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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】信号伝送装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20240122BHJP
   H04B 13/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04G21/24 A
H04B13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023129720
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520445521
【氏名又は名称】株式会社ダックビル
(73)【特許権者】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115118
【弁護士】
【氏名又は名称】西村 義隆
(72)【発明者】
【氏名】野口 高志
(72)【発明者】
【氏名】角張 潔
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3214622(JP,U)
【文献】特開2022-041722(JP,A)
【文献】特開2022-163498(JP,A)
【文献】特開2021-143495(JP,A)
【文献】特開2003-158387(JP,A)
【文献】特表2002-526901(JP,A)
【文献】特開平10-306591(JP,A)
【文献】特開2007-332556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
E04G 21/32
E04G 5/00
H02G 3/00-3/40
H02G 9/00-9/12
H04B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シート内に、各辺の中央付近から垂直に設置され、かつ全体として略十字状に設置した通信線を通信信号の伝送媒体として用い、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項2】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シート内に、各辺の中央付近から垂直に設置され、かつ全体として略十字状に設置した通信線を有し、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記通信線は、略十字状に設置した通信線の中心点と前記養生シートの各辺の接点との間に線が断絶している選択部を有し、
前記選択部は、断絶箇所に通信線を設置することで通信経路を形成できるよう作られており、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項3】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シート内に、各辺の中央付近から垂直に設置され、かつ全体として略十字状に設置した通信線を有し、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記通信線は、略十字状の中心点と前記養生シートの各辺との接点との間に線が断絶している選択部と、前記養生シートの各辺と前記通信線との接点付近に面状に通信路を形成して他の養生シートとの間で通信路を形成しやすくした接続部を有し、
前記選択部は、断絶箇所に通信線を設置することで通信経路を形成できるように作られており、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項4】
通信信号を伝送するための装置であって、
複数の養生シートを組み合わせて接続することで通信路を形成し、
前記養生シート内に、各辺の中央付近から垂直に設置され、かつ全体として略十字状に設置した通信線を有し、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記通信線は、略十字状の中心点と前記養生シートの各辺との接点との間に線が断絶している選択部と、前記養生シートの各辺と前記通信線との接点付近に面状に通信路を形成して他の養生シートとの間で通信路を形成しやすくした接続部を有し、
前記選択部は、断絶箇所に通信線を設置することで通信経路を形成できるように作られており、
前記養生シートは、隣接する養生シートと前記接続部が接触することで通信路が形成されており、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項5】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シート内に、前記養生シートの各辺の端から当該辺に沿って反対の端に向かって予め決められた長さだけ離れた位置から当該辺と垂直に通信線を設置することで前記通信線は前記養生シートの向かい合う二辺と平行するよう2本設置し、かつ別の向かい合う二辺と平行するよう2本設置して通信信号の伝送媒体として用い、
前記通信線は、それぞれ途中に線が断絶している選択部を有し、
前記選択部は、断絶箇所に通信線を設置することで通信経路を形成できるよう作られており、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項6】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シート内に、前記養生シートの各辺の端から当該辺に沿って反対の端に向かって予め決められた長さだけ離れた位置から当該辺と垂直に通信線を設置することで前記通信線は前記養生シートの向かい合う二辺と平行するよう2本設置し、かつ別の向かい合う二辺と平行するよう2本設置して通信信号の伝送媒体として用い、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記通信線は、それぞれ途中に線が断絶している選択部と、前記養生シートの各辺と前記通信線との接点付近に面状に通信路を形成して他の養生シートとの間で通信路を形成しやすくした接続部を有し、
前記選択部は、断絶箇所に通信線を設置することで通信経路を形成できるよう作られており、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。
【請求項7】
前記選択部及び/又は前記接続部は、磁性を帯びた素材を用い、通信路を形成する際に前記通信線が剥離しにくいよう構成した請求項、請求項、請求項のいずれか一項に記載の伝送装置。
【請求項8】
前記選択部上に固定することにより、通信路を形成することができる一面と、前記選択部上に設置することにより、通信路を断絶することができる反対面により構成される選択部接続シートをさらに備える請求項から請求項のいずれか一項に記載の伝送装置。
【請求項9】
通信信号を伝送するための装置であって、
略四角形の養生シートの端に折返し部を設置し、前記折返し部に通信信号の伝送媒体として通信線を配置し、
前記通信線に接触するよう変調機を備え、
前記変調機は、前記養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養生シートを用いた信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IT(Information Technology)技術の進歩により、建設現場(工事現場や新築以外の改修現場を含めて建設現場という)でも様々なITツールが利用されるようになってきた。建設現場に通信環境を構築する場合、無線LAN(Local Area Network)装置を用いることが考えられるが、基地局を地上階に設置すると無線信号は上方向に飛びにくく、高所で接続しにくいといった問題がある。
【0003】
一方で、屋外に有線の通信ケーブルを設置する場合、雨風による通信ケーブルの破損・劣化は避けられず、これを防止するためのシート又はカバーなどが用いられる。また、有線の通信ケーブルを設置すると、工事の過程において、通信ケーブルにぶつけたり引っかけてしまうなど、破損してしまうこともあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-306787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、通信ケーブルを保護するためのシートについて開示した一例である。特許文献1のように、通信ケーブルを保護するカバーを設置し、工事現場において通信ケーブルが切断しないような対策をとることも考えられる。
【0006】
一方で、建設現場では、工事対象の構造物に対して飛散防止等を目的として養生シート(現場シート、足場シート、養生幕などと呼ぶこともあるが統一された名称はないので養生シートと呼ぶ)が設置されるため、養生シートと通信ケーブルの保護シートを一体化することが可能であれば、通信ケーブルに工事用の機材をひっかけて破損してしまうなどの事態も回避が可能である。さらに、養生シートと一体化することで、通信ケーブルを設置するための現場作業員の作業工数も軽減することが可能である。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みて提案するものであり、建設現場で飛散防止等を目的として設置される養生シート内に通信ケーブルを含む伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る信号伝送装置は、養生シート内に配置された通信線を通信信号の伝送媒体として用い、通信線に接触するように変調機を備え、変調機は、養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、建設現場において養生シートを設置することにより、建設現場における通信環境も容易に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】信号伝送装置10の概要を示す図である。
図2】変調機100のシステム構成の具体例を示す図である。
図3】信号伝送装置30の具体的構成を示す図である。
図4】養生シート300の表側(図3と反対側)の具体的構成を示す図である。
図5】選択部接続シート340の通信路を構成するための具体的構成を示す図である。
図6】選択部接続シート340の通信路を構成しないための具体的構成を示す図である。
図7】複数の養生シート300を配置した場合の、信号伝送装置20の一例を示す図である。
図8】通信線210の編み込み方の具体例を示した図である
図9】中央付近以外に通信線410を設置した養生シート400の具体例を示す図である。
図10】養生シート400の端に通信線410を設置する具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0012】
(基本構成)
図1は、信号伝送装置10の基本的構成を示す図である。信号伝送装置10は、変調機100と、養生シート200とからなり、養生シート200内に通信線210を有する。また、養生シート200は、一般的に足場などにくくりつけるためのハトメ部201を有することが多い。
【0013】
変調機100は、イーサネット(登録商標)等他の規格、他の形式、他の変復調方式を用いた通信信号と、養生シート内通信を行うための通信信号を相互に変調、復調するための変復調機としての役割を果たす。変調機100は、養生シート側は通信線210と接続しており、イーサネット側は、イーサネットケーブルと接続している。変調機100は、イーサネット通信の信号を養生シート内通信の信号に変換し、また逆に、足場内通信の信号をイーサネット通信の信号に変換する。
【0014】
養生シート200は、建設現場などで一般的に用いられるシートである。素材はナイロンやポリエステルなどが用いられることが多いが、これに限られるものではない。また、網目状(メッシュ状)に構成されていることが一般的である。
【0015】
ハトメ部201は、複数の養生シートを結び付け、または、養生シートを足場や構造物に結び付けたりするために設置されるものであるが、必須の要素ではない。
【0016】
通信線210は、電気信号・光信号などの通信信号を伝送するための金属線などにより構成される伝送媒体である。通信線210は、養生シート200の表面に設置した上で、糸などを用いて結びつけることで固定してもよいが、養生シートを構成する繊維に編み込まれていることが望ましい。これにより、養生シート自体が通信線210の保護カバーとしての役割を果たし、通信線の破損・劣化を軽減することが可能となる。すなわち、一般的なイーサネットケーブルは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フッ素樹脂などの素材により金属線が被覆されているが、通信線210においても、養生シートに編み込むことにより、被覆することで、通信線の破損・劣化等を予防する。
【0017】
変調機100は、養生シート内通信を行うための通信信号と、イーサネット等、汎用的な他の規格の通信信号とを相互に変調、復調するための変復調機としての役割を果たす。変調機100は、養生シート側は通信線210と接続しており、イーサネット側はイーサネットケーブルと接続している。変調機100は、イーサネット等他規格の通信信号を養生シート内通信の信号に変換し、また逆に、養生シート内通信の信号をイーサネット等他規格の通信信号に変換する。(汎用的な通信規格はイーサネットであるため、以下他規格の通信規格をイーサネットとして示す。)
【0018】
図2は、変調機100のシステム構成の具体例を示す図である。変調機100は、プロセッサ110と、メモリ120と、足場側通信IF130と(IFはInterFaceの略語として使用している)、イーサネット側通信IF140とからなる。
【0019】
プロセッサ110は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。メモリ120は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリにより実現される。足場側通信IF130は、変調機100が養生シート内に流れる信号を送受信し、別の変調機100と通信を行うためのインタフェースである。イーサネット側通信IF140は、イーサネットに準拠した外部の装置と通信するため、信号を送受信するためのインタフェースである。
【0020】
変調機100は、イーサネット通信の信号を養生シート内通信の信号に変換する際に、イーサネット側通信IF140から受信した信号を、メモリ120から読み込んだプログラムによってプロセッサ110によって処理し、変調が行われた後に、足場側通信IF130から信号を送信する。
【0021】
変調機100は、養生シート内通信の信号をイーサネット通信の信号に変換する際に、足場側通信IF130から受信した信号を、メモリ120から読み込んだプログラムによってプロセッサ110によって処理し、復調が行われた後に、イーサネット側通信IF140から信号を送信する。
【0022】
変調機100の具体的な変調方法は、イーサネット通信の信号を養生シート内通信の信号に変調するときは、従来から存在する通信信号の変換手法を用いてもよい。例えば、振幅偏移変調(ASK:Amplitude Shift Keying)、位相偏移変調(PSK:Phase Shift Keying)、周波数偏移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)などの方法を用いて変調する。
【0023】
変調機100は、さらに、高速化通信を行うため、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、直接拡散(DS:Direct Sequence)、周波数ホッピング(FH: Frequency Hopping)、時分割多重接続(TDMA:Time Division Multiple Access)、周波数分割多重接続(FDMA: Frequency Division Multiple Access)、符号分割多重接続(CDMA:Code Division Multiple Access)などの二次変調手段を組み合わせてもよい。これにより、高速化やノイズなどへの耐性を図ることができる。
【0024】
変調機100の具体的な復調方法、すなわち、足場内通信の信号をイーサネット通信の信号に復調するときは、変調時の方法と逆の変換を行うことで、復調のための処理を施し、通信信号の復調処理を行う。
【0025】
変調機100を用いる理由は、養生シート内に通信線210を設置するときに、イーサネット規格の通信線210を養生シート200内に編み込むことは、通信線の太さなどを踏まえると実現可能性が低いためである。本発明では、変調機100を用いることにより、通信線の素材、大きさ、伝送効率、伝送速度などの制約を軽減し、任意のサイズの通信ケーブルを用いることが可能となり、これにより、養生シート内を通信路として形成しつつ、利用者はイーサネット規格に準拠した通信機器を用いることが可能となる。
【0026】
(複数の養生シートにより実現する構成)
建設現場においては、飛散防止を目的として養生シートが設置されることが一般的であるが、この養生シートが一枚で構成されることは少なく、ほとんどの場合、複数の養生シートを組み合わせて構造物全体を覆うこととなる。なお、養生シートは縦5.4m、横1.8mの大きさで構成されることが多いが、これに限られるものではない。複数の養生シートにより構成される場合、図1に示すように一枚の養生シートを前提とした構成ではなく、複数の養生シートの組み合わせと、それに伴う通信線による通信路の設置及び送受信機の設置を行う。
【0027】
図3は、複数の養生シート300を組み合わせることにより、信号伝送装置30を実現するための養生シート300の構成の一例を示した図である。養生シート300内には、長辺方向と短辺方向の各辺の中央付近から垂直に通信線310を設置し、通信線は、長辺方向又は短辺方向と平行し、全体として略十字状に通信線310を設置する。(便宜的に、長辺方向、短辺方向としたが、正方形を排除するものではなく、正方形の場合は、ある一方向とそれに並行する方向を長辺方向、別の一方向とそれに並行する方向を短辺方向と読み替えて解釈する。)また、1枚の養生シート内に設置された通信線310のうち端の部分には、接続部320を設置するとよい。また、略十字状に設置した通信線310の中心点と接続部320の間には、選択部330を設置するとよい。
【0028】
接続部320は、養生シート200及び/又は変調機100と接続するために設けられる。一般的に建設現場で用いる養生シートは、複数のシートを接続して構成される。このとき、養生シート300のハトメ部201を利用し、ハトメ部201に紐等を通して養生シート同士あるいは足場などの建設機材と結束することで接続する。接続部320は、このように養生シートを結束する際に、結束された養生シート間で通信線310が経路を形成できるよう、養生シートの各辺と通信線との接点付近に設け、隣接する養生シートの接続部320が接触することで通信路を形成する。また、複数の養生シート200を接続することを考えると、長辺・短辺それぞれの方向の中央部に配置するなど、養生シート200内の同じ位置に配置されていることが望ましい。
【0029】
また、接続部320を利用して複数の養生シート300を接続したときに、通信線310が経路を形成できるよう、接続部320近辺においては、通信線310を表面又は裏面に露出させるとよい。さらに、接続部320の近辺において、養生シート300の表面及び裏面の両面において通信線310を露出させてもよい。通信線310を露出させることにより、複数の養生シート300が重なったときに通信路を形成させやすくすることが可能となる。なお、ここで養生シート200の裏面とは、構造体に養生シートを設置する場合において、構造体側に位置する面を指し、表面とは、構造体とは反対側の外側を指すものとする。
【0030】
接続部320の形状は、略四角形又は略円形などの形状で形成し、線状ではなく面状に形成して、通信路が接続しやすいように構成してもよい。
【0031】
接続部320は、磁性を帯びた素材を用いてもよい。磁性を帯びた素材を用いることで、複数の養生シートの接続部320を接続しやすくし、かつ、外部の力によって容易に離脱しないようにすることで形成した通信路の安定性を向上させることができる。
【0032】
養生シート300を複数枚接続する際には、接続部320をクランプ又はクリップのような物理的に圧力をかける器具を用いて接続してもよい。また、養生シート300を複数枚接続する際に、面ファスナーやホックなどを用いて固定してもよい。
【0033】
選択部330は、略十字状に形成した通信線310において、略十字状の中心点と、養生シートの各辺又は接続部320との間に設けられた通信線の断絶箇所である。接続部320は、断絶箇所にさらに通信線を設置することで、通信経路を形成することが可能であり、通信路の形成・非形成を選択することが可能となる。選択部330において、通信線310が断絶していることで、養生シート内の4箇所の選択部330のうち、任意の2か所の選択部330において通信路を形成することにより、養生シート内の通信線310の経路を選択することができる。
【0034】
例えば、図3において、4か所の接続部320及び選択部330をそれぞれ一番上のものから右回りに上、右、下、左と呼ぶこととすると、上と下の選択部330を接続することで、通信路は上の接続部320と下の接続部320の間に形成されることとなる。また、下と右の選択部330を接続することで、通信路は右の接続部320と下の接続部320の間に形成されることとなる。
【0035】
選択部330の通信線310との接続部分の形状は、例えば、略四角形又は略円形などの形状により、線状ではなく面状により形成することで、通信路が接続しやすいように構成してもよい。
【0036】
選択部330は、磁性を帯びた素材を用いてもよい。磁性を帯びた素材を用いることで、選択部330を接続しやすくし、かつ、外部の力によって容易に離脱しないようにすることで形成した通信路の安定性を向上させることができる。
【0037】
選択部330は、クランプ又はクリップのような物理的に圧力をかける器具を用いて通信路を接続してもよい。
【0038】
図4は、養生シート300の図3とは反対側の表側(構造物側とは反対側)を示した図である。図4に示すように、接続部320は、養生シート300の表面において略四角形又は略円形などの形状により形成し、通信路が接続しやすいように構成されていてもよい。
【0039】
図5は、選択部330において通信路を形成するための選択部接続シート340の構成を示す図である。選択部330は、上述のように、クランプ又はクリップを用いて通信路を形成してもよいが、選択部接続シート340を用いて通信路を形成してもよい。
【0040】
選択部接続シート340は、通信線310と、接触部341と、固定部342とからなる。選択部接続シート340は、通信路を形成した面を選択部330に固定することにより、選択部330に通信路を形成することができる。
【0041】
通信線310は、養生シート300の通信線310と同じ素材で構成される。
【0042】
接触部341の形状は、例えば、略四角形又は略円形などの形状により形成し、線状ではなく面状をもって形成することで、通信路が接続しやすいように構成してもよい。そして、当該接続部分の形状は、選択部330の通信線310との接続部分の形状と同様であることが望ましい。接触部341は、選択部330の通信線310との接続部分と接触することで、選択部330の断絶部分に通信路を形成する。
【0043】
接触部341は、磁性を帯びた素材を用いてもよい。磁性を帯びた素材を用いることで、選択部330と接触部341を接続しやすくし、かつ、外部の力によって容易に離脱しないようにすることで形成した通信路の安定性を向上させることができる。
【0044】
固定部342は、養生シート300の選択部330上に、選択部接続シート340を固定させるための部材である。固定部342は、面ファスナーやホックなどを用いて、養生シート300の選択部330上に選択部接続シート340を固定する。このように固定部342を設けることで、通信路の断絶を防止し、安定的に通信路を形成することが可能となる。
【0045】
図6は、選択部接続シート340について、図5の反対面の構成を示した一例を示す図である。ここで、図5に示す面を形成面、図6に示す面を断絶面と呼ぶこととする。図6に示すように、図5の反対面は、固定部342のみを有している。すなわち、こちらの断絶面を養生シート300の選択部330と接するように固定することで、通信路を形成せず、断絶したままにすることができる。
【0046】
図6に示すように、選択部接続シート340を構成することで、選択部330上には選択部接続シート340が必ず形成されており、選択部接続シート340を形成面又は断絶面のいずれかを養生シート300と接触させるように構成することで、通信路の形成または断絶を構成可能となり、かつ、選択部接続シート340を養生シート300に固定して紛失することを予防することが可能となる。
【0047】
図7は、複数の養生シート300を配置した場合の、信号伝送装置20の一例を示す図である。この図では、養生シート300が縦2枚、横4枚の合計8枚から構成されており、2つの変調機100の間に通信路が形成されるよう、各養生シート300の選択部330が形成されている。
【0048】
養生シート300について、4か所の選択部330をそれぞれ一番上のものから右回りに上、右、下、左と呼ぶこととする。図7の例では、下の段一番左の養生シート300は右と下に通信路を形成、下の段左から二番目及び三番目の養生シート300は左と右に通信路を形成、下の段一番右の養生シート300は左と上に通信路を形成、上の段一番右の養生シート300は上と下に通信路を形成することで、2つの変調機100の間に通信路を形成している。
【0049】
図8は、通信線210の編み込み方の具体例を示した図である。養生シート200は、図8に示すように、メッシュ状に構成されていることが多い。そこで、これらの繊維に通信線を編み込むことによって、養生シート200自体を保護カバーとして活用し、かつ凹凸の少ない形状にすることにより通信線210の破損・劣化から守ることが可能となる。
【0050】
以上述べたような構成により、養生シート200に通信線210を設置することで、建設現場における養生シートを通信路を形成する道具として用いることが可能となる。これにより、作業員としては簡単に通信路を形成することが可能となり、かつ養生シート200自体が保護カバーとしての役割を果たすことで、通信線210の破損・劣化から守ることが可能となる。
【0051】
(変形例)
既に述べた養生シート300は、シートの内側、特に複数のシートを組み合わせることを考慮すると、接続部320の位置が養生シート300の中央部付近に形成されることにより複数枚をつなぎ合わせたときに位置を合わせやすく望ましい。しかし、必ずしも養生シートの中心付近に通信路を設置する必要はなく、以下、他の部分に通信路を設置する例について示す。
【0052】
図9に中央付近以外に通信線410を設置した養生シート400の具体例を示す。図9に示すように、通信線410は各辺の中央付近以外に設置してもよい。通信線410は、養生シート400の各辺の端から予め決められた位置から垂直に設置し、養生シート400の向かい合う二辺と平行するよう2本の通信線を設置し、別の向かい合う二辺と平行するよう2本の通信線を設置する。建設現場においては、養生シート400を複数枚用いて現場の養生を行うため、他の養生シート400と接続することを踏まえると、このように決められた位置に通信線410が配置されていることが望ましい。また、他の養生シートと接続するための接続部420を設けておくことで、他の養生シートとの通信線410の接続をしやすくすることが可能である。接続部420は接続部320と同様に構成してよい。また、選択部430を設け、通信経路を選択できるようにしておくとよい。選択部430は選択部330と同様に構成してよく、それぞれの通信線の途中に断絶箇所を設けることにより構成する。
【0053】
図10に養生シート400の端に通信線410を設置する具体例を示す。建設現場で用いる養生シートは、本体部401と折返し部402を有することがほとんどである。本体部401はメッシュ状の繊維で形成されることが多く、折返し部402は、養生シート400の端部を折り返して二重にし、強度を増す効果が得られる。
【0054】
養生シート400の端に通信線410を設置する場合にも、図9と同じように、接続部420と、選択部430を設けておくことが望ましい。接続部420を設けておくことで、他の養生シートとの間で通信線410を接続することが容易になる。ただし、通信線410は、折返し部402の中に設置されているため、選択部430は、スイッチなどの機構を用いて、折返し部402の外側から、通信線410の通信路の形成・非形成を選択できるようにしておく必要がある。
【0055】
養生シート400の端部に通信線410を設置する際には、折返し部402の中に通信線410を通すことで、本体部401の中に通信線410を編み込まなくとも配置することができ、容易に設置しながら、折返し部に守られることで通信線410の破損・劣化を防止することが可能となる。
【0056】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0057】
10,20,30…信号伝送装置、100…変調機、110…プロセッサ、120…メモリ、130…足場側通信IF、140…イーサネット側通信IF、200,300,400…養生シート、201…ハトメ部、210,310,410…通信線、320,420…接続部、330,430…選択部、330…選択部接続シート、341…接触部、342…固定部、401…本体部、402…折返し部

【要約】
【課題】信号伝送装置により、養生シートを通信媒体として通信を行うことを可能とする。
【解決手段】養生シート内に配置された通信線を通信信号の伝送媒体として用い、通信線に接触するように変調機を備え、変調機は、養生シート内の通信信号と、他規格の通信信号を相互に変換する伝送装置。このように設計することで、養生シート内に配置された通信線の素材、大きさ、伝送効率、伝送速度などの制約を軽減することで、養生シートを通信媒体として利用することを実現する。
【選択図】図1

図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10