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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】光照射装置、および処理装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/503 20150101AFI20240122BHJP
   H01J 61/52 20060101ALI20240122BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240122BHJP
   F21V 29/83 20150101ALI20240122BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20240122BHJP
   F21V 14/02 20060101ALI20240122BHJP
   F21V 19/02 20060101ALI20240122BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240122BHJP
   B41F 23/04 20060101ALN20240122BHJP
   F21Y 103/00 20160101ALN20240122BHJP
【FI】
F21V29/503
H01J61/52 B
F21S2/00 373
F21V29/83
F21V14/04
F21V14/02
F21V19/02 100
B01J19/12 C
B41F23/04 B
F21Y103:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020067233
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163710
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-024435(JP,U)
【文献】特開2017-123286(JP,A)
【文献】特開2000-292859(JP,A)
【文献】特開2018-048828(JP,A)
【文献】特開2004-014204(JP,A)
【文献】特開2007-317410(JP,A)
【文献】特開平04-087636(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103939769(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0001530(US,A1)
【文献】特開2005-024735(JP,A)
【文献】特開2006-030645(JP,A)
【文献】特開2003-217336(JP,A)
【文献】特開2014-044883(JP,A)
【文献】特開平07-256190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 1/00-15/04
19/00-19/06
23/00-99/00
B41F 21/00-30/06
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
H01J 61/50-65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に開口する凹部と、前記凹部の内部空間に連通する複数の排気口と、を有するリフレクタと;
前記凹部の内部空間に設けられ、一方向に延びる発光管を有するランプと;
前記凹部の開口に対峙し、前記リフレクタに対して隙間を介して設けられ、前記ランプから照射された光を透過可能な整流板と;
を具備し
前記複数の排気口は、前記ランプが延びる方向に並べて設けられ、
前記ランプの中央領域に対峙する前記複数の排気口のピッチ寸法は、前記ランプの端部領域に対峙する前記複数の排気口のピッチ寸法よりも小さい、
および、
前記ランプの前記中央領域に対峙する前記排気口の断面寸法は、前記ランプの前記端部領域に対峙する前記排気口の断面寸法よりも大きい、
の少なくともいずれかである光照射装置。
【請求項2】
前記凹部の内部空間には、前記隙間から前記複数の排気口に向かって流れる気流が形成される請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記ランプおよび前記整流板と、前記リフレクタと、の間の相対的な位置を変化させる移動部をさらに備えた請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
一方の面に開口する凹部と、前記凹部の内部空間に連通する排気口と、前記凹部の内部空間に連通する複数の給気口と、を有するリフレクタと;
前記凹部の内部空間に設けられ、一方向に延びる発光管を有するランプと;
前記凹部の開口に対峙し、前記ランプから照射された光を透過可能な整流板と;
を具備し、
前記複数の給気口は、前記リフレクタの、前記凹部が開口する面と交差する面に、前記ランプが延びる方向に並べて設けられ
前記ランプの中央領域に対峙する前記複数の給気口のピッチ寸法は、前記ランプの端部領域に対峙する前記複数の給気口のピッチ寸法よりも小さい、
および、
前記ランプの前記中央領域に対峙する前記給気口の断面寸法は、前記ランプの前記端部領域に対峙する前記給気口の断面寸法よりも大きい、
の少なくともいずれかである光照射装置。
【請求項5】
前記凹部の内部空間には、前記複数の給気口から前記排気口に向かって流れる気流が形成される請求項記載の光照射装置。
【請求項6】
前記ランプと、前記リフレクタと、の間の相対的な位置を変化させる移動部をさらに備えた請求項4または5に記載の光照射装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の光照射装置と;
前記光照射装置に設けられたリフレクタの排気口に接続された排気部と;
を具備した処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光照射装置、および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの高輝度放電ランプを備えた光照射装置がある。高輝度放電ランプは、筒状の発光管と、発光管の両側の端部のそれぞれに設けられた電極とを有している。高圧水銀ランプの場合には、希ガスと水銀などが発光管の内部に封入されている。メタルハライドランプの場合には、希ガス、水銀、金属、およびハロゲン元素などが発光管の内部に封入されている。
【0003】
この様な高輝度放電ランプにおいて、発光管の温度が高くなりすぎると、封入されている水銀などにより発光管の黒化が進み、照度の維持ができなくなる場合がある。また、発光管の変形が生じる場合もある。
【0004】
そのため、発光管の周りに空気を流して、発光管を冷却する技術が提案されている。
しかしながら、近年においては、高輝度放電ランプ(発光管)の小型化や、処理能力の向上のための印加電力の増大などが求められており、発光管の温度が高くなる傾向にある。そのため、発光管の冷却のさらなる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-157458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、発光管の冷却を図ることができる光照射装置、および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る光照射装置は、一方の面に開口する凹部と、前記凹部の内部空間に連通する複数の排気口と、を有するリフレクタと;前記凹部の内部空間に設けられ、一方向に延びる発光管を有するランプと;前記凹部の開口に対峙し、前記リフレクタに対して隙間を介して設けられ、前記ランプから照射された光を透過可能な整流板と;を具備している。前記複数の排気口は、前記ランプが延びる方向に並べて設けられ、前記ランプの中央領域に対峙する前記複数の排気口のピッチ寸法は、前記ランプの端部領域に対峙する前記複数の排気口のピッチ寸法よりも小さい、および、前記ランプの前記中央領域に対峙する前記排気口の断面寸法は、前記ランプの前記端部領域に対峙する前記排気口の断面寸法よりも大きい、の少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、発光管の冷却を図ることができる光照射装置、および処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
図2】処理装置の模式斜視図である。
図3】ランプの模式断面図である。
図4】比較例に係る光照射装置を例示するための模式断面図である。
図5】整流板の作用、効果を例示するための模式断面図である。
図6】他の実施形態に係る光照射装置を例示するための模式断面図である。
図7】整流板と給気口による温度の低減効果を例示するためのグラフである。
図8】整流板と給気口による温度の低減効果を例示するための表である。
図9】整流板と給気口による照度維持効果を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る処理装置1を例示するための模式断面図である。
図2は、処理装置1の模式斜視図である。
図1および図2に示すように、処理装置1には、筐体2、載置部3、電源4、排気部5、コントローラ6、および光照射装置7を設けることができる。
【0011】
筐体2には、光照射装置7を取り付けることができる。筐体2は、例えば、チャンバとすることができる。この場合、筐体2は、パーティクルが侵入しない程度の気密構造を有することができる。また、処理装置1の用途によっては、気密構造を有さない筐体2とすることもできる。例えば、筐体2は、細長い部材用いた骨組み構造を有するものとしてもよい。
【0012】
載置部3は、処理を行う処理物100を載せることができる。載置部3には、処理物100を保持するチャックなどを設けることもできる。また、載置部3は、処理物100を、水平方向に移動させるものとしてもよい。例えば、載置部3は、XYテーブルやコンベアなどであってもよい。
【0013】
電源4は、光照射装置7に設けられているランプ71と電気的に接続することができる。電源4は、ランプ71に所定の電力を供給することができる。
【0014】
排気部5は、ダクト51などを介して、リフレクタ72の排気口72b1に接続することができる。排気部5は、排気口72b1を介して、凹部72aの内部空間の空気を排気する。排気部5は、例えば、シロッコファンやブロアなどとすることができる。
【0015】
その他、処理装置1には、処理の内容に応じて必要となる要素を適宜追加することができる。
例えば、処理装置1が、光配向法により、液晶表示素子や視野角補償フィルムなどの配向膜に配向処理を施すものである場合には、処理装置1は、紫外線を含む光を照射するランプ71を備えることができる。さらに、処理装置1は、光照射装置7(ランプ71)と、載置部3との間に偏光子を備えることができる。偏光子は、例えば、ワイヤーグリッド型の偏光子とすることができる。偏光子が設けられていれば、紫外線を含む偏光光を処理物100の配向膜に照射することができる。そのため、光配向法により、処理物100の配向膜に配向処理を施すことができる。
【0016】
コントローラ6は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御することができる。コントローラ6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御するための制御プログラムを格納するメモリを有することができる。コントローラ6は、例えば、コンピュータなどとすることができる。
【0017】
図1および図2に示すように、光照射装置7には、ランプ71、リフレクタ72、ホルダ73、および、整流板75を設けることができる。
図1および図2においては、光照射装置7を1つ設ける場合を例示したが、複数の光照射装置7を設けることもできる。複数の光照射装置7を設ける場合には、ランプ71が延びる方向と略直交する方向に、複数の光照射装置7を並べて設けることができる。
【0018】
ここで、光照射装置7に用いられるランプ71は用途に応じて変更することができる。例えば、処理物100が、液晶表示素子や視野角補償フィルムなどの配向膜を有するものの場合には、光配向法による配向処理が施せるように、紫外線を含む光を照射するランプ71とすることができる。また、処理物100に付着している紫外線硬化型のインク、塗料、接着剤などを硬化させる場合にも紫外線を含む光を照射するランプ71とすることができる。例えば、ランプ71は、紫外線を含む光を照射可能な高輝度放電ランプ(HID:High Intensity Discharge lamp)とすることができる。
【0019】
図3は、ランプ71の模式断面図である。
図3に示すように、ランプ71は、発光管71a、電極71b、導電箔71c、およびアウタリード71dを有することができる。
発光管71aは、リフレクタ72に設けられた凹部72aの内部空間に設けられている。発光管71aは、凹部72aの内部空間のなかを一方向に延びている。発光管71aは、筒状を呈し、耐熱性と透光性を有する材料から形成することができる。発光管71aの材料は、例えば、石英、ガラスなどとすることができる。ガラスは、例えば、酸化ナトリウムを含むソーダライムガラスや硬質ガラスなどとすることができる。ソーダライムガラスを用いれば、低コスト化を図ることができ、且つ、340nm近傍の波長の光において80%以上の透過率を得ることができる。硬質ガラスを用いれば、340nm近傍の波長の光の透過率をさらに向上させることができる。
【0020】
発光管71aの内部空間には、放電媒体を封入することができる。放電媒体は、例えば、希ガスと水銀とすることができる。希ガスは、例えば、キセノン、アルゴン、あるいは混合希ガスなどとすることができる。発光管71aの内部空間の25℃におけるガスの圧力(希ガスの封入圧力)は、例えば、1333Pa以上とすることができる。発光管71aの内部空間の25℃におけるガスの圧力は、空気の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。水銀の封入量は、例えば、1mg~1000mg程度とすることができる。
【0021】
また、放電媒体には、ハロゲンや、紫外線を発生させるための金属(例えば、鉄、スズ、インジウム、ビスマス、タリウム、マンガンのうちの少なくとも1種)をさらに含めることもできる。すなわち、ランプ71は、メタルハライドランプなどであってもよい。
【0022】
また、発光管71aの内壁には、水銀が発光管71aの内壁に到達するのを抑制するために保護膜を設けることもできる。保護膜は、例えば、酸化アルミニウムや二酸化珪素を含む膜とすることができる。保護膜の厚みは、例えば、0.1μm~1μm程度とすることができる。
【0023】
また、発光管71aの両側の端部のそれぞれには、封止部71a1を設けることができる。発光管71aの両端に封止部71a1を設けることで、発光管71aの内部空間を気密に封止することができる。例えば、一対の封止部71a1は、加熱した発光管71aの両端部分を押しつぶすことで形成することができる。例えば、一対の封止部71a1は、ピンチシール法やシュリンクシール法を用いて形成することができる。ピンチシール法を用いて封止部71a1を形成すれば、板状の封止部71a1を形成することができる。シュリンクシール法を用いて封止部71a1を形成すれば、円柱状の封止部71a1を形成することができる。
【0024】
電極71bは、発光管71aの両側の端部のそれぞれに設けることができる。例えば、電極71bは、フィラメント71b1およびインナーリード71b2を有することができる。フィラメント71b1およびインナーリード71b2は、線状部材を用いて一体に形成することができる。線状部材は、例えば、タングステンや、レニューム・タングステン合金などを含むものとすることができる。
【0025】
フィラメント71b1は、発光管71aの内部空間に設けられている。例えば、フィラメント71b1は、線状部材を螺旋状に巻いたものとすることができる。
インナーリード71b2の一方の端部は、発光管71aの内部空間においてフィラメント71b1と接続されている。インナーリード71b2の他方の端部は、封止部71a1の内部において導電箔71cと接続されている。インナーリード71b2と導電箔71cは、例えば、レーザ溶接や抵抗溶接などにより接続することができる。
【0026】
導電箔71cは、1つの封止部71a1に対して1つ設けることができる。導電箔71cは、封止部71a1の内部に設けることができる。導電箔71cの平面形状は四角形とすることができる。導電箔71cは、例えば、モリブデン箔から形成することができる。
【0027】
アウタリード71dは、1つの導電箔71cに対して少なくとも1つ設けることができる。アウタリード71dは、線状を呈するものとすることができる。アウタリード71dの一方の端部側は、封止部71a1の内部において、導電箔71cと接続されている。例えば、アウタリード71dの一方の端部側は、導電箔71cにレーザ溶接または抵抗溶接することができる。アウタリード71dの他方の端部側は封止部71a1の外部に露出させることができる。アウタリード71dには、電源4を電気的に接続することができる。アウタリード71dは、例えば、モリブデン線などから形成することができる。
【0028】
ランプ71においては、フィラメント71b1同士の間で放電が生じる。放電により生じた電子は、発光管71aの内部空間において、封入されている水銀原子と衝突する。電子と水銀原子が衝突すると、水銀原子が電子のエネルギーを受けて、ピーク波長が253.7nm程度の紫外線が発生する。発生した紫外線は、発光管71aの外部に照射される。すなわち、ランプ71は、ロングアーク型の高輝度紫外線ランプの一例である。
【0029】
なお、以上においては、ロングアーク型の高輝度紫外線ランプを例示したが、光照射装置7に用いるランプはこれに限定されるわけではない。例えば、光照射装置7に用いるランプは、点灯時に発光管が高温(例えば、600℃~850℃程度)となる高輝度放電ランプとすることができる。
【0030】
リフレクタ72は、例えば、筐体2に取り付けることができる。なお、リフレクタ72は、筐体2などに設けられたブラケットなどの部材に取り付けてもよい。また、後述するように、リフレクタ72は、移動部74に取り付けてもよい。
【0031】
リフレクタ72には、凹部72aが設けられている。凹部72aは、リフレクタ72の下面72c(リフレクタ72の載置部3側の面)に開口している。凹部72aは、リフレクタ72の側面には開口していない。なお、凹部72aがリフレクタ72の側面に開口し、リフレクタ72の側面の開口を板状部材などにより塞ぐこともできる。
また、ブロック状のリフレクタ72を例示したが、板状部材を湾曲させてリフレクタとしてもよい。
【0032】
凹部72aの内部空間には、ランプ71を設けることができる。凹部72aの内面は、反射面とすることができる。凹部72aの内面には、反射率の高い金属を含む膜を設けることができる。また、凹部72aの内面が光沢面となるように磨くこともできる。ランプ71が延びる方向から見た場合に、凹部72aの輪郭は、曲線を含むものとすることもできるし、直線を含むものとすることもできるし、曲線と直線を含むものとすることもできる。曲線は、例えば、円の一部、楕円の一部、放物線などとすることができる。
ランプ71から照射された光の一部は、処理物100に直接照射される。また、ランプ71から照射され凹部72aの内面に入射した光は処理物100に向けて反射される。リフレクタ72を設ければ、光の利用効率を向上させることができる。
【0033】
リフレクタ72の上面72b(リフレクタ72の載置部3側とは反対側の面)には、排気口72b1を設けることができる。排気口72b1は、凹部72aの内部空間に連通している。例えば、排気口72b1は、上面72bと凹部72aの内面との間を貫通している。図2に示すように、排気口72b1は複数設けることができる。複数の排気口72b1は、ランプ71が延びる方向に並べて設けることができる。複数の排気口72b1のピッチ寸法は同じであってもよいし、異なっていてもよい。複数の排気口72b1の断面寸法は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
ランプ71の温度は、端部領域に比べて中央領域が高くなりやすい。そのため、中央領域に対峙する排気口72b1のピッチ寸法は、端部領域に対峙する排気口72b1のピッチ寸法よりも小さくしてもよい。中央領域に対峙する排気口72b1の断面寸法は、端部領域に対峙する排気口72b1の断面寸法よりも大きくしてもよい。排気口72b1の数、配置、断面寸法などは、ランプ71の長さや温度などに応じて適宜決定することができる。排気口72b1の数、配置、断面寸法などは、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
また、ランプ71が延びる方向に延びる排気口72b1(例えば、スリット状の排気口72b1)を1つ設けるようにしてもよい。すなわち、排気口72b1は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0035】
排気口72b1は、ダクト51などを介して排気部5と接続されている。そのため、凹部72aの内部空間の空気(例えば、ランプ71の近傍にある加熱された空気)を、排気口72b1を介してリフレクタ72の外部に排出することができる。
【0036】
ホルダ73は、一対設けることができる。一対のホルダ73は、ランプ71が延びる方向に並べて設けることができる。一対のホルダ73は、リフレクタ72に取り付けることができる。なお、一対のホルダ73は、筐体2に取り付けることもできるし、筐体2などに設けられたブラケットなどの部材に取り付けることもできる。一対のホルダ73は、ランプ71の両側の端部を保持することができる。
【0037】
ここで、ランプ71とリフレクタ72との間の距離を変化させると、照射領域の幅や照度のピーク値を変化させることができる。そのため、処理条件などに応じて、ランプ71とリフレクタ72との間の距離が変えられるようにすることが好ましい。
そのため、ランプ71とリフレクタ72との間の相対的な位置を変化させる移動部74をさらに設けることもできる。
なお、ランプ71と整流板75がホルダ73に保持されている。そのため、移動部74は、ランプ71および整流板75と、リフレクタ72と、の間の相対的な位置を変化させることができる。
【0038】
図2に例示をした様に、移動部74は、ホルダ73を介してランプ71の位置を変化させることができる。例えば、一対の移動部74を筐体2などに取り付け、一対の移動部74のそれぞれにホルダ73を設けることができる。
【0039】
また、移動部74は、リフレクタ72の位置を変化させるものとすることもできる。例えば、移動部74を筐体2などに取り付け、移動部74にリフレクタ72を設けることができる。この場合、ランプ71を保持したホルダ73は、筐体2などに取り付けるようにすればよい。
【0040】
また、ホルダ73(ランプ71)の位置を変化させる移動部と、リフレクタ72の位置を変化させる移動部をそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0041】
移動部74は、例えば、ボールネジ、エンコーダ、ガイド、およびサーボモータなどを備えたものとすることができる。なお、移動部74の構成は例示をしたものに限定されるわけではなく、ランプ71とリフレクタ72との間の相対的な位置を変化させることができるものであればよい。
【0042】
なお、ホルダ73および移動部74は、凹部72aの内部空間に設けてもよいし、リフレクタ72の外部に設けてもよい。この場合、ホルダ73および移動部74を設けるための孔をリフレクタ72の上面72bに設けたり、ホルダ73とランプ71を接続するために孔をリフレクタ72の側面に設けたりすることもできる。
【0043】
整流板75は、板状を呈し、凹部72aの開口に対峙させて設けることができる。整流板75は、例えば、ホルダ73に取り付けることができる。整流板75は、耐熱性と透光性を有する材料から形成することができる。整流板75は、ランプ71から照射された光(例えば、紫外線を含む光)を透過可能とすることができる。整流板75の材料は、例えば、石英、ガラスなどとすることができる。ガラスは、例えば、酸化ナトリウムを含むソーダライムガラスや硬質ガラスなどとすることができる。
【0044】
整流板75は透光性を有する材料から形成されているため、ランプ71から照射された光は、整流板75を介して、処理物100の表面に到達することができる。一方、ランプ71の点灯時に発生した熱は、整流板75により、処理物100の表面への伝搬が抑制される。
【0045】
次に、整流板75の作用、効果について説明する。
図4は、比較例に係る光照射装置107を例示するための模式断面図である。
図4に示すように、光照射装置107には、ランプ71、リフレクタ72、およびホルダ73aが設けられている。なお、光照射装置107には整流板75が設けられていない。そのため、ホルダ73aは、ランプ71を保持しているが、整流板75は保持していない。
【0046】
ランプ71を点灯すると光が発生するが熱も発生する。高輝度放電ランプであるランプ71の場合には、点灯時に発光管71aの温度が600℃~850℃程度となる場合がある。発光管71aの温度が高くなりすぎると、封入されている水銀などにより発光管71aの黒化が進み、照度の維持ができなくなる場合がある。また、発光管71aの変形が生じる場合もある。そのため、排気部5を設け、凹部72aの内部空間の空気(例えば、ランプ71の近傍にある加熱された空気)を排気するとともに、凹部72aの開口を介して、リフレクタ72の外部にある空気を凹部72aの内部空間に導入するようにしている。
【0047】
ランプ71により加熱された空気が凹部72aの内部空間から排出され、リフレクタ72の外部にある加熱されていない空気(例えば、室温の空気)が、凹部72aの開口を介してランプ71の近傍に供給されれば、発光管71aの温度が高くなるのを抑制することができる。
【0048】
ところが、図4に示すように、凹部72aの開口は大きいので、凹部72aの内部空間に導入された空気の流速が遅くなる。空気の流速が遅くなると、凹部72aの内部空間にある空気の滞留が生じ易くなり、発光管71aの温度と発光管71aの近傍にある空気の温度との差が小さくなる。そのため、発光管71aの冷却が抑制されることになる。
【0049】
近年においては、ランプ71(発光管71a)の小型化や、処理能力の向上のための印加電力の増大などが求められており、発光管71aの温度が高くなる傾向にある。そのため、発光管71aの冷却が抑制されると、照度の維持が困難となったり、発光管71aの変形が生じ易くなったりするおそれがある。
【0050】
この場合、排気部5の排気能力を高めることも考えられるが、処理装置1の大型化や製造コストの増大を招くことになる。
【0051】
また、ランプ71から放出された熱により、処理物100の表面が加熱される。処理物100の表面が加熱されると、図4に示すように、処理物100の表面から処理物100の成分が蒸散する場合がある。前述したように、発光管71aの温度は高くなる傾向にあるので、処理物100の成分が蒸散する量が増加するおそれがある。蒸散した処理物100の成分は、凹部72aの内部空間に導入される空気に巻き込まれて凹部72aの内部空間に侵入する。凹部72aの開口は処理物100の直上に位置しているので、凹部72aの内部空間に侵入する処理物100の成分が多くなる。
【0052】
凹部72aの内部空間に侵入した処理物100の成分が発光管71aに付着すると、照度の維持が困難となるおそれがある。また、処理物100の成分が発光管71aに付着すると、放熱がし難くなるので、発光管71aの温度がさらに高くなるおそれがある。
【0053】
そこで、本実施の形態に係る光照射装置7には、整流板75が設けられている。
図5は、整流板75の作用、効果を例示するための模式断面図である。
図5に示すように、整流板75は凹部72aの開口に対峙させて設けることができる。整流板75とリフレクタ72の下面72cとの間には給気口72dを設けることができる。給気口72dは、整流板75とリフレクタ72の下面72cとの間に設けられた隙間とすることができる。すなわち、整流板75は、リフレクタ72に対して隙間を介して設けられている。
【0054】
凹部72aの内部空間の空気は、排気部5により、排気口72b1を介してリフレクタ72の外部に排出される。これに伴い、リフレクタ72の外部にある空気が、給気口72dを介して、凹部72aの内部空間に導入される。すなわち、凹部72aの内部空間には、給気口72d(隙間)から排気口72b1に向かって流れる気流が形成される。給気口72dの断面寸法(面積)は、凹部72aの開口の断面寸法(面積)よりも小さいので、給気口72dを通過する空気の流速を速くすることができる。給気口72dは、凹部72aの周縁に設けられるので、凹部72aの周縁から中央に向けて流れる流速の速い気流を形成することができる。凹部72aの中央にはランプ71(発光管71a)が設けられているので、温度の低い空気が発光管71aに到達し易くなる。
【0055】
温度の低い空気が発光管71aに到達すれば、発光管71aを効率よく冷却することができる。また、凹部72aの内部空間における気流の流れが速くなれば、凹部72aの内部空間における空気の滞留が抑制されるので、発光管71aの温度と発光管71aの近傍にある空気の温度との差が大きくなる。そのため、発光管71aの冷却が容易となる。
【0056】
ここで、発光管71aの温度が低くなりすぎると、放電媒体の蒸発量が少なくなり、所定の照度が得られなくなるおそれがある。この場合、凹部72aの内部空間に導入される空気の量と流速は、給気口72dの寸法と排気部5による排気量とにより調整することができる。そのため、給気口72dの寸法と排気部5による排気量とを調整することで、発光管71aの温度が所定の温度範囲内となるようにすることができる。
【0057】
例えば、リフレクタ72の周辺の空気の温度(外気温)、給気口72dの断面寸法、および排気部5による排気量とが、発光管71aの温度に及ぼす影響を、予め実験やシミュレーションを行うことで求めるようにすれば、発光管71aの温度制御が容易となる。
【0058】
前述したように、ランプ71の点灯時に発生した熱は、整流板75により、処理物100の表面への伝搬が抑制されるので、処理物100の成分が蒸散する量を少なくすることができる。また、整流板75は、凹部72aの開口に対峙しているので、蒸散した処理物100の成分が、凹部72aの開口から凹部72aの内部空間に侵入するのを抑制することができる。
【0059】
この場合、蒸散した処理物100の成分が整流板75の表面に付着する場合がある。しかしながら、整流板75の遮熱効果により処理物100の成分が蒸散する量は少なくすることができる。そのため、付着物の量は少なくなる。また、整流板75と処理物100との間の距離を長くできる場合には、付着物の量はさらに少なくなる。
【0060】
また、整流板75は、単なる板状部材なのでホルダ73に対する着脱が容易である。そのため、付着物の量が多くなった場合には、整流板75の交換や整流板75の清掃(例えば、洗浄など)を容易に行うことができる。
【0061】
図6は、他の実施形態に係る光照射装置7aを例示するための模式断面図である。
図6に示すように、光照射装置7aにはリフレクタ76が設けられている。リフレクタ76は、例えば、前述したリフレクタ72に給気口76aをさらに加えたものとすることができる。整流板75は、ホルダ73に取り付けてもよいし、リフレクタ76の下面72cに取り付けてもよい。凹部72aの開口は、整流板75により塞がれるようにしてもよい。凹部72aの開口が、整流板75により塞がれる場合には、移動部74は、ランプ71と、リフレクタ76と、の間の相対的な位置を変化させることができる。
なお、前述した給気口72dと給気口76aを設けるようにしてもよい。
【0062】
給気口76aは、凹部72aの内部空間に連通している。給気口76aは、リフレクタ76の、凹部72aが開口する面(下面72c)と交差する面(側面76b)に設けられている。例えば、給気口76aは、リフレクタ76の側面76bと凹部72aの内面との間を貫通している。給気口76aは、リフレクタ76の一方の側面76bに設けることもできるし、図6に示すように、リフレクタ76の両側の側面76bに設けることもできる。ただし、給気口76aがリフレクタ76の両側の側面76bに設けられていれば、ランプ71の近傍全体に空気を導入しやすくなる。
給気口76aが設けられていれば、凹部72aの内部空間に、給気口76aから排気口72b1に向かって流れる気流が形成される。
【0063】
給気口76aは複数設けることができる。複数の給気口76aは、ランプ71が延びる方向に並べて設けることができる。複数の給気口76aのピッチ寸法は同じであってもよいし、異なっていてもよい。複数の給気口76aの断面寸法は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
ランプ71の温度は、端部領域に比べて中央領域が高くなりやすい。そのため、中央領域に対峙する給気口76aのピッチ寸法は、端部領域に対峙する給気口76aのピッチ寸法よりも小さくしてもよい。中央領域に対峙する給気口76aの断面寸法は、端部領域に対峙する給気口76aの断面寸法よりも大きくしてもよい。給気口76aの数、配置、断面寸法などは、ランプ71の長さや温度などに応じて適宜決定することができる。給気口76aの数、配置、断面寸法などは、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
また、ランプ71が延びる方向に延びる給気口76a(例えば、スリット状の給気口76a)を1つ設けるようにしてもよい。すなわち、給気口76aは、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0065】
給気口76aは、リフレクタ76の側面76bにおける、ランプ71の中心を通りリフレクタ76の下面72cに平行な線分76cと、リフレクタ76の下面72cとの間の領域に設けることが好ましい。この様にすれば、凹部72aの内部空間を下方から上方に向けて流れる気流が形成されるので、ランプ71により加熱された空気を排出するのが容易となる。
【0066】
また、前述した給気口72dの場合と同様に、給気口76aの断面寸法(面積)は、凹部72aの開口の断面寸法(面積)よりも小さいので、給気口76aを通過する空気の流速を速くすることができる。そのため、温度の低い空気が発光管71aに到達し易くなる。温度の低い空気が発光管71aに到達すれば、発光管71aを効率よく冷却することができる。また、凹部72aの内部空間における気流の流れが速くなれば、発光管71aの温度と発光管71aの近傍にある空気の温度との差が大きくなるので、発光管71aの冷却が容易となる。
【0067】
また、前述した給気口72dの場合と同様に、凹部72aの内部空間に導入される空気の量と流速は、給気口76aの断面寸法と排気部5による排気量とにより調整することができる。そのため、給気口76aの断面寸法と排気部5による排気量とを調整することで、発光管71aの温度が所定の温度範囲内となるようにすることができる。
【0068】
例えば、リフレクタ76の周辺の空気の温度(外気温)、給気口76aの位置、給気口76aの断面寸法、および排気部5による排気量とが、発光管71aの温度に及ぼす影響を、予め実験やシミュレーションを行うことで求めるようにすれば、発光管71aの温度制御が容易となる。
【0069】
図7は、整流板75と給気口72d、76aによる温度の低減効果を例示するためのグラフである。
図7中のAは、整流板75が設けられていない場合、例えば、図4に例示をした光照射装置107の場合である。図7中のBは、整流板75と給気口72d、76aが設けられている場合、例えば、図5および図6に例示をした光照射装置7、7aの場合である。
【0070】
図8は、整流板75と給気口72d、76aによる温度の低減効果を例示するための表である。
図9は、整流板75と給気口72d、76aによる照度維持効果を例示するためのグラフである。
図9中のCは、整流板75が設けられていない場合、例えば、図4に例示をした光照射装置107の場合である。図9中のDは、整流板75と給気口72dが設けられている場合、例えば、図5に例示をした光照射装置7の場合である。図9中のEは、整流板75と給気口76aが設けられている場合、例えば、図6に例示をした光照射装置7aの場合である。
【0071】
図7図9における測定は、以下の条件で行った。
ランプサイズ:全長700mm、発光長:600mm、管径φ27.5mm
定格ランプ電圧:640V、電流:27A、電力:16800W、入力密度280W/cm
電極:タングステン/軸径φ3.0mm、全長30mm
放電媒体:キセノン/50Torr、Hg、HgI2、Fe、Tiなど
リフレクタの材料:アルミニウム
整流板:石英板(厚みは1.5mm)
【0072】
図7から分かるように、整流板75と給気口72d、76aを設ければ、発光管71aの表面温度を低くすることができる。
図8から分かるように、整流板75と給気口72dが設けられた光照射装置7としても、整流板75と給気口76aが設けられた光照射装置7aとしても発光管71aの表面温度を低くすることができる。
図9から分かるように、整流板75と給気口72dが設けられた光照射装置7としても、整流板75と給気口76aが設けられた光照射装置7aとしても、照度の低下を抑制することができる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 処理装置、5 排気部、6 コントローラ、7 光照射装置、7a 光照射装置、71 ランプ、71a 発光管、72 リフレクタ、72a 凹部、72b 上面、72b1 排気口、72c 下面、72d 給気口、73 ホルダ、74 移動部、75 整流板、76 リフレクタ、76a 給気口、76b 側面、100 処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9