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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】廃棄卵の処理材、及び廃棄卵の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20240122BHJP
   A01K 43/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B01J20/24 B
A01K43/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023150971
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】井ノ本 佑介
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-198559(JP,A)
【文献】特表2017-524899(JP,A)
【文献】特開2006-000782(JP,A)
【文献】特開2002-337970(JP,A)
【文献】特開2015-013654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
C02F 11/00
A01K 43/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを含む、鳥インフルエンザの発生により生じた廃棄卵の処理材。
【請求項2】
前記パルプは、バージンパルプである請求項1に記載の廃棄卵の処理材。
【請求項3】
前記パルプの嵩密度は、0.3g/cm以上である請求項1に記載の廃棄卵の処理材。
【請求項4】
前記パルプの含水率は、20重量%以下である請求項1に記載の廃棄卵の処理材。
【請求項5】
板状物及び/又は細片として構成される請求項1~4の何れか一項に記載の廃棄卵の処理材。
【請求項6】
前記板状物の比重は、1.1以上である請求項5に記載の廃棄卵の処理材。
【請求項7】
処理容器の内部にパルプを配置する配置工程と、
前記処理容器に廃棄卵を投入する投入工程と
を包含する廃棄卵の処理方法。
【請求項8】
前記配置工程と、前記投入工程とを交互に繰り返す請求項7に記載の廃棄卵の処理方法。
【請求項9】
前記投入工程において、前記廃棄卵は殻ごと投入される請求項7に記載の廃棄卵の処理方法。
【請求項10】
前記廃棄卵に対して前記パルプが重量ベースで15%以上使用されるように、前記配置工程及び前記投入工程が実行される請求項7~9の何れか一項に記載の廃棄卵の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏卵(卵液)の処理材、及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高病原性鳥インフルエンザ(以下、単に「鳥インフルエンザ」とする。)が発生すると、都道府県知事から殺処分命令が発せられ、養鶏場において鶏の殺処分が実行されることになる。殺処分された鶏は、石灰で滅菌した後、フレコンバックに詰められ、土中に埋設される。
【0003】
ここで、養鶏場における鶏の飼育数が多い場合、一度に大量の鶏を殺処分すると、滅菌及び埋設の作業が追い付かず、鶏の死骸が腐敗する虞がある。そこで、鶏を殺処分するにあたっては、衛生上の観点から、一回あたりの殺処分数に限度を定めて行われている。
【0004】
ところが殺処分対象となる鶏の数が膨大となると、殺処分されるまで待機している鶏が毎日鶏卵を産卵し、大量の鶏卵が発生することになる。この鶏卵についても鶏と同様に処分(廃棄)の対象となり、フレコンバッグに詰めて埋設される。
【0005】
しかしながら、鶏卵をフレコンバッグに詰めると、殻が割れて卵液がフレコンバッグ内に溜まることになる。そのため、鶏卵の処分にあたっては、フレコンバッグから卵液が漏れ出すことを防ぐため、フレコンバッグの容量(1000L)の半分以下(400~500L)しか詰めることができなかった。また、鶏卵を詰めたフレコンバッグは、内容物が液状となるため、運搬時に二段積みができず、埋設時においては不安定となる。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1のような生活排水吸水処理パックや、特許文献2のような吸水シートを用いて、割れた鶏卵から発生した卵液を吸収することが考えられる。ちなみに、特許文献1の生活排水吸水処理パックは、当該パックに封入される吸水性高分子の作用により、カップ麺の残汁や余ったみそ汁等の生活排水を吸収し、処理するものである。特許文献2の吸水シートは、その吸水層に含まれる吸水性高分子の作用により、肉類、魚類、野菜類等から出る水分を吸収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3111826号公報
【文献】特開2017-47341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、本発明者らが行った試験研究によれば、タンパク質を多く含む卵液は、吸水性高分子に対して十分に吸収されないことが判明した(詳細については、後述の「実施例」において説明する。)。そのため、特許文献1のような生活排水吸水処理パックや、特許文献2のような吸水シートでは、鶏卵(卵液)を適切に処理することはできない。
【0009】
このように、鶏卵の処分には問題があるにもかかわらず、鳥インフルエンザが発生した場合の対応は鶏の殺処分がメインとなり、鶏卵については有効な対策はこれまであまり考えられていなかったのが現状である。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、鳥インフルエンザの発生に伴って処分されることが決まった鶏が産卵した鶏卵(廃棄卵)を簡便に且つ適切に処理できる廃棄卵の処理材、及びその処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄卵の処理材の特徴構成は、
パルプを主原料としたことにある。
【0012】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、パルプを主原料とした処理材を用いることで、吸水性高分子では十分に吸収できないタンパク質を多く含む廃棄卵(卵液)を効率よく吸収することができる。卵液を吸収した処理材は、そのまま土中に埋設することができるため、廃棄卵を簡便に且つ適切に処理することができる。また、この処理材は、パルプを主原料としているため、土中に埋設すると処理材は自然に分解し、環境への負荷が小さい。なお、この処理材は、土中への埋設の他に、焼却処分も可能である。
【0013】
本発明にかかる廃棄卵の処理材において、
前記パルプは、バージンパルプであることが好ましい。
【0014】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、パルプとして不純物が少ないバージンパルプを使用することで、卵液の吸収力が高いものとなる。
【0015】
本発明にかかる廃棄卵の処理材において、
前記パルプの嵩密度は、0.3g/cm以上であることが好ましい。
【0016】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、パルプの嵩密度が0.3g/cm以上であれば、卵液の吸収力を維持しながら、卵液を吸収したパルプの強度を維持することができる。したがって、廃棄卵を投入した処理容器の運搬時や埋設時において、当該処理容器を安定させることができる。
【0017】
本発明にかかる廃棄卵の処理材において、
前記パルプの含水率は、20重量%以下であることが好ましい。
【0018】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、パルプの含水率を20重量%以下とすることで、卵液の吸収力と卵液を吸収したパルプの強度とを両立させることができる。
【0019】
本発明にかかる廃棄卵の処理材において、
板状物及び/又は細片として構成されることが好ましい。
【0020】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、板状物として構成することで、当該処理材の形態が安定し、取り扱いも容易なものとなる。その結果、処理容器内において処理材の上に廃棄卵を積層することが可能となり、処理効率が向上する。また細片として構成することで、処理容器内において処理材が廃棄卵の隙間にまで入り込むことができるため、廃棄卵から発生した卵液を効率よく吸収することが可能となる。
【0021】
本発明にかかる廃棄卵の処理材において、
前記板状物の比重は、1.1以上であることが好ましい。
【0022】
本構成の廃棄卵の処理材によれば、板状物の比重が1.1以上(1より大きい数値)に調整されているため、フレコンバッグの中に廃棄卵とともに投入したとき、廃棄卵の処理材が浮き上がることを防止することができる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄卵の処理方法の特徴構成は、
処理容器の内部にパルプを配置する配置工程と、
前記処理容器に廃棄卵を投入する投入工程と
を包含することにある。
【0024】
本構成の廃棄卵の処理方法によれば、処理容器の内部において、吸水性高分子では十分に吸収できないタンパク質を多く含む廃棄卵(卵液)をパルプに効率よく吸収させ、処理することができる。
【0025】
本発明にかかる廃棄卵の処理方法において、
前記配置工程と、前記投入工程とを交互に繰り返すことが好ましい。
【0026】
本構成の廃棄卵の処理方法によれば、配置工程と、投入工程とを交互に繰り返すことで、処理容器内に廃棄卵を積層することが可能となり、処理効率が向上する。
【0027】
本発明にかかる廃棄卵の処理方法において、
前記投入工程において、前記廃棄卵は殻ごと投入されることが好ましい。
【0028】
本構成の廃棄卵の処理方法によれば、廃棄卵の殻が割れてもそのまま処理できるため、廃棄卵を殻ごと投入することができ、処理に手間が掛からず、作業効率が向上する。
【0029】
本発明にかかる廃棄卵の処理方法において、
前記廃棄卵に対して前記パルプが重量ベースで15%以上使用されるように、前記配置工程及び前記投入工程が実行されることが好ましい。
【0030】
本構成の廃棄卵の処理方法によれば、配置工程と投入工程とを実行するにあたり、廃棄卵に対してパルプが重量ベースで15%以上使用されるように調整すれば、卵液をパルプに確実に吸収させることができる。その結果、処理容器の容量が一杯になるまで廃棄卵を投入しても、液漏れが発生せず、処理効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、流動性確認試験1の結果をまとめた表である。
図2図2は、流動性確認試験2の結果をまとめた表である。
図3図3は、安定性確認試験の結果をまとめた表である。
図4図4は、積層試験の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の廃棄卵の処理材、及び廃棄卵の処理方法の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0033】
〔廃棄卵の処理材〕
本発明の廃棄卵の処理材は、パルプを主原料としたものである。ここで、「主原料とした」とは、原料として90重量%以上、好ましくは99重量%以上含むことを意味する。したがって、本発明の廃棄卵の処理材は、パルプのみから構成されるもの(100%パルプ)であってもよいし、パルプの他、粘結剤、接着剤、賦形剤、充填剤、防腐剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、着色剤、芳香剤などの添加物を、合計10重量%を限度として含むものであってもよい。
【0034】
パルプは、針葉樹や広葉樹から製造される木材パルプであってもよいし、草や藁から製造される非木材パルプであってもよい。このようなパルプについて、本発明者らは、鳥インフルエンザの発生時に問題となっている鶏卵(廃棄卵)の処理に利用できないかと考え、種々の検討を行ったところ、パルプは、吸水性高分子では十分に吸収できないタンパク質を多く含む廃棄卵(卵液)を吸収する能力に優れているという新たな知見を得た。したがって、パルプを主原料とした本発明の廃棄卵の処理材を用いれば、廃棄卵を簡便に且つ適切に処理することができる。また、本発明の廃棄卵の処理材は、パルプを主原料しているため、卵液を吸収した処理材を土中に埋設すると、当該処理材は自然に分解する。したがって、本発明の廃棄卵の処理材は、環境への負荷が小さいものとなる。なお、パルプを主原料とした本発明の廃棄卵の処理材は、土中への埋設の他に、焼却処分も可能である。
【0035】
パルプは、バージンパルプ又は再生パルプの何れであってもよいが、バージンパルプであることが好ましい。古紙や新聞紙等から製造される再生パルプは、残留しているインク等の油分によって卵液の吸収が阻害される虞があるが、バージンパルプは不純物が少ないため、卵液を吸収する能力が非常に優れている。
【0036】
パルプは、適切な性状のものが選択される。具体的には、パルプの嵩密度は、0.3g/cm以上であることが好ましく、0.34g/cm以上であることがより好ましい。パルプの嵩密度が0.3g/cm未満の場合、パルプの絶対量が不足するため、卵液を十分に吸収できなくなる虞がある。なお、パルプの嵩密度の上限については特に限定されないが、パルプは植物由来の原料であることから、締め固めたとしても現実的には嵩密度が1.0g/cmを超えることはない。本発明の廃棄卵の処理材は、主原料であるパルプの嵩密度を0.3g/cm以上とすることで、卵液の吸収力を維持しながら、卵液を吸収したパルプの強度を維持することができる。したがって、廃棄卵を投入したフレコンバッグ(処理容器)の運搬時や埋設時において、当該フレコンバッグを安定させることができる。なお、パルプの嵩密度は、パルプが成型品である場合は、当該成型品の容積と重量とから求めることができる。パルプが不定形品(顆粒品、フレーク品、破砕物等の細片)である場合は、パルプを一定容量の容器に自重によって詰め込み、当該容器の容積と詰め込まれたパルプの重量とから求めることができる。
【0037】
パルプの含水率は、20重量%以下であることが好ましい。パルプの含水率が20重量%を超える場合、パルプの吸収能を十分に発揮できなくなる虞がある。なお、パルプの含水率の下限については特に限定されないが、水分の一部はパルプの主成分であるセルロースに強固に吸着していることから、十分に乾燥を行ったとしても現実的には含水率が1重量%を下回ることはない。本発明の廃棄卵の処理材は、主原料であるパルプの含水率を20重量%以下とすることで、卵液の吸収力と卵液を吸収したパルプの強度とを両立させることができる。なお、パルプの含水率は、例えば、赤外線水分計等で測定することができる。
【0038】
上記のような性状を有するパルプを主原料とした本発明の廃棄卵の処理材は、細片のまま使用してもよいし、板状物等に成形した状態で使用してもよい。あるいは、細片と板状物(成形品)とを同時に使用してもよい。ここで、板状物とは、上方及び下方から見たときに、円形、楕円形、多角形、不定形などの形状をした上下面を有し、側方から見たときに、上下面より短い長さの厚みを有するものである。板状物の処理材は、例えば、製紙工場から入手可能なパルプのブロック(圧縮物)を適切な厚みに切断することで得ることができる。この板状物の処理材は、そのまま廃棄卵の処理に使用することができる。板状物として構成した廃棄卵の処理材は、形態が安定しているため、取り扱いが容易なものとなる。その結果、フレコンバッグ内において処理材の上に廃棄卵を積層することが可能となり、処理効率が向上する。なお、廃棄卵の処理材を細片のまま使用する場合は、フレコンバッグ内において処理材が廃棄卵の隙間にまで入り込むことができるため、廃棄卵から発生した卵液を効率よく吸収することが可能となる。
【0039】
板状物として構成する廃棄卵の処理材のサイズは、廃棄卵が投入されるフレコンバッグの形状やサイズ、処理材の使い方等に応じて適宜設定することができる。例えば、一般的な円筒形のフレコンバッグ(直径1100mm、高さ1100mm、容量1000L)の内部に処理材と廃棄卵とを交互に4~5段積層する場合、処理材のサイズは、タテ及びヨコが500~1000mm、厚みが10~150mmとなるように設定することが好ましい。この場合、フレコンバッグの容量が一杯になるまで、フレコンバッグに廃棄卵及び処理材を投入することが可能となり、効率よく廃棄卵を処理することができる。
【0040】
板状物として構成する廃棄卵の処理材の比重は、1.1以上が好ましく、1.27以上がより好ましい。上述のように、パルプとしての嵩密度は、0.3g/cm以上であっても、パルプを圧縮してブロック(板状物)に成形すると、その比重は1.1以上となる。このように、板状物の比重が1.1以上(1より大きい数値)に調整されていると、フレコンバッグの中に廃棄卵とともに投入したとき、廃棄卵の処理材が浮き上がることを防止することができる。なお、処理材の比重の上限については特に限定されないが、パルプは植物由来の原料であることから、大きな力で圧縮成形したとしても、現実的には比重が1.7を超えることはない。
【0041】
〔廃棄卵の処理方法〕
本発明の廃棄卵の処理方法は、上述した廃棄卵の処理材を用いて実施されるものである。本発明の廃棄卵の処理方法は、フレコンバッグ(処理容器)の内部にパルプを配置する配置工程と、フレコンバッグに廃棄卵を投入する投入工程とを包含する。パルプは、廃棄卵の処理材となる。本発明の廃棄卵の処理方法によれば、吸水性高分子では十分に吸収できないタンパク質を多く含む廃棄卵(卵液)を処理材によって効率よく吸収し、処理することができる。
【0042】
<配置工程>
配置工程において、フレコンバッグの内部に配置されるパルプ(処理材)は、粒状ないしフレーク状のものを使用してもよいが、上述したとおり、フレコンバッグの形状やサイズに合わせて成形した板状物を使用することが好ましい。パルプの性状については、上述したとおりであり、詳細な説明は省略する。
【0043】
<投入工程>
投入工程において、廃棄卵は処理材の上に投入される。廃棄卵は、殻ごと投入してもよい。この場合、廃棄卵の殻が割れて卵液が漏出するが、卵液は処理材に吸収されるためフレコンバッグの底部に溜まることはない。また、廃棄卵の殻が割れてもそのまま処理できるため、処理に手間が掛からず、作業効率が向上する。
【0044】
<交互操作>
上記の配置工程と投入工程とは交互に繰り返されることが好ましい。これにより、フレコンバッグ内に廃棄卵を積層することが可能となり、処理効率が向上する。廃棄卵の積層数は、一般的な円筒形のフレコンバッグ(直径1100mm、高さ1100mm、容量1000L)を用いる場合、処理材を間に挟んだ状態で2~10段とすることができるが、処理材の適正な厚みを考慮すると4~5段とするが好ましい。また、配置工程と投入工程との交互操作を行うにあたっては、廃棄卵に対してパルプが重量ベースで15%以上使用されるように、配置工程及び投入工程が実行されることが好ましい。これにより、卵液を処理材に確実に吸収させることができる。その結果、フレコンバッグの容量が一杯になるまで廃棄卵を投入しても、液漏れが発生せず、処理効率が向上する。
【0045】
<後処理>
フレコンバッグの容量が一杯になったら、後処理として、当該フレコンバッグは、そのまま土中に埋設される。本発明の廃棄卵の処理方法によれば、処理材はパルプを主原料としているため、土中に埋設すると処理材は自然に分解し、環境への負荷が小さいものとなる。なお、土中への埋設の他に、焼却処分も可能である。
【実施例
【0046】
本発明の廃棄卵の処理材について、その性能及び効果を確認するため、流動性確認試験1及び2、安定性確認試験、並びに積層試験を実施した。各試験について、以下に説明する。
【0047】
〔流動性確認試験1〕
廃棄卵の卵液を吸収した処理材が大きな流動性を示すと、処理材が卵液とともに流動してフレコンバッグの底部に溜まり、フレコンバッグから漏出する可能性がある。そこで、卵液を吸収した処理材の流動性を確認するため、以下の手順に沿って流動性確認試験1(実施例1及び2、比較例1)を実施した。
(1)処理対象として廃棄卵を想定した生卵3個分の卵液を秤量し、ミキサー(ワーリングスタンドミキサー WSM7Q、大阪ケミカル株式会社製)に投入する。
(2)卵液の重量に対して夫々20%の処理材〔バージンパルプ(実施例1)、古紙パルプ(実施例2)、高吸水性ポリマー(比較例1)〕をミキサーに投入する。
(3)ミキサーを起動して41rpmで1分間攪拌し、卵液と処理材とを混合する。
(4)ミキサーを停止し、卵液と処理材との混合物の流動性を目視により確認する。
【0048】
流動性確認試験1で使用した処理材は、以下の3種類である。なお、後述の流動性確認試験2、安定性確認試験、及び積層試験で使用した処理材についても、以下と同じものである。
(実施例1)バージンパルプ
・販売者:テクニカ合同株式会社
・商品名:パルサップ(B剤)
・成分:天然木材パルプ(マツ科マツ属の常緑高木:60重量%、マツ科トウヒ属の針葉樹:38重量%、バルサムモミ:<2重量%)
・パルプとしての嵩密度:0.39g/cm(2.59cm/g)
・ブロック(板状物)としての比重:1.4
・含水率:10重量%
(実施例2)古紙パルプ(古紙ファイバー)
・販売者:株式会社ジャパンクリエイティブル
・商品名:250kgファイバー
・成分:古紙パルプ
・パルプとしての嵩密度:バージンパルプと同等
・ブロック(板状物)としての比重:バージンパルプと同等
・含水率:バージンパルプと同等
(比較例1)高吸水性ポリマー
・販売者:テクニカ合同株式会社
・商品名:SAP High Spec
・成分:ポリアクリル酸重合物
【0049】
流動性確認試験1の結果を図1に示す。処理材としてバージンパルプを用いた実施例1の試験では、処理材が卵液を良好に吸収しており、卵液と処理材との混合物の流動性は認められなかった。処理材として古紙パルプを用いた実施例2の試験では、実施例1には及ばないが、処理材が卵液を吸収しており、卵液と処理材との混合物の流動性はほぼ認められなかった。これに対し、処理材として高吸水性ポリマーを用いた比較例1の試験では、処理材が卵液を十分に吸収することができず、その結果、卵液と処理材との混合物の流動性が認められた。このように、パルプを主原料とした処理材は、廃棄卵の処理に非常に有用であることが示された。
【0050】
〔流動性確認試験2〕
次に、卵液を吸収した処理材の流動性の抑制に効果があったバージンパルプについて、卵液に対する処理材の適正な投入量を確認するため、以下の手順に沿って流動性確認試験2(実施例3~5)を実施した。
(1)廃棄卵を想定した生卵3個分の卵液を秤量し、ミキサー(ワーリングスタンドミキサー WSM7Q、大阪ケミカル株式会社製)に投入する。
(2)卵液の重量に対して処理材(バージンパルプ)を20%(実施例3)、15%(実施例4)、10%(実施例5)の各比率でミキサーに投入する。
(3)ミキサーを起動して41rpmで1分間攪拌し、卵液と処理材とを混合する。
(4)ミキサーを停止し、20分経過後、卵液と処理材との混合物の流動性を目視により確認する。
【0051】
流動性確認試験2の結果を図2に示す。卵液の重量に対してバージンパルプを20%混合した実施例3の試験は、実施例1と同じ条件であり、卵液と処理材との混合物の流動性は認められなかった。卵液の重量に対してバージンパルプを15%混合した実施例4の試験では、実施例3には及ばないが、卵液と処理材との混合物の流動性はほぼ認められなかった。卵液の重量に対してバージンパルプを10%混合した実施例5の試験では、卵液と処理材との混合物の流動性が若干認められたが、実用上問題となるものではなかった。したがって、処理材としてバージンパルプを用いる場合、卵液の重量に対する処理材の配合は10%以上とすることが好ましいことが示された。
【0052】
〔安定性確認試験〕
廃棄卵を収容したフレコンバッグを運搬するにあたっては、内容物が安定性し、液漏れが起こらないことが求められる。そこで、卵液を吸収した処理材の安定性を確認するため、以下の手順に沿って安定性確認試験(実施例6及び7)を実施した。
(1)モルタルフロー試験機(C-206、株式会社西日本試験機)のテーブル(直径300mm)にコーン容器(上部径70mm、下部径100mm、高さ60mm)を載置する。
(2)コーン容器に、流動性確認試験1と同様の手順により調製した卵液(但し、生卵5個分とする)と処理材〔バージンパルプ(実施例6)、古紙パルプ(実施例7)〕との混合物を充填する。
(3)コーン容器を慎重に抜き取った後、モルタルフロー試験機を50回上下振動させ、混合物の形状変化を目視により確認する。
(4)テーブルから混合物を除去し、テーブルの表面に付着している水分をキッチンペーパーに吸収させ、吸収前後のキッチンペーパーの重量差から離水量を求める。
【0053】
安定性確認試験の結果を図3に示す。処理材としてバージンパルプを用いた実施例6の試験では、モルタルフロー試験後の卵液と処理材との混合物の外観形状に大きな変化は見られず、安定なものであった。また、離水量も0.04gと僅かであり、液漏れの心配はないものであった。処理材として古紙パルプを用いた実施例7の試験では、モルタルフロー試験後の卵液と処理材との混合物の形状が若干崩れたが、比較的安定なものであった。また、離水量は2.15gと少量に抑えられており、実用上の問題は少ないものであった。このように、パルプを主原料とした処理材で廃棄卵を処理すると、フレコンバッグで運搬する際に安定性があり、液漏れが問題となることもないため、非常に有用であることが示された。
【0054】
〔積層試験〕
フレコンバッグに廃棄卵を投入するにあたっては、卵液の液漏れを防止しつつ、できるだけ多くの廃棄卵を収容することが求められる。そのためには、廃棄卵を幾層にもわたって積層する必要がある。そこで、フレコンバッグに対する廃棄卵の収容性を確認するため、以下の手順に沿って積層試験(実施例8及び9)を実施した。
(1)容器に約55gの処理材〔バージンパルプ(実施例8)、古紙パルプ(実施例9)〕を投入して処理層を形成する(第1層)。
(2)処理層の上に3~4個の鶏卵(1個あたり50~70g)を殻付きのまま投入して卵層を形成し、その上に約55gの処理材を投入して次の処理層を形成する(第2層)。
(3)上記(2)の操作を繰り返し、第5層まで形成する。
(4)第1層~第5層の状態を目視により確認する。
【0055】
積層試験の結果を図4に示す。処理材としてバージンパルプを用いた実施例8の試験では、鶏卵の積層時に鶏卵が割れても卵液が処理材に直ちに吸収されるため、卵液が漏出したり、卵液と処理材との混合物が流動したりすることはなかった。処理材として古紙パルプを用いた実施例9の試験では、鶏卵の積層時に鶏卵が割れると卵液が処理材に若干まとわりつく現象が見られたが、卵液が激しく漏出したり、卵液と処理材との混合物が大きく流動したりすることはなかった。このように、パルプを主原料とした処理材を用いれば、卵液の液漏れを防止しつつフレコンバッグに廃棄卵を積層できるため、処理効率が向上する点において、非常に有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の廃棄卵の処理材、及び廃棄卵の処理方法は、鳥インフルエンザの発生に伴って処分されることが決まった鶏が産卵した鶏卵(廃棄卵)の処理に利用されるものであるが、その他の鶏卵(例えば、消費期限を徒過した鶏卵、商品として適さない鶏卵、何らかの事情で廃棄せざるを得ない鶏卵)を処理する用途においても利用可能である。
【要約】
【課題】鳥インフルエンザの発生に伴って処分されることが決まった鶏が産卵した鶏卵(廃棄卵)を簡便に且つ適切に処理できる廃棄卵の処理材、及びその処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄卵の処理材は、パルプを主原料とし、パルプは、バージンパルプであり、パルプの嵩密度は、0.3g/cm以上であり、パルプの含水率は、20重量%以下であり、板状物及び/又は細片として構成され、板状物の比重は、1.1以上である。廃棄卵の処理方法は、処理容器の内部にパルプを配置する配置工程と、処理容器に廃棄卵を投入する投入工程とを包含する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4