぼされる圧力の程度を決定するために、患者の支持構造(たとえば、ベッド、マットレス、ベッド・シーツ、マットレス・パッドなど)によって提供された情報にアクセスする。例示的に、患者の支持構造は、特定の部位において患者によって支持構造に及ぼされる圧力を測定する圧力センサのアレイをもつように構成可能である。患者モニタは、支持構造によって提供された情報に関連した患者の姿勢履歴データを分析して、解剖学的部位に及ぼされた測定された圧力の量に、解剖学的部位がそのような圧力下にあった時間の量が乗算されたものに基づいて、特定の解剖学的部位における褥瘡性潰瘍形成の可能性を決定することができる。評価されたリスクが所定の閾値を超えるとき、患者モニタは、指定された解剖学的部位内の褥瘡性潰瘍の形成を回避するように、患者を位置変更するためにアラームおよび/またはアラートを発行することができる。加えて、患者モニタは、及ぼされた圧力とそのような圧力下の時間の長さの複合分析に基づいて、特定の位置および/または患者ターン・プロトコルを提案することができる。
【0030】
本開示を要約する目的で、本明細書において、ある態様、利点、および新規な特徴について説明してきた。もちろん、必ずしもすべてのそのような態様、利点、または特徴が任意の特定の実施形態において実施されるとは限らないことが理解されるべきである。
【0031】
以下では、添付の図面を参照しながら、さまざまな実施形態について説明する。図面および関連づけられた説明は、本開示の実施形態を示すために提供され、特許請求の範囲を限定しない。図面では、類似の要素は、類似の参照番号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】患者モニタの近傍に患者により装着されたワイヤレス・センサを含む、開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の斜視図である。
【0033】
【
図1B】開示される患者モニタの表示の一実施形態の機能ブロック図である。
【0034】
【
図1C】開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の機能ブロック図である。
【0035】
【
図1D】開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の機能ブロック図である。
【0036】
【
図1E】開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の機能ブロック図である。
【0037】
【
図1F】開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の機能ブロック図である。
【0038】
【
図2A】開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の機能ブロック図である。
【0039】
【
図2B】任意選択の感知構成要素を含む開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の機能ブロック図である。
【0040】
【
図3A】開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の概略拡大斜視図である。
【0041】
【
図3B】
図3Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略組み立て斜視図である。
【0042】
【0043】
【
図4A】温度センサを含む開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の概略断面図である。
【0044】
【
図4B】
図4Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。
【0045】
【0046】
【
図5A】音響呼吸センサを含む開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の概略断面図である。
【0047】
【
図5B】
図5Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。
【0048】
【0049】
【
図6A】温度センサおよび音響呼吸センサを含む開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の概略断面図である。
【0050】
【
図6B】
図6Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。
【0051】
【0052】
【
図7A】患者モニタの近傍にECGセンサを有する患者により装着されたワイヤレス・センサを含む、開示される患者モニタリング・システムの一実施形態の斜視図である。
【0053】
【
図7B】
図7Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略組み立て斜視図である。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【
図8A】温度センサと、音響呼吸センサと、ECGセンサとを有する、開示されるワイヤレス・センサの一実施形態の概略拡大斜視図である。
【0059】
【
図8B】
図8Aの開示されるワイヤレス・センサの概略底面図である。
【0060】
【
図9】本開示の一実施形態による、ワイヤレス・センサを患者モニタと関連づけるプロセスについて説明する流れ図である。
【0061】
【
図10】本開示の一実施形態による、患者が体位を変更したかどうかを判断するプロセスについて説明する流れ図である。
【0062】
【
図11A】本開示の一実施形態による、患者の体位を決定するために使用される経時的に処理された加速度計データの例示的なプロットである。
【0063】
【
図11B】本開示の一実施形態による、患者の体位の継続時間の例示的なプロットである。
【0064】
【
図12】本開示の一実施形態による、患者が転倒したかどうかを判断するプロセスについて説明する流れ図である。
【0065】
【
図13A】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【
図13B】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【
図13C】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【
図13D】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【
図13E】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【
図13F】本開示の一実施形態による、患者の位置を反映する表示の一実施形態を示す図である。
【0066】
【
図14】本開示の一実施形態による、
図13A~
図13Fに示されるアイコンを組み込んだ患者モニタの例となる表示を示す図である。
【0067】
【
図15A】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15B】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15C】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15D】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15E】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15F】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15G】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【
図15H】本開示の一実施形態による、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す図である。
【0068】
【
図16】本開示の一実施形態による例となる方法を示す図である。
【0069】
【
図17A】患者の背部に配置されたワイヤレス・センサの例となる構成を示す図である。
【
図17B】患者の背部に配置されたワイヤレス・センサの例となる構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
次に、添付の図を参照しながら本開示の実施形態について説明し、添付の図では、同じ数字は、全体を通して同じ要素を指す。以下の説明は、性質上例示にすぎず、本開示、その適用例、または使用を限定することを決して意図するものではない。方法におけるステップが、本開示の原理を変えることなく異なる順序で実行されてよいことが理解されるべきである。そのうえ、本明細書において開示される実施形態は、いくつかの新規な特徴を含むことができ、そのうちの1つだけでは、単にその所望の属性を担当しない、または、本明細書において開示されるシステム、デバイス、および方法を実施するのに不可欠である。
【0071】
本開示は、1つまたは複数の褥瘡性潰瘍を形成するリスクがある患者の位置、体位、および移動をモニタリングし、管理するシステム、デバイス、方法、およびコンピュータ可読媒体に関する。一実施形態では、システムは、位置、体位および移動情報を患者から取得するように構成された1つまたは複数のセンサを含む、患者により装着されたワイヤレス・センサを備える。この1つまたは複数のセンサとしては、1つまたは複数の加速度計、ジャイロスコープ、および磁力計(すなわち、コンパス)があり得る。例示的に、センサは、3次元における患者の体位について説明する情報を連続的または周期的に(たとえば、毎秒)取得する。ワイヤレス・センサは、取得されたセンサ情報を処理するように構成されたプロセッサを含む。ワイヤレス・センサは、処理されたセンサ・データおよび/またはこのセンサ・データを表す情報を、さらなる処理のために患者モニタ(または他の処理デバイス)にワイヤレスで送信するように構成されたトランシーバも含む。患者モニタは、受信された情報を記憶し、さらに処理して、受信されたデータを示すまたはこれから得られた情報を表示するように、ならびに表示、アラーム、アラート、および通知を含む情報を、たとえばナース・ステーションからアクセス可能であってよいマルチ患者モニタリング・システムを含む他の患者ケア・システムに送信することができるように構成可能である。
【0072】
図1Aは、臨床設定における、開示される患者モニタリング・システム100の一実施形態の斜視図である。患者モニタリング・システム100は、患者のベッド118の側にあるテーブル116の上に設置された患者モニタ106の近傍の、患者によって装着されたワイヤレス・センサ102を含む。ワイヤレス・センサ102は、本明細書において、「ワイヤレス生理学的センサ102」、「患者により装着されたセンサ102」、「移動センサ102」、および「ウェアラブル・ワイヤレス・センサ102」とも呼ばれることがある。ワイヤレス・センサ102は、患者の位置、体位、および動きを測定するように構成された1つまたは複数のセンサを含む。いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、患者の直線加速度を測定するように構成された加速度計と、患者の角速度を測定するように構成されたジャイロスコープとを含む。測定された直線加速度および角速度情報は、3次元における患者の体位を決定するために処理可能である。いくつかの実施形態では、磁力計は、地球の重力場を測定するためにワイヤレス・センサ102内に含まれる。磁力計によって測定された情報は、患者の決定された体位の正確さを改善するために使用可能である。
【0073】
ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102によって患者から取得されたセンサ・データを表す情報を患者モニタ106に送信することができるワイヤレス・トランシーバ206(
図2Aおよび
図2Bに示される)も含む。有利には、患者は、ベッドサイド患者モニタ106に物理的に結びつけられず、したがって、ベッド118上のさまざまな位置に自由に移動することができる。
【0074】
本開示のある実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、
図1Aにおいてワイヤレス・センサ102の想像(phantom)図によって反映されるように、患者の衣服の下にある患者の身体の皮膚に固定される。より具体的には、ワイヤレス・センサ102は、患者の胸部の、胸骨の幅広い上部部分である患者の胸骨柄の上に置くことが可能である。この位置では、ワイヤレス・センサ102は、患者の身体の長手方向軸に対してほぼ中央に、たとえば患者がベッドの中にいるときに患者の体位を決定するのに有用な位置である患者の重心の近くに置かれる。
【0075】
ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102の底部表面に塗布または適用させた感圧性接着剤を含む、任意の形態の医学的に適切な粘着性材料を使用して、患者の皮膚に固定可能である。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、ワイヤレス・センサ102を患者に固定するために多くの他の材料および技法が使用可能であることを諒解するであろう。
【0076】
臨床設定においては頻繁に、複数の医療センサが、複数の生理学的パラメータを同時にモニタリングするために、患者に取り付けられるまたは接着される。医療センサのいくつかの例としては、限定するものではないが、いくつかの例を挙げると、位置、体位、および移動センサ、温度センサ、呼吸センサ、心拍数センサ、血液酸素センサ(パルス・オキシメトリ・センサなど)、音響センサ、EEGセンサ、ECGセンサ、血圧センサ、鎮静状態センサがある。一般的には、患者に取り付けられた各センサは、多くの場合はケーブルによって、取得された生理学的データを、センサ・データを受信し、処理して、それを、患者の状態をモニタリングし管理するためにケア提供者によって使用されることになる臨床情報に変換するように構成された近くのモニタリング・デバイスに送信する。患者が、いくつかの生理学的センサによって同時にモニタリングされるとき、ケーブルの数および使用されるベッドサイド・モニタリング・デバイスの数が、過剰である場合があり、患者の移動の自由を制限し、ケア提供者の患者へのアクセスを妨げる場合がある。患者をベッドサイド・モニタリング・デバイスに接続するケーブルは、部屋から部屋へと患者を移動させることまたは異なるベッドサイド・モニタに切り換えることをより困難にする場合もある。
【0077】
有利には、開示されるワイヤレス・センサ102は、1つまたは複数の処理能力を使用してセンサ・データが処理可能な患者データ処理環境105に、データをワイヤレスで送信することができる。
図1Aに示されるように、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス通信リンク104を介してデータを送信する。ワイヤレス通信リンク104は、ベッドサイド患者モニタ106によって、および/またはエクステンダ/リピータ107によって受信可能である。患者モニタ106とエキスパンダ/リピータ107の両方は、高速で信頼性の高い通信インタフェースによって、患者データ処理環境105へのアクセスを提供する。図示の目的で、患者モニタ106とエクステンダ/リピータ107の両方が
図1Aに示されている。しかしながら、一般的には、そのような1つのデバイスのみが、ワイヤレス・センサ102と患者データ処理環境105との間のワイヤレス接続を確立するために必要とされる。ワイヤレス通信リンク104は、Wi-Fi(802.11x)、ブルートゥース、ZigBee、セルラー式電話通信、赤外線、RFID、衛星伝送、所有権のあるプロトコル、それらの組み合わせなどの、さまざまなワイヤレス技術のいずれかを使用することができる。ワイヤレス・センサ102は、患者についての位置、体位、および移動情報を測定し報告することなどのテレメトリ機能を実行するように構成可能である。一実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、ブルートゥース・ワイヤレス通信規格を使用して、患者モニタ106とワイヤレスで通信する。
【0078】
エクステンダ/リピータ107は、ワイヤレス通信リンク104によってワイヤレス・センサ102からセンサ・データを受信し、受信されたセンサ・データを、ネットワーク108を介して患者データ処理環境105内の1つまたは複数の処理ノードに転送することができる。たとえば、エクステンダ/リピータ107は、受信されたセンサ・データを、特定のワイヤレス・センサ102のワイヤレス通信リンク104の範囲を越えて設置されることがある患者モニタ106に転送することができる。あるいは、エクステンダ/リピータ107は、センサ・データを、たとえば、マルチ患者モニタリング・システム110またはナース・ステーション・システム113などの、患者データ処理環境105内の他の処理ノードにルーティングすることができる。当業者は、数多くの処理ノードおよびシステムが、ワイヤレス・センサ102によって送信されたデータを処理するために使用可能であることを諒解するであろう。
【0079】
図1Aは、本明細書において「処理デバイス106」、「ポータブル・コンピューティング・デバイス106」、および「患者モニタリング・デバイス106」とも呼ばれることがある、患者モニタ106の一実施形態も示す。患者モニタ106の例は、米国特許出願公開第2013/0262730号および第2015/0099955号に開示されおり、これらの特許公開は、本開示の譲受人に譲渡され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。患者モニタ106は、処理デバイスであり、したがって、すべてが1つまたは複数の通信バスを介して接続された、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ・デバイス、記憶デバイス、入力/出力デバイス、および通信接続を含む、処理デバイスの機能を実行するために必要な構成要素を含む。したがって、ある実施形態では、患者モニタ106は、ワイヤレス・センサ102によって提供されたセンサ・データを処理するように構成される。他の実施形態では、センサ・データの処理は、患者データ処理環境105内の他の処理ノードによって実行可能である。患者モニタ106は、ワイヤレス・センサ102とワイヤレスで通信するように構成される。患者モニタ106は、ディスプレイ120と、同じくディスプレイ130を有するポータブル患者モニタ122と機械的および電気的に嵌合するように構成されたドッキング・ステーションとを含む。患者モニタ106は、
図1Aに示されるように、水平で平坦な表面に載置されるように構成された略垂直な傾斜した形状で形成された、移動可能で搭載可能なポータブル・ハウジング内に収容される。もちろん、当業者は、ハウジングが、多種多様の位置および取り付け具に固定可能であり、多種多様の形状およびサイズを備えることができることを諒解する。
【0080】
一実施形態では、ディスプレイ120は、単独で、またはポータブル患者モニタ122のディスプレイ130と組み合わせて、数値、グラフィカル、波形、または他の表示インディシア(indicia)で、多種多様の測定値および/または治療データを提示することがある。たとえば、ディスプレイ120は、さまざまな患者固有の構成ならびに/または、とりわけ、患者の体重、年齢、治療のタイプ、疾患のタイプ、医療状態のタイプ、栄養、水和、および/もしくは滞在の長さなどのパラメータを表示することができる。一実施形態では、ディスプレイ120は、ハウジングの前面の大部分を占めるが、当業者は、ディスプレイ120が、テーブルまたはテーブルトップ水平構成、ラップトップ様構成などを備えてよいことを諒解するであろう。他の実施形態は、タブレット・コンピュータ、スマートフォン、テレビジョン、または当業者に認識可能な任意の表示システムに表示情報およびデータを通信することを含んでよい。有利には、患者モニタ106の垂直な傾斜した構成は、
図1Aに示されるように、容易に見える様式で介護者に情報を表示する。
【0081】
図1Aのポータブル患者モニタ122は、有利には、Masimo Corporation of Irvine、CAから市販されているもの、ならびに/または米国特許出願公開第2002/0140675号、第2010/0274099号、第2011/0213273号、第2012/0226117号、第2010/0030040号、米国特許出願第61/242,792号、第61/387457号、第61/645,570号、第13/554,908号、および米国特許第6,157,850号、第6,334,065号に開示されているものなどの、オキシメータ、コオキシメータ、呼吸モニタ、鎮静の深さモニタ、非侵襲性血圧モニタ、バイタル・サイン・モニタなどを含んでよく、これらの特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ポータブル患者モニタ122は、非限定的な例として、ワイヤレス・センサ102、光放射および検出回路をもつ光センサ、音響センサ、指刺しから血液パラメータを測定するデバイス、カフ、ベンチレータなどの、さまざまな非侵襲性および/または最小侵襲性デバイスと通信してよい。ポータブル患者モニタ122は、それ自体の表示インディシアを提示する、それ自体のディスプレイ130を含んでよい。表示インディシアは、ポータブル患者モニタ122のドッキング状態に基づいて変化することがある。ドッキングされていないとき、ディスプレイ130は、パラメータ情報を含んでよく、たとえば重力センサまたは加速度計によって提供された情報に基づいて、その表示体位を変えてよい。特定のポータブル患者モニタ122を参照しながら開示されているが、当業者は、本明細書における開示から、有利には患者モニタ106とドッキングしてよい多数の多種多様な医療デバイスがあることを諒解するであろう。
【0082】
図1Bは、開示される患者モニタ106のディスプレイ120およびポータブル患者モニタ122のディスプレイ130の一実施形態の機能ブロック図である。患者モニタ106のディスプレイ120は、患者の生理学的データ124、患者ターンデータ126、および/または追加の、任意選択の患者データ128を提示するように構成可能である。患者の生理学的データとしては、非限定的な例として、酸素飽和度、脈拍数、呼吸数、分画動脈酸素飽和度、総ヘモグロビン、プレチスモグラフ変動指数、メトヘモグロビン、カルボキシヘモグロビン、灌流指数、および酸素含有量があり得る。有利には、ディスプレイ120は、使用者が、生理的パラメータ124、患者ターンデータ126、および任意選択の患者データ128がディスプレイ120上に提示される様式を調整することを可能にするように構成可能である。特に、臨床医にとってより大きい興味があるまたは重要である情報は、より大きなフォーマットで表示されてよく、現在の測定値ならびにたとえば前の時間などのある時間の期間にわたる測定値の履歴傾向を伝えるために、数値的なフォーマットとグラフィカルなフォーマットの両方で表示されてもよい。
【0083】
図1Bにおいて点線によって示されるように、ポータブル患者モニタ130のディスプレイ130は、患者の生理学的データ134、患者ターンデータ136、および追加の、任意選択の患者データ138を提示するように構成されることがある患者モニタ106の任意選択の特徴である。
【0084】
図1Cは、開示される患者モニタリング・システム100の一実施形態の簡略化された機能ブロック図である。システムは、1つまたは複数のセンサを有する、患者により装着されたワイヤレス・センサ102と、ワイヤレス通信リンク104とを含み、ワイヤレス通信リンク104を通して、ワイヤレス・センサ102からのセンサ・データが、患者データ処理環境105にアクセスし、患者データ処理環境105は、患者モニタ106と、通信ネットワーク108と、マルチ患者モニタリング・システム110と、病院または施設情報システム112と、1つまたは複数のナース・ステーション・システム113と、1つまたは複数の臨床医デバイス114とを含む。当業者は、数多くの他のコンピューティング・システム、サーバ、処理ノード、表示デバイス、プリンタなどが、開示される患者モニタリング・システム100内に含まれ得ることを諒解するであろう。
【0085】
ワイヤレス・センサ102は、1つまたは複数の褥瘡性潰瘍を形成するのリスクがあると決定された患者、たとえば、長期間にわたって病床についている患者によって装着される。ワイヤレス・センサ102は、患者が、患者の褥瘡性潰瘍を形成するリスクを減少させるのに十分なほど頻繁に位置変更されているかどうかを判断する助けとなるために、患者の体位を連続的または周期的(たとえば、毎秒)にモニタリングすることが可能である。ある実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、測定された加速度および/または角速度データを最小限に処理し、最小限に処理されたデータをワイヤレス通信リンク104によって患者モニタ106にワイヤレスで送信する。
【0086】
ワイヤレス・センサ102および患者モニタ106は、異なるワイヤレス技術を利用してワイヤレス通信リンク104を形成するように構成可能である。あるシナリオでは、たとえば、ワイヤレス・センサ102と患者モニタ106との間の距離がブルートゥース通信またはZigBee通信の範囲内にあるとき、ブルートゥースまたはZigBee上でデータを送信することが望ましいことがある。ブルートゥースまたはZigBeeを使用してデータを送信することは、これらの技術が必要とする電力は他のワイヤレス技術よりも少ないので、有利である。したがって、バッテリを使用する開示されるワイヤレス・センサ102の実施形態の寿命は、ブルートゥース・プロトコルまたはZigBeeプロトコルを使用することによって増加され得る。
【0087】
他のシナリオでは、たとえば、ワイヤレス・センサ102と患者モニタ106との間の距離がブルートゥースまたはZigBeeのための通信の範囲外にあるとき、Wi-Fiまたはセルラー式電話通信を使用してデータを送信することが望ましいことがある。ワイヤレス・センサ102は、Wi-Fiまたはセルラー式電話通信を使用して他のワイヤレス技術よりも長い距離上でデータを送信することが可能であってよい。さらに他のシナリオでは、データ転送および/またはエネルギー効率を最大限にするために、第1のワイヤレス技術を使用してデータを送信し、次いで、第2のワイヤレス技術に自動的に切り換えることが望ましいことがある。
【0088】
いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102がベッドサイド患者モニタ106から所定の距離内にあるとき、ブルートゥースまたはZigBee上でデータを自動的に送信する。ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102が、ベッドサイド患者モニタ106から離れた所定の距離を超えるとき、Wi-Fiまたはセルラー式電話通信上でデータを自動的に送信する。ある実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102とベッドサイド患者モニタ106との間の距離に応じて、ブルートゥースまたはZigBeeからWi-Fiまたはセルラー式電話通信に自動的に変換することができ、その逆も同様である。
【0089】
いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、ブルートゥースもしくはZigBee信号強度が十分に強いとき、またはWi-Fiもしくはセルラー式電話通信に対する干渉があるとき、ブルートゥースまたはZigBee上でデータを自動的に送信する。ワイヤレス・センサ102は、ブルートゥースまたはZigBeeの信号強度が十分に強くないとき、Wi-Fiまたはセルラー式電話通信上でデータを自動的に送信する。ある実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、信号強度に応じて、ブルートゥースまたはZigBeeからWi-Fiまたはセルラー式電話通信に自動的に変換することができ、その逆も同様である。
【0090】
患者モニタ106は、患者の体位を決定するためにワイヤレス・センサ102によって送信された測定された加速度および角速度データを受信し、記憶して、処理するように動作可能であることができる。決定されると、患者モニタ106は、患者の現在の体位を表示することができる。いくつかの実施形態では、患者モニタ106は、経時的に患者の前の体位とともに患者の現在の体位を表示し、それによって、患者の体位の履歴記録を見る能力を使用者に提供する。ある実施形態では、たとえば、
図13A~
図13Fおよび
図14に示されるように、患者体位は、アイコン、そのような棒線画によって表示され、臨床医が、患者の現在の位置状態および患者の位置履歴を容易に理解することを可能にする。患者モニタ106は、患者が特定の体位にあるままである時間の長さを把握するようにも構成可能である。いくつかの実施形態では、患者モニタ106は、患者が現在の体位である時間の量を表示する。加えて、患者モニタ106は、位置変更プロトコルにより臨床医によって定められた持続時間よりも長い継続時間にわたって患者がいつ特定の体位であるかを判断することができる。そのような状態下で、患者モニタ106は、褥瘡性潰瘍形成のリスクを減少させるために、定められた位置変更プロトコルを遵守するように、患者が位置変更されるべきであることを示す、アラーム、アラート、および/または通知を患者および/または介護者に発行することができる。
【0091】
図1Cに示されるように、患者モニタ106は、マルチ患者モニタリング・システム110と病院/施設システム112とナース・ステーション・システム113と臨床医デバイス114とを含む患者データ処理環境105と、ネットワーク108上で通信する。マルチ患者モニタリング・システム110を含む、ネットワーク・ベースの臨床処理環境の例は、米国特許出願公開第2011/0105854号、第2011/0169644号、および第2007/0180140号に開示されており、これらの特許公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一般に、マルチ患者モニタリング・システム110は、病院/施設システム112、ナース・ステーション・システム113、および臨床医デバイス114と通信する。病院/施設システム112は、電子的医療記録(EMR)ならびに/または入院、退院、および転院(ADT)システムなどのシステムを含むことができる。マルチ患者モニタリング・システム110は、有利には、患者識別子情報、人口統計学的情報、支払い請求情報などの、患者の入院時に入力された患者情報をプッシュ、プル、またはコンビネーション技術を通して取得する。患者モニタ106は、モニタリングされた患者を病院/施設システム112と関連づけるために、この情報にアクセスすることができる。マルチ患者モニタリング・システム110、病院/施設システム112、ナース・ステーション・システム113、臨床医デバイス114と、患者モニタ106との間の通信は、ワイヤレス・ネットワーク、ワイヤード・ネットワーク、オーバー・モバイル(over mobile)・ネットワーク、または他のコンピューティング・ネットワークなどを含む、本明細書における開示から当業者に認識可能な任意の技法によって達成されてよい。
【0092】
図1Dは、複数の患者看護環境とともに複数のワイヤレス・センサ102の使用を示すように拡張された、
図1Cの開示される患者モニタリング・システム100の簡略化された機能ブロック図である。有利には、患者モニタリング・システム100は、たとえば患者モニタ106に関する患者情報、ならびにたとえばナース・ステーション・サーバまたはシステム114に関する集積された患者情報を、個々の患者に提供することができる。したがって、看護者は、たとえば病院フロアまたはユニット内に設置された患者の集団に対応する位置情報の概要を有することができる。
【0093】
いくつかの環境では、患者によって装着されているワイヤレス・センサ102と関連づけられたベッドサイド患者モニタ106を用いるために使用可能な、必要性、要望、またはリソースがないことがある。たとえば、臨床環境は、患者データが、患者のベッドサイドにおいてではなく、ナース・ステーションなどの中央観察ステーションにおいて、収集、分析、表示、およびモニタリングされるように職員が配置される。さらに、情報が、ベッドサイドにおいて臨床医によってアクセス可能であるとき、たとえば、タブレット、PDAなどのポータブル臨床医デバイス114は、患者のベッドサイドにいる間、必要とされる患者固有情報にアクセスするために介護者によって使用されてよい。
【0094】
そのようなシチュエーションでは、
図1Eおよび
図1Fに示されるように、ワイヤレス・センサ102は、信号エクステンダ/リピータ107によって臨床コンピューティング環境のさまざまなシステムに通信することができる。エクステンダ/リピータ107は、ワイヤレス・センサ102の範囲内に(たとえば、患者のベッド118の近くに)設置され、ネットワーク108を介して、ワイヤレス・センサ102と、ワイヤレス・センサ102によって収集されたデータを処理、記憶、表示する、および/またはこれを送信することが可能である1つまたは複数のコンピューティング・システムとの間でデータを中継するように構成される。有利には、比較的低いコストのエクステンダ/リピータ107は、たとえばブルートゥースまたはZigBeeなどの、より短距離でより消費電力の低い送信モードを使用して、ワイヤレス通信リンク104上で1つまたは複数のワイヤレス・センサ102から送信された信号を受信するために使用可能である。次いで、エクステンダ/リピータ107は、ネットワーク108上で患者データ処理環境105内の1つまたは複数のコンピューティング・システムに受信された信号を再送信することができる。いくつかの実施形態によれば、エクステンダ/リピータ107は、ワイヤレス・センサ102から受信された信号をたとえばマルチ患者モニタリング・システム110などのコンピューティング・ノードにネットワーク108上で再送信するブルートゥース-イーサネット・ゲートウェイである。いくつかの実施形態では、エクステンダ/リピータ107は、ネットワーク108へのアクセスをワイヤレス・センサ102に提供するブルートゥース-WiFiブリッジである。もちろん、当業者は、エクステンダ/リピータ107を実施する数多くの手段があることを認識するであろう。
【0095】
図2Aは、開示されるワイヤレス・センサ102の一実施形態の簡略化されたハードウェア・ブロック図を示す。
図2Aに示されるように、ワイヤレス・センサ102は、プロセッサ202と、データ記憶デバイス204と、ワイヤレス・トランシーバ206と、システム・バス208と、加速度計210と、ジャイロスコープ212と、バッテリ214と、情報要素215とを含むことができる。プロセッサ202は、とりわけ、データを処理し、本明細書において開示される方法などの1つまたは複数の機能を実行するように指示を実行し、ワイヤレス・センサ102の動作を制御するように構成可能である。データ記憶デバイス204は、限定するものではないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)および読み出し専用メモリ(ROM)を含む、データを記憶する1つまたは複数のメモリ・デバイスを含むことができる。ワイヤレス・トランシーバ206は、Wi-Fi(802.11x)、ブルートゥース、ZigBee、セルラー式電話通信、赤外線、RFID、衛星伝送、所有権のあるプロトコル、それらの組み合わせなどの、さまざまなワイヤレス技術のいずれかを使用するように構成可能である。ワイヤレス・センサ102の構成要素は、システム・バス208によってともに結合可能であり、システム・バス208は1つまたは複数のバスを表し得る。バッテリ214は、本明細書において説明されるワイヤレス・センサ102のハードウェア構成要素に電力を提供する。
図2Aに示されるように、バッテリ214は、システム・バス208上で他の構成要素と通信する。当業者は、バッテリ214が、1つまたは複数の別個の電気接続によって
図2Aに描かれるハードウェア機能構成要素のうちの1つまたは複数と通信することができることを理解しよう。情報要素215は、ワイヤレス・センサ102と関連づけられた品質の標準を維持する助けとなるために使用される情報を不揮発性メモリに記憶するメモリ記憶素子とすることができる。例示的に、情報要素215は、センサ102が以前にアクティブにされたかどうか、およびセンサ102がたとえば4時間などの長期にわたる時間の期間にわたって以前に動作可能であったかどうかに関する情報を記憶することができる。情報要素215に記憶された情報は、ワイヤレス・センサ102の不適当な再使用を検出する助けとなるために使用可能である。
【0096】
いくつかの実施形態では、加速度計210は3次元(3D)加速度計である。本明細書において使用される3D速度計という用語は、当業者に知られているその幅広い意味を含む。加速度計210は、「X」軸、「Y」軸、および「Z」軸と示されることもある3つの直交軸で、ワイヤレス・センサ102の加速度に応答する出力を提供する。加速度計210は、地球の重力に対して経験する加速度を測定することがある。加速度計210は、3つの軸に沿って加速度情報を提供することがあり、加速度計210は、慣性加速度マイナス局所重力加速度の等価物である加速度情報を提供することがある。加速度計210は、当業者によく知られている。加速度計210は、微小電気機械システム(MEMS)であってよく、加速度計210は、実装形態の形態の中でもとりわけ、ピエゾ抵抗器を含んでよい。加速度計210は、高インピーダンス電荷出力または低インピーダンス電荷出力加速度計210であってよい。いくつかの実施形態では、加速度計210は3軸加速度計であってよく、加速度計210の出力は、そのうちの各々が特定の軸において測定された加速度を表す3つの信号を含んでよい。加速度計210の出力は、8ビット出力信号であってもよいし、12ビット出力信号であってもよいし、他の任意の適切なサイズの出力信号であってもよい。加速度計の出力は、アナログ形式であってもよいし、デジタル形式であってもよい。加速度計210は、ワイヤレス・センサ102が取り付けられる患者の位置、体位、および/または動きを決定するために使用されてよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、ジャイロスコープ212は、2度の角度分解能をもち、および1度のセンサ・ドリフト調整能力をもつ、3軸デジタル・ジャイロスコープである。本明細書において使用される3軸ジャイロスコープという用語は、当業者に知られているその幅広い意味を含む。ジャイロスコープ212は、ピッチ、ヨー、およびロールの測定値に対応する3つの直交軸における、感知されたワイヤレス・センサ102(患者に固定された)の角速度に応答する出力を提供する。当業者は、本明細書における開示の範囲から逸脱することなく、ワイヤレス・センサ102で数多くの他のジャイロスコープ212が使用可能であることを諒解するであろう。ある実施形態では、加速度計210およびジャイロスコープ212は、慣性測定ユニット(IMU)と呼ばれることがある単一のハードウェア構成要素へと統合可能である。いくつかの実施形態では、IMUは、とりわけ、感知された慣性データの信号サンプリング、バッファリング、センサ較正、およびセンサ・フュージョン処理を取り扱う埋め込み型プロセッサも含むことができる。他の実施形態では、プロセッサ202は、これらの機能を実行することができる。そして、さらに他の実施形態では、感知された慣性データは、ワイヤレス・センサ102の構成要素によって最小に処理され、さらなる処理のために、患者モニタ106などの外部システムに送信され、それによって、ワイヤレス・センサ102の複雑さ、電力消費、およびコストを最小にし、ワイヤレス・センサ102は、単回使用の使い捨て製品であってよい。
【0098】
図2Bは、以下の任意選択の(点線によって反映される)感知構成要素、すなわち、コンパスとも呼ばれることがある磁力計216と、温度センサ218と、音響呼吸センサ220と、心電図(ECG)センサ222と、1つまたは複数のオキシメトリ・センサ224と、水分センサ226と、インピーダンス・センサ228とを含む、開示されるワイヤレス・センサ102の一実施形態の簡略化されたハードウェア機能ブロック図である。いくつかの実施形態では、磁力計216は、地球の磁場を含む磁場を示す情報を提供する3次元磁力計である。
図2Bでは別個の機能要素として示されているが、当業者は、加速度計210、ジャイロスコープ212、および磁力計214は、慣性測定ユニットなどの単一のハードウェア構成要素へと統合可能であることを理解するであろう。
【0099】
一実施形態によれば、システムおよび方法は、本明細書では、対象に取り付けられた3つのセンサ、すなわち、3つの軸に沿って直線加速度を測定するように構成された加速度計210、3つの軸のまわりの角速度を測定するように構成されたジャイロスコープ212、および3つの軸に沿って磁場(地球の磁場など)強度を測定するように構成された磁力計214、からの入力から得られた対象の3次元位置および体位を計算するために説明される。一実施形態では、3つのセンサ210、212、および214は、患者に固定されたワイヤレス・センサ102に取り付けられる。一実施形態によれば、センサ210、212、および214は、約10Hzから約100Hzの間のレートでサンプリングされる。当業者は、センサ210、212、および214は、本開示の範囲から逸脱することなく、異なるレートでサンプリング可能であることを諒解するであろう。9つのセンサ入力を提供する3つのセンサ210、212、および214からサンプリングされたデータは、3次元空間内での患者の位置および体位について説明するために処理される。一実施形態では、患者の位置および体位は、患者のX-Y-Z軸のセットのまわりでの回転のセットとして、オイラー角に関して説明される。
【0100】
図2Bにも示されているのは、患者の状態をモニタリングし管理するために臨床医によって使用されるバイタル・サインである患者の中核体温を測定するために使用されてよい温度センサ218である。温度センサ218は、1つまたは複数のスポットにおいて互いと接触する2つの異なる導体または半導体を有する温度測定デバイスである熱電対を含むことができる。温度差は、異なる導体によって経験される。熱電対は、接触スポットが参照温度とは異なるとき、電圧を生じさせる。有利には、熱電対は自蔵動力式であり、したがって、動作のために外部電源を必要としない。一実施形態では、温度センサ218はサーミスタを含む。サーミスタは、その温度に応じて抵抗値が変化する抵抗器の1つのタイプである。サーミスタは、一般的には、限られた温度範囲内で高い精度を提供する。
【0101】
音響呼吸センサ220は、限定するものではないが、心拍数、呼吸数、いびき、咳嗽、窒息、喘鳴音、および気道閉塞(たとえば、無呼吸イベント)を含む、さまざまな生理的パラメータおよび/または状態を示す、患者の身体(たとえば、患者の胸部)からの振動運動を感知するために使用可能である。ECGセンサ222は、患者の心臓活動を測定するために使用可能である。一実施形態によれば、ECGセンサ222は、2つの電極と、単一のリードとを含む。オキシメトリ・センサ224は、人間の酸素供給のインジケータである動脈血の酸素飽和度レベルを測定するための広く受け入れられている非侵襲性手技である患者のパルス・オキシメトリをモニタリングするために使用可能である。一般的なパルス・オキシメトリ・システムは、患者の身体の一部分(たとえば、指先、耳たぶ、鼻孔など)上にクリップされた光センサを利用して、感知されている身体の部分内を流れる脈動する動脈血内の酸素添加ヘモグロビンの相対量を測定する。酸素飽和度(SpO2)、脈拍数、プレチスモグラフ波形、灌流指数(PI)、pleth変動指数(PVI)、メトヘモグロビン(MetHb)、カルボキシヘモグロビン(CoHb)、総ヘモグロビン(tHb)、グルコース、および/またはその他は、オキシメトリ・センサ224を使用して測定し、モニタリング可能である。水分センサ226は、患者の褥瘡性潰瘍を形成するリスクをアセスメントするうえで関連のある臨床的要因である患者の皮膚の水分含有量を決定するために使用可能である。インピーダンス・センサ228は、患者の流体レベルを追跡するために使用可能である。たとえば、インピーダンス・センサ228は、患者における浮腫、心不全の進行、および敗血症をモニタリングし、検出することができる。
【0102】
図3Aは、底面基部310と、着脱可能なバッテリ・アイソレータ320と、搭載フレーム330と、回路基板340と、ハウジング350と、上面基部360とを含む、開示されるワイヤレス・センサ102の一実施形態の概略拡大斜視図である。底面基部310は、ワイヤレス・センサ102のさまざまな構成要素が配置される上部表面と、ワイヤレス・センサ102を患者の身体に固定するために使用される底部表面とを有する基板である。底面基部310および上面基部360は、いくつかの例を挙げると、ホワイト・ポリエチレン、ポリウレタン、または網状ポリウレタン・フォームなどの医療グレード・フォーム材料から作製可能である。
図3Aに示される実施形態に示されるように、底面基部310および上面基部360は各々、略楕円形形状をしており、約1mmの厚さをもつ。上面基部360は、組み立て中にハウジング350が合う切り欠き部362を含む。もちろん、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく用いることができる、底面基部310および上面基部360に適した数多くのサイズおよび形状があることを理解するであろう。底面基部310の底部表面は、患者の皮膚に塗布されるとき、たとえば2日またはそれよりも長くなどの長期モニタリングに適している、安価な(high tack)医療グレード接着剤で塗布される。底面基部310の上部表面の部分も、底面基部310および上面基部360がワイヤレス・センサ102の組み立て中にともに接着されるように、医療グレード接着剤で塗布される。
【0103】
着脱可能なバッテリ・アイソレータ320は、バッテリ214と回路基板340上の電気接点(図示せず)との間の電気通信を遮る働きをする電気的絶縁材料から作製された可撓性ストリップである。バッテリ・アイソレータ320は、ワイヤレス・センサ102が使用する準備ができるまで、バッテリ電力を維持するために使用される。バッテリ・アイソレータ320は、バッテリ・アイソレータ320がワイヤレス・センサ102から取り外されるまで、バッテリ214と回路基板340との間の電気接続を遮る。バッテリ・アイソレータ320は、その初期位置から摺動可能に取り外されるのに適切な可撓性と、バッテリを回路基板340から電気的に絶縁するように適切な誘電性とを所有する任意の材料から作製可能である。たとえば、バッテリ・アイソレータは、プラスチック、ポリマー・フィルム、紙、フォーム、そのような材料の組み合わせなどから作製可能である。バッテリ・アイソレータ320は、ワイヤレス・センサ102が組み立てられるときハウジング350のスロット352を通って延びるプル・タブ322を含む。プル・タブ322は、プル・タブ322をつかんで、その元の組み付けられた位置から摺動させる助けとなる摩擦面を提供するために、テキスチャを付けることが可能である。バッテリ・アイソレータ320が取り外されると、バッテリ214は、バッテリ接点との電気接続をなして、ワイヤレス・センサ102の電子構成要素に通電する。
【0104】
搭載フレーム330は、バッテリ214を回路基板340に固着する助けとなる構造的支持要素である。搭載フレーム340は、組み立てられるときバッテリ接点342とバッテリ214との間で摺動される翼状部342を有する。加えて、搭載フレーム330は、回路基板340と底面基部310との間の剛性構造を提供する働きをする。音響呼吸センサを含むいくつかの実施形態によれば、剛性構造は、患者(たとえば、呼吸、鼓動、いびき、咳嗽、窒息、喘鳴音、気道閉塞などに関連する振動運動など)から生ずる振動運動(振動)を、回路基板340上に配置された加速度計210に送信する。
【0105】
回路基板340は、本明細書において基板層340および回路層340とも呼ばれることがあり、ワイヤレス・センサ102の機能の多くを実行するために、電気構成要素を機械的に支持し、これを電気的に接続する。回路基板340は、伝導トラックと、接続パッドとを含む。そのような電気構成要素は、限定するものではないが、プロセッサ202と、記憶デバイス204と、ワイヤレス・トランシーバ206と、加速度計210と、ジャイロスコープ212と、磁力計(magnetomer)214と、温度センサ218と、音響呼吸センサ220と、ECGセンサ222と、オキシメトリ・センサ224と、水分センサ226と、インピーダンス・センサ228とを含むことができる。一実施形態では、回路基板340は、上部側面上に搭載された電子構成要素と底部側面上のバッテリ接点(図示せず)とを有する両面を有する。もちろん、当業者は、ワイヤレス・センサ102の電気構成要素および電子構成要素を搭載し相互接続するための他の可能性を理解するであろう。
【0106】
図3Aに示されるように、バッテリ・ホルダ342は、上部部分回路基板340の2つの側面に取り付けられ、回路基板340に対する適所にバッテリ214を保持するように回路基板340の底部側面の下に延びる(支持構造を形成する)。バッテリ・ホルダ342は、電気伝導性材料から作製される。いくつかの実施形態では、バッテリ214は、上部側面上の負極と底部側面上の正極とを有するコイン電池バッテリである。バッテリ214の正極と回路基板340との間の電気接続は、バッテリ214の正極および回路基板340と電気的に接触するバッテリ・ホルダによってなされる。バッテリ214の負極は、回路基板340の底部側面上のバッテリ接点(図示せず)に触れるように配置される。いくつかの実施形態では、バッテリ接点は、バッテリ214の正極とバッテリ接点との間に接触がなされることを保証するために、バッテリ接点に力を加えるばねアームを含む。組み立て中および使用前に、バッテリ・アイソレータ320が、電気接触を遮るために、バッテリ214の正極とバッテリ・コネクタとの間に挿入される。
【0107】
ハウジング350は、ワイヤレス・センサ102の構成要素を含み、これを保護する働きをする構造上の構成要素である。ハウジング350は、ワイヤレス・センサ102の電子構成要素を適切に保護することが可能である任意の材料から作製可能である。そのような材料の例としては、限定するものではないが、熱可塑性材料および熱硬化性ポリマーがある。ハウジング350は、組み立て中にバッテリ・アイソレータ320が挿入されるスロット352を含む。ハウジング350は、ハウジング350の外表面のまわりに延びるリム354も含む。リム354は、ワイヤレス・センサ102が組み立てられるとき、底面基部310および上面基部360に対して適所にハウジング350を固着するために使用される。
【0108】
ワイヤレス・センサ102の組み立ては、次のとおりである。回路基板340およびバッテリ214を保持するバッテリ・ホルダ342が、ハウジング350へと置かれる。搭載フレーム330の翼状部332は、搭載フレーム330を回路基板340と位置合わせさせるように、バッテリ214とバッテリ・ホルダ342との中間に挿入される。次いで、バッテリ・アイソレータ320がバッテリ接点とバッテリ214との間に配置される。次いで、バッテリ・アイソレータ320のプル・タブ322が、ハウジング350内のスロット352を通して送られる。次いで、上面基部360がハウジング350の上に配置され、次に、ハウジング350が、位置合わせのために、切り欠き部362を使用して、組みつけられた回路基板340、バッテリ・ホルダ342、バッテリ214、搭載フレーム330、およびバッテリ・アイソレータ320を収容する。ハウジング350のリム354は、上面基部360の底部表面に接着され、この底部表面は、安価な医療グレード接着剤で塗布される。部分的なアセンブリは、今や上面基部360と、ハウジング350と、回路基板340と、バッテリ・ホルダ342と、バッテリ214と、搭載フレーム330と、バッテリ・アイソレータ320とを含み、底面基部310の上部表面上へと中央に配置され、基部上面360の縁を基部底面310の縁と位置合わせさせる。いくつかの実施形態では、切り取り試片(coupon)(または打ち抜きツール)が、ここで組み合わされている上面基部360および底面基部310の余分な一部分を切り取って、ワイヤレス・センサ102の最終的な形状を形成するために使用される。次いで、底面基部310の底部表面が、安価な医療グレード接着剤で塗布され、放出ライナ(図示せず)は、使用する時間になるまで、接着剤を保護するために底面基部3310の底部表面上に置かれる。
【0109】
組み立てられたワイヤレス・センサ102の概略斜視図が
図3Bに示されている。ハウジング350の上部部分上に設置されたボタン/スイッチ324も、
図3Bに示されている。ボタン/スイッチ324は、ワイヤレス・センサ102のモードを変更するために使用可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、ボタン/スイッチ324を押して保つことによって、ワイヤレス・センサ102が、ペアリング動作モードに切り換わることができる。ペアリング・モードは、ワイヤレス・センサ102を患者モニタ106と、またはエクステンダ/リピータ107と関連づけるために使用される。
図3Cは、組み立てられたワイヤレス・センサ102の一実施形態の概略側面図を提供し、断面線A-Aが識別される。
【0110】
次に
図4Aおよび
図4Bを参照すると、温度センサ218を含むワイヤレス・センサ102の一実施形態が開示されている。
図4Aは、温度センサ218を含む開示されるワイヤレス・センサ102の組み立てられた実施形態を示す、
図3Cの線A-Aに沿って断面図が作成された、概略断面図である。より簡単に見えるようにするため、バッテリ・アイソレータ320およびバッテリ・ホルダ342は、示されない。
図4Bは、
図4Aの開示されるワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。底面基部310の底部表面が示されている。底面基部310の底部表面に対するハウジング350の位置も示す切り欠き部362の輪郭も、想像線(すなわち、点線)で示されている。
【0111】
ワイヤレス・センサ102の組み立てに関して上記で説明したように、底面基部310の上部表面は、上面基部360の底部表面と接触し、これに接着する。ハウジング350のリム354は、ハウジング350を固着するために、2つの基部310と360の間に挟まれる。ハウジング350はまた、上面基部360の切り欠き部362を通って突き出す。ハウジング内で、バッテリ214と搭載フレーム330が底面基部310の上部表面に隣接する。
【0112】
図4Aに示されるように、温度センサ218は、回路基板340の上に搭載される。その温度感知機能を実行するために、温度センサ218は、患者の皮膚と熱接触する。これを達成するために、熱エネルギーを患者の身体から温度センサ218に送信する構造が設けられる。特に、温度センサ218への入力は、回路基板340内に設置された複数の貫通孔バイア410に熱的に接続される。貫通孔バイアは、熱的および/または電気伝導性材料が置くことが可能であり、それによって、回路基板340の一方の側から他方の側への熱エネルギーおよび/または電気エネルギーの伝達を可能にする、回路基板340内の小さな垂直方向開口または経路である。貫通孔バイア410の下にあるのは、搭載フレーム330(搭載フレーム・アパーチャを形成するために)を通っておよびワイヤレス・センサ102の底面基部310を通って延びるアパーチャまたは開口404である。アパーチャ404は、ワイヤレス・センサ102が患者によって装着されるとき、温度センサ218から患者の皮膚へのアクセスを提供する。アパーチャ404および貫通孔バイア410は、熱伝導性材料402で満たされる。熱伝導性材料は当技術分野でよく知られており、いくつかの例を挙げると、非限定的な例として、熱伝導性エラストマー、ポリマー、および樹脂があり得る。例示的に、動作時、ワイヤレス・センサ102は患者の皮膚に固定される。患者の皮膚に対して露出された熱伝導性材料402は、温度センサ218に対する入力に到達するように、熱エネルギーを患者の身体からアパーチャ404および貫通孔バイア410を通して送信する。
【0113】
有利には、開示されるワイヤレス・センサ102は、深部組織温度が皮膚表面から測定可能である技法を使用して、温度センサ218を用いて患者の中核体温(確立された有用なバイタル・サイン)を測定することができる。人体では、中核温度は、一般的には皮膚表面の温度よりも高い温度であるので、中核と皮膚表面との間に自然な熱流束がある。したがって、熱は、中核から皮膚に流れる。皮膚温度が測定されるポイントにおいて、およびそのまわりで皮膚表面を絶縁する-それによって、熱が逃げるのを遮る-ことによって、中核と皮膚表面との間の温度勾配が減少する。皮膚温度は、絶縁されたエリア下では、絶縁下で最も温かい領域(すなわち、中核)との平衡状態に達するまで上昇し、それによって、中核温度に近づく。平衡状態に達すると、皮膚温度は中核体温に等しい。有利には、温度センサ218のまわりで患者の皮膚と接触する、ワイヤレス・センサ102の底面基部310および上面基部360は、熱絶縁性を所有する。例示的に、非限定的な例として、底面基部310および上面基部360は、ポリウレタン・フォーム、ポリスチレン・フォーム、ネオプレン・フォーム、ネオプレン・ゴム、ポリエステル(Mylar)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン・フォーム、シリコーン・ゴムなどを含む熱絶縁材料から作製可能である。したがって、温度センサ218は、患者の中核体温を測定することができる。
【0114】
図4Cは、
図4Aおよび
図4Bの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略拡大斜視図である。図示のように、温度センサ218は、回路基板340の上部表面上に搭載される。アパーチャ404は、搭載フレーム330および底面基部310を通って延び、貫通孔バイア410(
図4Cには図示せず)および温度センサ218と垂直方向に位置合わせされる。アパーチャ404および貫通孔バイア410は、熱伝導性材料402で満たされる。したがって、開示される構造は、患者の皮膚と温度センサ218との間の熱的接続性を提供する。
【0115】
次に
図5Aおよび
図5Bを参照すると、音響呼吸センサ220を含むワイヤレス・センサ102の一実施形態が開示されている。
図5Aは、音響呼吸センサ220を含む開示されるワイヤレス・センサ102の組み立てられた実施形態を示す、
図3Cの線A-Aに沿って断面図が作成された、概略断面図である。より簡単に見えるようにするため、バッテリ・アイソレータ320およびバッテリ・ホルダ342は、示されない。
図5Bは、
図5Aの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。底面基部310の底部表面が示されている。底面基部310の底部表面に対するハウジング350の位置を示す切り欠き部362の輪郭も、想像線(すなわち、点線)で示されている。
【0116】
図5Aに示されるように、音響呼吸センサ220は、バッテリ214の下に搭載される。動作上、音響呼吸センサ220は、患者の身体(たとえば、患者の胸部)から生ずる振動運動を検出し、検出された振動運動を加速度計210に機械的に送信する。加速度計210は、機械的に送信された振動運動を感知する。加速度計210によって収集された信号は、他の感知された加速度信号から振動運動を抽出するために処理可能である。そのような振動運動の例は、限定するものではないが、心拍、呼吸活動、咳嗽、喘鳴音、いびき、窒息、および気道閉塞(たとえば、無呼吸イベント)があり得る。感知された振動運動を効果的に機械的に送信するために、音響呼吸センサ220は、加速度計210と堅固な構造上の接触をする。これを達成するために、音響呼吸センサ220は、バッテリ214の底部側面に搭載される。特に、音響呼吸センサ220は、バッテリ214の底部表面と底面基部310との間に挟まれるリム221を含む。したがって、リム221は、音響呼吸センサ220をバッテリ214の底部表面に堅固に固着する働きをする。
【0117】
図5Aに示されるように、音響呼吸センサ220は、底面基部310によって作られる平面を越えて、底面基部310内のアパーチャまたは開口502を通って突き出す。これは、音響呼吸センサ220が、患者から生ずる振動運動を感知するように、患者の身体(たとえば、胸部)と直接接触することを保証することである。音響呼吸センサ220の中は、ワイヤが振動運動にさらされたとき、ワイヤが、感知された振動運動の周波数と大きさの両方に関して感知された振動運動に比例する様式で振動するようにわずかに張力がかかった、可撓性ワイヤまたは他のそのような構造である。音響呼吸センサ220は、感知された振動運動をワイヤレス・センサ102の剛性構造を通して送信するように構成され、したがって、送信された振動運動は、加速度計210によって感知される。剛性構造としては、バッテリ214および回路基板340がある。
【0118】
図5Cは、
図5A~
図5Bの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略拡大斜視図である。図示のように、加速度計210は、回路基板340の下に固着されたバッテリ214の上で回路基板340の上部表面上に搭載される。音響呼吸センサ220(
図5Cには図示せず)は、バッテリ214と底面基部310との間に嵌まる。アパーチャ502は、音響呼吸センサ220がワイヤレス・センサ102の剛性構造に固着されるように、底面基部310を通って延び、バッテリ214と垂直方向に位置合わせされる。したがって、開示される構造は、音響呼吸センサ220が患者の胸部からの振動運動を加速度計210に機械的に送信する能力を提供する。
【0119】
図6A~
図6Cは、温度センサ218と音響呼吸センサ220とを含む開示されるワイヤレス・センサ102の一実施形態を示す。
図6Aは、温度センサ218と音響呼吸センサ220とを含む開示されるワイヤレス・センサ102の組み立てられた実施形態を示す、
図3Cの線A-Aに沿って断面図が作成された、概略断面図である。より簡単に見えるようにするため、バッテリ・アイソレータ320およびバッテリ・ホルダ342は、示されない。
図6Bは、
図6Aの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。
図6Cは、
図6Aおよび
図6Bの開示されたワイヤレス・センサ102の実施形態の概略拡大斜視図である。
【0120】
構造的に、
図6A~
図6Cに示される実施形態は、
図4A~
図4Cと
図5A~
図5Cに示される実施形態の組み合わせである。
図6A~
図6Bに示されるように、温度センサ218は、回路基板340の上に搭載される。以前に説明されたように、温度センサ218への入力は、回路基板340内に設置された複数の貫通孔バイア410に熱的に結合される。貫通孔バイア410の下にあるのは、搭載フレーム330を通って、およびワイヤレス・センサ102の底面基部310を通って延びるアパーチャ404である。アパーチャ404は、ワイヤレス・センサ102が患者によって装着されるとき、温度センサ218から患者の皮膚へのアクセスを提供する。アパーチャ404および貫通孔バイア410は、熱伝導性材料402で満たされる。動作時、ワイヤレス・センサ102は患者の皮膚に固定される。患者の皮膚に対して露出された熱伝導性材料402は、温度センサ218に対する入力に到達するように、熱エネルギーを患者の身体からアパーチャ404および貫通孔バイア410を通して送信する。
【0121】
図6A~
図6Bにも示されるように、音響呼吸センサ220は、バッテリ214の下に搭載される。特に、音響呼吸センサ220は、バッテリ214の底部表面と底面基部310との間に挟まれるリム221を含む。したがって、リム221は、音響呼吸センサ220をバッテリ214の底部表面に堅固に固着する働きをする。音響呼吸センサ220は、底面基部310によって作られる平面を越えて、底面基部310内のアパーチャ502を通って突き出す。音響呼吸センサ220は、患者から(たとえば、患者の胸部から)感知された振動運動をワイヤレス・センサ102の剛性構造を通して送信するように構成され、したがって、送信された振動運動は、加速度計210によって感知される。剛性構造としては、バッテリ214および回路基板340がある。
【0122】
図6Cは、
図6Aおよび
図6Bの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略拡大斜視図である。図示のように、温度センサ218は、回路基板340の上部表面上に搭載される。アパーチャ404は、搭載フレーム330および底面基部310を通って延び、貫通孔バイア410(
図4Cには図示せず)および温度センサ218と垂直方向に位置合わせされる。アパーチャ404および貫通孔バイア410は、熱伝導性材料402で満たされる。加えて、加速度計210は、回路基板340の下に固着されたバッテリ214の上で回路基板340の上部表面上に搭載される。音響呼吸センサ220(
図6Cには図示せず)は、バッテリ214と底面基部310との間に嵌まる。いくつかの実施形態では、音響呼吸センサ220は、音響呼吸センサ220、搭載フレーム330、バッテリ214、および回路基板340が、音響呼吸センサ220によって感知された振動運動を回路基板340上に搭載された加速度計210に機械的に送信することが可能である剛性構造を形成するような様式で、搭載フレーム330に当接する。アパーチャ502は、音響呼吸センサ220がワイヤレス・センサ102の剛性構造に固着されるように、底面基部310を通って延び、バッテリ214と垂直方向に位置合わせされる。したがって、開示される実施形態は、患者の皮膚と温度センサ218との間の熱接続性と、音響呼吸センサ220が患者の胸部からの振動運動を加速度計210に機械的に送信する能力を提供する。
【0123】
有利には、
図6A~
図6Cに開示されている実施形態は、とりわけ、3つのバイタル・サイン、すなわち、中核温度、脈拍数、および呼吸数、を提供することが可能である。バイタル・サインは、身体の最も基本的な機能の測定値であり、患者のステータスをアセスメントしモニタリングするために医療提供者によって日常的に使用される。患者の中核体温は、温度センサ218によって提供可能である。患者の脈拍数および呼吸数は、加速度計210と組み合わせた音響呼吸センサ220によって提供可能である。
【0124】
図7A~
図7Fを参照すると、心電図(ECG)センサ222を含む開示されるワイヤレス・センサ102の一実施形態が示されている。回路基板に搭載するのに適したチップ規模および/または構成要素規模のECGセンサが、当技術分野で知られている。例示的に、非限定的な例として、いくつかの例を挙げると、ソリッド・ステートECGセンサが、Texas InstrumentsおよびPlessy Semiconductors Ltd.によって提供されている。
図7Aは、ハウジング350から延びるECGリード線706を含むECGセンサ222を有する、開示される患者により装着されたワイヤレス・センサ102の実施形態の斜視図である。ワイヤレス・センサ102は、
図7Aに示されるように、たとえば、胸骨柄上で、患者の胸部に接着される。ECGリード線706は、ワイヤレス・センサ102のハウジング350から、患者の心臓によって生成された電気信号を感知するのに適した、患者の胸部上の部位に延びる。ECGリード線706は、動作時に患者の胸部に接着されるECG電極707と電気通信する。ある実施形態では、ECG電極707は、接着剤付きパッドの中間に埋め込まれた導電性ゲルを含む。ECG電極707は、患者の胸部からの電気信号を感知し、感知された信号を、リード線706を介して、ECGセンサ222に送信する。電極707は、患者の皮膚に接着し、それからの電気信号を感知する。当業者は、ECG電極の多くの構造、形式、およびフォーマットが当技術分野でよく知られており、ECG電極707を実施するために使用可能であることを諒解するであろう。
【0125】
図7Aに示されるように、ECGリード線706は、ワイヤレス・センサ102が設置されたところから、心臓を横切って、患者の胸部の左側に対してある位置に延びる。同じく患者の皮膚と接触する別のECG電極702(以下で説明される)が、底面基部310においてハウジング350の下に形成される。したがって、ベクトルが、ECGリード線電極707と患者の心臓の電気信号が感知可能であるECG電極702との間に形成される。例示的に、電極702および707が
図7Aに示されるように配置されるとき、ECGセンサ222は、標準的な12リード線ECGのリード線Iまたはリード線II上で検出されるECG信号に形態が類似したECG信号を感知することができる。
【0126】
図7Bは、
図7Aの開示されたワイヤレス・センサ102の実施形態の概略組み立て斜視図である。ECGリード線706は、回路基板340上に搭載されたECGセンサ222(
図7Dに示される)に接続される。
図7Bに示されるように、ECGリード線は、ハウジング350を通って、使用中でないときECGリード線706をコイルの形で格納するロック可能で引き込み可能なリール708に延びる。ECGリード線706は、リール708から延びて、所望の位置にロック可能であり、それによって、ECGリード線電極707の、患者の胸部上の所望の部位における留置を可能にする。いくつかの実施形態では、ロッキング機構は、引っ張り力をリード線706に加えることによって、係合および分離される。ロック可能で引き込み可能なリールのさまざまな形態およびバージョンは、当技術分野でよく知られており、リール708を実施するために使用されてよい。
【0127】
図7Cは、
図7Aおよび
図7Bの組み立てられたワイヤレス・センサ102の実施形態の概略側面図を提供し、断面線B-Bが識別される。
図7Dは、線B-Bに沿って断面図が作成された、
図7A~
図7Cの実施形態の断面図である。
図7Dに示されるように、ECGセンサ222は、回路基板340の上に搭載される。その感知機能を実行するために、ECGセンサ222は、患者の皮膚上の少なくとも2つのポイントと電気的に接触する。この目的を達成するために、2つの電極702および707が設けられる。ECG電極707については上記で説明してきたが、ECG電極702の説明は本明細書において続く。
【0128】
ECG電極702は、ワイヤレス・センサ102の底面基部310内に設置される。ECGセンサ222への入力は、回路基板340内に設置された複数の貫通孔バイア710に電気的に接続される。以前に説明したように、貫通孔バイアは、電気的伝導性材料が置くことが可能であり、それによって、回路基板340の一方の側から他方の側への電気信号の送信を可能にする、回路基板340内の小さな垂直方向開口または経路である。貫通孔バイア710の下は、搭載フレーム330(搭載フレーム・アパーチャを形成するために)を通っておよびワイヤレス・センサ102の底面基部310を通って延びるアパーチャまたは開口704である。アパーチャ704は、ワイヤレス・センサ102が患者によって装着されるとき、ECGセンサ222から患者の皮膚へのアクセスを提供する。アパーチャ704および貫通孔バイア710は、ECG電極702を形成するために、電気的伝導性材料で満たされる。電気的伝導性材料は当技術分野でよく知られており、いくつかの例を挙げると、非限定的な例として、電気的伝導性シリコーン、エラストマー、ポリマー、エポキシ、および樹脂があり得る。動作時に、ワイヤレス・センサ102は、患者の皮膚およびECG電極702に固定され、患者の皮膚に対して露出され、患者の皮膚表面からの電気信号を感知し、ECGセンサ222に対する入力に到達するようにアパーチャ704および貫通孔バイア710を通して送信する。
【0129】
図7Eは、
図7A~
図7Dの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。底面基部310の底部表面が示されている。底面基部310の底部表面に対するハウジング350の位置も示す切り欠き部362と、ロック可能で引き込み可能なリール708の輪郭も、想像線(すなわち、点線)で示されている。ECG電極702も、患者の皮膚と接触するように配置されると示されている。いくつかの実施形態では、ECG電極は、電極-皮膚インタフェースを改善するために導電性ゲルで塗布されることがある。
【0130】
図7Fは、
図7A~
図7Eの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略拡大斜視図である。図示のように、ECGセンサ222は、回路基板340の上部表面上に搭載される。アパーチャ704は、搭載フレーム330および底面基部310を通って延び、貫通孔バイア710(
図7Fには図示せず)およびECGセンサ222と垂直方向に位置合わせされる。アパーチャ704および貫通孔バイア710は、電極702を形成するために、電気的伝導性材料で満たされる。したがって、開示される構造は、患者の皮膚とECGセンサ222との間の電気的接続性を提供する。
【0131】
図8Aは、温度センサ218と、音響呼吸センサ220と、ECGセンサ222とを有する、開示されたワイヤレス・センサの一実施形態の概略拡大斜視図である。
図8Bは、
図8Aの開示されたワイヤレス・センサの概略底面図である。構造的に、
図8A~
図8Bに示される実施形態は、
図4A~
図4Cおよび
図5A~
図5Cおよび
図7A~
図7Fに示される実施形態の組み合わせである。
図8A~
図8Bに示されるように、温度センサ218は、回路基板340の上に搭載される。以前に説明されたように、温度センサ218への入力は、回路基板340内に設置された複数の貫通孔バイア410に熱的に結合される。貫通孔バイア410の下にあるのは、搭載フレーム330を通って、およびワイヤレス・センサ102の底面基部310を通って延びるアパーチャ404である。アパーチャ404は、ワイヤレス・センサ102が患者によって装着されるとき、温度センサ218から患者の皮膚へのアクセスを提供する。アパーチャ404および貫通孔バイア410は、熱伝導性材料402で満たされる。
【0132】
音響呼吸センサ220は、バッテリ214の下に搭載され、バッテリ214の底部表面と底面基部310との間に挟まれたリム221によって所定の位置に保持される。したがって、リム221は、音響呼吸センサ220をバッテリ214の底部表面に堅固に固着する働きをする。音響呼吸センサ220は、底面基部310によって作られる平面を越えて、底面基部310内のアパーチャ502を通って突き出す。音響呼吸センサ220は、ワイヤレス・センサ102の剛性構造を通して患者から(たとえば、患者の胸部から)感知された振動運動を送信し、したがって、送信された振動運動は、加速度計210によって感知される。それを通して振動運動が送信される剛性構造としては、バッテリ214および回路基板340がある。
【0133】
ECG電極702は、ワイヤレス・センサ102の底面基部310内に設置される。ECGセンサ222への入力は、回路基板340内に設置された複数の貫通孔バイア710に電気的に結合される。貫通孔バイア710の下にあるのは、搭載フレーム330を通って、およびワイヤレス・センサ102の底面基部310を通って延びるアパーチャまたは開口704である。アパーチャ704は、ワイヤレス・センサ102が患者によって装着されるとき、ECGセンサ222から患者の皮膚へのアクセスを提供する。アパーチャ704および貫通孔バイア710は、ECG電極702を形成するために、電気的伝導性材料702で満たされる。
【0134】
動作時に、ワイヤレス・センサ102は、患者の皮膚に固定される。患者の皮膚に対して露出された熱伝導性材料402は、温度センサ218に対する入力に到達するように、熱エネルギーを患者の身体からアパーチャ404および貫通孔バイア410を通して送信する。音響呼吸センサ220は、患者からの振動運動を感知し、その振動運動を、回路基板上に搭載された加速度計210に機械的に送信する。さらに、患者の皮膚に対して露出されたECG電極702および707は、患者の皮膚表面からの電気信号を感知し、ECGセンサ222への入力に到達するように送信する。
【0135】
図8Bは、
図8Aの開示されたワイヤレス・センサの実施形態の概略底面図である。底面基部310の底部表面が示されている。切り欠き部362とロック可能で引き込み可能なリール708の輪郭も、想像線(すなわち、点線)で示されている。3つのセンサ・アクセス点が
図8Bに示されている。熱伝導性材料402は、患者の皮膚から熱エネルギーが送信される経路を、回路基板340上に搭載された温度センサ218に提供する。音響呼吸センサ220は、患者から生ずる感知された振動運動を回路基板340上に搭載された加速度計210に機械的に送信するように患者の皮膚と直接接触し、加速度計210と堅固な構造上の接触をする。さらに、ECG電極702は、患者の皮膚からの電気信号が、回路基板340上に搭載されたECGセンサ220に送信される経路を提供する。
【0136】
上記で論じられたように、ワイヤレス・センサ102の実施形態は、要素の中でもとりわけ、加速度計210、音響呼吸センサ220、熱センサ218、および/またはECG電極707を含むECGセンサ220を含むことができる。本明細書において説明されるさまざまな実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、患者の皮膚と接触して、さまざまなモニタリング機能および感知機能を実行することができる。たとえば、ワイヤレス・センサ102は、加速度計210、音響呼吸センサ220、熱センサ218、および/またはECGセンサ222が患者の皮膚に対して露出可能であるように、患者の皮膚に固定可能である。
【0137】
本明細書において説明される実施形態は、たとえば、患者の胸部上など、患者の身体上に配置されてよいが、ワイヤレス・センサ102は、
図17Aおよび
図17Bに示されるように、患者の背部上など、患者の身体のさまざまな部分に固定可能またはこの上に置くことが可能である。ワイヤレス・センサ102は、パラメータの中でもとりわけ、温度、振動、移動、または鼓動を示す信号を受信するおよび/または測定することができる。
【0138】
特に、ワイヤレス・センサ102は、患者の背部の患者の肩甲骨の間に置かれてもよいし、患者の背部の他の部分の間に置かれてもよい。いくつかの構成では、ワイヤレス・センサ102は、マットレスと関連づけられないことがある。たとえば、加速度計210を含むワイヤレス・センサ102は、たとえば、患者の背部上などの、患者のたるんだ(loose)組織が一般的には示度の正確さを著しく変えない、患者の部位に置かれることがある。ワイヤレス・センサ102は、他方の肩甲骨よりも一方の肩甲骨に近く置かれることがある。ワイヤレス・センサ102は、患者の肩甲骨の間のほぼ中央に置かれることがある。いくつかの構成では、ワイヤレス・センサ102は、患者の背部の患者の肩甲骨の間の任意の位置に固定可能であり、または患者の下背部などの患者の背部の他の任意の位置に固定可能である。いくつかの例では、加速度計のみが患者の皮膚に対して露出され、患者の背部に置かれる。いくつかの構成では、ワイヤレス・センサ102は、患者の身体の別の部分に固定可能である。
【0139】
多くの例では、たるんだ組織をほとんどもたない患者の背部におけるセンサ102の留置は、有利には、ワイヤレス・センサ102によって測定される測定値の正確さを増加させることがある。いくつかの実施形態では、たるんだ組織をほとんどもたない患者の背部におけるセンサ102の留置は、有利には、少なくともワイヤレス・センサ102の加速度計によって測定される測定値の正確さを増加させることがある。いくつかの実施形態では、肩甲骨の間などの患者の背部は、センサ102が配置可能である平坦な表面を提供することができる。
【0140】
より大きな胸部または胸部上のたるんだ組織を有する患者などの、ある患者では、加速度計を含むワイヤレス・センサ102は、患者が移動するとき、誤った示度を提供することがある。あるそのような場合、ワイヤレス・センサ102は、位置もしくは体位の大きな変更なしでも、または著しい患者の移動なしでも、誤った示度または測定値を提供することがある。たとえば、ワイヤレス・センサ102が、いく人かの患者において、患者、または胸部などの、患者の大量のたるんだ組織を有する身体の部分の上に置かれたとき、患者による体位または位置の些細な変更でさえ、ワイヤレス・センサ102に誤った示度を提供させる場合がある。誤った示度は、患者の皮膚が折り重なったまたは患者の身体とは異なる方向に移動したときを含めて、患者がターンしないまたはわずかにターンした場合でも、たるんだ組織上でのワイヤレス・センサ102または加速度計の移動または回転から生じることがある。いくつかの例では、誤った示度は、患者の皮膚(たとえば、たるんだ組織)(またはワイヤレス・センサおよび/もしくは加速度計が固定された身体の他の部分)が折り重なる、または患者の身体の残りの部分よりも大きな量、小さい量、もしくは異なる量移動すると、発生する場合がある。したがっていくつかの例では加速度計210を含む、ワイヤレス・センサ102を患者の背部に置くことによって、ワイヤレス・センサ102は、より正確な示度を提供することがある。そのような構成は、望ましくは、患者が睡眠中のときなどに、さまざまなパラメータをより正確に測定することができる。
【0141】
ワイヤレス・センサ102およびワイヤレス・センサ102の構成要素の数多くのサイズおよび形状が本明細書において説明されるが、ワイヤレス・センサ102は、有利には患者の背部上に配置され、最小限の不快感を患者にもたらすような形状およびサイズにされてよい。たとえば、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102が患者の背部に置かれたときにワイヤレス・センサ102が不快感を患者にもたらさないまたは最小限の不快感のみを患者にもたらすように、センサ102が十分に薄いような形状およびサイズにされてよい。いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサ102のフォーム・ファクタは、一般的なセンサよりも小さいことがある。いくつかの構成では、患者の身体の他の領域よりも感受性が低いことが可能である、患者の背部の一部分(たとえば、肩甲骨の間)に置かれたセンサ102は、患者に最小限の不快感をもたらすまたは不快感をもたらさないことができる。いくつかの実施形態では、患者は、センサ102が、患者の肩甲骨の間などの、少なくとも患者の背部の一部分の上に配置されたとき、センサ102を感じるまたは最小限に感じることはできない。
【0142】
いくつかのシナリオでは、他のワイヤレス・デバイスからの干渉を回避するため、および/または患者固有情報(たとえば、患者モニタ106上に記憶された)をワイヤレス・センサ102によって収集され送信中であるセンサ・データと関連づけるために、ワイヤレス・センサ102をベッドサイド患者モニタ106とペアにするまたは関連づけることが望ましい場合がある。例示的に、そのような患者固有情報としては、非限定的な例として、患者の名前、年齢、性別、体重、識別番号(たとえば、社会保障番号、保険番号、病院識別番号など)、入院日、滞在の長さ、医師の名前および連絡先情報、診断、治療のタイプ、灌流速度、水和、栄養、褥瘡性潰瘍形成リスク・アセスメント、患者ターン・プロトコル指示、治療計画、ラボ結果、健康スコア・アセスメントなどがあり得る。当業者は、数多くのタイプの患者固有情報が、本開示の範囲から逸脱することなく、説明される、患者により装着されたセンサと関連づけ可能であることを諒解するであろう。加えて、ワイヤレス・センサ102を患者モニタ106とペアにすることは、データ・セキュリティを提供するため、および患者秘匿性を保護するために実行可能である。いくつかのワイヤレス・システムは、ケア提供者が、正しい患者モニタ106と通信するようにワイヤレス・センサ102をプログラムすることを必要とする。他のワイヤレス・システムは、ワイヤレス・デバイス102を正しいベッドサイド患者モニタ106とペアにするために、別個のトークンまたは暗号鍵およびいくつかのステップを必要とする。いくつかのシステムは、トークンが、ベッドサイド患者モニタ106に接続され、次いでワイヤレス・デバイス102に接続され、さらに次いでベッドサイド患者モニタ106に再接続されることを必要とする。あるシナリオでは、別個のトークンまたは暗号鍵なしでワイヤレス・センサ102とベッドサイド患者モニタ106との間のワイヤレス通信情報を共有することが望ましいことがある。セキュリティの目的では、セキュリティ・トークンを使用して、正しいベッドサイド患者モニタ106が、ワイヤレスで送信された正しいデータを受信することを保証することが望ましいことがある。セキュリティ・トークンは、ワイヤレス・センサ102とベッドサイド患者モニタ106が同じパスワードを共有しない限り、ベッドサイド患者モニタ106が、送信されたデータにアクセスすることを防止する。パスワードは、単語であってもよいし、パスフレーズであってもよいし、ランダムに選ばれたバイトの配列であってもよい。
【0143】
図9は、「ペアリング」と呼ばれることがある、ワイヤレス・センサ102を患者モニタ106と関連づける例示的な方法を示す。ブロック902では、ワイヤレス・センサ102は、ペアリング・モードで動作するように設定される。一実施形態では、使用者は、ワイヤレス・センサ102のためのペアリング動作モードを始める。これは、ワイヤレス・センサ102の電源を投入すること、ワイヤレス・センサ102を特殊なペアリング状態に切り換えることなどを含んでよい。たとえば、ある実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、取り外されるときワイヤレス・センサ102をアクティブ化するバッテリ・アイソレータ320を含むことがある。アクティブ化されると、デフォルト動作モードはペアリング・モードである。いくつかの実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102をアクティブ化し、それをペアリング動作モードにするために使用可能であるボタン/スイッチ324を有することがある。たとえば、押すことができるボタン/スイッチ324は、ハウジング350の上部部分上に設置可能である。ボタン/スイッチ324が押され、連続的に押し下げられるとき、ワイヤレス・センサ102は、ペアリング動作モードに入り、ボタン/スイッチ324が押されている限りペアリング動作モードのままでいる。
【0144】
ブロック904に反映されるように、ワイヤレス・センサ102は、患者モニタ106とペアにするまたは関連づける準備が整っていることを示すペアリング信号を送信する。いくつかの実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102のワイヤレス・トランシーバ206は、限られたペアリング信号送信範囲を有する低電力ペアリング信号を発するように構成される。この限られたペアリング信号送信範囲は、ワイヤレス・センサ102の近くにあってよいがワイヤレス・センサ102とペアにされることは意図されていない患者モニタ106との、ワイヤレス・センサ102の意図しないまたは偶発的な関連づけを防止する助けとなる。そのような環境は、患者、センサ102患者モニタ106が互いに物理的にごく近傍に設置される、病院、ヘルスケア施設、ナーシング・ホームなどにおいて発生することがある。ある実施形態では、低電力ペアリング信号は、最高約3インチのペアリング信号送信範囲を有する。他の実施形態では、低電力ペアリング信号は、最高約6インチのペアリング信号送信範囲を有する。他の実施形態では、低電力ペアリング信号は、最高約1フィート(すなわち、12インチ)のペアリング信号送信範囲を有する。当業者は、他の範囲がペアリング信号送信範囲に使用可能であることを認識するであろう。
【0145】
次に、ブロック906において、患者モニタ106は、ペアリング信号送信範囲内にあるとき、ワイヤレス・センサ102からペアリング信号を受信する。ペアリング信号の検出時、患者モニタ106は、ブロック908において、ワイヤレス・センサ102と関連づけられ、それによって、ワイヤレス・センサ102および患者モニタ106を互いと通信するように構成する。ペアリングが完了すると、患者モニタ106は、ブロック910に反映されるように、患者により装着されたセンサ102が患者モニタ106と関連づけられたことを確認し、それによってペアリング・プロセスが正常に完了したことを示す、確認信号を送信する。ブロック912では、ワイヤレス・センサ102が、確認信号を受信する。そしてブロック914では、ワイヤレス・センサ102は、ペアリング動作モードを出て、患者パラメータ感知動作モードに入る。患者パラメータ感知動作モードでは、患者により装着されたセンサ102は、患者パラメータ感知信号送信範囲を有する患者パラメータ感知信号を送信する。ワイヤレス・センサ102は、患者パラメータ感知信号送信範囲のパワーを、たとえば約3メートルなどの標準的な動作範囲に増加させる。いくつかの実施形態では、患者パラメータ感知信号送信範囲は、約10フィートである。いくつかの実施形態では、患者パラメータ感知信号送信範囲は、約30フィートである。ある実施形態では、ペアリング信号送信範囲は、約3インチから12インチの間であり、患者パラメータ感知信号送信範囲は約10フィートである。そのような実施形態では、ペアリング信号送信範囲と患者パラメータ感知信号送信範囲との間に、少なくとも1桁の差がある。したがって、ペアリング信号送信範囲は、患者パラメータ感知送信範囲よりもかなり小さい。ワイヤレス・センサ102が患者パラメータ感知動作モードに入ると、ワイヤレス・センサ102は、感知機能およびモニタリング機能を実行するために患者上に置かれる状態にある。
【0146】
ある実施形態では、エクステンダ/リピータ107は、患者モニタ106よりもではなくワイヤレス・センサ102と通信するために使用される。ブースタ/リピータとのペアリングは、上記で
図9に関して説明された同じ様式で実行されてよい。
【0147】
ある実施形態によれば、開示される患者モニタリング・システム100は、とりわけ、患者の体位の変更を検出することによって、およびどれくらい長く患者が現在の体位にあるままであるかを判断することによって、1つまたは複数の褥瘡性潰瘍を形成するリスクがある患者を管理する助けとなる。有利には、システム100は、いつ患者が位置変更されたかを検出し、患者がその新しい体位にあるままである継続時間を計り始めることができる。したがって、患者がケア提供者の観察なしに単独で位置変更する場合、モニタリング・システム100は、位置変更イベントを検出し、タイマを再起動することができる。
【0148】
患者モニタリング・システム100は、患者のための、臨床医により確立されたターニング・プロトコルの執行を助けることができる。たとえば、患者が、あらかじめ定義された、臨床医により定められた継続時間を越えて体位にあるままである場合、システム100は、患者が位置変更されるべきであることを患者および/または看護者に通知することができる。ワイヤレス・センサ102は、患者の体位(たとえば、加速度データ)を示すセンサ情報を取得し、感知されたデータを前処理して、それを、たとえば患者モニタ106などの測定データを処理することが可能である処理デバイスに送信する。測定データを処理することが可能である他のデバイスとしては、限定するものではないが、臨床医デバイス114、ナース・ステーション・システム113、マルチ患者モニタリング・システム110、専用処理ノードなどがある。図を簡略化するため、本明細書における説明は、処理デバイスについて患者モニタ106と説明する。しかしながら、当業者は、多数の処理デバイスが、本開示の範囲から逸脱することなく、説明された機能を実行するために使用されてよいことを諒解するであろう。
【0149】
患者モニタ106は、受信されたデータを記憶し、患者の体位を決定するためにさらに処理する。いくつかの実施形態によれば、患者モニタ106は、患者が立っているか、座っているか、または腹臥位、仰臥位、左側臥位、もしくは右側臥位で横たわっているかを判断することができる。患者モニタ106は、決定された体位情報を記憶し、どれくらい長く患者が各決定された体位にあるままであるかを把握し、それによって、患者の位置履歴の連続的な記録を作成することができる。ある実施形態では、ワイヤレス・センサ102から受信された情報は、患者の位置履歴の時間順に並べられた表現を作成するために使用可能である。この表現は、介護者がベッド内の患者の位置をモニタリングするために、患者モニタ106上に表示されるまたはナース・ステーションもしくは他の処理ノードに送信されることが可能である。時間順に並べられた表現は、リアル・タイムで見ることが可能であるおよび/または再生のためにアクセス可能である。たとえば、アラームが、患者が現在の体位にあるままでいる時間の最大量を超えたというアラートを介護者に出す場合、介護者は、患者が位置変更され得る次の体位を決定するその時間の期間の前およびその間に、患者の体位の履歴シーケンスにアクセスし、検討することができる。いくつかの実施形態では、システム100は、患者が位置変更され得る体位を提案する。
【0150】
例示的に、患者モニタ106は、患者によって実行されたベッド内ターンの数をカウントし、患者が最後にターンして以降経過した時間の量を表示する。経過時間が、臨床医により定義された継続時間(たとえば、2時間)を超えたとき、患者モニタ106は、患者のターン間の最大時間が超えられたという標識を表示する。患者モニタ106は、たとえば、マルチ患者モニタリング・システム110、臨床医通知デバイス114などを介して、患者をケアすることを担当する臨床医に通知を送信することもできる。患者モニタ106は、たとえば24時間などの、所与の、臨床医により定義された時間期間にわたるターン間の時間の平均量、最小量、および最大量などの統計情報を決定し、表示することもできる。患者モニタ106は、臨床医により定義された時間の期間にわたる同じ体位における患者のターンの数を決定し、表示することもできる。同様に、患者モニタ106は、臨床医により定義された期間内に患者が各特定の体位にあるままであった時間の総量を表示することができる。さらに、患者モニタ106は、患者が臨床的に定義された許容できる体位にあるままであった期間の頻度および継続時間を決定することができる。
【0151】
本開示のいくつかの実施形態では、患者モニタ106は、ネットワーク108を介して患者の健康記録および臨床医による入力にアクセスする。例示的に、患者の健康記録に鑑みて分析された患者の位置履歴データは、特定の患者に対する有利な臨床的転帰をもたらす可能性が高いターニング・プロトコル(または他の治療プロトコル)を明らかにするまたは提案することがある。したがって、患者モニタ106は、ワイヤレス・センサ102から受信された情報に関連した、アクセスされた情報を分析して、患者に推奨される患者ターン・プロトコル(または他の治療プロトコル)を決定する。
【0152】
本開示のいくつかの実施形態によれば、患者モニタ106は、患者のために確立された、臨床医により定義されたターニング・プロトコルに関する介護者および施設の遵守をアセスメントする。たとえば、患者モニタ106は、定められた継続時間よりも長い期間にわたって患者がある位置にあるままである時間の数、ならびに各そのような過剰露出の長さを識別することができる。患者モニタ106は、通知、アラート、またはアラームの発行と、臨床医応答時間に対応する、発行をトリガしたイベントに応答してとられる行動との間の時間を追跡することもできる。
【0153】
図10は、本開示の一実施形態による、ベッド内の患者の体位を推定し、モニタリングする方法1000を示す。方法1000はまた、いつ患者が体位を変更したかを識別し、患者がその体位で費やした時間の量を把握する。決定され得る患者の体位としては、限定するものではないが、患者が腹臥しているか、仰臥しているか、左側を下にしているか、右側を下にしているか、座っているか、横たわっているかがあり得る。いくつかの実施形態では、患者モニタ106は、患者の身体の精密な体位を決定する。たとえば、患者モニタ106は、患者の身体が垂直方向および/または水平方向に傾斜している程度を決定し、それによって、患者が横たわる支持構造(ベッドなど)に対する患者の体位の正確な説明を生成することができる。
【0154】
本開示の一実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102の加速度計210からの測定値は、患者の体位を決定するために使用される。加速度計210は、重力に対する患者の直線加速度を測定する。いくつかの実施形態では、加速度計210は、3つの軸における直線加速度を測定する。「ロール」と呼ばれる1つの軸は、患者の身体の長手方向軸に対応する。したがって、ロール参照測定値は、患者が腹臥位である(すなわち、うつぶせ)か、仰臥位である(すなわち、仰向け)か、またはある側にあるかを判断するために使用される。加速度計210の別の参照軸は、「ピッチ」と呼ばれる。ピッチ軸は、患者の臀部のまわりの部位に対応する。したがって、ピッチ測定値は、患者が起き上がって座っているか横になっているかを判断するために使用される。加速度計210の第3の参照軸は、「ヨー」と呼ばれる。ヨー軸は、患者が設置される水平平面に対応する。ベッド内にいるとき、患者は、一般にヨー軸に対して患者の体位を固定する表面構造によって支持される。したがって、開示される方法1000のある実施形態では、ヨー測定値は、ベッド内にいるとき、患者の体位を決定するために使用されない。
【0155】
例示的に、説明される方法1000は、加速度計210によって提供されたピッチおよびロールの測定値に基づいて、患者の体位を連続的または周期的に(たとえば、毎秒)決定する。測定値は、経時的に追跡され、現在の測定値は、体位変更イベントが発生したかどうかを判断するために、最近(たとえば、前の数秒)における1つまたは複数の測定値と比較される。
【0156】
方法1000は、本明細書において
図10に関してさらに詳細に説明される。方法1000は、加速度測定データが、たとえば患者モニタ106などの測定データを処理することが可能であるデバイスによってワイヤレス・センサ102から受信されるブロック1002で始まる。測定データを処理することが可能である他のデバイスとしては、限定するものではないが、臨床医デバイス114、ナース・ステーション・システム113、マルチ患者モニタリング・システム110、処理ノードなどがある。図を簡略化するため、本明細書における説明は、処理デバイスについて患者モニタ106と説明する。しかしながら、当業者は、多数のデバイスが、本開示の範囲から逸脱することなく、説明される方法1000を実行するために使用されてよいことを諒解するであろう。
【0157】
加速度測定データは、ワイヤレス・センサ102から患者モニタ106に直接的に提供されてもよいし、測定データは、たとえば、ネットワーク108などのネットワーク上で、エクステンダ/リピータ107によって中継されてもよい。加速度測定データは、最初は、たとえば100Hzなどの、許容できる精度を提供するのに適切なサンプリング・レートでサンプリングされてよい。いくつかの実施形態では、測定されたデータは、ワイヤレス・センサ102のバッテリ214の電力消費を減少させるために、送信される前にワイヤレス・センサ102によってサブサンプリングされる。一実施形態では、加速度測定データは、最初は100Hzでサンプリングされ、その後、送信の目的で、26Hzのレートにダウンサンプリングされる。一実施形態では、加速度測定データは、最初は、約10Hzから約200Hzの間の範囲でサンプリングされ、その後、送信の目的で、約5Hzから約40Hzの間のレートでダウンサンプリングされる。当業者は、多くの他のサンプリング・レートおよびサブ・サンプリング・レートが使用されてよいことを理解するであろう。
【0158】
ブロック1004では、患者モニタ106は、患者の現在の体位を決定する。受信された加速度測定データは、ロール軸およびピッチ軸に対する体位値を決定するために処理される。処理された加速度測定データは、度の単位で提供され、-180度から+180度の範囲に及ぶ。ルックアップ・テーブルは、経験的データに基づいて、ロール測定値とピッチ測定値のペアと患者の体位との間の相関を提供する。例示的に、非限定的な例として、180度のロール測定値は、患者が仰向けであることを意味することができ、0度のピッチ測定値は、患者が横たわっていることを意味することができる。したがって、180度のロール測定値と0度のピッチ測定値の組み合わせは、患者が仰向けに横たわっている体位に対応することができる。同様に、180度のロール測定値と90度のピッチ測定値の組み合わせは、患者が右側を下にして横たわっている体位に対応することができる。
【0159】
図11Aは、本開示の一実施形態による、患者の体位を決定するために使用される経時的に(0秒から450秒まで)処理された加速度計210データの例示的なプロット1100を示す。最初は、たとえば50秒では、ロール(すなわち、身長)軸に対応するデータ1102は、約180度であり、患者が仰向け(すなわち、仰臥した体位)であることを示す。ピッチ(すなわち、臀部回転)軸に対応するデータ1104は約0度であり、患者がリクライニングしていることを示す。したがって、ロール軸に関して加速度計210によって提供された体位情報1102とピッチ軸に関して加速度計210によって提供された体位情報1104を組み合わせると、患者は、仰向けに横たわっていると決定される。垂直線1106によって示されるプロット上の約360秒では、患者が体位を変更したことがわかる。短い転移期間中に、データは、転移点におけるピッチ軸を表すデータ1108および転移点1110におけるロール軸を表すデータに示されるように、変動する。変動は、とりわけ、ある位置から次の位置に移動する間の患者の押し合い(jostling)によって引き起こされることが可能である。その後間もなく、データは、比較的安定したグラフ112および114によって反映されるように、定常状態を達成する。特に、ピッチ軸を示すデータ1102は、約180度から約90度に移動している。これは、患者の右側への、患者の長手方向身体軸の90度回転に対応する。ロール軸を示すデータは、約ゼロ度のままであり、患者がリクライニング位置のままであることを示す。したがって、ロール軸に関して加速度計210によって提供された体位情報1112とピッチ軸に関して加速度計210によって提供された体位情報1114を組み合わせると、患者は、右側を下にして横たわっていると決定される。このように、患者体位変更行動のルックアップ・テーブルが作成可能である。このテーブルは、患者がベッドにいる間にとることができるさまざまな可能な体位のプロファイル(たとえば、ある許容差内での、ピッチ軸測定値とロール軸測定値の組み合わせ)を識別する。患者体位変更行動のプロファイルのテーブルは、収集され分析された経験的データに基づくことが可能である。
【0160】
再度
図10を参照すると、ブロック1006では、前の患者体位決定が、抽出され、現在の体位決定と組み合わされて、患者体位情報の時間窓を形成する。たとえば、時間窓は、たとえば前の数秒などの、患者の体位を示す現在の情報と時間的にごく近接した1つまたは複数の時間期間からの、患者の体位を示す情報を含むことができる。もちろん、任意の数の前の患者体位が、時間窓に選択可能である。一実施形態では、前の2秒のための患者の体位決定が、現在の決定と組み合わされて、患者の体位の3秒の時間窓を作成する。時間窓を作成するための目的は、患者が最近位置変更したかどうかを判断することである。
【0161】
ブロック1008では、時間窓が、分析の目的でセグメントに分割される。任意の数のセグメントが、そのような時間窓データの分析に使用可能である。一実施形態では、時間窓は、3つのセグメントにセグメント化される。別の実施形態では、時間窓は、2つのセグメントにセグメント化される。
図11Aにおいて転移点1108および1110に示されるように、時間窓に使用された測定されたデータが複数のノイズ源を含み、そのうちのいくつかが著しい大きさのスパイクを有することができることが可能である。分析におけるノイズの影響を減少させるために、各セグメントに対するセグメント値が決定される。ブロック1010において開示されるように、各セグメント内のサンプリングされたデータの中央値は、各セグメントに対するセグメント値を決定するために使用される。各セグメントの中央値をとることによって、セグメント値が、潜在的なノイズの多いスパイクの最小限の影響とともに決定される。ある実施形態では、セグメント値は、測定されたデータの各軸に対応する値を含むベクトルである。例示的に、非限定的な例として、各セグメント値は、ロール軸セグメント成分とピッチ軸セグメント成分とを含むベクトルを含む。いくつかの実施形態によれば、決定されるセグメント値および/またはセグメント成分の単位は、-180度から+180度の範囲に及ぶ度の単位である。
【0162】
ブロック1012では、各セグメントの中央値は、ペアワイズ比較される。例示的に、非限定的な例として、3つのセクションにセグメント化される時間窓は、3つのペアワイズ比較、すなわち、第2のセグメント値と比較される第1のセグメント値、第3のセグメント値と比較される第1のセグメント値、および第3のセグメント値と比較される第2のセグメント値、を有するであろう。
【0163】
ブロック1014では、各ペアワイズ比較は、体位変更イベントが発生したかどうかを判断するために分析される。決定は、各ペアワイズ比較の差の大きさを所定の閾値と比較することによってなされる。ペアワイズ比較の差の大きさが閾値を超える場合、体位変更イベントが発生したと考えられる。ペアワイズ比較の差の大きさが閾値を超えない場合、体位の変更は発生しなかったと考えられる。したがって、ロール次元におけるある閾値を超える変更は、患者の身体の長手方向軸のまわりでの回転を含む体位変更イベントに対応する。同様に、ピッチ次元におけるある閾値を超える変更は、起き上がって座っているから横たわっているへの転移またはその逆を含む体位変更イベントに対応する。ロール次元とピッチ次元の両方におけるある閾値を超える変更は、患者の身体の長手方向軸のまわりでの回転と、起き上がって座っているから横たわっているへの転移またはその逆とを含む体位変更イベントに対応する。一実施形態によれば、閾値は45度であり、したがって、任意の2つのセグメント値の間の差の大きさが45度よりも大きい場合、体位変更イベントが発生したと決定される。別の実施形態では、少なくとも30度の変更が発生したかどうかを判断するために、連続するデータの1秒セグメントの間で追加の比較がなされる。これは、たとえば、患者が135度に近い姿勢である、すなわち、2つの姿勢の間の真ん中であるとき、繰り返される姿勢変更を防止するためである。
【0164】
体位変更イベントが発生したと決定された場合、ブロック1016において、検出されたイベントが分類される。体位変更行動または活動のプロファイルのセットを含むイベントのルックアップ・テーブルに対する参照がなされる。一実施形態では、各プロファイルは、4つのデータ・ポイント、すなわち、ロール軸に対する「前」および「後」測定、ならびにピッチ軸に対する「前」および「後」測定、を含む。たとえば、
図11Aに示されるように、仰向けになって横たわるから右側を下にした横たわるへの、ターニングの体位イベント活動のプロファイルは、以下のとおりとすることができる。
【表1】
【0165】
表1に示されるように、ロール軸は、患者が仰向けで横たわっている状態から右側を下にして横たわっている状態へと回転したことを示す、180度から90度に変化する。患者がリクライニング体位にあるままであるので、ピッチ軸は変化しない。イベントの表は、オフラインで策定および更新され、既知の体位変更イベントの経験的データの分析に基づく。したがって、体位変更イベントの分類は、ペアワイズ比較の差の大きさが所定の閾値を超えるとき、ペアワイズ比較のデータに合致する体位イベント・プロファイルをイベントのルックアップ・テーブルにおいて識別することによって実行可能である。
【0166】
ブロック1018では、投票(vote)が、分類されたイベントに対して置かれる。例示的に、表1に関して説明された例の場合、投票は、仰向けに横たわるから右側を下にして横たわるへのターニングの体位変更イベント・プロファイルに対するものであろう。ブロック1020では、方法1000は、各ペアワイズ比較に対して、体位変更イベントが発生したかを判断すること、体位変更イベントを分類すること(イベントが発生した場合)、および分類された体位変更イベントに対して投票すること(同じく、イベントが発生した場合)、の行為を繰り返す。これらのブロックに対する反復の最大数は、時間窓内のセグメントの数に等しい。
【0167】
ペアワイズ比較のすべてが分析されると、ブロック1022において、方法1000は、ブロック1018で記録された投票を集計する。最も多くの投票を有する体位変更イベントが、発生した体位変更イベントであると決定される。次いで、決定された体位変更イベントが、患者の体位として記録される。ブロック1024では、体位継続時間タイマは、患者が新しい体位にあるままである時間を把握するためにリセットされる。次いで、方法1000は、ブロック1002に戻って、測定データの次の増分(たとえば、秒)に関する分析を再び始める。
【0168】
ブロック1014において、ペアワイズ比較のいずれも、検出された体位変更イベントという結果にならない(すなわち、患者は、時間窓全体を通じて同じ体位にあるままであった)場合、方法1000は、ブロック1026に進み、あらかじめ定義された最長継続時間よりも長い時間の期間にわたって患者が現在の体位にあるままであったかどうかを判断し、あらかじめ定義された最長継続時間は、本明細書において、所定の継続時間または所定の最長継続時間とも呼ばれることがある。そうでない場合、方法1000は、ブロック1002に戻って、測定データの次の増分セット(たとえば、秒)に関する分析を再び始める。患者が、あらかじめ定義された最長継続時間よりも長い時間の期間にわたって現在の体位にあるままであった場合、ブロック1028において、アラートが、たとえば、患者が位置変更されるべきであることを介護者に通知するために、患者の介護者に送られる。次いで、方法1000は、ブロック1002に戻って、測定データの次の増分(たとえば、秒)に関する分析を再び始める。
【0169】
図11Bは、本開示の一実施形態による、患者の体位はいつ変更される必要があるかを判断するための患者位置モニタリング・パラダイムの一実施形態の例示的なプロットである。一実施形態では、プロット1102Bは、ベッドサイド・モニタ、マルチ・ルーム・モニタ、この両方などの上での、介護者への表示の一部であってよい。プロットは、リアル・タイムで、あらかじめ定義された間隔で、および/または手動で、更新可能である。他の実施形態では、このパラダイムは、患者が体位変更されない場合の褥瘡性潰瘍の可能性を介護者に知らせるアラームをいつアクティブ化するべきかを判断するために信号プロセッサによって実行される信号処理を示してよい。これらの実施形態では、パラダイムの各部分は、特定の患者、患者の人口統計、病院プロトコル、たとえば外科ICUまたは他の病院ユニットに固有のプロトコルなどのユニット・プロトコル、在宅看護などにカスタマイズされてよい。
【0170】
図示の実施形態では、患者の位置は、経時的にモニタリングされる。垂直軸1105Bは時間を表し、水平軸1107Bは患者移動イベントを表す、などの、たとえば、図示の実施形態では、アラームは、患者が3時間以上ある位置にあるとき介護者にアラートを出すように設定される。アラームは、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、および/または10時間以上に、介護者にアラートを出すように設定可能であるので、図示の実施形態は、非限定的な例である。アラームは、ノイズ、色、および/または介護者にアラートを出す他のインジケータを含むことができる。いくつかの実施形態では、アラームは、患者が時間の閾値量(たとえば、3時間)にわたって同じ位置にいたままであったことを介護者に示すことができる。時間の閾値量は、あらかじめ定義されてもよいし、経時的に調整されてもよい。いくつかの実施形態では、アラームは、患者が転倒した、間違った位置に移動した、ベッドを出たなどを介護者に示す。一実施形態では、特定の患者または同様の患者のグループについての経験的データが、本明細書において論じられるアラームに関するパラメータのうちのいくつかまたはすべてをカスタマイズするために使用可能である。
【0171】
図11Bに示されるように、モニタは、患者が位置1にある(たとえば、患者が仰向けに、一側面を下にして、腹ばいになって横たわっている、わずかに起き上がって座っている、またはだいたい起き上がって座っているかなど)とき、患者をモニタリングし始める。患者は位置1にあるままであるので、タイミング機構は、その成長線として線1101Bを開始する。線1101Bの勾配は、患者が同じ位置にあるままであるとき、成長率を示す。図示の実施形態に示されるように、成長率は、直線的に示される場合がある。いくつかの実施形態では、成長率は、直線的、非直線的、指数関数的などであってよい。いくつかの実施形態では、成長率は、あらかじめ定義される。いくつかの実施形態では、成長率は、以下で説明されるように、さまざまな生理学的パラメータおよび/または経験的データをリアル・タイムで変更する、ならびに/もしくはこれに調整することができることができる。成長率は、とりわけ、たとえば、どのようにして患者の皮膚が単一の位置であるままであることに反応するか、患者によって経験される悪影響(たとえば、床ずれ)がどれくらい早く形成されるもしくは治癒するか、患者が横たわっている特定の位置、ならびに/または患者の年齢、健康、血液灌流速度、水和、および/もしくは栄養を含む、患者についての人口統計学的情報に応じて、システムによってすでに知られているおよび/または決定されたいくつかの要因および経験的データに依存する場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、成長率は、患者が時間の期間にわたって同じ位置(たとえば、位置1)にあるままであるとき、影響(たとえば、床ずれ)の成長率を示すことができる。
【0172】
図11Bに示されるように、患者は、約2時間にわたって位置1にあるままである。そのとき、患者は、位置2にターンする、および/または介護者によってターンされる。図示の実施形態では、位置2は、位置1とは異なる位置である。患者がターンするおよび/またはターンされるとき、タイミング機構は、新しい線1102Bを再開し、患者が位置2にあるままである時間の量の測定、追跡、モニタリング、および/または計算を開始することができる。
【0173】
同時に、線1101Bは、その減衰線へと変換する。線1101Bの減衰線は、とりわけ、床ずれの減衰率、潜在的な床ずれ、患者の皮膚の特定のエリア、および/または患者もしくは同様の患者グループもしくはすべての患者が特定の位置(たとえば、位置1)にあるままであるからことから戻るためにかかる時間の量に関連するデータを含むことができる。成長率と同様に、減衰率は、とりわけ、直線的、非直線的、および/または指数関数的であってよい。いくつかの実施形態では、減衰率は、あらかじめ定義される。いくつかの実施形態では、減衰率は、以下で説明されるように、さまざまな生理学的パラメータおよび/または経験的データをリアル・タイムで変更する、ならびに/もしくはこれに調整することができることができる。減衰率は、とりわけ、たとえば、どのようにして患者の皮膚が単一の位置であるままであることに反応するか、患者によって経験される悪影響(たとえば、床ずれ)がどれくらい早く治癒するか、どれくらいすばやく患者が回復するか、患者が横たわっている特定の位置、ならびに/または患者の年齢、健康、血液灌流速度、水和、および/もしくは栄養を含む、患者についての人口統計学的情報に応じて、いくつかの要因および経験的データに依存する場合がある。図示の実施形態に示されるように、患者が、位置1ではない1つまたは複数の位置にあるとき、位置1の減衰線は、減衰率で引き続き減衰する。すなわち、一実施形態では、位置1の減衰線は、他の1つまたは複数の位置が位置1を含まない限り、この減衰線がゼロに近づくまで、その1つまたは複数の他の位置を通って、その減衰率で引き続き減衰する。この例では、減衰率または回復率は、たとえば、患者が位置1にいないままであることが長いほど、より早くゼロに近づく。
【0174】
図示の実施形態では、患者は、ターン2において、再びターンするおよび/またはターンされる。ターン2は、時間の閾値量が到達される前、したがって、アラームが、患者をターンさせるように介護者にアラートを出す前のときに発生する。ターン2では、患者が、位置3にターンする/ターンされる。いくつかの例では、位置3は、位置1と同じである。そのような実施形態では、前の位置1と関連づけられた線1101Bの減衰線がゼロに到達したので、線1104Bは、位置3/1に対するその成長線としてゼロで始まる。しかしながら、いくつかの例では、位置3は、位置1とは異なる位置である。図示の例では、位置3は位置1とは異なり、線1104Bに対するその成長率は、位置1に対する成長率とは異なる。いくつかの例では、位置3は位置1および位置2とは異なるので、患者が位置3にターンするおよび/またはターンされるとき、位置2の減衰線が引き続き減衰するように、位置1の減衰線は、引き続き減衰することができる。この例では、患者は、位置1と位置2の両方であるままである影響の結果として、引き続き治癒することができる。いくつかの例では、位置1は、患者が、第2の位置、第3の位置、第4の位置、および/または第5の位置、またはより多くの位置などの複数の位置にターンするおよび/またはターンされるので、引き続き減衰する。
【0175】
図示の実施形態に示されるように、患者は、比較的短い時間の期間にわたって位置3にあるままである。その時間の間、位置2にあるままである影響は、減衰し始める。その後、しかしながら、患者は、位置2にターンするおよび/またはターンされる。有利には、時間ゼロで再開するのではなく、システムは、患者が位置2にターンしており、タイミング機構は、点または時間1103Bに対応する線1102Bの減衰線の現在の値から時間を計り始めることを決定することができる。時間1103Bは、この例では、ゼロよりも大きいが、時間の閾値量よりも小さい。加えて、この例では、時間1103Bは、患者が元々位置2にあるままであった時間の量よりも小さい。いくつかの実施形態では、時間1103Bは、患者が位置2からターンした時間に等しくすることが可能である。しかしながら、図示の実施形態では、システムは、減衰率と、患者が位置2にあるままであったことから回復するのに費やした時間を考慮に入れることができる。したがって、図示の実施形態では、時間1103Bは、いくつかの方法を通じてシステムによって決定可能である。たとえば、システムは、方法の中でもとりわけ、成長時間から回復時間を減算する、および/またはターン(たとえば、ターン2)の時間からカウント・ダウンすることができる。有利には、システムの好ましい実施形態は、患者が、成長率および減衰率を考慮に入れて患者が特定の部位において費やす閾値合計時間を超えないことを保証することができる。一実施形態では、システムは、患者が特定の位置で費やした前の時間を説明することなく、各ターンでタイマを再起動するが、そのような実施形態は、前の位置によって引き起こされる組織の回復、血液プーリングなどを適切に可能にするうえで精密でないことがあり、したがって、患者は、悪影響(たとえば、床ずれ)を経験する可能性がより高いことがある。したがって、システムの好ましい実施形態は、より正確には、患者が余りにも長い間特定の位置にあるままでないことを保証することによって、患者が床ずれなどの有害な影響を発症する可能性を減少させることができる。患者の成長率および減衰率を考慮して、ある位置で費やされる合計時間が、閾値時間(たとえば、この例では3時間)に到達すると、アラームは、介護者にアラートを出すことができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、アラームは、たとえば、
図11Bのターン4によって示されるように、患者が再びターンするおよび/またはターンされるまで、介護者にアラートを出す。いくつかの実施形態では、成長線は引き続き成長し、したがって、患者が閾値時間内にターンしていないとき、線が減衰することをより長く必要とする。そのような引き続いた成長は患者が、患者があまりにも多くの時間を費やした位置にあまり早く戻らない、ことを保証し、対応する組織が特定の患者位置から回復するのに十分な時間があることを保証する助けとなることができる。一実施形態では、線の減衰率は、閾値限度を超えることを説明するように調整される。図示の実施形態に示されるように、減衰率は、閾値を超えた後、減少され、アラームが出された位置に対応する線がゼロに到達するのに、より長い時間がかかることを意味する。
【0177】
論じられたように、一実施形態では、患者がアラームの時間の後でターンするおよび/またはターンされるとき、成長線は、
図11Bのプロットによって示されるように、閾値時間を超える。患者がターンするおよび/またはターンされると、減衰線は、閾値(たとえばアラーム)線よりも上に示されることが可能である。いくつかの例では、患者は、特定の位置で費やされた時間が閾値時間を超えるとき、回復するのにより長い時間がかかることがある。いくつかの例では、アラームは、線がゼロに向けて引き続き減衰し、患者が異なる位置にあるままであるとき、減衰線が閾値時間に達したと介護者にアラートを出すことができる。いくつかの実施形態では、アラームは、減衰線が閾値時間を通過したと介護者にアラートを出さない。
【0178】
本開示のある実施形態によれば、患者モニタ106は、患者の可動性ステータス、たとえば、患者が歩行しているか、立っているか、座っているか、横になっているか、または転倒しているかを判断する。ワイヤレス・モニタリング・システム100は、患者が転倒している、ベッドから出ている、または禁止された様式もしくは介護者の注意を必要とする様式で移動していると介護者にアラートを出すアラート・システムを含むことができる。アラートは、モニタリング・システム上の可聴アラームおよび/もしくは視覚的アラームとすることができ、または、介護者(たとえば、ナース・ステーション113、臨床医デバイス114、ページャ、セルラー式電話、コンピュータ、または別のもの)に送信可能である。例示的に、患者モニタ106は、患者の可動性ステータスを表示し、患者がアクティブであり、ベッドから離れているという通知を送信することができる。いくつかの環境では、患者モニタ106は、たとえば、ベッドの中にいるままでいる、または付き添い人の補助のみで浴室まで歩くという指示などの、臨床医の命令を患者が破っているかどうかを判断することができる。そのような環境では、通知、アラート、またはアラームは、適切な介護者に送信可能である。
【0179】
ある態様では、ワイヤレス・センサ102から受信された情報は、患者の移動の時間順に並べられた表現を作成するために使用可能である。この表現は、患者モニタ上に表示可能であり、または介護者が患者をモニタリングすることを可能にするために、ナース・ステーションもしくは他の処理ノードに送信可能である。この時間順に並べられた表現は、リアル・タイムで見られ得る、および/または再生のために記録可能である。たとえば、アラームが、患者が落ちたと介護者にアラートを出した場合、介護者は、その時間の期間の前およびその間の患者の移動の履歴シーケンスにアクセスして検討することができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、患者モニタリング・システム100は、患者の移動(たとえば、歩行)および他の情報(たとえば、患者の現在の投薬レジメンなど)の分析に基づいて、患者の転倒のリスクを予測することができる。患者モニタ106が、患者の転倒のリスクが所定の閾値を上回ると決定したとき、患者モニタ106は、患者の転倒を予期し、したがってそれを防止しようとして、識別されたリスクをケア提供者に通知するために、アラームまたはアラートを発行することができる。加えて、患者モニタ106は、いつ患者が転倒したかを判断し、ケア提供者の補助を命じるために適切なアラームおよびアラートを発行することができる。
【0181】
図12は、本開示の一実施形態による、患者が転倒したかどうかを判断する方法1200を示す。方法1200は、とりわけ、ワイヤレス・センサ102の加速度計210によって、およびジャイロスコープ212によって感知された情報を使用して、患者が転倒したかどうかを判断する。方法1200は、ワイヤレス・センサ102によって、そのプロセッサ202および記憶デバイス204を使用して、実行可能である、または、方法1200は、たとえば、患者モニタ106などの、ワイヤレス・センサ102から感知された情報を受信する外部処理デバイスによって実行可能である。
【0182】
本開示の一実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102の加速度計210およびジャイロスコープ212からの測定値は、とりわけ、患者が転倒したかどうかを判断するために使用される。上記で論じられたように、加速度計210は、3つの軸における重力に対する患者の直線加速度を測定する。加速度計210の3つの軸は、固定された慣性参照で表される。ロール軸は、患者の身体の長手方向軸に対応する。したがって、ロール参照測定値は、患者が腹臥位である(すなわち、うつぶせ)か、仰臥位である(すなわち、仰向け)か、またはある側にあるかを判断するために使用される。ピッチ軸は、患者の臀部のまわりの部位に対応する。したがって、ピッチ測定値は、患者が直立しているか横になっているかを判断するために使用される。有利には、加速度計210によって提供されるピッチ軸は、患者が転倒したとき頻繁に見られるシナリオである、立っていることから横たわっているへの患者の体位の変更を示すことができるので、患者が転倒したかどうかを判断するうえで有用な情報源であることが可能である。ヨー軸は、患者が設置される水平平面に対応する。
【0183】
ジャイロスコープ212は、ピッチ、ヨー、およびロールの測定値に対応する3つの直交軸における、患者の上に設置されるワイヤレス・センサ102の感知された角速度に応答する出力を提供する。加速度計210の重力を基準にして固定された慣性参照系とは対照的に、ジャイロスコープによって提供される参照系は、患者の身体を基準にしたものであり、移動する。
【0184】
加速度測定データおよび角速度データが、たとえば患者モニタ106などの測定データを処理することが可能であるデバイスによってワイヤレス・センサ102から受信されるブロック1202において、方法1200が始まる。測定データを処理することが可能である他のデバイスとしては、限定するものではないが、臨床医デバイス114、ナース・ステーション・システム113、マルチ患者モニタリング・システム110などがある。図を簡略化するため、本明細書における説明は、患者モニタ106として処理デバイスについて説明する。当業者は、多数デバイスが、本開示の範囲から逸脱することなく、説明される方法1200を実行するために使用されてよいことを諒解するであろう。
【0185】
ブロック1204では、受信されたデータが、さらなる処理の前に、異なるスケール上で測定された値を共通スケールに調整するために正規化され、これは「スケーリング」と呼ばれることもある。一実施形態によれば、訓練データは、受信されたデータを正規化するために使用される。訓練データは、複数の転倒シナリオ、ならびに転倒シナリオから区別するのが困難である場合がある非転倒シナリオの経験的データを含むことができる。訓練データは、患者が転倒したかどうかを判断するために使用される重みベクトル(以下でブロック1208に関して論じられる)を確立するための基礎として働くために収集され、分析される。訓練データは、複数の被験者によって複数回実行される、複数の転倒シナリオおよび非転倒シナリオを含むことができる。例示的に、非限定的な例として、訓練データは、表2
において説明される転倒シナリオおよび非転倒シナリオを含むことができる。
【表2】
【0186】
受信されたデータと同様に、訓練データの各サンプルは、加速度計210データの3つの軸およびジャイロスコープ212データの3つの軸に対応する、情報の6つの次元を含む。受信されたデータを正規化することによって、受信されたデータの変数の範囲が標準化される。生データの値の範囲が広く変化し得るので、分析アルゴリズムは、正規化なしでは適切に機能しないことがある。たとえば、多くの分類器は、2点間の距離を計算する。独立変数の1つが、広い範囲の値を持っている場合、距離は、この特定の変数によって支配される。したがって、すべての変数の範囲は、各特徴が最終距離にほぼ比例して寄与するように正規化可能である。正規化によって、データ内の各変数の値は、ゼロ平均(分枝で平均を減算したとき)および単位分散を有する。これは、標準スコアを計算することによって実行可能である。一般的な計算の方法は、訓練データのセット全体の各変数に対する分布平均および標準偏差を決定することである。次に、各決定された平均が、受信されたデータの対応する変数から減算される。次いで、各変数の新しい値(平均がすでに減算された)が、決定された標準偏差によって除算される。その結果は、方法1200によってさらに処理可能である値の正規化されたセットである。
【0187】
ブロック1206では、値の正規化されたセットは、患者が転倒しているかどうかを判断するうえで有用な特徴を決定するために処理される。一実施形態によれば、方法は、以下の5つの特徴、すなわち、加速度データ(加速度計210によって提供される)の大きさ、角速度データ(ジャイロスコープ212によって提供される)の大きさ、急な動き(jerk)の大きさ(すなわち、加速度の変化率)、転倒開始点および転倒衝撃点を特徴づけるために使用される転倒継続時間、ならびに2つの連続的に受信されたデータ・ポイント間のピッチの変更、を決定する。非限定的な例として、垂直速度などの、他の特徴は、患者が転倒しているかどうかを判断するうえで使用可能である。
【0188】
受信された加速度データの大きさは、加速度計210の3つの軸からの測定値から構成される3次元ベクトルのユークリッド・ノルムを計算することによって決定される。当業者によってよく理解されるように、これは、3つの加速度計値、すなわち、ピッチ、ロール、およびヨーの平方和の平方根に対応する。同様に、角速度データの大きさは、ジャイロスコープ212の3つの軸からの測定値から構成される3次元ベクトルのユークリッド・ノルムを計算することによって決定される。「急激な衝撃(jolt)」、「急増(surge)」、または「突然の揺れ(lurch)」と呼ばれることもある急な動きの大きさは、加速度ベクトルの微分を求め、次いで微分のユークリッド・ノルムを計算することによって計算される。
【0189】
スカラー値である転倒継続時間は、短い時間の継続時間にわたって患者の動きの加速度大きさプロファイルを評価することによって決定される。特に、転倒が始まると、患者が転倒しているので、重力に対する患者の加速度が減少する(転倒していない患者は、上下の次元で重力に等しい加速度値(すなわち、1gすなわち約9.80665m/s2)を示すであろう)。したがって、加速度の大きさが第1の閾値を下回る場合、転倒の開始点であると考えられ、転倒継続時間の値は、1増分される。加速度の大きさが第1の閾値を上回る場合、転倒継続時間の値は、1減分される。一実施形態では、第1の閾値は0.6g(すなわち約5.88399m/s2)である。第2の閾値は、転倒の衝撃点を決定するために使用される。一実施形態では、第2の閾値は0.8g(すなわち約7.84532 m/s2)である。加速度の大きさが第2の閾値を下回る場合、転倒の衝撃点であると考えられ、転倒継続時間の値は、1増分される。加速度の大きさが第2の閾値を上回る場合、転倒継続時間の値は、1減分される。
【0190】
ピッチ変更特徴は、現在のピッチ体位(加速度計210データによって決定される)と1秒早く決定されたピッチ体位との比較の結果である。上記で論じられたように、加速度計データのピッチ次元は、患者が直立位置にある(たとえば、起立しているまたは起き上がって座っている)のとリクライニングしているのとを区別するので、転倒を検出するうえで有用である。したがって、直立からリクライニングへのピッチの変更は、転倒が発生したことを示すことができる。ブロック1206の出力は、5つの決定された特徴から構成される5次元特徴ベクトルである。
【0191】
ブロック1208では、値の重みベクトルが、決定された特徴に適用される。ある実施形態によれば、受信された5次元特徴ベクトルと重みベクトルの内積が計算される。ある実施形態では、重みベクトルは、機械学習アルゴリズムを使用して得られる。機械学習とは、人工知能におけるパターン認識および計算論的学習理論の研究に基づいた、コンピュータ・サイエンスの下位分野である。機械学習は、データから学習し、予測することができるアルゴリズムの開発を含む。機械学習を通して開発されるアルゴリズムは、以下の厳密に静的なプログラム指示に従うのではなく、データ駆動型予測または判定をなすために例となる入力からモデルを構築することによって、動作する。機械学習は、明示的なコンピュータ・プログラムの使用が実行不可能であるコンピューティング・タスクの範囲において用いられる。産業の文脈で用いられるとき、機械学習方法は、予測分析論または予測モデリングと呼ばれることがある。本開示において適用されるように、機械学習システムは教師あり学習を含み、機械学習アルゴリズムは、「教師」によって与えられる、例となる入力とそれらの既知の出力とを含む訓練データとともに提示され、目的は、入力を出力にマッピングする一般的なルールを学習することである。一実施形態では、フィッシャーの線形判別は、重みベクトルを得るために用いられる。フィッシャーの線形判別は、対象またはイベントの2つ以上のクラスを特徴づけるまたは分離する特徴の線形結合を見つけるために使用される方法である。結果として得られる結合は、線形分類器として使用されてもよいし、後の分類の前に次元削減に使用されてもよい。本開示とともに使用可能である機械学習の他の方法としては、限定するものではないが、いくつかの例を挙げると、線形識別分析、分散分析、回帰分析、ロジスティック回帰、およびプロビット回帰がある。当業者は、多くの他の機械学習アルゴリズムが、本開示の範囲から逸脱することなく、重みベクトルを決定するために使用可能であることを認識するであろう。
【0192】
上記で説明された訓練データは、患者転倒の予測インジケータを識別するために使用可能である複数の転倒シナリオおよび非転倒シナリオから収集された経験的データを含む。例示的に、各訓練シナリオに対して、上記でブロック1206に関して説明された5つの特徴は、機械学習システムへの入力として決定され、提供される。加えて、出力は、シナリオが転倒イベントについて説明するか非転倒イベントについて説明するかを識別する各訓練シナリオに提供される。機械学習システムは、入力を出力にマッピングするルールを得るために訓練データを分析する。本開示のある実施形態によれば、機械学習システムの出力は、転倒が発生したかどうかを決定するうえで相対値により5つの特徴の各々を重みづけする5次元重みベクトルである。重みベクトルは、オフラインで決定され、固定された5次元ベクトルとして方法1200に提供される。もちろん、重みベクトルは、追加の経験的データの分析に基づいて更新可能である。
【0193】
受信された5次元特徴ベクトルと重みベクトルの内積(「ドット積」および「スカラー積」とも呼ばれる)は、当業者によってよく理解される様式で計算される。内積は、本明細書においてアクティブ化値とも呼ばれる、正または負のどちらかであってよいスカラー値を生ずる。ブロック1210において、方法1200は、転倒が検出されたかどうかを決定する。いくつかの実施形態によれば、受信された5次元特徴ベクトルと重みベクトルの内積の符号は、転倒が発生したかどうかを示す。内積がゼロよりも小さい場合、転倒は検出されておらず、方法は、ブロック1202に戻って、ワイヤレス・センサ102からのデータの次のセットを分析し始める。内積がゼロよりも大きい場合、転倒が検出されており、方法1200はブロック1214に進み、患者が転倒したことを示す通知、アラーム、および/またはアラートが、たとえば、臨床医デバイス114、ナース・ステーション・システム113、マルチ患者モニタリング・システム110などに送信される。方法は、ブロック1202に戻って、ワイヤレス・センサ102からのデータの次のセットを分析し始める。
【0194】
いくつかの実施形態では、システムは、患者の部屋の中での患者の空間的場所を決定することができる。システムは、部屋をモニタリングし、パラメータの中でもとりわけ、どれくらい長く患者がある位置にいるか、患者がいつその位置にきたか、および/またはどれくらい長く患者がその位置にいたかを空間的にモニタリングおよび/または計算することができる。上記で論じられたように、システムは、とりわけ、ワイヤレス・センサ102の加速度計210によっておよびジャイロスコープ212によって感知された情報を使用して、患者を追跡する。この方法は、ワイヤレス・センサ102によって、そのプロセッサ202および記憶デバイス204を使用して、実行可能である、または、この方法は、たとえば、患者モニタ106などの、ワイヤレス・センサ102から感知された情報を受信する外部処理デバイスによって実行可能である。
【0195】
いくつかの実施形態では、システムは、部屋の特徴の中でもとりわけ、患者のベッド、浴室、モニタ、出入口、および/または窓などの、患者の部屋のある特徴に対する、患者の部屋の中での患者の位置を決定することができる。特に、本明細書において説明される方法を使用して、システムは、患者の部屋の中での患者の垂直位置、垂直変位、水平位置、水平変位、角位置、および/または角変位を決定することができる。たとえば、加速度計210および/またはジャイロスコープ212は、患者が患者の部屋全体を歩くとき、患者の移動をモニタリングすることができる。システムは、患者が転倒しているか、ベッドから出ているか、または禁止された様式もしくは介護者の注意を必要とする様式で移動しているかを判断することができる。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102の加速度計210およびジャイロスコープ212からの測定値は、とりわけ、患者がかがんでいるおよび/もしくは転倒したか、ならびに/または患者がどこで転倒したか(たとえば、患者の垂直変位および/または床に対する患者の高さを測定することによって)を判断するために使用される。患者が転倒したいくつかの実施形態では、臨床医は、本開示の一実施形態により転倒の場所を決定することができる。上記で論じられたように、加速度計210は、3つの軸における重力に対する患者の直線加速度を測定する。加速度計210の3つの軸は、固定された慣性参照で表される。ジャイロスコープ212は、ピッチ、ヨー、およびロールの測定値に対応する3つの直交軸における、患者の上に設置されるワイヤレス・センサ102の感知された角速度に応答する出力を提供する。これらの測定値に基づいて、システムは、本明細書において説明される方法により、患者が転倒したかどうかを判断することができる。
【0197】
そのような構成では、システムは、患者の位置を記録することができる。ある態様では、ワイヤレス・センサ102から受信された情報は、患者の移動の時間順に並べられた表現を作成するために使用可能である。この表現は、ディスプレイ120上に表示可能であり、または介護者が患者をモニタリングすることを可能にするために、ナース・ステーションもしくは他の処理ノードに送信可能である。この時間順に並べられた表現は、リアル・タイムで見られ得る、および/または再生のために記録可能である。たとえば、アラームが、患者が転倒したと介護者にアラートを出した場合、介護者は、その時間の期間の前およびその間の患者の移動の履歴シーケンスにアクセスして検討することができる。
【0198】
図15A~
図15Hは、患者表示モニタ上に表示される室内表示のさまざまな構成を示す。
図15A~
図15Hに示されるように、介護者および/または患者は、任意の数の部屋の物品および/または部屋の物品の構成を選択することができる。介護者は、部屋の物品を選択し、それを室内表示上で部屋の中に置くことができる。介護者は、任意の構成で部屋の物品を回転させるおよび/または置くことができる。一実施形態では、介護者は、部屋の主要な要素の場所を一度に選択することができる。たとえば、介護者は、ベッドの位置、次いで浴室の位置、次いでドア、機器、テーブル、椅子、長椅子などの位置を選択することができる。他の実施形態では、さまざまなルーム・レイアウトに近いものが、ある程度から完全に(some to fully)選択画面に示され、レイアウトの決定は、1つまたはほんのいくつかの介護者選択においてなされる。
【0199】
図16は、たとえば、とりわけ、患者の転倒を検出および/もしくは予測する、患者の部屋の中での患者の特定の場所を決定する、ならびに/または患者が患者の定められた移動の外部に移動したかどうかを判断するための例となる方法1600を示す。
【0200】
ブロック1602において、介護者は、部屋構成に入ることができる。たとえば、介護者は、患者室内表示における任意の数の構成において表示されることになる任意の数の部屋の物品を選択することができる。部屋の物品としては、部屋の物品の中でもとりわけ、患者のベッド、浴室、モニタ、出入口、および/または窓があり得る。介護者は、各部屋の物品を選択し、室内表示のあちこちにドラッグし、および/またはドロップすることによって部屋の物品を選択することができる。いくつかの実施形態では、介護者は、各部屋の物品に、ある一定のサイズを選択することができる。いくつかの実施形態では、介護者は、単に、部屋の物品を選択し、方向づけられ表示される部屋の物品のために、室内表示内の場所を選択することができる。いくつかの実施形態では、部屋の物品は、室内表示内の所定の位置にはめることが可能である。
【0201】
ブロック1604において、介護者は、任意選択で、移動規定に入ることができる。たとえば、介護者は、ベッドにいるままであるように、および/または付き添い人の補助のみで浴室まで歩くようにという指示を含む、患者に対する指示に入ることができる。
【0202】
ブロック1608において、本明細書において説明されるセンサのうちの1つまたは複数が、アクティブ化可能である。いくつかの例では、介護者は、1つまたは複数のセンサを手動でアクティブ化する。いくつかの例では、システムは、本明細書において説明される方法により、ある生理学的パラメータの追跡、モニタリング、測定、および/または計算を始めるために、1つまたは複数のセンサを自動的にアクティブ化する。
【0203】
ブロック1610において、患者モニタリング・システム100は、患者の移動(たとえば、歩行)および他の情報(たとえば、患者の現在の投薬レジメンなど)の分析に基づいて、患者の転倒および/または転倒のリスクを予測および/または検出することができる。ブロック1612において、患者モニタ106が、患者の転倒のリスクが所定の閾値を上回ると決定したとき、患者モニタ106は、患者の転倒を予期し、したがってそれを防止しようとして、識別されたリスクをケア提供者に通知するために、アラームまたはアラートを発行することができる。加えて、患者モニタ106は、いつ患者が転倒したかを判断し、ケア提供者の補助を命じるために適切なアラームおよびアラートを発行することができる。アラート・システムは、患者が転倒している、ベッドから出ている、または禁止された様式もしくは介護者の注意を必要とする様式で移動していることを、介護者にアラートを出すことができる。アラートは、モニタリング・システム上の可聴アラームおよび/もしくは視覚的アラームとすることができ、または、介護者(たとえば、ナース・ステーション・システム113、臨床医デバイス114、ページャ、セルラー式電話、コンピュータ、または別のもの)に送信可能である。
【0204】
患者モニタリング・システムが患者の転倒を検出していない場合、患者モニタリング・システム100は、任意選択で、患者が移動規定の外部に移動したかどうかを判断することができる。たとえば、上記で説明されたように、患者モニタ106は、患者の可動性ステータス、たとえば、患者が歩行しているか、立っているか、座っているか、リクライニングしているか、または転倒しているかを判断することができる。
【0205】
患者モニタリング・システム100が、患者が、たとえば、ベッドの中にいるままであるように、または付き添い人の補助のみで浴室まで歩くようにという指示などの、介護者の命令に違反したことを決定した場合、通知、アラート、またはアラームは、ブロック1612において適切な介護者に送信可能である。
【0206】
患者モニタリング・システム100が、患者が介護者の命令に違反していないことを決定した場合、システムは、ブロック1610に戻って、患者が転倒したかどうかを検出および/または予測する。
【0207】
図13A~
図13Fは、本開示の一実施形態による、患者の位置を反映するアイコン表示の実施形態を示す。いくつかの実施形態によれば、グラフィカル・アイコンは、検出された患者の体位を視覚的に示すために使用される。特に、
図13A~
図13Fのアイコンはそれぞれ、棒線画タイプのフォーマットで、座っている患者、立っている患者、仰臥位で(仰向けに)横たわっている患者、腹臥位で(腹ばいになって)横たわっている患者、左側を下にして横たわっている患者、および右側を下にして横たわっている患者を示す。
【0208】
図14は、
図13A~
図13Fに関して説明されるアイコンが患者モニタ106のディスプレイ120上にどのように提示可能であるかの一例を示す。メイン・ディスプレイ120の下部に向かって、患者の位置を示す3つのアイコン1402、1404、および1406のセットがある。最も左のアイコン1404は、右側を下にして横たわっている患者を示す。最も左のアイコンの右にある2つのアイコン1404および1406は、仰向けに横たわっている患者を示す。ある実施形態によれば、患者モニタ106のディスプレイ120は、タッチスクリーン・インタフェースを含むことができる。タッチスクリーン・インタフェースは、タッチ・ジェスチャ、タッチ・アンド・ムーブ・ジェスチャ、およびフリック・ジェスチャを含む、指による制御を可能にすることができる。例示的に、臨床医は、アイコン1406上でタッチ・ジェスチャを使用して、そのアイコン1406と関連づけられた追加情報を含むようにディスプレイ120内のアイコンを拡張してよい。たとえば、「タッチされた」アイコン1406と関連づけられた追加情報としては、患者が特定の体位をとった時間、患者が体位から移動した時間(利用可能である場合)、患者が特定の体位で費やした時間の全継続時間、患者が定義された期間(24時間など)にわたって特定の体位であった不連続な時間の数、患者が定義された期間(24時間など)にわたって特定の体位であった時間の全継続時間などがあり得る。臨床医はまた、フリック・フィンガー・ジェスチャを使用して、時間的に前後に動くことに対応する左右にスクロールし、患者の位置記録履歴にアクセスしてよい。
【0209】
本明細書において開示されるワイヤレス・センサ102の耐用寿命は、とりわけ、バッテリ・サイズ、ならびにデータ転送速度、送信の頻度、および送信されるデータの量などのデータ伝送特性に応じて変化することができる。一実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、約2日間にわたって連続的またはほとんど連続的に(たとえば、毎秒くらいにウェイク・アップして、患者の生理学的データを感知して送信する)動作するように構成され、その後、ワイヤレス・センサ102は、適切に処分することが可能である。大型バッテリを装備するワイヤレス・センサ102の他の実施形態は、たとえば、処分の前により長い時間の期間にわたって動作するように構成される。いくつかの実施形態は、滅菌および再使用のために構成可能である。
【0210】
いくつかの医療デバイス製造業者は、開示されるワイヤレス・センサ102の実施形態などの使い捨て医療デバイスのための品質管理手段を実施して、使い捨てデバイスの性能特性を注意深く制御し管理する。特に、使用および処分されたワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102の定義および意図された耐用寿命を超えたさらなる使用のために回収され、修繕または改造されることが可能であるというリスクがある。特徴は、その定義された耐用寿命を超えたワイヤレス・センサ102の不適当な使用を防止する助けとなるために、開示される患者モニタリング・システム100に含まれることが可能である。
【0211】
患者モニタリング・システム100の一実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサ102が使用のためにアクティブ化されたことを示す、ワイヤレス・センサ102の記憶デバイス204内のアクティブ化フラグを、初期アクティブ化時に設定するように構成される。いくつかの実施形態では、アクティブ化フラグが、品質管理を維持する助けとなるためのワイヤレス・センサ102の使用についての情報を記憶するために提供される情報要素215内で設定される。有利には、アクティブ化フラグは、記憶デバイス204の不揮発性メモリ内で、または情報要素215内で、バッテリ214からの切断によって、設定されたアクティブ化フラグが破壊されないまたは消されないように設定される。したがって、ワイヤレス・センサ102が、2回目にアクティブ化され得るように調整される場合、アクティブ化フラグは、標準的なセンサ102スタートアップ・ルーチンを通して、センサ102が以前にアクティブ化されたことを示す。アクティブ化フラグの検出時、ワイヤレス・センサ102は、センサ102の品質が損なわれることがあるという警告通知として働くことができる、事前アクティブ化メッセージおよび/またはアラートを送信することができる。送信された警告またはアラートは、たとえば、患者モニタ106によって受信可能であり、次いで、患者モニタ106は、送信された品質警告またはアラートに応答して使用者がとり得る行動のメニューを提供することができる。行動のメニューは、ワイヤレス・センサ102をシャット・ダウンするオプションを含むことができる。あるシチュエーションでは、ワイヤレス・センサ102を引き続き使用することが望ましいことがある。例示的に、ワイヤレス・センサ102へのバッテリ214接続が確立され、次いで、意図せずに切断されることがあり得る。たとえば、バッテリ・アイソレータ322は、最初はセンサ102から取り外され、次いで、バッテリ214をワイヤレス・センサ102の電子回路からもう一度分離するように再挿入される。2回目にバッテリ・アイソレータ322を取り外すと、上記で説明されたように、品質警告またはアラートの送信をもたらす。そのようなシチュエーションでは、品質警告に至った環境に気付いた使用者は、ワイヤレス・センサ102を引き続き使用することを選ぶことがある。
【0212】
別の実施形態によれば、ワイヤレス・センサ102は、ワイヤレス・センサが、たとえば4時間などのあらかじめ定義された時間の期間にわたってアクティブ化された状態であった後、長期にわたるサービス・フラグを設定するように構成される。長期にわたるサービス・フラグは、センサ102が、長期にわたる時間の継続時間にわたって以前にアクティブであったことをスタートアップ時に示す働きをすることができる。別の実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、センサ102がアクティブであった時間の継続時間を追跡し、記憶デバイス204上に記録する。有利には、センサ102は、センサ102が耐用寿命の終わりに近づいているという通知および/またはアラートを使用者に発行し、ワイヤレス・センサ102が動作するのを止める前にワイヤレス・センサ102を交換するための措置を講じる機会を使用者に提供することができる。加えて、センサ102がアクティブであった記録された時間の継続時間は、その意図された耐用寿命を超えて動作するために、センサ102がいつ修繕されたかを検出する働きをすることができる。次いで、適切な警告が、使用者に送信可能である。いくつかの実施形態によれば、ワイヤレス・センサが、最長耐用寿命継続時間に等しい時間の期間にわたってアクティブであると、センサ102は、記憶デバイス204内のフラグを設定する、またはセンサ102がさらに動作するのを禁止するようにそれ自体を構成する。
【0213】
他の実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、たとえば、ワイヤレス・センサ102のハードウェア構成要素のうちの1つにおいて符号化された製品通し番号などの一意の識別子を患者モニタ106に送信する。ワイヤレス・センサ102が、患者モニタまたはエキスパンダ/リピータ107とペアにされ、動作可能になると、患者モニタ106またはエキスパンダ/リピータ107は、動作可能であることが知られているセンサ102の一意の識別子をリストする中央リポジトリに、センサ102の一意の識別子を送信することができる。例示的に、ペアリング動作中に、患者モニタ106またはエキスパンダ/リピータ107は、中央リポジトリをチェックして、ペアになろうとしているワイヤレス・センサ102が中央リポジトリにリストされているかどうかを判断し、それによって、ワイヤレス・センサ102は品質問題があるかもしれないことを示すことができる。
【0214】
他のさまざまな実施形態では、ワイヤレス・センサ102は、トランジスタ・ネットワーク、メモリ・チップ、EEPROM(電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)、または多接点シングル・ワイヤ・メモリ・デバイスもしくはDallas Semiconductorから市販されているデバイスなどの他のデバイスなどの他の識別デバイスなどの能動回路を通じて提供可能であるセンサ情報要素215を含む。センサ情報要素215は、有利には、たとえば、センサ・タイプ指定、センサ構成、患者情報、センサ特性、スクリプトもしくは実行可能コードなどのソフトウェア、アルゴリズム・アップグレード情報、ソフトウェアもしくはファームウェアのバージョン情報、または多くの他のタイプのデータを含む、多種多様の情報のいくつかまたはすべてを記憶することがある。好ましい一実施形態では、センサ情報要素215は、センサ構成要素のうちのいくつかまたはすべてが期限切れになったかどうかを示す有用な寿命データも記憶することがある。
【0215】
本明細書において説明される変形形態以外の多くの変形形態は、本開示から明らかであろう。たとえば、実施形態に応じて、本明細書において説明されるアルゴリズムのいずれかのいくつかの行為、イベント、または機能は、異なる順序で実行可能であり、全体的に追加、マージ、または省略可能である(たとえば、説明された行為またはイベントのすべてがアルゴリズムの実施に必要であるとは限らない)。さらに、ある実施形態では、行為またはイベントは、たとえば、マルチ・スレッド処理、割り込み処理、もしくは複数のプロセッサもしくはプロセッサ・コアを通じて、または他の並列アーキテクチャ上で、順次ではなく、同時に実行可能である。加えて、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能することができる異なる機械および/またはコンピューティング・システムによって実行可能である。
【0216】
本明細書において開示される実施形態に関連して説明されるさまざまな例示的な論理ブロック、モジュール、およびアルゴリズム・ステップは、電子ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、または両方の組み合わせ実装として可能である。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、さまざまな例示的な構成要素、ブロック、モジュール、およびステップが、機能性に関して上記で一般的に説明されてきた。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例および全体的なシステムに課せられた設計制約に依存する。説明される機能は、各特定の適用例に対してさまざまな形で実装可能であるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすと解釈されるべきでない。
【0217】
本明細書において開示される実施形態に関連して説明されるさまざまな例示的な論理ブロックおよびモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリート・ゲートもしくはトランジスタ論理、ディスクリート・ハードウェア構成要素、または本明細書において説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなどの機械によって実装または実行可能である。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサとすることができるが、代替形態では、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械、それらの組み合わせなどとすることができる。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、FPGA、またはコンピュータ実行可能命令を処理せずに論理動作を実行する他のプログラマブル・デバイスを含む。プロセッサは、コンピューティング・デバイスの組み合わせ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または他の任意のそのような構成としても実装可能である。コンピューティング環境は、いくつかの例を挙げると、限定するものではないが、マイクロプロセッサに基づいたコンピュータ・システム、メインフレーム・コンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブル・コンピューティング・デバイス、デバイス・コントローラ、または器具内の計算エンジンを含む、任意のタイプのコンピュータ・システムを含むことができる。
【0218】
本明細書において開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、またはアルゴリズムのステップは、ハードウェア内で、1つもしくは複数のメモリ・デバイス内に記憶され、1つもしくは複数のプロセッサによって実行されるソフトウェア・モジュール内で、またはこれら2つの組み合わせで、直接的に実施可能である。ソフトウェア・モジュールは、RAMメモリ、フラッシュ・メモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハード・ディスク、リムーバブル・ディスク、CD-ROM、また当技術分野で知られているは他の任意の形式の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、メディア、もしくは物理的コンピュータ・ストレージに常駐することができる。例となる記憶媒体は、プロセッサが、記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合可能である。代替形態では、記憶媒体は、プロセッサに不可欠とすることができる。記憶媒体は、揮発性とすることもできるし、不揮発性とすることもできる。プロセッサおよび記憶媒体は、ASIC内にあることができる。
【0219】
本明細書において使用される条件付き言い回し、とりわけ、「できる(can)」、「ことがある(might)」、「あってよい(may)」、「たとえば」などは、別段記載のない限り、または別段使用される文脈内で理解されない限り、ある実施形態は、ある特徴、要素、および/または状態を含むが、他の実施形態は、ある特徴、要素、および/または状態を含まないことを伝えることが一般に意図される。したがって、そのような条件付き言い回しは、一般に、特徴、要素、および/または状態が、いかなる形であれ、1つもしくは複数の実施形態のために必要とされること、または1つもしくは複数の実施形態が、作成者の入力もしくは指示があろうとなかろうと、これらの特徴、要素、および/もしくは状態が、任意の特定の実施形態に含まれるもしくは実行可能であるかどうかを決めるためのロジックを必ず含むことを暗示することを意図しない。「備える」、「含む」、「有する」などの用語は同義であり、非限定的な(open-ended)様式で包括的に使用され、追加の要素、特徴、行為、動作などを除外しない。また、「または」という用語は、その包含的な意味で使用され(そして、その排他的意味で使用されない)、したがって、使用されるとき、たとえば、要素のリストを接続するために、「または」という用語は、リスト内の要素のうちの1つ、いくつか、またはすべてを意味する。さらに、「各」という用語は、本明細書で使用されるとき、その通常の意味を有するに加えて、「各」という用語が適用される要素のセットの任意のサブセットを意味することができる。
【0220】
上記の詳細な説明は、さまざまな実施形態に適用される新規な特徴を示し、説明し、指摘してきたが、図示のシステム、デバイス、または方法の形式および詳細のさまざまな省略、置き換え、および変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく、なされることが可能であることが理解されよう。認識されるように、本明細書において説明されるある実施形態は、いくつかの特徴は他の特徴とは別に使用または実施可能であるので、本明細書において記載される特徴および利益のすべてを提供するとは限らない形式内で実施可能である。
【0221】
本明細書における「および/または」という用語は、本開示においてAのみ、Bのみ、AとBの両方を一緒に、または代替的にAもしくはBを含むが、AとBの両方を必要としない、またはAの1つもしくはBの1つを必要とする、その最も広く最も限定しない意味を有する。本明細書で使用されるとき、A、B、「および」C「のうちの少なくとも1つ」という句は、非排他的論理和を使用して、論理的なAまたはBまたはCを意味すると解釈されるべきである。
【0222】
本明細書において説明される装置および方法は、1つまたは複数のプロセッサによって実行される1つまたは複数のコンピュータ・プログラムによって実装されてよい。コンピュータ・プログラムは、非一時的な有形コンピュータ可読媒体上に記憶されたプロセッサ実行可能命令を含む。コンピュータ・プログラムは、記憶されたデータも含んでよい。非一時的な有形コンピュータ可読媒体の非限定的な例は、不揮発性メモリ、磁気ストレージ、および光ストレージである。
【0223】
前述の開示は、いくつかの好ましい実施形態に関して説明してきたが、他の実施形態は、本明細書における開示から、当業者に明らかであろう。加えて、他の組み合わせ、省略、置き換え、および修正は、本明細書における開示に鑑みて、当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、好ましい実施形態の説明によって制限されることを意図したものではなく、特許請求の範囲への参照によって定義されるべきである。