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特許7423030工具交換時自動補正機能を備えた工作機械
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  • 特許-工具交換時自動補正機能を備えた工作機械 図1
  • 特許-工具交換時自動補正機能を備えた工作機械 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】工具交換時自動補正機能を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240122BHJP
   B23Q 15/24 20060101ALI20240122BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G05B19/404 F
B23Q15/24
B23Q17/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019042145
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020144729
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】覚本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 憲治
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247264(JP,A)
【文献】特開平08-267342(JP,A)
【文献】特開平07-186006(JP,A)
【文献】特開平07-124849(JP,A)
【文献】特開平05-337787(JP,A)
【文献】特開平05-066819(JP,A)
【文献】特開昭61-146453(JP,A)
【文献】特許第2514795(JP,B2)
【文献】特公平06-049259(JP,B2)
【文献】実開平06-074254(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第00314333(EP,A2)
【文献】特開2013-255982(JP,A)
【文献】特開2004-337995(JP,A)
【文献】特開平03-176703(JP,A)
【文献】特開平02-284865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が交換されたことの検出手段と、
前記交換された工具を用いてワークを製品寸法による加工代よりも少ない加工代となる所定のねらい寸法に仮加工する加工代の選択設定手段と、
前記仮加工されたワークの仮加工寸法を自動計測する計測手段と、
前記仮加工後の実測寸法と前記ねらい寸法との寸法差の自動での検出手段と、
前記検出手段にて検出された前記寸法差が所定の閾値内であれば前記寸法差に基づいて加工プログラムを自動補正する自動補正手段とを有し、前記自動補正された加工プログラムにて実加工するものであり、前記寸法差が前記所定の閾値を超えていれば異常信号が出力されることを特徴とする工具交換時自動補正機能を備えた工作機械。
【請求項2】
前記実加工はワークの仕上加工であることを特徴とする請求項1記載の工具交換時自動補正機能を備えた工作機械。
【請求項3】
前記仕上加工の前に荒加工前加工を有し、工具交換時の前記前加工は前記仕上加工の仮加工寸法に合せて設定された前加工を行う仮前加工手段を有することを特徴とする請求項2記載の工具交換時自動補正機能を備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工等の機械加工を行うためのNC制御された工作機械に関し、特に工具を交換する際の自動補正機能に係る。
【背景技術】
【0002】
工作機械にてワークを機械加工する際に、各種切削工具等が使用されている。
これらの工具は、切削加工に繰り返し使用されることで摩耗等の理由により、新品の工具等に交換する交換作業が必要となる。
この場合に、工具交換した後の加工初品が所定の加工寸法の公差内にあるか否かの確認が必要であるために、従来は手動操作にて試加工及び加工寸法の計測確認、プログラム補正入力等を行っていた。
これでは、この間オペレーターが工作機械につかなければならず、自動生産の生産性が低下するだけでなく、複数の工作機械を担当するいわゆる多台数持ちの場合には、オペレーターへの負担が大きい。
【0003】
特許文献1には、マシニングセンター等にてボーリング加工を行う場合に、荒加工後に予め穴の内面をタッチセンサにて3点接触計測することで、ねらい寸法に対するずれを検出し、自動補正する工作機械のボーリング径補正装置を開示する。
しかし、同公報に開示する技術は、ボーリング加工に適用できても他の切削加工には適用できないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-337787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、工具交換後の加工プログラムの自動補正を可能にした工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工具交換時自動補正機能を備えた工作機械は、工具が交換されたことの検出手段と、前記交換された工具を用いてワークを所定のねらい寸法に仮加工する手段と、前記仮加工されたワークの仮加工寸法の計測手段と、前記仮加工後の実測寸法と前記ねらい寸法との寸法差の検出手段と、前記検出手段にて検出された前記寸法差に基づいて加工プログラムを自動補正する自動補正手段とを有し、前記自動補正された加工プログラムにて実加工するものであることを特徴とする。
【0007】
ここで工作機械は、旋盤,フライス盤,研削盤,複合加工機等、切削工具等を用いる工作機械をいう。
工具交換は、自動交換でも手動交換でもよい。
工具交換の検出手段は、自動検出手段のみならず、手動でON操作する場合も含まれる。
【0008】
仮加工とは、製品等に要求されている加工寸法に至る前の仮りの暫定的なねらい寸法による加工をいう。
例えば、外形加工の場合には、所定の加工公差よりも大きい外形寸法に加工することをいい、内径加工の場合には所定の加工公差よりも小さい内径寸法に仮加工することをいう。
【0009】
本発明にて実加工とは、製品に要求される所定のねらい寸法の公差内に入るように加工することをいい、仕上げ加工であってよい。
ワークを仕上げ加工する前に、荒加工,中仕上げ加工等の前加工が行われる場合もある。
そこで本発明は、仕上加工の前に荒加工等の前加工を有し、工具交換時の前記前加工は前記仕上加工の仮加工寸法に合せて設定された前加工を行う仮前加工手段を有していてもよい。
ここで、仕上加工の仮加工寸法に合せて前加工を行うとは、ねらい寸法よりも加工代を少なくした分に対応させて、前加工の加工代を少なくする趣旨である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る工作機械にあっては、工具が交換された後の初回の機械加工において、一旦ねらいの製品寸法による加工代よりも少ない加工代にて仮加工を行い、その実測値とプログラム上の仮加工寸法との差分を検出し、その差分に基づいて実行プログラムを自動補正することで、オペレーターによる手動動作での試加工及び補正が不要になるため、その分オペレーターの負担が軽減される。
また、2回目以降の機械加工は、自動補正された加工プログラムにより、通常の連続加工を行うことができるので、加工生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る工具交換後の加工の流れを示す。(a)は仮加工のステップ、(b)は仮加工寸法の計測ステップ、(c)は実加工のステップを示す。
図2】工具交換のフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る技術を適用した工作機械の例を旋削の加工にて以下説明するが、機械加工に制限はない。
【0013】
図1(a)に仮加工の状態、(b)に仮加工寸法の計測状態、(c)に実加工の状態を模式的に示し、そのフロー図を図2に示す。
ATC等にて工具が自動交換されたり、オペレーターが手動にて工具を新品等に交換すると、工具交換信号が出力される(ステップS)。
すると、仮加工指令が出力される(ステップS)。
仮加工指令が出されると、それまで連続的にワークの製品寸法に合せて実加工を実行していたプログラムに替わり、それよりも加工代の少ない仮加工プログラムが実行される。
その状態を図1(a)にて説明する。
図1(a)は、回転制御された主軸1のチャック2にワークWを把持させ、その外径を工具3にてNC制御の下に旋削加工する例を示す。
ワークに要求される製品の実加工寸法dよりも外径寸法が少し大きい仮加工寸法dに設定される。
なお、内径加工の場合には、実加工よりも少し小さい内径寸法に仮加工されることになる。
仕上加工前に荒加工を行う場合には、荒加工を行う工具の仮加工代も仮仕上加工寸法に対応させて設定される。
図2には、これを(a)仮荒加工代設定及び、(2)仮仕上加工代設定と表現した。
仮荒加工は、省略したり、さらに複数の前加工に分けてもよい。
工作機械の操作盤等に、交換される工具の種類や実加工のパターンに合せて、仮加工条件の設定画面を設けることで、予め仮加工の加工代を選択設定可能にすることもできる。
仮加工代が設定されると、仮加工が実行される(ステップS)。
仮加工が完了すると、図1(b)に示すようにスタイラス等の自動の計測手段4にて、仮加工Pの外径寸法が計測される(ステップS)。
仮加工されたPの実測寸法と、仮加工のねらい寸法Pとの差分が自動検出される(ステップS)。
この差分には、予め閾値が設定されており、この閾値内であればその差分に基づいて製品寸法である実加工のねらい寸法dになるように、実加工のプログラムが自動補正される(ステップS)。
一方、その差分が閾値を超えていれば異常信号が出力され、オペレーターに知らせる。
差分の値が閾値内であり、それに合せて実加工の加工代が自動補正されると、荒加工は元の加工代に復帰し、仕上加工は自動補正されたプログラムに基づいて実加工が実行される(ステップS)。
ワークのねらい寸法に合せて実加工が完了すると、実加工Pの外径寸法が自動計測され、所定の寸法公差内であれば次のワークからは、この仮加工のステップが省略され、実加工のプログラムに従って、連続加工が実行される。
上記、実加工後の加工寸法が所定の公差内から外れている場合には、異常信号が出力され、オペレーターに知らせることでオペレーターが対応することになる。
【符号の説明】
【0014】
1 主軸
2 チャック
3 工具
4 計測手段
仮加工
実加工(製品加工)
W ワーク
図1
図2