(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ランダム量子回路の出力によるノイズ分類
(51)【国際特許分類】
G06N 10/60 20220101AFI20240119BHJP
【FI】
G06N10/60
(21)【出願番号】P 2022507915
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020062608
(87)【国際公開番号】W WO2021028083
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジンスン
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ、レフ
(72)【発明者】
【氏名】スモリン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コルコレス、アントニオ
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0259905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0018721(US,A1)
【文献】特表2019-517069(JP,A)
【文献】WOOTTON, James R.,"Benchmarking of quantum processors with random circuits",arXiv [online],2018年07月,[2023年09月19日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1806.02736v1>,1806.02736v1
【文献】BLUME-KOHOUT, Robin et al.,"A volumetric framework for quantum computer benchmarks",arXiv [online],2019年05月,[2023年09月19日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1904.05546v2>,1904.05546v2
【文献】BOULAND, Adam et al.,"Quantum Supremacy and the Complexity of Random Circuit Sampling",arXiv [online],2018年03月,[2023年09月19日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1803.04402v1>,1803.04402v1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子システム内のノイズを特徴づける方法であって、前記量子システムが、複数のキュービットと、前記量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートとを備え、前記方法が、
量子プロセッサ上で、前記量子システムにネイティブの前記複数のエンタングリング・ゲートを備えるランダム量子回路を生成すること、
古典的コンピュータ上で、前記ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得すること、
前記量子プロセッサ上で、前記ランダム量子回路を複数回ランして、対応する複数の実験的結果を取得すること、
前記理想的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得すること、
前記実験的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得すること、ならびに
前記第1の分布および前記第2の分布に基づいて前記量子システム内のノイズを特徴づけること
を含む、
方法。
【請求項2】
前記量子システム内のノイズを特徴づけることが、前記量子システム内のコヒーレントおよび非コヒーレント・ノイズを定量化することを含む、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項3】
前記理想的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果を前記グループ分けすることが、前記複数の理想的結果が理想的確率によってビニングされたときにそれぞれのビン内の確率の和がポーター-トーマス分布に関して等しくなるように複数のビンを定義することを含む、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項4】
前記複数のビンの総数が前記複数のキュービットの
数の多項式である、
請求項3に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項5】
前記複数のキュービットが3キュービットから100キュービットの間である、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項6】
前記ランダム量子回路が複数のランダム単一キュービット回転を備える、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項7】
前記量子システムにネイティブの前記複数のエンタングリング・ゲートが2キュービットCNOTゲートである、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項8】
前記ランダム量子回路が、単一キュービット回転と2キュービットCNOTゲートとの交互サイクルを備える、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項9】
前記ランダム量子回路が、前記量子システム内の前記複数のキュービットの程度の深さを有する、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項10】
前記ノイズを特徴づけることが、
前記第1の分布から理想的分布までの第1の距離を計算すること
を含み、前記理想的分布は前記シミュレーションに基づき、
前記ノイズを特徴づけることがさらに、
第1の非コヒーレント・ノイズ分布から前記理想的分布までの第2の距離を計算すること
を含み、前記第1の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、前記非コヒーレント・ノイズ結果は、前記理想的結果の確率に基づいてグループ分けされており、
前記ノイズを特徴づけることがさらに、
前記第1の距離および前記第2の距離に基づいて第1の平均回路成功比を計算すること
を含む、
請求項1に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項11】
前記ノイズを特徴づけることがさらに、
前記第2の分布から前記理想的分布までの第3の距離を計算すること、ならびに
第2の非コヒーレント・ノイズ分布から前記理想的分布までの第4の距離を計算すること
を含み、前記第2の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、前記非コヒーレント・ノイズ結果は、前記非コヒーレント・ノイズ結果の確率に基づいてグループ分けされており、
前記ノイズを特徴づけることがさらに、
前記第3の距離および前記第4の距離に基づいて第2の平均回路成功比を計算すること、ならびに
前記第1の平均回路成功比と前記第2の平均回路成功比との間の差に基づいて前記量子システム内のコヒーレント・ノイズの測度を計算すること
を含む、
請求項10に記載の量子システム内のノイズを特徴づける方法。
【請求項12】
量子システム内のノイズを特徴づけるシステムであって、
複数のキュービットを備える量子プロセッサと、
前記量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートを備えるランダム量子回路と、
古典的プロセッサと
を備え、
前記古典的プロセッサが、
前記ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得し、
前記量子回路が前記複数のキュービットに複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を前記量子回路から受け取り、
前記理想的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得し、
前記実験的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得し、
前記第1の分布および前記第2の分布に基づいて前記量子システム内のノイズを特徴づける
ように構成されている、
システム。
【請求項13】
コンピュータ・プログラムであって、コンピュータに、
ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得すること、
前記量子回路が
量子システムが備える複数のキュービットに複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を前記量子回路から受け取ること、
前記理想的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得すること、
前記実験的結果の確率に基づいて前記複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得すること、ならびに
前記第1の分布および前記第2の分布に基づいて前記量子システム内のノイズを特徴づけること
を実行させる、
コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在請求している本発明の実施形態は、ノイズ分類のためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、ランダム量子回路を使用してノイズを分類することに関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報処理のための物理システムは通常、システムの出力に望ましくない形で影響を及ぼし得るノイズ過程を経験する。これらのノイズ過程はさまざまな起源を有するが、大まかに、非コヒーレント・ノイズ(incoherent noise)とコヒーレント・ノイズ(coherent noise)の2群に分類することができる。非コヒーレント・ノイズは、確率的なマルコフ過程(Markovian process)から生じる傾向がある。マルコフ過程は、任意の将来の状態に到達する確率が現在の状態だけに依存する過程である。非コヒーレント・ノイズは不可逆的であり、記憶されない(memoryless)。一方、コヒーレント・ノイズは補正することができ、通常は、量子情報処理に必要なユニタリ動作(unitary operation)の不完全な実現に起因する。コヒーレント・ノイズは反復可能であり、誤較正またはクロストークに由来する回転過多(over-rotation)または回転不足(under-rotation)と考えることができる。
【0003】
これらの2つのタイプのノイズの識別は、いくつかの量子コンピューティング・タスクで決定的に重要となり得る。過去に、ノイズを分類することができるいくつかの方法が開発されたが、それらの方法はどれも、少数のキュービット(qubit)を超えるキュービットに対するスケーラビリティを欠いている。量子システムを特徴づけるスケーラブルな方法はノイズ・タイプを区別せず、したがってコヒーレント・ノイズ源を識別および軽減する目的に使用することができない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、量子システム内のノイズを特徴づける方法であって、量子システムが、複数のキュービットと、量子システムにネイティブ(native)の複数のエンタングリング・ゲート(entangling gate)とを含む方法は、量子プロセッサ上で、量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートを含むランダム量子回路を生成することを含む。この方法は、古典的コンピュータ上で、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得すること、および量子プロセッサ上で、ランダム量子回路を複数回ランして、対応する複数の実験的結果を取得することを含む。この方法は、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得すること、および実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得することを含む。この方法は、第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけることを含む。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、量子システム内のノイズを特徴づけるシステムは、複数のキュービットを含む量子プロセッサと、量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートを含むランダム量子回路と、古典的プロセッサとを含む。古典的プロセッサは、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得し、量子回路が複数のキュービットに複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を量子回路から受け取るように構成されている。古典的プロセッサは、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得し、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得するように構成されている。古典的プロセッサは、第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけるように構成されている。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ実行可能コードを含み、このコンピュータ実行可能コードは、コンピュータによって読まれたときに、コンピュータに、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得すること、および量子回路が複数のキュービットに複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を量子回路から受け取ることを実行させる。コンピュータ実行可能コードはさらに、コンピュータによって読まれたときに、コンピュータに、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得すること、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得すること、ならびに第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけることを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による、量子システム内のノイズを特徴づける方法を示す流れ図である。
【
図2】6つのキュービット(
図2の円)に作用するランダム量子回路の一例の概略図である。
【
図3】ポーター-トーマス分布(Porter-Thomas distribution)を示す一例示的なプロットである。
【
図4】ビット列のビン(bin)へのソートを示す一例示的なプロットである。
【
図5】実験的確率による4つのビット列のビニング(binning)を示す一例示的なプロットである。
【
図6】理想的分布を示す一例示的なプロットである。
【
図7】実験的確率によってビニングされた、コヒーレント・ノイズを含むシミュレーションによる一例示的な分布を示す一例示的なプロットである。
【
図8】理想的確率によってビニングされた、コヒーレント・ノイズを含むシミュレーションによる一例示的な分布を示す一例示的なプロットである。
【
図9】非コヒーレント・ノイズ結果が非コヒーレント・ノイズ結果の確率に従ってビニングされた、一例示的な非コヒーレント・ノイズ分布を示す一例示的なプロットである。
【
図10】第1の平均回路成功比(average circuit successratio)および第2の平均回路成功比を深さの関数として示す一例示的なプロットである。
【
図11】実験的に取得された第1の平均回路成功比および第2の平均回路成功比、ならびにシミュレーションによって取得された第1の平均回路成功比および第2の平均回路成功比を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態による、量子システム内のノイズを特徴づけるシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による、量子システム内のノイズを特徴づける方法100を示す流れ図である。この量子システムは、複数のキュービットと、この量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートとを含む。方法100は、ランダム量子回路を生成することを含む102。ランダム量子回路は、この量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートを含む。この方法は、古典的コンピュータ上で、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得することを含む104。この方法は、ランダム量子回路を複数回ランして、対応する複数の実験的結果を取得することを含む106。この方法は、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得することを含む108。この方法は、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得することを含む110。この方法は、第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけることを含む112。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、量子システム内のノイズを特徴づけることが、量子システム内のコヒーレントおよび非コヒーレント・ノイズを定量化することを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ランダム量子回路が、量子システムにネイティブのエンタングリング・ゲートに加えて、複数のランダム単一キュービット回転(random single-qubit rotation)を含む。量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートは例えば2キュービットCNOTゲートとすることができる。しかしながら、本発明の実施形態は2キュービットCNOTゲートに限定されない。他のエンタングリング・ゲートを使用することもできる。
【0011】
使用するハードウェアのタイプによっては、異なる量子ゲートを実施する方がより容易であり、異なる量子ゲートを使用する方がより自然である。ネイティブのゲートとは、所与のハードウェアに対して使用するのが自然なゲートの選択肢である量子ゲートのことを言う。例えば、一部のハードウェアでは、CNOTゲートが、使用するのが自然なエンタングリング・ゲートである。他のハードウェアでは、CPHASEまたはCZゲートが、使用するのが自然なエンタングリング・ゲートであることがある。ネイティブでないゲートは、実施するのに多数のネイティブのゲートを必要とする。ネイティブのエンタングリング・ゲートは、ハードウェアによって互いに直接に結合されたキュービット上で実施され、実施するのに追加のキュービット・スワップ(qubit SWAP)を必要としない。一部のハードウェアでは、ハードウェア内に構築された物理的共振器バスによって、特定のキュービットが他のキュービットに直接に結合される。他のハードウェアは、全てのキュービットが他の全てのキュービットに結合される他の接続方式を有することがある。本発明の実施形態は、量子システムにネイティブのエンタングリング・ゲートを使用してランダム量子回路を生成する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ランダム量子回路が、単一キュービット回転と2キュービットCNOTゲートとの交互サイクルを含む。
図2は、6つのキュービット(
図2の円)に作用するランダム量子回路の一例の概略図である。このランダム量子回路は、ランダム・ユニタリ単一キュービット回転200、202、204、206、208、210と、接続されたキュービットのランダム対に作用するCNOTゲート212、214、216とを含む。ランダム・ユニタリ単一キュービット回転200~210とCNOTゲート212、214、216とは、xサイクルの間、キュービットに交互に作用する。十分な深さxについては、出力分布が、ポーター-トーマス(PT)分布に近づく傾向がある。
図3は、ポーター-トーマス分布を示すプロットである。x軸に沿ってN×pがプロットされており、ここで、N=2
nであり、nは、量子システム内のキュービットの数、pは、特定の結果を取得する確率である。x軸の標識が1程度になるように、非常に小さな数になることがある1/Nの代わりに、確率pにはNが乗じられている。y軸に沿って、N×pの確率であるPr(N×p)がプロットされている。ランダム・エンタングリング・ユニタリ・オペレータ(unitary operator)を含み、十分な深さを有するランダム量子回路については、出力分布が、
図3に示された分布などのポーター-トーマス分布に近づく傾向がある。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、複数の実験的結果をグループ分けすることが、複数の理想的結果が理想的確率によってビニングされたときにそれぞれのビン内の確率の和がポーター-トーマス分布に関して等しくなるように、複数のビンを定義することを含む。上述のとおり、この方法は、古典的コンピュータ上で、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得することを含む。複数の理想的結果から、N=2n個の可能な結果のそれぞれについて理想的確率を決定する。この理想的確率を使用してビンを生成する。ビンは、理想的結果が理想的確率に従ってビニングされたときにそれぞれのビン内の確率の和がポーター-トーマス分布に関して等しくなるように生成する。
【0014】
図4は、ビット列のビンへのソートを示す一例示的なプロットである。ギザギザの曲線は、理想的分布400を提供するために理想的結果の理想的確率に従ってプロットされた理想的結果の一例である。例えば、古典的コンピュータ上で、シミュレーションを1000回ランすることができ、それぞれのランは、対応するビット列を、理想的出力として有する。それらの理想的出力を使用して、それぞれの可能なビット列に対応する理想的確率を決定する。その理想的確率の確率が理想的分布400である。滑らかな曲線402はポーター-トーマス分布である。
図4から、理想的分布400がポーター-トーマス分布に従うことは明らかである。
【0015】
理想的分布400を使用して、それぞれのビン内の確率の和がポーター-トーマス分布に関して等しくなるように、ビンを生成する。
図4では9つのビン、すなわちビン1 404、ビン2 406、ビン3 408、ビン4 410、ビン5 412、ビン6 414、ビン7 416、ビン8 418、およびビン9 420が生成されている。ビンの境界が垂直の実線によって示されている。上述のとおり、理想的出力を使用して、それぞれの可能なビット列に対応する理想的確率を決定する。4つの可能なビット列に対するこのような理想的確率の例が表1に示されている。これらの理想的確率は、ビット列がどのビンに割り当てられるのかを決定し、例えば、ビット列x
1は理想的確率に基づいてビン1に割り当てられ、ビット列x
2は理想的確率に基づいてビン3に割り当てられる。
【0016】
【0017】
ビンを生成した後、ランダム量子回路を複数回ランした結果として取得された複数の実験的結果をビンに割り当てる。これらの複数の実験的結果は、理想的結果の確率および実験的結果の確率に基づいてビニングされる。この例では、最初に理想的結果に従ってビニングし、2番目に実験的結果に従ってビニングすると説明するが、本発明の実施形態は特定の順序に限定されない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をビニングして、第1の分布を取得する。例えば、理想的確率に従ってそれぞれの実験的結果|000000〉をビン1にビニングする。理想的確率に従ってそれぞれの実験的結果|000001〉をビン3にビニングする。本明細書では「第1の分布」と呼ぶ結果として生じるこの分布は、p×N Pr(p×N)が特定のビット列に対する理想的値とは異なる場合、理想的分布から逸脱することがある。この逸脱は、コヒーレント・ノイズの結果、非コヒーレント・ノイズの結果、またはこの両方のノイズの結合の結果であることがある。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をビニングして、第2の分布を取得する。表2は、4つのビット列に対する実験的確率の一例を示している。6つのキュービットに作用するランダム量子回路の1000回のランについて、8つのショットが実験的出力x
1:|000000〉を与えた。したがって実験的確率×Nは
【数1】
である。上述のビンと同じビンを使用すると、これによってx
1:|000000〉はビン1に入れられる。x
2|000001〉に対する実験的確率×Nは1.216であり、x
2はビン4に入れられる。
【0020】
【0021】
図5は、実験的確率による4つのビット列のビニングを示す一例示的なプロットである。実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をビニングして、第2の分布を取得する。実験的確率によるビニングは、第2の分布が理想的分布からどれくらい離れているのかを示す。コヒーレント・ノイズは、ランダム量子回路内の小さな追加のSU(2)ゲートとしてモデル化することができる。ランダム量子回路は、出力確率分布を依然としてポーター-トーマスの方へ動かすが、ポーター-トーマス分布内でビット列を「並べ換える」。例えば、表2では、実験的確率に基づいてビット列x
2|000001〉が、表1のビン3の代わりにビン4に割り当てられている。コヒーレント・ノイズは、特定の結果に関連した確率を変化させることがあるが、分布全体の形状を変化させない。したがって、実験的確率によるビニングは、コヒーレント・ノイズに対して感応性ではない。
【0022】
図6は、一例示的な理想的分布の図である。ノイズを含まないシミュレーションによって出力されたビット列x
1、x
2、x
3、およびx
4がそれぞれ、それらの理想的確率によってビン1 600、ビン4 602、ビン6 604、およびビン7 606にソートされている。ビンの境界が垂直の実線によって示されている。全てのビット列の和およびいくつかの回路の平均(ギザギザの曲線608)は、理想的なポーター-トーマス分布(滑らかな曲線610)を再現している。
【0023】
図7は、実験的確率によってビニングされた、コヒーレント・ノイズを含むシミュレーションによる一例示的な分布を示す図である。ビット列x
1~x
4の実験的確率は理想的(計算された状態ベクトル)確率とは異なり、したがってビット列は異なるビンに割り当てられている。しかしながら、ビット列の実験的確率によってビニングしても依然としてポーター-トーマス分布が再現されている。
【0024】
図8は、理想的確率によってビニングされた、コヒーレント・ノイズを含むシミュレーションによる一例示的な分布を示す図である。理想的確率によってビニングされた今回のビット列の確率の和をとると、ポーター-トーマス分布はもはや構築されない。確率の和は、
図8の垂直の破線によって示されている。ビット列x
1~x
4に対する垂直破線の高さは
図7の場合と同じであることに留意されたい。しかしながら、ビット列が異なるビンに割り当てられているため、垂直破線の高さはもはやポーター-トーマス分布800に対応していない。
図8は、理想的確率によるビニングは、実験的確率によるビニングよりも識別可能性がいかに高いのかを示している。理想的確率によるビニングは、どのビット列がどのビンに入らなければならないかの知識を利用する。ポーター-トーマス分布内でビット列を並べ換えると結果はこれから不十分なものになろう。したがって、理想的確率によるビニングはコヒーレント・ノイズに対して感応性であり、一方、実験的確率によるビニングはコヒーレント・ノイズに対して感応性ではない。
【0025】
これらのビニング方法はともに非コヒーレント・ノイズに対して感応性である。非コヒーレント・ノイズは、出力分布を一様分布の方へ動かすであろう。一様分布では、それぞれの結果が同様に確からしい。非コヒーレント・ノイズ結果がそれらの確率、すなわち非コヒーレント・ノイズ結果の確率に従ってビニングされた場合、その結果は、
図9に示された分布となる。結果の数、すなわち「ショット」の数の制限が無限である場合、この均一な分布はp×N=1の垂直線となるであろう。しかしながら、ショットの数が有限である場合には、ショット・ノイズがこの垂直線に自然広がり(natural spread)を与え、その結果、ガウス分布となる。
【0026】
上述のとおり、ビンは、理想的分布に基づいて生成される。本明細書において、用語「グループ分けする」は、ビニングすることまたはビンに割り当てることを指すことがある。本発明の一実施形態によれば、複数のビンの総数が複数のキュービットの多項式である。ランダム量子回路がランされる複数回は、複数のビンの総数よりも多い。本発明の一実施形態によれば、複数のキュービットが3キュービットから100キュービットの間である。本発明の一実施形態によるランダム量子回路は、量子システム内の複数のキュービットの程度の深さを有することができる。ランダム量子回路の深さは、ランダム量子回路をランするのに必要な時間ステップの数と定義される。
図2に示されているように、この回路は、単一の時間ステップ中に複数のキュービット上で演算を実行することができる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、ノイズを特徴づけることが、第1の分布から理想的分布までの第1の距離を計算することを含み、理想的分布はシミュレーションに基づき、ノイズを特徴づけることがさらに、第1の非コヒーレント・ノイズ分布から理想的分布までの第2の距離を計算することを含み、第1の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、これらの非コヒーレント・ノイズ結果は、理想的結果の確率に基づいてグループ分けされており、ノイズを特徴づけることがさらに、第1の距離および第2の距離に基づいて第1の平均回路成功比を計算することを含む。例えば、平均成功比は、
【数2】
と定義することができ、ここで、Eは、(理想的確率または実験的確率のいずれかによってビニングされた)実験的に取得された分布、Iは、古典的コンピュータ上でのシミュレーションによって取得された理想的分布、Uは、(理想的確率または非コヒーレント・ノイズ確率のいずれかによってビニングされた)非コヒーレント・ノイズに対応する一様分布、δ(A,B)は、分布間の変分距離(variational distance)である。
【0028】
したがって、本発明の一実施形態による方法は、第1の分布から理想的分布までの第1の距離であるδ(Eideal prob,I)を計算することを含む。この方法は、第1の非コヒーレント・ノイズ分布から理想的分布までの第2の距離であるδ(Uideal prob,I)を計算することを含む。第1の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有する。しかしながら、非コヒーレント・ノイズ結果は、理想的結果の確率、例えば表1に示された理想的確率に基づいてビニングされる。この方法は、第1の距離および第2の距離に基づいて第1の平均回路成功比を、例えば式1を使用して計算することを含む。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、ノイズを特徴づけることがさらに、第2の分布から理想的分布までの第3の距離であるδ(E
experimental prob,I)を計算することを含む。この方法は、第2の非コヒーレント・ノイズ分布から理想的分布までの第4の距離であるδ(U
incoherent prob,I)を計算することを含む。第2の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、非コヒーレント・ノイズ結果は、非コヒーレント・ノイズ結果の確率に基づいてグループ分けされている。第2の非コヒーレント・ノイズ分布の一例が
図9に示されている。この方法は、第3の距離および第4の距離に基づいて第2の平均回路成功比を、例えば式1を使用して計算することを含む。この方法は、第1の平均回路成功比と第2の平均回路成功比との間の差に基づいて量子システム内のコヒーレント・ノイズの測度(measure)を計算することを含む。
【0030】
図10は、第1の平均回路成功比1000および第2の平均回路成功比1002を深さの関数として示す一例示的なプロットである。このプロットは、
図2に示されたもののような6キュービット・リングからの実験的データによって構築されている。第1の平均回路比1000は、理想的確率に基づくビニングされた出力生成に対応し、第2の平均回路成功比1002は、実験的確率に基づくビニングされた出力生成に対応する。y軸上の値1は、ノイズがないこと、すなわち理想的分布を示している。1と第2の平均回路成功比1002との間の距離1004は、量子システム内の非コヒーレント・ノイズの測度である。第2の平均回路成功比1002と第1の平均回路成功比1000との間の距離1006は、量子システム内のコヒーレント・ノイズの測度である。第2の平均回路成功比1002は、非コヒーレント・ノイズに対して感応性であるが、コヒーレント・ノイズに対しては感応性でない。第1の平均回路成功比100は、コヒーレント・ノイズに対して感応性であり、加えて非コヒーレント・ノイズに対しても感応性である。したがって、結果を実験的確率および理想的確率によってビニングすると、量子システム内で平均回路成功比の差が観察される。
【0031】
図11は、実験的に取得された第1の平均回路成功比1100および第2の平均回路成功比1102、ならびにシミュレーションによって取得された第1の平均回路成功比1104および第2の平均回路成功比1106を示している。第1の平均回路成功比1104は、量子システムのものに対応するT1およびT2時間を用いてデバイスをシミュレートすることによって取得されたものである。第1の平均回路成功比1104は、実験的に取得された第1の平均回路成功比1100とよく一致している。第2の平均回路成功比1106は、T1およびT2時間に加えて1%コヒーレント・ノイズをシミュレートすることによって取得されたものである。第2の平均回路成功比1106は第2の平均回路成功比1102と一致している。
図11は、どのようにすれば、本明細書に記載された方法およびシステムを使用して、本発明の一実施形態に従って量子システム内のノイズを特徴づけることができるのかを示している。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、量子システム内のノイズを特徴づける方法は、ランダム化された単一キュービット・ユニタリと2キュービット・ユニタリの連続層を適用すること、および結果として生じる分布をサンプリングすることを含む。十分に深い回路については、ノイズがない場合、この分布が、ポーター-トーマス分布に近づくであろう。しかしながら、コヒーレント・ノイズの存在は、ノイズのある出力分布を、ポーター-トーマスから遠ざけない。その代わりに、コヒーレント・ノイズの存在は標識をかき混ぜる。非コヒーレント・ノイズは、出力分布を一様分布の方へ動かすであろう。したがって、(回路をシミュレートすることによって取得された)予想される理想的確率に従って出力結果をビニングすること、および実験的に取得された確率に従って出力結果をビニングすることによって、コヒーレント・ノイズと非コヒーレント・ノイズとの間の定量的な分離を取得することができる。ランダム化されたベンチマーキングに基づく以前の方法の不十分なスケーラビリティとは対照的に、この方法は、合理的な容易さで、10~20超のキュービットにスケーリングすることができる。
【0033】
図12は、本発明の一実施形態による、量子システム内のノイズを特徴づけるシステム1200の概略図である。システム1200は、複数のキュービット1204、1206、1208を含む量子プロセッサ1202と、量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートを含むランダム量子回路1210とを含む。システム1200は、ランダム量子回路1210のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得するように構成された古典的プロセッサ1212を含む。古典的プロセッサ1212はさらに、量子回路1210が複数のキュービット1204、1206、1208に複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を量子回路1210から受け取るように構成されている。古典的プロセッサ1212はさらに、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得し、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得するように構成されている。古典的プロセッサ1212はさらに、第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけるように構成されている。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、古典的プロセッサ1212は、量子システム内のコヒーレントおよび非コヒーレント・ノイズを定量化することによって、量子システム内のノイズを特徴づけるように構成されている。本発明の一実施形態によれば、古典的プロセッサ1212は、複数の理想的結果が理想的確率によってビニングされたときにそれぞれのビン内の確率の和がポーター-トーマス分布に関して等しくなるように複数のビンを定義することによって、複数の実験的結果をグループ分けするように構成されている。複数のビンの総数は、量子プロセッサのキュービットの数の多項式とすることができる。ランダム量子回路1210がランされる複数回は、複数のビンの総数よりも多くすることができる。
【0035】
量子プロセッサ1202は、3キュービットから100キュービットの間のキュービットを含む。
図12に概略的に示されたキュービット1204、1206、1208は単なる一例に過ぎない。本発明の実施形態は、
図2および
図12に示されたキュービットの数にもまたはキュービットの特定のレイアウトにも限定されない。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、ランダム量子回路1210は複数のランダム単一キュービット回転を含む。本発明の一実施形態によれば、量子システムにネイティブの複数のエンタングリング・ゲートが2キュービットCNOTゲートである。本発明の一実施形態によれば、ランダム量子回路1210は、単一キュービット回転と2キュービットCNOTゲートとの交互サイクルを含む。ランダム量子回路1210は、量子システム内のキュービット数の程度の深さを有することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、古典的プロセッサ1212は、第1の分布から理想的分布までの第1の距離を計算し、理想的分布はシミュレーションに基づき、第1の非コヒーレント・ノイズ分布から理想的分布までの第2の距離を計算し、第1の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、これらの非コヒーレント・ノイズ結果は、理想的結果の確率に基づいてグループ分けされており、第1の距離および第2の距離に基づいて第1の平均回路成功比を計算することによってノイズを特徴づけるように構成されている。本発明の一実施形態によるこのプロセスは、
図10および
図11に関して上で説明されている。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、古典的プロセッサ1212は、第2の分布から理想的分布までの第3の距離を計算し、第2の非コヒーレント・ノイズ分布から理想的分布までの第4の距離を計算し、第2の非コヒーレント・ノイズ分布は、全ての可能な非コヒーレント・ノイズ結果に対して等しい確率を有し、これらの非コヒーレント・ノイズ結果は、非コヒーレント・ノイズ結果の確率に基づいてグループ分けされており、第3の距離および第4の距離に基づいて第2の平均回路成功比を計算し、第1の平均回路成功比と第2の平均回路成功比との間の差に基づいて量子システム内のコヒーレント・ノイズの測度を計算することによってノイズを特徴づけるように構成されている。本発明の一実施形態によるこのプロセスもやはり、
図10および
図11に関して上で説明されている。
【0039】
古典的プロセッサ1212は、専用の「ハードワイヤード(hard-wired)」デバイスとすることができ、またはプログラム可能デバイスとすることができる。例えば、古典的プロセッサ1212は、限定はされないが、パーソナル・コンピュータ、ワーク・ステーション、または特定用途向けの他の任意の適当な電子デバイスとすることができる。いくつかの実施形態では、古典的プロセッサ1212をユニットに統合することができ、あるいは、古典的プロセッサ1212を、取付け可能なプロセッサ、リモート・プロセッサもしくは分散型プロセッサまたはこれらの組合せとすることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータ可読媒体はコンピュータ実行可能コードを含み、このコンピュータ実行可能コードは、コンピュータによって読まれたときに、コンピュータに、ランダム量子回路のシミュレーションを複数回ランして、対応する複数の理想的結果を取得すること、および量子回路が複数のキュービットに複数回作用したことに対応する複数の実験的結果を量子回路から受け取ることを実行させる。コンピュータ実行可能コードはさらに、コンピュータによって読まれたときに、コンピュータに、理想的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第1の分布を取得すること、実験的結果の確率に基づいて複数の実験的結果をグループ分けして、第2の分布を取得すること、ならびに第1の分布および第2の分布に基づいて量子システム内のノイズを特徴づけることを実行させる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータ実行可能コードはさらに、コンピュータによって読まれたときに、コンピュータに、ランダム量子回路を量子プロセッサ内に構築するためのデータを生成することを実行させる。
【0042】
本明細書に開示された方法は、ランダム量子回路のビニングされた出力を使用して、4つ以上のキュービットを有する量子システム内の非コヒーレント・ノイズを測定し、非コヒーレント・ノイズをコヒーレント・ノイズから識別する。多キュービット・ランダム化ベンチマーキング(RB)のような方法では、必要な数のクリフォード(Clifford)・ゲートを適用することができるようにするために、単一の多キュービット・クリフォード・ゲート用の多くのネイティブのゲートを、デコヒーレンス(decoherence)がシステムを圧倒する点に適用する必要がある。本明細書に開示された方法は、システム内のキュービット数の程度の回路深さだけを必要とすることがある。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、単一キュービットSU(2)回転と2キュービットCNOTゲートとの交互サイクルを含むランダム回路をランする。このランダム回路は、結果として生じる出力状態の確率分布を「ポーター-トーマス」分布に近づける。この方法は、コヒーレント・ノイズが、出力分布を依然としてポーター-トーマス分布の方へ駆動し、その一方で、非コヒーレント・ノイズが、出力分布を均一な分布の方へ駆動することに依存する。この実験をランした後、(古典的シミュレーションによって計算された)ショットの理想的確率によって、またはショットの実験的確率によって、のいずれかによって、ショットをビニングする。使用するビンの数は、キュービットの数の多項式とすることができ、ビンの境界は、それぞれのビン内の確率の和が、ポーター-トーマス分布に関してビンを横切って等しくなるように定義される。
【0044】
(理想的確率または実験的確率による)それぞれのビニング方法について、理想的ビニングからの距離および非コヒーレント・ビニングからの距離を計算し、忠実度を計算する。これらの2つのビニング方法の忠実度の差は、システム内のコヒーレント・ノイズの測度を与える。したがって、この方法は、量子システム内のノイズを、コヒーレントおよび非コヒーレント・ノイズに定量的に分類することができる。
【0045】
政府支援の声明
本発明は、米国陸軍研究局(Army Research Office)(ARO)によって授与されたW911NF-14-1-0124の下、政府支援を得てなされたものである。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0046】
本発明のさまざまな実施形態の説明は例示のために示したものであり、それらの説明が網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることは意図されていない。当業者には、記載された実施形態の範囲を逸脱しない多くの変更および変形が明らかとなろう。本明細書で使用されている用語は、実施形態の原理、実際的用途、もしくは市場に出ている技術には見られない技術的改良を最もうまく説明するように、または本明細書に開示された実施形態を他の当業者が理解することができるように選択した。