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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】吐止水装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/30 20060101AFI20240122BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B05B1/30
F16K1/44 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020005517
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021112691
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴博
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132399(JP,A)
【文献】特開2019-206995(JP,A)
【文献】特開2018-035832(JP,A)
【文献】特開2016-138641(JP,A)
【文献】特公昭47-011298(JP,B1)
【文献】特開2018-132072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-1/36
F16K 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路と、前記主流路を形成する流路形成面と、前記主流路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の下流側に位置する吐出口と、前記開閉弁を全開状態と止水状態とに切り換えうる操作部とを有しており
前記開閉弁が、上流側から下流側に向かって、前記主流路に配置され前記流路形成面に案内されて前記主流路内を弁移動方向に移動し且つ当該弁移動方向に縦列する駆動弁体及び従動弁体と、前記流路形成面に設けられた主弁座とを有しており、
前記従動弁体が、前記弁移動方向における所定の遊び距離の遊びを有しつつ、上流側に隣接する前記駆動弁体に係合して繋がっており、
前記駆動弁体が、弾性体により下流側に常時付勢されており、
前記従動弁体が、頭部と、前記頭部の上流側に位置すると共に前記駆動弁体と係合して繋がる連結係合部と、前記頭部を貫通し水が通過する弁体孔と、前記頭部を貫通する前記弁体孔の上流側の開口である入口及び下流側の開口である出口のうち、前記入口の周囲に形成された副弁座と、その中心線が前記弁体孔を通過するように前記頭部に配置され前記主弁座に当接する弁シール部材とを有しており、
前記主流路における水圧により、前記従動弁体が下流側に付勢されており、
前記駆動弁体が、頭部と、前記頭部の上流側に位置すると共に前記従動弁体の前記連結係合部と係合する被係合部と、前記被係合部の上流側に位置する駆動係合部と、この駆動弁体の内側に形成された駆動弁流路と、前記頭部に配置され前記従動弁体の前記副弁座を閉じることで前記弁体孔の前記入口を塞ぐ弁シール部材とを有しており、
前記主流路内において、前記駆動弁流路、前記弁体孔、前記各弁体と前記流路形成面との間の隙間及び前記駆動弁体と前記従動弁体との間の隙間が、前記主流路の一部としての流路を形成しており、
前記操作部が、レバーと、このレバーを押圧する度に当該レバーを止水位置と全開位置とに相互移行させるオルタネイト機構と、回動可能に固定されその第1端が前記レバーにスライド可能に係合すると共にその第2端が前記駆動弁体の前記駆動係合部に係合するリンク部材を備えたリンク機構とを有しており、
前記従動弁体において、当該従動弁体の上流側に隣接する前記駆動弁体前記弁シール部材前記副弁座に当接することで当該副弁座を閉じ且つ前記弁体孔の入口を閉じるように構成されており、前記遊び距離により前記弁体孔の開閉が可能とされており、
前記従動弁体の前記弁シール部材が前記主弁座に当接することで当該主弁座が閉じるように構成されており、
前記主弁座及び前記副弁座が開いており前記開閉弁が完全に開いている前記全開状態と、前記主弁座及び前記副弁座が閉じており前記開閉弁が完全に閉じている前記止水状態との間の相互移行において、前記主弁座が閉じており且つ前記副弁座が開いている半開状態を経由する吐止水装置。
【請求項2】
主流路と、前記主流路を形成する流路形成面と、前記主流路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の下流側に位置する吐出口と、前記開閉弁を全開状態と止水状態とに切り換えうる操作部とを有しており
前記開閉弁が、上流側から下流側に向かって、前記主流路に配置され前記流路形成面に案内されて前記主流路内を弁移動方向に移動し且つ当該弁移動方向に縦列する駆動弁体及び2つ以上の従動弁体と、前記流路形成面に設けられた主弁座とを有しており、
前記駆動弁体及び2つ以上の前記従動弁体のそれぞれが、前記弁移動方向における所定の遊び距離の遊びを有しつつ、上流側に隣接する前記弁体に係合して繋がっており、
前記駆動弁体が、弾性体により下流側に常時付勢されていると共に前記操作部の操作によって前記弁移動方向に往復移動され、2以上の前記従動弁体のうち、最も下流側に位置する従動弁体が先頭弁体であり、
前記先頭弁体以外の前記従動弁体が、頭部と、前記頭部の上流側に位置すると共に上流側に隣接する弁体の頭部と係合して繋がる連結係合部と、前記頭部を貫通し水が通過する弁体孔と、前記頭部を貫通する前記弁体孔の上流側の開口である入口及び下流側の開口である出口のうち、前記入口の周囲に形成された副弁座と、その中心線が前記弁体孔を通過するように前記頭部に配置され下流側に隣接する前記従動弁体の前記副弁座を閉じる弁シール部材とを有しており、
前記先頭体が、頭部と、前記頭部の上流側に位置すると共に上流側に隣接する弁体の頭部と係合して繋がる連結係合部と、前記頭部を貫通し水が通過する弁体孔と、前記頭部を貫通する前記弁体孔の上流側の開口である入口及び下流側の開口である出口のうち、前記入口の周囲に形成された副弁座と、その中心線が前記弁体孔を通過するように前記頭部に配置され前記主弁座を閉じる弁シール部材とを有しており、
前記主流路における水圧により、全ての前記従動弁体が下流側に付勢されており、
前記駆動弁体が、頭部と、前記頭部の上流側に位置すると共にこの駆動弁体の下流側に隣接する前記従動弁体の前記連結係合部と係合する被係合部と、前記被係合部の上流側に位置する駆動係合部と、この駆動弁体の内側に形成された駆動弁流路と、前記頭部に配置され隣接する前記従動弁体の前記副弁座を閉じることで前記弁体孔の前記入口を塞ぐ弁シール部材とを有しており、
前記主流路に配置された前記駆動弁体及び全ての前記従動弁体において、前記駆動弁流路、前記弁体孔、前記各弁体と前記流路形成面との間の隙間及び前記弁体間の隙間が、前記主流路の一部としての流路を形成しており、
前記操作部が、レバーと、このレバーを押圧する度に当該レバーを止水位置と全開位置とに相互移行させるオルタネイト機構と、回動可能に固定されその第1端が前記レバーにスライド可能に係合すると共にその第2端が前記駆動弁体の前記駆動係合部に係合するリンク部材を備えたリンク機構とを有しており、
前記従動弁体のそれぞれにおいて、当該従動弁体の上流側に隣接する前記弁体前記弁シール部材前記副弁座に当接することで当該副弁座を閉じるように構成されており、前記遊び距離により前記副弁座の開閉が可能とされており、
前記従動弁体の副弁座が上流側に隣接する前記従動弁体によって閉じられたとき、これらの従動弁体の弁体孔同士が繋がった連結流路が形成され、
前記先頭弁体の前記弁シール部材が前記主弁座に当接することで当該主弁座が閉じるように構成されており、
前記主弁座及び全ての前記副弁座が開いており前記開閉弁が完全に開いている前記全開状態と、前記主弁座及び全ての前記副弁座が閉じており前記開閉弁が完全に閉じている前記止水状態との間の相互移行において、前記主弁座が閉じており且つ前記副弁座の少なくとも1つが開いている半開状態を経由する吐止水装置。
【請求項3】
静水圧が0.75MPaである水圧条件において、前記全開状態における流量が100とされるとき、前記半開状態における流量が40以上60以下である請求項に記載の吐止水装置。
【請求項4】
前記弁体の数がNとされるとき、Nが3以上であり、
前記従動弁体の数が2以上であり、
前記開閉弁の開閉が、前記主弁座の開閉と(N-1)個の前記副弁座の開閉とのN段階であり、
静水圧が0.75MPaである水圧条件において、各段階における流量FR(n)が、流量が少ない順にFR(0)、FR(1)、FR(2)、・・・、FR(N-2)、FR(N-1)、FR(N)とされる(ただし、nは0からNまでの整数)とき、
隣接する段階間の流量差[FR(n)-FR(n-1)]が、(100/N)±20%である請求項2に記載の吐止水装置。
【請求項5】
記弁体孔のそれぞれが、前記主流路の中心線を通過させるように設けられている請求項1からのいずれか1項に記載の吐止水装置。
【請求項6】
記駆動弁体に配置された弁シール部材が第1弁シール部材とされるとき、
前記第1弁シール部材の前記弁移動方向に沿った厚みがL1とされ、前記第1弁シール部材が当接する前記副弁座の最大横断長がL2とされるとき、厚みL1が最大横断長L2よりも大きく、
前記第1弁シール部材の体積が、前記最大横断長L2を底面の直径とし且つ前記厚みL1を高さとする仮想円柱の体積Vよりも大きい請求項1からのいずれか1項に記載の吐止水装置。
【請求項7】
各従動弁体の前記弁体孔の流路断面積が、下流側の従動弁体ほど大きくされている請求項2又は4に記載の吐止水装置。
【請求項8】
前記全開状態では、水が前記弁体孔と前記弁体孔以外の流路とを流れ、
前記半開状態では、水が前記弁体孔のみを流れる請求項1に記載の吐止水装置。
【請求項9】
前記従動弁体に設けられた前記弁シール部材が、環状のシール部材である請求項1に記載の吐止水装置。
【請求項10】
前記先頭弁体以外の前記従動弁体に設けられた前記弁シール部材が、環状のシール部材であり、
前記先頭弁体に設けられた前記弁シール部材が、環状のシール部材である請求項2に記載の吐止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐水及び止水することができる吐止水装置として、例えば、散水ノズル等の散水機、洗浄ノズル等の洗浄機、シャワーヘッドなど、様々な装置が知られている。
【0003】
特許第4441023号公報は、遊嵌された環状パッキンを備えており、流量操作レバーの作動荷重を軽くすることができる散水器を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4441023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、吐止水装置において、新たな効果を奏する新構造を見いだすに至った。本開示の目的は、止水時の水撃を低減しうる吐止水装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、吐止水装置は、主流路と、前記主流路を形成する流路形成面と、前記主流路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の下流側に位置する吐出口と、前記開閉弁を全開状態と止水状態とに切り換えうる操作部とを有している。前記流路形成面が、主弁座を有している。前記開閉弁が、弁移動方向に縦列する少なくとも2つの弁体を有している。前記弁体のそれぞれが、前記弁移動方向における遊びを有しつつ、上流側に隣接する前記弁体に係合している。前記弁体が、前記操作部の操作によって前記弁移動方向に往復移動される駆動弁体と、前記駆動弁体の下流側に位置する1又は2以上の従動弁体とを含んでいる。1又は2以上の前記従動弁体が、最も下流側に位置する先頭弁体を含んでいる。前記従動弁体のそれぞれが、水が通過する弁体孔と、前記弁体孔の入口の周囲に形成された副弁座とを有している。前記主弁座及び前記副弁座のそれぞれを閉じるための弁シール部材が弁座側又は弁体側に配置されている。前記従動弁体のそれぞれにおいて、当該従動弁体の上流側に隣接する前記弁体が前記弁シール部材を介して前記副弁座に当接することで当該副弁座が閉じるように構成されている。前記先頭弁体が前記弁シール部材を介して前記主弁座に当接することで当該主弁座が閉じるように構成されている。前記全開状態と前記止水状態との間の相互移行において、前記主弁座が閉じており且つ1又は2以上の前記副弁座の少なくとも1つが開いている半開状態を経由する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、止水時の水撃が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る吐止水装置の斜視図である。
図2図2(a)は図1の吐止水装置の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A線に沿った断面図である。
図3図3図2(a)のB-B線に沿った断面図の要部を拡大した断面図である。図3では、止水状態、半開状態及び全開状態が示されている。
図4図4図2(b)の要部を拡大した断面図である。図4では、止水状態、半開状態及び全開状態が示されている。
図5図5(a)は第1実施形態に係る従動弁体(先頭弁体)の斜視図であり、図5(b)はこの従動弁体の平面図である。
図6図6(a)は第1実施形態に係る駆動弁体の斜視図であり、図6(b)はこの駆動弁体の側面図である。
図7図7(a)は第1実施形態の駆動弁体に配置されている弁シール部材(第1弁シール部材)の斜視図であり、図7(b)はこの第1弁シール部材の正面図であり、図7(c)はこの第1弁シール部材の側面図であり、図7(d)はこの第1弁シール部材の平面図である。
図8図8は、第2実施形態の吐止水装置の開閉弁部分の断面図である。
図9図9は、第2実施形態の吐止水装置の開閉弁部分の断面図である。図8図9との間で、断面の位相が90度相違する。
図10図10は第1変形例に係る開閉弁の要部を示す断面図である。
図11図11(a)から(d)は第2変形例に係る開閉弁の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
なお、特に説明しない限り、下流側は前方とも称され、上流側は後方とも称される。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る吐止水装置2の斜視図である。図2(a)は吐止水装置2の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A線に沿った断面図である。吐止水装置2は、散水用としても使用される洗浄ノズルである。吐止水装置2は、水圧を有する水供給源(例えば上水道)に接続される。例えば、吐止水装置2は、水栓に接続される。例えば、吐止水装置2は、昇圧ポンプを介して、水栓に接続される。
【0012】
吐止水装置2は、接続部4と、把持部6と、操作部8と、吐出口10とを有する。接続部4は、導入口12を有する。更に、吐止水装置2は、主流路WP1と、開閉弁V1と、流路形成面14とを有する。流路形成面14は、主流路WP1を画定している。
【0013】
典型的には、接続部4は、ホースを介して、水栓に接続される。接続部4は、ホースの端部に設けられた継手に接続されてもよい。水は、接続部4の導入口12から、吐止水装置2に導入される。主流路WP1は、導入口12から吐出口10まで延在している。開閉弁V1は、主流路WP1を開閉する。開閉弁V1が閉じられると、吐止水装置2は止水状態となる。開閉弁V1が開けられると、吐止水装置2は吐水状態となる。開閉弁V1は、操作部8の操作によって開閉される。
【0014】
主流路WP1は、流路形成面14によって形成されている。流路形成面14の内側に、主流路WP1が形成されている。本願では、流路形成面14の内側を主流路WP1と称する。
【0015】
把持部6は、円周面により構成されている。把持部6の中心線は、吐出口10からの吐水の中心線に一致している。把持部6の形状は限定されない。吐水の中心線の方向は限定されない。
【0016】
操作部8は、レバー16と、オルタネイト機構18と、リンク機構20とを有している。レバー16は、所定の範囲で回動可能な状態で支持されている。レバー16は、把持部6を把持する手で操作できる位置にある。吐止水装置2は、片手で、把持部6を把持しながら操作部8の操作をすることができる。
【0017】
操作部8を操作することで、開閉弁V1が開閉する。図1図2(a)及び図2(b)では、吐止水装置2は止水状態にあり、開閉弁V1は閉じている。レバー16を一度押圧すると、開閉弁V1が開き、吐止水装置2は吐水状態となる。更にレバー16を押圧すると、開閉弁V1は閉じる。
【0018】
図3は、レバー16近傍を示す拡大図である。図3では、止水状態x、半開状態y及び全開状態zが示されている。止水状態xでは、レバー16が止水位置にある。この止水位置は、レバー16が突出した位置である。全開状態zでは、レバー16が全開位置にある。この全開位置は、レバー16が押し込まれた位置である。半開状態yは、レバー16が前記止水位置と前記全開位置との間に位置する。半開状態yでは、レバー16が半開位置にある。
【0019】
止水位置にあるレバー16が押圧されると、レバー16は、半開位置を経由して、全開位置に移行する。全開位置にあるレバー16が押圧されると、レバー16は、半開位置を経由して、止水位置に移行する。押される度に、レバー16は、止水位置と全開位置との相互移行を繰り返す。このように、レバー16の動作は、オルタネイト動作である。
【0020】
レバー16のオルタネイト動作は、オルタネイト機構18により達成されている。本実施形態では、オルタネイト機構18として、ハート状カム方式が採用されている。なお、オルタネイト機構として、ハート状カム方式の他、回転カム方式、ラチェットカム方式など、公知の機構が採用されうる。
【0021】
オルタネイト機構18は、ハート状のカム22と、ピン24とを有する。カム22は、レバー16に固定されている。ピン24は金属製であり、棒状の部材である。ピン24は、カム22から遠い側の端部(図3における下端部)が支持された片持ち状態で固定されている。カム22に近い方の端部24a(図3における上端部)が自由端とされている。この自由端には、カム22と係合する係合部が設けられている。図示されないが、この係合部はピン24の自由端側の端部(図3における上端部)が折れ曲がることで形成されている。ピン24は、外力により曲げられると、自然状態(真っ直ぐに延びた状態)に戻ろうとする。
【0022】
図3が示すように、レバー16が止水位置から全開位置に向かうにつれて、ピン24の自由端24aがカム22に近づく。図示しないが、半開位置を通過して更に全開位置に向かう過程で、自由端24aは、カム22の第1案内面22aに当接し、更にこの第1案内面22aに誘導されて、凹部22bに至る。自由端24aが凹部22bに係合することで、レバー16は全開位置で保持されている。この状態でレバー16を押すと、自由端24aは、凹部22bを外れ、第2案内面22cに沿って動き、カム22から離れる。この結果、レバー16は止水位置に戻る。
【0023】
リンク機構20は、回動可能に固定されたリンク部材30を有する。リンク部材30の第1端30aは、レバー16に、スライド可能に係合している。この係合により、レバー16に連動してリンク部材30が回動する。リンク部材30の第2端30bは、駆動弁体D1に当接している(図2(b)参照)。リンク部材30が回動すると、第2端30bが移動し、駆動弁体D1が移動する。このように、レバー16は、リンク機構20に連動している。すなわち、レバー16は、リンク部材30及び駆動弁体D1に連動する。
【0024】
駆動弁体D1は、弾性体32により、開閉弁V1が閉じる方向に常時付勢されている(図2(b)参照)。本実施形態では、弾性体32はコイルバネである。この付勢力により、レバー16は、突出する方向に常時付勢されている。換言すれば、レバー16は、止水位置となるように常時付勢されている。リンク機構20により、突出方向に付勢されているレバー16の止水位置が維持されている。レバー16が止水位置にあるとき、開閉弁V1は閉じている。すなわち、レバー16が止水位置にあるとき、吐止水装置2は止水状態にある。レバー16が全開位置にあるとき、開閉弁V1は完全に開いている。レバー16が全開位置にあるとき、吐止水装置2は吐水状態にある。
【0025】
図4は、開閉弁V1の主要部が示された拡大断面図である。図4では、止水状態x、半開状態y及び全開状態zが示されている。止水状態xでは、レバー16は止水位置にあり、開閉弁V1は閉じている。半開状態yでは、レバー16は半開位置にあり、開閉弁V1は半開状態にある。全開状態zでは、レバー16は全開位置にあり、開閉弁V1は完全に開いている。
【0026】
開閉弁V1は、主流路WP1に配置されている。開閉弁V1は、複数の弁体B1を有する。開閉弁V1は、駆動弁体D1と、従動弁体F1とを有する。本実施形態では、弁体B1の数は2である。本実施形態では、従動弁体F1の数は1である。後述の通り、従動弁体F1の数は2以上であってもよい。
【0027】
前述の通り、駆動弁体D1は、レバー16の操作よって移動する。この移動方向が、弁移動方向とも称される。本実施形態では、弁移動方向は、前後方向である。本実施形態では、弁移動方向は、上流側と下流側とを結ぶ方向に一致している。本願では、開閉弁V1が閉じられるときの駆動弁体D1の移動方向が、閉弁方向とも称される。本実施形態では、閉弁方向は前方である。本実施形態では、閉弁方向は下流側である。また、開閉弁V1が開かれるときの駆動弁体D1の移動方向が、開弁方向とも称される。本実施形態では、開弁方向は後方である。本実施形態では、開弁方向は上流側である。レバー16を止水位置から全開位置に切り換えると、駆動弁体D1は開弁方向(図4における右側)に移動する。レバー16を全開位置から止水位置に切り換えると、駆動弁体D1は閉弁方向(図4における左側)に移動する。
【0028】
従動弁体F1は、駆動弁体D1の下流側に位置する。駆動弁体D1と従動弁体F1とは、弁移動方向に縦列している。駆動弁体D1と従動弁体F1とは、弁移動方向における遊びを有しつつ、係合している。従動弁体F1は、駆動弁体D1に対して、弁移動方向における所定距離の相対移動が許容されている。本願における遊びは、この相対移動の許容を意味する。
【0029】
駆動弁体D1は、主流路WP1に配置されている。駆動弁体D1は、弾性部材40により、主流路WP1の中央に配置されている。弾性部材40は、環状部材である。弾性部材40は、Oリングである。駆動弁体D1は、主流路WP1内をスライド移動する。このスライド移動では、弾性部材40が流路形成面14に対して摺動する。この弾性部材40により、流路形成面14と駆動弁体D1との間の流路は塞がれているが、駆動弁体D1の内側に駆動弁流路WP2が形成されている。
【0030】
複数の弁体B1のそれぞれは、開閉弁V1の開閉に係る弁シール部材を有している。弁シール部材42が、駆動弁体D1に配置されている。弁シール部材44が、従動弁体F1に配置されている。本実施形態では、弁シール部材42は、略円柱状の部材である。従動弁体F1における弁シール部材44の位置は限定されない。本実施形態では、弁シール部材44は環状シール部材(Oリング)である。本実施形態では、弁シール部材42は、駆動弁体D1の下流側の端面を構成している。駆動弁体D1における弁シール部材42の位置は限定されない。弁シール部材42は、第1弁シール部材とも称される。
【0031】
従動弁体F1は、最も下流側に位置する先頭弁体H1を含む。本実施形態では、従動弁体F1の数が1であり、従動弁体F1が先頭弁体H1である。
【0032】
図5(a)は従動弁体F1(先頭弁体H1)の本体50の斜視図であり、図5(b)は従動弁体F1(先頭弁体H1)の本体50の平面図である。
【0033】
従動弁体F1(本体50)は、頭部52と、連結係合部54とを有する。頭部52は、従動弁体F1(本体50)の前方の端部を構成している。連結係合部54は、頭部52の後方に位置する。頭部52は、弁シール部材44が配置されるシール配置部56を有する。シール配置部56は、円に沿って延びる溝である。連結係合部54は、頭部52から後方に向かって延びている。連結係合部54は、左右対称な形状を有する。
【0034】
連結係合部54は、第1延在部58と第2延在部60とを有する。第1延在部58は、後方に延びる主部58aと、主部58aの後端から曲がって延びる曲がり部58bとを有する。第2延在部60は、後方に延びる主部60aと、主部60aの後端から曲がって延びる曲がり部60bとを有する。
【0035】
主部58aと主部60aとは互いに平行である。主部58aと主部60aとの間に隙間G1が形成されている。曲がり部58bは、第2延在部60側に延びている。曲がり部60bは、第1延在部58側に延びている。曲がり部58bと曲がり部60bとの間に隙間G2が形成されている。
【0036】
従動弁体F1(本体50)は、水が通過する弁体孔WP3と、弁座s1とを有する。後述される他の弁座と区別する観点から、弁座s1は副弁座とも称される。本実施形態では、弁体孔WP3の断面形状は円形である。弁体孔WP3の断面形状は限定されない。
【0037】
弁体孔WP3は、従動弁体F1(頭部52)を貫通している。弁体孔WP3は、弁シール部材44の内側を通っている。弁体孔WP3は入口k11と出口k12とを有する。弁体孔WP3の上流側(後方)の開口が入口k11である。弁体孔WP3の下流側(前方)の開口が出口k12である。
【0038】
出口k12は、入口k11の下流側に位置する。弁体孔WP3は、上流から下流へと延びている。弁体孔WP3は、弁移動方向に延びている。弁体孔WP3は、前後方向に延びている。弁体孔WP3は、従動弁体F1の前方と隙間G1との間に延びている。図4の全開状態が示すように、頭部52の中心線CL1は、弁体孔WP3を通過している。シール溝56に装着されている弁シール部材44の中心線CL2は、弁体孔WP3を通過している。弁シール部材44の中心線CL2は、弁体孔WP3の中心線CL3に一致している。主流路WP1の中心線CL4は、弁体孔WP3を通過している。主流路WP1の中心線CL4は、弁体孔WP3の中心線CL5に一致している。
【0039】
なお、本願において中心線とは、弁移動方向に垂直な平面による断面における図心の集合と定義されうる。例えば主流路WP1は、弁移動方向に対して垂直な平面による無数の断面を有する。これらの断面のそれぞれにおいて、断面の輪郭図形の図心が決定される。この図心の集合が、中心線とみなされうる。本実施形態の主流路WP1及び弁体孔WP3のように円筒形状であれば中心線は明らかであるが、そのような形状でない場合でも、中心線が定義されうる。
【0040】
副弁座s1は、入口k11の周囲に形成されている。副弁座s1は、頭部52の後面に形成されている。副弁座s1は、円環面である。副弁座s1は、円環状の突起部の端面に形成されている(図5(b)及び図4参照)。
【0041】
図4が示すように、流路形成面14は、弁座s2を有する。前述の副弁座s1と区別する観点から、弁座s2は、主弁座とも称される。主弁座s2は、流路形成面14に設けられている。
【0042】
全ての弁体B1は、主流路WP1に配置されている。換言すれば、従動弁体F1及び駆動弁体D1は、主流路WP1に配置されている。弁体B1は、流路形成面14に案内されて、主流路WP1内を弁移動方向に移動する。
【0043】
主弁座s2は、従動弁体F1(先頭弁体H1)の弁シール部材44が当接する位置に設けられている。従動弁体F1(先頭弁体H1)が閉弁方向(前方)に移動したとき、弁シール部材44が主弁座s2に当接する。図4が示すように、本実施形態では、主弁座s2は、流路形成面14の断面直径が下流側に向かって小さくなることで形成された円環状の凸部に形成されている。主弁座s2の形態は限定されず、例えば主弁座s2は、流路形成面14の断面直径が下流側に向かって徐々に小さくなることで形成された斜面(円錐凹面)であってもよい。
【0044】
図6(a)は駆動弁体D1の本体70の斜視図であり、図6(b)は駆動弁体D1の本体70の平面図である。
【0045】
本体70は、頭部72と、被係合部74と、駆動係合部76とを有する。頭部72は、本体70の前方の端部を構成している。被係合部74は、頭部72の後方に位置する。駆動係合部76は、頭部72の後方に位置する。駆動係合部76は、被係合部74の後方に位置する。頭部72は、弁シール部材42が配置されるシール配置部78を有する。
【0046】
シール配置部78は、弁シール部材42が保持され且つ固定されるシール保持面80を有する。シール保持面80は、弁シール部材42の外形に略対応した形状を呈している。シール配置部78は、弁シール部材42と係合するシール係合部78aを有する(図4参照)。シール係合部78aは凸部である。シール係合部78aは、弁シール部材42との凹凸係合により、弁シール部材42を効果的に固定している。シール配置部78の前方は開放されている。弁シール部材42は、駆動弁体D1の前端面を構成している。
【0047】
前述の通り、本体70の内部には駆動弁流路WP2が形成されている。駆動弁流路WP2は、本体70を貫通している(図2(b)参照)。
【0048】
被係合部74は、係合当接面74aと、スライド部74bとを有している。スライド部74bの前端の位置に、係合当接面74aが形成されている。係合当接面74aは、上流側(後方)を向いた面である。
【0049】
駆動係合部76は、駆動当接面76aを有する。駆動当接面76aは、前方を向いた面である。駆動当接面76aは、円環面である。駆動当接面76aに、前述したリンク部材30の第2端30bが当接する。駆動当接面76aが第2端30bに押されることで、駆動弁体D1は後方(上流側)に移動する。
【0050】
本体70は、付勢押圧面82を有する。付勢押圧面82は、後方を向いた面である。付勢押圧面82は、円環面である。前述した弾性体32の前端が、付勢押圧面82に当接している。駆動弁体D1の位置に関わらず、弾性体32は付勢押圧面82を前方に押圧している。駆動弁体D1は、常に、前方に付勢されている。
【0051】
本体70は、環状部材配置部84を有する。被規制係合部84は、円に沿って延びる溝である。本体70は、2つの被規制係合部84を有する。被規制係合部84のそれぞれに、前述の弾性部材40が配置される。
【0052】
図7(a)は弁シール部材42の斜視図であり、図7(b)は弁シール部材42の正面図であり、図7(c)は弁シール部材42の側面図であり、図7(d)は弁シール部材42の平面図である。
【0053】
弁シール部材42は、固定係合部42aと、前方部42bと、後方部42cと、前端面42dとを有する。固定係合部42aは、シール係合部78aと係合している(図4参照)。本実施形態では、固定係合部42aは凹部である。前方部42bは、固定係合部42aの前方に位置する。後方部42cは固定係合部42aの後方に位置する。図4が示すように、駆動弁体D1において、前端面42dは露出している。前端面42dは、駆動弁体D1の前端面を構成している。前端面42dは、弁移動方向に対して垂直な平面である。
【0054】
開閉弁V1では、弁体B1のそれぞれが、弁移動方向における遊びを有しつつ、上流側に隣接する弁体B1に係合している。本実施形態では、従動弁体F1(先頭弁体H1)が、弁移動方向における遊びを有しつつ、上流側に隣接する駆動弁体D1に係合している。換言すれば、従動弁体F1(先頭弁体H1)は、弁移動方向における所定距離の相対移動が可能な状態で、駆動弁体D1に係合している。
【0055】
図4において両矢印PLで示されるのは、弁移動方向における遊び距離である。互いに隣接する弁体B1(従動弁体F1と駆動弁体D1)とは、この遊び距離PLの相対移動が可能な状態で係合している。駆動弁体D1に対して従動弁体F1が最も閉弁方向(下流側)に移動すると、連結係合部54(曲がり部58b、60b)が被係合部74の係合当接面74aに当接する(図4の半開状態及び全開状態を参照)。連結係合部54と係合当接面74aとの係合は、連動係合とも称される。駆動弁体D1に対して従動弁体F1が最も開弁方向(上流側)に移動すると、弁シール部材42(前端面42d)によって副弁座s1が塞がれる(図4の止水状態を参照)。
【0056】
図4が示すように、遊び距離PLは、止水状態から連結係合が発現するまでにおける、駆動弁体D1と従動弁体F1との間の相対移動距離である。遊び距離PLは弁移動方向に沿って測定される。
【0057】
遊び距離PLは、副弁座s1の開閉を可能とする。遊び距離PLは、副弁座s1と弁シール部材42との当接による弁体孔WP3の閉鎖を可能とし、且つ、副弁座s1からの弁シール部材42の離間による弁体孔WP3の開放とを可能にする。
【0058】
図4において両矢印STで示されるのは、駆動弁体D1のストロークである。ストロークSTは、止水状態と全開状態との間の、駆動弁体D1の移動距離である。ストロークSTは弁移動方向に沿って測定される。
【0059】
前述の通り、全ての弁体B1は、主流路WP1に配置されている。駆動弁体D1の駆動弁流路WP2は流路として機能し、弁体孔WP3も流路として機能する。各弁体B1と流路形成面14との間の隙間及び弁体B1間の隙間も流路として機能する。これらの流路は、主流路WP1内に形成された流路であり、主流路WP1の一部である。主流路WP1での流量は、これらの隙間及び弁体孔WP3に影響される。
【0060】
[開閉弁V1の動き]
以下、図4を参照して、開閉弁V1の動きが説明される。なお、本願では、弁体B1同士が当接して係合することが係合当接とも称される。本実施形態では、連結係合部54が被係合部74(係合当接面74a)に当接することが、係合当接である。
【0061】
操作部8(レバー16)の操作により、止水状態から全開状態への切替、及び、全開状態から止水状態への切替がなされる。これらの切替において、半開状態が経由される。
【0062】
止水状態では、主弁座s2及び副弁座s1が閉じている。止水状態では、駆動弁体D1は、その可動範囲において最も前方(下流側)に位置する。止水状態では、駆動弁体D1の弁シール部材42が副弁座s1に当接し、且つ、従動弁体F1(先頭弁体H1)の弁シール部材44が主弁座s2に当接する。主弁座s2及び副弁座s1が閉じることで、主流路WP1は完全に閉じられる。主弁座s2及び副弁座s1が閉じることで、開閉弁V1は閉じられる。
【0063】
半開状態では、駆動弁体D1の位置は、止水状態よりも後方(上流側)であって、全開状態よりも前方(下流側)である。半開状態では、主弁座s2に対する弁シール部材44の当接が維持されたまま、弁シール部材42が副弁座s1から離れる。なお図4で示される半開状態は、半開状態における駆動弁体D1の移動範囲のうち、最も後方(上流側)に位置する状態である。半開状態における駆動弁体D1の移動距離は、遊び距離PLである。このように、半開状態では、副弁座s1は開いているが、主弁座s2は閉じている。半開状態における流量は、全開状態における流量よりも少ない。
【0064】
半開状態では、水は弁体孔WP3のみを流れる。全開状態では、水は、弁体孔WP3と、弁体孔WP3以外の流路とを流れる。本実施形態では、この弁体孔WP3以外の流路は、弁体孔WP3の外側に位置する。この弁体孔WP3の外側の流路が、外側流路とも称される。図4の(a)が示すように、第1実施形態では、外側流路WP5は、従動弁体F1と流路形成面14との間に形成される。主弁座s2が閉じられることで、この外側流路WP5の流れが止まる。
【0065】
半開状態では、上記係合当接が解除されている。半開状態では、従動弁体F1(先頭弁体H1)は、弁開閉方向において、駆動弁体D1に拘束されていない。一方、水圧によって、従動弁体F1は、下流側(前方)に付勢されている。このため、半開状態では、弁シール部材44が主弁座s2に当接している。
【0066】
全開状態では、上記係合当接が発動する。この係合当接により、弁シール部材44は、駆動弁体D1に引っ張られて、上流側(後方)に移動する。全開状態では、弁シール部材44が主弁座s2から離れる。水圧によって従動弁体F1は下流側に付勢されているので、全開状態では、弁シール部材42が副弁座s1から離れた状態は維持される。このように、全開状態では、副弁座s1及び主弁座s2が開いている。
【0067】
[作用効果]
一般に、開閉弁を閉じるときに、水撃が生じる。また、開閉弁を開くときに、反動が生ずる。これに対して、吐止水装置2では、開閉弁V1が多段階(2段階)で開く。且つ、吐止水装置2では、開閉弁V1が多段階(2段階)で閉じる。よって、開閉弁を閉じるときの水撃が抑制され、且つ、開閉弁を開くときの反動が抑制される。
【0068】
従動弁体F1に弁体孔WP3を設け、この弁体孔WP3を開閉することで、半開状態における流量を容易に設定することができる。半開状態における流量を適切に設定することで、流量の変化率を効果的に低下させることができる。よって、水撃及び反動が効果的に抑制される。
【0069】
弁体孔WP3は、従動弁体F1(頭部52)の中央に設けられている。弁体孔WP3は、主流路WP1の中央に位置する。弁体孔WP3による中央の水流は、周囲の水流を巻き込み、整流効果が生じる。この結果、圧力損失が抑制され、流量が増加する。更に、弁体孔WP3における流量の設定自由度を高めることができ、全開状態の流量に対する半開状態の流量の割合を適切に設定することが容易となる。よって、流量の変化率を効果的に低下させることができる。
【0070】
パッキンが摺動する構造では、摩擦抵抗が大きくなり、且つ、長期間の使用による固着で摺動性が低下しやすい。パッキンではなく従動弁体F1が動く構造では、摺動性が高まり、長期間の使用においても機能が維持される。
【0071】
[第2実施形態]
図8及び図9は、第2実施形態の吐止水装置の、開閉弁近傍における断面図である。図8図9とでは、断面の位相が90°相違する。開閉弁の構造を除き、第2実施形態の吐止水装置は、第1実施形態の吐止水装置2と同じである。
【0072】
図8及び図9では、止水状態a、半開状態b~e及び全開状態fが示されている。止水状態aでは、レバーは止水位置にあり、開閉弁V2は閉じている。半開状態b~eでは、レバーは半開位置にあり、開閉弁V2は半開状態にある。全開状態fでは、レバーは全開位置にあり、開閉弁V2は完全に開いている。
【0073】
開閉弁V2は、主流路WP1に配置されている。開閉弁V2は、複数の弁体B2を有する。開閉弁V2は、駆動弁体D2と、従動弁体F2とを有する。本実施形態では、弁体B2の数は5である。本実施形態では、従動弁体F2の数が複数(2以上)である。本実施形態では、従動弁体F2の数が4である。
【0074】
駆動弁体D2は、レバーの操作よって移動する。この移動方向が、弁移動方向とも称される。本実施形態でも、弁移動方向は前後方向である。閉弁方向は前方であり、下流側である。開弁方向は後方であり、上流側である。レバーを止水位置から全開位置に切り換えると、駆動弁体D2は開弁方向(図8、9における右側)に移動する。レバーを全開位置から止水位置に切り換えると、駆動弁体D2は閉弁方向に移動する。
【0075】
複数の従動弁体F2は、駆動弁体D2の下流側に位置する。駆動弁体D2と複数の従動弁体F1とは、弁移動方向に縦列している。弁体B2同士は、弁移動方向における遊びを有しつつ、係合している。全ての弁体B2が、弁移動方向における遊びを有しつつ係合して繋がっている。隣接する弁体B2同士の間で、弁移動方向における所定距離の相対移動が許容されている。
【0076】
従動弁体F2は、最も下流側に位置する先頭弁体H2を含む。本実施形態では、従動弁体F2の数が複数(4つ)であり、これら従動弁体F2のうち最も下流側に位置するのが先頭弁体H2である。
【0077】
本実施形態の弁体B2は、先頭弁体H2でない従動弁体F2を含む。本実施形態の弁体B2は、先頭弁体H2と駆動弁体D2との間に位置する従動弁体F2を含む。先頭弁体H2と駆動弁体D2との間に位置する従動弁体F2は、中間弁体M2とも称される。本実施形態の通り、少なくとも1つの中間弁体M2が設けられてもよい。本実施形態では、中間弁体M2の数は3である。
【0078】
複数の弁体B2のそれぞれは、開閉弁V2の開閉に係る弁シール部材を有している。駆動弁体D2に、弁シール部材92が配置されている。弁シール部材92は、駆動弁体D2の下流側の端部に位置する。従動弁体F2のそれぞれに、弁シール部材94が配置されている。弁シール部材94は、従動弁体F2の下流側の端部に位置する。弁シール部材92及び弁シール部材94は、環状のシール部材である。
【0079】
図8及び図9の全開状態が示すように、駆動弁体D2は、被係合部96を有する。中間弁体M2のぞれぞれは、被係合部98と、連結係合部100とを有する。被係合部96,98のそれぞれは、係合当接面を有している。先頭弁体H2は、連結係合部102を有する。最も上流側の中間弁体M2の連結係合部100が、被係合部96に係合している。互いに隣接する中間弁体M2同士の間では、下流側の中間弁体M2の連結係合部100が、上流側の中間弁体M2の被係合部98に係合している。先頭弁体H2の連結係合部102は、最も下流側の中間弁体M2の被係合部98と係合している。
【0080】
従動弁体F2のそれぞれは、水が通過する弁体孔WP3と、副弁座s1とを有する。弁体孔WP3は、従動弁体F2を貫通している。弁体孔WP3は、従動弁体F2を弁移動方向に貫通している。弁体孔WP3は、入口と出口とを有する。弁体孔WP3の上流側(後方)の開口が入口である。弁体孔WP3の下流側(前方)の開口が出口である。
【0081】
副弁座s1は、弁体孔WP3の入口の周囲に形成されている。副弁座s1は、円環面である。副弁座s1は、円環状の突起部の端面に形成されている。流路形成面104は、主弁座s2を有する。主弁座s2は、先頭弁体H2の弁シール部材94が当接しうる位置に設けられている。主弁座s2は、流路形成面104の断面直径が下流側に向かって徐々に小さくなることで形成された斜面(円錐凹面)である。この主弁座s2の形状は、先頭弁体H2の弁シール部材94が下流側に押し込まれるほど、弁シール部材94との密着性を高める。この主弁座s2は、シール性を高める。
【0082】
[開閉弁V2の動き]
開閉弁V2では、従動弁体F2の数が多いため、より多段階の開閉動作がなされる。
【0083】
操作部(レバー)の操作により、止水状態から全開状態への切替、及び、全開状態から止水状態への切替がなされる。これらの切替において、半開状態が経由される。
【0084】
止水状態では、駆動弁体D2は、その可動範囲において最も前方(下流側)に位置する。止水状態では、駆動弁体D2の弁シール部材92が、最も上流側に位置する従動弁体F2の副弁座s1に当接する。加えて、止水状態では、全ての副弁座s1が上流側に隣接する弁体B2の弁シール部材に当接する。加えて、止水状態では、先頭弁体H2の弁シール部材94が主弁座s2に当接する。全ての弁座が閉じることで、主流路WP1は完全に閉じられる。主弁座s2及び全ての副弁座s1が閉じることで、開閉弁V2は閉じられる。
【0085】
半開状態では、駆動弁体D2の位置は、止水状態よりも後方(上流側)であって、全開状態よりも前方(下流側)である。複数の従動弁体F2に起因して、半開状態が複数段階となる。半開状態における段階の数は、従動弁体F2の数と同じである。図8及び図9に示されるように、本実施形態では、半開状態が4段階である。図8及び図9に示されるように、半開状態が、半開1、半開2、半開3及び半開4に区別される。開閉弁V2全体の開閉動作は、弁体B2の数と同じく、5段階となる。
【0086】
止水状態では、全ての副弁座s1と主弁座s2とが閉じている。半開1では、最も上流側の従動弁体F2における副弁座s1が開いており、他の副弁座s1及び主弁座s2は閉じている。半開2では、上流側から2番目までの従動弁体F2において副弁座s1が開いており、他の副弁座s1及び主弁座s2は閉じている。半開3では、上流側から3番目までの従動弁体F2において副弁座s1が開いており、他の副弁座s1及び主弁座s2は閉じている。半開4では、全ての従動弁体F2において副弁座s1が開いており、主弁座s2は閉じている。全開状態では、全ての副弁座s1と主弁座s2とが開いている。
【0087】
止水状態から全開状態への切替では、止水状態から半開状態を経て全開状態に移行し、この半開状態が複数段階となる。止水状態では、全ての隣接する弁体B2間において、係合当接は解除されている。水圧により全ての従動弁体F2は下流側に付勢されている。このため、係合当接は、上流側から下流側の順で起こる。止水状態から全開状態への切替では、上流側から下流側の順で副弁座s1が開き、最後に主弁座s2が開く。この動きは、図8及び図9において上から下へ向かう動きである。止水状態から全開状態への切替では、止水、半開1、半開2、半開3、半開4、全開、の順で開閉弁V2が動く。
【0088】
全開状態から止水状態への切替では、全開状態から半開状態を経て止水状態に移行し、この半開状態が複数段階となる。上述の通り、水圧により全ての従動弁体F2は下流側に付勢されている。このため、係合当接の解除は、下流側から上流側の順で起こる。全開状態から止水状態への切替では、先ず主弁座s2が閉じ、次いで下流側から上流側の順で副弁座s1が閉じる。この動きは、図8及び図9において下から上へ向かう動きである。全開状態から止水状態への切替では、全開、半開4、半開3、半開2、半開1、止水、の順で開閉弁V2が動く。
【0089】
上述の通り、全ての従動弁体F1は弁移動方向に縦列している。全ての弁シール部材94の中心線は、一本の直線上に位置する。従動弁体F1のそれぞれにおいて、弁シール部材94の中心線は、従動弁体F1の弁体孔WP3を通過している。従動弁体F1のそれぞれにおいて、弁シール部材94の中心線は、弁体孔WP3の中心線に一致している。従動弁体F1の副弁座s1が隣の従動弁体F1によって閉じられたとき、この副弁座s1の内側に位置する隙間を介して弁体孔WP3同士が繋がる。このように、副弁座s1が閉じられることで、弁体孔WP3同士により連結流路が形成される。止水状態では、全ての弁体孔WP3により連結流路WP4が形成される。主流路WP1の中心線は、連結流路WP4を通過している。主流路WP1の中心線は、連結流路WP4の中心線に一致している。
【0090】
[作用効果]
開閉弁V2では、従動弁体F2が複数とされているため、開閉弁V2の開閉時の段階数が多くなる。弁体B2の数をNとすると、開閉時の段階数がNとなる。開閉弁V2では、弁体B2の数が5であるため、開閉弁V2が開く動作は5段階であり、開閉弁V2が閉じる動作も5段階である。段階数を増やすことで、各弁座を閉じるときの当該弁座における流量変化を小さくすることができる。よって、開閉弁を閉じるときの水撃を抑制する効果が更に高まる。開閉弁を開くときの反動を抑制する効果も更に高まる。
【0091】
従動弁体F1のそれぞれに弁体孔WP3を設けることで、半開状態における流量を容易に設定することができる。また、各弁体孔WP3の断面積を設定することで、半開状態の各段階における流量を適切に設定することができ、流量の変化率を効果的に低下させることができる。よって、水撃及び反動が効果的に抑制される。
【0092】
弁体孔WP3は、各従動弁体F1の中央に設けられている。各弁体孔WP3は、主流路WP1の中央に位置する。複数の弁体孔WP3により形成された連結流路WP4は、主流路WP1の中央に位置する。中央の水流は、周囲の水流を巻き込み、整流効果が生じる。この結果、圧力損失が抑制され、流量が増加する。更に、各弁体孔WP3を閉じたときの流量の減少が大きくなり、副弁座s1の開閉に伴う流量の変化量を容易に設定することができる。よって、各段階における流量の変化率を適切に設定することができる。
【0093】
[変形例]
図10は第1変形例の要部断面図である。図10は全開状態を示している。この変形例では、先頭弁体H2に、弁シール部材94が配置されている。この弁シール部材94は、主弁座s2に当接する当接面94aを有する。主弁座s2は、斜面を構成している。主弁座s2は、流路形成面104の断面直径が下流側に向かって徐々に小さくなることで形成されている。主弁座s2は、円錐凹面である。当接面94aは、斜面である。この斜面の傾斜角度は、主弁座s2と同じである。当接面94aは、その直径が下流側に向かって徐々に小さくなることで形成されている。当接面94aは円錐凸面である。当接面94aと主弁座s2とが同じ方向に傾斜している。止水状態では、当接面94aが主弁座s2に面接触する。当接面94aが主弁座s2に接触する直前に、細い隙間流路が形成される。当接面94aが主弁座s2に接触する前から流量が絞られるため、これらが接触した瞬間における流量の変化率が低減する。この結果、水撃が低減する。図10は第2実施形態の弁シール部材94を変形した例であるが、この構造は第1実施形態等の他の弁にも適用されうる。また、副弁座s1にもこの構造が適用されうる。
【0094】
図11(a)から(d)は第2変形例の要部断面図である。図11(a)及び図11(b)は、第2変形例の主流路WP1(流路形成面14)を示す。図11(a)と図11(b)とでは、断面の位相が90度相違する。図11(c)及び図11(d)は止水状態における第2変形例の断面図である。図11(c)は図11(a)と同じ位相での断面図であり、図11(d)は図11(b)と同じ位相での断面図である。この変形例では、先頭弁体H1に弁シール部材144が配置されており、駆動弁体D1に弁シール部材142が配置されている。各弁体及び各弁シール部材の動きは、第1実施形態と同じである。
【0095】
流路形成面114に、凹部116が形成されている。凹部116は、流路形成面114の周方向における複数箇所に設けられている。各凹部116は、主弁座s2よりも上流側から、主弁座s2の途中までの領域に形成されている。各凹部116は、略三角形状を有する。各凹部116は、上流から下流に向かって幅が変化する部分を有している。各凹部116は、上流から下流に向かって幅が徐々に広くなる部分を有している。この幅が徐々に広くなる部分が、主弁座s2にまで延びている。
【0096】
図11(c)及び図11(d)が示すように、止水状態では、弁シール部材144はその全周において主弁座s2と密着する。弁シール部材144が主弁座s2に向かう過程では、弁シール部材144は上流側から凹部116に当接し、凹部116の上をスライドしながら止水位置にまで移動する。凹部116の底面には弁シール部材144が密着しにくい。このため、弁シール部材144が止水位置に移動するまでに、水が凹部116のみを通過する状態が生ずる。また、凹部116の幅が広くなるほど、弁シール部材144が凹部116に入り込みやすくなる。このため、弁シール部材144が止水位置に近づくにつれて、凹部116の底面と弁シール部材144との接触面積が徐々に増加し、凹部116での通水量が徐々に減少する。この凹部116により、止水状態に至る過程において流量が徐々に減少する。凹部116は、流量の変化率を低減するのに寄与する。
【0097】
図11(a)から(d)の実施形態は第1実施形態に近いが、この構造は第1実施形態、第2実施形態をはじめとする他の弁にも適用されうる。
【0098】
[弁シール部材の位置]
上記第1、第2実施形態では、弁体のそれぞれが弁シール部材を有している。すなわち、上記第1、第2実施形態では、弁シール部材は、弁体側に配置されている。当然ながら、弁シール部材は、弁座側に配置されていてもよい。すなわち、弁シール部材が弁座を構成していてもよい。
【0099】
上記第1、第2実施形態では、主弁座s2は、先頭弁体が有する弁シール部材が当接することによって閉じられる。主弁座s2を閉じる弁シール部材は、主弁座s2の側に配置されてもよい。すなわち、主弁座s2を閉じる弁シール部材は、流路形成面14に配置されて当該主弁座s2を形成していてもよい。先頭弁体が弁シール部材を介して主弁座に当接することで当該主弁座が閉じるように構成されていればよい。
【0100】
上記第1、第2実施形態では、副弁座s1は、上流側に隣接する弁体に設けられた弁シール部材が当接することによって閉じられる。副弁座s1を閉じる弁シール部材は、当該副弁座s1の側に配置されてもよい。すなわち、副弁座s1を閉じる弁シール部材が当該副弁座s1を形成していてもよい。従動弁体のそれぞれにおいて、当該従動弁体の上流側に隣接する弁体が弁シール部材を介して副弁座に当接することで当該副弁座が閉じるように構成されていればよい。
【0101】
[水撃及び反動の低減効果]
上述の通り、閉弁が複数段階となることで、水撃が低減される。また、開弁が複数段階となることで、反動が低減される。以下、これらの効果を代表して水撃低減効果が説明されるが、反動低減効果についても同様に説明されうる。
【0102】
水撃の大きさは、運動量(エネルギー)の変化率で表される。すなわち、水撃は、運動量の変化を、当該変化に要する時間で除することで表される。
水撃=(運動量の変化)/(変化に要する時間)
【0103】
よって、水撃を小さくする方法としては、運動量の変化を小さくすること、及び、変化に要する時間を長くすることが挙げられる。弁シールが弁座に接触して弁が閉じるのに要する時間は一瞬である。すなわち、変化に要する時間は一瞬である。第1及び第2実施形態では、上記計算式における分子、すなわち、運動量の変化が小さくされている。弁の開閉を複数段階とすることで、流量の変化を複数段階に分散することができ、運動量の変化率が効果的に低減される。
【0104】
第1実施形態のように、弁の開閉が2段階である場合、運動量の変化を2段階に分散することができる。第2実施形態のように、弁の開閉が5段階である場合、運動量の変化を5段階に分散することができる。これらの実施形態から容易に理解できるように、弁の開閉がN段階である場合、運動量の変化をN段階に分散することができる。ただし、Nは2以上の整数である。弁体B1、B2の数がXとされるとき、Nは、Xに等しい。ただし、Xは2以上の整数である。従動弁体F1,F2の数がYとされるとき、上記各実施形態では、NはY+1に等しい。ただし、Yは1以上の整数である。運動量の変化をN段階に分散することで、運動量の変化率が効果的に低減される。
【0105】
各段階における運動量の変化率を小さくする観点から、運動量の変化が各段階に均等に分散されるのが好ましい。この観点から、次の(a1)が好ましく、(a2)がより好ましい。
(a1)弁の開閉が2段階である場合において、全開状態における流量が100とされるとき、半開状態における流量は、50±10である。
(a2)弁の開閉が2段階である場合において、全開状態における流量を100とされるとき、半開状態における流量は、50±5である。
【0106】
後述のデータが示すように、半開状態における流量の割合は、水圧によって変化しうる。好ましい水圧を考慮すると、上記(a1)及び(a2)は、静水圧が0.75MPaであるときに成立するのが好ましい。
【0107】
Nが3以上である場合も、運動量の変化が各段階に均等に分散されるのが好ましい。この観点から、次の(b1)が好ましく、(b2)がより好ましい。
(b1)弁の開閉がN段階である場合において、各段階における流量FR(n)が、流量が少ない順にFR(0)、FR(1)、FR(2)、・・・、FR(N-2)、FR(N-1)、FR(N)とされる。ただし、nは0からNまでの整数であり、Nは2以上の整数である。このとき、隣接する段階間の流量差[FR(n)-FR(n-1)]が、(100/N)±20%である。
(b2)弁の開閉がN段階である場合において、各段階における流量FR(n)が、流量が少ない順にFR(0)、FR(1)、FR(2)、・・・、FR(N-2)、FR(N-1)、FR(N)とされる。ただし、nは0からNまでの整数であり、Nは2以上の整数である。このとき、隣接する段階間の流量差[FR(n)-FR(n-1)]が、(100/N)±10%である。
【0108】
(b1)及び(b2)において、FR(0)は、止水状態における流量であり、この流量は0である。FR(1)、FR(2)、・・・、FR(N-2)及びFR(N-1)は半開状態の各段階における流量である。FR(N)は全開状態における流量である。
【0109】
なお、(b1)は(a1)を含む概念である。(b2)は(a2)を含む概念である。第1実施形態で言えば、半開状態における流量がFR(1)である。第2実施形態で言えば、半開1における流量がFR(1)であり、半開2における流量がFR(2)であり、半開3における流量がFR(3)であり、半開4における流量がFR(4)である。
【0110】
(a1)、(a2)、(b1)、(b2)における水圧は、静水圧で0.75MPaとすることができる。
【0111】
(b1)及び(b2)のように、隣接する段階間の流量差を均等に分配するのが好ましい。この観点から、第2実施形態では、従動弁体F2の弁体孔WP3の孔径が、下流側にいくにつれて大きくなっている。従動弁体の数Yが2以上である場合、各従動弁体の弁体孔WP3の流路断面積(後述の流路断面積A)は、下流側にいくにつれて大きいのが好ましい。
【0112】
上述の通り、従動弁体の数Yを増やすことで、弁の開閉における段階数を増やすことができる。一方、従動弁体の数Yが増加すると、部品点数が増加し、弁機構が大型化する。部品点数の抑制及び弁機構の小型化の観点からは、Yは2以下(1又は2)が好ましく、1がより好ましい。第1実施形態では、従動弁体の数Yが1である。弁の開閉における段階数を増やす観点からは、Yは3以上、更には4以上とすることができる。第2実施形態では、Yは4である。段階数が過剰になると、段階数の増加に見合った水撃低減効果の向上が得られない。この観点からは、Yは6以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0113】
上述の通り、弁体の数Nを増やすことで、弁の開閉における段階数を増やすことができる。一方、従動弁体の数Yが増加すると、部品点数が増加し、弁機構が大型化する。部品点数の抑制及び弁機構の小型化の観点からは、Nは3以下(2又は3)が好ましく、2がより好ましい。第1実施形態では、弁体の数Nが2である。弁の開閉における段階数を増やす観点からは、Nは4以上、更には5以上とすることができる。第2実施形態では、Nは5である。段階数が過剰になると、段階数の増加に見合った水撃低減効果が得られない。この観点からは、Nは7以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0114】
次の表1は、第1実施形態の吐止水装置2における各段階の流量を測定した結果である。水圧を変化させて、流量を測定した。
【表1】
【0115】
表1が示すように、静水圧が0.10MPaのとき、吐止水装置2は、上記(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)を満たさない。静水圧が0.30MPaのとき、吐止水装置2は、上記(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)を満たしている。静水圧が0.50MPaのとき、吐止水装置2は、上記(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)を満たしている。静水圧が0.75MPaのとき、吐止水装置2は、上記(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)を満たしている。静水圧が1.00MPaのとき、吐止水装置2は、上記(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)を満たしている。吐止水装置2では、特に静水圧が0.30MPa以上であるときに、水撃及び反動が効果的に低減されている。
【0116】
この吐止水装置2を実際に操作してみると、2段階で開閉していることは感じられなかった。レバー操作による切替操作は短時間であるため、半開状態は短時間で通過する。このため、2段階の開閉は感じられなかったと考えられる。一方、表1に示す通り、流量が各段階に分散されており、流量の変化率は大きく低下した。実際の操作でも、水撃及び反動の低減が確認された。
【0117】
この第1実施形態の吐止水装置2において、副弁座s1に係る弁体孔WP3の流路断面積Aは4.15mmであり、弁体孔WP3以外の流路(前述の外側流路WP5)の流路断面積Bが10.95mmであった。よって、吐止水装置2では、半開状態における流路断面積Aが4.15mmであり、全開状態における流路断面積C(上記面積A+B)は15.10mmである。
【0118】
なお、本願において流路断面積は、最も狭い地点で測定される。弁体孔WP3の断面積が変化している場合、流路断面積Aは、この断面積の最小値と定義される。流路断面積Bは、前記外側流路WP5の断面積の最小値である。これらの流路断面積A及び流路断面積Bは、弁移動方向に対して垂直な平面による断面において測定される。
【0119】
このように、半開状態における流路断面積Aは、全開状態における流路断面積Cの50%より小さいのが好ましいことが分かった。これは、前述した整流効果により、弁体孔WP3の流量が増加しているためである。流量の均等分散の観点から、半開状態における流路断面積Aは、全開状態における流路断面積Cに対して、50%より小さいのが好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がより好ましい。流量の均等分散の観点から、半開状態における流路断面積Aは、全開状態における流路断面積Cの15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がより好ましい。
【0120】
図4及び図7(a)~(d)が示すように、第1実施形態の弁シール部材42は、弁移動方向に長い形状を有している。図7(c)において両矢印L1で示されるのは、弁移動方向に沿った弁シール部材42の厚みである。厚みL1は、弁シール部材42が当接する副弁座s1の最大横断長L2(図5(b)参照)よりも大きい。本実施形態では、副弁座s1の最大横断長L2は、副弁座s1の外径である。厚みL1を大きくすることで、固定係合部42aを大きくすることができ、固定係合部42aとシール係合部78aとの係合による固定性を高めることができる。
【0121】
なお、最大横断長L2は、弁シール部材42と副弁座s1との接触領域を横断する線分のうち最長の線分の長さである。本実施形態では、当該接触領域は円環領域であり、この円環領域を横断する線分のうち最長の線分は、当該円環領域の外周円の直径である。この線分の両端は、当該接触領域の外輪郭線と直線との交点である。
【0122】
また、この弁シール部材42は、全体として円柱状である。弁シール部材42の体積は大きい。冬期などに吐止水装置内に残存した水が凍結して膨張し、各部材に負荷を与えることがある。弁シール部材42は体積が大きく、弁シール部材42の周囲における水の膨張を吸収しうる。このため、各部材への負荷が低減されうる。この観点から、弁シール部材42の体積は、前記最大横断長L2を底面の直径とし、前記厚みL1を高さとする仮想円柱の体積Vよりも大きいのが好ましい。この仮想円柱の体積Vは、次の式で表される。
V = π×(L2/2)×L1
【0123】
図7(d)において両矢印W1で示されるのは、後方部42cの最大幅である。最大幅W1は、弁移動方向に対して垂直な方向に沿って測定される。図7(d)において両矢印W2で示されるのは、固定係合部42aの最小幅である。最小幅W2は、弁移動方向に対して垂直な方向に沿って測定される。図7(d)において両矢印W3で示されるのは、後方部42cの長さである。長さW3は、弁移動方向に沿って測定される。固定性の観点から、W3/{(W1-W2)/2}は、2以上が好ましい。W3/{(W1-W2)/2}の好ましい上限値は製品寸法及び流量に依存するが、例えば10以下、更には5以下とすることができる。固定性の観点から、(W1-W2)/2は、1mm以上が好ましい。(W1-W2)/2の好ましい上限値は製品寸法及び流量に依存するが、例えば10mm以下、更には5mm以下とすることができる。
【0124】
[ストロークと遊び距離]
前述の通り、第1実施形態では、駆動弁体D1と従動弁体F1との間で遊び距離PLが存在する。同様に、第2実施形態では、隣接する弁体間のそれぞれで、遊び距離PLが存在する。また、各実施形態では、駆動弁体がストロークSTを有する。第1実施形態のように、従動弁体F1の数Yが1であり、開閉の段階数Nが2である場合、遊び距離PLは1箇所で存在する。この場合、ストロークSTに対する遊び距離PLの割合は、40~60%が好ましく、45~55%がより好ましい。この割合とすることで、半開状態の作動精度が高まる。第2実施形態のように、従動弁体F1の数Yが4であり、開閉の段階数Nが5である場合、遊び距離PLは4箇所で存在する。この場合、ストロークSTに対する4つの遊び距離PLの合計の割合は、40~60%が好ましく、45~55%がより好ましい。この割合とすることで、半開状態の作動精度が高まる。
【0125】
弁体孔WP3における流量を高める観点から、弁体孔WP3に流入する際に通過する流路断面積Sは、前述した流路断面積A以上であるのが好ましい。弁体孔WP3の断面が円形であり、その半径がrである場合、流路断面積Sは、2πr×PLである。よってこの場合、2πr×PL≧πrであるのが好ましい。つまり、PLはr/2以上であるのが好ましい。弁体孔WP3の断面が円形でない場合、当該断面が円形である場合に換算して、好ましいPLが設定されうる。すなわち、流路断面積A=πrとの式から計算されるrにおいて、PLがr/2以上とされるのが好ましい。
【0126】
弁体が分割されることで、弁体に設けられる孔(弁体孔WP3等)を短くすることができる。一般に孔を有する部材を成形するためには当該孔に抜き勾配を設ける必要があり、孔が長いほど抜き勾配に起因して孔の最大径が増加する。この最大径の増加により部材が薄肉化するため、必要な肉厚を確保するためには、部材の径方向厚みを増加させる結果となる。孔が短くされることで、部材の径方向厚みを小さくすることができる。
【0127】
駆動弁体の材質として、樹脂及び金属が挙げられる。繰り返しの負荷に対する耐久性の観点から、疲労強度に優れた樹脂、金属が好ましい。腐食性も考慮すると、金属としてはステンレス鋼が好ましい。樹脂としては、安価で生産性に優れる樹脂が用いられても良い。また、成形容易性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂として、POM(ポリアセタール)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)及びポリプロピレン(PP)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の中では、摺動性及び強度に優れるPOM(ポリアセタール)が特に好ましい。
【0128】
従動弁体の材質として、樹脂及び金属が挙げられる。繰り返しの負荷に対する耐久性の観点から、疲労強度に優れた樹脂、金属が好ましい。腐食性も考慮すると、金属としてはステンレス鋼が好ましい。樹脂としては、安価で生産性に優れる樹脂が用いられても良いまた、成形容易性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂として、POM(ポリアセタール)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)及びポリプロピレン(PP)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の中では、摺動性及び強度に優れるPOM(ポリアセタール)が特に好ましい。
【0129】
以下の付記は、本開示で示される発明の一部である。
[付記1]
主流路と、前記主流路を形成する流路形成面と、前記主流路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の下流側に位置する吐出口と、前記開閉弁を全開状態と止水状態とに切り換えうる操作部とを有しており、
前記流路形成面が、主弁座を有しており、
前記開閉弁が、弁移動方向に縦列する少なくとも2つの弁体を有しており、
前記弁体のそれぞれが、前記弁移動方向における遊びを有しつつ、上流側に隣接する前記弁体に係合しており、
前記弁体が、前記操作部の操作によって前記弁移動方向に往復移動される駆動弁体と、前記駆動弁体の下流側に位置する1又は2以上の従動弁体とを含んでおり、
1又は2以上の前記従動弁体が、最も下流側に位置する先頭弁体を含んでおり、
前記従動弁体のそれぞれが、水が通過する弁体孔と、前記弁体孔の入口の周囲に形成された副弁座とを有しており、
前記主弁座及び前記副弁座のそれぞれを閉じるための弁シール部材が弁座側又は弁体側に配置されており、
前記従動弁体のそれぞれにおいて、当該従動弁体の上流側に隣接する前記弁体が前記弁シール部材を介して前記副弁座に当接することで当該副弁座が閉じるように構成されており、
前記先頭弁体が前記弁シール部材を介して前記主弁座に当接することで当該主弁座が閉じるように構成されており、
前記全開状態と前記止水状態との間の相互移行において、前記主弁座が閉じており且つ1又は2以上の前記副弁座の少なくとも1つが開いている半開状態を経由する吐止水装置。
[付記2]
前記弁体の数がNとされるとき、Nが2であり、
前記従動弁体の数が1であり、この従動弁体が前記先頭弁体であり、
前記全開状態と前記止水状態との間の相互移行において、前記主弁座が閉じており且つ前記副弁座が開いている前記半開状態を経由し、
前記開閉弁の開閉が2段階である付記1に記載の吐止水装置。
[付記3]
静水圧が0.75MPaである水圧条件において、前記全開状態における流量が100とされるとき、前記半開状態における流量が40以上60以下である付記2に記載の吐止水装置。
[付記4]
前記弁体の数がNとされるとき、Nが3以上であり、
前記従動弁体の数が2以上であり、
前記開閉弁の開閉がN段階である付記1に記載の吐止水装置。
[付記5]
静水圧が0.75MPaである水圧条件において、各段階における流量FR(n)が、流量が少ない順にFR(0)、FR(1)、FR(2)、・・・、FR(N-2)、FR(N-1)、FR(N)とされる(ただし、nは0からNまでの整数)とき、
隣接する段階間の流量差[FR(n)-FR(n-1)]が、(100/N)±20%である付記4に記載の吐止水装置。
[付記6]
1又は2以上の前記従動弁体が、前記主流路の内側に配置されており、
前記弁体孔のそれぞれが、前記主流路の中心線を通過させるように設けられている付記1から5のいずれか1項に記載の吐止水装置。
[付記7]
前記弁シール部材が、前記駆動弁体に配置された第1弁シール部材を含み、
前記第1弁シール部材の前記弁移動方向に沿った厚みがL1とされ、前記第1弁シール部材が当接する前記副弁座の最大横断長がL2とされるとき、厚みL1が最大横断長L2よりも大きく、
前記第1弁シール部材の体積が、前記最大横断長L2を底面の直径とし且つ前記厚みL1を高さとする仮想円柱の体積Vよりも大きい付記1から6のいずれか1項に記載の吐止水装置。
【0130】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成等は、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0131】
前記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成を備えなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0132】
2・・・吐止水装置
4・・・接続部
6・・・把持部
8・・・操作部
14・・・流路形成面
16・・・レバー
42・・・駆動弁体に配置された弁シール部材(第1弁シール部材)
44・・・従動弁体(先頭弁体)に配置された弁シール部材
92・・・駆動弁体に配置された弁シール部材(第1弁シール部材)
94・・・従動弁体に配置された弁シール部材
V1、V2・・・開閉弁
B1、B2・・・弁体
D1、D2・・・駆動弁体
F1、F2・・・従動弁体
H1、H2・・・先頭弁体
WP1・・・主流路
WP3・・・弁体孔
s1・・・副弁座
s2・・・主弁座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11