(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】水素の製造に用いられるアルカリ性水溶液の回収方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/08 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2020055212
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】514169714
【氏名又は名称】アルハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】水木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】麻生 善之
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-210591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033382(US,A1)
【文献】特開2008-019158(JP,A)
【文献】特開2018-002557(JP,A)
【文献】特開2014-088280(JP,A)
【文献】特開2010-001175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
C01F 1/00 - 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金と反応させることで水素を製造するのに用いられるアルカリ性水溶液の
回収方法であって、
前記アルカリ性水溶液
に、アルミニウムをアルミン酸アルカリの水溶液として溶解することで水素を発生させるステップと、
アルミン酸アルカリ性水溶液から冷却
により水酸化アルミニウム・アルカリ水混合析出物を析出させ固液分離することでアルカリ性水溶液
を回収する、1次回収ステップと、
前記水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物からフィルタープレスにてアルカリ
性水溶液を回収する、2次回収ステップ
と、
前記水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物からアルカリ性水溶液を2次回収した粗結晶性水酸化アルミニウムをさらに、少量の水又は温水にて洗浄し、アルカリ性水溶液を回収する、3次回収ステップを有し、
前記アルカリ性水溶液は水溶性の水素発生触媒が含有されていることを特徴とする
前記1次~3次回収ステップによりアルカリ性水溶液を繰り返し使用するためのアルカリ性水溶液の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、必要に応じてアルミニウム合金等と称する。)と反応させて水素を製造するのに用いられるアルカリ性水溶液の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金等をpH13以上の高濃度のアルカリ性水溶液に溶解反応させることで水素が発生する。
アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
例えば、水酸化ナトリウムにて説明する。
(1)2Al+2NaOH+2H2O→2NaAlO2+3H2なる反応で水素が発生し、水溶性のアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)が得られる。
NaAlO2は、加水分解により下記のような反応が考えられる。
(2)NaAlO2+H2O→Al(OOH)+NaOH
(3)NaAlO2+2H2O→Al(OH)3+NaOH
これらの反応は、結晶学的な結晶構造からなる水酸化アルミニウム結晶が生成されるものではなく、いわばゾル状の状態にある結晶性水酸化アルミニウムと水酸化ナトリウムとの混合物になるため、NaOHの水溶液が充分に回収されない技術的課題があった。
【0003】
特許文献1には、反応器から固形物を排出しながら連続的に水素を得る方法を開示するが、この固形物にはアルカリ成分が混入されているため、アルカリ成分の消耗が激しいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルミニウム合金等を溶解し、水素を製造するのに用いられるアルカリ性水溶液の繰り返し使用における回収率が高いアルカリ性水溶液の回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアルカリ性水溶液の回収方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金と反応させることで水素を製造するのに用いられるアルカリ性水溶液の繰り返し使用方法であって、前記アルカリ性水溶液はアルミニウムをアルミン酸アルカリの水溶液として溶解することで水素を発生させるステップと、アルミン酸アルカリ性水溶液から冷却等により水酸化アルミニウム・アルカリ水混合析出物を析出させ固液分離することでアルカリ性水溶液の1次回収ステップと、前記水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物からフィルタープレスにてアルカリ水の2次回収ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物からアルカリ水を2次回収した粗水酸化アルミニウムをさらに、少量の水又は温水にて洗浄し、アルカリ成分の3次回収ステップを有するようにすると、より回収率が向上する。
【0008】
本発明において、前記アルカリ性水溶液は水溶性の水素発生触媒が含有されていてもよく、その場合に水素発生触媒の消耗も低減できる。
【発明の効果】
【0009】
従来、アルミン酸アルカリの水溶液から加水分解により、水酸化アルミニウムを折出させただけでは、アルカリ成分がこの水酸化アルミニウムに多く混合し、水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物になっているため、アルカリ成分の消耗が激しく、充分に繰り返し使用できなかった。
これに対して本発明は、水酸化アルミニウム・アルカリ混合物を脱水操作することでアルカリ水の回収ができ、さらに少量の水や温水で上記固形物を洗浄しアルカリ分を回収することで、さらに回収率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る回収方法を具体的に説明する。
pH13以上の高濃度の水酸化ナトリウムの水溶液が貯留された反応タンクにアルミニウム合金を投入し、水素を製造した。
なお、反応タンクには0.001~0.1モル/リットルの水素発生触媒を添加してある。
反応が終了すると、反応液を別の回収タンクにポンプ輸送し、液温を下げることで水酸化アルミニウム・アルカリ混合物を折出させた。
この液を濾過し、濾液をアルカリ性水溶液として1次回収した。
【0011】
上記にて得られた固形分をフィルタープレス機に投入し、含水率約80%レベルまで脱水することでアルカリ水を2次回収し、反応タンクにリターンした。
これにより、水酸化アルミニウム・アルカリ水混合物からアルカリ成分をアルカリ水として回収できた。
脱水処理して残った粗結晶性水酸化アルミニウムには、まだアルカリ分が残っていることから、これを少量の温水で洗浄したところ、洗浄水は強いアルカリ性を示したので、これも反応タンクにリターンさせた。
なお、洗浄はフィルターに保持した固形物に少量の40~60℃の温水(固形分の10~20%の量)を上からかけるようにして、3~5回回収を繰り返した。
【0012】
上記にてアルカリ性水溶液をリターン回収した反応タンクにアルミニウム合金を投入したところ、その前と同様に水素製造に供することができ、この水素製造を繰り返し行うことができた。
この場合に、水素発生触媒の減少も少なく、そのまま繰り返し使用できた。
このことは、高価な触媒の寿命も長くなり、生産性が向上する。
従来は水素の製造毎にアルカリ水や触媒を補充していたのに本発明にあっては、数回、連続的に水素製造ができ、補充する際にものと補充量が少なくなった。