(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】連続二重キュアリング重合を介した複合材料の3D印刷
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20240119BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240119BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240119BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240119BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240119BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2022509065
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 US2020046039
(87)【国際公開番号】W WO2021030512
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-31
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521473077
【氏名又は名称】マイティ ビルディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】コルシコフ,ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】トルーシナ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】スタロドゥプツェフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ソロニーツィン,スラヴァ
(72)【発明者】
【氏名】イワノワ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ナザロワ,ガリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダボフ,アレクセイ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/156766(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0251841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ポリマ複合材料を3D印刷する方法であって、
3D印刷システムであって、
制御システムと、
混合タンクを含む混合システムと、
前記混合システムと流体的に連通する供給システムと、
前記制御システムにより制御される光キュアリングモジュールと、
前記制御システムにより制御される印刷ヘッドであって、
前記供給システムと流体的に連通する押出機と、
前記押出機と流体的に連通するノズルと
を含む印刷ヘッドと
を備える3D印刷システムにアクセスし、
a)樹脂プレミックス材料であって、
光ポリマ複合樹脂の約10.0~30.0w%の範囲のアクリル酸塩モノマ及びアクリル酸塩オリゴマのうち少なくとも一方と、
前記光ポリマ複合材料の最高温度が自己触媒閾値温度よりも低くなるように維持する熱物理的性質を有する無機水和物であって、前記光ポリマ複合樹脂の約5.0~30.0w%の範囲の無機水和物と、
前記光ポリマ複合樹脂の約50.0~80.0w%の範囲の補強充填剤と、
前記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.2w%の範囲の紫外光(UV)開始剤と、
前記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の共開始剤と
を含む樹脂プレミックス材料を用意し、
b)前記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の熱開始剤を前記樹脂プレミックス材料と前記混合タンク内で混合して前記光ポリマ複合樹脂を形成し、前記熱開始剤は前記供給システムから供給され、
c)前記ノズルを用いて支持体上に前記光ポリマ複合樹脂の層を押し出し、前記ノズルは、前記制御システムを介して前記光ポリマ複合樹脂の前記層を押し出すように指示され、
d)前記光キュアリングモジュールを介して光照射を用いて前記層を少なくとも部分的にキュアリングし、
e)それぞれの後続の層上で前記工程c)及びd)を繰り返して前記光ポリマ複合材料を製造し、
f)前記熱開始剤の活性化及び熱エネルギーの利用により前記部分的にキュアリングされた層のうち少なくとも1層を完全にキュアリングし、工程d)における前記層の部分的キュアリング及び前記共開始剤による前記熱開始剤の活性化は、重合と熱の放射を引き起こし、これにより、自己触媒閾値温度以上で自己触媒重合反応を引き起こす、
方法。
【請求項2】
前記熱開始剤は、前記光ポリマ複合樹脂が押し出される前に前記樹脂プレミックス材料と混合され、前記熱開始剤は、前記3D
印刷システムの
前記押出機に直接加えられる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記熱開始剤は粉体であり、前記熱開始剤は、約30秒から5分の間、前記樹脂プレミックス材料と混合される、請求項1の方法。
【請求項4】
前記熱開始剤は液体であり、前記熱開始剤は、約5秒から60秒の間、前記樹脂プレミックス材料と混合される、請求項1の方法。
【請求項5】
さらに、
前記アクリル酸塩モノマ又は前記アクリル酸塩オリゴマの一部をUV開始剤の一部に混ぜ合わせてプレポリマ混合物を形成し、
前記プレポリマ混合物に光を照射してアクリル酸塩プレポリマを形成し、前記照射は、前記プレポリマ混合物を部分的にのみ重合させる
ことによりアクリル酸塩プレポリマを形成し、
前記アクリル酸塩プレポリマを前記樹脂プレミックス中に混ぜる、
請求項1の方法。
【請求項6】
さらに、前記樹脂プレミックス材料を新しい樹脂プレミックス材料と置換し、前記新しい樹脂プレミックス材料中の前記無機水和物の量は、前記自己触媒閾値温度より低い層温度を維持するのに有効な量である、請求項1の方法。
【請求項7】
工程c)~e)における各層は、前記自己触媒閾値温度以上の温度のままである、請求項1の方法。
【請求項8】
前記共開始剤は、ビソメルPTEである、請求項1の方法。
【請求項9】
前記樹脂プレミックスは、前記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の染料又は顔料をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記アクリル酸塩オリゴマは、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記層は、約1mmから10mmの範囲の厚さを有し、前記層は、前記3D
印刷システムの
前記印刷ヘッドの単一のパスにより押し出される、請求項1の方法。
【請求項12】
前記補強充填剤は、少なくとも酸化アルミニウム三水和物又は炭酸カルシウム、滑石、シリカ、ウォラストナイト、硫酸カルシウム繊維、雲母、ガラスビーズ、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つとの酸化アルミニウム三水和物混合物を含む、請求項1の方法。
【請求項13】
前記UV開始剤は、ビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO)である、請求項1の方法。
【請求項14】
前記熱開始剤は、過酸化ベンゾイルである、請求項1の方法。
【請求項15】
前記樹脂プレミックスは
、少なくとも四ホウ酸ナトリウム及びホウ酸を含む
難燃添加剤をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記熱開始剤は粉体であり、前記熱開始剤は、
前記3D印刷システムの前記押出機により受け入れられる前に、約30秒から5分の間、前記樹脂プレミックス材料と混合される、請求項1の方法。
【請求項17】
前記熱開始剤は、少なくとも部分的にアクリル酸塩モノマに溶解された熱開始剤を含む液体の熱開始剤であり、前記樹脂プレミックス材料は、
前記3D印刷システムの前記押出機により受け入れられる前に、約5秒から60秒の間、前記液体の熱開始剤と化合される、請求項1の方法。
【請求項18】
前記制御システムは、前記樹脂プレミックス材料と化合される前記熱開始剤の量と、前記樹脂プレミックス材料と化合される前記熱開始剤の供給のタイミングのうち少なくとも一方を調整して前記光ポリマ複合樹脂を形成するように前記供給システムに指示する、請求項1の方法。
【請求項19】
前記熱開始剤は、前記光ポリマ複合樹脂が
前記3D印刷システムの前記ノズルに移送される前に前記樹脂プレミックス材料と混合され、前記熱開始剤は、
前記3D印刷システムの前記押出機に直接加えられる、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年8月14日に提出された米国特許出願第16/541,081号の利益を主張し、当該出願はその全体が参照により組み込まれる。
【背景】
【0002】
アディティブ製造法としても知られる三次元(3D)印刷は、必要される場所にのみ材料を積層していく手法であり、このため、典型的には大きな材料から材料を削減又は除去することにより部品を形成する、これまでの製造手法よりも材料の消耗が著しく少ない。3D印刷された物は一般的に模型であったが、ヒンジや工具、構造的な要素のような、より複雑なシステムにおける機能的部品になり得る3D印刷物を生成することにより産業界が急速に進歩している。
既存の3D印刷プロセスにおいては、型込めすることなくコンピュータ制御の下で材料層を形成することにより3Dの物体が生成される。例えば、コンピュータ3Dモデリングフラグメンテーションを用いて、ある構造の3D情報が決定され、調製された混合物を機械制御によってノズルから供給してその構造を印刷することができる。
【0003】
3D印刷における1つの大きな問題及び課題は、ある用途における条件を満たす印刷材料が非常に乏しいことがある点である。例えば、既存の印刷材料は主に有機材料である。有機材料が高温で溶融した状態で1層ごとの積層によって印刷される。有機材料のキュアリングは酸化分解の傾向があり、調製及び印刷プロセスにおいては、環境や人間の健康を害する、好ましくない有害ガスが生じ得る。加えて、有機材料は、高コストな要求の多い条件下で印刷されることがある。有機材料を用いて印刷された構造は、機械的特性に劣ることがあるため、住居の建築のような用途には適しておらず、このため、3D印刷技術の用途をある程度制限するものとなっている。
【0004】
印刷材料の他の例は、コンクリートのようなセメント系材料である。セメント系材料は、一般的に固化するのに長い時間を必要とする。このため、そのような材料は、一般的に、短期間で材料を急速に固化させることを求める性能条件を満たすことができない。配合物を変えることにより固化の速度を上げることができるが、そのような上昇は通常限られているか、制御することが難しく、建設現場で建物を建てるときのような状況に対して3D印刷は不可能なものとなっている。
【0005】
上記の観点から、改良及び/又は3D印刷材料及びプロセスを改良するための別の解決法又は追加の解決法に対する需要が存在する。
【0006】
従来のアディティブ又は三次元製造法においては、三次元物体の構築が段階的に又は一層ごとに行われる。特に、可視光又はUV光照射の作用の下での光硬化性樹脂の固化を通じて層の形成が行われる。以下の2つの手法が知られている。1つは、成長する物体の上面に新しい層が形成される方法であり。もう1つは、成長する物体の底面に新しい層が形成される方法である。光重合としても知られる光化学キュアリングは、アディティブ製造において安価で効率的な方法である。
【0007】
光キュアリングの主な欠点は、照射される材料への光の照射の透過が制限されることである。これは、材料に機能的な特性を与えるためによく用いられる色の付いた添加物、半透明の添加物、又は不透明な添加物が存在する場合にはもっと制限される。ポリマ材料を用いる公知の層積層印刷プロセスにおいては、フィラーの組成に埋め込まれるポリママトリクスは、完全な層の固化を行うためにUV光透過深さを十分にできるものでなければならない。
【0008】
光重合に関連する他の問題は、重合の際に不均一な体積収縮が生じ、これにより、印刷されたサンプルにおける残留応力が高くなり、好ましくない反りや曲がりが生じる。光重合における大きな体積収縮は、ファンデルワールス力を介した新しい共有結合の形成の結果であり、避けられないものである。結果として、3D印刷中に重合歪みが一層ごとに漸次的に導入され、これにより残留応力が増加する。応力がシステムの構成要素の接着力を超えると、印刷中及び印刷後にミクロ変形又はマクロ変形(クラッキングや層剥離など)が生じる。
【0009】
Retailleau、Ibrahim及びAllonas著「Polymer Chemistry 5」6503(2014年)は、熱重合により促進されるアクリル酸塩のUV硬化重合について述べているが、ここで提案されているシステムは、表面での硬化のために相当な時間を必要とする。このため、これは、アディティブ製造法、特に押出型アディティブ製造法には適するものではない。また、これらの材料をアディティブ製造法にどのように適合できるかについての示唆はない。
【0010】
Rolland及びMenioによる特許出願WO2017040883 Alは、アディティブ製造のための二重硬化シアン酸エステル樹脂について述べている。McCallによる特許出願WO2017112521 Alは、アディティブ製造のための二重硬化ポリウレタン/ポリ尿素含有樹脂について述べている。上記の両発明は、積層光重合、DLP又はCLIP方法と、これに続く熱硬化とを組み合わせて2つの貫入重合体網目構造を形成することについて述べている。この方法の主な欠点は、2つの連続する段階でアディティブ製造を行う必要があることであり、これにより、製造時間が長くなり、必要とされる作業が多くなり、付加的な設備コストが増加する。
【0011】
したがって、上述した既存の配合物の欠点を解決する新しい複合物を開発する必要がある。
【概要】
【0012】
本開示は、光ポリマ複合材料を3D印刷する方法に関するものであり、この方法では、まず、光ポリマ複合樹脂の約10.0~30.0w%の範囲のアクリル酸塩モノマ及びアクリル酸塩オリゴマのうち少なくとも一方と、上記光ポリマ複合樹脂の約5.0~30.0w%の範囲の無機水和物と、上記光ポリマ複合樹脂の約50.0~80.0w%の範囲の補強充填剤と、上記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.2w%の範囲の紫外光(UV)開始剤と、上記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の共開始剤とを含む樹脂プレミックス材料を用意する。この方法では、さらに、上記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の熱開始剤を上記樹脂プレミックス材料と混合して上記光ポリマ複合樹脂を形成する。次に、この方法では、3Dプリンタを用いて支持体上に上記光ポリマ複合樹脂の層を押し出し、光照射を用いて上記層を少なくとも部分的にキュアリングする。この方法で、最後に、それぞれの後続の層上で上記押出及び部分キュアリングの工程を繰り返して上記光ポリマ複合材料を製造する。
【0013】
本開示は、さらに、制御システムと、混合システムと、上記混合システムと流体的に連通する供給システムと、上記制御システムにより制御される光キュアリングモジュールと、上記制御システムにより制御される印刷ヘッドとを含む3D印刷システムに関するものである。この印刷ヘッドは、上記供給システムとの流体的な連通と、上記供給システムと流体的に連通する押出機と、上記押出機と流体的に連通するノズルとを含む。上記混合システムは、本明細書に開示される方法により生成される樹脂プレミックス材料を供給する。上記供給システムは、上記光ポリマ複合樹脂の約0.001~0.05w%の範囲の熱開始剤と上記樹脂プレミックス材料とを供給して上記光ポリマ複合樹脂を形成する。上記押出機は、上記光ポリマ複合樹脂を上記ノズルに移送する。上記制御システムは、支持体上に上記光ポリマ複合樹脂の層を押し出すように上記ノズルに指示する。上記制御システムは、光照射を用いて上記層を少なくとも部分的にキュアリングするように上記光キュアリングモジュールに指示する。上記制御システムは、それぞれの後続の層上で押出及びキュアリング工程の繰り返しを制御して光ポリマ複合材料を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
特定の要素又は作用の議論を簡単に特定するために、参照番号における最上位の数字は、その要素が最初に言及される図番を意味している。
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態による最終材料100を示すものである。
【0016】
【
図2】
図2は、一実施形態による最終材料200を示すものである。
【0017】
【
図3】
図3は、一実施形態による方法300を示すものである。
【0018】
【
図4】
図4は、一実施形態による混合システム及び供給システム400を示すものである。
【0019】
【
図5】
図5は、一実施形態による方法500を示すものである。
【0020】
【
図6】
図6は、一実施形態による印刷システム600を示すものである。
【0021】
【
図7】
図7は、一実施形態による制御システム700を示すものである。
【0022】
【
図8】
図8は、一実施形態によるキュアリング比較を示すものである。
【0023】
【
図9】
図9は、一実施形態によるキュアリングプロセスの詳細900を示すものである。
【0024】
【
図10】
図10は、一実施形態による炭粉1000を含む層を示すものである。
【0025】
【
図11】
図11は、一実施形態によるセル状構造の概念1100を示すものである。
【詳細な説明】
【0026】
本発明は、ポリママトリクス、無機充填剤、及び重合開始剤の錯体を含む新しい組成に関し、安定した一段式3D印刷プロセスを提供するものである。ある実施形態においては、本発明に係る組成は、柔軟な種々の印刷速度を含み得るものであり、ポリママトリクス、半透明の、不透明の、及び着色された粒子を含む異なる性質の鉱物充填剤に埋め込まれ得る。
【0027】
既存の問題を解決するために、光開始剤、熱開始剤及びその他のものを使用することを含む共開始反応システムの使用により二重キュアリングプロセスを行うことができる。複数の開始剤の相乗効果が調べられ、述べられている。二重キュアリング(すなわち二重開始反応)システムの適用は、ポリマ材料のオンデマンドのキュアリングの機会を与えるものである。複合材料は、ポリママトリクスと微晶質の無機充填剤の特性を組み合わせることができる。この材料は、ベースのアクリル酸塩モノマ及び/又はアクリル酸塩オリゴマと、充填剤組成と、光及び熱重合の共開始剤の系とを含み得る。これにより、安定的な印刷プロセスを実現するモノマ/オリゴマの二重キュアリング反応が誘引され得る。
【0028】
光ポリマ複合材料は、ポリママトリクスと微晶質の無機充填剤の特性を組み合わせる。この材料は、ベースのアクリル酸塩モノマと、充填剤組成と、光及び熱重合の共開始剤の系とを含み得る。これにより、安定的な印刷プロセスを実現するモノマの二重キュアリング反応が誘引され得る。3D印刷プロセスにおけるこの材料の1層ごとの堆積により、新たに堆積された層のそれぞれに一貫した光及び熱重合キュアリングがなされ得る。光ポリマ複合樹脂の特性は、配合物において使用される成分の量に依存し得る。キュアリングされていないときは、材料は揺変性液であり得る。材料は、ポンプにより供給ルートを通って移送された後、押し出され得る。UV光で露光されると、光開始剤又はUV開始剤が重合反応を始めて、コアはキュアリングされないままであるが、堆積された層の表面にキュアリングされた外皮が形成され得る。外皮のUVキュアリングを介して、新しく堆積した層のそれぞれが前層にしっかりと付着し、層の寸法と形態が保持され得る。
【0029】
光重合は、発熱プロセスであるので、熱開始反応の連続プロセスを誘引し得る。これにより重合時間(重合応力緩和時間)が長くなり得る。この時間が長くなることで、変形が少なくなるか、あるいは変形がなくなり、体積収縮がより均一になり制御可能なものとなり得る。この結果、層間の付着力が高く、異方性が低減され、結果的に、機械的性能が高められた状態で1層ごとの構造が形成され得る。このため、この二重キュアリング方法は、光重合による3D印刷中に生じる最も重要な問題を解決し得るものである。
【0030】
二重キュアリングにより、キュアリングされたポリマの薄い外皮を形成して照射された層の一貫性を保持し、熱開始反応の開始を制御するのに十分な低パワーのUV光での動作が可能になる。開始剤と活性剤との比を選択することにより熱重合が行われ、外皮層の光重合の結果として生じる条件下で反応開始温度を下げ、モノマ重合を促進することが可能になる。
【0031】
二重キュアリングの使用は、応力低減アプローチとして好結果を生じるものである。重合応力の大きさは、複合物の粘性の高い成分に大きく依存する。複合物が弾性率を高めるのに必要な時間が長くなればなるほど、高分子鎖が変形して収縮を調整するために新しい位置に移動し(内部流)、収縮応力の増加を減少させる又は遅延させるために得られる時間が長くなる。一貫した光及び熱重合を用いてアクリル酸塩系建築用複合物を合成することにより、重合応力を顕著に減少させつつ、反応率、曲げ及び引っ張り強さ/率の増加を促進することができる。アクリル酸塩マトリクスの熱キュアリング反応が長くなることにより、ゲル化及びガラス固化が遅くなり、材料中の剛性の増加が高い反応率まで遅くなり、これにより大きな重合応力緩和と均一な体積収縮とがもたらされる。これにより、印刷プロセス中に、3D印刷されたサンプルの冷却の結果として生じる変形(クラック、層剥離、形状の幾何寸法の歪み)が減少し、また、堆積速度の増加(10~250mm/s)及び厚さの増加(1~10mm)によって高速で大規模な印刷が可能となる。
【0032】
モノマの重合反応は放熱を伴い、キュアリングプロセス中に実現される熱収支を決定する。自己触媒反応が誘引され、重合プロセスが制御不能となり、高い重合率と応力の急速な蓄積を引き起こし、サンプルにクラックの形成を引き起こす温度閾値が存在する。複合樹脂プレミックス及び得られる複合材料の熱伝導率が低いため、冷却設備を用いて行われる外部冷却により温度制御を行うことができない。この場合には、内部応力、歪み及びクラックに関連して好ましくない影響を与え得る温度勾配(熱い大容量に対して冷たい表面)が存在し得る。
【0033】
自己触媒反応を避けるために、印刷された層の温度は、マトリクスと充填剤との組み合わせにより実現可能な温度閾値よりも低くなければならない。無機添加剤は、印刷中に材料の最高温度が自己触媒閾値を下回るように維持することを可能にする1組の熱物理的性質(分解温度、熱容量、熱伝導率)により特徴付けられる。
【0034】
光重合においては、複合物の深さ方向に散乱する光の主な源は、有機相と無機相との間の界面である。また、キュアリングされたポリマと無機充填剤との間の屈折率の不一致が大きくなればなるほど、より多くの光の拡散が生じ、材料の深さ方向への透過が少なくなる。このため、光重合において堆積された層を安定的に保持するのに十分な厚さを有するキュアリングされた外皮を形成するためには、マトリクスと充填剤の1つの光学特性は一致すべきである。
【0035】
二重キュアリングの場合、2つの層間の付着強さは、層の境界を通るモノマの拡散とキュアリングされていない層が先に堆積された層の表面と接触している持続時間とによって決まる。層付着の改善により、最終的に、3D印刷された物体の特性の異方性が減少し、機械的特性が改善され、これにより耐荷重建築物の印刷のための材料の消費を削減することができる。
【0036】
二重キュアリングは、低強度のUV光での初期照射の後の熱開始反応を含み、光重合による3D印刷中に生じる最も重要な問題を解決することを可能にする方法である。
【表1】
【0037】
表1を参照すると、二重キュアリング3D印刷において使用される複合材料の配合物は、アクリル酸塩モノマ及びアクリル酸塩オリゴマのうちの少なくとも一方を含む有機マトリクスを含み得る。この配合物は、無機水和物、機能性充填剤、UV開始剤、及び熱開始剤と共開始剤(活性剤)の組み合わせをさらに含み得る。配合物の一実施形態においては、有機マトリクスは、配合物の約10.0から30.0w%の範囲にあり得る。無機水和物は、配合物の約5.0から30.0w%の範囲にあり得る。機能性充填剤は、配合物の約50.0から80.0w%の範囲にあり得る。UV開始剤は、配合物の約0.001から0.2w%の範囲にあり得る。様々な割合での共開始剤との関係における熱開始剤は、配合物の約0.002から0.1w%の範囲(それぞれの成分の合計は約0.011から0.05w%の範囲にある)にあり得る。
【0038】
構成によっては、有機マトリクス(アクリル酸塩モノマ及び/又はアクリル酸塩オリゴマ)は、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)であり得る。TEGDMAの一部の特性が表2に記載されている。
【表2】
【0039】
TEGDMAは、架橋剤として用いられる、親水性の低粘度二官能性メタクリルモノマである。TEGDMAは、配合物の約10から30w%の範囲であり得る透明な液体である。代表的なマトリクスは、異なる高分子材料を含み得る。一実施形態においては、高分子材料は、1以上のアクリル酸オリゴマを含み得る。代表的なマトリクス材料は、複合物の粘度を高めるために半重合され得る。
【0040】
構成によっては、有機マトリクスはトリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)であり得る。TMPTMAの一部の特性が表3に記載されている。
【表3】
【0041】
TMPTMAは、広範な数のポリマ架橋機能において好適に使用される親水性の低粘度反応性三官能性メタクリル酸塩である。TMPTMAは、配合物の約10から30w%の範囲であり得る透明な液体である。
【0042】
構成によっては、有機マトリクスは、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)であり得る。PEGDMAの一部の特性が表4に記載されている。
【表4】
【0043】
PEGDMAは、親水性長鎖架橋モノマである。PEGDMAは、配合物の約10から30w%の範囲であり得る透明な液体である。
【0044】
構成によっては、少なくとも1つの機能性充填剤を含む無機充填剤と無機水和物との組み合わせが用いられ得る。無機水和物は、複合物を印刷中に自己触媒閾値よりも低い温度に維持するために必要とされる初期脱水温度範囲と、キュアリングされた有機マトリクスの屈折率に一致する屈折率とを有する無機鉱物であり得る。開示される配合物においては、温度制御は、マトリクスと充填剤の組み合わせにより実現される。無機添加剤(無機水和物)は、印刷中に材料の最高温度が自己触媒閾値温度よりも低くなるように維持する、ある種の熱物理的性質(分解温度、熱容量、熱伝導率)によって特徴付けられる。
【0045】
構成によっては、無機水和物は四ホウ酸二ナトリウム十水和物であり得る。四ホウ酸二ナトリウム十水和物の一部の特性が表5に記載されている。
【表5】
【0046】
四ホウ酸二ナトリウム十水和物は、工業用の大型袋で提供され得る固体の白い粉体である。四ホウ酸二ナトリウム十水和物は、機能性充填剤と組み合わされる場合には、配合物の約5.0から20.0w%の範囲であり得るが、これに限定されるわけではない。
【0047】
構成によっては、補強充填剤は、少なくとも酸化アルミニウム三水和物又は炭酸カルシウム、滑石、シリカ、ウォラストナイト、硫酸カルシウム繊維、雲母、ガラスビーズ、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つとの酸化アルミニウム三水和物混合物を含んでいる。酸化アルミニウム三水和物混合物と共有され得る酸化アルミニウム三水和物の一部の特性が表6に記載されている。
【表6】
【0048】
酸化アルミニウム三水和物は、工業用の大型袋で提供され得る固体の白い粉体である。酸化アルミニウム三水和物は、ポリママトリクス用の難燃剤及び補強充填剤として使用され得る。
【0049】
構成によっては、UV開始剤は、ビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO)であり得る。BAPOの一部の特性が表7に記載されている。
【表7】
【0050】
UV開始剤は、特定の波長のUV光の下で有機マトリクスの重合を誘引し得る。
【0051】
構成によっては、熱開始剤は、過酸化ベンゾイル(BPO)であり得る。BPOの一部の特性が表8に記載され得る。
【表8】
【0052】
熱開始反応は、アミン活性剤を触媒としたBPOの分解により始まり得る。
【0053】
共開始剤は、ビソメルPTEであり得る。共開始剤の一部の特性が表9に記載されている。
【表9】
【0054】
構成によっては、予め配合物に共開始剤を追加してもよく、あるいは組成混合物とは別に好適な有機溶媒に共開始剤を溶解させ、押出の直前に配合物に追加してもよい。
【0055】
構成によっては、染料は、配合物の約0.01から0.05w%の範囲であり得る。
【0056】
上述した成分を含む複合樹脂プレミックスからアディティブ製造プロセス、典型的には積層押出アディティブ製造法により三次元物体が形成される。配合物は、本明細書に開示される方法に従って生成され得る。樹脂プレミックスは、ブレンダの作用によりアクリル酸塩モノマ及び/又はアクリル酸塩オリゴマ、UV開始剤、熱開始剤、熱共開始剤、及び充填剤を約5から20分間混ぜ合わせることにより生成され得る。光ポリマ複合樹脂は、その後、第2の時間中、熱開始剤及び樹脂プレミックスを混ぜ合わせることにより生成され得る。配合物を生成する方法は、
図3及び
図4に関連してさらに詳細に述べられる。
【0057】
3D印刷複合材料は、任意の好適な方法により形成され得る。代表的な方法は、複合樹脂プレミックスの1層ごとの堆積とその後の光照射とを含む。代表的な光照射は、UV光又は近UV可視光源を用いて得ることができる。光強度は、表面での樹脂の十分なキュアリングを保証するのに十分なほど高くなければならない。固体表面であるため、押し出された層はその形状を保持し、次の層がその層の上部に押し出されることが可能となる。同時に、重合前線が形成され、これが押し出された層の表面から全容量に伝搬する。光照射と同時に、あるいは、押し出された層が光に露光された後の短時間で、熱重合反応が広がって、押し出された層の内部容量の全体のキュアリングを確実にする。本明細書に開示される3D印刷複合材料を生成可能な3D印刷システムが、
図4及び
図6に関連してより詳細に述べられる。
【0058】
図1は、3D印刷を介して生成し得る代表的な最終材料100を示している。最終材料100は、マトリクス材料102を含むものとして示されている。このマトリクス材料102は3D印刷を介して形成され得る。
【0059】
代表的なマトリクス材料102は、高分子材料を含み得る。一実施形態においては、高分子材料は1以上のアクリルポリマを含み得る。代表的なアクリルポリマは、アクリル酸、アクリル酸塩(又はアクリル酸のエステル)及び/又はその誘導体の重合生成物であるポリマを含み得る。
【0060】
最終材料100は、任意の好適な方法により形成され得る。代表的な方法は重合を含み得る。代表的な重合は、ラジカル光重合のような光重合を含み得る。一実施形態においては、最終材料100は、光重合に基づく3D印刷プロセスにより形成され得る。代表的な3D印刷プロセスは、ステレオリソグラフィ(又はSLA、SL、光学製造法、光固化、樹脂印刷)、バインダ噴射、有向エネルギー付与、材料噴射、粉体層溶融、シート積層、バット光重合、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0061】
図2を参照すると、最終材料200は、それぞれ選択された濃度でマトリクス材料202内に埋め込まれ、さらに/あるいは混合された少なくとも1つの添加剤を含むものとして示されている。それぞれの添加剤は、1以上の選択された特性を有する粒子及び/又は化合物を含み得る。好都合なことに、添加剤の特性は最終材料200に付与され得る。
図2に例示的に示されているように、一実施形態における添加剤は、第1の添加剤204及び第2の添加剤206を含み得る。第1の添加剤204及び第2の添加剤206のそれぞれは、最終材料200にそれぞれの機能を与え得る。
【0062】
一実施形態においては、添加剤は補強添加剤を含み得る。補強添加剤は、最終材料200の機械的特性を改善し得る。例えば、補強添加剤は、3D印刷の前後で最終材料200の引っ張り強さ、曲げ強さ、及び圧縮強さを増加し、さらに/あるいは、最終材料200の収縮を低減し得る。代表的な補強添加剤は、炭酸カルシウム、滑石、シリカ、ウォラストナイト、粘土、硫酸カルシウム繊維、雲母、ガラスビーズ、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせを含み得る。補強添加剤は、粒子の形態で最終材料200に混合され得る。補強添加剤の粒子は、丸い粒剤及び自由形状の粒剤、様々な形状の微結晶、繊維、糸、又はこれらの組み合わせの形態であり得る。補強添加剤は、任意の好適な濃度で最終材料200に埋め込まれ得る。例えば、最終材料200における補強添加剤の質量百分率(又は重量百分率)は、最終材料200の約5から80w%の範囲になり得る。
【0063】
追加的に、さらに/あるいは代替的に、少なくとも1つの添加剤は、難燃添加剤を含み得る。一実施形態においては、難燃添加剤は、鉱物ベースのもの及び/又は鉱物に含有されているものであり得る。少し異なる言い方をすれば、難燃添加剤は、自然由来のものであり得る。例えば、難燃添加剤は鉱物に由来し得る。代表的な難燃添加剤は、酸化アルミニウム三水和物、四ホウ酸ナトリウム十水化和物、ホウ酸、リン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含み得る。一般的なハロゲンベースの難燃剤とは対照的に、鉱物ベースの難燃添加剤を利用すると、燃焼生成物に有毒物質が存在しなくなり、好都合なことに環境的に恩恵を与え得る。
【0064】
追加的に、さらに/あるいは代替的に、鉱物ベースの難燃添加剤は、リン酸エステル、ポリリン酸アルミニウム、赤リンをはじめとする非鉱物ベースの難燃剤及び他のハロゲンを含まない難燃剤に比べてブルーミングに対する耐性がより高い場合がある。好都合なことに、最終材料200の機能的安定性は、時間の経過とともに悪化しない。難燃添加剤は、粒子の形態で最終材料200に埋め込まれ得る。補強添加剤の粒子は、丸い粒剤及び自由形状の粒剤、様々な形状の微結晶、又はこれらの組み合わせの形態であり得る。難燃添加剤は、任意の好適な濃度で最終材料200内に混合され得る。例えば、最終材料200における難燃添加剤の質量百分率は、最終材料200の約35から75w%の間、あるいは約45から65w%の範囲になり得る。
【0065】
追加的に、さらに/あるいは代替的に、少なくとも1つの添加剤は、最終材料200を着色するための着色剤を含み得る。代表的な着色剤は、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含み得る。追加的に、さらに/あるいは代替的に、少なくとも1つの添加剤は、最終材料200の外観に輝きのある効果を与えるための光沢剤を含み得る。追加的に、さらに/あるいは代替的に、少なくとも1つの添加剤は、最終材料200から良い香りを生じさせるための芳香剤を含み得る。好都合なことに、最終材料200は、気孔率が低いモノリシック非晶構造を有し得る。最終材料200は、コンクリートやレンガよりも強くて軽く、水分及び薬品に対する耐久力がある場合がある。代表的な最終材料200は、無毒のアクリルベースのオリゴマ及び最小限の量の光開始剤をキュアリングすることにより製造され得る。このため、最終材料200の製造は、健康上より安全であり得る。
【0066】
図2は、最終材料200が説明のためだけに第1の添加剤204と第2の添加剤206とを含んでいるものとして示しているが、最終材料200は、添加剤を含んでいなくてもよく、あるいは、任意の数の均一な及び/又は異なる添加剤を含んでいてもよく、限定されるものではない。最終材料200において様々な添加剤の組み合わせとともに同一のマトリクス材料202を使用することにより、広い範囲にわたる用途のための最終材料200を得ることができる。
【0067】
図3を参照すると、3D印刷システムに使用される光ポリマ複合材料の配合物を生成する方法300は、ブレンダ内の配合物の約10.0から30.0w%の範囲のアクリル酸塩モノマとアクリル酸塩オリゴマのうち少なくとも一方を、配合物の約0.001から0.2w%の範囲の紫外光(UV)開始剤、配合物の約0.001から0.05w%の範囲の共開始剤、配合物の約50.0から80.0w%の範囲の補強充填剤、及び配合物の約5.0から30.0w%の範囲の無機水和物と化合させること(ブロック302)を含んでいる。ブロック304では、方法300は、約5から20分±0.5分の範囲にわたる第1の期間中、ブレンダの作用によりアクリル酸塩モノマ/アクリル酸塩オリゴマ、UV開始剤、共開始剤、補強充填剤、及び無機水和物を混ぜ合わせることにより樹脂プレミックスを生成する。
【0068】
ブロック306では、方法300は、樹脂プレミックスをブレンダ内の配合物の約0.001から0.05w%の範囲の熱開始剤と化合させる。ブロック308においては、方法300は、約10から14時間±0.1時間の範囲にわたる第2の期間中、ブレンダの作用により熱開始剤と樹脂プレミックスを混ぜ合わせることにより光ポリマ複合樹脂を生成する。
【0069】
構成によっては、方法300は、ブレンダから3D印刷システムの混合タンクに光ポリマ複合樹脂を充填する(ブロック310)。場合によっては、混合タンクが利用できない場合があり、方法300は、ブレンダから貯留用の第2のドラムに光ポリマ複合樹脂を充填する(ブロック312)。第2のドラムに貯留された光ポリマ複合樹脂は、約3時間から7日±0.2時間の範囲の時間の後、第2のドラムから3D印刷システムの混合タンクに移送される前にミキサにより混合されてもよい。
【0070】
図4は、3D印刷システムにおいて使用される光ポリマ複合樹脂を生成するための混合システム及び供給システム400の実施形態を示している。混合システム及び供給システム400は、ドラム402と、バレルポンプ404と、流量計406と、リボンブレンダ408と、吐出弁410と、ポンプ412と、ホース414と、3D印刷システム418の混合タンク416とを備えている。
【0071】
有機マトリクス424を含むドラム402は、バレルポンプ404の位置に移動され得る。有機マトリクス424は、アクリル酸塩モノマ及びアクリル酸塩オリゴマのうち少なくとも一方1を含み得る。ドラム402の蓋は、塵を除去するために洗浄され得る。バレルキャップ(ドラムの蓋の上の2つのもののうち大きい方)を取り外すための特別な工具がドラムの蓋の上に載置され得る。ドラム内部の有機マトリクス424のレベルが上部から約1~3”の範囲で測定され得る。バレルポンプ404は、垂直姿勢でバレルのキャップ孔に取り付けられ得る。バレルポンプ404は、空のリボンブレンダ408と流体的に連通して配置され得る。ブレンダの吐出弁410は「閉」位置とされ得る。バレルポンプ404が駆動され、有機マトリクス424のリボンブレンダ408への流量が流量計406を介してモニタリングされ得る。必要とされる量の有機マトリクス424がリボンブレンダ408に移送されるとすぐに、有機マトリクス424が配合物の約10.0から30.0w%の範囲となり得るように、バレルポンプ404がオフに切り替えられ得る。ポンピング工程中にドラム402が空になった場合には、バレルポンプ404がオフに切り替えられ、ポンピングを継続するために次のドラムに再度取り付けられ得る。
【0072】
有機マトリクス424がリボンブレンダ408に追加された後、粉末状成分426がリボンブレンダ内に追加され得る。粉末状成分426は、UV開始剤432、無機水和物428、及び補強充填剤430を含み得る。
【0073】
UV開始剤432は、配合物の約0.001から0.2w%の範囲でリボンブレンダ408内で有機マトリクス424に添加され得る。所望量のUV開始剤432がリボンブレンダ408に添加されたことを保証するためにUV開始剤432の空の容器の重量が測定され得る。一部のUV開始剤432がリボンブレンダ408内に充填されていない場合には、充填工程を繰り返してもよい。UV開始剤432が添加された後、粉末を日光と湿気から保護するために容器が密閉され得る。
【0074】
共開始剤434が、配合物の約0.001から0.05w%の範囲でリボンブレンダ408内で有機マトリクス424に添加され得る。所望量の共開始剤434がリボンブレンダ408に添加されたことを保証するために共開始剤434の空の容器の重量が測定され得る。一部の共開始剤434がリボンブレンダ408内に充填されていない場合には、充填工程を繰り返してもよい。構成によっては、前もって共開始剤を配合物に添加してもよい。構成によっては、共開始剤を配合物混合物とは別に好適な有機溶媒436に溶解させてもよく、3D印刷システム418による押出の直前に配合物に添加してもよい。
【0075】
一部の配合物においては、限定量の光開始剤と組み合わせたアクリルモノマ/オリゴマの短時間照射によりアクリル酸塩プレポリマが生成され得る。この作用は、充填剤粒子が沈殿することを防止するようにアクリルモノマ/オリゴマの粘度を上昇させ得るものであり、得られるプレポリマ混合物の反応性を調整することを可能とし得るものである。
【0076】
補強充填剤430は、UV開始剤432の後に添加され得る。場合によっては、補強充填剤430が55ポンドの袋に入っていることがある。正しい量の補強充填剤430が添加されることを保証するために、補強充填剤430の袋がフロアスケール上に置かれ、総充填質量を得るためにその重量が測定され得る。リボンブレンダ408内に安全格子が設置されることがあり、補強充填剤430の袋が開けられ、安全格子を通じてリボンブレンダ408内に充填され得る。充填後に袋が空になると、空袋の重量が測定され得る。リボンブレンダ408内部の補強充填剤430の質量は、最初に測定された総重量から空袋の重量を差し引くことにより計算され得る。配合物の約50.0から80.0w%の量を満たすように付加的な補強充填剤430がリボンブレンダ408に添加され得る。無機水和物428を添加する前に成分からプレミックス樹脂を形成するために、その後、約10分間リボンブレンダ408がオンに切り替えられ得る。
【0077】
補強充填剤430の後に無機水和物428が添加され得る。場合によっては、無機水和物428が55ポンドの袋に入っていることがある。正しい量の無機水和物428が添加されることを保証するために、無機水和物428の袋がフロアスケール上に置かれ、総充填質量を得るためにその重量が測定され得る。リボンブレンダ408内に安全格子が設置されることがあり、無機水和物428の袋が開けられ、安全格子を通じてリボンブレンダ408内に充填され得る。充填後に袋が空になると、空袋の重量が測定され得る。リボンブレンダ408内部の無機水和物428の質量は、最初に測定された総重量から空袋の重量を差し引くことにより計算され得る。配合物の約5.0から30.0w%の量を満たすように付加的な無機水和物428がリボンブレンダ408に添加され得る。その後、成分を混合するためにリボンブレンダ408が12時間運転され得る。
【0078】
配合物によっては、樹脂プレミックスは、5分から20分の範囲の第1の時間中、リボンブレンダ408を動作させることにより有機マトリクス424、UV開始剤432、熱共開始剤434、及び充填剤を混ぜ合わせた後、5秒から60秒の範囲の第2の時間中、液体の形態の熱開始剤438と混ぜ合わせることにより生成され得る。熱開始剤438は、液体の熱開始剤を形成するために少なくとも部分的にアクリル酸塩モノマに溶解され得る。
【0079】
配合物によっては、樹脂プレミックスは、約5から20分の範囲の第1の時間中、リボンブレンダ408を動作させることにより有機マトリクス424、UV開始剤432、熱共開始剤434、及び充填剤を混ぜた後、30秒から5分の範囲の第2の時間中、粉末の形態の熱開始剤438と混ぜることにより生成され得る。熱開始剤438は、配合物の約0.001から0.05w%の範囲の量となり得るように添加され得る。
【0080】
ポンプ412は、リボンブレンダ408の吐出弁410の下に配置され得る。一実施形態においては、ポンプ412は、ホース414を用いることにより大型ガントリ3D印刷システム418の混合タンク416に接続され得る。任意の適切な3D印刷システムが使用され得る。本開示は、大型ガントリ3Dシステムに限定されるものではない。ガントリシステム(GS)の混合タンク416は、これが動作可能であって、樹脂としての混合成分を受け入れ可能であることを確実にするために検査され得る。吐出弁410が「開」位置に移動される前にポンプがオンに切り替えられ得る。GS混合タンク416は、光ポリマ複合樹脂を収集することを確実にするために検査され得る。リボンブレンダ408からの樹脂の流量が減少し始めると、樹脂の残余物をポンプのホッパに押し出すためにリボンブレンダ408がオンに切り替えられ得る。ポンピング工程は、リボンブレンダ408が空になった時点で終了し得る。その時点で、リボンブレンダ408及びポンプがオフに切り替えられ得る。
【0081】
ある実施形態においては、約5から20分の範囲の第1の時間中、リボンブレンダ408を動作させることにより有機マトリクス424、UV開始剤432、熱共開始剤434、及び充填剤を混ぜ合わせることにより生成された樹脂プレミックスは、樹脂プレミックスが堆積されキュアリングされる前に、3D印刷システム418の押出機内で直接第2の時間中、熱開始剤438と混ぜ合わされ得る。
【0082】
場合によっては、GS混合タンク416が、光ポリマ複合樹脂を受け入れることができない場合があり、樹脂は、貯留ドラム420内に充填され得る。ポンプ412からのホース414は、GS混合タンク416に代えて貯留ドラム420内に位置し、固定され得る。吐出弁410が「開」位置に移動される前にポンプがオンに切り替えられ得る。リボンブレンダ408からの樹脂の流量が減少し始めると、樹脂の残余物をポンプのホッパに押し出すためにリボンブレンダ408がオンに切り替えられ得る。リボンブレンダ408からの光ポリマ複合樹脂は、リボンブレンダ408内の樹脂の総体積に基づいて1以上のドラムに汲み上げられ得る。ポンプ412が使用できない場合には、空のドラムが吐出弁410の下方に置かれ、吐出弁410が開かれて光ポリマ複合樹脂がドラムに流し込まれ得る。ドラムが満杯になると、吐出弁410が閉じられ得る。
【0083】
ある実施形態においては、約5から20分の範囲の第1の時間中、ブレンダを動作させることにより有機マトリクス424、UV開始剤432、熱共開始剤434、及び充填剤を混ぜ合わせることにより生成された樹脂プレミックスは、第2の時間中、熱開始剤438と混ぜ合わされる前に、12ヶ月までの期間中、貯留され得る。
【0084】
貯留ドラム420内に貯留された光ポリマ複合樹脂で印刷する前に樹脂を混ぜなければならない場合がある。樹脂をGS混合タンク416に移送する前に樹脂を混ぜるために手動ミキサのようなミキサ422が利用され得る。貯留ドラム420の蓋が開けられ、ミキサ422のパドルがドラム内でドラムの中央と内壁との間に配置され得る。ドラムの上層が均質になるまで、パドルを時計回りに移動させることによりミキサにより樹脂の上層が混ぜられ得る。その後、パドルは、ドラムの底部に押し付けられ得る。その後、パドルを中心から外側に、そしてドラムの内壁近くで樹脂の上層に向かって上方に移動させることにより下層が混ぜられ、その後、ドラムの中心周りに反時計回りに移動させつつドラムの底部に向かって下方に押し付けられ得る。樹脂が均質になるまで混合が継続され得る。
【0085】
リボンブレンダ408の内面が染料/顔料440で汚染されると、着色されていない樹脂の生成に影響を与え得るため、そのような汚染を防止するために、貯留ドラム内の光ポリマ複合樹脂に対して着色工程が行われ得る。その後、貯留ドラムは、使用された染料/顔料440の色によりラベルが付けられ得る。染料/顔料440の必要な量が測定され、ドラム内の樹脂の層中に配置され得る。染料/顔料440を光ポリマ複合樹脂に混ぜるために手動ミキサが利用され得る。染料/顔料440が添加された後、3D印刷での使用のためにGS混合タンクに移送可能となる前に、約24時間の貯留の後にドラム内の樹脂が再び混ぜられ得る。
【0086】
連続混合の約12時間後、光ポリマ複合樹脂は使用可能になると考えることができる。貯留中に光ポリマ複合樹脂を取り扱わなければならないことがある。樹脂はGS混合タンクに汲み上げられるので、樹脂は、すべて消費されるまで連続的に混合され得る。約3時間までは混合しなくても許容され得る。樹脂がドラム内で長期貯留のために保持される場合には、以下の基準が満たされる必要があり得る。
・常にドラムを密閉する
・樹脂を光及び湿気に曝すことを避ける
・ドラムに不純物が入らないようにする
・7日ごとに1回樹脂を手動で混ぜる
・3時間を超えて混ぜられていない樹脂を使って印刷しようとしない
【0087】
場合によっては、樹脂に対して品質保証プロセスを行い得る。連続して約12時間、樹脂が混合された後、500mLのバッチが試験のために取り出され得る。リボンブレンダからバッチを汲み上げて3つのサンプルが取得され得る。すべてのサンプルは、GS混合タンクへのホース端又は第2のドラムから取り出され得る。
【0088】
ポンピングの開始後10から15秒で約150から200mLの第1のサンプルが取得され得る。ポンピング工程の途中で約150から200mLの第2のサンプルが取得され得る。ポンピングの停止前10から15秒で約150から200mLの第3のサンプルが取得され得る。
【0089】
ドラムに貯留された樹脂に関して、以下のようなサンプリング工程であり得る。
・約150から200mLの第1のサンプルが第1のドラムから取得され得る。
・約150から200mLの第2のサンプルが第2のドラムから取得され得る。
・約150から200mLの第3のサンプルが第3のドラムから取得され得る。
【0090】
この実施形態における貯留では、ミキサの1回の充填が3つのドラムの容量に等しくなり得るので、3つの異なるドラムが使用され得る。それぞれのサンプルから約100mLが、品質保証工程のために、ガラス又はPEの容器に入れられ、十分に混合され、封止され得る。
【0091】
図5は、一実施形態による方法500を示している。ブロック502では、樹脂プレミックス材料が調製される。樹脂プレミックスは、配合物の~10.0から30.0w%でアクリル酸塩モノマ及びアクリル酸塩オリゴマのうち少なくとも一方512を含み得る。ある実施形態においては、このアクリル酸塩はトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)524であり得る。樹脂プレミックスは、配合物の~5.0から30.0w%で無機水和物514をさらに含み得る。ある実施形態においては、この無機水和物は四ホウ酸二ナトリウム十水和物526であり得る。樹脂プレミックスは、配合物の~50.0から80.0w%で補強充填剤516をさらに含み得る。ある実施形態においては、この補強充填剤は酸化アルミニウム三水和物又は酸化アルミニウム三水和物混合物528であり得る。樹脂プレミックスは、配合物の~0.001から0.2w%で紫外光(UV)開始剤518をさらに含み得る。ある実施形態においては、この紫外光開始剤はビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO)530であり得る。最後に、樹脂プレミックスは、光ポリマ複合樹脂の~0.001から0.05w%で共開始剤520を含み得る。ある実施形態においては、この共開始剤はビソメルPTE532であり得る。
【0092】
ブロック504では、ブロック502で調製された樹脂プレミックスが、光ポリマ複合樹脂の~0.001から0.05w%の熱開始剤522と混合される。ある実施形態においては、この熱開始剤は、光ポリマ複合樹脂を形成するための過酸化ベンゾイル534であり得る。
【0093】
ブロック506では、3Dプリンタにより光ポリマ複合樹脂が1層に押し出される。最初の層は支持体上に位置する。後続の層は前の層の上に押し出されて、1層ごとに材料が構築される。ブロック508では、押し出されたばかりの層が光照射を用いて少なくとも部分的にキュアリングされる。このキュアリング照射は、UVキュアリングモジュールにより提供され得る。所望の最終光ポリマ複合材料がまだ完成していない場合には、判断ブロック510は、材料が完成するまでブロック506とブロック508を繰り返すために戻る。所望の最終材料が作られると、方法500が終了する。
【0094】
図6を参照すると、印刷システム600は、材料供給システム602と、印刷ヘッド620と、制御システム632とを含んでいる。材料供給システム602は、材料貯留タンク604からの入力と、材料供給ホッパ606と、ホッパから材料を供給するためのポンプ(供給ポンプ608及び供給ポンプ612)と、印刷ヘッド620への材料の移動を促進するための補助装備(補助装備614、補助装備616、及び補助装備618)を有する供給ホース610とを含んでいる。印刷ヘッドシステムは、コネクタ622と、押出機624と、ノズル626と、キュアリングモジュール628と、光キュアリングモジュール630とを含んでいる。
【0095】
材料供給システム602は、
図4に示される混合システム及び供給システム400と全体又は一部において実質的に同様のものであり得る。制御システム632は、キュアリングモジュール628に作動的に接続され、制御システム632がキュアリングモジュール628の動作を制御することが可能となっていてもよい。そのような構成においては、印刷ヘッドは、材料のキュアリングをモニタリングし、制御システム632に対して情報を通信するための能動フィードバックシステム636を含む。
【0096】
構成によっては、制御システム632は、キュアリングモジュール制御システム634のようなキュアリングモジュールを制御する制御システムを含み得る。この構成においては、キュアリングモジュール制御システム634は、例えば、キュアリングモジュール内のLEDの駆動及びそれらの出力強度を制御してもよい。システムを分離することにより、メンテナンスが容易になり、異なる印刷ジョブに対するモジュールの交換や置換が可能となり得る。例えば、特定の印刷ジョブにより適した異なる動作パラメータを有するキュアリングモジュール及び制御システムに代えて、対応する制御システムにキュアリングモジュールを交換してもよい。この構成においては、能動フィードバックシステム636は、キュアリングモジュール制御システム634に対して情報を通信し得る。制御システム632は、
図7に示される実施形態と実質的に同様なものであり得る。
【0097】
図7を参照すると、制御システム700は、コントロールパネル726と通信する自動コントローラ728と、モータドライバ708と通信するモーションコントローラ732と、リミットスイッチ702、補助装備接続704、及び周波数変換器706と通信する入力/出力モジュール730とを含んでいる。モータドライバ708は、印刷領域内で印刷ヘッドを位置決めするためのZ軸モータ710、X軸モータ712、及びY軸モータ714と通信する。モータドライバ708は、押出機及びノズルに関して印刷ヘッドのキュアリングモジュールを制御するC軸モータ716を付加的に制御する。また、制御システム700は、オペレータモニタ720と、セイフティセンサ724と通信するセイフティコントローラ722と通信する。
【0098】
制御システム700は、UV光学部品モジュール718と付加的に通信し、流し込まれた樹脂に照射してキュアリングするためにUV光学部品モジュール718の動作を制御する。
【0099】
制御システム700は、手動動作モード及び自動動作モード用のソフトウェアを有する電子部品ユニットを含んでいてもよい。制御システム700は、位置決めシステム、材料供給システム、印刷ヘッドシステム、及び(CNCミリング/平滑システムのような)補助装備のような被制御システムの動作をモニタリング及び制御するように動作し得る。位置決めシステムの制御は、計算機数値制御(CNC)の原理に基づいていてもよい。材料供給システム及び印刷ヘッドシステムの制御は、自動制御の原理に基づいていてもよく、プロセスのリアルタイムモニタリングと制御を提供するためのソフトウェアアルゴリズムを利用してもよい。補助装備の制御は、安全動作センサ、緊急事態センサ及び付加的なセイフティシステム及び装備を含み得る。
【0100】
人間のモニタリング及び制御システムは、3Dプリンタのオペレータによるモニタリング機能と手動制御動作を提供し得る。通信インタフェイスは、異なるデバイス間のデータ通信を提供し、制御システムのGコードプログラム用にも使用される。
【0101】
位置決めシステムは、貨物コンテナの内部に堅く固定された工業用アルミニウムプロファイルから組み立てられる剛結フレーム又は移動型のような他の好適な位置決めシステムを含み得る。建築プラットフォームは、貨物コンテナの内側床面により表される。4軸リニアモーションシステムは、リニアガイド、減速ギアを有するステッピングモータ、ボールネジ、ベルトドライブ、及びエンドポジションセンサを含み得る。
【0102】
材料供給システムは、材料貯留タンクからの入力、材料供給ホッパ、ホッパから材料を供給するためのポンプ、印刷ヘッドシステムに材料を運ぶ補助装備を有する供給ホースを含み得る。
【0103】
印刷ヘッドシステムは、所定の形状及びプロファイルのアパーチャを通じて材料を押し出すためのデバイス、すなわち積層ノズルと、Z軸を中心としてノズルを回転させる機構と、材料をキュアリングするための紫外光源であるUV光システムとを含み得る。
【0104】
図8は、一実施形態によるキュアリング比較800を示している。第1の3D印刷システム802は、光開始剤を含む光ポリマ複合樹脂の層を支持体804上に押し出し得る。3D印刷システム802は、各層が堆積されたときに各層を実質的に又は完全にキュアリングする光キュアリングモジュールを含み得る。光キュアリングのみからの層806は、図示されるように、層を完全にキュアリングするのに必要とされる高速キュアリングに関連して、クラックのような歪み、変形814、及び剥離816を生じることがある。
【0105】
これに対して、3D印刷システム808は、光開始剤、熱開始剤、及び共開始剤を含む光ポリマ複合樹脂の層を支持体810上に堆積させ得る。3D印刷システム808のキュアリングモジュールからのUV光は、層を付着させ、層構造を生成するために、堆積された樹脂の外皮を一通りキュアリングし得る。キュアリングされていない樹脂の残余コアは、光キュアリングの副生成物として生じる熱エネルギー及び/又はさらなるキュアリングプロセスの一部として与えられる熱からゆっくりとキュアリングされ得る。得られる二重キュアリング層812は、完全にキュアリングされると二重キュアリングプロセスによって付着力とその所望の形状をより良く維持することができる。これは、
図9においてより詳細に示されている。
【0106】
図9は、一実施形態によるキュアリングプロセスの詳細900を示している。キュアリングプロセスの詳細900は、押し出されたばかりのキュアリングされていない材料902、UVキュアリング光904、UVキュアリングされた外皮906、キュアリングされていないコア908、層付着910、キュアリング熱914、及び完全に二重キュアリングされた材料916を示している。
【0107】
3Dプリンタの押出機は、最初の層の場合は支持体上に、あるいは前層上に押し出されたばかりのキュアリングされていない材料902を堆積させ得る。3DプリンタのキュアリングモジュールはUVキュアリング光904を出射し得る。このUVキュアリング光904は、押し出されたばかりのキュアリングされていない材料902の最外部からUVキュアリングされた外皮906を生成するために、押し出されたばかりのキュアリングされていない材料902内でUV開始剤と関連して作用するように調整され得る。先に押し出された層のUVキュアリングされた外皮906に対して押し出されたばかりのキュアリングされていない材料902が付着することにより、後続の各層とそれに先行する層との間の強力な層付着910を実現し得る。また、UVキュアリングされた外皮906は、完全にキュアリングされていない場合であっても、それぞれの押し出された層がその形状と構造を維持することを可能にし得る。
【0108】
各層のUVキュアリングされた外皮906内にキュアリングされていないコア908が残っている場合がある。このキュアリングされていないコア908は、キュアリングモジュールにより出射されたUV光の量と波長の結果であり得る。また、キュアリングされていないコアは、UV照射を散乱させ又は阻止し、UVキュアリング光904が押し出された材料の最外領域を超えて透過していくことを阻害する添加剤を樹脂マトリクス内に含めることに部分的に又は全体的に起因し得る。
【0109】
キュアリングされていないコア908は、押し出された材料の中の熱開始剤の作用によりゆっくりとキュアリングされ得る。外部源から熱が与えられることがあり、さらに/あるいは、熱が光キュアリングプロセスの副生成物となることがある。添加剤又は層厚さ912がUV光がより深くまで透過することを阻害している場合であっても、この熱は熱開始剤に作用して、キュアリングプロセスをゆっくりと完了させ得る。この二重キュアリングにより、完全に二重にキュアリングされた材料916の層が密接に結合し、構造的に安定したものとなり、UVキュアリングだけを使用した場合に考えられるよりも大きな層厚さ912(場合によっては、10mm以上)をもたらし得る。
【0110】
図10は、一実施形態による異なる厚さの炭粉の層を含む、3D印刷された、二重キュアリングされた材料1000の写真である。二重キュアリング光ポリマ複合樹脂を利用することで、炭粉を添加することができ、キュアリング最終段階が、炭粉が阻害しない熱エネルギー(熱)を利用しているので、炭粉1002とともに最終的に堆積される層が、(必要に応じて)平坦になり、密接に接合し、図示された例に見られるようなほぼ10mmなど、かなりの厚さに構築することができる。
【0111】
二重キュアリングプロセスを利用しない構成においては、炭粉1002とともに堆積される層は、光ポリマ複合樹脂内でのUV開始剤との相互作用を介して光キュアリングされだけであり得る。炭粉が光キュアリングモジュールからのUV光の散乱を阻害し得るために、層は完全かつ平坦に硬化しない。阻害され散乱された光は、完全な硬化を行うのに十分な深さまで層内に透過することができない場合がある。
【0112】
図11は、構造壁1106は、充填パターン1108だけを含んでいるが、構造壁1102、中空部1104、及び充填パターン1108を含むセル状構造の概念1100を示している。特別な充填パターンを有する壁構造を利用して、追加の補強材を用いることなく材料の耐荷重を増加させ得る。構造層は、引っ張り強さを高くし、一貫性を高めるためにセル状構造を用いて印刷される。本明細書に開示される二重キュアリング光ポリマ複合材料を用いた3D印刷方法により、現在建設で一般的に用いられている多くの材料に比べて、ずっと良好に荷重を支持することが可能な、異なる幾何寸法を有する構造要素を構築することが可能となる。
【0113】
実施例
【0114】
3D印刷部品の全体構造は、1層ごとの積層であることにより、機械的特性において何らかの異方性を有し得る。異方性の影響は、堆積された層に沿う方向及び横切る方向における印刷部品の特性における百分率の差に表れ得る。しかしながら、開始剤の二重キュアリングシステムは、印刷部品の全体的な異方性を減少させ得る。熱開始剤を含む組成及び含まない組成から得られた製品を示す比較例が表11に示される。
【表11】
【0115】
光重合複合物は、20分間のブレンダの作用により表12に示されるアクリル酸塩モノマ、UV開始剤、及び充填剤を混ぜ合わせることにより生成され得る。二重キュアリング複合物は、20分間のブレンダの作用により表12に示されるアクリル酸塩モノマ、UV開始剤、熱共開始剤、及び充填剤を混ぜ合わせることにより生成され得る。熱開始剤は、複合物が押し出される直前にプレミックスに添加され得る。
【表12】
【0116】
UV LED光源を備えた押出型3Dプリンタを印刷に使用してもよい。417nmのピーク波長を有するLEDが選択され得る。堆積された層の上面におけるUV LED光源の最大光強度は、約20mmのスポットサイズ径で42から43W/cm2であり得る。ノズル(内径10mm)への複合物の供給速度が2×103から2.5×1O3mm3/秒で40mm/秒のノズル流路速度を適用し得る。これにより、幅16mm及び高さ4mmの層を形成し得る。光重合材料は、UV LED光源の100%の強度を付与することにより印刷され得る。二重キュアリング重合プロセスの場合、光源の最大強度の3から6%を用いることができる。付与された光照射により、表面での重合反応の開始を制御が可能となり得る。選択されたBAPOの濃度及び光強度は、透過深さを制限し、反応を堆積した層の上面近傍に蓄積させ得る。これにより、素早い固化と体積収縮によって固体外皮の形成をサポートし、表面の変形を避けることができる。この結果、固体外皮が、層の形状を保持し得る0.5から1mmの厚さで形成され得る。
【0117】
二重キュアリングシステムを適用することにより重合された複合物と比較すると、光重合複合物の機械的性能はより低くなり得る。二重キュアリング複合物に関して、極限引っ張り強さに関して33%の差が見られる。印刷された層に沿う方向及び横切る方向における極限圧縮強さの値は等しくなり得る。堆積された層に沿う方向及び横切る方向における印刷部品の特性の差の減少は、3D印刷部品についての層付着の改善による異方性の減少により生じ得る。光重合複合物は、極限圧縮強さの値に14%の差があり、極限引っ張り強さに45%の差があり得る。二重キュアリングされた配合物がより堅いのは、連続光重合及び熱重合内で材料の変換の度合いが高いことが考えられる。
【0118】
本開示における方法及び配合物が、いくつかの好ましい実施形態を基礎として上記で述べられている。本文書を基礎とする分野における当業者が読んだときに、本発明の概念内にあると読めるすべての組み合わせのように、異なる変形例の異なる側面が互いに組み合わせたものとして述べられているものと考えられる。好ましい実施形態は、本文書の保護の範囲を制限するものではない。
【0119】
本出願の本発明の実施形態を詳細に、また例示的な実施形態を参照して述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、改良及び変形が可能であることは明らかであろう。