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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】縮合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/56 20060101AFI20240122BHJP
   C08G 65/337 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08G77/56
C08G65/337
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020030113
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134253
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】木島 哲史
(72)【発明者】
【氏名】赤津 康彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529084(JP,A)
【文献】特表2011-517725(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108047468(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103113591(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08G 65/00- 65/48
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量Mnが5,000~10,000のヒドロキシル基末端ジメチルポリシロキサン2,4,6-トリメトキシボロキシンおよび一般式
HO-A-R F -A-OH 〔I〕
(ここで、R F は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する基であり、Aは炭素数1~3のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール縮合体
【請求項2】
請求項1に記載された各成分を、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類または非プロトン性極性溶媒を反応溶媒として用いて反応させることを特徴とする縮合体の製造法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合体に関する。さらに詳しくは、ダイラタンシー性を有する縮合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイラタンシー性とは、遅いせん断刺激に対しては粘性が大きく、液体(流体)のように振舞い、速いせん断刺激に対しては強性が大きく、固体のように振舞う現象をいい、かかる性質を有する材料は、例えばスポーツ競技等のプロテクター素材、スキー用衣類、ローラスケートあるいはスケートボード用肘あて等や、防弾チョッキ、防振材等に用いられている。
【0003】
このようなダイラタンシー性を有する材料として、ホウ素架橋シラノール官能性オルガノポリシロキサンエマルジョン(特許文献1)や、相対標準偏差値が0.5~5の形状を有する無機固体微粒子を含む光硬化性樹脂組成物(特許文献2)、または水酸基を有する化合物とホウ素化合物とを含有する樹脂組成物(特許文献3)が提案されている。しかしながら、昨今さらなる高ダイラタンシー性を満足させる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-517725号公報
【文献】特開平10-330627号公報
【文献】特開2017-214510号公報
【文献】特開2008-38015号公報
【文献】米国特許第3,574,770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、取り扱い性にすぐれ、所望のダイラタンシー性を有する縮合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、数平均分子量Mnが5,000~10,000のヒドロキシル基末端ジメチルポリシロキサン2,4,6-トリメトキシボロキシンおよび一般式
HO-A-R F -A-OH 〔I〕
(ここで、R F は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する基であり、Aは炭素数1~3のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール縮合体によって達成される。
【0007】
また、かかる縮合体は、各成分をエステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を反応溶媒として用い、例えば約30~200℃で約1~30時間反応させることによって製造される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の縮合体は、数平均分子量Mnが特定のジメチルポリシロキサンを選択し、これと2,4,6-トリメトキシボロキシンの縮合体とすることにより、すぐれたダイラタンシー性を有する材料を得ることができるといったすぐれた効果を奏する。また、含フッ素アルコールを用いることにより、樹脂やゴム等に添加することでその表面に防汚性を付与することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の縮合体は、数平均分子量Mnが5,000~10,000のヒドロキシル基末端ジメチルポリシロキサン2,4,6-トリメトキシボロキシンおよび一般式
HO-A-R F -A-OH 〔I〕
(ここで、R F は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する基であり、Aは炭素数1~3のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール縮合体よりなる。
【0010】
ジメチルポリシロキサンとしては、数平均分子量Mn5,000~10,000、好ましくは7,000~8,000のものが用いられ、好ましくは
HO(CH3)2SiO〔(CH3)2SiO〕n(CH3)2SiOH
n:60~140
で表される末端にヒドロキシル基を有する直鎖状のヒドロキシル基末端ポリシロキサンが用いられる。ここで、ジメチルポリシロキサンとして規定された数平均分子量以外のものを用いた場合には、例えば後記比較例1~3に示されるようにダイラタンシー性の効果を得ることができない。
【0011】
2,4,6-トリメトキシボロキシンは、式

で表されるホウ素化合物であり、ジメチルポリシロキサン100重量部に対して、1~100重量部、好ましくは2~50重量部の割合で用いられ、ジメチルポリシロキサンの架橋剤として作用する。2,4,6-トリメトキシボロキシンがこれより少ない割合で用いられると液状になってしまい、一方これより多い割合で用いられるとダイラタンシー性を失うようになる。
【0012】
さらに、反応系には含フッ素アルコールが共存される。かかる含フッ素アルコールとしては一般式
HO-A-RF-A-OH 〔I〕
RF:C6以下のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基および
エーテル結合を有し、具体的には炭素数5~160の直鎖状または分岐状のパー
フルオロアルキレン基またはそれのフッ素原子の一部が水素原子で置換され
たポリフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する基
A:炭素数1~3のアルキレン基
で表される化合物が用いられる。
【0013】
一般式〔I〕で表される含フッ素アルコールとしては、一般式
HO(CH2)aCmF2m(OCnF2n)bO(CF2)cO(CnF2nO)dCmF2m(CH2)aOH 〔II〕
a:1~3
b+d:0~50
c:1~6
m:1~2
n:1~3
で表される化合物が挙げられる。
【0014】
一般式〔II〕で表される含フッ素アルコールとしては、例えば一般式
HO(CH2)aCF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕bO(CF2)cO〔CF(CF3)CF2O〕dCF(CF3)(CH2)aOH 〔III〕
a:1~3、好ましくは1
b+d:0~50、好ましくは1~20
b+dの値に関しては、分布を有する混合物であってもよい
c:1~6、好ましくは2~4
で表される化合物等が用いられる。
【0015】
一般式〔II〕で表されるパーフルオロアルキレンエーテルジオールにおいて、a=1の化合物は特許文献4~5に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
FOCRfCOF → H3COOCRfCOOCH3 → HOCH2RfCH2OH
Rf:-C(CF3)〔OCF2C(CF3)〕aO(CF2)cO〔CF(CF3)CF2O〕bCF(CF3)-
【0016】
これらの各成分は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル類、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を反応溶媒として用い、約30~200℃で約1~30時間反応させることにより、縮合体を形成させる。得られる縮合体の粒子径(動的光散乱法により測定)は約0.5~10μm、好ましくは約1~5μmである。
【実施例
【0017】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0018】
実施例1
容量50mlの反応容器に、数平均分子量Mn 7,700のジメチルポリシロキサン250mgおよび2,4,6-トリメトキシボロキシン(東京化成工業製品)50mgおよびテトラヒドロフラン20mlを仕込み、24時間攪拌した。得られた縮合体の粒子径は1.74±0.14μmであった。
【0019】
得られた縮合体を用い、粘弾性試験およびダイラタンシー性の検討を行った。
粘弾性試験:周波数0.7Hzおよび10Hzでの貯蔵弾性率G’(Pa)と損失弾性率G''(Pa)
をHAAKE製MARSiQ レオメーターを用いて測定し、これらの値から
tanδ(G''/G')を算出
tanδの値が高いほど、粘性が高くなり一般的に柔らかく、この値が
低いほど、粘性が低くなり一般的に硬い
ダイラタンシー性:tanδ比(周波数0.7Hzでのtanδ/周波数10Hzでのtanδ)を算出
周波数が大きいほど物に対する速い刺激となり、周波数が小さ
いほど物に対する遅い刺激となることから、上記比が大きいほ
ど速い刺激に対してより硬く、遅い刺激に対してよりやわやか
くなるので、ダイラタンシー性にすぐれている
【0020】
実施例2
実施例1において、ジメチルポリシロキサン量が500mgに変更され、さらに含フッ素アルコール
HOCH2CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕nO(CF2)2O〔CF(CF3)CFO2O〕mCF(CF3)CH2OH
〔OXF9DOH、n+m=7〕
100mgが用いられた。得られた縮合体の粒子径は1.80±0.17μmであった
【0021】
実施例3
実施例2において、含フッ素アルコール量が500mgに変更されて用いられた。得られた縮合体の粒子径は1.10±0.03μmであった
【0022】
比較例1
実施例1において、ジメチルポリシロキサンとして数平均分子量Mnが30,000のものが同量(250mg)用いられた。得られた縮合体の粒子径は2.53±0.14μmであった
【0023】
比較例2
実施例2において、ジメチルポリシロキサンとして数平均分子量Mnが30,000のものが同量(500mg)用いられた。得られた縮合体の粒子径は2.50±0.25μmであった
【0024】
比較例3
実施例3において、ジメチルポリシロキサンとして数平均分子量Mnが30,000のものが同量(500mg)用いられた。得られた縮合体の粒子径は2.13±0.03μmであった
【0025】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。


【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明で得られる縮合体は、すぐれたダイラタンシー性を有していることから、例えばスポーツ競技等のプロテクター素材、スキー用衣類、ローラスケート、スケートボード用肘あて等や、防弾チョッキ、防振材等に好適に用いられる。