IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

特許7422864ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物
<>
  • 特許-ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20240119BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20240119BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D183/07
C09D183/05
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022511288
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2019101940
(87)【国際公開番号】W WO2021031185
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チーホア
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ションラン
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/112911(WO,A1)
【文献】特開2018-012827(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109880523(CN,A)
【文献】特開2010-174233(JP,A)
【文献】特開2016-196609(JP,A)
【文献】特開平09-087585(JP,A)
【文献】特表2015-532311(JP,A)
【文献】国際公開第2018/148504(WO,A1)
【文献】特開昭56-155257(JP,A)
【文献】特開2019-099715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244636(US,A1)
【文献】国際公開第2019/079365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物であって、
(A)単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(R SiO2/2
(式中、各Rは独立して選択される炭素原子1~18個のアルキル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子2~18個のアルケニル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子5~20個のアリール基であり、下付き文字aは2の平均値を有し、下付き文字b>0、下付き文字c≧0、下付き文字d≧0であり、ただし、量(c+d)>0であり、及び量(a+b+c+d)はポリジオルガノシロキサンに数平均分子量≧3,000g/molを与えるのに十分である)
のポリジオルガノシロキサンと、
(B)単位式:
(R SiO 1/2 (R SiO 1/2 (SiO 4/2
(式中、R 及びR は上記のとおりであり、下付き文字e、f及びgは、e≧0、f≧0、g>1及び(e+f)>4であるような平均値を有し、ただし、量(e+f+g)はポリオルガノシリケート樹脂に1,000g/mol~8,000g/molの数平均分子量を与えるのに十分である)
の、ケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサン(ここで前記ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基1モル当たり0.8モル~5モルのケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量で存在する)と、
(D)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.001重量部~2重量部の量のヒドロシリル化反応阻害剤と、
(F)出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.01重量部~10重量部の量の定着添加剤と、
任意選択で、(G)溶媒と、
を含み、
ここで、前記組成物は出発物質(A)以外にケイ素結合アリール基を有するポリジオルガノシロキサンを含まない、
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物。
【請求項2】
出発物質(A)の前記ポリジオルガノシロキサンにおいて各Rがメチルであり、各Rがビニルであり、各Rがフェニルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
出発物質(A)の前記ポリジオルガノシロキサンにおいて、下付き文字c=0、及び下付き文字d>0であり、量(a+b+d)が3,000g/mol~500,000g/molの数平均分子量をポリジオルガノシロキサンに与えるのに十分な値を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(C)の前記ポリアルキルハイドロジェンシロキサンが、単位式(C1):
(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(R HSiO1/2
を含み、ここで、 は請求項1で定義したとおりであり、下付き文字mは0~2であり、下付き文字pは0~2であり、量(m+p)は2の平均値を有し、下付き文字n>0であり、下付き文字o>0であり、量(n+p)≧3であり、量(m+n+o+p)は#CP-52スピンドルを備えたブルックフィールドDV-IIIコーンプレート型粘度計で、25℃、0.1~50RPMで測定された5mPa・s~500mPa・sの粘度をポリアルキルハイドロジェンシロキサンに与えるのに十分な値を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(C)の前記ポリアルキルハイドロジェンシロキサンが、単位式(C2):
(HR SiO1/2(SiO4/2
を含み、ここで、 は請求項1で定義したとおりであり、下付き文字qとrは0.5/1~2/1のr/qのモル比で存在し、量(q+r)は5mPa・s~200mPa・sの粘度をポリアルキルハイドロジェンシロキサンに与えるのに十分な値を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(D)の前記ヒドロシリル化反応触媒が、(D-1)白金族金属、(D-2)白金族金属化合物、(D-3)白金族金属化合物とオルガノポリシロキサンとの錯体、(D-4)マトリックスまたはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された白金族金属化合物、及び(D-5)マトリックスまたはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された錯体からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(D)の前記ヒドロシリル化反応触媒がKarstedt触媒を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
出発物質(E)の前記ヒドロシリル化反応阻害剤がアセチレン系アルコールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アセチレン系アルコールが1-エチニル-1-シクロヘキサノールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
(F)の前記定着添加剤が、(F-1)ビニルトリアセトキシシラン、(F-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(F-3)(F-1)と(F-2)との組み合わせ、(F-4)(F-3)と、ヒドロキシル基若しくはメトキシ基で終端されたか又はヒドロキシ基とメトキシ基の両方で終端されたポリジメチルシロキサンとの組み合わせ、及び(F-5)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記定着添加剤が、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
出発物質(G)の前記溶媒が組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて最大96重量%までの量で存在し、前記溶媒が芳香族炭化水素を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
剥離ライナーの調製方法であって、
1)請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を基材の表面上にコーティングする工程と、
2)組成物を硬化させて前記基材の表面上に剥離コーティングを形成する工程と、を含む剥離ライナーの調製方法。
【請求項14】
基材と、前記基材の表面上に形成された剥離コーティングとを含む剥離ライナーであって、
前記剥離コーティングが、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の硬化物である、剥離ライナー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物及びその調製方法を開示する。ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材上で硬化させて、感圧接着剤を保護するために有用な剥離ライナーを形成することができる。
【背景技術】
【0003】
タイトな剥離ライナー用途の使用及び市場規模はアジア市場で拡大している。ポリオルガノシロキサン剥離コーティングの剥離力を増加させるための提案されている1つの方法は、高剥離力添加剤(high release additive)(一般にシロキサン樹脂)を希釈されたまたは溶媒ベースの剥離コーティング組成物に添加することである。しかしながら、そのような添加剤を含めることは非効率的であろう。
【0004】
発明が解決しようとする課題
ポリマーフィルムまたは紙などの基材の表面上に塗布して、望ましい剥離力をなお提供しながら、(高い持続的な接着強度によって示されるように)移行が少なく強い(tight)剥離力を提供することができるポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物が、ポリオルガノシロキサンによる電子部品の汚染を回避するために、特に電子産業における顧客に望まれている。
【発明の概要】
【0005】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、
(A)単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(R SiO2/2(式中、各Rは独立して選択される炭素原子1~18個のアルキル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子2~18個のアルケニル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子5~20個のアリール基であり、下付き文字aは2の平均値を有し、下付き文字b>0、下付き文字c≧0、下付き文字d≧0であり、ただし、量(c+d)>0である)のポリジオルガノシロキサンと、
(B)ケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンと、
(D)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と
(E)ヒドロシリル化反応阻害剤と、
(F)定着添加剤と、
任意選択で、(G)溶媒と、を含み、
ここで、組成物はケイ素結合アリール基を有さないポリジオルガノシロキサンを含まない。
【0006】
剥離ライナーの調製方法は、
1)基材の表面上に上記のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物をコーティングする工程と、
2)組成物を硬化させて、基材の表面上に剥離コーティングを形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】剥離ライナー100の部分断面図を示す。剥離ライナーは、フィルム基材103の第1表面102上に本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を硬化させることによって調製されたポリオルガノシロキサン剥離コーティング101を含む。剥離ライナー100は、フィルム基材103の反対側の表面105に貼られた支持体104を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、
(A)単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(R SiO2/2(式中、各Rは独立して選択される炭素原子1~18個のアルキル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子2~18個のアルケニル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子5~20個のアリール基であり、下付き文字aは2の平均値を有し、下付き文字b>0、下付き文字c≧0、下付き文字d≧0であり、ただし、量(c+d)>0である)のポリジオルガノシロキサンと、
(B)ケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサン(ここでポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基1モル当たり0.8モル~5モルのケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量で存在する)と、
(D)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.001重量部~2重量部の量のヒドロシリル化反応阻害剤と、
(F)出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.01重量部~10重量部の量の定着添加剤と、
任意選択で、(G)溶媒と、を含み、
ここで、組成物はケイ素結合アリール基を有さないポリジオルガノシロキサンを含まない。
【0009】
(A)ポリジオルガノシロキサン
本明細書のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、出発物質(A)の、ケイ素結合アルケニル基とケイ素結合アリール基の両方を有するポリジオルガノシロキサンを含む。このポリジオルガノシロキサンは、ペンダント型のアリール基を有するビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであってもよい。出発物質(A)のポリジオルガノシロキサンは、単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(R SiO2/2(式中、各Rは独立して選択される炭素原子1~18個のアルキル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子2~18個のアルケニル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子5~20個のアリール基であり、下付き文字aは2の平均値を有し、下付き文字b>0、下付き文字c≧0、下付き文字d≧0であり、ただし、量(c+d)>0である)を有してもよい。
【0010】
のアルキル基は、1~18個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有する。Rの好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに炭素原子6個の分枝飽和炭化水素基が挙げられるが、それらに限定されない。あるいは、各Rは独立してメチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される。Rはそれぞれの場合で、同じであっても異なってもよい。あるいは、各Rはメチル基である。
【0011】
のアルケニル基はヒドロシリル化反応することができる。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルが挙げられる。あるいは、各Rは、ビニル、アリル又はヘキセニルであってもよく、あるいはビニル又はヘキセニルであってもよい。Rはそれぞれの場合で、同じであっても異なってもよい。あるいは、各Rはビニル基である。
【0012】
のアリール基は、5~20個の炭素原子、あるいは6~10個の炭素原子を有する。好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルによって例示されるが、これらに限定されない。Rはそれぞれの場合で、同じであっても異なってもよい。あるいは、各Rはフェニルであってもよい。
【0013】
上記単位式中の下付き文字a、b、c、及びdは、少なくとも3,000g/mol、あるいは3,000g/mol~500,000g/mol、あるいは15,000g/mol~400,000g/molのMnをポリジオルガノシロキサンに与えるために十分である。ポリジオルガノシロキサンは、0.01重量%~5重量%のアルケニル基含有量を有してもよい。ポリジオルガノシロキサンは、1重量%~50重量%のアリール基含有量を有してもよい。
【0014】
アリール官能性ポリジオルガノシロキサンの例としては、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルフェニル)シロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチル/ジフェニル)シロキサンコポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルフェニル)シロキサンコポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチル/ジフェニル)シロキサンコポリマー、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。アリール官能性ポリジオルガノシロキサンは、米国特許第6,956,087号及び米国特許第5,169,920号に記載されているように当技術分野で知られている平衡化プロセスによって合成することができる。
【0015】
(B)ポリオルガノシリケート樹脂
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに、出発物質(B)の、ケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシリケート樹脂を含む。ポリオルガノシリケート樹脂は、式R SiO1/2の一官能性単位(「M」単位)、及び式SiO4/2の四官能性単位(「Q」単位)を含み、ここで、各Rは独立して選択された一価ヒドロカルビル基である。Rとして好適な一価ヒドロカルビル基は、1~20個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~8個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子を有してもよい。あるいは、Rのヒドロカルビル基は、アルキル基、アルケニル基及びアリール基からなる群;あるいはアルキル及びアリールからなる群、あるいはアルキル及びアルケニルからなる群、あるいはアルキルからなる群から選択され得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシル、またシクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基を含む6個以上の炭素原子の分岐した飽和の一価ヒドロカルビル基が挙げられる。アリール基は、シクロペンタジエニル、フェニル、トリル、キシリル、アントラセニル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、及びナフチルによって例示される。単環式アリール基は、炭素原子5~9個、あるいは炭素原子6~7個、あるいは炭素原子5~6個を有し得る。多環式アリール基は、炭素原子10~17個、あるいは炭素原子10~14個、あるいは炭素原子12~14個を有し得る。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂中の各Rは、アルキル、アルケニル、及びアリールからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各Rは、メチル、ビニル、及びフェニルから選択されてもよい。あるいは、R基の少なくとも1/3、あるいは少なくとも2/3がメチル基である。あるいは、M単位は、(MeSiO1/2)、(MePhSiO1/2)、及び(MeViSiO1/2)によって例示され得る。ポリオルガノシリケート樹脂は、例としてベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素が挙げられる本明細書に記載されるものような溶媒、又は低粘度の直鎖及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶である。
【0016】
調製されたとき、ポリオルガノシリケート樹脂は上記のM及びQ単位を含み、また、ポリオルガノシリケート樹脂はさらに、シラノール(ケイ素結合ヒドロキシル)基を有する単位を含み、また、式Si(OSiR のネオペンタマーを含んでもよく、ここで、Rは上記のとおりである。米国特許第9,509,209号第32欄の参照例2に記載されたように、Si29核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、M及びQ単位のモル比を測定することができ、ここで、その比は、{M(樹脂)+(M(ネオペンタマー)}/{Q(樹脂)+Q(ネオペンタマー)}として表され、樹脂及びネオペンタマー部分におけるシリケート基(Q単位)の総数に対するポリオルガノシリケート樹脂の樹脂及びネオペンタマー部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数のモル比(M:Q比)を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1、あるいは0.6:1~0.9:1であってもよい。
【0017】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRによって表されるヒドロカルビル基の種類を含む様々な因子に依存する。ポリオルガノシリケート樹脂のMnとは、米国特許第9,593,209号第31欄の参照例1の手順に従ってGPCを用いて測定された数平均分子量を意味する。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、1,000g/mol超、あるいは1,000g/mol~8,000g/mol、あるいは1,000g/mol~2,000g/mol、あるいは1,100g/mol~1,900g/mol、あるいは1,200g/mol~1,800g/mol、あるいは1,300g/mol~1,700g/mol、あるいは1,400g/mol~1,600g/mol、あるいは1,500g/molであってもよい。
【0018】
米国特許第8,580,073号第3欄5行目~第4欄31行目は、本明細書に記載のポリオルガノシリケート樹脂の例であるシリコーン樹脂を開示していることから参照により本明細書に組み込まれる。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解、又はシリカヒドロゾルキャッピング法によるなどの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの米国特許第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されているものなどのシリカヒドロゾルキャッピング法によって調製することができる。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はそれらの混合物と反応させることと、M単位とQ単位を有するコポリマーを回収することとを含む。得られるコポリマーは一般的に、2~5重量パーセントのケイ素結合ヒドロキシル(シラノール)基を含有する。
【0019】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、トリオルガノシラン及び4つの加水分解性置換基を有するシラン又はアルカリ金属シリケートであってもよい。トリオルガノシランは、式R SiX(式中、Rは上記のとおりであり、Xは、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、あるいはハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有し得る。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX (式中、各Xは、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである)を有することができる。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0020】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂は、典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、すなわち、式HOSi3/2及び/又はHOR SiO1/2を含有する。ポリオルガノシリケート樹脂は、最大2%のケイ素結合ヒドロキシル基を含み得る。ポリオルガノシリケート樹脂中に存在するケイ素結合ヒドロキシル基の濃度は、ASTM標準E-168-16に従ってFTIR分光法を用いて測定することができる。特定の用途では、ケイ素結合ヒドロキシル基の量が0.7%未満、あるいは0.3%未満、あるいは1%未満、あるいは0~0.8%であることが望ましい場合がある。ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、ポリオルガノシリケート樹脂を適切な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンと反応させることによって、トリヒドロカルビルシロキシ基、又は別の加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂のケイ素結合ヒドロキシル基と反応させるのに必要な量のモル過剰量で添加することができる。
【0021】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、2%以下、あるいは0.7%以下、あるいは0.3%以下、あるいは0.3%~0.8%の、式XSiO3/2及び/又はXR SiO1/2(式中、Rは上記のとおりであり、Xは、Xについて上述した加水分解性置換基を表す)で表される単位を更に含んでもよい。
【0022】
本明細書で有用なポリオルガノシリケート樹脂は、末端脂肪族不飽和基を有する。末端脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシリケート樹脂は、上記のDaudtらの生成物を、最終生成物中に3~30モル%の不飽和有機基を提供するために十分な量の不飽和有機基含有末端封鎖剤及び脂肪族不飽和を含まない末端封鎖剤と反応させることによって調製することができる。末端封鎖剤の例としては、シラザン、シロキサン及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。好適な末端封鎖剤は、当該技術分野において公知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号、及び同第4,585,836号に例示されている。単一の末端封鎖剤又はこのような剤の混合物を使用して、このような樹脂を調製することができる。
【0023】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、単位式:(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2を有してもよく、ここで、R及びRは上記のとおりであり、下付き文字e、f及びgは、e≧0、f≧0、g>1、及び(e+f)>4であるような平均値を有し、ただし、量(e+f+g)は、ポリオルガノシリケート樹脂に上記のMnを与えるのに十分な量である。
【0024】
出発物質(A)及び(B)は、樹脂/ポリマーの重量比、すなわち(B)/(A)比が1:10~10:1であるような相対量で存在し得る。
【0025】
(C)ポリアルキルハイドロジェンシロキサン
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに、出発物質(C)の、1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンを含み、ここで、ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、出発物質(A)と(B)中のアルケニル基1モル当たり0.8モル~5モルのケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量で存在する。理論に束縛されるものではないが、出発物質(C)は、本明細書において架橋剤として作用し得ると考えられる。
【0026】
ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、単位式(C1):(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(R HSiO1/2を含んでもよく、ここで、Rは上記のとおりであり、下付き文字mは0~2であり、下付き文字pは0~2であり、量(m+p)は2の平均値を有し、下付き文字n>0であり、下付き文字o>0であり、量(n+p)≧3であり、また、量(m+n+o+p)は、#CP-52スピンドルを備えたブルックフィールドDV-IIIコーンプレート型粘度計で25℃、0.1~50RPMで測定された、5mPa・s~500mPa・s、あるいは25mPa・s~200mPa・s、あるいは25mPa・s~70mPa・sの粘度をポリアルキルハイドロジェンシロキサンに与えるのに十分な値を有する。
【0027】
あるいは、ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、単位式(C2):(HR SiO1/2(SiO4/2を含んでもよく、ここで、Rは上記のとおりであり、下付き文字qとrは、0.5/1~2/1、あるいは>1/1~2/1のr/qのモル比で存在し、量(q+r)は、上記の粘度をポリアルキルハイドロジェンシロキサンに与えるのに十分な値を有する。
【0028】
出発物質(C)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、
C-I)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
C-II)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
C-III)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
C-IV)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
C-V)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリシリケート、及び
C-VI)C-I~C-V)の任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、単一のポリアルキルハイドロジェンシロキサンであっても、分子量、構造、シロキサン単位及び配列から選択される1つ以上の特性が異なる2つ以上のポリアルキルハイドロジェンシロキサンの組み合わせであってもよい。
【0029】
(D)ヒドロシリル化反応触媒
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに、触媒量の出発物質(D)のヒドロシリル化反応触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、i)白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、ii)例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスピノ(diethylphospino))エタン]ジクロロジロジウムのようなロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金などのそのような金属の化合物、及びiii)当該化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はiv)マトリックス又はコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedt触媒)が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号、同3,220,972号、同3,296,291号、同3,419,593号、同3,516,946号、同3,814,730号、同3,989,668号、同4,784,879号、同5,036,117号、及び同5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化反応触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において既知である。ヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000 Catalyst及びSYL-OFF(商標)2700が、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0030】
ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、すなわち、出発物質(C)のケイ素結合水素原子と出発物質(A)及び(B)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分な量で存在する。本明細書で使用されるヒドロシリル化反応触媒の正確な量は、出発物質(A)、(B)及び(C)の選択、並びにそれらのそれぞれのケイ素結合水素原子及びアルケニル基の含有量、また選択された触媒中の白金族金属の含有量を含む様々な因子によって決まるが、ヒドロシリル化反応触媒の量は、出発物質(A)、(B)及び(C)を合わせた合計重量に基づいて1ppm~6,000ppm、あるいは、同じ基準で1ppm~1,000ppm、あるいは1ppm~150ppmの白金族金属を与えるのに十分であってよい。
【0031】
あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(D-1)白金族金属、(D-2)白金族金属化合物、(D-3)白金族金属化合物とオルガノポリシロキサンとの錯体、(D-4)マトリックスまたはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された白金族金属化合物、及び(D-5)マトリックスまたはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された錯体からなる群から選択され得る。あるいは、(D)のヒドロシリル化反応触媒は、Karstedt触媒を含んでもよい。
【0032】
(E)ヒドロシリル化反応阻害剤
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに、出発物質(E)のヒドロシリル化反応阻害剤(阻害剤)を含み、それは阻害剤を省いた同じ出発物質の反応速度と比較して、出発物質(C)のケイ素結合水素原子と出発物質(A)及び(B)のアルケニル基との反応速度を変化させるために使用され得る。阻害剤は、アセチレン系アルコール、例えばメチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらの組み合わせ;例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンのようなメチルビニルシクロシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びそれらの組み合わせによって例示されるシクロアルケニルシロキサンなどのオレフィン性シロキサン;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせ;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミン;フマル酸ジアルキル、例えばフマル酸ジエチルなど、フマル酸ジアルケニル、例えばフマル酸ジアリルなど、フマル酸ジアルコキシアルキル、マレイン酸エステル、例えばマレイン酸ジアリル及びマレイン酸ジエチルなど;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせによって例示される。代表的なオレフィン系シロキサンは、例えば米国特許3,989,667号に開示されている。代表的なアセチレン系アルコールは、例えば米国特許第3,445,420号に開示されている。あるいは、本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティングに使用される阻害剤はアセチレン系アルコールを含んでもよい。あるいは、阻害剤は1-エチニル-1-シクロヘキサノールを含んでもよい。
【0033】
あるいは、阻害剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール阻害剤を含有する出発物質のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
【0034】
シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びこれらの組み合わせによって例示される。あるいは、シリル化アセチレン系化合物は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせによって例示される。本明細書における阻害剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法により調製され得る。例えば、米国特許第6,677,740号では、酸受容体の存在下でクロロシランと上記のアセチレン系アルコールを反応させることにより上記のアセチレン系アルコールをシリル化することが開示されている。
【0035】
本明細書で添加される阻害剤の量は、所望の反応速度、使用される特定の阻害剤、並びに出発物質(A)、(B)及び(C)の選択及び量を含む様々な因子によって決まる。しかしながら、阻害剤の量は出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.001重量部~2重量部であってもよい。
【0036】
(F)定着添加剤
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに、出発物質(F)の定着添加剤を含む。理論に束縛されるものではないが、定着添加剤は、本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を硬化させて調製される剥離コーティングにより基材への結合を促進すると考えられる。
【0037】
好適な定着添加剤としては、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、及びビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのシランカップリング剤、並びに当該シランカップリング剤の混合物又は反応混合物が挙げられる。あるいは、定着添加剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0038】
あるいは、定着添加剤の例として、アルケニル官能性アルコキシシラン(例えばビニルアルコキシシラン)とエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、アルケニル官能性アセトキシシラン(例えばビニルアセトキシシラン)とエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、及び1分子中に少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基と少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物のような)組み合わせ(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)を挙げることができる。好適な定着添加剤及びその調製方法は、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、2004/0254274、2005/0038188、2012/0328863の段落[0091]、及び米国特許出願公開第2017/0233612号の段落[0041]、並びに欧州特許第0556023号に開示されている。
【0039】
定着添加剤は市販されている。例えば、SYS-OFF(商標)297、SYL-OFF(商標)397及びSYL-OFF(商標)9176が、Midland,Michigan,U.S.AのDow Silicones Corporationから入手可能である。定着添加剤の他の例としては、(F-1)ビニルトリアセトキシシラン、(F-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(F-3)(F-1)と(F-2)との組み合わせ、(F-4)(F-3)と、ヒドロキシル基、メトキシ基で終端されたか又はヒドロキシ基及びメトキシ基の両方で終端されたポリジメチルシロキサンとの組み合わせ、及び(F-5)2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。(F-3)及び(F-4)の組み合わせは、物理的なブレンド及び/又は反応生成物であってもよい。あるいは、定着添加剤は(F-5)2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを含んでもよい。
【0040】
定着添加剤の量は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物が塗布される基材の種類、及びポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の塗布の前にプライマー又は他の表面処理が使用されているかどうか、を含む様々な因子によって決まる。しかしながら、定着添加剤の量は、出発物質(A)及び(B)100部当たり0.01部~10部、あるいは同じ基準で0.2部~1部、あるいは0.3部~0.6部であってもよい。
【0041】
出発物質(G)溶媒
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物はさらに任意選択で、出発物質(G)の溶媒を含んでもよい。好適な溶媒としては、ポリアルキルシロキサン、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好適な蒸気圧を有するポリアルキルシロキサンは、溶媒として使用することができ、これらとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及び他の低分子量ポリアルキルシロキサン、例えば、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,U.S.A)から市販されている、0.5~1.5cStのDOWSIL(商標)200FLUIDS及びDOWSIL(商標)OS FLUIDSが挙げられる。
【0042】
あるいは、出発物質(G)は有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、又はオクタン等の脂肪族炭化水素、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のグリコールエーテル;ミネラルスピリット;ナフサ;又はそれらの組み合わせであり得る。
【0043】
溶媒の量は、選択する溶媒の種類、及び硬化性ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物に選択される他の出発物質の量や種類を含む様々な因子によって決まる。しかし、溶媒の量は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の重量に基づいて、0%~96%、あるいは2%~50%であってもよい。溶媒は、例えば混合及び1つ以上の出発物質の送達を支援するために、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の調製中に添加してもよい。例えば、樹脂及び/又は触媒を溶媒中で送達してもよい。溶媒の全て又は一部を、任意でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の調製後に除去してもよい。あるいは、使用者が受け取った後及び使用する前にポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を希釈してもよい。
【0044】
H)ミスト防止添加剤
出発物質H)は、特に高速コーティング装置を用いたコーティングプロセスにおけるシリコーンミストの形成を低減又は抑制するためにポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物に添加してもよいミスト防止添加剤である。ミスト防止添加剤は、単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO1/2及び(SiO4/2(式中、R及びRは上記のとおりであり、下付き文字h>0、下付き文字i>0、下付き文字j>0、下付き文字k>0であり、量(h+i+j+k)は、分岐ポリオルガノシロキサンに25℃で30,000mPa・s~50,000mPa・s、あるいは35,000mPa・s~45,000mPa・sの粘度を提供するのに十分な値を有する)を含むポリオルガノシロキサンであってもよい。好適なミスト防止添加剤及びそれらの調製方法は当技術分野において、例えば、米国特許出願第2011/0287267号、米国特許第8,722,153号、米国特許第6,805,914号、米国特許第6,586,535号、米国特許第6,489,407号及び米国特許第5,625,023号で知られている。
【0045】
ミスト防止添加剤の量は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物に選択される他の出発物質の量及び種類を含む様々な因子によって決まる。しかし、ミスト防止添加剤の量は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の重量に基づいて、0%~10%、あるいは0.1%~3%であってもよい。
【0046】
本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物にまた添加することができる任意の出発物質としては、例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤、及び、例えばシリカ、石英、又は石灰などの充填剤が挙げられる。
【0047】
あるいは、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、充填剤を含まなくてもよいか、又は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の重量の0%~30%のような限定された量のみの充填剤を含有する。充填剤は、凝集することがあるか、又はそうでなければ剥離コーティングの適用に使用されるコータ装置にくっつくことがある。それらは、剥離コーティング及びそれから形成された剥離ライナーの光学特性、例えば透明性を妨げる場合がある。充填剤は、被着物の接着を害する場合がある。
【0048】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、剥離力(剥離コーティングと感圧接着剤を含むラベルなどのそれへの被着体との間の接着力)のレベルを制御(低減)するために過去に使用されてきた従来の剥離調整剤を含まなくてもよい。そのような剥離調整剤の例としては、トリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンが挙げられる。理論に束縛されるものではないが、剥離コーティング組成物中にトリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンを含めることにより、残留(subsequent)接着強度が低下し、及び/又はそれから調製された剥離コーティングの移行が増加するであろうと考えられる。したがって、本明細書に記載のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、本明細書に記載の出発物質(A)以外にケイ素結合アリール基(例えば、ケイ素結合フェニル基)を含有するポリオルガノシロキサンを含まなくてもよい。
【0049】
硬化性ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まなくてもよい。硬化中、その表面張力が低いために、フルオロ化合物はコーティング組成物と基材との界面、例えばポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物/PETフィルムの界面に急速に移行して、フッ素含有バリアを形成することによって、(ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の硬化によって調製される)剥離コーティングの基材への接着を妨害すると考えられる。バリアを形成することによって、フルオロ化合物は、いずれの成分も界面で反応しないようにする。更に、フルオロシリコーン化合物は通常高価である。
【0050】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物及び剥離ライナーの製造方法
本発明のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、出発物質を一緒に混合して、例えば、一成分組成物を調製することによって調製することができる。しかし、使用時(例えば、基材に塗布する直前)に成分を合わせるまで架橋剤と触媒が別々の成分中に貯蔵される多成分組成物としてポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を調製することが望ましいであろう。
【0051】
例えば、多成分ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、
成分(A)のケイ素結合アルケニル基を有する出発物質、すなわち出発物質(A)及び(B)、(D)ヒドロシリル化反応触媒、及び存在する場合は(H)ミスト防止添加剤を含むベース部分と、
成分(B)の(A)ポリジオルガノシロキサン及び(C)ポリアルキルハイドロジェンシロキサン(架橋剤)を含む硬化剤部分とを含んでもよい。出発物質(E)のヒドロシリル化反応阻害剤は、成分(A)、成分(B)のいずれか、又はその両方に添加することができる。出発物質(F)の定着添加剤は、成分(A)又は成分(B)のいずれかに組み込んでもよく、あるいは別個の(第3の)成分に添加してもよい。存在する場合、G)溶媒は、成分(A)、成分(B)、又はその両方に添加することができる。成分(A)と成分(B)は、(A):(B)の重量比で1:1~10:1、あるいは1:1~5:1、あるいは1:1~2:1で合わせてもよい。成分(A)と成分(B)は、その成分を合わせてポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を調製する方法、及び/又はポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材に適用する方法についての説明書と共に、キットとして提供されてもよい。
【0052】
剥離ライナーを形成する方法は、
1)(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び任意で(G)溶媒及び(H)ミスト防止添加剤の1つ以上を含む出発物質を合わせること、それによる上記ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物と、
2)ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材の表面に塗布することと、を含む。
【0053】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、例えばスプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷あるいはロールコータ、例えば、オフセットウェブコータ、キスコーター、又はエッチングされたシリンダコータによるロールコーティングなどの任意の簡便な手段によって、基材の表面に塗布することができる。
【0054】
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、例えばポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムのポリマーフィルム基材などの任意の基材の表面に塗布することができる。あるいは、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、プラスチックコート紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコートクラフトを含む紙基材に塗布することができる。あるいは、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物は、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に塗布することができる。
【0055】
方法はさらに、3)ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材の表面上にコーティングする前に、基材の表面を処理する工程を含んでもよい。基材の表面の処理は、プラズマ処理又はコロナ放電処理などの任意の簡便な手段によって実施することができる。あるいは、基材の表面を、プライマーを塗布することによって処理してもよい。場合によっては、コーティングの前に基材の表面を処理すると、剥離コーティングの定着が改善され得る。
【0056】
方法は、4)溶媒を除去する工程を更に含んでもよく、この工程は、溶媒の全て又は一部を除去するのに十分な時間、50℃~100℃に加熱するなどの任意の従来の手段によって行うことができる。方法はさらに、5)ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を硬化させて、剥離コーティングを基材の表面上に形成する工程を含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
【0057】
硬化は、生産用のコータの条件下、120℃~160℃の空気温度、1秒~60秒、あるいは10秒~60秒、あるいは1秒~30秒、あるいは1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で作用され得る。工程4)及び/又は5)の加熱は、オーブン、例えば空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダーの周囲にコーティングされたフィルムを通すことによって行うことができる。
【0058】
剥離コーティングのコート重量は、0.6g/m~1.3g/m、あるいは、0.6g/m~0.8g/mであり得る。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン剥離コーティングの1つの利点は、少ないコート重量(例えば、0.8g/m以下)で強い剥離力(例えば、tesa(商標)7475テープを用いて参照例3(2)及び(3)の方法で試験して室温(RT)で>100g/inch及び70℃で>200g/inch)、及び高い残留接着強度(参照例3(4)の方法で試験して>90%)を提供できることである。
【0059】
上記のように調製した剥離ライナーを使用して感圧接着剤を保護することができる。使用者は、剥離ライナー上に直接、液体感圧接着剤組成物をコーティングし、熱によって、あるいはUV硬化によって溶媒又は水を除去し、次いで基材と積層してロールに巻き戻すことができる。あるいは、使用者は、テープ、ラベル、又はダイカッティング用途のために、乾燥した感圧性接着剤又は粘着性フィルムで剥離ライナーを積層してもよい。
【実施例
【0060】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。以下の略語を使用した:RF:剥離力(剥離試験機)、CW:コート重量(Oxford XRF)、RO:Rub Off(定着性能)、及びSAS:残留接着強度(移行性)。
【表1】
【0061】
参照例1-ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物の調製
ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物のサンプルは、出発物質(A)のポリジオルガノシロキサン(アルケニル基とアリール基の両方を有する)、出発物質(E)のヒドロシリル化反応阻害剤、及び存在する場合、出発物質(G)の溶媒を混合しながら容器に加えて調製した。次いで、出発物質(B)のポリシロキサン樹脂を容器に加えた。次いで、出発物質(C)のポリアルキルハイドロジェンシロキサン、出発物質(F)の定着添加剤、及び出発物質(D)のヒドロシリル化反応触媒を加えた。得られたポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物をコーティング浴として使用する。
【0062】
参照例2-剥離ライナーの調製
参照例1に従って調製したポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物をPET基材上にコーティングした。次いで、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を140℃で30秒間硬化させて、基材上に剥離コーティングを形成させた。次いで、得られた剥離ライナーを評価した。
【0063】
参照例3-剥離コーティング評価手順
(1)g/mでのコート重量(CW)を、英国オックスフォードシャーのOxford Instruments PLC製のOxford Lab-x3500装置でX線を用いて基材上の剥離コーティングのコート重量を検出して評価した。コーティングされていないPETを対照サンプル(ブランク)として使用した。試験方法は、FINAT試験方法No.7(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)であった。
【0064】
(2)g/inでの剥離力(RF-RT)を、180度剥離試験を用いて剥離ライナーからの剥離力を測定して評価した。硬化させた剥離コーティング上にテープを積層して、20g/cmの負荷重量を積層したサンプル上にかけて室温で20時間置いた。20時間後、負荷重量を外して、試料を30分間置いた。次いで、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力を試験した。以下を試験した。7475RF-RTは、TesaSE-バイヤスドルフ社の1つから市販されているTesa(商標)7475テープを用いた上記試験方法を意味する。「ホットメルトRF-RT」は、同じ方法を意味するが、UPM Raflatacのゴムベースのホットメルトテープを用いる。「WBアクリルRF-RT」は、同じ試験方法を意味するが、UPM Raflatacの水性アクリルテープを用いる。
【0065】
(3)g/inでの剥離力(RF-70℃エージング)を180度剥離試験を用いて剥離ライナーからの剥離力を測定して評価した。硬化させた剥離コーティング上にテープを積層して、20g/cmの負荷重量を積層したサンプル上にかけて70℃で20時間置いた。20時間後、負荷重量を外して、試料を30分間置いた。次いで、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力を試験した。以下を試験した。7475RF-70℃は、Tesa(商標)7475テープを用いた上記試験方法を意味する。「ホットメルトRF-70℃」は、同じ方法を意味するが、UPM Raflatacのゴムベースのホットメルトテープを用いる。「WBアクリルRF-70℃」は、同じ試験方法を意味するが、UPM Raflatacの水性アクリルテープを用いる。
【0066】
(4)SAS(残留接着強度、移行の指標)を%で以下のように評価した。20g/cmの負荷重量下で、試験テープを硬化させた剥離コーティング上の日東電工の31Bテープで積層して、70℃で20時間置いた。20時間後、負荷重量を外して、サンプルを室温で30分間置いた。次いで、31BテープをPET基材上に移し、更に1時間待つ。FINAT試験方法No.11(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力を試験した。このSAS試験では、PTFE基材上の積層31Bテープを試験し、PTFEサンプルを硬化させた剥離コーティングサンプルと同じように処理した。SAS値を、RFrelease/RFPTFE×100%として記録した。
【0067】
参照例1に従って調製した各サンプルに使用した出発物質を、下の表2及び3に示す。各出発物質の量は、ppmで示した白金量を提供するのに十分な触媒(C1)の量を除いて、重量部である。参照例3に従った評価の結果を下の表4~7に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0068】
産業上の利用可能性
上記実施例(W)から、(PET基材上の)剥離コーティングが0.659g/m~0.778g/mのコート重量で調製でき、室温でエージングした後のtesa(商標)7475標準テープからの剥離力が114.8g/in~812.1g/in、70℃でエージングした後のtesa(商標)7475標準テープからの剥離力が210g/in~1312g/inであり、また持続的な接着強度が90%超(>90%)~97%であることが示された。
【0069】
上記実施例及び比較例(C)から、本明細書に開示したポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物から調製された剥離コーティングを含む剥離ライナーが一貫して比較例よりも高い剥離力を有することが示された。例えば、実施例W1~W4はそれぞれ、新しく調製されたサンプル及び3ヶ月経ったサンプルの両方で、比較例C1~C6よりも高い室温での7475からの剥離力を有した(表4及び6を参照)。実施例W1~W4はそれぞれ、新しく調製されたサンプル及び3ヶ月経ったサンプルの両方で、比較例C1~C6よりも高い70℃での7475からの剥離力を有した(表4及び6を参照)。
【0070】
さらに、実施例W5及びW6の剥離コーティングは、試験した全ての条件下で比較例7及び8よりも高い剥離力を有した(表5及び7を参照)。
【0071】
用語の定義及び用法
本明細書の文脈によって別段の指示がない限り、本明細書における全ての量、比率、及び百分率は、重量によるものであり;冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ1つ以上を指し;単数形は複数形を含む。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「~からなる(consisting of)」の移行句はManual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション§2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば/など、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表8の定義を有する。
【表9】
【0072】
以下の試験方法を使用して、本明細書の出発物質の特性を測定した。
【0073】
それぞれのポリジオルガノシロキサンの粘度は、#CP-52スピンドルを備えたブルックフィールドDV-IIIコーンプレート型粘度計で、0.1~50RPMで測定した。当業者であれば、粘度を測定するためにこの試験方法を使用する場合、粘度が増加するにつれて回転速度が減少すること、及び適切な回転速度を選択することができることを認識するであろう。
【0074】
29Si NMR及び13C NMR分光法を使用して、ポリジオルガノシロキサン中のR基(例えば、R、R、及び/またはR)の基の含有量を定量化することができる。29Si NMRスペクトルは、John Wiley & Sons社のChemical Analysis Vol 112(1991)のA.Lee Smith編集のThe Analytical Chemistry of SiliconesのChapter12、ページ347~417のセクション5.5.3.1にTaylorらによって概説されている方法論を使用して取得するべきである。この章において、著者らはシリコン核の定量的NMRスペクトルを取得するために固有の一般的なパラメータを論じている。それぞれのNMR分光計は、電子部品、能力、感度、周波数、及び操作手順に関して異なる。サンプル中の29Si及び13C核の定量的1D測定に十分なパルスシーケンスを調整、シム調整(shim)及び較正するために、使用する分光計の機器マニュアルを参照しなければならない。
【0075】
NMR分析の重要な出力はNMRスペクトルである。標準がない場合、定量的であると見なすためには信号の高さ対平均ベースラインノイズの信号対雑音比が10:1以上であることが推奨される。適切に取得されて処理されたNMRスペクトルは、任意の市販のNMR処理ソフトウェアパッケージを使用して積分することができる信号をもたらす。
【0076】
これらの積分から、全R基含有量の重量パーセントは29Si NMRスペクトルから、次の(I)・(U)=G;(IM(R))・(UM(R’))=GM(R);(I)・(U)=G;(ID(R))・(UD(R))=GD(R);U/UM(R)=YR’;U/UD(R)=YR’’
R’’・[GM(R)/(G+GM(R)+G+GD(R))・100]=WR’
R’’’・[GD(R)/(G+GM(R)+G+GD(R))・100]=WR’’;及びWR’+WR’’=総Wによって計算することができ、ここで、Iは示されたシロキシ基の積分シグナルであり、Uは示されたシロキシ基のユニット分子量であり、Gはグラム単位を表すプレースホルダであり、Wは示されたシロキシユニットの重量パーセントであり、Yは指定されたシロキシユニットの比の値であり、Rは上記のとおりであり、R’はM(R)のみからのR基を表し、R”はD(R)基のみからのR基を表す。
【0077】
ポリオルガノシロキサン出発物質(例えば、本明細書に記載の出発物質(A)、(B)、及び(C))の数平均分子量は、米国特許第9,593,209号、第31欄の参照例1の試験方法に従ってGPCによって測定することができる。
【0078】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定の性質よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本明細書で個々の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び/又は組み合わされて依拠され得り、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に対し適切なサポートを提供するものである。
【0079】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は部分の値が明記されていなくても、その中の全部及び/又は部分の値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にすることを、そして、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1~18」は、下の3分の1、すなわち1~6、中間の3分の1、すなわち7~12、及び上の3分の1、すなわち13~18と更に詳述することができ、それらは個別的に、また集合的に添付の特許請求の範囲内であり、個別的及び/又は集合的に依拠され得り、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に対し適切なサポートを提供することができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。
【0080】
本発明の実施形態
第1の実施形態において、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を調製するためのキットは、
成分(A)のベース成分であって、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(R SiO2/2(式中、各Rは独立して選択される炭素原子1~18個のアルキル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子2~18個のアルケニル基であり、各Rは独立して選択される炭素原子5~20個のアリール基であり、下付き文字aは2の平均値を有し、下付き文字b>0、下付き文字c≧0、下付き文字d≧0であり、ただし、量(c+d)>0である)のポリジオルガノシロキサン、
(B)ケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシリケート樹脂、
(C)1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサン(ここでポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、出発物質(A)及び(B)中のアルケニル基1モル当たり0.8モル~5モルのケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量で存在する)、
(E)ヒドロシリル化反応阻害剤、
(F)任意選択で定着添加剤、及び
任意選択で、(G)溶媒、を含む成分(A)のベース成分と;
成分(B)の硬化剤成分であって、
任意選択で、(A)上記のポリジオルガノシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(F)上記の定着添加剤、及び
任意選択で、(G)上記の溶媒、を含む成分(B)の硬化剤成分と;、
成分(A)と成分(B)を合わせてポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を調製するための、及び/又はポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材に塗布する方法の説明書と;を含み、
ここで、出発物質(C)は、出発物質(A)と(B)中のアルケニル基1モル当たり0.8モル~5モルのケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中に存在し、出発物質(D)は、全ての出発物質の合計重量に基づいて、100ppm~1,0000ppmの白金族金属を組成物に提供するのに十分な量でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中に存在し、出発物質(E)は、出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.001重量部~2重量部の量でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中に存在し、出発物質(F)は、出発物質(A)及び(B)100重量部当たり0.01重量部~10重量部の量でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中に存在し、出発物質(G)は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、>0~96重量%の量でポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物中に存在し、
ここで、組成物はケイ素結合アリール基を有さないポリジオルガノシロキサンを含まない。
【0081】
第2の実施形態において、剥離ライナーを調製する方法は、
1)説明書に従って、第1の実施形態のポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を形成する工程、
2)ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を基材の表面に塗布する工程、
任意選択で、3)基材の表面上にポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物をコーティングする前に、基材の表面を処理する工程、
任意選択で、4)(溶媒が存在する場合)溶媒の全て又は一部を除去する工程、及び
5)ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を硬化させて、基材の表面上に剥離コーティングを形成する工程を含む。
【0082】
第3の実施形態において、第2の実施形態の方法における工程2)は、スプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷、またはロールコーティングからなる群から選択される技術によって行なわれ得る。
【0083】
第4の実施形態において、第2または第3の実施形態の方法における基材は、(i)例えばポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリスチレンフィルムなどのポリマーフィルム基材、(ii)プラスチックコート紙、例えばポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコートクラフトを含む紙基材、及び(iii)例えばアルミニウム箔などの金属箔基材からなる群から選択される。
【0084】
第5の実施形態において、第2~第4の実施形態のいずれか1つの方法に工程3)が存在し、工程3)は、プラズマ処理、コロナ放電処理、及びプライマー塗布からなる群から選択される技術によって行なわれる。
【0085】
第6の実施形態において、第2~第5の実施形態のいずれか1つの方法に工程4)が存在し、工程4)は、溶媒の全部または一部を除去するのに十分な時間、50℃~100℃で加熱することによって行なわれる。
【0086】
第7の実施形態において、第2~第6の実施形態のいずれか1つの方法における工程5)は、ポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物を硬化させて、それから剥離コーティングを形成するのに十分な時間、100℃~200℃で加熱することによって行なわれる。
【0087】
第8の実施形態において、第7の実施形態の方法における工程5)は120℃~160℃の空気温度で10秒間~60秒間加熱することによって行なわれる。

図1