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特許7423054IP-RF変換装置およびIP-RF変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】IP-RF変換装置およびIP-RF変換方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/61 20110101AFI20240122BHJP
   H04N 21/236 20110101ALI20240122BHJP
   H04N 21/2383 20110101ALI20240122BHJP
【FI】
H04N21/61
H04N21/236
H04N21/2383
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020044743
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145319
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502340756
【氏名又は名称】ヒロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】栗須 基弘
(72)【発明者】
【氏名】栗須 顕人
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161513(JP,A)
【文献】特開2010-130074(JP,A)
【文献】特開2006-345379(JP,A)
【文献】特開2019-213226(JP,A)
【文献】特開2015-139185(JP,A)
【文献】特開2011-55023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークに接続されるIP-RF変換装置であって、
テレビ受信機に所定の動作を行わせるためのBML文書を含むデータ放送TSを再生するデータ放送TS再生部と、
ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介してコンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するとともに、前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得し、それぞれに対応する画像TSおよび動画TSを再生する画像・動画再生部と、
前記データ放送TS、前記画像TSおよび前記動画TSを多重化する多重化部と、
前記多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段とを備え、
前記BML文書は、前記デジタルテレビ受信機がハイブリッドキャスト対応か否かを当該デジタルテレビ受信機において確認させるための第1のBML要素、ハイブリッドキャスト対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるための第2のBML要素、および、ハイブリッドキャスト非対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるための第3のBML要素を有する
IP-RF変換装置。
【請求項2】
前記BML文書は、前記メニュー画面を表示する際に利用されるカーソル情報を有する第4のBML要素を含む請求項1に記載のIP-RF変換装置。
【請求項3】
前記カーソル情報は、カーソル表示情報およびカーソル操作情報を包含する請求項2に記載のIP-RF変換装置。
【請求項4】
前記所定のチャンネル周波数の所定のチャンネルは前記デジタルテレビ受信機の空きチャンネルである請求項1から3のいずれかに記載のIP-RF変換装置。
【請求項5】
前記メニュー画面の表示の前に、予め定められた初期画面の映像TSを再生出力する初期画面再生部をさらに備えた請求項1から4のいずれかに記載のIP-RF変換装置。
【請求項6】
前記動画コンテンツのメニュー画面は全体画像のIフレームと部分画像(空も含む)の複数枚のPフレームからなるGOPの繰り返しとして圧縮符号化された請求項1から5のいずれかに記載のIP-RF変換装置。
【請求項7】
前記BML文書は通信ネットワークを介して外部のサーバから取得され、内部に不揮発的に記憶される請求項1から6のいずれかに記載のIP-RF変換装置。
【請求項8】
前記通信ネットワークを介してリアルタイム放送の放送TSを取得する手段と、
前記放送TSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の他の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段と、
を備えた請求項1から7のいずれかに記載のIP-RF変換装置。
【請求項9】
前記メニュー画面の表示の前に、予め定められた初期画面の映像TSを再生出力する初期画面再生部をさらに備え、当該初期画面に対して、VOD配信サービスおよびリアルタイム放送サービスの切り替え選択を可能とした初期メニューを追加した請求項8に記載のIP-RF変換装置。
【請求項10】
デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークに接続されるIP-RF変換装置であって、
前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるためのBML要素を有するBML文書を含むデータ放送TSを再生するデータ放送TS再生部と、
前記デジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介して前記コンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するとともに、前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得し、それぞれに対応する画像TSおよび動画TSを再生する画像・動画再生部と、
前記データ放送TS、前記画像TSおよび前記動画TSを多重化する多重化部と、
前記多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段と、
を備えたIP-RF変換装置。
【請求項11】
デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークから受信した動画コンテンツをRF信号に変換して前記デジタルテレビ受信機へ送出するIP-RF変換方法であって、
テレビ受信機に所定の動作を行わせるためのBML文書を含むデータ放送TSを再生するステップと、
ハイブリッドキャスト対応のデジタルテレビ受信機に、通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるステップと、
ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介してコンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するステップと、
前記メニュー画面の画像データに対応する画像TSを再生するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSを多重化するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSが多重化されたTSを変調し、前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得するステップと、
前記動画コンテンツに対応する動画TSを再生するステップと、
前記動画TSを変調し、前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機の前記所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップとを備え、
前記BML文書は、前記デジタルテレビ受信機がハイブリッドキャスト対応か否かを当該デジタルテレビ受信機において確認させるための第1のBML要素、ハイブリッドキャスト対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるための第2のBML要素、および、ハイブリッドキャスト非対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるための第3のBML要素を有する
IP-RF変換方法。
【請求項12】
デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークから受信した動画コンテンツをRF信号に変換して前記デジタルテレビ受信機へ送出するIP-RF変換方法であって、
前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるためのBML要素を有するBML文書を含むデータ放送TSを再生するステップと、
前記デジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介して前記コンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するステップと、
前記メニュー画面の画像データに対応する画像TSを再生するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSを多重化するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSが多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得するステップと、
前記動画コンテンツに対応する動画TSを再生するステップと、
前記動画TSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の前記所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
を備えたIP-RF変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークから受信した動画コンテンツをRF信号に変換してデジタルテレビ受信機へ送出するIP-RF変換装置およびIP-RF変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、通信ネットワークを介してIP(Internet Protocol)伝送されるTS(Transport Stream)のようなストリームデータを受信し、これをRF変調して出力するIP-RF変換ユニット(NBC9004他)を開発し、販売している(非特許文献1)。
【0003】
従来、デジタル放送を光回線で配信するには映像用回線終端装置(VONU)を用いるのが一般的であったが、このIP-RF変換ユニットはIP伝送により配信されるTSパケットをISDB-T方式で直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調し、宅内の既存のRF信号と混合して、テレビ受信機に映像を映すことができる。これにより、例えば、地上デジタル(地デジ)放送の空きチャンネルを利用することで、セットトップボックス(STB)専用のリモートコントローラ(以下、リモコン)を用いることなく、受信したストリームを他の放送番組と同様にテレビ受信機のリモコンで選局することができるようになる。
【0004】
このようなIP-RF変換ユニットを用いることにより、ケーブルテレビジョン(CATV)の伝送路であるケーブルではなく次世代ネットワーク(NGN)のような通信ネットワークを利用したIP伝送によって、いわゆるコミュニティチャンネルのような地域の生活に密着した情報をストリームデータとして配信することができる。コミュニティチャンネルは、一般に、地元情報、地域イベント、地域スポーツ特番、地域で活躍する人の人物紹介などを内容とする自主(オリジナル)放送である。
【0005】
このようなIP-RF変換装置において、配信サーバから個々の受信端末へストリームを送信するユニキャスト配信において、各受信端末から配信サーバへストリームのユニキャスト配信を要求(リクエスト)するトリガーを発生する必要がある。本出願人の出願に係る特許文献1では、専用の機能を組み込んだSTBや特別なテレビ受信機を用いることなく、既存のテレビ受信機からユニキャスト配信の開始のトリガーを発生することができるストリーム配信システムおよびストリーム配信方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-161513号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】コミュニティチャンネルをTVリモコンから視聴可能に!多チャンネル対応:https://www.ipros.jp/product/detail/2000426998/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リアルタイム放送ではなくユーザが望む時点で所望のコンテンツの配信を行うVOD(Video On Demand)配信サービスの需要が高まっている。デジタルテレビ受信機(以下、単にテレビ受信機ともいう)においては、HTML5などのウェブ技術を用いて放送と通信を連携したサービスを行う技術としてのハイブリッドキャスト機能に対応したものが提供されている。このようなハイブリッドキャスト対応のテレビ受信機では、比較的簡単にVOD配信サービスを利用することが可能である。
【0009】
テレビ受信機におけるハイブリッドキャスト機能の起動は、通常、データ放送を利用して行われる。データ放送は、既存の放送チャンネルに対応して送出されるものである。したがって、既存のテレビ放送事業者以外の事業者がVOD配信サービスに参入するのは敷居が高いというのが現状であった。
【0010】
また、ハイブリッドキャストによるVOD配信サービスを利用することができるテレビ受信機はハイブリッドキャスト機能を搭載した特別仕様のテレビ受信機に限定された。すなわち、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機においてはVOD配信サービスの利用が容易ではなかった。
【0011】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、既存のテレビ放送事業者以外の事業者が比較的容易にVOD配信サービスに参入することを可能とするIP-RF変換装置およびIP-RF変換方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機においてもVOD配信サービスの利用を可能とするIP-RF変換装置およびIP-RF変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるIP-RF変換装置は、デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークに接続されるIP-RF変換装置であって、テレビ受信機に所定の動作を行わせるためのBML(Broadcast Markup Language)文書を含むデータ放送TSを再生するデータ放送TS再生部と、ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介してコンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するとともに、前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得し、それぞれに対応する画像TSおよび動画TSを再生する画像・動画再生部と、前記データ放送TS、前記画像TSおよび前記動画TSを多重化する多重化部と、前記多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段とを備え、前記BML文書は、前記デジタルテレビ受信機がハイブリッドキャスト対応か否かを当該デジタルテレビ受信機において確認させるための第1のBML要素、ハイブリッドキャスト対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるための第2のBML要素、および、ハイブリッドキャスト非対応である場合に前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるための第3のBML要素を有するものである。
【0014】
この構成により、デジタルテレビ受信機は外部から受領したBML文書に基づいて必要な所定の動作を行う。デジタルテレビ受信機がハイブリッドキャスト対応である場合にデジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるとともに、ハイブリッドキャスト非対応である場合にコンテンツサーバにアクセスさせるように、アクセス先を切り替え、それぞれにおいてVOD配信サービスを提供することが可能となる。
【0015】
前記BML文書は、前記メニュー画面を表示する際に利用されるカーソル情報を有する第4のBML要素を含むことができる。これにより、メニュー画面上で利用されるカーソル情報がIP-RF変換装置からテレビ受信機へ提供される。
【0016】
前記カーソル情報は、カーソル表示情報およびカーソル操作情報を包含することができる。
【0017】
前記所定のチャンネル周波数の所定のチャンネルは、例えば、前記デジタルテレビ受信機の空きチャンネルである。これにより、IP-RF変換装置が既存の受信放送チャンネルに影響を与えることがない。
【0018】
前記メニュー画面の表示の前に、予め定められた初期画面の映像TSを再生出力する初期画面再生部をさらに備えてもよい。これにより、メニュー画面の表示前に、本実施形態に係るチャンネルが選局されたことをユーザに知らしめることができる。
【0019】
前記動画コンテンツのメニュー画面は全体画像のIフレームと部分画像(空も含む)の複数枚のPフレームからなるGOPの繰り返しとして圧縮符号化されたものであってもよい。これにより、圧縮符号化に要する時間が短縮されるとともに、圧縮後のデータ量も低減される。
【0020】
前記BML文書は、通信ネットワークを介して外部のサーバから取得され、内部に不揮発的に記憶されてもよい。これにより、BML文書の更新の際にのみ外部のサーバへアクセスすれば足りる。
【0021】
上記IP-RF変換装置は、前記通信ネットワークを介してリアルタイム放送の放送TSを取得する手段と、前記放送TSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の他の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段とをさらに備えてもよい。これにより、通信ネットワーク経由でコミュニティチャンネルなどのリアルタイム放送を受信することができる。
【0022】
前記メニュー画面の表示の前に、予め定められた初期画面の映像TSを再生出力する初期画面再生部をさらに備え、前記初期画面に対して、VOD配信サービスおよびリアルタイム放送サービスの切り替え選択を可能とした初期メニューを追加してもよい。
【0023】
本発明によるIP-RF変換装置は、他の見地によれば、デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークに接続されるIP-RF変換装置であって、前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるためのBML要素を有するBML文書を含むデータ放送TSを再生するデータ放送TS再生部と、前記デジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介して前記コンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するとともに、前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得し、それぞれに対応する画像TSおよび動画TSを再生する画像・動画再生部と、前記データ放送TS、前記画像TSおよび前記動画TSを多重化する多重化部と、前記多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段とを備えたものである。これにより、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機に対してVOD配信サービスを提供することができる。
【0024】
本発明によるIP-RF変換方法は、デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークから受信した動画コンテンツをRF信号に変換して前記デジタルテレビ受信機へ送出するIP-RF変換方法であって、
テレビ受信機に所定の動作を行わせるためのBML文書を含むデータ放送TSを再生するステップと、
ハイブリッドキャスト対応のデジタルテレビ受信機に、通信ネットワークを介してハイブリッドキャストサーバへアクセスさせるステップと、
ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介してコンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するステップと、
前記メニュー画面の画像データに対応する画像TSを再生するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSを多重化するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSが多重化されたTSを変調し、前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得するステップと、
前記動画コンテンツに対応する動画TSを再生するステップと、
前記動画TSを変調し、前記ハイブリッドキャスト非対応のデジタルテレビ受信機の前記所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
を備えたものである。
【0025】
本発明によるIP-RF変換方法は、他の見地によれば、デジタルテレビ受信機の前段に配置され、通信ネットワークから受信した動画コンテンツをRF信号に変換して前記デジタルテレビ受信機へ送出するIP-RF変換方法であって、
前記デジタルテレビ受信機に通信ネットワークを介してコンテンツサーバへアクセスさせるためのBML要素を有するBML文書を含むデータ放送TSを再生するステップと、
前記デジタルテレビ受信機から通信媒体を介して受けた要求に応じて通信ネットワークを介して前記コンテンツサーバにアクセスし、動画コンテンツ選択用のメニュー画面の画像データを取得するステップと、
前記メニュー画面の画像データに対応する画像TSを再生するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSを多重化するステップと、
前記データ放送TSおよび前記画像TSが多重化されたTSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
前記デジタルテレビ受信機において前記メニュー画面から選択された動画コンテンツを前記コンテンツサーバから取得するステップと、
前記動画コンテンツに対応する動画TSを再生するステップと、
前記動画TSを変調し、前記デジタルテレビ受信機の前記所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力するステップと、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるIP-RF変換装置およびIP-RF変換方法を用いることにより、既存のテレビ放送事業者以外の事業者が比較的容易にVOD配信サービスに参入することを可能とすることができる。また、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機においてもVOD配信サービスの利用を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態のIP-RF変換装置を利用したVOD配信システム全体の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態によるIP-RF変換装置の内部構成例を示す図である。
図3図1に示したコンテンツサーバの本実施形態における特有の機能を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態におけるハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機に表示される表示メニューの基本的な構成例を示すメニュー画面を示す図である。
図5図1に示したコンテンツサーバコンテンツサーバにより提供される動画コンテンツの選択肢を示す行列表示領域と、リモコンのボタンの機能説明の表示枠とにより構成される、テレビ受信機に表示されるメニュー画面を示す図である。
図6図5に示したようなテレビ受信機に表示される静止画映像に重ねてカーソルが表示された様子を表したメニュー画面を示す図である。
図7】ジャンルの選択肢を示すジャンル・モード指定画面としてのメニュー画面の例を示す図である。
図8】本発明の実施形態におけるコンテンツサーバでのメニュー画面の生成方法について説明するための図である。
図9】本発明の実施形態におけるIP-RF変換装置の初期処理を表すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態におけるテレビ受信機の主要な処理を表したフローチャートである。
図11】本発明の実施形態においてテレビ受信機がハイブリッドキャスト対応の場合のIP-RF変換装置とテレビ受信機とハイブリッドキャストサーバの三者の間のやりとりの例を示すシーケンス図である。
図12】本発明の実施形態においてテレビ受信機がハイブリッドキャスト非対応の場合のIP-RF変換装置とテレビ受信機とハイブリッドキャストサーバの三者の間のやりとりの例を示すシーケンス図である。
図13】本発明の第2の実施形態としてのIP-RF変換装置の構成例を示すブロック図である。
図14】本発明の第3の実施形態としてのIP-RF変換装置の構成例を示すブロック図である。
図15】本発明の第4の実施形態における初期画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のIP-RF変換装置200を利用したVOD配信システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
本実施形態において、IP-RF変換装置200は、デジタルテレビ受信機300(300a,300bを総称)の前段に配置され、通信ネットワーク150から受信した動画コンテンツをRF信号(放送波信号)に変換して同軸ケーブル等の放送波搬送媒体を介して当該テレビ受信機300へ送出するものである。
【0031】
より具体的には、IP-RF変換装置200は、その一端においてLANケーブルおよびルータ170を介して通信ネットワーク150に接続されるとともに、他端において放送波搬送媒体を介してデジタルテレビ受信機300a,300b(以下、単にテレビ受信機ともいう)と接続される。IP-RF変換装置200に接続されるテレビ受信機300は複数台でなく、1台であってもよい。
【0032】
テレビ受信機300a,300bは、それぞれ通信媒体(例えば有線LANまたは無線LAN)を介してルータ170に接続される。各テレビ受信機300は、ルータ170内のハブ機能を利用して、IP-RF変換装置200との相互の通信が可能である。通信ネットワーク150が光通信ネットワークである場合には、ルータ170の前段に図示しない光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)が配置される。テレビ受信機300a,300bはそれぞれそのユーザ操作のためのリモコン390a,390b(総称して390)を備えている。
【0033】
通信ネットワーク150は次世代ネットワーク(NGN)等のIPネットワークであり、本実施形態ではハイブリッドキャストサーバ110、コンテンツサーバ120、リアルタイム放送送出装置130、および制御サーバ140が接続されている。
【0034】
ハイブリッドキャストサーバ110は、ハイブリッドキャスト対応のテレビ受信機300からのアクセスに応じて、当該テレビ受信機300へ動画コンテンツ等のコンテンツのオンデマンド配信サービスを提供するためのサーバである。
【0035】
コンテンツサーバ120は、本実施形態のIP-RF変換装置200からのアクセスに応じて、IP-RF変換装置200を介してテレビ受信機300への動画コンテンツ等のオンデマンド配信サービスを提供するためのサーバである。
【0036】
リアルタイム放送送出装置130は、IP-RF変換装置200からのアクセスに応じて、CATV事業者のコミュニティチャンネルなどのリアルタイム放送(リニア放送)を提供する装置である。
【0037】
制御サーバ140は、コンテンツサーバ120によるVOD配信サービスを起動するためのデータ、例えば、データ放送コンテンツ(固定データ放送TS)などをIP-RF変換装置200に提供する(ダウンロードさせる)ためのサーバである。制御サーバ140の機能はコンテンツサーバ120に包含されてもよい。
【0038】
本実施形態におけるIP-RF変換装置200は、主として、次のような機能を有する。
(a)接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応か否かを当該テレビ受信機において確認させる機能。
(b)接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応である場合に当該テレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してハイブリッドキャストサーバ110へアクセスさせる機能。
(c)接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト非対応である場合に当該テレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してコンテンツサーバ120へアクセスさせる機能。(メニュー画面表示およびカーソルを用いたメニュー選択機能を含む。)
(d)テレビ受信機300において上記機能を実現させるためのデータ放送コンテンツとしてのBML文書(放送用マークアップ言語文書)をテレビ受信機300の所定のチャンネル周波数のRF信号として出力する機能。
(e)ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300から通信媒体を介して受けた要求に応じて、通信ネットワーク150を介してコンテンツサーバ120をアクセスして当該要求に応じた動画コンテンツを取得する機能。
(f)コンテンツサーバ120から取得した動画コンテンツを所定のチャンネル周波数のRF信号として出力する機能。
(g)通信ネットワーク150を介して制御サーバ140にアクセスし、必要な情報を取得する機能。
(h)テレビ受信機300に対してリアルタイム放送送出装置130から通信ネットワーク150を介してリアルタイム放送を受信して同一または他の所定のチャンネル周波数のRF信号として出力する機能。
【0039】
これらの一部の機能を実現するためのBML文書は、接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応か否かを当該テレビ受信機300において確認させるための第1のBML要素、ハイブリッドキャスト対応である場合に当該テレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してハイブリッドキャストサーバ110へアクセスさせるための第2のBML要素、ハイブリッドキャスト非対応である場合に当該テレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してコンテンツサーバ120へアクセスさせるための第3のBML要素、および、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300が動画コンテンツ選択用のメニュー画面を表示する際に利用されるカーソル情報を有する第4のBML要素を含む。本明細書においてカーソル情報には、後述するようにカーソル表示情報およびカーソル操作情報を包含する。
【0040】
より具体的には、上記機能(a)において、接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応か否かを当該テレビ受信機において確認させるためには、例えば、BML文書の第1のBML要素として以下のコマンドを発行することにより行える。
getBrowserSupport()
getResidentAppVersion()
【0041】
さらに具体的な手順については ARIB TR-B14 第3編 第2部 8.8.1(1) getBrowserSupport()の運用 及び 8.8.1(2) getResidentAppVersion()の運用で規定されている。
【0042】
上記機能(b)において、ハイブリッドキャスト対応のテレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してハイブリッドキャストサーバ110へアクセスさせるために、データ放送のBML文書内に第2のBML要素として、HTMLアプリケーションを起動するための所定のコマンドを含むAIT(Application Information Table)を記述しておく。
【0043】
ハイブリッドキャスト対応のテレビ受信機300は、データ放送を受領してBML文書に記述されたAITを取得して、その後、HTMLアプリケーションを起動する。より具体的には、当該テレビ受信機300は、ハイブリッドキャスト機能が実装されていれば、BML文書の記述に従ってハイブリッドキャストサーバ110をアクセスする。最初にAITファイルをアクセスして、その中にテレビ受信機300側のハイブリッドキャストのバージョン番号などを取得するコマンドに応じて、どのバージョン(H.264/H.265)のデコードが可能かなどを判定し、ハイブリッドキャストサーバ110へ応答する。これに応じて、ハイブリッドキャストサーバ110からのVOD配信サービスが開始される。
【0044】
上記機能(c)において、第3のBML要素として、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300に、BML文書を受信して最初にその旨をIP-RF変換装置200へ知らせる初期受信状態通知を行わせるコマンド、およびユニキャストによるコンテンツサーバ120への接続を開始させるコマンドを記述しておく。テレビ受信機300へ送出するBML文書内にIP-RF変換装置200のアドレス情報(ここではIPアドレス)を含めておく。
【0045】
第4のBML要素については以下で詳述する。
【0046】
図2に、IP-RF変換装置200の内部構成例を示す。このIP-RF変換装置200は、IP入力部201、ダウンロード制御部202、チャンネル(CH)ユニット210、RFアップコンバータ部250、アップリンク制御部260、および全体制御部270を備える。この図2に示した構成は、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300に対するIP-RF変換装置200によるVOD配信サービスに係る機能に関する部分を示しているが、後述するようにIP-RF変換装置200は他の機能部も包含しうる。
【0047】
IP入力部201は、コンテンツサーバ120から通信ネットワーク150およびルータ170を介してIPソース(コンテンツサーバ120等)から受け取ったIPパケットを入力する入力インタフェース部である。IP入力部201は、より具体的には、IPパケットとして、TSパケットを含むRTP(Real-time Transport Protocol)パケットを受信する。IP入力の具体的なインタフェースは問わない。
【0048】
ダウンロード制御部202は、IP入力部201に接続され、チャンネルユニット210内に必要なデータ放送コンテンツ(BML文書)等の情報のダウンロードを司るための部位である。
【0049】
チャンネルユニット210は、IP-RF変換装置200から出力する1つのチャンネル用の多重化されたTSを生成するTS生成部220およびこの多重化されたTSの地デジ変調を行うISDB-T変調部230を有する。
【0050】
TS生成部220は、SI情報再生部221、データ放送TS再生部222、初期画面再生部223、RTP/RTSP(Real Time Streaming Protocol)再生部としての画像・動画再生部224、および多重化部226を含む。
【0051】
SI情報再生部221は、ダウンロードされ不揮発性メモリに記憶された情報に基づいて、後述する地デジSI情報 (SI=Service Information)を再生出力する部位である。
【0052】
データ放送TS再生部222は、ダウンロードされた情報に基づいて、予め用意された固定のデータ放送TSを再生出力する部位である。
【0053】
初期画面再生部223は、ダウンロードされ不揮発性メモリに記憶された情報(初期画面のTSファイル)に基づいて、初期表示映像としての初期画面の映像TSを再生出力する部位である。コンテンツサーバ120からメニュー画面の画像の受信が完了するまでに所定の時間が掛かることに鑑み、「初期画面」は、メニュー画面の表示前の当該時間内に、本実施形態に係るチャンネルが選局されたことをユーザに知らしめるための表示される画面である。具体的には、本実施形態に係るチャンネルが選局されたことをユーザに知らしめるための予め用意された画像、文字、ロゴ等の一部または全部により構成される画面である。
【0054】
画像・動画再生部224は、IP入力部201においてRTPプロトコル・RTSPプロトコルに則って受信された画像や動画コンテンツのTS再生を行う部位である。
【0055】
多重化部226は、これら再生されたSI情報、データ放送、初期画面、および動画コンテンツを多重化したTSを生成する部位である。
【0056】
TS生成部220から出力される多重化されたTSは、ISDB-T変調部230においてISDB-T方式で直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調される。このISDB-T変調部230およびRFアップコンバータ部250は、多重化されたTSを変調し、テレビ受信機300の所定のチャンネル周波数のRF信号に変換して出力する手段を構成する。
【0057】
さらに、このISDB-T変調部230の出力デジタルデータは、RFアップコンバータ部250において、DUC(デジタルアップコンバータ)で周波数領域にマッピングされ、DAC(デジタルアナログコンバータ)でIQデータとなり、最終的にRFアップコンバータで所定の周波数のRF信号として出力される。
【0058】
アップリンク制御部260は、テレビ受信機300からのLAN応答に応じて、VOD制御のためにIPソース(コンテンツサーバ120等)にアクセスするとともに、TS生成部220の動作を制御する部位である。
【0059】
全体制御部270は、図示しないプロセッサ等により構成され、IP-RF変換装置200の全体の動作を司る部位であり、ダウンロード制御部202およびアップリンク制御部260を包含する。
【0060】
図3は、コンテンツサーバ120の本実施形態における特有の機能を説明するための図である。コンテンツサーバ120は、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300からの要求を受けたIP-RF変換装置200からのIP制御情報に応じて、メニュー画面番号受信部121でIP制御情報内に含まれるメニュー画面番号を確認し、ついでメニュー静止画生成部123で当該メニュー画面番号に対応するメニュー静止画を生成する。この生成されたメニュー静止画は、本実施形態では、MPEG2符号化部125においてMPEG2-HD IPPPP形式で圧縮符号化され、さらにTS変換部127でTSに変換されて、IP-RF変換装置200宛にRTP伝送される。
【0061】
メニュー静止画は、以下に具体例を後述するが、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300においてVOD配信サービスを利用するためのメニュー画面を構成するものである。
【0062】
図4は、本実施形態におけるハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300に表示される表示メニューの基本的な構成例を示すメニュー画面500である。このメニュー画面500の画像データはコンテンツサーバ120からIP-RF変換装置200を介して映像としてテレビ受信機300に伝送される。この例におけるメニュー画面500は動画コンテンツ等の複数の選択肢を行列状に提示する行列表示領域510と、選択された選択肢の詳細および作業結果の表示枠512と、テレビ受信機300のリモコン390のボタン(キー)の機能説明を表示する表示枠513と、選択肢がジャンル等である場合に当該選択肢に該当する動画本数の表示枠514とを有する。メニュー画面によってこれらの表示枠の形状やサイズ、有無は変わりうる。
【0063】
行列表示領域510には、行列状に配置された複数の選択肢枠511のうちの1つを選択的にフォーカスする枠状のカーソル520が表示される。このカーソル520は、テレビ受信機300でのカーソル操作による選択肢の選択支援のためにテレビ画面上に表示される表示要素である。図示の例では選択肢枠511のサイズは320画素×180画素である。
【0064】
カーソル520は、行列状に配置された複数の選択肢の間をユーザによるリモコン390の操作により移動可能であり、カーソル520の位置する選択肢に対する選択がリモコン390の操作により確定される。カーソル520のカーソル情報は、BML文書として制御サーバ140からIP-RF変換装置200にダウンロードされ、データ放送TS再生部222内に不揮発的に記憶されたものがデータ放送としてテレビ受信機300へ提供される。データ放送TS再生部222内のBML文書は必要時に更新される。
【0065】
本明細書においてカーソル情報には、カーソル表示情報およびカーソル操作情報を包含する。カーソル表示情報はカーソル520の形状や色、サイズ等の表示に関わる情報である。カーソル操作情報は、カーソル520の移動や選択の制御に関する情報のほか、操作に関してユーザを支援するための情報を含みうる。カーソル520の移動や選択の制御に関する情報は、具体的には、データ放送関連のリモコンのボタンの操作等に応じて、所定の動作や機能を実行するためのプログラム、例えばBMLスクリプトを包含する。
【0066】
好ましくはメニュー画面500として複数のメニュー画面が用意される。それらの構成は基本的には共通であるが、用途や機能に応じて変更しうる。この例では、複数のメニュー画面は切り替え可能な複数のページで構成される。また、ジャンルの選択肢を示すジャンル・モード指定画面のように階層構造を構成するメニュー画面を用意してもよい。
【0067】
図5は、コンテンツサーバ120により提供される動画コンテンツの選択肢を示す行列表示領域510と、リモコン390のボタンの機能説明の表示枠513とにより構成される、テレビ受信機300に表示されるメニュー画面500aを示している。この例では、個々の選択肢枠511内の動画の1シーン等を表す映像を「映像1」、「映像2」等と表示している。このメニュー画面500aは、上述のように、静止画の画像データとしてコンテンツサーバ120からIP-RF変換装置200へ送信され、IP-RF変換装置200から静止画映像としてテレビ受信機300に送出されたものである。ここでいう「静止画映像」とは選択肢として示した「映像1」~「映像30」の個々の「映像」ではなく、メニュー画面500a全体を表示する映像を指している。
【0068】
表示枠513内には、このメニュー画面500aが表示された状態で、リモコン390のカラーボタンに割り当てられた機能を示している。青ボタンにはメニュー画面500aのページを上方へ切り替える機能「PG UP」が割り当てられ、赤ボタンにはページを下方へ切り替える機能「PG DOWN」が割り当てられている。また、緑ボタンにはジャンル・モード指定画面(後述)への切り替えを行う機能「ジャンル」が割り当てられ、黄ボタンには検索画面(図示せず)への切り替えを行う機能「検索」が割り当てられている。さらに、「戻る」ボタンが戻る機能に割り当てられ、Dボタンには「トップ画面」へ移行する機能が割り当てられている。ここにトップ画面とはハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300においてVOD配信機能が起動されたときに最初に表示されるメニュー画面である。トップ画面が表示されている状態ではDボタンの表示は無くすか、低輝度表示としてもよい。あるいは、Dボタンの表示が存在してもDボタンの押下が無視されるようにしてもよい。
【0069】
図5に示したようなテレビ受信機300に表示される静止画映像に重ねてカーソル520が表示される。この様子を図6に示す。この例では、カーソル520は初期的に行列表示領域510の最も左上の選択肢枠に位置するようにしている。ただし、カーソル520の初期表示位置はこの位置に限るものではない。
【0070】
上述のとおりカーソル520のカーソル表示情報とカーソル操作情報とを含むカーソル情報はIP-RF変換装置200から提供されるBML文書に含まれ、IP-RF変換装置200が、カーソル情報をデータ放送のBML文書としてRF信号に含めてテレビ受信機300へ送出する。これに基づいてテレビ受信機300がデータ放送としてカーソル520を表示する。また、リモコン390の操作に基づくカーソル520の移動制御もBML文書内の記述に基づいて実現される。
【0071】
データ放送に対応した既存のテレビ受信機300にはBMLブラウザが内蔵されており、本実施形態によるBML文書に基づいて、メニュー画面上での選択肢の選択のためのカーソル表示およびリモコン操作による選択動作を実現する。すなわち、テレビ受信機300は、メニュー画面情報に対応するメニュー画面を表示するとともに、BML文書に基づいてユーザ操作により複数の選択肢の間を移動可能なカーソル520を表示し、BML文書に基づいて、ユーザ操作による選択結果を表すメッセージを通信媒体経由でIP-RF変換装置200へ出力する機能を有する。
【0072】
IP-RF変換装置200から送出されたメニュー画面の静止画映像はテレビ受信機300の画面に表示されるとともに、その上にBML文書に基づいてカーソル520が重畳される。フォーカスの移動(すなわちカーソル520の移動)は、テレビ受信機300のリモコン390の操作に応じてBML文書内のスクリプトに従って行われる。
【0073】
図6のメニュー画面500aにおいて、特定の選択肢にカーソル520が位置している状態で決定ボタンが押下された場合に、その旨を示すメッセージ(選択肢を特定する情報を含む)が通信媒体経由でIP-RF変換装置200へ送信される。この機能はBML文書のスクリプトによって実現される。
【0074】
当該メッセージを受信したIP-RF変換装置200は、コンテンツサーバ120に対して、動画コンテンツの配信要求を送信する。この要求を受けたコンテンツサーバ120は、あらかじめ所定の符号化方式(ここではMPEG2-HD)で符号化した動画ファイルを保存しておき、要求された動画コンテンツの配信をIP-RF変換装置200に対して開始する。コンテンツサーバ120は、その時点でテレビ受信機300に表示されているメニュー画面番号を把握しており、選択肢特定情報に基づいて要求された動画コンテンツを特定することができる。IP-RF変換装置200は、この動画コンテンツをテレビ放送の動画TSに変換してテレビ受信機300へ送出する。テレビ受信機300は、メニュー画面に代わってこの動画映像を全画面表示する。
【0075】
ここで、本実施形態におけるメニュー画面でのカーソル表示およびリモコン操作についてさらに具体的に説明する。この機能は、BML文書の第4のBML要素として記述により実現される。
【0076】
本実施形態では、テレビ受信機300は、BML文書に基づいて、ユーザ操作に従ってメニュー画面における1選択肢枠に位置するカーソル520を現在の選択肢枠から他の選択肢枠へ移動させ、ユーザ操作に従って選択肢の選択を確定する。
【0077】
ユーザ操作は基本的にはテレビ受信機300のリモコン390により行われ、BML文書に基づいて、リモコン390の矢印キーの操作に応じてカーソル520の移動が行われ、リモコン390の決定ボタンの操作に応じてその時点でカーソル520が表示されている選択肢枠の選択が確定される。
【0078】
上述したように、カーソル表示は、すべての選択対象の選択肢枠に対して枠の表示情報を設定しておき、リモコン390の矢印キー操作に対応したBMLのフォーカス制御を利用して、矢印キー操作に応じた1つの選択肢枠のみ、他の選択肢枠から際だって見えるように、枠の表示属性を制御することによってカーソルの表示および移動を行うことができる。本実施形態では、表示属性として、枠の表示色を変更する。より具体的には、カーソル520が表示されている選択肢枠のみその枠を目立つ色で表示し、他のフォーカスされていない選択肢枠の枠は目立たない色として例えばグレーの半透明(またはゼロ輝度)などに設定する。それぞれの選択肢枠の枠情報としては、所定の幅を有する枠の位置(例えば左上角の座標)及びサイズを定めることができる。
【0079】
なお、リモコンの矢印キーの操作に応じて、カーソル520がどのように移動するかは、BML文書において、各選択肢枠について、上下左右の各矢印キーに対して次に移行する移行先の選択肢枠を定めておくことができる。すなわち、フォーカスの対象となる各要素(画像やdivなど)にnav-indexというインデックス番号を割り当て、各要素について、フォーカスが当たっている状態で矢印キー(上下左右キー)の押下されたとき次にどのインデックス番号の要素に移動するかを設定しておく。
【0080】
上記の説明では、動画選択のためのメニュー画面は視聴対象の動画配信サイトの動画を直接的に指定するためのものとして説明した。しかし、メニュー画面に表示される選択肢としては、動画そのものではなく、複数の動画のグループを選択するための上位のメニュー画面であってもよい。
【0081】
図7は、ジャンルの選択肢を示すジャンル・モード指定画面としてのメニュー画面500bの例を示している。このメニュー画面500bにおける各選択肢枠には異なるジャンル(「最新映画」、「邦画」、「コメディ」等)が割り当てられている。いずれかのジャンルにカーソル520が当てられた状態で決定ボタンが押下されると、そのジャンルに属する複数の選択肢を示す他のメニュー画面が現在の画面に代わって表示される。図7のメニュー画面500bでDボタンが押されると、トップ画面への移行が行われる。
【0082】
次に、図8により、本実施形態におけるコンテンツサーバ120でのメニュー画面の生成方法について説明する。本実施形態では静止画のメニュー画面を圧縮符号化してMPEG2-TSとして出力する。一般に、映像(動画)圧縮符号化により得られるフレームにはIフレーム(Iピクチャ)の他にPフレーム(Pピクチャ)、Bフレーム(Bピクチャ)が含まれ、これらの所定数のフレームの1組の集合はGOP(Group Of Pictures)と呼ばれる。入力映像から変換周期毎に抽出された1フレームを所定の映像(動画)圧縮符号化方式(例えばMPEG-2やH.264等)に従って圧縮符号化(フレーム内符号化)する。このような入力映像から抽出された1フレームがフレーム内符号化(イントラ符号化)方式により符号化されたフレームはIフレームと呼ばれる。Pフレームとは、フレーム間順方向予測符号化によって得られるフレームであり、典型的には、直前(過去)のIフレームとの差分で表されるフレームである。Bフレームとは、フレーム間双方向予測符号化によって得られるフレームであり、典型的には過去のIまたはPフレームを予測用の参照画面として用いるとともに、未来のIまたはPフレームを予測用の参照画面として用いるフレームである。
【0083】
あるIフレームから次のIフレームの前のフレームまでが1つのGOPの範囲となる。各GOPにはGOPヘッダが付加される。GOPヘッダには、スタートコード、タイムコード(時間符号)、オープン/クローズの識別フラグが含まれる。
【0084】
本実施形態では、GOPをIフレームと複数枚のPフレーム(この例では4枚)とで構成し、これを1セットとして、繰り返し送出する。また、各Pフレームは画像全体ではなく、Iフレームから順次異なる横長エリアを取り出した部分画像とする。これにより、圧縮符号化に要する時間が短縮されるとともに、圧縮後のデータ量も低減することができる。なお、メニュー画面の画質が許すのであれば、複数枚のPフレームはすべて部分画像に代えて空の画像であってもよい。
【0085】
なお、メニュー画面の静止画像を同じGOPの繰り返しとしてMPEG2-TSで送出することに代えて、当該静止画像データをデータファイルとしてIP-RF変換装置200へファイル転送し、IP-RF変換装置200側で受信したデータファイルを再生して用いるようにしてもよい。
【0086】
図9にIP-RF変換装置200の初期処理を表すフローチャートを示す。
【0087】
IP-RF変換装置200は初期セットアップ動作としてケーブルなどの接続が終了してACアダプタが接続されると、すなわち電源オン時(またはリセット時)にまず、ルータ170から自身に割り当てられたIPアドレスを自動で取得する(S20)。このIPアドレスおよび自身のシリアル番号をコンテンツサーバ120へ通知する(S21)。
【0088】
ついで、ダウンロード制御部202において、制御サーバ140から初期画面のTSファイルとBMLファイル(BML文書)をダウンロードする(S22)。このBML文書には、種々のアドレス情報、例えば、制御サーバ140自身のIPアドレス(グローバルIPアドレス)やコンテンツサーバ120のIPアドレス(グローバルIPアドレス)、IP-RF変換装置200自身のIPアドレスなどが書き込まれた状態で制御サーバ140から受信される。コンテンツサーバ120および制御サーバ140のそれぞれのIPアドレス(グローバルIPアドレス)はIP-RF変換装置200の初期化ファイルなどにあらかじめ保存しておいてもよい。あるいは、作業担当者またはユーザが手動設定するようにしてもよい。
【0089】
さらに、地デジ空きチャンネル(空き物理チャンネル)の検索を行う(S23)。例えば、RF端子上にあるUHFチャンネルをサーチして、IP-RF変換装置200が出力してもよいチャンネルとして地デジ空きチャンネル(チャンネル番号)を検知する。
【0090】
その空きチャンネルが以前と同じで(S24,Yes)、すでに登録済みであれば(S27,Yes)、ステップS28へ移行する。もし、以前と同じでない(S24,No)またはまだ登録できていない場合は(S27,No)、当該地デジ空きチャンネルを登録する(S25)。また、制御サーバ140に当該空きチャンネル番号を送り、対応する地デジSI情報(SI=Service Information)を受け取り、不揮発性メモリに登録(記録)する(S26)。不揮発性メモリは、特に図示しないが、ダウンロード制御部202内、または対応する再生部内のいずれに設けられてもよい。空きチャンネルの検索および登録については、作業担当者またはユーザが空きチャンネルを確認して手動設定するようにしてもよい。
【0091】
ついで、SI情報、BML文書、初期画面TSファイルを、それぞれ、IP-RF変換装置200内の対応する再生部221,222,223に設定し(S28)、チャンネルユニット210からの変調出力を開始し、RFアップコンバータ部250からRF信号を出力する(S29)。この際、当該空きチャンネルの周波数が当該チャンネルユニット210に対応するアップコンバータに設定されている。
【0092】
地デジSI情報は、番組名や放送局の情報などの情報であり、具体的には、通常、PAT : Program Association Table、PMT : Program Map Table、NIT : Network Information Table、SDT : Service Description Table、TOT : Time Offset Table、BIT : Broadcaster Information Table等を含む。
【0093】
図10に、本実施形態におけるテレビ受信機300の主要な処理を表したフローチャートを示す。この処理は、テレビ受信機300において上記空きチャンネルが選局されたときに実行される処理である。
【0094】
まず、当該チャンネルのRF信号に含まれるデータ放送が受信される(S11)。そこで、このデータ放送に含まれるBML文書の内容に基づく上記機能(a)すなわち接続されるテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応か否かを当該テレビ受信機300において確認させるための第1のBML要素に基づいて、自身がハイブリッドキャスト対応か否かを判定する(S12)。ハイブリッドキャスト対応であれば、上記機能(b)すなわち第2のBML要素に基づいて、ハイブリッドキャストサーバ110へ制御が移動する(S13)。以後は、テレビ受信機300がそのハイブリッドキャストサーバ機能によりハイブリッドキャストサーバ110にアクセスして、HTML5で記述されたコンテンツ(HTML5コンテンツ)をデコードし、ハイブリッドキャストによるVOD配信サービスを受ける(S14)。IP-RF変換装置200はこのサービスの初期的な起動に関与するのみで以後は関与しない。
【0095】
テレビ受信機300がハイブリッドキャスト非対応である場合に、上記機能(c)すなわち第3のBML要素に基づいて、当該テレビ受信機300に通信ネットワーク150を介してコンテンツサーバ120へアクセスさせ、静止画のメニュー画面の画像再生を行わせるとともに、第4のBML要素に基づいてBMLカーソル処理、およびカーソルを利用したリモコン操作に基づく動画の選択および動画TSの再生を行う(S15)。
【0096】
図11は、テレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応の場合のIP-RF変換装置200とテレビ受信機300とハイブリッドキャストサーバ110の三者の間のやりとりの例を示すシーケンス図である。図中、破線の矢印は放送波搬送媒体での信号の伝送方向を示し、実線の矢印は通信媒体での信号や情報の伝送方向を示している。
【0097】
IP-RF変換装置200は、テレビ受信機300に対して、初期画面再生部223から予め定められた初期画面のRF出力を行うとともに(S201)、データ放送TS再生部222からデータ放送(BML文書)を送出する(S202)。SI情報再生部221からのSI情報も併せて送出される。
【0098】
テレビ受信機300は当該RF出力のチャンネルが選局されたとき、当該データ放送を受信して当該初期画面を表示するとともに、当該BML文書を解読してその記述内容に応じた処理を行う。すなわち、テレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応か否かを確認する。この図の例ではテレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応なので、このテレビ受信機300は、BML文書に記述されたAITファイルを確認して、HTMLアプリケーションを起動する。テレビ受信機300は指示されたアドレス情報(IPアドレス)を用いてハイブリッドキャストサーバ110のアクセスを行う(S301)。以降は、テレビ受信機300とハイブリッドキャストサーバ110との間のやりとりとなる。
【0099】
アクセスを受けたハイブリッドキャストサーバ110は、当該テレビ受信機300に対してそのハイブリッドキャストのバージョン番号などを取得するためのコマンドを送出する(S111)。テレビ受信機300はこれに応じて、どのバージョン(H.264/H.265)のデコードが可能かなどを判定し、ハイブリッドキャストサーバ110へ応答する(S302)。
【0100】
その後、ハイブリッドキャストサーバ110は当該テレビ受信機300に対してHTML5コンテンツを送出し(S112)、VOD配信サービスを開始する(S303)。すなわち、ユーザ操作に応じてテレビ受信機300が直接ハイブリッドキャストサーバ110へHTML5コンテンツを要求し、これに応じてハイブリッドキャストサーバ110がHTML5コンテンツを直接当該テレビ受信機300へ配信する。
【0101】
図12は、テレビ受信機300がハイブリッドキャスト非対応の場合のIP-RF変換装置200とテレビ受信機300とハイブリッドキャストサーバ110の三者の間のやりとりの例を示すシーケンス図である。
【0102】
図11の場合と同様、IP-RF変換装置200は、テレビ受信機300に対して、予め定められた初期画面のRF出力を行うとともに(S201)、データ放送(BML文書)を送出する(S202)。
【0103】
テレビ受信機300は当該RF出力のチャンネルが選局されたとき、当該データ放送を受信して当該初期画面を表示するとともに、当該BML文書を解読してその記述内容に応じた処理を行う。この図の例ではテレビ受信機300がハイブリッドキャスト非対応なので、このテレビ受信機300は、BML文書の記述内容に応じてIP-RF変換装置200(のIPアドレス)に対して初期受信状態通知を行う(S304)。初期受信状態通知とは、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機300がBML文書を受信して最初にその旨をIP-RF変換装置200へ知らせる通知である。
【0104】
これに応じてIP-RF変換装置200は、ユニキャストによるコンテンツサーバ120への接続を開始する(S203)。コンテンツサーバ120から接続ACKが戻されると(S121)、IP-RF変換装置200は初期受信状態ACKをテレビ受信機300に返す(S204)。
【0105】
そこで、テレビ受信機300は、TOPMENU番号をIP-RF変換装置200へ送出する(S305)。TOPMENU番号は最初のメニュー画面に割り当てられた番号である。このTOPMENU番号はIP-RF変換装置200により中継されてコンテンツサーバ120へ送出される。
【0106】
これに応じて、コンテンツサーバ120はTOPMENU番号ACKを返し(S122)、IP-RF変換装置200がこれを中継してテレビ受信機300へ戻す(S206)。
【0107】
なお、ステップS305、S122については、IP-RF変換装置200を介さずに、テレビ受信機300とコンテンツサーバ120との間で直接やりとりを行うようにしてもよい。その場合には、BML文書内にコンテンツサーバ120のアドレス情報(IPアドレス)を含めてテレビ受信機300へ知らしめておく。これにより、テレビ受信機300とコンテンツサーバ120との間のやり取りを簡素化できる。
【0108】
コンテンツサーバ120は、TOPMENU番号のメニュー画面(静止画)を上述したようにMPEG2符号化してIP-RF変換装置200へ出力し(S123)、IP-RF変換装置200はこの画面をRF信号に変換してテレビ受信機300へ出力する(S207)。この時点で、初期画面再生部223から予め定められた初期画面の出力は停止される。
【0109】
テレビ受信機300は、このRF信号を受けてメニュー画面を表示するとともに、BML文書の記述に従ってカーソル520の表示を行い、ユーザのリモコン操作に応じてカーソル520の移動や選択の制御を行う。
【0110】
以後、ユーザのリモコン操作に応じてIP-RF変換装置200を介して、コンテンツサーバ120への動画コンテンツの要求およびテレビ受信機300への配信(RF出力)が行われる(S307)。その間、テレビ受信機300からIP-RF変換装置200へ周期的(例えば1秒または数秒等の第1の時間間隔毎)に定常受信状態通知が行われ(S306)、IP-RF変換装置200からテレビ受信機300へ定常受信状態ACKが返される(S208)。
【0111】
テレビ受信機300の電源オフやチャンネル変更等によりテレビ受信機300からの定常受信状態通知の欠落が所定時間(第1の時間間隔より長い時間)以上継続したとき、IP-RF変換装置200は、テレビ受信機300での当該動画コンテンツの再生が中止された(視聴が終了した)と判定し(受信状態タイムアウト)、コンテンツサーバ120に対して接続終了を通知(ユニキャスト停止リクエストを発行)する(S209)。これに応じてコンテンツサーバ120は、当該動画コンテンツの出力(送出)を停止し、終了ACKをIP-RF変換装置200へ返す(S124)。
【0112】
本実施の形態によれば、次のような格別な効果が得られる。
(a)テレビ受信機のハイブリッドキャスト対応の有無によらず、VOD配信サービスを実現できる。
(b)基本的には、テレビ受信機に特別なアプリケーションソフトウェアを必要としない。
(c)処理に必要なソフトウェアをサーバ側で一括管理ができるので、ソフトウェアのメンテナンスが容易である。
【0113】
なお、VOD配信サービスを利用するためのユーザ登録や課金の有無、課金方法等については特に詳細な説明を行わないが、既存の技術を利用可能である。本明細書におけるVOD配信は、「Subscription Video on Demand」(定額制動画配信)であるか、「Transactional Video On Demand」(都度課金型動画配信)であるかを問わない。
【0114】
<第2の実施形態>
図13に、本発明の第2の実施形態としてのIP-RF変換装置200aの構成例を示す。この図において図2に示した要素と同様の要素には同一の参照符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0115】
この実施形態のIP-RF変換装置200aは、第1の実施形態におけるチャンネルユニット210に加えてこれと同様の構成のチャンネルユニット210a(第2のチャンネルユニット)を設けたものである。第2のチャンネルユニット210aについては、好ましくは、第1のチャンネルユニット210とは別の空き地デジチャンネル周波数が割り当てられる。第1および第2のチャンネルユニット210,210aの全出力はそれぞれRFアップコンバータ部250aでアップコンバートされるとともに混合してRF信号として出力される。
【0116】
複数のテレビ受信機300a,300bのチューナーを、それぞれ、第1および第2のチャンネルユニット210,210aに割り当てられた異なる地デジチャンネル周波数に設定することにより、両テレビ受信機300a,300bは同時点で異なる動画コンテンツを視聴することが可能となる。
【0117】
そのために、IP-RF変換装置200aにおける図9の処理フローの地デジ空きチャンネルの検索や登録のステップは、チャンネルユニット毎に実行する。上記のとおり、これらの作業は手動で行われてもよい。
【0118】
なお、決定された空きチャンネル(の周波数)を当該要求のあったテレビ受信機300へ通信媒体(LAN)を介して通知し、当該テレビ受信機300において、IP-RF変換装置200から通知されたチャンネル周波数を地デジチューナに設定させるようにしてもよい。そのためにテレビ受信機300において必要であれば、例えば、SDTT(Software Download Trigger Table)を用いてテレビ受信機300が当該動作を実行できるように、例えば制御サーバ140からソフトウェアをアップデートすることができる。
【0119】
<第3の実施形態>
図14に、本発明の第3の実施形態としてのIP-RF変換装置200bの構成例を示す。この図において図2図13に示した要素と同様の要素には同一の参照符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0120】
この実施形態のIP-RF変換装置200bは、第2の実施形態の機能に加えて、通信ネットワーク150経由でCATV事業者のコミュニティチャンネルなどのリアルタイム放送の受信にも利用するものである。そのために、チャンネルユニット210,210a(第1および第2のチャンネルユニット)に加えて、同様の構成の第3のチャンネルユニット210bを設けている。第3のチャンネルユニット210bについては、第1および第2のチャンネルユニット210,210aとは別の空き地デジチャンネル周波数が割り当てられる。第1、第2のチャンネルユニット210,210aおよび第3のチャンネルユニット210bの全出力はそれぞれRFアップコンバータ部250bにおいて当該チャンネル周波数でアップコンバートされるとともに混合してRF信号として出力される。
【0121】
本実施形態におけるチャンネルユニット210bのデータ放送TS再生部222で再生されるBML文書には、「リアルタイム放送送出装置130にアクセスしリアルタイム放送TSのユニキャスト配信を受けるためのBML要素」、および、リアルタイム放送送出装置130のアドレス情報(IPアドレス)を含めておく。テレビ受信機300において、ユーザからリモコン操作によりコミュニティチャンネルが選局されたとき、IP-RF変換装置200を介してデータ放送によりこのBML文書がテレビ受信機300に受領され、このテレビ受信機300からユニキャスト配信の開始のトリガーが発生される。これにより、IP-RF変換装置200は、リアルタイム放送送出装置130からリアルタイム放送TSを受信し、これをRF信号に変換してテレビ受信機300へ送出する。
【0122】
なお、コミュニティチャンネルにはデータ放送が包含されており、コミュニティチャンネルの選局時にはIP-RF変換装置200を介して「リアルタイム放送送出装置130にアクセスした後、アップリンク制御部260から多重化部226に対して、データ放送TS再生部222からのデータ放送TSを多重化することを停止し、画像・動画再生部224からのデータ放送TSがこれにとって代わる。
【0123】
この実施形態により、CATV事業者等がコンテンツ制作したコミュニティチャンネルや過去のコンテンツをVOD機能で再生するなど、多目的な機能を実現することが可能となる。
【0124】
<第4の実施形態>
図15は、本発明の第4の実施形態における初期画面の一例を示す図である。この実施形態は第1の実施形態におけるIP-RF変換装置200の初期画面生成部223における初期画面に対して初期メニューを追加し、VOD配信サービスおよびリアルタイム放送サービスの切り替え選択を可能としたものである。この初期画面600は、上述した「本実施形態に係るチャンネルが選局されたことをユーザに知らしめるための予め用意された画像、文字、ロゴ等の一部または全部」としての文字列601と、カーソル602と、3つのメニューボタン603,604,605を表示している。これらのメニューボタン603,604,605は、この例ではそれぞれ「CH1」「CH2」「VOD」と表記されている。これらのメニューボタン603,604,605には選択的にそのいずれかを選択するためのカーソル602が重ねて表示される。この例におけるカーソル602のカーソル情報は上記と同様であり、上記BML文書への追加情報により提供される。
【0125】
初期画面600におけるメニューボタン603,604の「CH1」「CH2」は上述したCATV事業者から提供されるコミュニティチャンネルの異なるチャンネル(番組)を示している。これらのメニューボタン603,604が選択(決定ボタンの押下)されると、そのアドレス情報(IPアドレス)およびチャンネル識別情報がテレビ受信機300からIP-RF変換装置200を介してリアルタイム放送送出装置130へ送信される。このようなテレビ受信機300の動作は上記BML文書へ追加されるBML要素により実現される。これに応じてIP-RF変換装置200が当該リアルタイム放送送出装置130へアクセスする。これにより、IP-RF変換装置200は、リアルタイム放送送出装置130から当該リアルタイム放送TSを受信し、これをRF信号に変換してテレビ受信機300へ送出する。
【0126】
また、初期画面600においてメニューボタン605が選択されると、第1の実施形態で説明したBML文書に基づく処理へ移行する。すなわち、当該テレビ受信機300がハイブリッドキャスト対応かどうかを確認し、ハイブリッドキャスト対応である場合にハイブリッドキャストサーバ110へアクセスさせるとともに、ハイブリッドキャスト非対応である場合にコンテンツサーバ120へアクセスさせる。その後の動作については上記のとおりである。
【0127】
第3の実施形態では、あるテレビ受信機がVOD配信サービスを利用しているときに他のテレビ受信機でリアルタイム放送を受信できるように、チャンネルユニット210に加えてリアルタイム放送用に別途のチャンネルユニット210bを設けたが、メニュー付き初期画面600を利用することにより、第4の実施形態では各テレビ受信機300はIP-RF変換装置200の単一のチャンネルユニット210でVOD配信サービスとリアルタイム放送サービスを利用することができる。
【0128】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更が可能である。上述した具体的な構成および作用、効果はあくまで例示であり、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0129】
例えば、上記のIP-RF変換装置200は、ハイブリッドキャスト対応のテレビ受信機とハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機の双方に対応できるものとして説明したが、ハイブリッドキャスト非対応のテレビ受信機に特化した装置とすることも可能である。その場合は上述したBML文書において、ハイブリッドキャストに関連したBML要素は不要となる。
【0130】
IP-RF変換装置200のチャンネルユニット210における変調部の変調方法としては地デジ変調についてのみ説明したが、BSや高度BSなどの変調方式でもよく、変調方式は特に限定するものではない。また、コンテンツサーバ120におけるコンテンツの符号化方式としてMPEG2について説明したが、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)などの他の符号化方式でもよく、符号化方式は問わない。
【0131】
リアルタイム放送はユニキャスト配信されるものを想定したが、マルチキャスト配信されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0132】
110 ハイブリッドキャストサーバ
120 コンテンツサーバ
121 メニュー画面番号受信部
123 メニュー静止画生成部
125 MPEG2符号化部
127 TS変換部
130 リアルタイム放送送出装置
140 制御サーバ
150 通信ネットワーク
170 ルータ
200,200a,200b IP-RF変換装置
201 IP入力部
202 ダウンロード制御部
210,210a,210b チャンネルユニット
220 TS生成部
221 SI情報再生部
222 データ放送TS再生部
223 初期画面再生部
224 画像・動画再生部(RTP/RTSP再生部)
226 多重化部
230 ISDB-T変調部
250,250a,250b アップコンバータ部
260 アップリンク制御部
300,300a,300b デジタルテレビ受信機(テレビ受信機)
390,390a,390b リモコン500,500a,500b メニュー画面
510 行列表示領域
511 選択肢枠
512,513,514 表示枠
520 カーソル
600 初期画面
601 文字列
602 カーソル
603,604,605 選択ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図15