(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】洋上風力発電設備の浮体基礎建築の建築方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/25 20160101AFI20240122BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240122BHJP
【FI】
F03D13/25
B63B35/00 T
(21)【出願番号】P 2023526235
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023008973
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲治
(72)【発明者】
【氏名】青木 涼
(72)【発明者】
【氏名】大高 里奈
(72)【発明者】
【氏名】安西 賢治
(72)【発明者】
【氏名】前田 克吏
(72)【発明者】
【氏名】劉 宏涛
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053899(JP,A)
【文献】特開2020-026099(JP,A)
【文献】特開2015-186851(JP,A)
【文献】特開2022-183904(JP,A)
【文献】特開2012-056333(JP,A)
【文献】特表2011-521820(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163032(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/148156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電の浮体基礎を建築する建築方法であって、
前記浮体基礎は、コンクリート製のN個の中空浮力体と、
N個の前記中空浮力体同士を接続する連結構造体と、から上面形状が略N角形になるように形成され、前記N角形の1個の頂点に位置する前記中空浮力体に風力発電の支柱が設けられるようになっており、
前記建築方法は、N個の中空浮力体用浮ドックと、1個の連結用浮ドックと、を使用して、
N個の前記中空浮力体用浮ドックをそれぞれ海上に浮かべ港湾の岸壁に接岸して
岸壁側の建築用車両によりそれぞれの上に1個ずつ前記中空浮力体を建築する中空浮力体建築工程と、
それぞれ1個の前記中空浮力体が載せられたN個の前記中空浮力体用浮ドックを前記連結用浮ドックに連結して、N個の前記中空浮力体用浮ドックと1個の前記連結用浮ドックとからなる浮ドックを形成する浮ドック連結工程と、
前記浮ドックを構成している隣り合う2個の前記中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して
岸壁側の建築用車両により前記連結構造体の一部を建築し、次いで他の隣り合う2個の前記中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して
岸壁側の建築用車両により前記連結構造体の一部を建築し、順次異なる組み合わせの隣り合う2個の前記中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して
岸壁側の建築用車両により前記連結構造体の一部を建築し、以下繰り返して前記連結構造体を建築して前記浮体基礎を形成する連結構造体建築工程と、
前記浮体基礎が完成した後に前記浮ドックを離岸させると共に前記浮ドックを沈ませて前記浮体基礎を洋上に浮かべる浮体基礎進水工程と、からなる浮体基礎の建築方法。
【請求項2】
前記N個は3個であり、前記N角形は正三角形である、請求項
1に記載の浮体基礎の建築方法。
【請求項3】
前記中空浮力体建築工程において建築する前記中空浮力体は、3Dプリンタによるコンクリート製捨て枠の形成と、該コンクリート製捨て枠へのコンクリートの充填とを繰り返して建築するようにする、請求項
1または2に記載の浮体基礎の建築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上に洋上風力発電設備が設けられるようになっている浮体基礎の建築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電により得られる電力は再生可能エネルギーであり、持続可能な開発目標における重要な解決方法の1つになっている。風力発電設備は陸上に設けることもできるが、洋上に設ける洋上風力発電設備は、比較的安定した強い風を利用することができる。洋上風力発電設備は、海底に固定した基礎いわゆる着床式基礎に設けることもできるし、洋上において浮かぶ浮体基礎に設けることもできる。前者の着床式基礎は、比較的水深の浅い海域に設置する必要があり、設置場所の制約がある。一方、後者の浮体基礎は比較的水深が深い海域でも設置可能であり設置場所の自由度が高いという特徴がある。洋上風力発電設備が設けられる浮体基礎は、例えば特許文献1、2等によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-29139号公報
【文献】特開2022-33554号公報
【0004】
本発明者等は、洋上風力発電設備が設けられる浮体基礎として、次の構造からなる浮体基礎を検討している。すなわち、洋上風力発電設備の浮体基礎を、上面から見て三角形の3個の頂点のそれぞれの位置に配置されているコンクリート製の3個の中空浮力体と、これら3個の中空浮力体同士を接続するコンクリート製の連結構造体と、から構成する。そして、1個の中空浮力体の上に風力発電設備の支柱が設けられるようにする。このように浮体基礎を構成すると、鋼材から浮体基礎を構成する場合に比して搬送コスト、製造コストが比較的小さいという優れた効果が得られることになる。また設置できるエリアの制限が比較的小さいし、さらには上面形状が三角形に形成されているので横揺れ等が発生しにくく安定して洋上風力発電設備を支持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、浮体基礎をコンクリート製の3個の中空浮力体とこれら同士を接続するコンクリート製の連結構造体から構成すると、色々な優れた長所がある。このような浮体基礎は、3個以外の複数個つまりN個のコンクリート製の中空浮力体と、これら同士を接続するコンクリート製の連結構造体とから構成して、上面形状を略N角形にするようにしても同様に優れた長所があるはずである。しかしながらこのような浮体基礎について、解決すべき課題も見受けられる。具体的には、浮体基礎をどのように建築するかについて、適切な建築方法が検討されていない、という問題がある。巨大な浮体基礎を比較的低コストで、かつ比較的容易に建築することができれば好ましいが、建築コストが高く、建築が困難であれば浮体基礎を普及させることができない。
【0006】
本発明は、上で説明したような本発明者等が検討している洋上発電設備の浮体基礎について、比較的低コストで、かつ比較的容易に建築することができる建築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洋上風力発電の浮体基礎を建築方法として構成する。建築対象となる浮体基礎は、コンクリート製のN個の中空浮力体と、N個の中空浮力体同士を接続するコンクリート製の連結構造体と、から上面形状が略N角形になるように形成される。そしてN角形の1個の頂点に位置する中空浮力体に風力発電の支柱が設けられる。本発明に係る浮体基礎の建築方法は、N個の中空浮力体用浮ドックと、1個の連結用浮ドックとを使用する。N個の中空浮力体用浮ドックをそれぞれ海上に浮かべ港湾の岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両によりそれぞれの上に1個ずつ中空浮力体を建築する。次いで、中空浮力体が載せられたN個の中空浮力体用浮ドックを連結用浮ドックに連結して、N個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドックを形成する。浮ドックを構成している隣り合う2個の中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両により連結構造体の一部を建築し、次いで他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両により連結構造体の一部を建築し、順次異なる組み合わせの隣り合う2個の中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両により連結構造体の一部を建築し、以下繰り返して連結構造体を建築して浮体基礎を形成する。そして、浮体基礎が完成した後に浮ドックを離岸させると共に浮ドックを沈ませて浮体基礎を洋上に浮かべるように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、浮ドックは、N個の中空浮力体用浮ドックと、1個の連結用浮ドックと、から構成されている。これらN個の中空浮力体用浮ドックは、それぞれ独立して海上に浮かべられ、N個の中空浮力体用浮ドックを港湾の岸壁に接岸して、クレーン車、コンクリートポンプ車等の、建築用車両を使用して中空浮力体を建築するようにしている。従って容易に中空浮力体を建築できる。そして、本発明によると、建築された中空浮力体が載せられたN個の中空浮力体用浮ドックが連結用浮ドックに連結されると浮ドックが構成される。この浮ドックにおいてN個の中空浮力体同士を接続するコンクリート製の連結構造体を建築できる。このとき浮ドックは海上に浮かべられ、浮ドックを所望の回転位置にして隣り合う2個の中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両により連結構造体の一部を建築すると、建築が容易に実施できる。次いで浮ドックを回転させて他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドックを岸壁に接岸して岸壁側の建築用車両により連結構造体の一部を建築すると、同様に建築が容易に実施できる。これを繰り返して連結構造体を形成させ、浮体基礎の完成後に浮ドックを離岸させ、浮ドックを沈ませるようにするので、容易に、かつ低コストで浮体基礎を建築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る浮体基礎を備えた洋上風力発電設備の斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る浮体基礎を備えた洋上風力発電設備の正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る浮体基礎を構成する中空浮力体の正面断面図である。
【
図4】本実施の形態に係る浮体基礎を示す上面断面図である。
【
図5A】3個の中空浮力体用浮ドックと、連結用浮ドックとが分離した状態の本実施の形態に係る浮ドッグを示す斜視図である。
【
図5B】3個の中空浮力体用浮ドックと、連結用浮ドックとが結合した状態の本実施の形態に係る浮ドッグを示す斜視図である。
【
図6A】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、3個の中空浮力体用浮ドックと、これらの上で建築中の中空浮力体とを示す上面図である。
【
図6B】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、3個の中空浮力体用浮ドックと、これらの上で建築中の中空浮力体とを示す上面図である。
【
図6C】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、中空浮力体用浮ドックと、建築中の中空浮力体とを示す正面図である。
【
図6D】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6E】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す正面図である。
【
図6F】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6G】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6H】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6I】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6J】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6K】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築中の浮体基礎とを示す上面図である。
【
図6L】本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する図で、互いに連結された3個の中空浮力体用浮ドックと1個の連結用浮ドックとからなる浮ドッグと、これらの上で建築された浮体基礎とが、タグボートによって曳航されている様子を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本実施の形態に係る洋上風力発電設備>
以下、本実施の形態を説明するが、本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する前に、最初に建築対象である本実施の形態に係る浮体基礎と、この浮体基礎に風力発電設備が設けられている洋上風力発電設備について説明する。
【0011】
本実施の形態に係る洋上風力発電設備1は、
図1、
図2に示されているように、洋上に浮かぶ本実施の形態に係る浮体基礎3に設けられている。図において風力発電装置4はその支柱5のみが示されているが、支柱5の上には発電機等が入れられたナセルが設けられ、ハブを介して複数枚のブレードが設けられたロータ軸がナセルに対して回転自在に設けられている。本実施の形態に係る洋上風力発電設備1には、
図2に示されているように、アンモニア生成装置7a、精製水タンク7b、…等が設けられている。風力発電装置4によって発電した電力により精製水を電気分解して水素を生成し、この水素と空気中の窒素とからアンモニアを生成する。生成したアンモニアは貯蔵され、
図1に示されているように、定期的に運搬船8により搬送されるようになっている。
【0012】
<浮体基礎>
本実施の形態に係る浮体基礎3は、3個のフロータつまり中空浮力体10、10、10と、これら中空浮力体10、10、10同士を接続する連結構造体11と、から構成されている。中空浮力体10、10、10も、連結構造体11もコンクリート製からなり鉄筋等によって補強されている。このような中空浮力体10の1個に、風力発電装置4の支柱5が設けられている。
【0013】
<中空浮力体>
中空浮力体10は、
図3にその断面が示されているように、円筒状で先端がテーパ状に縮径した浮力体本体部13と、この浮力体本体部13の上に設けられている頭部14と、浮力体本体部13の下部に形成されているヒーブプレート部15とから構成されている。後で説明する連結構造体11は、頭部14とヒーブプレート部15とに接続されている。ヒーブプレート部15は、浮力で浮いている中空浮力体10が上下方向に揺れるのを防止するために設けられている。
【0014】
このような中空浮力体10は、後で説明するように本実施の形態に係る中空浮力体用浮ドック31(
図5A参照)の上で建築されるようになっているが、次のように建築される。まず、
図3に示されているようにコンクリート製底板枠16が設置される。次いで、
図3において太い実線で描かれているように、コンクリートを押し出す3Dプリンタによってコンクリート製底板枠16の上にコンクリート製捨て枠17、17、…が形成される。そしてコンクリート製捨て枠17、17、…中に、ファイバーつまり強化繊維が入れられたコンクリート18が充填される。このようにしてコンクリート製底板枠16、コンクリート製捨て枠17、17、…とコンクリート18とが一体的に固着した中空浮力体10が建築されるようになっている。鉄製型枠を使用しないで製造できるので、低コストで中空浮力体10を建築できる。なお、コンクリート製捨て枠17、17、…内には、必要に応じて鉄筋を入れて強度を得るようにしてもよい。
【0015】
<連結構造体>
図1、
図2に示されているように、3個の中空浮力体10、10、10同士を連結している連結構造体11は、水中に没している第1の連結構造体20と、空中に露出している第2の連結構造体21と、から構成されている。第1の連結構造体20は、中空浮力体10、10、10のヒーブプレート部15、15、…同士を接続しており、第2の連結構造体21は頭部14、14、14同士を接続している。第1の連結構造体20も第2の連結構造体21もその構成は実質的に同じであり、それぞれ上層部20a、21aと、下層部20b、21bの2層構造に形成されている。
図4には、3個の中空浮力体10、10、10と、第2の連結構造体21の上層部21aとが示されているが、中空浮力体10、10、10が正三角形のそれぞれの頂点になるように配置されている。そして、第2の連結構造体21が全体として正三角形になるように形成されている。
【0016】
第1の連結構造体20も第2の連結構造体21も、その構成は実質的に同じであるので第2の連結構造体21について説明する。本実施の形態において第2の連結構造体21は、複数本の支柱パイプ24、24、…と、複数本の連結パイプ26、26、…とから構成されている。より具体的には、
図4に示されているように、本実施の形態において第2の連結構造体21は、12本の支柱パイプ24、24、…を備えている。支柱パイプ24、24、…は、
図1、
図2に示されているように鉛直に立てられており、その上端部と下端部は六角形状の接続部になっている。
【0017】
第2の連結構造体21の上層部21aは、12本の支柱パイプ24、24、…と連結パイプ26、26、…とから、次のように形成されている。まず、
図1に示されているように、中空浮力体10、10、10と、これら中空浮力体10、10、10の近傍の2本の支柱パイプ24、24、…の上端部とが連結パイプ26、26、…によって接続されている。さらに隣り合う支柱パイプ24、24、…の上端部同士が連結パイプ26、26、…によって接続されている。上層部21aが
図4に示されているが、本実施の形態において、第2の連結構造体21の上層部21aを構成している連結パイプ26、26、…は30本になっている。
【0018】
第2の連結構造体21の下層部21bも、12本の支柱パイプ24、24、…と連結パイプ26、26、…とから上層部21aと同様に形成されている。つまり、
図1に示されているように、中空浮力体10、10、10と、これら中空浮力体10、10、10の近傍の2本の支柱パイプ24、24、…の下端部とが連結パイプ26、26、…によって接続されている。さらに隣り合う支柱パイプ24、24、…の下端部同士が連結パイプ26、26、…によって接続されている。
図4に示されているのは上層部21aだけであり下層部21bは隠れているが、下層部21bにおける連結パイプ26、26、…の本数も上層部21aにおける本数と同数になっている。すなわち30本である。したがって、本実施の形態において、第2の連結構造体21は、12本の支柱パイプ24、24、…と60本の連結パイプ26、26、…とから構成されている。
【0019】
このような第2の連結構造体21においてそれぞれの連結パイプ26、26、…と支柱パイプ24、24、…には、
図4に示されているようにPC鋼材28、28、…が入れられている。一部のPC鋼材28、28、…は、その端部が中空浮力体10、10、10に固定され、テンションが掛けられている。また他のPC鋼材28、28、…は、その端部が支柱パイプ24、24、…に固定されてテンションが掛けられている。したがって、第2の連結構造体21は高い強度が得られる。
【0020】
前記したように第1の連結構造体20は、第2の連結構造体21と同様に構成されているので説明を省略する。このような第1、第2の連結構造体20、21から連結構造体11が構成され、浮体基礎3が形成されるようになっている。このような本実施の形態に係る浮体基礎3は、次に説明する浮ドック30によって建築されるようになっている。
【0021】
<本実施の形態に係る浮ドック>
本実施の形態に係る浮ドック30は、
図5A、
図5Bに示されているように、3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…と、1個の連結用浮ドック32とから構成されている。中空浮力体用浮ドック31、31、…は鋼材からなり、上面形状が正六角形の扁平な中空体に形成されている。内部にはリブ33、33、…が形成され、強度が確保されている。連結用浮ドック32も鋼材からなり、上面形状が六角形で扁平な中空体に形成されている。しかしながら上面形状は正六角形ではなく、長い辺と短い辺とが交互に接続され、全体として正三角形の各頂点を切り落としたような六角形になっている。連結用浮ドック32にもリブ34、…が形成され強度が確保されている。
【0022】
3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…と1個の連結用浮ドック32は、海上に浮かぶようになっており、
図5Aに示されているように違いに独立させた状態にすることができる。また、
図5Bに示されているように違いに連結して1個の浮ドック30とすることもできる。これら中空浮力体用浮ドック31、31、…と連結用浮ドック32は、その高さが例えば5mに形成されており、十分な浮力を有している。したがって、次に詳しく説明するように、これらの上で本実施の形態に係る浮体基礎3(
図1参照)を建築しても、海上に浮いた状態に維持される。中空浮力体用浮ドック31、31、…と連結用浮ドック32は、図にはその機構が示されていないが、内部に海水を入れることができるようになっており、浮体基礎3の建築が完了した後で、海水を入れて沈没させることができるようになっている。
【0023】
<本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法>
本実施の形態に係る浮体基礎の建築方法を説明する。まず、中空浮力体10(
図3参照)を建築する中空浮力体建築工程を実施する。具体的には次のようにする。まず、
図6Aに示されているように、3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…を港湾の岸壁38に接岸する。接岸すると岸壁38に設けた建築用車両、建築用設備等から浮体基礎の建築ができることになる。最初に3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…の上にクレーン車40によってコンクリート製底板枠16、16を設置する。中空浮力体10の底部である。
【0024】
次に、
図6B、
図6Cに示されているように、コンクリート製底板枠16、16、…の上に3Dプリンタ41によりコンクリート製捨て枠17、17、…を形成する。コンクリート製捨て枠17、17、…が所定の高さに達したら、コンクリート製捨て枠17、17の間にコンクリートを充填する。その上に、再びコンクリート製捨て枠17、17を形成し、コンクリートを充填する。このようなコンクリート製捨て枠17、17の形成とコンクリートの充填を繰り返すと、中空浮力体10、10、…が建築される。すなわち3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…の上に、それぞれ1個ずつ中空浮力体10、10、…が建築される。
【0025】
次に浮ドック連結工程を実施する。すなわち、その上に中空浮力体10が建築されている3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…を、
図6Dに示されているように、連結用浮ドック32に連結する。つまり浮ドック30を形成する。この浮ドック連結工程では、中空浮力体10の建築時に接岸していた中空浮力体用浮ドック31、31、…について、少なくとも一部を離岸させ、タグボート等により曳航する。そして外部から曳航した連結用浮ドック32に対して連結するようにしている。
【0026】
連結構造体建築工程を実施する。まず、浮ドック30を構成している3個の中空浮力体用浮ドック31、31、…のうち、いずれか隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を接岸する。この状態が
図6Dに示されている。
図6Eに示されているように、岸壁38からクレーン車40等の建築用車両によって連結構造体11(
図1参照)を建築することになる。まず、
図6Fに示されているように、支保工44、44、…を浮ドック30に設置する。設置する支保工44、44、…は、図に示されているように岸壁38から近い範囲でよい。岸壁38から遠いと建築用車両による設置が困難になるからである。次いで、
図6Gに示されているように、支保工44、44、…の上に、連結構造体11の一部を建築する。つまり、第1の連結構造体20の一部を建築する。このとき構築する第1の連結構造体20の一部も、図に示されているように岸壁38から近い範囲でよい。
【0027】
岸壁38から近い範囲について第1の連結構造体20の一部を建築したら、接岸されている2個の中空浮力体用浮ドック31、31を離岸させ、
図6Hに示されているように浮ドック30を120度回転させる。次いで、前回接岸していた隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31とは異なる、他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸する。この状態で、
図6Iに示されているように、岸壁38から近い範囲について浮ドック30の上に新たに複数個の支保工44、44、…を設置し、連結構造体11の一部、つまり第1の連結構造体20の一部を建築する。
【0028】
岸壁38から近い範囲について第1の連結構造体20の一部の建築が完了したら、接岸されている2個の中空浮力体用浮ドック31、31を離岸させ、
図6Jに示されているように浮ドック30を120度回転させる。次いで、前回接岸していた隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31とは異なる、他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸する。この状態で、
図6Kに示されているように、岸壁38から近い範囲について浮ドック30の上に新たに複数個の支保工44、44、…を設置し、連結構造体11の一部、つまり第1の連結構造体20の一部を建築する。このとき、前記したようにPC鋼材28、28、…(
図4参照)を設けてテンションをかける。第1の連結構造体20が完成する。
【0029】
第1の連結構造体20が完成したら、図には示されていないが必要に応じて第1の連結構造体20の上に、所定の支保工を設置し、同様にして第2の連結構造体21(
図1、
図2参照)を建築する。第2の連結構造体21の建築においても、浮ドック30を構成している隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して第2の連結構造体21の一部を建築する。次いで他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して第2の連結構造体21の一部を建築する。このように、順次異なる組み合わせの隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して第2の連結構造体21の一部を建築する。そして最後にPC鋼材28、28、…(
図4参照)を設けてテンションをかける。第2の連結構造体21が完成する。すなわち、連結構造体11が完成する。これによって浮体基礎3(
図1、
図2参照)が完成する。
【0030】
浮体基礎3が完成したら、支保工44、44、…を除去する。そして
図6Lに示されているように、タグボート46、46等によって浮ドック30を曳航する。比較的水深がある海域に達したら、浮ドック30に海水を入れる。浮ドック30が沈没して本実施の形態に係る浮体基礎3が海上に浮く。つまり浮体基礎進水工程である。なお、風力発電装置4(
図1、
図2参照)については浮ドック30を離岸させる前に浮体基礎3に設置するようにしてもよいし、浮体基礎3を海上に浮かせた後で設置するようにしてもよい。沈没した浮ドック30は、内部に空気を供給することにより再浮上させることができる。再浮上させた浮ドック30によって、新しい浮体基礎3を建築することができる。
【0031】
<変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、浮体基礎3についてその形状を変形することができる。本実施の形態に係る浮体基礎3は、3個の中空浮力体10、10、…と連結構造体11とから上面形状が略正三角形に形成されている。これを二等辺三角形に形成するようにしてもよい。連結構造体11についても変形が可能である。連結構造体11は、第1、第2の連結構造体20、21から構成されており、第1、第2の連結構造体20、21のそれぞれは、12本の支柱パイプ24、24、…と60本の連結パイプ26、26、…とから構成されるように説明した。しかしながら連結構造体11の構造は、これに限定されない。3個の中空浮力体10、10、…を互いに連結するようになっていれば、どのような構造であってもよい。また本実施の形態において連結構造体11はコンクリート製である旨説明したが、鋼材等、他の材料から構成されていてもよい。
【0032】
中空浮力体10、10、…の個数を変形することもできる。つまり、4個以上のN個の中空浮力体10、10、…と、連結構造体11とから上面形状がN角形になるように浮体基礎3を形成するようにしてもよい。この場合、浮ドック30はN個の中空浮力体用浮ドック31、31、…と1個の連結用浮ドック32とから構成することになる。このような浮ドック30についても、N個の中空浮力体用浮ドック31、31、…を接岸してそれぞれの上に1個の中空浮力体10、10、…を建築するようにする。そしてN個の中空浮力体用浮ドック31、31、…と1個の連結用浮ドック32とを連結して浮ドック30を構成する。そして、浮ドック30を構成している隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して連結構造体11の一部を建築し、次いで他の隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して連結構造体11の一部を建築する。このように順次異なる組み合わせの隣り合う2個の中空浮力体用浮ドック31、31を岸壁38に接岸して連結構造体11の一部を建築し、以下繰り返して連結構造体11を完成させる。つまり浮体基礎3が建築できる。
【0033】
浮ドック30も変形が可能である。本実施の形態において浮ドック30は鋼材から形成されているように説明した。しかしながらコンクリート製であってもよいし、他の材料から形成されていてもよい。また、中空浮力体用浮ドック31は上面形状が正六角形であるように説明したが、他の形状であってもよい。連結用浮ドック32についてもその形状に限定はない。
【符号の説明】
【0034】
1 洋上風力発電設備 3 浮体基礎
4 風力発電装置 5 支柱
7a アンモニア生成装置 7b 精製水タンク
8 運搬船
10 中空浮力体 11 連結構造体
13 浮力体本体部 14 頭部
15 ヒーブプレート部 16 コンクリート製底板枠
17 コンクリート製捨て枠 18 コンクリート
20 第1の連結構造体 21 第2の連結構造体
20a、21a 上層部
20b、21b 下層部
24 支柱パイプ 26 連結パイプ
28 PC鋼材
30 浮ドック 31 中空浮力体用浮ドック
32 連結用浮ドック 38 岸壁
40 クレーン車 41 3Dプリンタ
44 支保工 46 タグボート
【要約】
【課題】低コストで容易に、洋上風力発電設備の浮体基礎を建築できる浮ドックを提供する。
【解決手段】洋上風力発電設備(1)の浮体基礎(3)は、上面から見てN角形のN個の頂点のそれぞれの位置に配置されているコンクリート製のN個の中空浮力体(10)と、これらN個の中空浮力体(10)同士を接続するコンクリート製の連結構造体(11)と、から構成する。浮ドック(30)は、N個の中空浮力体用浮ドック(31)と、1個の連結用浮ドック(32)とから構成する。N個の中空浮力体用浮ドック(31)を独立して海上に浮かべ、それぞれ1個ずつ中空浮力体(10)を建築する。その後、N個の中空浮力体用浮ドック(31)と連結用浮ドック(32)を連結して浮ドック(30)を構成する。浮ドック(30)の上で連結構造体(11)を建築する。
【選択図】
図5A