(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ブリバラセタム医薬組成物、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4015 20060101AFI20240122BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240122BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240122BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240122BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240122BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240122BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240122BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240122BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240122BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240122BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240122BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240122BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61K9/22
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/44
A61P11/00
A61P11/06
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/18
A61P29/02
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2021568880
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2021104586
(87)【国際公開番号】W WO2022007758
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】202010655757.X
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521504050
【氏名又は名称】上海博志研新薬物研究有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】郭▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】陳麗娜
(72)【発明者】
【氏名】温益峰
(72)【発明者】
【氏名】王▲テイ▼▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106692095(CN,A)
【文献】特表2011-521927(JP,A)
【文献】国際公開第2017/117569(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/089372(WO,A1)
【文献】特表2013-525417(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106667952(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4015
A61K 9/22
A61K 47/02
A61K 47/06
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/20
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/44
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 25/08
A61P 25/16
A61P 25/18
A61P 29/02
A61P 37/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬活性成分、基質形成剤及び膨潤剤を含む医薬組成物であって、
前記医薬活性成分は、ブリバラセタム、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
前記医薬活性成分の重量百分率は9.09%~11.10%であり、前記重量百分率は前記医薬組成物の全重量に対する医薬活性成分の重量の百分率であり、
前記基質形成剤は、KSRおよびカルボマーであり、
前記基質形成剤の重量百分率は30.00%~50.00%であり、前記重量百分率は前記医薬組成物の全重量に対する基質形成剤の重量の百分率であり、
前記膨潤剤は、架橋ポリビニルピロリドン、およびポリエチレンオキシドのうちの1種、又は2種から選ばれ、
前記膨潤剤の重量百分率は20.00%~50.00%であり、前記重量百分率は前記医薬組成物の全重量に対する膨潤剤の重量の百分率であり、
微結晶性セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
潤滑剤をさらに含み、
前記潤滑剤は、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸エステル、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール及び塩化ナトリウムのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤はステアリン酸金属塩から選ばれ、前記ステアリン酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤はステアリン酸エステルから選ばれ、前記ステアリン酸エステルは、ポリオキシエチレンステアレート、モノステアリン酸グリセリド及びパームステアリン酸グリセリドのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記潤滑剤の重量百分率は0.50%~2.00%であり、前記重量百分率は、前記医薬組成物の全重量に対する潤滑剤の重量の百分率であることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬活性成分、基質形成剤、膨潤剤及び潤滑剤から構成され、
前記医薬活性成分は、ブリバラセタムであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
以下の配合法の何れか1つから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物:
配合法1:ブリバラセタム9.1%、KSR 40.0%、架橋ポリビニルピロリドン20.0%、ポリエチレンオキシド20.8%、カルボマー9.1%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法2:ブリバラセタム11.1%、KSR 40.0%、架橋ポリビニルピロリドン20.0%、ポリエチレンオキシド17.9%、カルボマー10.0
%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の医薬組成物を含むコアと、コーティングとから構成されることを特徴とする徐放錠。
【請求項9】
請求項1から7の何れか1項に記載の医薬組成物、又は請求項8に記載の徐放錠の製造方法であって、前記製造方法は、直接打錠法、乾式造粒法、湿式造粒法又は溶融造粒法である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1から7の何れか1項に記載の医薬組成物、又は請求項8に記載の徐放錠の医薬製造における応用であって、
前記医薬は、てんかん、パーキンソン、ジスキネジア、片頭痛、振戦、本態性振戦、双極性障害、慢性疾患、神経因性疼痛、或いは気管支、喘息又はアレルギーの疾患の治療及び/又は予防に用いられる、
ことを特徴とする応用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、出願人により2020年7月9日に中国国家知識産権局へ提出された出願番号が202010655757.X、発明名称が「ブリバラセタム医薬組成物、その製造方法及び応用」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
[技術分野]
本発明は、医薬組成物分野に属し、ブリバラセタム医薬組成物、その製造方法及び応用に関する。
[背景技術]
ブリバラセタムは、臨床的に4歳以上の発作性てんかん患者の一部への単剤治療となる抗てんかん薬である。
【0002】
ブリバラセタム(brivaracetam;ブリビアクトともいう)は、化学名が(2S)-2-[(4R)-2-オキソ-4-プロピルテトラヒドロ-1H-ピロール-1-イル]ブタンアミド((2S)-2-[(4R)-2-oxo-4-propyltetrahydro-1H-pyrrol-1-yl]butanamide)、分子式がC11H20N2O2、その構造式が次の通りである:
【0003】
【0004】
。
【0005】
ブリバラセタムは、白色又は類白色の結晶性粉末であり、BCSクラスIの薬剤であり、水(0.7 g/mL)、pH 1.2の塩酸溶液(0.85 g/mL)、pH 4.5の緩衝液(0.85 g/mL)及びpH 7.4の緩衝液(0.84 g/mL)に溶解しやすく、最終半減期が短い(9 h)ため、当該薬剤は体内で有効血中薬物濃度の維持時間が短い。現在の市販製剤は、ブリバラセタム錠、ブリバラセタム経口液及びブリバラセタム注射液であり、ブリバラセタム錠は、10 mg、25 mg、50 mg、75 mg及び100 mgに分けられて多くの仕様があり、ブリバラセタム経口液とブリバラセタム注射液の仕様は、いずれも10 mg/mLである。
【0006】
市販のブリバラセタム錠の投与方法は、開始用量50 mg、毎日2回が勧められているが、それぞれの患者の耐性と治療反応によって、用量を25 mg、毎日2回又は100 mg、毎日2回に調整することができる。即ち、この市販錠剤は、急速に放出されるため、臨床使用において体内用量を効果的に制御することができない。また、この投与方法は、薬剤を投与した後の患者の疾患の進行に応じて用量を調整する必要があるため、患者の自己投与に不利である。
【0007】
従来技術により製造されたブリバラセタム錠のほとんどは即放錠であり、UCB社の特許(授権公告番号:CN102046153B)は、薬物の放出速度を制御し、投与時に少なくとも16 hの治療効果を与えることができるブリバラセタム(Brivaracetam)を含む新規の医薬組成物を開示している。しかし、この方法により製造された医薬組成物は放出速度が比較的に速く、かつこの技術による製品の発売がまだ見られていない。
【0008】
従って、薬物放出速度を低減し、薬物の体内での有効用量を制御し、毎日の投与回数を減らすための徐放錠の開発が切望されている。毎日1回の投与は、患者のコンプライアンスを向上させることができると共に、血中の薬物の最大含有量を減らし、薬物の体内での時間を延ばし、薬物の体内での有効用量を制御し、医薬の毒性と副作用を低減することによって、効果的な治療効果を達成することができる。
[発明の概要]
上記の技術問題を改善するために、本発明は、ブリバラセタム医薬組成物を提供し、薬物が24時間徐々に放出され、その溶出は、
A)1時間以内に医薬活性成分の40%以下を溶出し、
B)6時間以内に医薬活性成分の20%~70%を溶出し、
C)24時間以内に医薬活性成分の65%以上を溶出する
という3つの特徴を同時に満たし、
前記医薬活性成分は、ブリバラセタム、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な配合物、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な塩、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な溶媒和物及びブリバラセタムの薬学的に許容可能な水和物のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれてもよい。
【0009】
好ましくは、前記ブリバラセタム医薬組成物の溶出は、
A)1時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の40%以下を溶出し、
B)6時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の20%~70%を溶出し
C)24時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の65%以上を溶出する
という3つの特徴を同時に満たす。
【0010】
好ましくは、前記ブリバラセタム医薬組成物は、薬物が24時間徐々に放出され、その溶出は、
A)1時間以内に前記医薬活性成分の35%以下を溶出し、好ましくは、1時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の35%以下を溶出し、
B)6時間以内に前記医薬活性成分の30%~70%を溶出し、好ましくは、6時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の30%~70%を溶出し、
C)24時間以内に前記医薬活性成分の75%以上を溶出し、好ましくは、24時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の75%以上を溶出する
という3つの特徴を同時に満たす。
【0011】
また好ましくは、前記ブリバラセタム医薬組成物の溶出は、
A)1時間以内に前記医薬活性成分の30%以下を溶出し、好ましくは、1時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の30%以下を溶出し、
B)6時間以内に前記医薬活性成分の30%~65%を溶出し、好ましくは、6時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の30%~65%を溶出し、
C)24時間以内に前記医薬活性成分の75%以上を溶出し、好ましくは、24時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の75%以上を溶出する
という3つの特徴を同時に満たす。
【0012】
さらに好ましくは、前記ブリバラセタム医薬組成物の溶出は、
A)1時間以内に前記医薬活性成分の30%以下を溶出し、好ましくは、1時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の30%以下を溶出し、
B)6時間以内に前記医薬活性成分の30%~65%を溶出し、好ましくは、6時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の30%~65%を溶出し、
C)24時間以内に前記医薬活性成分の80%以上を溶出し、好ましくは、24時間以内に前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の80%以上を溶出する
という3つの特徴を同時に満たす。
【0013】
そのうち、前記「溶出」は、医薬活性成分(例えば、ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩)の累積溶出率であり、さらに、前記累積溶出率は、pH 4.5の酢酸緩衝液において測定される。当業者であれば、前記ブリバラセタム又はその薬学的に許容可能な塩の溶出率は経時的に次第に増加することを理解すべきである。
【0014】
本発明は、ブリバラセタム医薬組成物を提供し、医薬活性成分、基質形成剤及び膨潤剤を含み、
前記医薬活性成分は、ブリバラセタム、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な配合物、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な塩、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な溶媒和物及びブリバラセタムの薬学的に許容可能な水和物のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれ、
前記基質形成剤は、構造の完全性を付与可能で、かつ薬物放出速度の制御又は延長に役立つ物質であり、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボマー、多糖類、ポリアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル・ポビドン混合物(Kollidon(登録商標)SR;以下KSRと略称する)及びポリビニルアルコールのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれ、
前記膨潤剤は、胃液から水分を吸収して固形製剤のサイズを膨張させることができると共に、チャネルを形成したり、親水性コロイドを形成したりすることにより、薬物放出速度に影響を与えることができる物質であり、例えば、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、カルシウム塩及びポラクリンカリウムのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0015】
さらに、前記アルギン酸塩は、アルギン酸と金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン)により形成された塩であってもよく、例えば、アルギン酸ナトリウム及び/又はアルギン酸カリウムであり、
さらに、前記カルシウム塩は、無機酸とカルシウムイオンにより形成された塩、又は有機酸とカルシウムイオンにより形成された塩であってもよく、例えば、塩化カルシウム、リン酸水素カルシウム及びリン酸水素カルシウム二水和物のうちの1種、2種又は3種から選ばれる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記医薬活性成分は、ブリバラセタムが好ましい。例えば、前記医薬活性成分の重量百分率は2.00%~50.00%、さらに好ましくは3.00%~20.00%であり、例えば9.10%、11.10%、9.09%、4.55%又は18.18%であり、前記重量百分率は、ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する医薬活性成分の重量の百分率である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記基質形成剤の重量百分率は5.00%~60.00%、さらに好ましくは30.00%~50.00%であり、例えば49.10%、50.00%、38.00%、36.09%、36.36%、38.91%又は36.54%であり、前記重量百分率は、ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する基質形成剤の重量の百分率である。そのうち、前記KSRは、BASF社製で、商品名がKOLLIDON@SRで、PVAcとPVPの80/19(w/w)混合物を含むものであってもよい。
【0018】
例えば、前記多糖類は、キサンタンガム、イヌリン、グアーゴム、キトサン、イナゴマメガム、カラギーナン及びセルロース誘導体のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0019】
例えば、前記セルロース誘導体は、イオン性セルロースポリマーと非イオン性セルロースポリマーのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0020】
好ましくは、前記イオン性セルロースポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩、カルボキシエチルセルロース(CEC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタル酸エステル、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタル酸エステル(HPCAP)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートコハク酸エステル(HPCAS)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタル酸エステル(HPMCAP)のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0021】
好ましくは、前記非イオン性セルロースポリマーは、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート及びヒドロキシエチルエチルセルロースのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記膨潤剤は、水に可溶又は不溶である。好ましくは、前記膨潤剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース及びポラクリンカリウムのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれてもよい。
【0023】
さらに、前記膨潤剤の重量百分率は5.00%~60.00%、さらに好ましくは20.00%~50.00%であり、例えば40.80%、37.90%、31.00%、35.46%、36.36%、38.17%又は34.55%であり、前記重量百分率は、ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する膨潤剤の重量の百分率である。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、潤滑剤及び/又は希釈剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記潤滑剤は、成分の混合と打錠などの加工プロセスに寄与する物質であり、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸エステル、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、鉱油、ポロキサマー(poloxamer)(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体)、ポリエチレングリコール及び塩化ナトリウムのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれてもよい。さらに、前記ステアリン酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛のうちの1種、2種又は3種から選ばれ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。さらに、前記ステアリン酸エステルは、ポリオキシエチレンステアレート、モノステアリン酸グリセリド及びパームステアリン酸グリセリドなどのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記希釈剤は、成分の混合と打錠期間中に、医薬組成物の流動性を改善し、圧縮強度又は硬度を向上させ、脆弱性などを低減することができる物質である。例えば、前記希釈剤は、デキストロース、乳糖一水和物、無水乳糖、スクロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水物、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。さらに、前記シクロデキストリンはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれ、前記シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリングルコース誘導体、シクロデキストリンヒドロキシプロピル誘導体、シクロデキストリンメチル誘導体、シクロデキストリンエチル誘導体、シクロデキストリンアセチル誘導体、シクロデキストリンスルホブチル誘導体及びイオン性シクロデキストリン誘導体などのうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記潤滑剤の重量百分率は0~3.00%であってもよく、さらに好ましくは0.50%~2.00%であり、例えば1.00%であり、前記重量百分率は、ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する潤滑剤の重量の百分率である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記希釈剤の重量百分率は0~30.00%であってもよく、さらに好ましくは0~20.00%であり、例えば18.90%、18.36%、17.18%、17.36%又は9.73%であり、前記重量百分率は、ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する希釈剤の重量の百分率である。
【0029】
好ましくは、前記ブリバラセタム医薬組成物は、前述したような溶出特性を有する。
【0030】
本発明により提供されるブリバラセタム医薬組成物は、安定した性質を有し、毎日1回の経口投与に適する。固形剤形で投与される場合、当該医薬組成物は、胃内の滞留時間が即放性製剤よりも長い。当該医薬組成物は、胃内に滞留する時、ブリバラセタムを継続的に放出することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、医薬活性成分、基質形成剤及び膨潤剤から構成され、
前記医薬活性成分は、ブリバラセタム、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な配合物、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な塩、ブリバラセタムの薬学的に許容可能な溶媒和物及びブリバラセタムの薬学的に許容可能な水和物のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれ、
前記基質形成剤は、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、KSR、カルボマー及び多糖類のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれ、
前記膨潤剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギン酸塩及びカルシウム塩のうちの1種、2種又はそれ以上から選ばれる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、カルボマー及びステアリン酸マグネシウムから構成されてもよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、カルボマー、乳糖及びステアリン酸マグネシウムから構成されてもよい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファ化デンプン、カルボマー、微結晶性セルロース及びステアリン酸マグネシウムから構成されてもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、アルギン酸ナトリウム、塩化カルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース及びステアリン酸マグネシウムから構成されてもよい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファ化デンプン、カルボマー、微結晶性セルロース及びステアリン酸マグネシウムから構成される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ブリバラセタム医薬組成物は、ブリバラセタム、KSR、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファ化デンプン、カルボマー及びステアリン酸マグネシウムから構成される。
【0038】
本発明の例示的な実施形態によれば、百分率で計算すると、前記ブリバラセタム医薬組成物は、以下の配合法の何れか1つから選ばれる:
配合法1:ブリバラセタム9.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)40.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)20.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)20.8%、カルボマー9.1%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法2:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)40.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)20.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)17.9%、カルボマー10.0%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法3:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)16.0%、カルボマー8.0%、乳糖18.9%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法4:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)16.0%、カルボマー8.0%、乳糖8.9%、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン10.0%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法5:ブリバラセタム9.09%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.46%、ポリエチレンオキシド(PEO)14.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム5.45%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.00%、アルファ化デンプン10.00%、カルボマー2.0%、微結晶性セルロース8.36%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法6:ブリバラセタム9.09%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.46%、アルギン酸ナトリウム10.00%、塩化カルシウム4.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム6.36%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース7.27%、アルファ化デンプン7.27%、微結晶性セルロース9.91%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法7:ブリバラセタム4.55%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)16.36%、ポリエチレンオキシド(PEO)15.46%、カルボキシメチルデンプンナトリウム6.36%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.91%、アルファ化デンプン11.09%、カルボマー3.0%、微結晶性セルロース6.27%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率であり、
配合法8:ブリバラセタム18.18%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)14.55%、ポリエチレンオキシド(PEO)14.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム5.45%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.45%、アルファ化デンプン9.73%、カルボマー2.0%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム医薬組成物の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【0039】
本発明は、上記医薬組成物を含むブリバラセタム徐放錠をさらに提供する。
【0040】
好ましくは、前記ブリバラセタム徐放錠は、上記医薬組成物を含むコアと、コーティングとから構成される。
【0041】
好ましくは、前記コアは、ブリバラセタム2.00%~50.00%、基質形成剤5.00%~60.00%、膨潤剤5.00%~60.00%、潤滑剤0~3.00%及び希釈剤0%~30.00%から構成され、前記百分率は、ブリバラセタム徐放錠の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【0042】
好ましくは、前記コアは、ブリバラセタム5.00%~50.00%、基質形成剤5.00%~60.00%、膨潤剤5.00%~60.00%、潤滑剤0~3.00%及び希釈剤0%~30.00%から構成され、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【0043】
好ましくは、前記コアは、ブリバラセタム3.00%~20.00%、基質形成剤30.00%~50.00%、膨潤剤20.00%~50.00%、潤滑剤0.50~2.00%及び希釈剤0%~20.00%から構成され、前記百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【0044】
好ましくは、前記ブリバラセタム徐放錠のコアは、ブリバラセタム6.00%の~15.00%、基質形成剤30.00%の~50.00%、膨潤剤30.00%の~50.00%、潤滑剤0.50%~2.00%及び希釈剤0~20.00%から構成され、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠の全重量に対する単一成分の重量の百分率である。
【0045】
本発明の例示的な実施形態によれば、百分率で計算すると、前記ブリバラセタム徐放錠のコアは、以下の調合法の何れか1つから選ばれてもよい。
【0046】
調合法1:ブリバラセタム9.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)40.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)20.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)20.8%、カルボマー9.1%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法2:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)40.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)20.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)17.9%、カルボマー10.0%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法3:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)16.0%、カルボマー8.0%、乳糖18.9%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法4:ブリバラセタム11.1%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.0%、ポリエチレンオキシド(PEO)16.0%、カルボマー8.0%、乳糖8.9%、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン10.0%及びステアリン酸マグネシウム1.0%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法5:ブリバラセタム9.09%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.46%、ポリエチレンオキシド(PEO)14.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム5.45%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.00%、アルファ化デンプン10.00%、カルボマー2.00%、微結晶性セルロース8.36%及びステアリン酸マグネシウム1.00%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法6:ブリバラセタム9.09%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)15.46%、アルギン酸ナトリウム10.00%、塩化カルシウム4.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム6.36%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース7.27%、アルファ化デンプン7.27%、微結晶性セルロース9.91%及びステアリン酸マグネシウム1.00%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法7:ブリバラセタム4.55%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)30.0%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)16.36%、ポリエチレンオキシド(PEO)15.46%、カルボキシメチルデンプンナトリウム6.36%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.91%、アルファ化デンプン11.09%、カルボマー3.00%、微結晶性セルロース6.27%及びステアリン酸マグネシウム1.00%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率であり、
調合法8:ブリバラセタム18.18%、KSR(即ちKOLLIDON@SR)29.09%、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)14.55%、ポリエチレンオキシド(PEO)14.55%、カルボキシメチルデンプンナトリウム5.45%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.45%、アルファ化デンプン9.73%、カルボマー2.00%及びステアリン酸マグネシウム1.00%であり、前記百分率は重量百分率であり、前記重量百分率は、前記ブリバラセタム徐放錠のコアの全重量に対する単一成分の重量百分率である。
【0047】
本発明は、前記ブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠の製造方法をさらに提供し、前記製造方法は、直接打錠法、乾式造粒法、湿式造粒法又は溶融造粒法であってもよい。
【0048】
例えば、前記ブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠の製造方法は、以下の方法の何れか1つから選ばれる。
【0049】
方法1:前記医薬組成物の各成分(例えば医薬活性成分、基質形成剤及び膨潤剤)を直接混合し、打錠することによって、錠剤である前記ブリバラセタム徐放錠を得る。
【0050】
方法2:各成分(医薬活性成分、基質形成剤、膨潤剤、希釈剤及び潤滑剤を含む)の一部を流動床又は乾式法で造粒することによって、原薬(API)と各成分を粒状にし、そして残りの成分(基質形成剤、膨潤剤、希釈剤及び潤滑剤などを含む)と混合し、打錠することによって、錠剤である前記ブリバラセタム徐放錠を得る。
【0051】
本発明の実施形態によれば、前記錠剤は、さらに、コーティング処理を行うことで、コーティング錠である前記ブリバラセタム徐放錠を得てもよい。
【0052】
本発明は、前記ブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠の医薬製造における応用をさらに提供する。さらに、前記医薬は、てんかん、パーキンソン、ジスキネジア、片頭痛、振戦、本態性振戦、双極性障害、慢性疾患、神経因性疼痛、或いは気管支、喘息又はアレルギーなどの疾患の治療及び/又は予防に用いられる。
【0053】
本発明は、ブリバラセタムに対して反応性を有する患者の疾患を治療するための方法をさらに提供し、この方法は、患者に上記ブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠を毎日1回経口投与することを含む。
【0054】
前記ブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠は、全体的に摂取されて患者の胃に入ると、胃液において急速に浮遊し、かつ徐々に膨張又は膨潤することができる。製剤は一定のサイズに膨張すると、幽門を介して胃から出ることを防ぐことができる。成人の幽門の直径は約12 mmであるため、膨張後の製剤のサイズは13 mmよりも大きく、例えば13 mm~20 mmである。前記ブリバラセタム徐放錠は、円形、楕円形、不規則な形、多角形などの任意の形を有することができる。
【0055】
本発明において、前記「薬学的に許容可能」とは、薬物(例えばブリバラセタム)の塩、配合物、溶媒和物及び水和物が、不適切な毒性、刺激性、アレルギー反応などを発生することなく、通常の医学的判断の範囲内で患者の組織との接触に適用され、長所と短所のバランスが適当に取られ、その目的と用途に効果的に用いられることである。
【0056】
前記「溶媒和物」は、薬物(例えばブリバラセタム)、及び化学量論又は非化学量論的な1種又は複数種の薬学的に許容可能な溶媒分子(例えばエタノール)を含む分子複合体である。溶媒が薬物と緊密に結合する場合、形成された複合体は、湿度に依存せず、明らかな化学量論性を有する。しかし、当該溶媒は結合性が弱い場合(例えば、チャネル溶媒和物及び吸湿性化合物において)、溶媒含有量は湿度と乾燥条件に依存し、この場合、複合体は一般的に非化学量論性を有する。
【0057】
前記「水和物」は、薬物(例えばブリバラセタム)及び化学量論又は非化学量論的な水を含む溶媒和物を示す。
【0058】
本発明において、前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、povidone又はpovidonumとも呼ばれ、1-ビニル-ピロリジン-2-オンのホモポリマーであり、分子量Mwが、通常、約1×103~約1×107、約2.5×103~約3×106又は約1×104~約1×105である。ポリビニルピロリドンは、BASF製で、商品名KOLLIDONであってもよく、ISP製で、商品名PLASDONE(登録商標)であってもよい。
【0059】
本発明において、前記ポリ酢酸ビニル(PVAc)は酢酸ビニルのホモポリマーであり、分子量Mwが、通常、約1×105~約1×106である。
【0060】
KSRは、BSAF製で、その商品名がKOLLIDON(登録商標)SRで、PVAcとPVPの80/19(w/w)混合物と公称されるものであってもよい。
【0061】
本発明において、前記ポリエチレンオキシド(PEO)は、ポリオキシラン(polyoxirane)とポリオキシエチレン(polyoxyethylene)とも呼ばれる。ポリエチレンオキシドはオキシエチレンのホモポリマーであり、その分子量Mwが、通常、約1×105~約1×107又は約1×106~約1×107である。ポリエチレンオキシドは、分子量によって、様々なグレードがあり、UnionCarbide製で、商品名POLYOX(登録商標)であってもよい。
【0062】
この分野の常識から逸脱することなく、上記好ましい条件のそれぞれは、任意に組み合わせれば、本発明のそれぞれの好ましい例を得ることができる。
【0063】
本発明の有益な効果
本発明は、ブリバラセタム製剤の放出速度が速すぎ、投与回数が多く、薬物用量が制御し難く、毒性と副作用が大きく、治療効果が限定されるといった従来技術における欠陥を顕著に改善している。本発明により提供されるブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠は、徐放効果を有し、従来のゲルマトリックス徐放性製剤と比べて、放出曲線が更に緩やかになり、薬物放出速度が効果的に低減され、薬物の体内での有効用量が制御されることで、血中薬物濃度をさらに安定化し、毒性と副作用を減らし、毎日の投与回数を減らし、服用コンプライアンスを改善するという効果が達成される。また、本発明により提供されるブリバラセタム医薬組成物又はブリバラセタム徐放錠は、優れた安定性をさらに有する。
[図面の簡単な説明]
[
図1]本発明による錠剤A、B、C、D、E、F、G、H及び特許CN102046153Bによる徐放錠の溶出グラフである。
【0064】
[
図2]Beagleイヌ体内のPK研究時の試験品及び先行研究対照群の薬物-時間グラフである。
[発明を実施するための形態]
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案をより詳細に説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、本発明により請求される範囲内に含まれる。
【0065】
特に記載のない限り、以下の実施例で使用される原材料及び試薬は、いずれも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0066】
実施例1における原材料と補助材料の由来:
ブリバラセタム:乳源東陽光薬業有限公司から購入し、純度:98%~102%である。
【0067】
架橋ポリビニルピロリドン:重慶Star-Tech & JRS Specialty Products有限公司製で、その商品名がOridon(登録商標)XLである。
【0068】
ポリエチレンオキシド:DUPONT製で、その商品名がPOLYOXTMである。 KSR:BSAF製で、その商品名がKOLLIDON(登録商標)SRで、PVAcとPVPの80/19(w/w)混合物と公称される。
実施例1
直接打錠法を用いて以下のようなコアの構成を有する(表1-1と表1-2)楕円形錠剤A、B、C、D、E、F、G及びHを製造した。
【0069】
【0070】
【0071】
(一)溶出率試験
溶出結果(表2)から、錠剤A-Hの体外溶出(pH 4.5の酢酸緩衝液;中国薬典(2020版)0931第2法準拠;50 rpm;37±0.5 ℃;900 mL)は要件を満たすことが示されている。特許CN102046153Bにおける放出が最も遅い実施例(表2)と比べて、本発明の実施例1により製造された錠剤試料は、溶出が遅い(溶出グラフは
図1を参照)。通常の錠剤(通常の錠剤は市販のブリバラセタム錠であり、商品名がBRIVIACT、製造メーカーがUCB, Inc.、調合法が表Aに示す通りである)の溶出結果(表3)と比べて、実施例1により製造された錠剤試料は顕著な徐放効果を有する。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
上記溶出率のデータから、本発明に係るブリバラセタム医薬組成物/錠剤は、約24時間に83%以上の溶出が達成され、徐放効果が、通常の錠剤及び特許CN102046153Bに開示されたブリバラセタム徐放錠よりも明らかに優れていることが分かる。
【0076】
(二)Beagleイヌ体内のPK研究
この試験は、Beagleイヌ3匹(雄:2匹、雌:1匹)を選定した。試験品群(実施例1の錠剤E)及び先行研究対照群(即ち、通常の錠剤)の投与用量(活性成分で計算する)は、いずれも100 mg/匹/日であり、試験品群は1回投与し、先行研究対照群は8 hごとに1錠、合計2回投与した。3匹のBeagleイヌは、まず、試験品を経口投与して、試験品群となり、試験品群は、投与前(投与の前日)及び投与終了後0.5 h、1 h、2 h、3 h、4 h、6 h、8 h、12 h、16 h、24 h、30 h、36 h、48 h時点に採血し、7日後(試験品は完全に溶離された)にこの3匹のBeagleイヌは、先行研究対照薬を経口投与して、先行研究対照群となり、先行研究対照群は、投与前(投与の前日)及び1回目投与終了後0.25 h、0.5 h、0.75 h、1 h、1.25 h、1.5 h、2 h、3 h、5 h、8 h(採取後の2回目投与)、8.25 h、8.5 h、8.75 h、9 h、9.25 h、9.5 h、10 h、11 h、13 h、16 h、24 h時点に採血した。
【0077】
結果は表4に示す。
【0078】
【0079】
その結果、試験品群の半減期が長くなり、ピーク到達時間が延長され、最大血中薬物濃度が先行研究対照群(即ち、市販品)よりも低く、AUC値が先行研究対照群に近いことが示されている(薬物-時間曲線は
図2を参照)。
【0080】
(三)安定性試験
試料を高温高湿条件(60℃/飽和硝酸カリウム溶液、湿度75%RH)で30日間放置し、10、30日目にサンプリングし、関連物質と溶出曲線を検出し、安定性を調べたところ、結果は以下の通りである。
【0081】
【0082】
【0083】
その結果、本発明により製造されたブリバラセタム徐放錠は、安定性が良いことが示されている。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明の精神と原則において行われた修正、等価置換や改良などは、いずれも本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】本発明による錠剤A、B、C、D、E、F、G、H及び特許CN102046153Bによる徐放錠の溶出グラフである。
【
図2】Beagleイヌ体内のPK研究時の試験品及び先行研究対照群の薬物-時間グラフである。