IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ システム計測株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】機械式拡径バケット
(51)【国際特許分類】
   E21B 11/00 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
E21B11/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020185902
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075239
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】濱 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】関根 孝司
(72)【発明者】
【氏名】中西 義隆
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159125(JP,A)
【文献】特開昭58-189424(JP,A)
【文献】米国特許第04971163(US,A)
【文献】特開2008-014007(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/079811(JP,A1)
【文献】特開昭52-121901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、該軸部よりも径の大きな拡径部とを備える拡径杭の施工に当たり、該拡径部を形成するための拡径部用杭孔を造成する機械式拡径バケットであって、
筒状本体と、
前記筒状本体に対して、該筒状本体の径方向に拡径するように取り付けられている拡径翼とを有し、
前記拡径翼に貫通孔が設けられており、
前記筒状本体の内部には、円筒状の側面を備えたガイド筒が取り付けられ、該側面には、該ガイド筒の軸方向に対して傾斜方向に延びている二つの案内溝が設けられており、
二つの前記案内溝に跨がるようにして配設されているキーと、該キーの両端部と二つの前記拡径翼とを接続する二つの連結軸体と、を備えているアームが、前記ガイド筒の軸方向に昇降自在であり、かつ該ガイド筒の軸周りに回動自在に配設されており、
前記連結軸体が、前記キーの端部に取り付けられている第一連結軸体と、前記拡径翼に取り付けられている第二連結軸体とを備え、
前記第一連結軸体と前記第二連結軸体の端部同士が、前記連結軸体の軸周りに回転自在に接続されていることを特徴とする、機械式拡径バケット。
【請求項2】
前記拡径翼のうち、該拡径翼が拡径した際に地山側となる縁部には、複数の切削ビットが装着されており、
前記切削ビットの地山側の先端には硬質鋼材が取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の機械式拡径バケット。
【請求項3】
前記拡径翼に取り付けられている複数の前記切削ビットのうち、少なくとも下方にある該切削ビットが、前記縁部において水平方向に延設していることを特徴とする、請求項に記載の機械式拡径バケット。
【請求項4】
前記筒状本体の天井に取り付けられている天井ブラケットをさらに有し、
前記天井ブラケットの上方もしくは下方のいずれか一方に、前記アームを昇降させる油圧機構が取り付けられるようになっており、前記アームは前記案内溝に沿って昇降しながら回動することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の機械式拡径バケット。
【請求項5】
前記油圧機構の周囲において、シリンダと、該シリンダとの間に隙間を備えた状態で配設される筒状軸体と、をさらに有し、
前記天井ブラケットの下方に取り付けられる前記油圧機構の備えるピストンロッドと、該筒状軸体とに対して、前記キーが取り付けられるようになっており、
前記ガイド筒の内部において、前記ピストンロッドの昇降及び回動に応じて前記筒状軸体が昇降及び回動することを特徴とする、請求項に記載の機械式拡径バケット。
【請求項6】
アースドリル掘削機の備えるケリーバの下端に対して、直接的もしくは間接的に取り付けられる伝達軸体をさらに有し、
前記伝達軸体が前記ガイド筒の内部に配設され、該伝達軸体に対して前記キーが取り付けられ、該キーが二つの前記案内溝に跨がるようにして配設されており、
前記ケリーバの降下によって前記伝達軸体が降下され、該伝達軸体の降下の際に前記キーが前記案内溝に沿って移動することにより、前記アームが回動されて前記拡径翼を開閉することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の機械式拡径バケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式拡径バケットに関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の支持力強化手法として、杭の軸部に拡径部を形成する手法が挙げられる。この拡径部により、杭の支持力の増加に加えて、杭の引抜き抵抗力の増加も図ることができる。そのため、アスペクト比が大きく、転倒モーメントが卓越して引抜き力が課題となり得る高層ビルや超高層ビル、高層タワー等の基礎杭として、拡径部を有する杭は好適となる。
上記する拡径部には、杭の軸部の底部にある拡底部と、杭の軸部の途中位置にある中間拡径部が含まれ、拡底部と中間拡径部のいずれか一方を備えている形態の拡径杭と、拡底部と中間拡径部の双方を備えている形態の拡径杭がある。
【0003】
従来、上記する拡底部を備えている拡径杭の杭孔(拡径杭用杭孔であって、軸部用杭孔と、拡底部用杭孔と、を有する)の造成に当たり、拡底部用杭孔の造成に好適ないくつかの拡底バケットが提案されている。拡底バケットは、油圧機構を有する油圧式の拡底バケットと、油圧機構を有さない機械式の拡底バケットに大別されるが、ここでは、機械式の拡底バケットの一例について提示する。具体的には、円筒状の本体部と、本体部の直径を拡大させるように開放可能に形成された拡径翼部とを備え、拡径翼部の側端部に回転自在のローラビットが側端部の延設方向に間隔を置いて複数設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-14007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の拡底バケットによれば、硬質な地盤であっても、拡径杭用杭孔を構成する拡底部用杭孔を、精度よく、かつ容易に造成することができる。ここで、この拡底バケットは、先行して造成された軸部用杭孔の底部地盤の上に拡底バケットを着底させ、底部地盤に反力を取って拡底バケットの有する拡径翼をケリーバの押込力を利用して開姿勢とした後、ケリーバを介して拡底バケットを回転させることにより拡底部用杭孔を造成するものである。
そこで、軸部用杭孔の底部地盤の上に着底させることにより拡底部用杭孔を効率的に造成できることに加えて、底部地盤の上に着底させることなく中間拡径部用杭孔を効率的に造成することのできる、機械式拡径バケットが切望される。
【0006】
本発明は、軸部用杭孔の底部地盤の上に着底させることにより拡底部用杭孔を効率的に造成することを可能にし、さらに、底部地盤の上に着底させることなく中間拡径部用杭孔を効率的に造成することを可能にした、機械式拡径バケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による機械式拡径バケットの一態様は、
軸部と、該軸部よりも径の大きな拡径部とを備える拡径杭の施工に当たり、該拡径部を形成するための拡径部用杭孔を造成する機械式拡径バケットであって、
筒状本体と、
前記筒状本体に対して、該筒状本体の径方向に拡径するように取り付けられている拡径翼とを有し、
前記拡径翼に貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、拡径翼が例えば複数の貫通孔を有することにより、拡径翼の軽量化と、機械式拡径バケット全体の軽量化を図ることができる。また、拡径翼による地山の切削の際に、広幅の拡径翼には土水圧が作用することになるが、作用する土水圧を例えば複数の貫通孔によって低減することができ、拡径翼を回転させるケリーバの駆動源である回転駆動部に作用するトルク負荷を軽減することができる。
ここで、本態様の機械式拡径バケットに対して、油圧機構を着脱自在に取り付けることによって拡径バケットを構成することにより、拡径バケットを底部地盤の上に着底させることなく、拡径杭用杭孔に含まれる中間拡径部用杭孔を効率的に造成することができる。また、機械式拡径バケットに対して油圧機構を取り付けることなく、ケリーバを直接取り付けることにより、機械式拡径バケットを底部地盤の上に着底させることによって拡径杭用杭孔に含まれる拡底部用杭孔を効率的に造成することができる。
【0009】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様において、前記筒状本体の内部には、円筒状の側面を備えたガイド筒が取り付けられ、該側面には、該ガイド筒の軸方向に対して傾斜方向に延びている二つの案内溝が設けられており、
二つの前記案内溝に跨がるようにして配設されているキーと、該キーの両端部と二つの前記拡径翼とを接続する二つの連結軸体と、を備えているアームが、前記ガイド筒の軸方向に昇降自在であり、かつ該ガイド筒の軸周りに回動自在に配設されていることを特徴とする。
本態様によれば、ガイド筒に設けられている二つの案内溝に沿ってアームを構成するキーが案内され、キーに接続される連結軸体を介して拡径翼が展開されることにより、二つの拡径翼の開姿勢と閉姿勢を安定的かつスムーズに形成することができる。
【0010】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様において、前記連結軸体が、前記キーの端部に取り付けられている第一連結軸体と、前記拡径翼に取り付けられている第二連結軸体とを備え、
前記第一連結軸体と前記第二連結軸体の端部同士が、前記連結軸体の軸周りに回転自在に接続されていることを特徴とする。
本態様によれば、案内溝に案内されるキーと拡径翼とを接続する連結軸体が第一連結軸体と第二連結軸体とを備え、第一連結軸体と第二連結軸体が相互に回転自在に接続されていることにより、拡径翼の開閉の際に連結軸体に作用し得るねじり力を、第一連結軸体と第二連結軸体の相対回転によって吸収することができる。
【0011】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様は、前記拡径翼のうち、該拡径翼が拡径した際に地山側となる縁部には、複数の切削ビットが装着されており、
前記切削ビットの地山側の先端には硬質鋼材が取り付けられていることを特徴とする。
本態様によれば、切削ビットの地山側の先端に硬質鋼材が取り付けられていることにより、一般に摩耗が激しい切削ビットの先端の摩耗を抑制することができる。
【0012】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様は、前記拡径翼に取り付けられている複数の前記切削ビットのうち、少なくとも下方にある該切削ビットが、前記縁部において水平方向に延設していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、拡径翼において少なくとも下方にある切削ビットが水平方向に延設していることにより、上方で掘削されて下方に落下し、堆積している土砂を含めて、地山をより一層効果的に切削することが可能になる。また、特に拡径翼の下方にある切削ビットが斜め方向に取り付けられていると、切削ビットの一部の摩耗が激しくなるが、切削ビットが水平方向に延設していることにより、切削ビットの一部が相対的に激しい摩耗を受ける恐れはなくなる。
【0014】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様は、前記筒状本体の天井に取り付けられている天井ブラケットをさらに有し、
前記天井ブラケットの上方もしくは下方のいずれか一方に、前記アームを昇降させる油圧機構が取り付けられるようになっており、前記アームは前記案内溝に沿って昇降しながら回動することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、機械式拡径バケットを構成する筒状本体の天井に天井ブラケットが設けられ、天井ブラケットの上方もしくは下方に対して、アームを昇降させる油圧機構が着脱自在に取り付けられるようになっていることにより、機械式拡径バケットと油圧機構とにより構成される拡径バケットを、底部地盤の上に着底させて地盤から反力を取ることなく、中間拡径部用杭孔を効率的に造成することが可能になる。
また、天井ブラケットの下方に油圧機構が取り付けられた拡径バケットによれば、筒状本体の内部に油圧機構が取り付けられていることから、油圧機構を備えながらも拡径バケットの全体の高さと重量の双方を抑制することができ、中間拡径部用杭孔掘削機を構成する、より一層コンパクトな拡径バケットを提供することができる。
【0016】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様は、前記油圧機構の周囲において、前記シリンダとの間に隙間を備えた状態で配設される筒状軸体をさらに有し、
前記天井ブラケットの下方に取り付けられる前記油圧機構の備えるピストンロッドと、該筒状軸体とに対して、前記キーが取り付けられるようになっており、
前記ガイド筒の内部において、前記ピストンロッドの昇降及び回動に応じて前記筒状軸体が昇降及び回動することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ピストンロッドの周囲において、ピストンロッドと同期して昇降及び回動する筒状軸体が設けられていることにより、ピストンロッドを周囲にある土砂から防護することができる。また、ガイド筒の内部を筒状軸体が昇降及び回動することにより、ガイド筒に沿ったピストンロッドの安定的な昇降及び回動を実現できる。このように、油圧機構の周囲に筒状軸体を備える構成によって様々な効果が奏される一方で、シリンダやピストンロッドと筒状軸体の間に隙間がないと、様々な課題が懸念される。
例えば、油圧機構と筒状軸体の組み付け時に双方の製作誤差を吸収できないといった課題がある。また、二つの拡径翼のうちの一方の拡径翼が土砂に噛んで筒状本体が偏心した際に、シリンダやピストンロッドと筒状軸体が相互に強く干渉し、シリンダ等が破損する恐れがある。また、シリンダと筒状軸体の間に微細な土砂が入り込んで噛んだり堆積することにより、摩擦抵抗が増大してシリンダに対するピストンロッド及び筒状軸体の昇降が阻害され、拡径翼の開閉の阻害に繋がる恐れがある。
そこで、本態様では、天井ブラケットの下方に取り付けられる油圧機構のシリンダと筒状軸体との間に隙間を設けておく(結果として、ピストンロッドと筒状軸体との間にもより大きな隙間が形成される)ことにより、油圧機構の周囲に筒状軸体を備えることによる様々な効果を享受しながら、この構成によって懸念される様々な課題を解消することができる。
【0018】
また、本発明による機械式拡径バケットの他の態様は、アースドリル掘削機の備えるケリーバの下端に対して、直接的もしくは間接的に取り付けられる伝達軸体をさらに有し、
前記伝達軸体が前記ガイド筒の内部に配設され、該伝達軸体に対して前記キーが取り付けられ、該キーが二つの前記案内溝に跨がるようにして配設されており、
前記ケリーバの降下によって前記伝達軸体が降下され、該伝達軸体の降下の際に前記キーが前記案内溝に沿って移動することにより、前記アームが回動されて前記拡径翼を開閉することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、ケリーバが直接的もしくは間接的に取り付けられる伝達軸体に対して、アームを構成するキーが取り付けられ、ケリーバの降下によって伝達軸体が降下し、伝達軸体の降下の際にキーが案内溝に沿って移動し、キーの移動に伴ってアームが回動することにより、拡径翼を開閉することができる。すなわち、油圧機構を不要としながら、機械式拡径バケットを底部地盤の上に着底させて、拡底部用杭孔を効率的に造成することが可能になる。
ここで、「ケリーバが直接的もしくは間接的に取り付けられる」とは、ケリーバが伝達軸体に直接取り付けられる形態と、ケリーバが減速機等を介して間接的に取り付けられる形態を含む意味である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の機械式拡径バケットによれば、軸部用杭孔の底部地盤の上に着底させることにより拡底部用杭孔を効率的に造成することを可能にし、さらに、底部地盤の上に着底させることなく中間拡径部用杭孔を効率的に造成することを可能にした、機械式拡径バケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】中間拡径部用杭孔掘削機の一例の側面図である。
図2】第1実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図4】ピストンロッドと筒状軸体に取り付けられているアームのキーが、ガイド筒の二つの案内溝に跨がるように配設されている状態を示す縦断面図である。
図5】筒状軸体の備える複数の貫通孔が、ガイド筒の案内溝に臨んでいる状態を示す斜視図である。
図6】筒状本体の天井に取り付けられている天井ブラケットを斜め上方から見た斜視図である。
図7】第一連結軸体と第二連結軸体の接続箇所を示す斜視図である。
図8A】拡径翼が閉姿勢の際の拡径バケットの一例の外観図である。
図8B図8Aの際の、ピストンロッドの状態と、案内溝に対するキーの位置を説明する模式図である。
図9A】拡径翼が途中まで開いている際の拡径バケットの一例の外観図である。
図9B図9Aの際の、ピストンロッドの状態と、案内溝に対するキーの位置を説明する模式図である。
図10A】拡径翼が開姿勢の際の拡径バケットの一例の外観図である。
図10B図10Aの際の、ピストンロッドの状態と、案内溝に対するキーの位置を説明する模式図である。
図11】第2実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図12】第3実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図13】(a)から(g)にかけて順に、拡径杭用杭孔の造成方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態に係る機械式拡径バケットと、機械式拡径バケットを有する拡径バケット、この拡径バケットを有する中間拡径部用杭孔掘削機、さらには、拡径杭用杭孔の造成方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[中間拡径部用杭孔掘削機]
はじめに、図1を参照して、実施形態に係る機械式拡径バケットを備えている、中間拡径部用杭孔掘削機の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る中間拡径部用杭孔掘削機の一例の側面図である。
【0024】
拡径部用杭孔掘削機100は、アースドリル掘削機を形成するベースマシン110と、ブーム111と、支持ビーム112と、支持ビーム112にて支持されている回転駆動部113と、回転駆動部113により回転駆動されるケリーバ120と、ケリーバ120の先端に取り付けられている拡径バケット80とを有する。拡径部用杭孔掘削機100は、、以下で詳説する拡径杭用杭孔の造成方法において、中間拡径部用杭孔を造成する際に適用される中間拡径部用杭孔掘削機である。また、拡径バケット80は、以下で詳説する第1実施形態に係る機械式拡径バケット60を構成要素として含んでいる。
【0025】
ベースマシン110は、斜め上方に延設するブーム111の下端を回動自在に支持し、ブーム111の先端から下方に延設するワイヤ116によりケリーバ120が垂下されている。ここで、ワイヤ116は、鋼線やステンレス線等の金属製のワイヤの他、比較的硬質な樹脂製のワイヤ、セラミックス繊維や糸を撚った紐状のワイヤ等、様々な素材から形成できる。また、ワイヤ116に目盛りが設けられていてもよい。ケリーバ120は、ベースマシン110側に設けられているドラム(図示せず)によってワイヤ116が巻き取られ、もしくは巻き戻されることにより上下方向に移動自在となっている。
【0026】
回転駆動部113の下側近傍には、油圧ホースや電気制御ケーブル(いずれも図示せず)などを巻き取るための複数のリール114が搭載されたターンテーブル115が設けられている。このターンテーブル115は、ケリーバ120と同期して回転するものであり、従って、回転するケリーバ120に対する油圧ホースや電気制御ケーブルの巻き付きが抑止される。
【0027】
ターンテーブル115には、さらに拡径量管理装置130が載置されており、拡径量管理装置130から下方にワイヤ131が延設し、その一端が、以下で詳説する拡径バケット80を構成する筒状軸体40の備える張り出しフランジ41に取り付けられている。このように、拡径量管理装置130もターンテーブル115に載置されていることにより、回転するケリーバ120に対するワイヤ131の巻き付きが抑止される。
【0028】
拡径バケット80を構成する油圧機構70のピストンロッド72と筒状軸体40が降下することにより、ピストンロッド72と筒状軸体40と間接的に繋がっている拡径翼20は徐々に開いていくことになる(図8A乃至図10A参照)。この際、ピストンロッド72等の降下に応じてワイヤ131が拡径量管理装置130から徐々に送り出され、拡径量管理装置130では、この送り出し量を計測する。そして、このワイヤ131の送り出し量に関する計測データは、インターネットやLAN(Local Area Network)等に代表されるネットワーク150を介して、例えばベースマシン110の操縦席に載置されている携帯端末140に送信される。携帯端末140では、その内部において、ワイヤ131の送り出し量と拡径翼20の拡径量との関連データが格納されており、この関連データと受信した計測データがともに携帯端末140の画面上に表示されるようになっている。
【0029】
ベースマシン110の操縦者は、携帯端末140に送信されてくる拡径量に関する計測データを、操縦席にて確認しながら、拡径翼20の拡径と回転による拡径掘削を行うことができる。ここで、携帯端末140は、スマートフォンやタブレット、パーソナルコンピュータにより形成される。尚、携帯端末140は、施工現場や管理棟に居る施工管理者が携帯していてもよく、ベースマシン110の操縦者と施工管理者の双方が携帯していてもよい。ベースマシン110の操縦者もしくは施工管理者は、表示された双方のデータを参照することにより、拡径翼20の拡径量を随時管理することができる。
【0030】
[第1実施形態に係る機械式拡径バケットと、拡径バケット]
次に、図2乃至図10を参照して、第1実施形態に係る機械式拡径バケットの一例と、この機械式拡径バケットを備えた拡径バケットの一例について説明する。ここで、図2及び図3はそれぞれ、第1実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態と開姿勢の状態を示す図である。また、図4は、ピストンロッドと筒状軸体に取り付けられているアームのキーが、ガイド筒の二つの案内溝に跨がるように配設されている状態を示す縦断面図であり、図5は、筒状軸体の備える複数の貫通孔が、ガイド筒の案内溝に臨んでいる状態を示す斜視図である。さらに、図6は、筒状本体の天井に取り付けられている天井ブラケットを斜め上方から見た斜視図であり、図7は、第一連結軸体と第二連結軸体の接続箇所を示す斜視図である。尚、図2においては、筒状本体10の側面に張り付いている(閉じている)拡径翼20の図示を省略している。
【0031】
拡径バケット80は、機械式拡径バケット60に対して油圧機構70が着脱可能に取り付けられている、油圧機構を備えた機械式拡径バケットである。
【0032】
機械式拡径バケット60は、筒状本体10と、筒状本体10の天井に取り付けられている天井ブラケット13と、筒状本体10に対して筒状本体10の径方向に拡径するように取り付けられている拡径翼20とを有する。ここで、筒状本体10や天井ブラケット13、拡径翼20の他、以下で詳説するガイド筒30,筒状軸体40等はいずれも、鋼製の部材である。
【0033】
天井ブラケット13の下方には、油圧機構70が取り付けられている。油圧機構70は、シリンダ71と、シリンダ71の内部を摺動するピストンロッド72とを備えており、シリンダ71の上端が天井ブラケット13の下面に固定されている。ここで、ピストンロッド72は、シリンダ71に対して昇降するとともに、その軸芯を中心に回転自在に構成されている。
【0034】
一方、天井ブラケット13の上方には、筒状のケリーバ固定部16が取り付けられており、ケリーバ固定部16にケリーバ120の下端が挿通され、双方の備えるピン孔(ケリーバ固定部16のピン孔16aのみ図示)にピン17が挿通されることにより、ケリーバ120の下端に拡径バケット80が固定される。回転駆動部113によりケリーバ120が回転された際に、拡径バケット80がケリーバ120の回転に同期して回転される。
【0035】
このように、拡径バケット80では、機械式拡径バケット60を構成する筒状本体10の天井にある天井ブラケット13の下方、すなわち、筒状本体10の内部に油圧機構70が取り付けられていることにより、油圧機構70を備えながらも拡径バケット80の全体の高さと重量の双方を抑制することができ、全体としてコンパクトな拡径バケットとなる。
【0036】
筒状本体10は、その側面に二つの大面積の側面開口11を備えており、図2に示すように拡径翼20が閉じた姿勢において(図2では、拡径翼20の図示は省略)、ピストンロッド72と拡径翼20とを繋ぐ連結軸体52(図3参照)が、側面開口11を介して筒状本体10の内部に収容されるようになっている。また、筒状本体10の下端には下端蓋18が丁番(図示せず)を介して取り付けられており、下端蓋18を開放することにより、筒状本体10の内側下方に溜まった掘削土砂を下方へ排出できるようになっている。
【0037】
筒状本体10の内部には、円筒状の側面を備えたガイド筒30が配設されており、複数(図示例は二つ)の固定片12を介して筒状本体10の内壁面に取り付けられている。ガイド筒30の側面の対角位置には、ガイド筒30の軸方向に対して傾斜方向に延びている二つの案内溝31が設けられている。
【0038】
油圧機構70の周囲には、シリンダ71との間に隙間Sを備えた状態で筒状軸体40が配設されている。図4に示すように、筒状軸体40の下方とピストンロッド72の下方にはそれぞれ、キー孔43,73が開設されている。アーム50を構成するキー51は、二つの案内溝31に跨がってその両端が対応する案内溝31を貫通し、ガイド筒30の外側へ張り出している。
【0039】
筒状軸体40の天端には、側方へ張り出す張り出しフランジ41が設けられている。また、図5に示すように、筒状軸体40の側面のうち、ガイド筒30の案内溝31に臨む位置には、複数(図示例は三つ)の貫通孔45が開設されている。
【0040】
図3に示すように、アーム50は、キー51と、二つの連結軸体52とを備えており、連結軸体52は、キー51の二つの端部(ガイド筒30の外側へ張り出している端部)と、二つの拡径翼20とにそれぞれ接続されている。キー51の端部と連結軸体52の一端は、連結軸体52の軸方向に直交する二方向(例えば鉛直方向と水平方向)周りに回転自在なユニバーサルジョイント55を介して接続され、連結軸体52の他端と拡径翼20も、連結軸体52の軸方向に直交する二方向(例えば鉛直方向と水平方向)周りに回転自在なユニバーサルジョイント55を介して接続されている。
【0041】
拡径翼20は、閉姿勢において筒状本体10の周囲に張り付くように、平面視円弧状の線形を有しており(図8A図9A等参照)、図2に示す閉姿勢の状態において、それぞれの拡径翼20の先端は翼ストッパ(図示せず)に係合し、筒状本体10の内側に入り込むまでの拡径翼20の回動が規制されている。
【0042】
一方、図3に示すように、油圧機構70を構成するシリンダ71に対してピストンロッド72がX1方向に降下した際に(ピストンロッド72の降下の際には筒状軸体40も同期して降下する)、ピストンロッド72と筒状軸体40に固定されているキー51は、ガイド筒30の案内溝31に沿って傾斜方向であるX2方向へ案内され、ピストンロッド72と筒状軸体40とキー51は、一体となってピストンロッド72の軸周りにX3方向へ回動する。キー51の回動により、ユニバーサルジョイント55を介して接続されている連結軸体52は、閉姿勢の拡径翼20をX4方向へ展開させ、二つの拡径翼20は開姿勢を形成する。
【0043】
図3に示すように、拡径翼20は、側面視三角形状の上方傾斜部翼21と、側面視矩形状の立ち上がり部翼22と、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼23とが連続した側面視形状を有しており、各翼において拡径翼20が拡径した際に地山側となる縁部にはそれぞれ、複数の切削ビット25,26,27が装着されている。より具体的には、上方傾斜部翼21には、その傾斜辺に直交する方向に延設する切削ビット25が取り付けられている。一方、立ち上がり部翼22と下方傾斜部翼23には、水平方向に延設する切削ビット26,27が取り付けられている。また、切削ビット25,26,27の地山側の先端には、硬質鋼材28が取り付けられている。
【0044】
このように、拡径翼20のうちの少なくとも中央領域にある切削ビット26と下方領域にある切削ビット27が水平方向に延設していることにより、上方で掘削されて下方に落下し、堆積している土砂を含めて、地山をより一層効果的に切削することが可能になる。また、特に拡径翼20の下方にある切削ビットが斜め方向に取り付けられていると、切削ビットの一部の摩耗が激しくなるが、図示例のように下方傾斜部翼23に装着されている切削ビット27が水平方向に延設していることにより、切削ビット27の一部が相対的に激しい摩耗を受ける恐れはなくなる。
【0045】
さらに、切削ビット25,26,27の地山側の先端に硬質鋼材28が取り付けられていることにより、一般に摩耗が激しい切削ビット25,26,27の先端の摩耗を抑制することができる。また、上記するように、下方傾斜部翼23に装着されている切削ビット27が水平方向に延設していることと、切削ビット27の地山側の先端に硬質鋼材28が取り付けられていることが相俟って、拡径翼20の中でも地山の切削が容易でない拡径翼20の下方にある下方傾斜部翼23において、切削ビット27による切削性が格段に向上する。尚、図示例の他に、上方傾斜部翼21に装着される切削ビットも他の切削ビットと同様に水平方向に延設している形態であってもよい。
【0046】
さらに、図3に示すように、拡径翼20には、複数の貫通孔24が設けられている。このように、拡径翼20が複数の貫通孔24を有することにより、拡径翼20の軽量化を図ることができ、このことは拡径バケット80全体の軽量化に繋がる。
【0047】
また、拡径翼20による地山の切削の際に、広幅の拡径翼20には土水圧が作用することになるが、作用する土水圧を複数の貫通孔24によって低減することができ、拡径翼20を回転させるケリーバ120の駆動源である回転駆動部113に作用するトルク負荷を軽減できる。尚、貫通孔24の平面積が広すぎたり数が多すぎると拡径翼20の剛性が低下することから、拡径翼20の剛性と土水圧低減効果の双方を勘案して、貫通孔24の平面積や数を設定するのが好ましい。
【0048】
図6に示すように、天井ブラケット13は、筒状本体10の天井に対して、天井ブラケット13の直径上にある二箇所の固定部14にてボルトナットにより固定されている。
【0049】
天井ブラケット13において、平面視で直径位置にある二箇所の固定部14の間には、二つの円弧溝15が設けられている。この円弧溝15は、中心角120度以上の弧長tを有しており、拡径量管理装置130から下方に延設するワイヤ131がいずれか一方の円弧溝15に挿通され、筒状軸体40の天端にある張り出しフランジ41に固定されている。
【0050】
このように、拡径部用杭孔掘削機100の備える拡径量管理装置130から延びる拡径量計測用のワイヤ131が、天井ブラケット13の二つの円弧溝15のいずれか一方に対して上方から挿通されて筒状軸体40の張り出しフランジ41に固定されていることにより、筒状軸体40がピストンロッド72と同期して回動した際に、ワイヤ131はこの回動に応じて円弧溝15の内部をスライドすることができる。このことにより、ワイヤ131が他の構成部材に干渉することが抑止される。
【0051】
また、図7に示すように、連結軸体52は、連結軸体52の軸方向に直交する二方向周りに回転自在なユニバーサルジョイント55を介してキー51の端部に取り付けられている第一連結軸体53と、連結軸体52の軸方向に直交する二方向周りに回転自在なユニバーサルジョイント55(図7においては視認できず)を介して拡径翼20に取り付けられている第二連結軸体54とを備えている。第一連結軸体53の端部にはネジ孔53aが設けられており、第二連結軸体54の端部には端部ネジ54aが設けられており、ネジ孔53aに対して端部ネジ54aが螺合することにより、第一連結軸体53と第二連結軸体54が軸周りであるY2方向に回転自在に接続されている。
【0052】
このように、第一連結軸体53と第二連結軸体54が相互に回転自在に接続されていることにより、拡径翼20の開閉の際に連結軸体52に作用し得るねじり力を、第一連結軸体53と第二連結軸体54の相対回転によって吸収することができる。
【0053】
図2図3に戻り、油圧機構70を構成するシリンダ71の周囲には、側方へ張り出す複数(図示例は四つ)の円盤状の弾性カバー76と、複数(図示例は二つ)の側面視台形状のスペーサ75が取り付けられている。弾性カバー76は、例えばゴムにより形成され、スペーサ75は鋼製部材である。また、二つのスペーサ75は、平面視円環状のシリンダ71の対角位置(180度離れた位置)に取り付けられている。ここで、スペーサ75の側面視形状は、半円形、半楕円形等であってもよい。
【0054】
図2に示すように、シリンダ71にピストンロッド72が完全に収容されている、拡径翼20が閉姿勢の際には、全ての弾性カバー76とスペーサ75が、シリンダ71と筒状軸体40の間の隙間Sに完全に収容される。より詳細には、弾性カバー76は筒状軸体40の内壁面に摺接し、スペーサ75は筒状軸体40の内壁面を若干の隙間を持って遊嵌される。
【0055】
一方、図3に示すように、シリンダ71からピストンロッド72が完全に張り出している、拡径翼20が開姿勢の際には、全ての弾性カバー76とスペーサ75が、シリンダ71とピストンロッド72の間の隙間Sから外部に露出される。
【0056】
ピストンロッド72の周囲に筒状軸体40が設けられ、双方が同期して昇降及び回動することにより、ピストンロッド72をその周囲にある土砂から防護することができる。また、ガイド筒30の内部を筒状軸体40が昇降及び回動することにより、ガイド筒30に沿ったピストンロッド72の安定的な昇降及び回動を実現できる。このように、油圧機構70の周囲に筒状軸体40を備える構成により、様々な効果が奏されるが、油圧機構70と筒状軸体40の間に隙間Sがないと、様々な課題が懸念される。
【0057】
例えば、油圧機構70と筒状軸体40の組み付け時に、双方の製作誤差を吸収できないといった課題が生じ得る。また、二つの拡径翼20のうちの一方の拡径翼20が土砂に噛んで筒状本体10が偏心した際に、シリンダ71やピストンロッド72と筒状軸体40が相互に強く干渉し、シリンダ71等が破損するといった課題が生じ得る。また、シリンダ71と筒状軸体40との間に微細な土砂が入り込んで噛んだり堆積することにより、摩擦抵抗が増大してシリンダ71に対するピストンロッド72及び筒状軸体40の昇降が阻害され、拡径翼20の開閉の阻害に繋がる恐れがある。
【0058】
そこで、拡径バケット80においては、シリンダ71と筒状軸体40との間に平面視円環状の隙間Sを設けておくことにより、油圧機構70の周囲に筒状軸体40を備えることによる上記様々な効果を享受しながら、この構成によって懸念される上記様々な課題を解消することを可能にしている。
【0059】
また、シリンダ71の周囲に側方へ張り出す円盤状の弾性カバーが設けられ、シリンダ71が筒状軸体40の内部にある際に弾性カバー76が隙間Sに収容されて筒状軸体40の内壁面に摺接することにより、隙間Sに入り込んでいる土砂を下方に落とし込むことができ、筒状軸体40の内壁面に付着している土砂を掻き落とすことができる。弾性カバー76にて下方へ落とし込まれたり掻き落とされた土砂は、筒状軸体40の備える貫通孔45を介して外部に排出することができる。また、シリンダ71の内部に弾性カバー76が収容されている場合は、シリンダ71と筒状軸体40の間の隙間Sを介して土砂が内部に入り込むことを防止できる。
【0060】
一方、シリンダ71の周囲に側方へ張り出す二つのスペーサ75が設けられ、シリンダ71が筒状軸体40の内部にある際にスペーサ75が隙間Sに収容されることにより、筒状軸体40とシリンダ71との間の平面視円環状の隙間Sを、二つのスペーサ75により精度よく確保することができる。この観点から、平面視円形のシリンダ71の周囲には、図示例のように180度間隔に配設される二つのスペーサ75や、120度間隔に配設される三つのスペーサ75等、複数のスペーサ75が設けられているのが好ましい。また、シリンダ71が筒状軸体40から上方へ突出した図3の状態において、突出するシリンダ71には、複数のスペーサ75によって剛性が付与され、シリンダ71のぐらつき等が抑制される。
【0061】
このように、シリンダ71とピストンロッド72との間に隙間Sを設けることにより、上記する様々な効果が奏されるものの、その一方で、土砂が隙間Sに入り込むことになる。しかしながら、シリンダ71の周囲の弾性カバー76によって隙間Sに入り込んだ土砂を下方へ落とし込み、あるいは筒状軸体40の内壁面に付着した土砂を掻き落とし、降下した土砂を筒状軸体40の貫通孔45を介して外部に排出することができる。
【0062】
尚、ガイド筒30の備える案内溝31を介し、筒状軸体40の備える複数の貫通孔45を介してその内部にあるピストンロッド72を外部から確認できることから、この貫通孔45は、ピストンロッド72の損傷の有無やメンテナンスの要否等を確認するための点検口としても機能する。
【0063】
また、図5に示すように、ガイド筒30の外周には、上下方向であるY1方向にスライド自在な拡径量設定用係止材35が取り付けられており、拡径翼20を開くべく、ピストンロッド72とともに筒状軸体40が降下した際に、拡径翼20の拡径量に応じた位置に位置決めされている拡径量設定用係止材35の天端に対して、張り出しフランジ41が係止されるようになっている。
【0064】
ガイド筒30の外周に拡径量設定用係止材35が上下方向にスライド自在に設けられ、拡径翼20の拡径量に応じた位置に位置決めされている拡径量設定用係止材35の天端に対して、筒状軸体40の天端に設けられている張り出しフランジ41が係止されることにより、所望する拡径量となるように拡径翼20を開くことが可能になる。例えば、ガイド筒30の案内溝31の最下端にアーム50のキー51が到達した際に拡径翼20が最大に開き、最大の拡径量となるが、拡径量をある程度抑制したい場合には、拡径量設定用係止材35の天端を上方に上げる等の調整を行うことにより、キー51の降下を最下端よりも上方に高止まりさせることができ、拡径翼20の開きを抑制することができる。
【0065】
例えば、二つの拡径翼20が最大に開いた際に造成される中間拡径部用杭孔の杭孔径がφ3.2mの場合に、拡径量設定用係止材35を上方に段階的に上げて位置決めすることにより、杭孔径がφ3.0m、φ2.8m等の相対的に小径の中間拡径部用杭孔を造成することが可能になる。
【0066】
次に、図8乃至図10を参照して、拡径翼20の閉姿勢から開姿勢までの拡径バケットの外観と、ピストンロッドの動作について説明する。ここで、図8A図9A,及び図10Aはそれぞれ、拡径翼が閉姿勢の際、拡径翼が途中まで開いている際、及び、拡径翼が開姿勢の際の、それぞれの拡径バケットの一例の外観図である。また、図8B図9B,及び図10Bはそれぞれ、図8Aの際、図9Aの際、及び図10Aの際の、ピストンロッドの状態と、案内溝に対するキーの位置を説明する模式図である。
【0067】
図8Aに示すように、拡径翼20が閉姿勢の際には、ピストンロッド72と各拡径翼20を繋ぐ連結軸体52が側面開口11を介して筒状本体10の内部に収容され、平面視円弧状の二つの拡径翼20は筒状本体10の周囲に張り付いている。この際、図8Bに示すように、ピストンロッド72はシリンダ71に完全に収容されており、ピストンロッド72の下端に取り付けられているキー51は、ガイド筒30の案内溝31の上端位置にある。
【0068】
拡径杭用杭孔の造成方法においては、先行して造成されている軸部用杭孔に対して、図8Aに示す閉姿勢の拡径バケット80がケリーバ120を介して所定深度に吊り下ろされることになる。
【0069】
軸部用杭孔の所定深度に吊り下ろされた(地盤上に着底されず、ケリーバ120にて吊持されている)拡径バケット80は、図9Aに示すように二つの拡径翼20を徐々に開いていく。この拡径翼20の展開は、図9Bに示す作用により実行される。すなわち、天井ブラケット13の下面に固定されているシリンダ71に対してピストンロッド72をX1方向に降下させることにより、ガイド筒30の備える二つの案内溝31に沿ってキー51がX2方向に案内される。この過程で、ピストンロッド72は軸周りにX3方向へ回転し、ピストンロッド72の回転に同期してキー51が回転することにより、筒状本体10の内部に収容されていた連結軸体52が拡径翼20を径方向外側へX4方向に押し出すことにより、二つの拡径翼20が徐々に展開される。
【0070】
設計上の最大径の中間拡径部用杭孔を造成する場合は、図10A及び図10Bに示すように、案内溝31の最下端までキー51を降下させることにより、二つの拡径翼20を最大に展開させる。一方、最大径よりも小径の中間拡径部用杭孔を造成する場合は、造成対象の中間拡径部用杭孔の杭孔径に対応する位置に拡径量設定用係止材35を位置決めし、ピストンロッド72と筒状軸体40の降下の過程で、拡径量設定用係止材35の天端に張り出しフランジ41を係止させる。このことにより、キー51を案内溝31の最下端から上方に高止まりさせ、二つの拡径翼20を杭孔径に応じた展開姿勢とする。
【0071】
二つの拡径翼20が所望に展開された後、回転駆動部113を作動してケリーバ120を回転させ、拡径バケット80を回転させることにより、中間拡径部用杭孔が造成される。
【0072】
[第2実施形態に係る機械式拡径バケット]
次に、図11を参照して、第2実施形態に係る機械式拡径バケットの一例について説明する。ここで、図11は、第2実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
【0073】
拡径バケット80Aは、内管85、油圧機構70、外管87、荷重伝達体88と、油圧機構70等に着脱自在に取り付けられている機械式拡径バケット60Aとを有する。荷重伝達体88の内部に、外管87と内管85が内包され、内管85の内部に油圧機構70が内包されている。
【0074】
内管85は上蓋と筒状側面とを備え、ケリーバ120の下端が上蓋の上面に固定され、油圧機構70を構成するシリンダ71の上端が上蓋の下面に固定されている。外管87は、下蓋と筒状側面とを備え、内管85の下方の外周に配設され、下蓋の上面に対してピストンロッド72が固定されている。
【0075】
機械式拡径バケット60Aは、筒状軸体10と、筒状軸体10の内部に配設されているガイド筒30と、ガイド筒30の内部を昇降する伝達軸体47とを有する。伝達軸体47の上端は外管87の下蓋に固定されており、伝達軸体47の下端には、アーム50を構成するキー51が取り付けられている。ガイド筒30の側面に二つの案内溝31が設けられている構成、二つの案内溝31にキー51が跨がっている構成、連結軸体52を含むアーム50の構成は、機械式拡径バケット60と同様である。
【0076】
荷重伝達体88を構成する上蓋に開設されている開口を介してケリーバ120が挿通され、ケリーバ120の下端が内管85の上蓋に固定されている。内管85の外周には係合突起86が設けられ、外管87の内側には被係合突起(図示せず)が設けられている。外管87は、内管85に対して、内管85の軸心方向に沿って昇降自在であり、かつ、ケリーバ120の回転に応じて内管85が回転した際には、係合突起86がその左右にあるいずれかの被係合突起に係合自在となる。従って、ケリーバ120が回転した際の回転トルクにより、内管85が回転し、係合突起86と被係合突起が係合することにより外管87が内管85と係合して回転する。さらに、外管87が回転することにより、外管87に固定されている伝達軸体47が回転し、伝達軸体47を構成要素とする機械式拡径バケット60Aの全体が回転する。このように、ケリーバ120の回転トルクは、内管85を介し、外管87を介して機械式拡径バケット60Aに伝達される。
【0077】
油圧機構70を作動させることにより、拡径翼20の開姿勢を形成することができるが、機械式拡径バケット60Aの重量は、荷重伝達体88にて支持され、荷重伝達体88が載置される内管85を介して、内管85に固定されるケリーバ120に伝達される。そのため、拡径翼20の開閉に際して下方地盤からの反力がない状態においても、油圧機構70を作動させた際の反力をケリーバ120に伝達させることにより、拡径翼20の開閉を実現することができる。
【0078】
また、油圧機構70を作動させた際の反力の一部は、シリンダ71が固定されている内管85を介し、内管85の上方に載置されている荷重伝達体88を介して機械式拡径バケット60Aに伝達される。そのため、油圧機構70を作動させた際の過度な反力がケリーバ120に伝達されることが抑制され、ケリーバ120の破損や機械式拡径バケット60Aの深度のずれ等を抑止することができる。
【0079】
[第3実施形態に係る機械式拡径バケット]
次に、図12を参照して、第3実施形態に係る機械式拡径バケットの一例について説明する。ここで、図12は、第3実施形態に係る機械式拡径バケットを備えた、拡径バケットの一例の縦断面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
【0080】
機械式拡径バケット60Bは、拡径バケット80、80Aと異なって油圧機構を備えておらず、ケリーバ120の下端が機械式拡径バケット60Bのケリーバ固定部48に固定されている。
【0081】
拡径バケット80と異なり、筒状本体10の天井には天井ブラケットが設けられておらず、ケリーバ120が筒状本体10の天井開口を介して内部に挿通されるようになっている。筒状本体10の内部には、二つの案内溝31を備えているガイド筒30が固定片12を介して配設されている。ガイド筒30の内部には、アーム50を構成するキー51が取り付けられている伝達軸体47が昇降自在に配設されており、伝達軸体47の天端にケリーバ固定部48が取り付けられている。
【0082】
機械式拡径バケット60Bは、地盤上に着底された状態でケリーバ120が降下されることにより、伝達軸体47がX1方向に降下し、伝達軸体47の降下の際に伝達軸体47の下端に取り付けられているキー51がガイド筒30の案内溝31に沿って傾斜方向であるX2方向に案内される。キー51が案内溝31に沿って案内される過程で連結軸体52が拡径翼20Aを展開させ、拡径翼20Aの開姿勢を形成する。このように、油圧機構を備えていない機械式拡径バケット60Bでは、底部からの地盤反力のある状態で拡径翼20Aの開姿勢が形成される。
【0083】
拡底杭用の杭孔を造成することから、機械式拡径バケット60Bを構成する拡径翼20Aは、拡径翼20のように下方傾斜部翼23を具備せず、上方傾斜部翼21と立ち上がり部翼22が連続した側面視形状を有している。
【0084】
[拡径杭用杭孔の造成方法]
次に、図1図13を主として参照しながら、拡径杭用杭孔の造成方法の一例について説明する。ここで、図13は、図13(a)から図13(g)にかけて順に、拡径杭用杭孔の造成方法の一例を示す工程図である。以下、機械式拡径バケット60を有する拡径バケット80を備えた中間拡径部用杭孔掘削機100を適用して中間拡径部用杭孔を造成し、機械式拡径バケット60Bを備えた拡底部用杭孔掘削機を適用して拡底部用杭孔を造成する方法を説明する。ここでは、拡径杭を構成する軸部のための軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2と、軸部用杭孔P1の底部にある拡底部のための拡底部用杭孔P3と、を有する拡径杭用杭孔Pの造成方法について説明する。
【0085】
図13(a)に示すように、施工対象の地盤Gに対し、所定深度まで軸部用杭孔P1を造成する。ここで、軸部用杭孔P1の施工に際しては、図1に示すベースマシン110により垂下されるケリーバ120の先端に対して、油圧機構を備えた機械式拡径バケットに代えてドリリングバケット95(掘削バケットの一例)を装着した軸部用杭孔掘削機を適用する。表層数mの深度uまでは、相対的に大径の掘削孔を造成し、短尺のケーシングCAを建て込むとともに、安定液SLを孔内に注入することにより、孔壁の安定を図る。
【0086】
表層の孔口近傍の孔壁の安定を図った後、ケリーバ120の回転によりドリリングバケット95を回転させながら地盤Gを軸方向に掘削し、ドリリングバケット95の内部に掘削土砂を収容しながら所定深度まで軸部用杭孔P1を造成する。ここで所定深度は、設計深度より0.5m以上上方に設定する。ドリリングバケット95は随時地上に引き上げ、収容されている掘削土砂の搬出を行う。尚、軸部用杭孔P1の径D1は、例えば800mm乃至4000mmの範囲に設定できる(以上、A工程)。
【0087】
次に、図13(b)に示すように、ベースマシン110により垂下されるケリーバ120の先端に対して、ドリリングバケット95に代えて拡径バケット80を装着することにより、中間拡径部用杭孔掘削機100を形成し、ケリーバ120を介して拡径バケット80を所定深度に位置決めする。
【0088】
そして、図13(c)に示すように、図3及び図4等を参照して既に説明したように、油圧機構70を作動させて拡径翼20の開姿勢を形成し、ケリーバ120の回転トルクにより拡径翼20を回転させながら地盤の掘削を行う。この掘削では、下端蓋18を開放することにより、拡径バケット80よりも下方にある軸部用杭孔P1の下方に掘削土砂を落下させ、掘削土砂の残土ZDとして堆積させる。この際、先端に重錘を取り付けた検尺テープを、拡径バケット80を構成する筒状本体10の内部を通して、掘削土砂の残土ZDの上面に降ろし、当該上面の深度が拡径バケット80の下方にあることを適宜確認することができる。このことにより、筒状本体10の内部に残土ZDが入り込んで拡径掘削動作が阻害されることを防止できる。
【0089】
拡径バケット80による掘削後、図13(d)に示すように、拡径翼20を閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の途中深度において、中間拡径部用杭孔P2が造成される。
【0090】
ここで、図3を参照して既に説明したように、拡径翼20は、側面視三角形状の上方傾斜部翼21と、側面視矩形状の立ち上がり部翼22と、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼23とが連続した側面視形状を有し、この側面視形状の拡径翼20が回転することにより、中間拡径部用杭孔P2が造成される。そのため、造成される中間拡径部用杭孔P2の側面視形状は、上方に台形状、中央に矩形状、下方に逆台形状を有する形状となる。この側面視形状において、上方の傾斜角度θ2は、例えば3度乃至30度に設定され、下方の傾斜角度θ3は、例えば5度乃至45度に設定される。さらに、中央の最大径D2は、例えば1000mm乃至5500mmに設定される(以上、B工程)。
【0091】
次に、同図13(d)に示すように、ケリーバ120の先端に対して、拡径バケット80に代えてドリリングバケット95を装着し、B工程の際に軸部用杭孔P1の下方に堆積した掘削土砂の残土ZDをドリリングバケット95にて回収し、孔外へ排出する(以上、C工程)。
【0092】
この際、軸部用杭孔P1の下端深さが設計深度より上方に設定してあるので、杭先端部の支持地盤が長時間の応力解放を受けて緩んだり、掘削土砂の残土ZDの回収中に乱される恐れがない。さらに、ドリリングバケット95を回転させ、拡径杭用杭孔Pが造成されるべき設計深度までドリリングバケット95による掘削を行い、設計深度まで延びる軸部用杭孔P1を造成する。そして、ドリリングバケット95により、掘削土砂を回収し、軸部用杭孔P1の底ざらいを行う。ここで、掘削土砂の残土ZDの体積に比べて、軸部用杭孔P1の体積が少ないときには、B工程とC工程を繰り返し行ってもよい。
【0093】
このC工程では、その前工程であるB工程において、拡径バケット80を有する中間拡径部用杭孔掘削機100にて中間拡径部用杭孔P2を造成し、軸部用杭孔P1の下方に堆積した掘削土砂の残土ZDを、油圧機構や拡翼機構を有さず土砂収容量が大きなドリリングバケット95にて回収することにより、効率的な施工が実現される。
【0094】
仮に、中間拡径部用杭孔掘削機100を使用せずに中間拡径部用杭孔P2を造成する場合は、軸部用杭孔P1の造成を中間拡径部用杭孔P2の造成位置で止め、油圧機構を備えていない機械式拡径バケット60Bを有する掘削機を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケットを着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケットの有する拡径翼にて拡径掘削を行うことにより、中間拡径部用杭孔P2を造成する。その際、機械式拡径バケットの土砂収容量は、ドリリングバケット95に比べて少ないため、機械式拡径バケットによる掘削と、掘削地盤の排土を拡径翼が完全に開くまで繰り返し行うこととなり、中間拡径部用杭孔P2の造成に際して手間と時間を要することになる。
【0095】
次に、図13(e)に示すように、ケリーバ120の先端に対して、ドリリングバケット95に代えて機械式拡径バケット60Bを装着することにより、拡底部用杭孔掘削機(全体の図示略)を形成し、ケリーバ120を介して機械式拡径バケット60Bを所定深度に位置決めする。
【0096】
次に、図13(f)に示すように、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット60Bを着底させ、底部地盤に反力Qを取って機械式拡径バケット60Bの有する拡径翼20Aを開姿勢とした後、ケリーバ120を介して機械式拡径バケット60Bを回転させ、地盤を掘削する。機械式拡径バケット60Bによる掘削後、図13(g)に示すように、拡径翼20Aを閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の底部において拡底部用杭孔P3が造成され(以上、D工程)、D工程を経て、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3とを有する拡径杭用杭孔Pが造成される。
【0097】
拡径杭用杭孔Pが造成された後、孔壁内の寸法測定を行って出来形を確認した後、軸部用杭孔P1に鉄筋籠を建て込み、トレミー管を介してコンクリートを打設し、孔口のケーシングCAを撤去することにより、軸部と、該軸部の途中位置にある中間拡径部と、該軸部の底部にある拡底部と、を有する拡径杭(図示せず)が施工される。
【0098】
図示する拡径杭用杭孔の造成方法によれば、中間拡径部用杭孔掘削機100を用いて中間拡径部用杭孔P2を造成することにより、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3とを有する拡径杭用杭孔Pを効率的に造成することができる。また、軸部用杭孔P1を拡底部まで造成した後に中間拡径部用杭孔P2の肌落ちが生じた場合にも、中間拡径部用杭孔P2を上下方向または径方向に拡大掘削することにより、中間拡径部用杭孔P2の形状を修正することも可能となる。
【0099】
仮に、中間拡径部用杭孔掘削機100を用いずに中間拡径部用杭孔P2を造成する場合は、上記するように、軸部用杭孔P1の造成を中間拡径部用杭孔P2の造成位置で止め、図12に示す機械式拡径バケット60Bを有する掘削機等を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット60Bを着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケット60Bの有する拡径翼20Aにて拡径掘削を行うことにより、中間拡径部用杭孔P2を造成する。この際、拡径翼20Aを徐々に開きながら地盤の掘削を行うことから、機械式拡径バケット60Bによる掘削と、掘削地盤の排土を拡径翼20Aが完全に開くまで繰り返し行うこととなり、中間拡径部用杭孔P2の造成に手間と時間を要する。次いで、拡径杭用杭孔Pの設計深度まで軸部用杭孔P1を造成した後、再度、機械式拡径バケット60Bを有する掘削機を用いて、軸部用杭孔P1の底部地盤の上に機械式拡径バケット60Bを着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケット60Bの有する拡径翼20Aにて拡径掘削を行うことにより、拡底部用杭孔P3の造成を行う。従って、図示例の造成方法のように効率的に拡径杭用杭孔の造成を行うことは難しい。
【0100】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0101】
例えば、図示する造成方法により造成される拡径杭用杭孔Pは、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2と、軸部用杭孔P1の底部にある拡底部のための拡底部用杭孔P3とを有する杭孔であるが、それ以外の形態の杭孔であってもよい。例えば、軸部用杭孔P1の途中位置に複数の中間拡径部用杭孔P2を有する形態であってもよい。また、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つもしくは複数の中間拡径部用杭孔P2とを有する形態(拡底部用杭孔P3を具備しない形態)の杭孔であってもよい。あるいは、B工程に先立って拡底部用杭孔P3の一部を造成し、B工程における掘削土砂を堆積させるスペースを増大させてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10:筒状本体
11:側面開口
12:固定片
13:天井ブラケット
14:固定部
15:円弧溝
16:ケリーバ固定部
16a:ピン孔
17:ピン
18:下端蓋
20:拡径翼
21:上方傾斜部翼
22:立ち上がり部翼
23:下方傾斜部翼
24:貫通孔
25,26,27:切削ビット
28:硬質鋼材
30:ガイド筒
31:案内溝
35:拡径量設定用係止材
35a:天端
40:筒状軸体
41:張り出しフランジ
42:内壁面
43:キー孔
45:貫通孔
47:伝達軸体
48:ケリーバ固定部
50:アーム
51:キー
52:連結軸体
53:第一連結軸体
53a:ネジ孔
54:第二連結軸体
54a:端部ネジ
55:ユニバーサルジョイント
60,60A,60B:機械式拡径バケット
61:筒状軸体
70:油圧機構
71:シリンダ
72:ピストンロッド
75:スペーサ
76:弾性カバー
73:キー孔
80,80A:拡径バケット(油圧機構を備えた機械式拡径バケット)
85:内管
87:外管
88:荷重伝達体
95:ドリリングバケット(掘削バケット)
100:拡径部用杭孔掘削機(中間拡径部用杭孔掘削機)
110:ベースマシン
111:ブーム
112:支持ビーム
113:回転駆動部
114:リール
115:ターンテーブル
120:ケリーバ
130:拡径量管理装置
131:ワイヤ
140:携帯端末
150:ネットワーク
S:隙間
G:地盤
P:拡径杭用杭孔
P1:軸部用杭孔
P2:中間拡径部用杭孔
P3:拡底部用杭孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13