(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】骨修復デバイス及び手術用キット
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240122BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20240122BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240122BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240122BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240122BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240122BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240122BHJP
【FI】
A61F2/44
A61K35/32
A61K35/28
A61P19/08
A61P43/00 105
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/20
A61L27/36 100
A61L27/36 110
A61L27/36 311
A61L27/38 111
A61L27/38 300
A61L27/40
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2021156438
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 順之
(72)【発明者】
【氏名】堀 秀生
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0105825(US,A1)
【文献】特開2012-192105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254840(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0300626(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0093612(US,A1)
【文献】国際公開第2012/118090(WO,A1)
【文献】特表2021-516074(JP,A)
【文献】特開2019-022651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられたインプラントと、
前記インプラントの前記空間に収容され、互いに絡み合った繊維に
間葉系幹細胞が付着している不織布と、
を備え
、
前記不織布への間葉系幹細胞の付着は、前記不織布を一対のホルダーに挟み込み、前記間葉系幹細胞を含む細胞混濁液を一方のホルダーから他方のホルダーに向けて流すことで行われ、
前記間葉系幹細胞を付着する際の前記不織布の形状は、前記空間の形状とは異なる、
骨修復デバイス。
【請求項2】
前記不織布の繊維径は、0.1μm~30μmの範囲内である、
請求項
1に記載の骨修復デバイス。
【請求項3】
前記不織布の繊維密度は、0.2g/m
2~150g/m
2の範囲内である、
請求項1
又は2に記載の骨修復デバイス。
【請求項4】
前記不織布は、少なくともポリ乳酸、ポリグリコール酸、シルクフィブロイン、ポリ-ε-カプロラクトン、キチン及びキトサンのいずれか1つを含む材料で形成されている、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の骨修復デバイス。
【請求項5】
前記骨修復デバイスは、前記インプラントの前記空間に前記不織布と共に収容された骨片をさらに備える、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の骨修復デバイス。
【請求項6】
前記インプラントは、
前記空間が内部に形成された本体と、
前記本体に設けられ、前記本体の表面から前記空間に向かって貫通し、前記空間内に体液を流入させる貫通孔と、を備える、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の骨修復デバイス。
【請求項7】
前記インプラントは、椎間板が郭清された一対の椎体の間に挿入される椎間ケージである、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の骨修復デバイス。
【請求項8】
外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられたインプラントと、
前記インプラントの前記空間に収容可能であり、互いに絡み合った繊維に
間葉系幹細胞が付着した状態で包装された不織布を含む不織布パッケージと、
を備え
、
前記不織布への間葉系幹細胞の付着は、前記不織布を一対のホルダーに挟み込み、前記間葉系幹細胞を含む細胞混濁液を一方のホルダーから他方のホルダーに向けて流すことで行われ、
前記間葉系幹細胞を付着する際の前記不織布の形状は、前記空間の形状とは異なる、
手術用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨修復デバイス及び手術用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱管狭窄症や脊椎すべり症の治療のために後方椎体間固定術が広く行われている。後方椎体間固定術では、椎間板を郭清し、椎間板を郭清した箇所に椎間ケージと呼ばれるインプラントを挿入し、スクリュー及びロッドを用いて隣接する椎体同士を固定することで、脊柱管の狭窄を解消させる。術後に椎体間の安定性を確保するには、隣接する椎体と椎間ケージとがしっかりと癒合する必要があり、椎間ケージにはそのための工夫が施されている。例えば、特許文献1には、人体の骨片が収容される孔が形成された椎間ケージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の椎間ケージでは、骨片による骨修復の作用により隣接する椎体に癒合するまで、ある程度の治療期間を要する。患者の早期の社会復帰を実現させるには、治療期間のさらなる短縮が必要である。そして、このような問題は、隣接する椎体と椎間ケージが癒合する場合に限られず、他の部位において骨を修復する場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、骨の修復を促進する骨修復デバイス及び手術用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る骨修復デバイスは、
外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられたインプラントと、
前記インプラントの前記空間に収容され、互いに絡み合った繊維に幹細胞が付着している不織布と、
を備える。
【0007】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞であってもよい。
【0008】
前記不織布の繊維径は、0.1μm~30μmの範囲内であってもよい。
【0009】
前記不織布の繊維密度は、0.2g/m2~150g/m2の範囲内であってもよい。
【0010】
前記不織布は、少なくともポリ乳酸、ポリグリコール酸、シルクフィブロイン、ポリ-ε-カプロラクトン、キチン及びキトサンのいずれか1つを含む材料で形成されてもよい。
【0011】
前記骨修復デバイスは、前記インプラントの前記空間に前記不織布と共に収容された骨片をさらに備えてもよい。
【0012】
前記インプラントは、
前記空間が内部に形成された本体と、
前記本体に設けられ、前記本体の表面から前記空間に向かって貫通し、前記空間内に体液を流入させる貫通孔と、を備えてもよい。
【0013】
前記インプラントは、椎間板が郭清された一対の椎体の間に挿入される椎間ケージであってもよい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る手術用キットは、
外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられたインプラントと、
前記インプラントの前記空間に収容可能であり、互いに絡み合った繊維に幹細胞が付着した状態で包装された不織布を含む不織布パッケージと、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、骨の修復を促進する骨修復デバイス及び手術用キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る骨修復デバイスの構成を示す平面図、正面図である。
【
図2】(a)は、脊椎の解剖学的な構成を示す概略図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る骨修復デバイスを一対の椎体の間に埋設した様子を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る不織布の一例を走査型電子顕微鏡により撮影した図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る不織布に間葉系幹細胞を付着させる手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る骨修復デバイス及び手術用キットを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0018】
骨修復デバイスは、骨欠損部に埋設され、骨欠損部からの荷重を受け止めると共に骨欠損部における骨の修復を促進する器具である。以下、後方椎体間固定術において椎間板が郭清された欠損部に骨修復デバイスを埋設する場合を例に説明するが、骨修復デバイスは骨欠損部の態様に応じて様々な形状や大きさで形成され得る。
【0019】
骨欠損部は、体内の骨や軟骨に生じた欠損であり、例えば、骨や軟骨を人為的に除去した部位のみならず、骨折部位、軟骨の損傷部位、他の骨の疾患により生じた欠損部位を含む。また、骨の修復には、骨欠損部に本来あった骨組織や機能を元に戻すことのみならず、骨欠損部の全部又は一部を人工物で置き換えたり、骨欠損部に本来あった機能の一部を回復させたりすることが含まれるものとする。
【0020】
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る骨修復デバイス1の構成を示す平面図、正面図である。骨修復デバイス1は、後方椎体間固定術により椎間板が摘出された隣接する椎体間に挿入される椎間ケージ11と、椎間ケージ11内に収容され、間葉系幹細胞又は間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞が付着した不織布12と、を備える。
【0021】
椎間ケージ11は、体内に埋設されるインプラントの一例であり、隣り合う2つの椎骨の椎体間に装着され、椎体からの荷重を受け止めるかご状の器具である。椎間ケージ11は、生体適合性を有する材料、例えば、チタン又はチタン合金のような金属材料で形成されている。椎間ケージ11は、例えば、ブロック状の中実材に加工を施すことで形成され、隣接する椎体間で荷重を受けても変形しない程度の剛性を有する。また、椎間ケージ11の上面部及び下面部には、椎間ケージ11が椎体間から滑り落ちないように、例えば、溝又は突起からなる滑り止めが形成されている。
【0022】
椎間ケージ11は、上面部及び下面部で開口し、不織布12が収容される収容孔11aと、側面部から収容孔11aに向けて延びる複数の細孔11bと、を備える。収容孔11aは、不織布12が収容される空間の一例であり、例えば、平面視で楕円形又は長円形に形成されている。細孔11bは、貫通孔の一例であり、収容孔11aに収容された不織布12に細胞や栄養素を含む体液が均一に供給されるように、側面部に間隔を空けて複数個設けられている。
図1(b)の背面側にも、表面側と同様に複数の細孔11bが設けられている。
【0023】
椎間ケージ11の先端部は、隣り合う椎体間に押し込めるように丸みを帯びた形状を備える。他方、椎間ケージ11の基端部には、長尺な取り付け治具を取り付け可能な取り付け溝11cが形成されている。術者が取り付け治具を操作し、
図2(a)に示す椎間板が除去された隣り合う椎体間の隙間に椎間ケージ11を押し込むことで、
図2(b)に示すように骨修復デバイス1の椎間ケージ11が隣り合う椎体間に埋設される。
【0024】
図3は、実施の形態に係る不織布12の一例を走査型電子顕微鏡により撮影した図である。不織布12は、細径の繊維を織らずに絡み合わせたシートであり、各繊維に間葉系幹細胞を付着させることができる。不織布12は、任意に変形が可能であるため、椎間ケージ11の内部に収容するのに好適である。
【0025】
不織布12では、1つ1つの繊維に間葉系幹細胞が付着すると共に、繊維の間の空間に細胞懸濁液や体液が流入するように、その繊維径及び繊維密度が調整されている。細胞が繊維に付着するには、不織布12の繊維径を細くすればよい。他方で、不織布12の繊維径を細くしすぎすると強度が弱くなり、繊維密度を大きくしすぎると、細胞が詰まることで、その取り扱いが困難になるおそれがある。間葉系幹細胞の付着性及び不織布12の製造の容易性を考慮すると、不織布12の繊維径は、0.1μm~30μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm~3μmの範囲内であることがより一層好ましい。また、不織布12の繊維密度は、0.2g/m2~150g/m2の範囲内であることが好ましい。
【0026】
不織布12は、生体吸収性材料、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、シルクフィブロイン、ポリ-ε-カプロラクトン、キチン、キトサン、ポリ乳酸及びポリグリコール酸の共重合体、ポリ乳酸及びポリエチレングリコールの共重合体、又はこれらの2つ以上の組合せから形成されている。間葉系幹細胞における成長因子の産生を促進する観点から、不織布12は、ポリ乳酸、シルクフィブロイン、ポリεカプロラクトン、キチン又はキトサンで形成されていることが好ましい。
【0027】
間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞への分化能を有する体性幹細胞である。不織布12に付着させる間葉系幹細胞としては、骨芽細胞の成長因子を産生することで骨欠損部における骨芽細胞の成長を促進するか、骨芽細胞に分化し得るものが選択される。不織布12に付着させる間葉系幹細胞は、上記の条件を満たして入れば、脂肪由来、骨膜由来、滑膜由来、海綿骨由来、骨髄由来、羊膜由来、臍帯血由来、胎盤由来のいずれであってもよい。また、不織布12には、複数種類の間葉系幹細胞を一緒に付着させてもよい。
【0028】
不織布12に付着させる間葉系幹細胞は、患者から採取したものをin vitroで培養するとよい。間葉系幹細胞をin vitroで培養するには、例えば、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)又はヒト血清、好ましくは患者由来のヒト血清を含む培地あるいは無血清培地を用いるとよい。培地にて培養された間葉系幹細胞はそのまま不織布12に付着させてもよく、間葉系幹細胞を分化させて骨芽細胞を発現させてから不織布12に付着させてもよい。骨芽細胞を発現させるには、例えば、間葉系幹細胞の培地に分化誘導因子を添加すればよい。
【0029】
不織布12に間葉系幹細胞を付着させるには、間葉系幹細胞を含む細胞混濁液をしばらくの間、不織布に接触させればよい。以下、
図4を参照して、不織布に間葉系幹細胞を付着させる具体的な手順を説明する。
【0030】
まず、濾過装置を構成する一対のホルダーの間に不織布12を装着する。各ホルダーは、細胞混濁液を流出又は流入可能に構成されている。一対のホルダーで不織布12を挟み込むことで、一方のホルダーから他方のホルダーに向けて細胞懸濁液を流す際に、細胞混濁液が不織布12に接触する。なお、一対のホルダーに挟み込む不織布12は複数枚であってもよい。
【0031】
次に、間葉系幹細胞を含む細胞混濁液を上からゆっくりと滴下させ、不織布12で細胞混濁液を濾過する。すると、間葉系幹細胞が次第に不織布12の繊維に付着する。厳密なメカニズムは不明であるが、間葉系幹細胞を含む細胞混濁液を、時間を掛けて不織布12に濾過させると、不織布12に付着した間葉系幹細胞が活性化する。
【0032】
なお、不織布12に間葉系幹細胞が付着していれば、間葉系幹細胞から骨組織の修復作用を有する成長因子の産生を期待できるため、必ずしも
図4に示す手順により間葉系幹細胞を活性化させる必要はない。
【0033】
以下、実施の形態に係る骨修復デバイス1の製造方法を説明する。まず、間葉系幹細胞が付着した不織布12を入手する。間葉系幹細胞が付着した不織布12を入手するには、例えば、患者又は患者以外の人体から採取した間葉系幹細胞を事前に培養し、不織布12に付着させておくとよい。不織布12は、間葉系幹細胞を付着させる前後のいずれかのタイミングで、椎間ケージ11に適したサイズに切断するとよい。
【0034】
間葉系幹細胞を付着させた不織布12は、そのまま椎間ケージ11の内部に収容させてもよく、包材により包装された不織布パッケージとして保管してもよい。幹細胞が付着した状態で包装された不織布12を含む不織布パッケージは、椎間ケージ11と共に手術用キットとして術者に提供してもよい。
【0035】
次に、間葉系幹細胞が付着した不織布12を椎間ケージ11内に収容する。例えば、ピンセットで不織布12を把持し、椎間ケージ11内で不織布12の偏りが生じないように椎間ケージ11内に押し込めばよい。なお、不織布12が収容された椎間ケージ11は、そのまま隣り合う椎体間に埋め込まれてもよく、不織布12が収容された椎間ケージ11を包装した上で手術まで保管してもよい。
以上が、骨修復デバイス1の製造方法の流れである。
【0036】
以下、実施の形態に係る骨修復デバイス1を用いて術者が実行する後方椎体間固定術の手順について説明する。まず、術者は、対象部位の皮膚を切開し、切開部から脊椎後方組織の両側を展開し、
図2(a)に示すように上下方向に並んで配置された複数の椎弓根にそれぞれスクリューを挿入する。次に、脊椎神経に対する圧迫を解除する除圧を実施する。次に、片側または両側から椎間板を郭清し、代わりに
図2(b)に示すように骨修復デバイス1を1つ又は2つ埋設する。次に、複数の椎弓根に挿入された複数のスクリューに上下方向に配置されたロッドを固定し、脊椎を背側から固定する。次に、皮膚を縫合して切開部を閉じる。
以上が、後方椎体間固定術の一連の手順である。
【0037】
後方椎体間固定術により隣り合う椎体間に埋設された骨修復デバイス1では、椎間ケージ11の収容孔11aに不織布12が収容されているため、不織布12に付着した間葉系幹細胞又は骨芽細胞の作用により、不織布12を足場として骨芽細胞の増殖や成長が促進される。その結果、不織布12を収容していない椎間ケージと比較して、隣り合う椎体同士を早期に固定でき、脊椎の早期の修復を実現できる。
【0038】
以上説明したように、実施の形態に係る骨修復デバイス1は、外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられた椎間ケージ11と、椎間ケージ11の空間に収容され、間葉系幹細胞又は間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞が付着している不織布12と、を備える。このため、骨の早期の修復を実現できる。
【0039】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0040】
(変形例)
上記実施の形態では、椎間ケージ11が収容孔11a及び細孔11bを備えていたが本発明はこれに限られない。椎間ケージ11は、外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられていれば、いかなる形状であってもよい。
【0041】
上記実施の形態では、椎間ケージ11は金属材料で形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(Poly Ether Ether Ketone:PEEK)のような樹脂材料であってもよく、繊維強化プラスチック、セラミックス、人工骨であってもよい。
【0042】
上記実施の形態では、骨修復を促進するために不織布12に間葉系幹細胞を付着させていたが、本発明はこれに限られない。不織布12に付着させる幹細胞は、例えば、ES(Embryonic Stem)細胞、iPS(induced Pluripotent Stem)細胞であってもよい。
【0043】
上記実施の形態では、間葉系細胞が付着された不織布12をそのまま椎間ケージ11内に収容していたが、本発明はこれに限られない。例えば、間葉系細胞が付着された不織布12にゲル化剤を加えて使用することもできる。ゲル化剤としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、細胞外マトリックス混合物、フィブリン、多糖類、コンドロイチンを用いればよい。細胞外マトリックス混合物としては、例えば、コーニング社製のマトリゲル(登録商標)を用いればよく、多糖類としては、例えば、アガロースを用いればよい。
【0044】
上記実施の形態では、椎間ケージ11の内部に間葉系幹細胞が付着した不織布12を収容していたが、本発明はこれに限られない。例えば、不織布12に加えて人体から採取した骨片を一緒に収容してもよい。骨片は、人体から採取した骨を粉砕したものであり、患者自身から採取した骨(局所骨または腸骨)を粉砕したものであることが好ましい。骨片の形状やサイズは、椎間ケージ11の形状やサイズ、椎間ケージ11の埋設箇所を考慮して設定される。骨片が体内で散らばることがないように、骨片を不織布12で包んで椎間ケージ11の内部に収容してもよい。また、椎間ケージ11の内部に不織布12を収容する前、又は収容した後の時点で、骨修復を促進したり免疫反応を抑制したりする薬剤を不織布12に保持させてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、隣り合う椎体間の欠損部に椎間ケージ11を埋設する場合を例に説明したが、本発明はこれに限られない。インプラントは椎間ケージ11に限られず、外部から体液が流入可能な空間が内部に設けられていれば、他の部位に適用可能なインプラントであってもよい。例えば、長管骨の骨切り術において骨と骨とを接合するために、間葉系幹細胞が付着した不織布を内部に収容したインプラントを骨と骨の間に埋設してもよい。
【0046】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 骨修復デバイス
11 椎間ケージ
11a 収容孔
11b 細孔
11c 取り付け溝
12 不織布