(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】化粧柱の取付構造及び取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20240122BHJP
E04F 19/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04B1/00 503
E04F19/00 D
(21)【出願番号】P 2019216736
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】内山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】毛利 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 智裕
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115471(JP,A)
【文献】米国特許第07588343(US,B1)
【文献】特開平05-141061(JP,A)
【文献】特開平09-273290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04F 19/00
E04F 13/08
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造体とは別体である化粧柱の取付構造であって、
前記構造体の天井に固定されて前記化粧柱の上部と連結する天井固定部と、
前記化粧柱の上部に位置して上下方向にスライド自在かつ前記天井固定部に着脱自在な天井連結部とを備え
、
前記天井固定部は、押圧により変形する一対の板ばねを有し、
前記天井連結部は、前記一対の板ばねを両側から挟んだ状態で前記天井固定部に連結する
ことを特徴とする化粧柱の取付構造。
【請求項2】
前記天井連結部は、前記化粧柱に対してさや管状かつ所定の高さで固定可能である
ことを特徴とする請求項
1に記載の化粧柱の取付構造。
【請求項3】
前記構造体の床に固定されて前記化粧柱の下部と連結する床固定部をさらに備え、
前記床固定部は、前記構造体の床の傾きを補整して前記化粧柱の下部と略水平に連結する床連結部を有する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の化粧柱の取付構造。
【請求項4】
前記床固定部は、前記構造体の床に固定されて上面が傾斜している床土台部を有し、
前記床連結部は、前記上面に対して略水平に補整するための高さ調整部を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載の化粧柱の取付構造。
【請求項5】
前記天井固定部を前記構造体の天井に固定し、
前記床固定部を前記構造体の床に固定し、
前記床連結部と前記化粧柱の下部とを連結し、
前記高さ調整部で前記化粧柱を略水平に補整し、
前記天井連結部を上方向にスライドして前記天井固定部に連結し、
所定の高さで前記天井連結部を前記化粧柱に固定する
ことを特徴とする請求項
4に記載の化粧柱の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の建築物の構造体とは別体である化粧柱の取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅の各住戸の玄関前のインターホンは、ドアと並列の壁面に埋め込んで設置されていた。一方、近年の戸建て住宅では、ポストや不在時用の宅配ボックスと共に、インターホンを備えた化粧柱を、玄関から離れた箇所に設置するようになった。このような化粧柱は、住宅の意匠性及び商品性の向上を望めることから、集合住宅の各住戸への採用も検討されてきた。
【0003】
化粧柱の構造としては、例えば、特許文献1のように、戸建て住宅の玄関ポーチの小屋根を支持する柱に、縦枠材及び横枠材で形成された幅広の下地枠組を連結し、下地枠組の外側を外装材で囲むことにより、袖壁を形成する技術が開示されている。換言すれば、特許文献1は、化粧柱を形成するために、玄関ポーチの床面から小屋根に渡って設けれた既存の柱を活用する方法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す戸建て住宅用の袖壁の技術は、集合住宅に採用しにくい。すなわち、集合住宅の各住戸の玄関前は、共用廊下に該当するため、設計上及び意匠上、構造体の一部として柱を設けにくいため、構造体とは別体の化粧柱を設けなければならない。さらに、所定階の共用廊下の表面から天井(上階の共用廊下の裏面)までの高さが各階毎に異なると、化粧柱を各階毎に製造しなければならないばかりでなく、化粧柱の下部を水捌けのために傾斜した共用廊下の角度に併せなければならないため、化粧柱の製作による各施工の遅延のみならず、製品としての品質管理の手間がかかる。
【0006】
また、共用廊下の表面仕上げに用いる防滑性ビニル床シートやタイルや石等(以下、「防滑性ビニル床シート等」)の敷設前に化粧柱を設置する場合、障害物となって防滑性ビニル床シート等を敷設しにくく、防滑性ビニル床シート等の敷設後に化粧柱を設置する場合、化粧柱の工期が遅れるおそれがあるため、消防等の設備検査との日程調整が難しくなるのみならず、大規模修繕時の防滑性ビニル床シート等の交換のために化粧柱を一旦取り外さなければならなくなる。さらに、化粧柱の下端が共用廊下の床面に接していると、防滑性ビニル床シート等の清掃時に、清掃器具等が化粧柱の側面を傷付けてしまうおそれがある。
【0007】
このような問題に対し、発明者等は、集合住宅の各住戸の玄関前等への化粧柱の設置対策として、各階の階高の違い、床面の傾斜角、防滑性ビニル床シート等の表面仕上げ材の施工、清掃等による損傷等の課題を解決できる着想に辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、設置場所の高さに左右されず、設置作業が短時間で、かつ容易に行える化粧柱の取付構造を提供することにある。本発明の第2の目的は、第1の目的に加え、床面の傾斜及び表面仕上げ材の敷設に左右されず、各工程において所望の施工を行える化粧柱の取付構造及び取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、建築物の構造体とは別体である化粧柱の取付構造であって、前記構造体の天井に固定されて前記化粧柱の上部と連結する天井固定部と、上記化粧柱の上部に位置して上下方向にスライド自在かつ上記天井固定部に着脱自在な天井連結部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記天井固定部は、押圧により変形する一対の板ばねを有し、上記天井連結部は、上記一対の板ばねを両側から挟んだ状態で上記天井固定部に連結するのが望ましい。
【0011】
上記天井連結部は、上記化粧柱に対してさや管状かつ所定の高さで固定可能であるのが望ましい。
【0012】
上記構造体の床に固定されて上記化粧柱の下部と連結する床固定部をさらに備え、上記床固定部は、上記構造体の床の傾きを補整して上記化粧柱の下部と略水平に連結する床連結部を有するのが望ましい。
【0013】
上記床固定部は、上記構造体の床に固定されて上面が傾斜している床土台部を有し、上記床連結部は、上記上面に対して略水平に補整するための高さ調整部を有するのが望ましい。
【0014】
本発明における化粧柱の施工方法は、上記天井固定部を上記構造体の天井に固定し、上記床固定部を上記構造体の床に固定し、上記床連結部と上記化粧柱の下部とを連結し、上記高さ調整部で上記化粧柱を略水平に補整し、上記天井連結部を上方向にスライドして上記天井固定部に連結し、所定の高さで上記天井連結部を上記化粧柱に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明における化粧柱の取付構造及び/又は取付方法によれば、設置場所の高さに左右されず、設置作業が短時間で、かつ容易に行える効果を期待できる。さらに、上記効果に加え、床面の傾斜及び表面仕上げ材の敷設に左右されず、各工程において所望の施工を行える効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における化粧柱の取付構造の正面図である。
【
図3】上記化粧柱の取付方法の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態における化粧柱の取付構造(以下、「本化粧柱の取付構造」という。)について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線をかくれ線(破線)で示したり、省略したりしている部分もある。
説明において、上方、下方、側方、垂直方向、水平方向等の方向を示す用語は、基本的に、通常使用する向きで化粧柱を取り付けた状態における位置関係とする。
【0018】
本化粧柱の取付構造は、集合住宅や商業施設等の建築物に採用されるものである。化粧柱とは、各建築物の構造設計に基づいて鉄筋やコンクリート等で建築された構造体とは別体で、床から天井に渡って設けられるものである。一例として、構造体の床とは、集合住宅における所定階の共用廊下であり、天井とは、上記共用廊下の真上に位置する上位階の共用廊下の裏面である。本化粧柱の取付構造が採用される場面は、例えば、集合住宅における所定階の各住戸の玄関付近にインターホンやポストを設置するための化粧柱の取付時である。
【0019】
図1に示すとおり、本化粧柱の取付構造は、天井Cに固定されて化粧柱Pの上部と連結する天井固定部1と、化粧柱Pの上部に位置して上下方向にスライド自在かつ天井固定部1に着脱自在な天井連結部2とを備えている。
この構成によれば、所望の設置状態において化粧柱Pの高さが足りなくても、天井連結部2がスライドして天井固定部1に固定できる。換言すれば、化粧柱Pの高さを一種類に統一でき、天井の高さを各階で都度採寸する手間を省ける。
なお、化粧柱Pは、鋼製乾式部材でもその他の部材でもよく、断面視で矩形状でも円形状でもよく、各部の詳細な寸法は限定せず、下部等の一部又は下部から上部に渡って開閉自在な扉を有してもよい。
【0020】
天井固定部1は、内側からねじ部材を介して天井Cに固定可能な中空状又は筒状の箱体11と、箱体11の左右両側面に設けられて横方向からの押圧により変形する一対の板ばね12,12とを有する。板ばね12は、静止状態でくの字型であり、屈折した頂点部分が箱体11に対して外側に位置し、頂点部分が箱体11に向かって押圧されると変形する。
なお、箱体11は、開閉自在の蓋を有していてもよい。板ばね12は、箱体11に対して略水平に設置された平板状のものでもよく、ねじ式やベルト式のアジャスタに置き換えられてもよい。
【0021】
図2に示すように、天井連結部2は、一対の板ばね12を両側から挟んだ状態で天井固定部1に連結する。
この構造によれば、板ばねの特性を活かし、上方向にスライドするだけで天井連結部2を天井固定部1に連結して化粧柱Pが倒れないように仮固定できるため、全体的な作業時間の短縮を期待できる。
【0022】
天井連結部2は、筒型の化粧柱Pに対してさや管状かつ所定の高さで固定可能である。
この構成によれば、板ばね12を介して天井連結部2を天井固定部1に連結した後でも、天井Cの高さに応じて化粧柱Pを上下方向に動かして位置を微調整できるため、経験や勘に頼ることなく、誰でも化粧柱Pと天井連結部2との位置を最適化できることから、作業工程及び作業量の平準化を期待できる。
【0023】
詳細には、
図2に示すように天井連結部2は、左右対称で、一方の構造において、板ばね12に引っ掛かるフック部21と、天井固定部1に対して天井連結部2を固定する第一連結固定部22と、フック部21及び第一連結固定部22を上下方向にスライド自在にするスライド部23と、化粧柱Pに対してスライド部23を固定する第二連結固定部24とを有する。
なお、天井連結部2は、左右対称である一方の構造と他方の構造とが一体でも別体でもよく、一体の場合、各々のスライド部23が所定の部材で連結している構造でもよい。天井連結部2のスライド幅は、10~30cmでもよく、限定しない。
【0024】
フック部21は、下から上にスライドしながら板ばね12を変形させ、所定の位置(高さ)で板ばね12に引っ掛かるものであり、具体的には、板ばね12を変形させやすい湾曲部分及び板ばね12と一致する屈曲部分を有する釣り針状のものである。
なお、フック部21の形状は、板ばね12の動作方向及び形状に応じて変形してもよく、限定しない。
【0025】
第一連結固定部22は、フック部21が板ばね12に引っ掛かった状態で、天井固定部1に対して天井連結部2を暫定的に固定するものであり、具体的には、少なくともスライド部23と連動し、水平方向かつ内側に向かって締め付け可能なねじである。
なお、第一連結固定部22は、スライド部23に固定された所定のジョイント材を介して動作して天井固定部1と天井連結部2とを固定してもよい。
【0026】
スライド部23は、フック部21及び第一締結部22より外側かつ化粧柱Pより内側に位置し、かつ化粧柱Pの内側面と並行に上下動するものであり、具体的には、フック部21及び第一締結部22を固定可能な板部材である。
なお、スライド部23は、化粧柱Pの内側面に設けられた所定のレール材をスライドしてもよい。
【0027】
第二連結固定部24は、化粧柱P及びスライド部23に対して着脱自在なものであり、具体的には、化粧柱Pの所定の位置に設けられた貫通孔を介して化粧柱Pとスライド部23とが連結するように締め付け可能なねじである。
なお、第二連結固定部24は、化粧柱Pに固定された所定のジョイント材を介して化粧柱Pと天井連結部2とを連結してもよく、化粧柱Pの上部に配置されるのが好ましく、縦方向及び/又は横方向に複数設けられてもよい。化粧柱Pに固定された所定のジョイント材は、スライド部23を着脱及びスライド自在にするレール材でもよい。
【0028】
図1に示すとおり、本化粧柱の取付構造は、構造体の床Fに固定されて化粧柱Pの下部と連結する床固定部3をさらに備え、床固定部3は、構造体の床Fの傾きを補整して化粧柱Pの下部と略水平に連結する床連結部31を有する。
この構成によれば、構造体の床Fの表面の防水等に役立つ防滑性ビニル床シート等の敷設の前後に関わらず化粧柱Pを設置できるため、施工日程を柔軟に組みやすい。すなわち、床固定部3を介して化粧柱Pを構造体の床Fに固定できると共に、床連結部31で構造体の床Fの傾きを補整できるため、構造体の床Fの勾配の事前実測及び勾配に適した化粧柱Pの製作が不要になるのみならず、防滑性ビニル床シート等の敷設の前に化粧柱Pを設置しても床固定部3が別部材かつ入巾木状であるため、その後の防滑性ビニル床シート等の施工性を維持できる。また、清掃機器と化粧柱Pとの接触を予防できるため、化粧柱Pが傷つくリスクを低減できる。
なお、床固定部3の高さ寸法は、5~10cmで、防滑性ビニル床シート等の敷設の施工性を維持できればよく、限定しない。
【0029】
床固定部3は、構造体の床Fに固定されて上面が傾斜している床土台部32を有し、床連結部31は、上記上面に対して略水平に補整するための高さ調整部31aを有する。
この構成によれば、所定高さの床土台部32に対して高さ調整部31aで床連結部31の傾きを補整できるため、高さ調整部31aの長さは短めで、かつわずかな調整量で略水平にできる。さらに、床固定部3が二重構造となり、構造体の床Fの勾配及び構造体の天井Cの高さの双方への追従性を獲得できる。
【0030】
詳細には、床連結部31は、化粧柱Pの下端部分と面して固定される板材31bをさらに有し、高さ調整部31aは、化粧柱Pの下端部分及び板材31bを貫通して床土台部32に接する一組のねじ及びナットであり、ナットを締めたり緩めたりすることで、板材31bに固定された化粧柱Pを略水平にするものである。
なお、高さ調整部31aの数は、単数でも2つ以上でもよい。板材31bは、床土台部32を上から覆う箱状でのよい。
【0031】
床土台部32は、内側からねじ部材を介して床Fに固定可能な中空状又は筒状のものである。
なお、床土台部32は、構造物の床の傾斜角に関わらず、固定可能であれば、寸法や素材を限定しない。
【0032】
次に、
図3を参照しつつ、本発明による化粧柱の取付方法について説明する。
なお、防滑性ビニル床シート等は、敷設してあってもなくてもよい。
【0033】
まず、
図3(a)に示すとおり、構造体の床Fに床土台部32をねじ止めすると共に、床土台部32の上に床連結部31が任意に載置してある状態で床固定部3を固定する。また、床固定部3の真上に位置するように、構造体の天井Cに箱体11をねじ止めして天井固定部1を固定する。
【0034】
次に、
図3(b)に示すとおり、床連結部31の板材31bの上に化粧柱Pを載置し、板材31bと化粧柱Pの下端面とを連結すると共に、高さ調整部31aのナットを下方に向かって締め付けることで、化粧柱Pを略水平に補整する。
【0035】
最後に、
図3(c)に示すとおり、天井連結部2を上方向にスライドして板ばね12にフック部21を引っ掛けて連結し、所定の高さに調整後、第一連結固定部22で天井連結部2を天井固定部1に暫定的に固定すると共に、第二連結固定部24で天井連結部2を化粧柱Pに固定する。
なお、化粧柱Pの上端部分と構造体の天井Cとの隙間及び化粧柱Pの下端部分と構造体の床Fの隙間には、化粧柱Pの表面と面一になるように所定のカバーを設置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
C 構造物の天井
F 構造物の床
P 化粧柱
1 天井固定部
11 箱体
12 板ばね
2 天井連結部
21 フック部
22 第一締結部
23 スライド部
24 第二連結固定部
3 床固定部
31 床連結部
31a 高さ調整部
32 床土台部