(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】タレット旋盤用工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 29/24 20060101AFI20240122BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20240122BHJP
B23Q 5/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B23B29/24 A
B23Q3/12 F
B23Q5/04 520Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019162058
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】102018000008378
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518006189
【氏名又は名称】エンメ.ティー.ソシエタ、ア、レスポンサビリタ、リミタータ
【氏名又は名称原語表記】M.T. S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ、マルケッティ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ、レオナルディ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19718396(DE,A1)
【文献】実開平06-080506(JP,U)
【文献】特開平07-032237(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145345(WO,A1)
【文献】実開平05-016087(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/24
B23Q 3/12
B23Q 5/04
B23Q 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御式旋盤又はターニングセンタ/ミリングセンタの回転マルチステーション工具ホルダタレット(2)に取り付けることができる回転工具ホルダ(1;101)であって、
前記タレット(2)に取り外し可能に固定でき、回転可能であり且つ前記タレット(2)の駆動装置に取り外し可能に連結できるシャフト(6)を含む支持体(5)と、
前記支持体(5)に連結された、回転軸(S)を中心として回転可能な主本体(7)とを備え、前記主本体(7)には、切削/ドリル加工工具を収容するようになった台座(3)が設けられており、前記台座(3)は、前記切削/ドリル加工工具を回転するように設計された被駆動シャフト(27)を含み、前記被駆動シャフト(27)は、前記シャフト(6)に回転駆動されるように連結されている、回転工具ホルダ(1;101)において、
前記台座(3)を所望位置に位置決めするため、前記主本体(7)を、前記シャフト(6)の回転とは別個独立して、
前記支持体(5)に関して前記回転軸(S)を中心として回転するためのモータ駆動手段を含
み、
前記モータ駆動手段は外部電気接続部とは、別個独立した給電手段から給電され、前記モータ駆動手段へ前記主本体(7)または前記支持体(5)に形成された別の台座(13)に収容された前記給電手段により給電される、工具ホルダ(1;101)。
【請求項2】
前記モータ駆動手段は、前記台座(3)を所定の角度基準位置から所定の角度距離に位置決めするため、前記主本体(7)を前記支持体(5)に関して前記回転軸(S)を中心として回転する、請求項1に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項3】
前記モータ駆動手段は、前記支持体(5)に又は前記主本体(7)に取り外し可能に固定できるサーボモータ(11)を含む、請求項1又は2に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項4】
前記サーボモータ(11)は、前記主本体(7)に又は前記支持体(5)に取り付けることができる、駆動信号を前記サーボモータ(11)に伝送する
信号伝送手段に接続可能である、請求項3に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項5】
前記信号伝送手段は、少なくとも一つの送受信モジュール(10)を含む、請求項4に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項6】
前記送受信モジュール(10)及び前記サーボモータ(11)に対して、
前記給電手段により給電され、前記給電手段は、特に、バッテリー(12)を含む、請求項5に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項7】
前記主本体(7)に又は前記支持体(5)にハウジングプレート(23)が取り外し可能に固定されており、前記ハウジングプレート(23)には、セクタギア(15)を収容するように設計された開口部(24)が設けられ、前記サーボモータ(11)には、前記セクタギア(15)と噛み合って前記主本体(7)を前記支持体(5)に関して前記回転軸(S)を中心として回転するように設計されたピニオン(14)が設けられている、請求項3乃至6のうちのいずれか一項に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項8】
前記主本体(7)には、加工廃棄物、特に切り屑、塵埃、及びクーラントが外部から入り込まないように前記開口部(24)を保護する保護手段(31)が設けられている、請求項7に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項9】
前記主本体(7)が前記支持体(5)に関して回転しないようにブロックするパーキングブレーキ(33)を含み、前記パーキングブレーキ(33)は、前記主本体(7)に取り付けられている、請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項10】
前記パーキングブレーキ(33)は、前記主本体(7)が前記支持体(5)に対してブロックされる閉鎖形体から、前記主本体(7)が前記支持体(5)に対して係合解除される開放形体まで駆動可能である、請求項9に記載の工具ホルダ(1;101)。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の工具ホルダ(1;101)を備えた工具ホルダタレット(2)において、前記工具ホルダ(1;101)のシャフト(6)を回転するための駆動装置を含み、前記駆動装置は、別の給電手段によって給電される別の駆動手段によって作動される、工具ホルダタレット(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転マルチステーションタレットを含む数値制御式旋盤又はターニングセンタ/ミリングセンタの工具ホルダタレットに取り付けることができる工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、少なくとも一つの工具位置決め軸を追加するため、工具ホルダタレットに取り付けられた工具ホルダの使用に応用できるが、これに限定されない。
【0003】
今日、旋盤は、旋盤加工、ドリル加工、中繰り、タップ加工等を行うことができる真のマシニングセンタとなっていることは、既に公知である。
【0004】
更に、数値制御式旋盤には、立体的加工空間内で移動するように駆動できる一つ又はそれ以上のモータ付き工具ホルダタレットが設けられているということは当業者に公知である。
図1を参照すると、この図には公知の種類の数値制御式旋盤が開示されている。この旋盤では、加工工具(図示せず)が取り付けられた工具ホルダタレットを、通常は加工物の回転軸である軸方向(Z軸によって示す)に沿って、通常は加工物に対して半径方向である、Z軸に対して垂直な方向(X軸によって示す)に沿って、及びZ-X軸によって形成された平面に対して垂直な方向(Y軸によって示す)に沿って移動するように駆動できる。このようにして、加工物に加工タスクを実行でき、例えば任意の位置に穴を形成できる。
【0005】
本発明の文脈では、「任意の位置で加工タスクを実行する」というのは、切り屑除去加工タスクを実行するということを意味し、例えば旋盤に取り付けられた加工物にドリル加工を実行するということを意味する。この際、形成された穴の軸は加工物の回転軸を含むZ-X平面内になく、又はZ軸と交差して0°乃至180°の角度を形成する。
【0006】
実際には、例として示す
図2A及び
図2Bを参照すると、穴Fが円筒形加工物の表面上に示してある。上述のFの軸は、周囲の所定の点に配置でき、必ずしも加工物の回転軸Zを含む平面上にない。同様に、Z-X平面上にあり且つZ軸に関して傾斜した穴Bが示してある。
【0007】
それにも関わらず、三方向に移動するように駆動できる少なくとも一つのタレットが全ての数値制御式旋盤に設けられているわけではない。これは、多くの場合、利用可能な空間が限られているためであり、高価格であるためである。
【0008】
この理由により、当業者に既に公知の一つの可能な解決策、即ち上文中の開示に対する代替策は、X軸及びZ軸(上文中に定義した)に沿って移動するように駆動できる、配向可能であり且つ工具ホルダタレットに取り付けることができる工具ホルダモジュールに関する。上述の工具ホルダモジュールは、切削工具の位置決め軸を数値制御式旋盤に追加するように調節可能である。
【0009】
これに関し、特許公開WO 2015/145345 A1には、請求項1のプレアンブルに記載の工具ホルダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【0011】
具体的には、上記特許公開には、工具ホルダタレットに取り付けることができる配向可能な工具ホルダモジュールが開示されている。上述の工具ホルダモジュールは、工具ホルダタレットに取り外し可能に固定できる支持体と、切削工具、例えばドリルチップを支持するため支持体に回転可能に連結された主本体と、主本体と支持体との間の対応する角度位置を表示するのに適したインジケータ手段とを含む。支持体は、工具ホルダタレットにねじで固定できる。工具ホルダモジュールは、工具ホルダタレットの駆動装置に取り外し可能に連結できる駆動シャフトを備えている限り、ドリルチップを回転するモータ駆動型のモジュールである。主本体は、支持体に関し、駆動シャフトの駆動軸に対して垂直な回転軸を中心として回転可能である。使用では、支持体に関する主本体の角度位置を調節するため、固定ねじを緩め、主本体を支持体に関して上述の主本体の回転軸を中心として所望角度だけ手動で回転し、固定ねじを再び締める必要がある。支持体に関する主本体の角度位置を調節することによって、Z-X平面の任意の角度位置で加工物に加工タスクを実行できる。
【0012】
それにも関わらず、支持体に関する主本体の位置を、簡単に、迅速に、且つ正確に変更することはできない。特定の場合では、実際に、工具ホルダモジュール全体をタレットから分解し、マシニングセンタの作動を中断する必要がある。主本体と支持体との間の角度位置を示すインジケータ手段によって調節が補助されるけれども、これはそれでも手作業で行われ、かくして調節に時間がかかる。
【0013】
更に、加工物のベース面の幾つかの位置に多数のドリル加工タスクを実行(例えば
図2Aに示すように二つ又はそれ以上の穴を形成)しようとする場合、支持体に関する主本体の角度位置を調節するために旋盤の作動を数回中断する必要が出てくる。上述の作業には時間がかかり、労力を必要とする。即ち機械の停止時間が長くなり、その結果、旋盤の生産性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一つの目的は、公知の種類の工具ホルダ、特に工具用の台座の位置を調節する手段を持つ工具ホルダを改良することである。
【0015】
本発明の一つの目的は、加工工具用の台座の角度位置を簡単に、迅速に、且つ正確に調節できる回転工具ホルダを提供することである。
【0016】
本発明の一つの目的は、工具ホルダの角度位置を、上述の工具ホルダに取り付けられた加工工具の駆動装置とは別個に調節することである。
【0017】
一つの利点は、工具ホルダの角度位置を、オペレータの介在なしに自動的に調節できるということである。
【0018】
一つの利点は、機械を長時間停止することなく、工具ホルダの角度位置を自動的に調節できるということである。
【0019】
一つの利点は、工具ホルダの角度位置の調節が加工工具の駆動とは別個に行われるということである。
【0020】
別の利点は、工具ホルダの角度位置の調節が別の工具の加工中にも任意の瞬間に行われるということである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的及び利点及び他の目的及び利点は、一つ又はそれ以上の請求項に記載の回転/配向可能な工具ホルダによって達成される。
【0022】
一実施例では、数値制御式旋盤又はターニングセンタ/ミリングセンタの工具ホルダタレットに取り付けることができる回転工具ホルダは、前記タレットに固定でき、回転軸を中心として回転可能であり且つ工具ホルダタレットの駆動装置に取り外し可能に連結できるシャフトを持つ支持体を含む。
【0023】
工具ホルダは、更に、前記支持体に連結された、前記支持体に関して回転軸を中心として回転可能な主本体を含んでいてもよい。
【0024】
主本体には、切り屑除去工具即ち切削/ドリル加工工具を収容するようになった台座が設けられていてもよい。
【0025】
工具ホルダは、上述の台座を、例えば所定の角度基準位置に関して所定の角度距離に位置決めするため、主本体を支持体に関して回転するように駆動可能なモータ付き駆動手段を含む。
【0026】
モータ付き駆動手段は、主本体を、上述の回転軸を中心として、前記シャフト及び電気接続部の回転とは別個に回転できる。
【0027】
本発明は、一実施例を非限定的例として例示する添付図面を参照して更によく理解され且つ実施されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、工具ホルダタレットを3つの方向に沿って移動するように駆動できる、公知の種類の数値制御式旋盤を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、加工物のベース面上での回転軸に関して任意の位置でのドリル加工タスクの一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、加工物のベース面上での回転軸に関して任意の位置でのドリル加工タスクの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明による工具ホルダの第1実施例の斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明による工具ホルダの第2実施例の斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、使用時に工具ホルダがとることができる幾つかの形体、例えば休止位置、第1角度端位置、又は第2角度端位置を示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、使用時に工具ホルダがとることができる幾つかの形体、例えば休止位置、第1角度端位置、又は第2角度端位置を示す斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、使用時に工具ホルダがとることができる幾つかの形体、例えば休止位置、第1角度端位置、又は第2角度端位置を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、数値制御式マシニングセンタの工具ホルダタレットのステーションに取り付けられた
図3A及び
図3Cの工具ホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の説明では、異なる実施例の同様のエレメントに同じ参照番号が付してある。
【0030】
図3A、
図3B、
図4A、
図4B、
図5、及び
図9を参照すると、商業的に公知の数値制御式旋盤(図示せず)の例えば10個のステーションを持つ種類の回転マルチステーションタレット2に取り付け可能な回転型工具ホルダ1の第1実施例が示してある。他の実施例では、タレットのステーションの数は10以外であってもよい。
【0031】
工具ホルダ1は、タレット2に取り付けることができ且つ関連した旋盤の全体寸法に適した寸法を備えている。
【0032】
工具ホルダ1は、上述のタレット2に固定可能な支持体5を備えていてもよい。支持体5は、平らな支持プレート4を含んでいてもよい。
【0033】
図示の実施例では、支持プレート4は、実質的に末広がりの形状を備えていてもよく、即ち、プレートの第1部分4aの幅がプレートの第2部分4bよりも狭幅であってもよい。図示していない他の実施例では、支持プレート4はこの他の任意の形状であってもよい。
【0034】
第1部分4aには、シャフト6を挿入する大きさの第1通穴19(
図5参照)が設けられていてもよい。シャフト6は、回転軸Rに沿って延びており、この回転軸を中心として回転し、工具ホルダタレット2に設けられた回転駆動シャフトのそれぞれの駆動装置(図示せず)と取り外し可能に係合するように形成された連結部分16を含む。
【0035】
シャフト6は支持プレート4に回転可能に固定されており、第1ベアリング17によって回転するように支持されている。
【0036】
使用に際し、連結部分16が駆動装置と係合したとき、シャフト6は、軸Rを中心としてタレット2の駆動装置によって回転される。
【0037】
第2部分4bは、実質的に扇形部分のような平面形状を備えていてもよい。
【0038】
更に、第2部分4bには、以下に説明するように、駆動手段のピニオン14を挿入する大きさの第2通穴20が設けられていてもよい。ピニオン14は、回転軸Rと平行な別の回転軸R’を中心として回転するようになっている。ピニオン14は、第2ベアリング30によって回転するように支持されていてもよい。
【0039】
支持体5は、更に、第2部分4bの端部に取り付けられた当接エレメント21を更に含んでいてもよい。当接エレメント21は、回転軸Rと平行な方向に延びていてもよい。当接エレメント21は、実質的に円弧部分のような平面形状を備えていてもよい。
【0040】
当接エレメント21は、支持プレート4の面に取り付けられており、例えば
図4Aに示すように支持プレート4の下面に取り付けられていてもよく、特に第2部分4bの端部と対応する位置に取り付けられていてもよい。「対応する位置」というのは、支持プレート4及び当接エレメント21が重なっているとき、第2部分4bの円形の端縁部が上述の当接エレメント21の円形の縁部と同心であるということを意味する。
【0041】
回転軸Rを参照すると、第1部分4aの下面には、実質的にこの部分4aの輪郭に沿って、支持プレート4をタレット2のステーションの支持面に取り外し可能に固定するための固定ねじ又はピンを挿入する大きさの複数の通穴が設けられている。
【0042】
第2部分4bの面の輪郭に沿って、ボックス本体22を支持体5に、特に第2部分4bの下面に取り外し可能に固定するための別の固定ねじ又はピンを挿入する大きさの複数の通穴が設けられていてもよい。
【0043】
ボックス本体は、以下に説明するように駆動手段を収容するようになっている。
【0044】
工具ホルダ1は、更に、支持体5に連結された主本体7を含んでいてもよい。主本体は、この実施例において回転軸Rと一致する軸線Sを中心として支持体5に関して回転自在であってもよい。
【0045】
実質的に箱状の主本体7は、第1エレメント7aと、例えば周知の種類の螺着手段によって上述の第1エレメント7aに固定された第2エレメント7bとを含む。
【0046】
第1エレメント7a及び第2エレメント7bは、両方とも、実質的に角柱形状を備えており、例えば矩形のベースを備えているが、ここには図示していない他の形状であってもよい。
【0047】
回転軸Sを参照すると、ハウジングプレート23が、第2エレメント7bの下面に例えば周知の種類の螺着手段によって取り外し可能に固定されてもよい。
【0048】
ハウジングプレート23は、セクタギア15を収容するようになっている。ハウジングプレート23には、以下に説明するようにピニオン14と噛み合い係合するセクタギア15を挿入する大きさの開口部24が設けられている。セクタギア15は、周知の種類の螺着手段によって上述の開口部24に固定できる。
【0049】
図示していない実施例では、上述の主本体にハウジングプレート23が設けられていない場合、主本体7aに開口部24を直接形成してもよい。
【0050】
取り付け済形体では、ハウジングプレート23は、支持体5の支持プレート4の第2部分4bの上面に当接できる。
【0051】
第2エレメント7bには、第1穴19と対応する位置に第3通穴25が設けられていてもよい。「対応する位置」というのは、第2エレメント7b及び支持プレート4が重なった場合に第1穴19の中心と第3通穴25の中心が、第2エレメント7b及び支持プレート4に垂直な直線上で整合する、即ち軸線Rに沿って整合するということを意味する。
【0052】
第3通穴25もまた、シャフト6を挿入する大きさになっている。特に上述の第3通穴25は、シャフト6の回転をサポートするのに適した第3ベアリング18を収容するのに適した直径を備えている。
【0053】
更に、ブッシュ26が設けられている。ブッシュ26は、第1ベアリング17と第3ベアリング18との間に配置されており、シャフト6の回転を更にサポートするために取り付けられている。
【0054】
上文中に開示したように、第1エレメント7aは、第2エレメント7b上に取り付けられている。
【0055】
第1エレメント7aには、加工工具(図示せず)を収容するようになった台座3が設けられている。
【0056】
この実施例では、台座3は、回転軸S(又はR)の回転と平行な方向に配向されている。台座3は、実際には、工具の連結部分(図示せず)用の駆動装置として作動する被駆動シャフト27を含む。
【0057】
使用に際し、タレット2の駆動シャフトの駆動装置によってシャフト6を回転したとき、被駆動シャフト27を周知の種類の連結手段によって回転できる。
【0058】
連結手段は、好ましくは、この例におけるように、歯車装置、即ち一方の歯車の移動により他の歯車の各々の移動を生じるように互いに噛み合うことができる複数の歯車(直歯又は斜歯の円筒歯車又はテーパ歯車)を含んでいてもよい。
【0059】
図5に示す実施例では、シャフト6に取り付けられた第1歯車が、自由回転連結シャフト28に取り付けられた第2歯車と噛み合う。第2歯車は、次いで、被駆動シャフト27に取り付けられた第3歯車と噛み合い、これを回転させる。被駆動シャフト27は、第4ベアリング29によって回転するように支持されている。
【0060】
工具ホルダ1は、更に、台座3を所望の位置に、例えば所定の基準角度位置から所定の角度距離に位置決めするため、主本体7を支持体5に関して回転するように駆動できる駆動手段を含んでいてもよい。
【0061】
駆動手段は、例えば
図4Bに示すようにボックス本体22内に配置されたサーボモータを含むモータ駆動手段であってもよい。
【0062】
ボックス本体22は、圧力手段、例えば商業的に公知の種類のコンプレッサやファンに流体連結状態で配置されていてもよい。
【0063】
圧力手段は、上述のボックス本体22に水分、塵埃、切り屑、クーラント等が入り込まないようにするため、ボックス本体22を通過する圧力流体を加えるように形成されていてもよい。
【0064】
サーボモータ11は、商業的に公知の種類であってもよく、即ち電気モータ、減速部材、出力ピニオン14、電子モジュール、及びセンサユニットを含んでいてもよい。
【0065】
サーボモータ11が駆動されたとき、センサユニットは、初期角度位置に関するピニオン14の角度位置の変化を計測できる。センサユニットは、更に、初期位置に関する角度位置の変化を位置変化信号に変換し、次いで位置変化信号を処理する電子モジュールに位置変化信号を伝送する。電子モジュールは、ピニオン14の初期角度位置を記憶するためのマイクロプロセッサを含んでいてもよい。
【0066】
第1実施例では、サーボモータ11は、主本体7に、特に第1エレメント7aに取り外し可能に取り付けることができる信号伝送手段に接続できる。
【0067】
上述の信号伝送手段は、駆動信号をサーボモータ11に伝送するように形成されている。信号伝送手段は、サーボモータ11に電気的に接続された公知の種類の少なくとも一つの送受信モジュール10を含んでいてもよい。
【0068】
送受信モジュール10は、更に、サーボモータ11と通信するように形成されている。即ち駆動開始信号を上述のサーボモータ11に伝送し、主本体7を支持体5に関して回転し、支持体5に関する主本体7の回転が完了したとき、駆動終了信号を上述のサーボモータ11から受信するように形成されている。
【0069】
第1実施例では、送受信モジュール10は、第1エレメント7aの端部分に取り付けられていてもよく、好ましくは、台座3が取り付けられている端部とは反対側の端部に取り付けられていてもよい。このようにして、上述の送受信モジュール10が、加工物の加工中に除去された切り屑/砕片との接触で欠けたり壊れたりする危険を低減する。
【0070】
駆動開始及び/又は終了信号は、送受信モジュール10によってサーボモータ11に伝送され又はその逆が行われる。これは、送受信モジュール10とサーボモータ11との間に位置決めされた、ケーブル8内に挿入された導線によって行われる。
【0071】
送受信モジュール10は、更に、Wi-Fi、NFC、又はブルートゥースネットワークによって、外部ソース、例えば数値制御式旋盤のプロセッサ/コンピュータと通信するように形成されている。
【0072】
第1実施例では、主本体7、特に第1エレメント7aには、給電手段を収容する大きさの別の台座13が設けられていてもよい。
【0073】
給電手段は、送受信モジュール10及びサーボモータ11の両方を給電するように構成されている。給電手段は、この例におけるように、商業的に公知の種類のバッテリー12を含んでいてもよい。特に、バッテリー12は、給電線によってサーボモータ11に接続されていてもよい。給電線もまたケーブル8内に配置されている。バッテリー12は、適当な寿命を持つように設計されていてもよい。
【0074】
取り付け形体では、サーボモータ11のピニオン14が、主本体7に固定されたセクタギア15と噛み合い係合できる。
【0075】
使用に際し、ピニオン14とセクタギア15との間の噛み合いにより、主本体7を支持体5に関して回転軸Sを中心として、
図6A-
図8Bに示すように休止位置と第1角度端位置との間で、及び/又は休止位置と第2角度端位置との間で回転する。
【0076】
使用に際し、外部ソースは、例えば主本体7を休止位置と第1角度端位置との間で、及び/又は休止位置と第2角度端位置との間で回転するため、無線駆動信号を送受信モジュール10に送出するように形成されていてもよい。
【0077】
バッテリー12によって給電される送受信モジュール10は、上述の無線信号を処理し、(電気的)駆動開始信号を、ケーブル8に挿入された導線によってサーボモータ11に送出する。
【0078】
特に、一連の低電圧電気パルスが導線によってサーボモータ11の電子モジュールに送出される。
【0079】
サーボモータ11は、バッテリー12によって給電されている場合、ケーブル8内に配置された給電線によって駆動できる。このようにして、電子モジュールは、サーボモータ11の出力ピニオン14を回転することによって、モータの捲線に所定順序で給電する。
【0080】
モータの捲線の給電順序を逆にすることによって、出力ピニオン14の回転方向を逆転できる。
【0081】
ピニオン14の歯はセクタギア15のそれぞれの歯と係合し、これによりセクタギア15を休止位置から所定角度量だけ回転できる。その後、主本体7が支持体5に関して回転軸S(即ちR)を中心として上述の角度量だけ回転し、上述の台座3を所定の角度基準位置に関して所定の角度距離に位置決めできる。
【0082】
支持体5に関する主本体7の回転中、第2エレメント7bのハウジングプレート23が、軌道として作用する支持プレート4の第2部分4b上で摺動する。
【0083】
上述の台座3が、とりわけ基準角度位置に関する所望の角度距離に位置決めされたとき、サーボモータ11を停止する。サーボモータ11の電子モジュールは、送受信モジュール10に駆動終了信号を送出する。上述の送受信モジュール10は、数値制御式旋盤のプロセッサ/コンピュータにフィードバック信号を(Wi-Fi、NFC、又はブルートゥースによって)送出するようになっている。
【0084】
図3A-
図4Bを参照すると、ハウジングプレート23には、加工物の加工中に支持プレート4の第2部分4bに付着する加工ゴミ、即ち塵埃、汚れ、切り屑、及び/又はクーラントが開口部24(従って、セクタギア15/ピニオン14の組み合わせ)に入り込まないようにするのに適した保護手段31が設けられている。
【0085】
保護手段31は、ハウジングプレート23を少なくとも部分的に取り囲む形状を持つスクレーパエレメント32を含んでいてもよい。例えば、スクレーパエレメント32は、環状形状又は円形クラウン部分を備えていてもよい。
【0086】
回転軸Sを参照すると、スクレーパエレメント32には、使用時に第2部分4bの上面と衝合し、切り屑や破片が外部から入り込まないようにする縁部が設けられている。
【0087】
保護手段31は、更に、シールリング(図示せず、例えば「O-リング」)を含み、これは、流体/切り屑が開口部24の内部に入り込まないようにするのに適している。O-リングは、シールリングとスクレーパエレメント32との間に隙間が形成されるように、ハウジングプレート23とスクレーパエレメント32との間に配置されていてもよい。
【0088】
隙間は、圧力手段(図示せず)、例えば商業的に公知の種類のコンプレッサやファンに流体連結されていてもよい。
【0089】
圧力手段は、隙間を通過する圧力流体を加えるように形成されていてもよく、これにより、入り込むことのある切り屑及び/又はクーラントを除去することによって上述の隙間を清浄に保つことができる。
【0090】
上述の図面に示す実施例では、工具ホルダ1には、支持体5に関する主本体7の回転を停止するのに適したパーキングブレーキ33が設けられていてもよい。
【0091】
パーキングブレーキ33は、使用時に、発生した切削力によって切削工具が所定位置から移動することがないようにする。
【0092】
パーキングブレーキ33は、主本体7の第2エレメント7bに取り付けられていてもよく、主本体7の第2エレメント7bの端部分に当接する固定ジョーと、支持体5の当接エレメント21の面に当接するようになった可動ジョーとを含むグリッパエレメントを含んでいてもよい。
【0093】
パーキングブレーキ33は、閉鎖形体から開放形体まで移動するように駆動できる。閉鎖形体という用語は、パーキングブレーキが取り付けられている場合、固定ジョーが主本体7の第2エレメント7bの端部分を係止する一方で、可動ジョーが支持体5の当接エレメント21の面に当接し、係止するということを意味する。
【0094】
開放形体という用語は、パーキングブレーキが取り付けられている場合、固定ジョーが主本体7の第2エレメント7bの端部分を係止する一方で、可動ジョーが当接エレメント21の面と係合した状態から外れ、かくして主本体7が支持体5に関して回転できるようにするということを意味する。
【0095】
パーキングブレーキは、使用前には、通常は閉鎖形体にある。
【0096】
パーキングブレーキ33は、例えば空気圧型であってもよい。換言すると、パーキングブレーキ33は、圧力手段(図示せず)、例えば商業的に公知の種類のコンプレッサやファンに流体連結した状態に置かれていてもよい。
【0097】
使用に際し、圧力手段を駆動し、パーキングブレーキ33を閉鎖形体から開放形体にできる圧力を加えてもよい。
【0098】
工具ホルダには、別の態様では、電動型又は圧電型のパーキングブレーキ33を設けられていてもよい。この場合、パーキングブレーキ33を閉鎖形体から開放形体に移動する電気エネルギを供給する給電手段、例えばバッテリー12に接続されていてもよい。
【0099】
図示していない他の実施例では、工具ホルダにパーキングブレーキが設けられていなくてもよい。この場合、伝送遅延、デコーディング遅延、及び/又は処理遅延なしで、数値制御式旋盤のプロセッサ及びサーボモータと通信する送受信モジュールを提供できる。これにより、サーボモータは、工具と加工物との間の接触により生じる可変の切削トルクに比例し且つこれとは逆の工具位置決めトルクを提供できる。このようにして、加工中、パーキングブレーキなしでも、工具の台座3が、到達した位置から誤って移動することがなくなり、及び/又は加工物によって望ましからぬ態様で取り外されることがなくなる。
【0100】
図9には、タレット2のステーションに取り付けられた形体で工具ホルダ1が示してある。上文中で言及した図面からわかるように、回転軸S(又はR)を参照すると、支持体5はタレット2に固定されており、支持プレート4の第2部分4bの下面はタレット2のステーションの支持面に当接していない。
【0101】
図3C、
図4C、及び
図9を参照すると、商業的に公知の数値制御式旋盤(図示せず)の工具ホルダタレット2に取り付けることができる回転型の工具ホルダ101の第2実施例が示してある。二つの実施例に共通のエレメントはわかっているが、この実施例では、以下の事項に留意されたい。
支持体5に関する主本体7の回転の中心となる回転軸Sが軸Rと一致しておらず、
ピニオン14は、軸Rでなく回転軸Sと平行な別の回転軸R’を中心として回転するようになっており、
台座3は、軸Rと平行な方向に配向されておらず、
送受信モジュール10を主本体7でなく支持体5に取り付けることができ、
給電手段を収容する大きさの台座13は、主本体7でなく支持体5と一体のボックスエレメント22で得られる。
【0102】
工具ホルダタレット2には、前記工具ホルダ1、101のシャフト6を回転するための駆動装置(図示せず)が設けられている。駆動装置は、別の駆動手段(図示せず)によって駆動できる。
【0103】
別の駆動手段は、別の給電手段(図示せず)によって給電できる。
【0104】
以上の開示から、取り付けられた切削/ドリル加工工具の駆動装置とは別個に角度位置を調節可能な工具ホルダを提供できるということがわかる。
【0105】
これは、外部電気接続部とは別個の給電手段によって給電される、工具ホルダの主本体を支持体に関して回転軸Sを中心として回転できるモータ駆動手段を含む工具ホルダにより可能である。
【0106】
これは、更に、寸法及び大きさが小さいにも関わらず、駆動手段、信号伝送手段、及び給電手段が装着され、所定位置に同時に存在する工具ホルダにより可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 工具ホルダ
2 タレット
3 台座
4 支持プレート
5 支持体
6 シャフト
7 主本体
10 送受信モジュール
11 サーボモータ
12 バッテリー
13 台座
14 ピニオン
15 セクタギア
23 ハウジングプレート
24 開口部
27 被駆動シャフト
31 保護手段
33 パーキングブレーキ
101 工具ホルダ