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  • 特許-パントテンアミドアナログ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】パントテンアミドアナログ
(51)【国際特許分類】
   C07C 235/10 20060101AFI20240122BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 33/04 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20240122BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20240122BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20240122BHJP
   C07C 255/57 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C07C235/10 CSP
A61K31/166
A61K31/277
A61P33/02
A61P33/04
A61P33/06
C07C231/02
C07C253/30
C07C255/57
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021538231
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019087147
(87)【国際公開番号】W WO2020141155
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18215980.6
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512186531
【氏名又は名称】エムエムヴィ メディシンズ フォア マラリア ヴェンチャー
【氏名又は名称原語表記】MMV MEDICINES FOR MALARIA VENTURE
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】スカルクウェイク、ヨセフス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムケンス、ペドロ ハロルド ハン
(72)【発明者】
【氏名】デイスリング、クーン ヤーコブ
(72)【発明者】
【氏名】ボナート、ロジャー ビクター
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 235/10
A61K 31/166
A61K 31/277
A61P 33/06
A61K 45/00
A61P 33/02
A61P 33/04
C07C 231/02
C07C 253/30
C07C 255/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、環Eは、場合により置換されていてもよいフェニル環を表す]
によって表されるパントテンアミドアナログからなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
環Eが、ニトリルおよびハロから独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Eが、クロロおよびフルオロから独立して選択される1~3個の置換基で置換されたフェニルを表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
環Eが、3個のフルオロで置換されたフェニルを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
環Eが、1個のニトリル基で置換されたフェニルを表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
以下に示される構造を有する、化合物(A)から(J)および(A1)~(J1)から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【化2】
【化3】
【請求項7】
化合物(A1)、(B1)、(C1)および(E1)から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
化合物(A1)である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
抗マラリア剤をさらに含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
原虫によって引き起こされる疾患を治療または予防するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物または製剤。
【請求項12】
前記疾患が、プラスモジウム(Plasmodium)属原虫、トリパノソーマ(Trypanosoma)属原虫、ジアルジア(Giardia)属原虫、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属原虫、アメーバ(Amoeba)属原虫、トキソプラズマ(Toxoplasma)属原虫、トリコモナス(Trichomonas)属原虫およびリーシュマニア(Leishmania)属原虫から選択される原虫種によって引き起こされる疾患である、請求項11に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項13】
前記疾患が、プラスモジウム属原虫によって引き起こされる疾患である、請求項11~12のいずれか一項に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項14】
前記プラスモジウム属原虫が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)または二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)である、請求項13に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項15】
前記疾患が、マラリアである、請求項11~14のいずれか一項に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項16】
前記治療が、さらなる抗マラリア剤の投与を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項17】
前記さらなる抗マラリア剤が、アトバコン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、プリマキン、プログアニル、キニジン、キニーネ、キナクリン、ピリメタミン-スルファドキシン、ハロファントリン、メフロキン、ドキシサイクリン、ルメファントリン、アモジアキン、ピペラキン、フェロキン、タフェノキン、アルテロラン、ピロナリジン、アルテミシニン、アーテスネート、アルテメテル、ジヒドロアルテミシニン、アルテニモール、(3R,3’S)-5,7’-ジクロロ-6’-フルオロ-3’-メチルスピロ[1H-インドール-3,1’-2,3,4,9-テトラヒドロピリド[3,4-b]インドール]-2-オン2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル-N-[4-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン4-(2-{4-[(1s,4s)-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3’-[1,2,4]トリオキソラン-5’,2’’-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル]フェノキシ}エチル)モルホリン5-(4-メチルスルホニルフェニル)-3-[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]ピリジン-2-アミン、および2-アミノ-1-[3-(4-フルオロアニリノ)-2-(4-フルオロフェニル)-8,8-ジメチル-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7-イル]エタノンからなる群から選択される、請求項16に記載の医薬組成物または製剤。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、当該方法が、前記化合物の中間体として式(III)の化合物を調製することを含み、当該調製が、
a)式(II)の保護された1,2-ジアミノプロパン[式中、Zは、アミン保護基を表す]を用意する工程;
b)パントラクトンを用意する工程;および
c)前記1,2-ジアミノプロパンを、式(III)の化合物の形成をもたらす条件下で、前記パントラクトンと反応させる工程
を連続して含む、方法。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗マラリア活性を有する化合物および組成物に関する。より詳細には、本発明は、ヒトマラリア原虫(の複数の段階)の強力な阻害剤であり、さらに代謝分解に対して優れた耐性を有する、パントテンアミドの新規アナログを提供する。ヒトおよび動物におけるマラリアの治療的および/または予防的処置におけるこれらの化合物および組成物の使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、三大感染症の一つであり、報告によれば、世界中で、主に熱帯地方の開発途上国において、一年あたり約2億人の感染および40万人を超える死亡を引き起こしている。この疾患は、ヒトにおいてマラリアを引き起こす4種の病原体(マラリア原虫)のいずれか、とりわけ、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫(これらはすべてアピコンプレックス門に属する)に感染した蚊種によって伝播される。現在、マラリアに対する有効なワクチンはないため、この疾患の制御は、抗マラリア化学療法に強く依存している。現在の抗マラリア剤に対する抗生物質耐性の報告の増加は、新規な作用機序を有する抗マラリア化合物の開発の緊急の必要性を強調している。それにもかかわらず、前世紀の40年代後半のクロロキンの発見から、わずか数クラスの新たな抗マラリア薬が導入されているだけである(EastmanおよびFidock,2009,Nature Rev Microbiol 7:864-874)。細菌に対する抗生物質として、第二次世界大戦前のペニシリンの発見および導入の直後に、細菌、真菌および原虫寄生生物に対する多数の抗生物質候補が合成された。これらの化合物の多くは、ビタミンを含む天然代謝産物の誘導体であり、それらの代謝拮抗剤候補としての使用を調査することが意図されている。
【0003】
すでに70年代初頭には、パントテン酸に由来するアミドが、インビトロで抗生物質活性を持つことが報告されている。その後、パントテン酸の誘導体が合成され、それらの抗細菌、抗真菌および抗マラリア活性が試験されている(Spryら,2008,FEMS Microbiol Rev 32:56-106)。パントテン酸塩またはパントテン酸(ビタミンB5)は、CoA生合成のために必要とされ、多数の細菌、真菌および原虫の生存および/または増殖のために必須の律速栄養素である。ある範囲のパントテン酸塩アナログは、細菌、真菌およびマラリア原虫に対する活性を持つことが報告されている(Spryら,2008,上記)。1970年に、パントテン酸に由来するアミドがインビトロで抗細菌活性を持つことが最初に報告された。N-ペンチルパントテンアミド(N5-Pan)およびN-ヘプチルパントテンアミド(N7-Pan)がそのプロトタイプであるパントテンアミドは、グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して活性がある。過去数十年の間、これらパントテンアミドの多くが合成され、想定される作用機序が詳細に研究されてきた。
【0004】
パントテンアミドは、CoA生合成経路における最初の酵素であるパントテン酸キナーゼ(PanK)の基質または阻害剤(競合的またはアロステリックのいずれか)として機能することが示されている。結合の際に、PanKが触媒するパントテン酸塩のリン酸化は、部分的にまたは完全に阻害され得る。パントテンアミドがPanKの基質として機能し、天然の基質であるパントテン酸と競合する場合、生じる4’-ホスホパントテンアミドは、大腸菌(E.coli)および熱帯熱マラリア原虫について示されたように、CoA生合成機構によってさらに代謝され、CoAのアナログを生じ得る(bioRxiv 256669)。このようなCoAアナログは、アシルキャリヤー(アシル基運搬)タンパク質に組み込まれ、それによって、CoAの4’-ホスホパンテテイン部分が活性であることを必要とする細菌の脂肪酸生合成におけるその機能を阻害することが見出された。さまざまな標的生物(細菌、真菌、原虫)における抗菌活性を最終的にもたらす機構が、CoA生合成、脂肪酸生合成もしくは別のCoAを利用するプロセス、またはこれら組み合わせの阻害の結果であるか否かは、未解決のままである。
【0005】
数十年にわたって知られていた、細菌、真菌および/または原虫の代謝経路に対するそれらの潜在的な選択性にも関わらず、パントテンアミド化合物は未だ臨床に到達していない。
【0006】
Spryら,2013,Plos One 8:e54974は、赤内期熱帯熱マラリア原虫(寄生生物)の増殖に対する一連のパントテンアミドの効果を研究した。Spryらは、標準的なインビトロ培養条件下において、パントテンアミドが、中程度の効力ではあるが寄生生物の増殖を阻害することを見出した。Spryらはまた、増殖アッセイのために使用される寄生生物培養培地(一般に使用される血清代替物のAlbumax IIまたはヒト血清を含有する)を37℃で長期間プレインキュベートすると、パントテンアミドの抗マラリア原虫効力が大幅に増強されたことを開示している。その結果として、新たに調製された血清含有培地において効果を有さないマイクロモル濃度以下の濃度のパントテンアミドが、プレインキュベートされた培地中において寄生生物の増殖を効果的に阻害した。Spryらは、この知見を、寄生生物培養培地におけるパンテテイナーゼ活性の存在と結びつけた。
【0007】
これらの知見は、Jansenら,2013,Antimicrob Agents Chemother 57:4794-4800に記載されたものと一致する。Jansenらは、最近、パントテンアミドが血清の存在下で抗菌剤として活性ではないことを示し、パントテンアミドがバニン(vanin)ファミリーの遍在するパンテテイナーゼによって加水分解されることを見出した。これに対処するために、パントテン酸塩スキャフォールドに基づく一連のパンテテイナーゼ阻害剤が合成され、これらがナノモル濃度範囲で血清パンテテイナーゼ活性を阻害することが判明した。質量分光分析により、これらパンテテイナーゼ阻害剤の添加が、血清によるパントテンアミドの加水分解を防止することが示された。これら新規パンテテイナーゼ阻害剤と、N5-PanおよびN7-Panのようなプロトタイプのパントテンアミドとの組み合わせは、血清の存在下においてさえ、特にグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌および化膿性連鎖球菌)に対して、インビトロで抗菌活性を発揮する。これらの結果は、宿主のパンテテイナーゼによる分解から保護される場合、パントテンアミドが、潜在的に有用な抗菌剤であることを示す。これらの知見はまた、細菌および原虫(マラリア)感染における適用について、国際公開第2011/152720号および国際公開第2011/152721号の特許出願に記載されている。
【0008】
同時に、これらのデータは、血清中で起こるパンテテイナーゼが媒介するパントテンアミド分解と一致し、これは、インビトロで確立されたプラスモジウム属の阻害剤としての(とりわけ)それらの有望な活性にもかかわらず、パントテンアミドがこれまで臨床診療にたどり着かなかったもっともらしい理由を形成する。
【0009】
国際公開第2016/072854号において、パンテテイナーゼの加水分解活性に非常に耐性である新たなクラスのパントテンアミドアナログが開示された。これらの化合物は、アミド結合の1つ、すなわち、パントテン酸に元からあるものではないアミド結合が、逆の方向で組み込まれている特徴を有する。国際公開第2016/6072854号において、化合物が、体液中(すなわち、エクスビボ)で十分な安定性を有するが、抗菌活性が保持されることを示した。これは、パントテンアミドアナログの実際の臨床開発に向けた重要な前進であった。
【0010】
本発明の目的は、i)パンテテイナーゼ加水分解活性に対する耐性、ii)原虫、特に、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)または二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)などのプラスモジウム属のタイプに属する寄生性原虫に対する高い抗菌活性、ならびにiii)代謝分解に対する高い耐性を組み合わせた、従来技術のパントテンアミドアナログの改善された改変体を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載のパントテンアミドアナログにより上記本発明の目的が実現されることを見出した。
【0012】
国際公開第2016/072854号に開示された従来技術のパントテンアミドアナログおよび誘導体と比較して、本発明のアナログの特徴は、特に、逆アミドに隣接する部分に関する。分子の中央部分における逆アミドに隣接する炭素原子は、メチル置換基を含む。2個の窒素原子は、2個の炭素原子のリンカーによって分離される。分子の末端部分の逆アミドに隣接する部分は、逆アミドのカルボニル基に直接結合した(ヘテロ)芳香族の場合により置換された環または環系である。
【0013】
本明細書において提供される例において説明されるように、本発明のパントテンアミドアナログは、特に、マラリア原虫の無性血液段階および生殖母細胞に対する低いIC50値を有する。本発明の特に好ましいパントテンアミドアナログは、熱帯熱マラリア原虫寄生生物の無性血液段階および/または生殖母細胞に対して、10nM以下、例えば5nM以下のIC50値を有する。
【0014】
また、本明細書において提供される例において説明されるように、本発明のパントテンアミドアナログは、低い肝代謝によって特徴付けられる。本発明の特に好ましいパントテンアミドアナログは、2.5μl/分/10個細胞未満の固有のクリアランス値を有する。
【0015】
本明細書において提供される例は、マラリア感染に対するヒト化マウスモデルにおけるインビボの有効性試験の結果を記載する。本発明のパントテンアミドアナログの改善されたインビボ有効性は、低いIC50値を保ちながら、インビトロで確立された、パンテテイナーゼの加水分解活性に対する耐性および低い肝代謝を確立した。
【0016】
したがって、本発明は、それを必要とするヒトまたは動物対象において、原虫感染症、特に、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫もしくは二日熱マラリア原虫などのプラスモジウム属のタイプに属する寄生性原虫の感染症の治療的および/または予防的処置における使用のために特に好適な新規パントテンアミドアナログを提供する。本発明は、本パントテンアミドアナログを含む医薬製剤、ならびにパントテンアミドアナログおよびパントテンアミドアナログを含む医薬製剤の治療的および/または予防的使用をさらに提供する。
【0017】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の記載および例に基づいて、当業者に明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の態様は、式(I):
【化1】
[式中、環Eは、場合により置換されていてもよいフェニル環を表す]
によって表されるパントテンアミドアナログからなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を対象とする。
【0019】
本発明の化合物は、本明細書において「パントテンアミドアナログ」と称される。この用語が使用される理由は、本発明の化合物が、本明細書に既に示された説明および構造式に基づいて、当業者に明らかであるように、パントテンアミドの(逆アミド)アナログおよびその誘導体であるからである。本発明の化合物は、本明細書において「抗原虫化合物」とも称される。本明細書で既に示されるように、本発明の化合物は、マラリアを引き起こすことが知られている、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫または二日熱マラリア原虫などのプラスモジウム属のタイプに属する寄生性原虫に対して特に有効である。
【0020】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明による化合物の塩を指す。このような塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)と形成される酸付加塩、ならびに酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルモ酸(palmoic acid)、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびポリガラクツロン酸などの有機酸と形成される塩から形成される。
【0021】
本発明の文脈において、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物または多形体が包含される。
【0022】
特定の好ましい実施形態において、環Eは、フェニルを表し、このフェニルは、無置換であってもよく、または、独立して、ニトリルおよびハロから選択される、好ましくは、ニトリル、クロロおよびフルオロから選択される、好ましくは、ニトリルおよびフルオロから選択される、好ましくは、フルオロの1~3個の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
特定の好ましい実施形態において、環Eは、置換されたフェニル、最も好ましくは、独立して、ニトリルおよびハロから選択される、好ましくは、ニトリル、クロロおよびフルオロから選択される、好ましくは、ニトリルおよびフルオロから選択される、好ましくは、フルオロの1、2または3個の置換基で置換されたフェニル環を表す。
【0024】
特定の好ましい実施形態において、環Eは、置換されたフェニル環、最も好ましくは、独立して、クロロおよびフルオロから選択される1、2または3個の置換基で置換されたフェニル環を表す。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、環Eは、置換されたフェニル環、最も好ましくは、1個のニトリル基で置換されたフェニル環を表す。
【0026】
1つの特定の好ましい実施形態において、環Eは、オルトフルオロ基と、好ましくは、フルオロ、クロロおよびニトリルから、好ましくは、フルオロおよびニトリルから選択される1個または2個のさらなる置換基とを含む、フェニル環を表す。
【0027】
1つの特定の好ましい実施形態において、環Eは、メタフルオロ基と、場合により、好ましくは、フルオロ、クロロおよびニトリルから選択される、好ましくは、フルオロの1個または2個のさらなる置換基とを含む、フェニル環を表す。
【0028】
1つの特定の好ましい実施形態において、環Eは、メタニトリル基と、場合により、好ましくは、フルオロおよびクロロから選択される、好ましくは、フルオロの1個のさらなる置換基とを含む、フェニル環を表す。
【0029】
特定の好ましい実施形態において、環Eは、トリフルオロ-ベンジル、ジフルオロ-ベンジル、フルオロ-ベンジル、フルオロ-ベンゾニトリル、フルオロ-クロロ-ベンジルおよびジフルオロ-クロロ-ベンジルからなる群から選択される部分を表す。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書において定義されるパントテンアミドアナログが提供され、このパントテンアミドアナログは、10nM未満、好ましくは、8nM未満、7nM未満、6nM未満または5nM未満の熱帯熱マラリア原虫の無性血液段階の寄生生物に対するIC50値によって特徴付けられる。熱帯熱マラリア原虫の無性血液段階の寄生生物のIC50値は、本明細書の実施例15において定義されるプロトコールに従って決定される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書において定義されるパントテンアミドアナログが提供され、このパントテンアミドアナログは、0.7μl/分/10個細胞未満、好ましくは、0.5μl/分/10個細胞未満、0.4μl/分/10個細胞未満、または0.3μl/分/10個細胞未満の肝細胞リレーアッセイにおける固有のクリアランス(Clint)によって特徴付けられる。肝細胞リレーアッセイにおける固有のクリアランスは、本明細書の実施例16において定義されるプロトコールに従って決定される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書において定義されるパントテンアミドアナログが提供され、このパントテンアミドアナログは、2000分超、好ましくは、2500分超、3000超、または3500分超の肝細胞リレーアッセイにおける半減期(T1/2)によって特徴付けられる。肝細胞リレーアッセイにおける半減期は、本明細書の実施例16において定義されるプロトコールに従って決定される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書において定義されるパントテンアミドアナログが提供され、このパントテンアミドアナログは、熱帯熱マラリア原虫のPf3D70087/N9株に感染した雌NODscidIL2Rγヌルマウスにおけるインビボ有効性によって特徴付けられ、前記有効性は、2.0超、好ましくは、2.4超、2.5超、2.6超、2.7超、2.8超、2.9超または3.0超の50mg/kg p.o.での寄生虫血症における対数減少として表される。本明細書で定義されるインビボ有効性は、本明細書の実施例17に記載されるプロトコールに従って決定される。
【0034】
本発明の好ましい抗原虫化合物としては、第1表に示される構造を有する化合物(A)~(J)が挙げられる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
本発明の好ましい抗原虫化合物は、以下のIUPAC名(MarvinSketchバージョン16.8.15.0(ChemAxon)を使用して作成)を有する:
A1:(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド
B1:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
C1:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-シアノフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
D1:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
C1:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
F1:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
G1:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
H1:(2R)-N-[(2S)-2-[(3,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
I1:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド
J1:(2R)-N-[(2S)-2-[(2,5-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド。
【0038】
特に好ましい抗原虫化合物としては、第1表に示される構造を有する化合物(A)、(B)、(C)および(E)が挙げられる。
【0039】
最も好ましい実施形態において、本発明の抗原虫化合物は、第1表に示される構造を有する化合物(A)である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の抗原虫化合物としては、第1表に示される構造を有する(A1)~(J1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
非常に好ましい抗原虫化合物としては、第1表に示される構造を有する(A1)、(B1)、(C1)および(E1)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
最も好ましい実施形態において、本発明の抗原虫化合物は、第1表に示される構造を有する(A1)で表される化合物である。
【0043】
本発明の化合物は、少なくとも2個のキラル中心を含有し、したがって、エナンチオマーおよびジアステレオマーなどの立体異性体として存在する。本発明によれば、本明細書において表される化学構造、したがって本発明の化合物は、他に明記されていない限り、例えば、ナッタ投影法による、対応する化合物の立体異性体のすべてを包含する。したがって、本発明によれば、特定の立体化学を示さない構造式によって本明細書において表される化学構造、したがって本発明の化合物は、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーなどの異なる立体異性体の立体化学的に純粋な形態および混合物の両方を包含する。したがって、本発明は、ラセミ混合物として、またはジアステレオマー混合物として、エナンチオマー的に純粋な形態、エナンチオマー的に濃縮された形態、ジアステレオマー的に純粋な形態、ジアステレオマー的に濃縮された形態の式(I)の化合物を包含する。
【0044】
非常に好ましい実施形態において、立体異性体の1つが、化合物の60モル%超、80モル%超、90モル%超、95モル%超、97モル%超、98.5モル%超、99モル%超を構成する、式Iの化合物が提供される。本発明によれば、一般的には、化合物は、立体異性体の1つが、化合物の90モル%超、95モル%超、97モル%超、98.5モル%超、99モル%超を構成する場合、立体化学的に純粋と考えられる。
【0045】
エナンチオマー混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、または化合物をキラル溶媒中で結晶化するなどの周知の方法によって、それらの構成成分のエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。
【0046】
ジアステレオマー混合物は、2つの化合物を分離するための周知の方法、例えば、それらの異なる融点、沸点などに基づいて、それらの構成成分のジアステレオマーに分割することができる。
【0047】
立体化学的に純粋な化合物は、立体化学的に純粋な中間体、試薬および触媒から、周知の不斉合成法によって得ることもできる。
【0048】
本発明の特に好ましい実施形態において、パントテンアミドアナログは、D(+)-パントテンアミドの「立体化学的に純粋な」(すなわち、上記の定義による)誘導体またはアナログ、すなわち、D(+)-パントテンアミドにおける対応する立体中心と同じ立体化学的配置を持つ「立体化学的に純粋な」物質である。
【0049】
本発明の抗原虫化合物を考慮すると、2つの立体中心aおよびbは、以下のように特定することができる。
【化2】
【0050】
本発明による好ましい実施形態において、立体中心aの絶対配置がRであり、および/または立体中心bの絶対配置がSである、好ましくは、立体中心aの絶対配置がRであり、および立体中心bの絶対配置がSである、本明細書において先に定義された抗原虫化合物が提供される。非常に好ましい実施形態において、本発明による化合物は、本明細書において既に定義されたように、立体化学的に純粋であり、立体中心aの絶対配置はRであり、および立体中心bの絶対配置はSである。
【0051】
本発明には、式(I)の化合物のプロドラッグも包含される。「プロドラッグ」という用語は、例えば、血液中での加水分解によって、インビボで迅速に変換されて、上記式の親化合物を生じる、化合物を指す。詳細は、T.HiguchiおよびV.Stella,「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」,the A.C.S. Symposium Seriesの14巻、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design,Edward B.Roche編,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987において提供され、これら双方とも、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0052】
また、本発明の化合物は、非溶媒和形態、および薬学的に許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどとの溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。本発明の化合物は、水和物などの溶媒和物の形態であってもよい。すべての形態が本発明の範囲内である。
【0053】
本発明の化合物は、結晶質または非晶質生成物として提供することができる。それらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥または蒸発乾燥などの方法によって、例えば、固体充填物、粉末またはフィルムとして得てもよい。マイクロ波またはラジオ波周波数乾燥を、この目的のために使用してもよい。
【0054】
本発明の化合物は、1つのアミノ基が保護された1,2-ジアミノプロパンを、本発明のパントテンアミドアナログの骨格の形成をもたらす条件下で、パントラクトンと反応させる工程を含む方法を使用して、効率的に合成することができる。
【0055】
したがって、本発明は、化合物の製造方法であって、
a)式(II)の保護された1,2-ジアミノプロパンを準備する工程
【化3】
[式中、Zは、アミノ保護基を表す];
b)パントラクトンを準備する工程;および
c)前記1,2-ジアミノプロパンを、式(III)の化合物の形成をもたらす条件下で、前記パントラクトンと反応させる工程
【化4】
を含む、方法を提供する。
【0056】
反応を、下記の反応スキームにおいて図示する。
【化5】
【0057】
好ましい実施形態において、アミン保護基は、9-フルオレニルメチルカルバメート、t-ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、p-メトキシベンジルカルボニル、ベンジル、3,4-ジメトキシベンジルからなる群から選択され、好ましくは、ベンジルカルバメートである。
【0058】
非常に好ましい実施形態において、工程a)において準備される式(II)の化合物の60モル%超、80モル%超、90モル%超、95モル%超、97モル%超、98.5モル%超、99モル%超は、単一の立体異性体、好ましくは、S-異性体である。
【0059】
非常に好ましい実施形態において、工程b)において準備されるパントラクトンの60モル%超、80モル%超、90モル%超、95モル%超、97モル%超、98.5モル%超、99モル%超は、単一の立体異性体、好ましくは、D-(-)-パントラクトンである。
【0060】
好ましい実施形態において、反応は、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、好ましくは、エタノールを含む溶媒中で行われる。
【0061】
好ましい実施形態において、反応は、室温よりも高い温度、好ましくは、還流条件下で行われる。
【0062】
好ましい実施形態において、反応は、塩基、好ましくは、立体障害のある塩基、より好ましくは、立体障害のあるアミン塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で行われる。
【0063】
実施形態において、方法は、本明細書において既に定義されたように、式(III)の化合物を式(I)の化合物へと反応させる工程d)をさらに含む。
【0064】
本発明の別の態様は、式(III)
【化6】
[式中、Zは、アミノ保護基を表す]
の化合物に関する。好ましい実施形態において、Zは、9-フルオレニルメチルカルバメート、t-ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、p-メトキシベンジルカルボニル、ベンジル、3,4-ジメトキシベンジルからなる群から選択され、好ましくは、ベンジルカルバメートである。式(III)の化合物を考慮すると、2つの立体中心aおよびbは、以下のように特定することができる。
【化7】
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、立体中心aの絶対配置がRであり、および/または立体中心bの絶対配置がSである、好ましくは、立体中心aの絶対配置がRであり、および立体中心bの絶対配置がSである、本明細書において先に定義された抗原虫化合物が提供される。非常に好ましい実施形態において、本発明による化合物は、本明細書において既に定義されたように、立体化学的に純粋であり、立体中心aの絶対配置はRであり、および立体中心bの絶対配置はSである。
【0066】
本発明の他の態様は、
・ それを必要とするヒトまたは動物対象を治療するための医薬としての、本明細書において既に定義された本発明のパントテンアミドアナログの使用;
・ それを必要とするヒトまたは動物対象の治療的および/または予防的処置の方法であって、前記方法が、有効量の本発明のパントテンアミドアナログを投与することを含む、方法;
・ 細胞において原虫感染症を不活性化するための方法であって、細胞を、有効量の少なくとも1種の本発明による化合物と接触させる工程を含む、方法、および/または
・ それを必要とするヒトまたは動物対象を治療するための医薬の製造における、本発明のパントテンアミドアナログの使用
に関する。
【0067】
典型的には、これらの方法および使用は、それを必要とするヒトまたは動物対象における原虫感染症の治療または予防、より好ましくは、プラスモジウム属のタイプに属する寄生性原虫による感染症の治療および/または予防に関する。実施形態において、本明細書において提供される方法および使用は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫および二日熱マラリア原虫からなる群から選択される、好ましくは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫からなる群から選択される、1種以上の寄生性原虫、好ましくは、熱帯熱マラリア原虫による感染症の治療または予防に関する。
【0068】
別の実施形態において、本明細書において定義される方法および使用は、原虫によって引き起こされる疾患の予防および/または治療、より好ましくは、プラスモジウム属のタイプに属する寄生性原虫による感染症の治療および/または予防に関する。実施形態において、本明細書において提供される方法および使用は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫および二日熱マラリア原虫からなる群から選択される、好ましくは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫からなる群から選択される、1種以上の寄生性原虫、好ましくは、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされる疾患の予防および/または治療に関する。
【0069】
1つの実施形態において、前記疾患は、マラリア、アメーバ症、ジアルジア症、トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム症、トリコモナス症、シャーガス病、リーシュマニア症、睡眠病、赤痢、アカントアメーバ角膜炎、原発性アメーバ性髄膜脳炎からなる群から選択される疾患、好ましくは、マラリアである。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、これらの使用および方法は、それを必要とするヒト対象、特に、本明細書で定義された原虫に感染しているか、またはそれに感染する危険性がある対象、および/または本明細書において定義される疾患または状態を誘引する危険性がある対象の治療に関する。
【0071】
本明細書で使用される場合、当該技術分野において十分に理解されるように、「治療」は、臨床結果を含む、有益または所望の結果を得るためのアプローチである。有益または所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、1つ以上の症状または状態の緩和または改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の伝播の予防、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または軽減、および寛解を挙げることができる。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較した生存期間の延長も意味し得る。「予防(prevention)」もしくは「予防(prophylaxis)」という用語、またはそれらの同義語は、本明細書で使用される場合、患者が感染症または感染症に伴う疾患を誘引する危険性または可能性の低下を指す。
【0072】
本発明の化合物の「治療有効量」、「有効量」または「十分量」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む、対象に投与される場合に、臨床結果を含む有益または所望の結果をもたらすのに十分な量であり、そのため、「有効量」またはその同義語は、それが適用される文脈に依存する。疾患の文脈において、本発明の化合物の治療有効量は、哺乳動物における原虫感染症を、治療する、調節する、弱める、逆転させる、またはそれに影響を及ぼすために使用される。「有効量」は、原虫感染症および/またはそのような原虫感染症に伴う疾患を、治療、予防または阻害するのに十分な化合物の量を意味することが意図される。
【0073】
ある特定の実施形態において、先に記載されたように、原虫感染症に伴う疾患または障害は、マラリアである。したがって、有効量は、ヒトまたは動物対象に投与される場合に、マラリアまたはマラリアに伴う疾患もしくは障害、あるいは熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫もしくは二日熱マラリア原虫などのマラリア原虫による感染症を、予防または阻害するのに十分な量である。このような量に対応する本発明の所与の化合物の量は、所与の薬物または化合物、医薬製剤、投与の経路、疾患または障害の種類、治療される対象または宿主の固有性などさまざまな要因に応じて変わるが、それにもかかわらず、当業者によって適宜決定することができる。また、本明細書で使用される場合、本発明の化合物の「治療有効量」は、例えば、発熱、貧血、および重症の場合には潜在的に死をもたらす昏睡などの臨床症状によって決定される、マラリアを予防、阻害、抑制または低減させる量である。
【0074】
ヒト患者への投与のためには、本発明のパントテンアミドアナログの一日あたりの用量の総量は、典型的には、体重1kgあたり0.0001mg~100mg、好ましくは、体重1kgあたり0.001mg~50mg、より好ましくは、体重1kgあたり0.005mg~25mg、最も好ましくは、体重1kgあたり0.01mg~10mgの範囲内であり、正確な量は、当然ながら、投与の様式および/または疾患もしくは状態の重症度に依存する。例えば、静脈内投与による治療のための一日投薬量は、典型的には、経口治療の場合よりもかなり少ない。
【0075】
本発明のパントテンアミドアナログは繰返し投与されることが好ましい。好ましくは、化合物は、患者に、1日に1回、2回または3回投与される。本発明の化合物が、1日に1回未満、例えば、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、または週に1回投与される実施形態も想定される。さらに低頻度の投与は、デポ剤を使用して実現可能であり得る。
【0076】
治療は、対象の(潜在的な)感染性原虫への曝露の前、その間、またはその後に開始され得る。治療期間の長さは、感染症および/または疾患の重症度、患者の年齢、使用されるパントテンアミドアナログの濃度および活性などのさまざまな要因に依存する。典型的には、治療は、少なくとも1日、より好ましくは、少なくとも2日、より好ましくは、1週間、より好ましくは、少なくとも2週間、より好ましくは、少なくとも3週間継続する。当業者には一般に公知であるように、反復および連続投与は、典型的には、抗原虫薬に対する耐性の発生の危険性を低減し、任意の特定の理論に縛られることを望まないが、これは、本発明の化合物および組み合わせに適用される可能性があると仮定される。
【0077】
治療または予防のために使用される化合物の有効投薬量が、特定の治療または予防レジメンの過程にわたって増加または減少されてもよいことも理解される。投薬量の変化は、当該技術分野において公知の標準的な診断アッセイによってもたらされ、明らかになり得る。いくつかの場合において、慢性投与が必要となる場合がある。
【0078】
本発明のパントテンアミドアナログは、従来の経路のいずれかにより投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下を含んでいてもよく、化合物が口から直接血流に入るバッカルまたは舌下投与を用いてもよい。非経口投与は、血流、筋肉、または内臓器官への直接投与を含んでいてもよい。非経口投与のための好適な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内および皮下が挙げられる。非経口投与のための好適なデバイスとしては、針(極微針を含む)注入器、無針注入器および点滴技法が挙げられる。本発明の化合物は、さらにまた、経皮、局所、鼻腔内または肺内に投与されてもよい。本発明のパントテンアミドアナログは、経口、非経口または局所に、好ましくは、経口または静脈内に投与されることが好ましい。
【0079】
本発明のパントテンアミドアナログは、典型的には、特定の投与の経路のために設計および最適化された医薬組成物として、ヒトまたは動物対象に投与されてもよい。したがって、本発明の別の態様は、本発明によるパントテンアミドアナログを含む医薬組成物に関する。
【0080】
一般に、パントテンアミドアナログは、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤として投与される。「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明のパントテンアミドアナログ以外の任意の成分を指す。賦形剤の選択は、特定の投与の様式、溶解度および安定性に対する賦形剤の効果、そして剤形の性質などの要因に相当程度依存する。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のパントテンアミドアナログを0.001mg~1000mg、好ましくは、0.01mg~250mg、より好ましくは、0.05mg~100mg、最も好ましくは、0.1~50mgの範囲内の総量で含む、ヒトにおける使用のための医薬組成物が提供される。
【0082】
本発明のパントテンアミドアナログの送達のための好適な組成物およびそれらの調製のための方法は、当業者には容易に明らかである。そのような組成物およびそれらの調製のための方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,第19版(Mack Publishing Company,1995)に見出され得る。
【0083】
経口治療投与のための特に好適な製剤としては、錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハーなどが挙げられる。経口投与のために好適な製剤としては、錠剤などの固形製剤、粒子、液体または粉末を含有するカプセル剤、ロゼンジ剤(液体が充填されたものを含む)、咀嚼剤、多粒子およびナノ粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム、腔坐剤、噴霧剤および液体製剤が挙げられる。
【0084】
液体製剤としては、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。そのような製剤は、軟質または硬質カプセルの充填剤として用いられてもよく、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または好適な油、ならびに1種以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤はまた、固体、例えば、サッシェからの再構成によって調製されてもよい。
【0085】
本発明のパントテンアミドアナログはまた、LiangおよびChen(2001)によるExpert Opinion in Therapeutic Patents,1-1(6),981-986に記載されているような、速溶性、速崩壊性剤形に組み込まれてもよい。
【0086】
錠剤剤形のためには、用量にもよるが、パントテンアミドアナログは、剤形の1重量%~80重量%、より典型的には、剤形の5重量%~60重量%を構成してもよい。薬物に加えて、錠剤は、一般に、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%~25重量%、好ましくは、5重量%~20重量%を構成する。結合剤は、一般に、錠剤製剤に凝集性を付与するために使用される。好適な結合剤としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤はまた、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよび二塩基性リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有していてもよい。錠剤はまた、場合により、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤、ならびに二酸化ケイ素およびタルクなどの流動促進剤を含んでいてもよい。存在する場合、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%~5重量%を構成してもよく、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%~1重量%を構成してもよい。錠剤は、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は、一般に、錠剤の0.25重量%~10重量%、好ましくは、0.5重量%~3重量%を構成する。他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香味剤、保存剤および矯味剤が挙げられる。例示的な錠剤は、最大で約80%の薬物、約10重量%~約90重量%の結合剤、約0重量%~約85重量%の希釈剤、約2重量%~約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%~約10重量%の滑沢剤を含有する。錠剤ブレンドは、直接またはローラーにより圧縮されて、錠剤を形成し得る。あるいは、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部は、打錠前に、湿式造粒、乾式造粒もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押し出されてもよい。最終製剤は、1以上の層を含んでいてもよく、コーティングされていてもよく、またはコーティングされていなくてもよく、それは、さらにカプセル化されていてもよい。さまざまな他の材料が、コーティングとして、またはそうでなければ投薬量単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤は、シェラック、糖またはその両方でコーティングされていてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、甘味剤としての活性化合物のスクロース、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ香料などの香味剤を含有していてもよい。当然ながら、任意の投薬量単位形態の調製において使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、用いられる量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物は、持続放出性の調製物および製剤に組み込まれてもよい。錠剤の処方は、H.LiebermanおよびL.LachmanによるPharmaceutical Dosage Forms:Tablets,第1巻(Marcel Dekker,New York、1980)において論じられている。本発明の目的のために好適な放出調節製剤は、例えば、高エネルギー分散物、ならびに浸透性粒子およびコーティング粒子であり、Vermaら(2001)によるPharmaceutical Technology On-line,25(2),1-14に見出される。徐放性を達成するためのチューインガムの使用は、国際公開第00/35298号に記載されている。
【0087】
本発明のパントテンアミドアナログはまた、非経口的に投与されてもよい。本発明の化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびアルコールを含むかまたは含まないそれらの混合物、ならびに油中で調製することもできる。保存および使用の通常の条件下、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含有する。当業者には、好適な製剤を調製する方法は公知であろう。好適な製剤の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2003-第20版)および1999年発行のThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。注射での使用のために好適な医薬品形態は、水溶液または分散液、および注射可能溶液または分散液の即時調製のための粉末を含む。すべての場合において、その形態は、無菌でなければならない。さらにまた、最終の注射剤は、容易に注射可能な程度に流動でなければならない。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合では、必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射可能組成物の長期吸収は、組成物中での吸収を遅延させる化学物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。無菌注射可能溶液は、適切な溶媒中で必要な量の活性化合物を上記に列挙されたさまざまな他の成分と合わせ、必要により濾過滅菌を行うことによって調製される。一般に、分散液は、さまざまな滅菌された活性成分を、塩基性の分散媒および上記に列挙されたものから必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルと合わせることによって調製される。無菌注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥技法であり、これは、予め濾過滅菌されたそれらの溶液から、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を生じる。非経口製剤は、典型的には、水溶液であり、これは、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは、3~9のpH)などの賦形剤を含有していてもよいが、いくつかの適用のために、無菌の非水性溶液、または無菌のパイロジェンフリーの水などの好適な媒体と共に使用される乾燥形態として、より好適に製剤化され得る。無菌条件下、例えば、凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技法を使用して、容易に達成し得る。非経口溶液の調製において使用される化合物の溶解度は、溶解度増強剤の組み込みなどの適切な製剤技法の使用によって増加させてもよい。非経口投与のための製剤は、即時放出および/または放出調節するように製剤化されてもよい。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的指向性放出およびプログラム化放出が挙げられる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の放出調節を提供する移植デポとしての投与のための固体、半固体またはチキソトロピー液体として製剤化されてもよい。そのような製剤の例としては、薬物被覆ステントおよびポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェアが挙げられる。
【0088】
本発明のパントテンアミドアナログはまた、局所、例えば、皮膚、眼および/または粘膜に投与されてもよい。したがって、医薬組成物は、懸濁剤、液剤、軟膏、ローション、クリーム、フォーム、噴霧剤、バルム剤、パントテンアミドアナログを含む溶液および/または懸濁液を含むパッチまたは閉塞包帯などであってもよい。しかしながら、好ましくは、医薬組成物は、ローション、軟膏、ゲル、クリームおよび噴霧剤からなる群から選択され得る。本発明による液剤、クリーム、軟膏またはゲルは、パントテンアミドアナログを、微粉化形態または粉末形態として、あるいは水性もしくは非水性流体中の溶液または懸濁液としてのいずれかで、例えば、当業者には公知の脂肪性または非脂肪性基剤と混合することによって作製され得る半固体製剤である。基剤の例としては、硬質、軟質もしくは液体パラフィンなどの1種以上の炭化水素、グリセロール、パラフィン油、ミツロウ、金属石鹸;粘液;アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ヒマシ油もしくはオリーブ油、またはヒマシ油ポリオキシルなどのそれらの誘導体などの天然起源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、または脂肪酸および/またはエステル、例えば、ステアリン酸もしくはオレイン酸、またはミリスチン酸イソプロピルを含んでいてもよい基剤である。基剤は、プロピレングリコール、異なる分子量のポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコール、エタノールまたはマクロゲルなどのアルコールをさらに含んでいてもよい。製剤は、ソルビタンエステル、ポリソルバート、Cremophor(登録商標)EL、Tween(登録商標)20もしくはそれらのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤などの任意の好適な界面活性剤あるいは乳化剤が組み込まれてもよい。天然ゴム、セルロース誘導体、またはシリカ系シリカなどの無機材料などの懸濁化剤、およびラノリンなどの他の成分も含まれていてもよい。眼用ローションは、無菌水溶液を含んでいてもよく、標準的な方法によって調製され得る。皮膚への適用のためのローションまたはリニメント剤はまた、アルコールもしくはアセトンなどの乾燥を早め、皮膚を冷却する薬剤、および/またはグリセロール、またはヒマシ油もしくはラッカセイ油などの油などの保湿剤を含んでいてもよい。1つの好ましい実施形態において、本発明による医薬製剤は、局所投与のための医薬製剤のために好適であることが当業者に公知の乳化剤、ヒドロキシ化合物および脂質からなる群から選択される1種以上の化合物を含む。好ましくは、乳化剤は、Cremophor(登録商標)EL、Tween(登録商標)20、ポリソルベート80およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、乳化剤は、ポリソルベート80である。好ましくは、ヒドロキシ化合物は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。PEGは、任意の分子量のPEGであってもよく、しかしながら、好ましくは、PEG6000である。好ましくは、脂質は、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、鉱油、天然起源の油およびその誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、脂質は、ヒマシ油ポリオキシル、パラフィン油およびミリスチン酸イソプロピルからなる群から選択される。
【0089】
本発明のパントテンアミドアナログは、前述の投与の様式のいずれかにおける使用のためにそれらの溶解度、溶解速度、矯味性、生物学的利用率および/または安定性を改善するために、シクロデキストリンおよびその好適な誘導体、またはポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性高分子体と組み合わせてもよい。薬物-シクロデキストリン複合体は、例えば、一般に、ほとんどの剤形および投与経路のために有用であることが見出されている。封入および非封入複合体の両方が使用されてもよい。薬物との直接複合体化の代替として、シクロデキストリンを、補助添加物として、すなわち、担体、希釈剤または可溶化剤として使用してもよい。
【0090】
当業者によって理解されるように、本発明は、2種以上の本発明のパントテンアミドアナログの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0091】
本発明のパントテンアミドアナログは、上記した状態の治療において従来用いられている他の活性成分と併せて用いることもできる。このような併用治療は、治療の有効性のさらなる増強をもたらす場合がある。そのようなさらなる増強は、相加的であってもよく、またはさらに相乗的であってもよい。したがって、本発明は、本発明のパントテンアミドアナログをさらなる活性成分、好ましくは、さらなる抗マラリア剤と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0092】
本発明のパントテンアミドアナログと好適に組み合わせることができる他の活性成分の例としては、アトバコン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、プリマキン、プログアニル、キニジン、キニーネ、キナクリン、ピリメタミン-スルファドキシン、ハロファントリン、メフロキン、ドキシサイクリン、ルメファントリン、アモジアキン、ピペラキン、フェロキン、タフェノキン、アルテロラン、ピロナリジン、アルテミシニン、アーテスネート、アルテメテル、ジヒドロアルテミシニン、アルテニモール、スピロ[3H-インドール-3,1’-[1H]ピリド[3,4-b]インドール]-2(1H)-オン、5,7’-ジクロロ-6’-フルオロ-2’,3’,4’,9’-テトラヒドロ-3’-メチル-,(1’R,3’S)-(CAS登録番号:1193314-23-6)、硫黄、[4-[[2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]アミノ]フェニル]ペンタフルオロ-](CAS登録番号:1282041-94-4)、モルホリン,4-[2-(4-シス-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3’-[1,2,4]トリオキソラン-5’,2’’-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イルフェノキシ)エチル]-(CAS登録番号:1029939-86-3)、[3,3’-ビピリジン]-2-アミン、5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-6’-(トリフルオロエチル)-(CAS登録番号:1314883-11-8)、およびエタノン,2-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-3-[(4-フルオロフェニル)アミノ]-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル]-(CAS登録番号:1261109-90-3)などの他の抗マラリア剤が挙げられる。マラリアの治療のための化合物のさらなる例は、フェナジン、特に、リミノフェナジンのクラスであり、これは、1個のベンゼン環に置換イミノ基を有する。特に、N,5-ビス-(フェニル)-3,5-ジヒドロ-3-(シクロヘキシルイミノ)-2-フェナジンアミンは、抗マラリア活性を示すことが報告されている。当業者によって理解されるように、本発明のパントテンアミドアナログおよび別の抗マラリア剤の組み合わせは、典型的には、マラリアおよび/または関連状態を治療および/または予防する方法において、典型的には、パントテンアミドアナログおよび追加の抗マラリア剤の同時投与によって使用される。
【0093】
本発明のパントテンアミドアナログと好適に併用され得る治療剤の別のクラスは、いわゆる耐性修飾剤が挙げられる。耐性修飾剤は、多剤耐性(MDR)機構を標的にし、阻害して、寄生生物または細菌を、以前は耐性であった抗菌薬に対して感受性にし得る。これらの化合物としては、とりわけ、流出阻害剤(efflux inhibitors)およびベータラクタマーゼ阻害剤が挙げられる。
【0094】
本明細書で使用される場合、本発明の化合物、および場合により1種以上の他の治療剤に言及する「同時投与」、「同時投与される」および「と組み合わせて」という用語は、以下を意味することが意図され、以下を指し、および以下を含む:
・ そのような構成成分が、投与後に前記構成成分を実質的に同時に放出する単一剤形に一緒に製剤化される場合、化合物のそのような組み合わせの同時投与、
・ そのような構成成分が、実質的に同じ時に投与される別々の剤形に互いに別に製剤化され、その後、前記構成成分が実質的に同じ時に放出される場合、化合物のそのような組み合わせの実質的な同時投与、
・ そのような構成成分が、それぞれの投与の間に有意な時間間隔で連続する時に投与される別々の剤形に互いに別に製剤化される場合、化合物のそのような組み合わせの逐次投与。
【0095】
2つ以上の医薬組成物であって、その少なくとも1つが、本発明によるパントテンアミドアナログを含有する医薬組成物が、組成物の同時投与のために好適なキットの形態で好都合に組み合わされ得ることも、本発明の範囲内である。したがって、本発明のキットは、典型的には、2つ以上の別々の医薬組成物または獣医学的組成物であって、その少なくとも1つが本発明によるパントテンアミドアナログを含有する組成物、および前記組成物を別々に保持するための手段、例えば、容器、分割ボトルまたは分割ホイルパケットを含む。そのようなキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装のために使用されるよく知られたブリスター包装である。
【0096】
本発明のこれらの態様の詳細および好ましい実施形態は、パントテンアミドアナログ、それらを含む組成物、その使用およびそれらの製造方法の前述の詳細な説明に基づいて、当業者によって容易に理解される。これらの実施形態は、当業者に周知のさまざまな変形および代替形態を許容することが認識される。
【0097】
また、本明細書およびその特許請求の範囲の適切な理解のために、動詞「含むこと(to comprise)」およびその活用形は、その語に続く項目が含まれるが、具体的に列挙されていない項目が除外されないことを意味する、その非制限的な意味で使用されることが理解されるべきである。加えて、不定冠詞の「a」または「an」による要素への言及は、文脈が、唯一の要素が存在することを明確に要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞の「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0098】
本明細書において引用されるすべての特許および文献は、それらの全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0099】
以下の実施例は、例示のみの目的で提供されており、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】パントテンアミドアナログA1、B1、C1およびE1のインビボ有効性。グラフにおいて、寄生虫血症(感染した赤血球(RBC)%)を、感染後の日数に対して再びプロットする。矢印は、それぞれの治療(それぞれのパントテンアミドアナログの1つを含む媒体、パントテンアミドアナログなしの媒体、およびクロロキン治療)の投与の時期を示す。
【実施例
【0101】
アミド化のための一般的手順(一般的手順A)
テトラヒドロフラン(THF)(5ml/mmol)中のアミン(A1)(1当量)および酸(A2)(1.2当量)の撹拌溶液に、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)(1.5当量)およびトリエチルアミン(EtN)(5当量)を0℃で添加した。反応混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO)溶液でクエンチし、酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。有機層を、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥し、減圧下濃縮した。粗製物を、分取薄層クロマトグラフィー(prep TLC)プレート(メタノール(MeOH)-ジクロロメタン(DCM))で精製して、所望のアミド(A3)を得た。
【0102】
アセトニド脱保護のための一般的手順(一般的手順B)
アセトニトリル(CHCN)(5ml/mmol)中のアミド(A3)(1当量)の撹拌溶液を、塩化ビスマス(III)(Bi(III)Cl)(0.1当量)およびHO(0.04ml/mmol)で処理した。反応混合物を、室温で16時間撹拌した。反応物の塊を、減圧下濃縮し、prep TLC(DCM中MeOH)で精製して、最終化合物を得た。
【化8】
【0103】
実施例1:(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)-ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド(A1)の合成
【化9】
【0104】
[(S)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)の合成:
【化10】
【0105】
手順:乾燥THF(1500mL)中の((S)-2-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(1)(50g、238.9mmol)の撹拌溶液に、フタルイミド(2)(38.6g、262.8mmol)およびトリフェニルホスフィン(PPh)(68.9g、262.8mmol)を添加した。次いで、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)(41.2mL、262.8mmol)を、0℃で滴下添加した。反応物を、室温(RT)で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を、ヘキサン中の20%のEtOAcを使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ)によって精製して、[(S)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)(53g、65.5%)をオフホワイト固体として得た。
【0106】
((S)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)の合成:
【化11】
【0107】
手順:エタノール(EtOH)(450mL)中の[(S)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)(53g、47.7mmol)の撹拌溶液に、ヒドラジン水和物(116.8mL、2406.4mmol)を添加した。反応物の塊を、50℃で2時間加熱した。反応物の塊を、RTに冷却し、濾過し、減圧下濃縮した。得られた残渣を、再び、Et2Oに懸濁させ、濾過した。合わせた濾液を、減圧下濃縮して、((S)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)(30g、96%)を無色の粘性ガム状物として得た。
【0108】
[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)の合成:
【化12】
【0109】
手順:EtOH(150mL)中の((S)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)(26g、124.8mmol)の撹拌溶液に、D-(-)-パントラクトン(5)(48.7g、374.5mmol)およびEt3N(60.9mL、436.9mmol)を添加した。反応混合物を、16時間還流した。反応混合物を、減圧下濃縮して、粗製物の塊を得て、これを、DCM中3%のMeOHを使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ)によって精製して、[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)(31.2g、74%)を無色の粘性ガム状物として得た。
【0110】
{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)の合成:
【化13】
【0111】
手順:DCM(270mL)中の[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)(31.2g、92.2mmol)の撹拌溶液に、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート(9.2g、36.2mmol)および2,2-ジメトキシプロパン(113.3g、922mmol)を添加した。反応混合物を、RTで16時間撹拌した。溶媒を減圧下除去し、粗生成物を、DCM中1%のMeOHを使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ)によって精製して、{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)(22g、63%)を無色の粘性ガム状物として得た。
【0112】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)の合成:
【化14】
【0113】
手順:MeOH(160mL)中の{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)(22g、58.1mmol)の撹拌溶液に対して、窒素ガスを用いて10分間脱気し、次いで、10%のPd/C(3g)を添加した。反応物の塊を、水素雰囲気下(風船圧)、RTで3時間撹拌した。反応混合物を、セライトを通して濾過し、濾液を減圧下濃縮して、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)(14g、98.5%)を無色の粘性ガム状物として得た。
【0114】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)の合成:
【化15】
【0115】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)(5g、20.492mmol)および2,4,5-トリフルオロ-安息香酸(9)(3.609g、20.492mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)を収率60.63%、5gでガム状物として得た。
【0116】
(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]-プロピル]ブタンアミド(A1)の合成
【化16】
【0117】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)(5g、12.425mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-ブタンアミド(A1)を収率77.74%、3.5gで淡黄色の粘性固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.24(d,J=7.56Hz,1H),7.84(t,J=5.88Hz,1H),7.72-7.63(m,2H),5.41(d,J=5.48Hz,1H),4.44(t,J=5.58Hz,1H),4.07-4.03(m,1H),3.73(d,J=5.48Hz,1H),3.32-3.24(m,2H),3.19-3.12(m,2H),1.10(d,J=6.64Hz,3H),0.77(s,3H),0.76(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=363、3分の実行においてR=1.46分。
【0118】
実施例2:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(B1)の合成
【化17】
【0119】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-シアノ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化18】
【0120】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(4g、16.393mmol)および5-シアノ-2-フルオロ-安息香酸(2)(2.707g、16.393mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-シアノ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率56.57%、3.63gでガム状物として得た。
【0121】
(2R)-N-[(2S)-2-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(B1)の合成:
【化19】
【0122】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-シアノ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(3.63g、9.273mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(B1)を収率73.66%、2.4gでオフホワイトの粘性固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.39(d,J=7.8Hz,1H),8.08-8.02(m,2H),7.84(t,J=5.96Hz,1H),7.54(t,J=9.24Hz,1H),5.41(d,J=5.52Hz,1H),4.45(t,J=5.58Hz,1H),4.08-4.02(m,1H),3.74(d,J=5.56Hz,1H),3.31-3.23(m,2H),3.20(m,2H),1.10(d,J=6.64Hz,3H),0.78(s,3H),0.77(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=352、3分の実行においてR=1.35分。
【0123】
実施例3:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-シアノフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(C1)の合成
【化20】
【0124】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-シアノ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化21】
【0125】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(5g、20.463mmol)および3-シアノ-安息香酸(2)(3.011g、20.463mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-シアノ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率50.32%、4.2gでガム状物として得た。
【0126】
(2R)-N-[(2S)-2-[(3-シアノフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(C1)の合成:
【化22】
【0127】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-シアノ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(4.2g、11.246mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(3-シアノフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(C1)を収率82.68%、3.1gでオフホワイト固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.42(d,J=7.6Hz,1H),8.23(s,1H),8.12(d,J=6.64Hz,1H),7.99(d,J=7.44Hz,1H),7.85(brs,1H),7.68(t,J=7.64Hz,1H),5.39(d,J=5.6Hz,1H),4.43(brs,1H),4.13-4.10(m,1H),3.73(d,J=5.6Hz,1H),3.31-3.12(m,4H),1.12(d,J=6.36Hz,3H),0.74(s,3H),0.72(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=334、3分の実行においてR=1.42分。
【0128】
実施例4:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(D1)の合成
【化23】
【0129】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化24】
【0130】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(2.3g、9.413mmol)および5-クロロ-2,4-ジフルオロ-安息香酸(2)(2.175g、11.296mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率91.31%、3.6gでガム状物として得た。
【0131】
(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(D1)の合成:
【化25】
【0132】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(3.2g、7.64mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(D1)を収率69.11%、2gでオフホワイト固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.28(d,J=7.56Hz,1H),7.85-7.80(m,2H),7.65(t,J=9.78Hz,1H),5.41(d,J=5.52Hz,1H),4.44(t,J=5.56Hz,1H),4.08-4.01(m,1H),3.73(d,J=5.52Hz,1H),3.31-3.24(m,2H),3.19-3.13(m,2H),1.10(d,J=6.64Hz,3H),0.77(s,3H),0.76(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=379、3分の実行においてR=1.43分。
【0133】
実施例5:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(E1)の合成
【化26】
【0134】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化27】
【0135】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(3g、12.295mmol)および3-フルオロ-安息香酸(2)(1.723g、12.295mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率77.69%、3.5gでガム状物として得た。
【0136】
(2R)-N-[(2S)-2-[(3-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(E1)の合成:
【化28】
【0137】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(3.5g、9.552mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(3-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(E1)を収率63.56%、2.2gでオフホワイト固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.31(d,J=7.64Hz,1H),7.85(t,J=5.88Hz,1H),7.66(d,J=7.72Hz,1H),7.61-7.58(m,1H),7.53-7.48(m,1H),7.39-7.34(m,1H),5.40(d,J=5.28Hz,1H),4.44(brs,1H),4.12-4.08(m,1H),3.73(d,J=5.28Hz,1H),3.32-3.12(m,4H),1.11(d,J=6.64Hz,3H),0.74(s,3H),0.73(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=327、3分の実行においてR=1.45分。
【0138】
実施例6:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(F1)の合成
【化29】
【0139】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化30】
【0140】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(100mg、0.409mmol)および3-クロロ-安息香酸(2)(76.89mg、0.491mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率95.72%、150mgでガム状物として得た。
【0141】
(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(F1)の合成:
【化31】
【0142】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(150mg、0.392mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(F1)を収率70.74、95mgでオフホワイト固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.35(d,J=7.72Hz,1H),7.85-7.81(m,2H),7.77(d,J=7.76Hz,1H),7.58(d,J=8Hz,1H),7.49(t,J=7.84Hz,1H),5.40(d,J=5.44Hz,1H),4.43(t,J=5.6Hz,1H),4.11-4.06(m,1H),3.73(d,J=5.44Hz,1H),3.33-3.24(m,2H),3.21-3.11(m,2H),1.11(d,J=6.64Hz,3H),0.75(s,3H),0.73(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=343、3分の実行においてR=1.41分。
【0143】
実施例7:(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(G1)の合成
【化32】
【0144】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化33】
【0145】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(100mg、0.409mmol)および3-クロロ-4-フルオロ-安息香酸(2)(71.415mg、0.491mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率91.46%、150mgでガム状物として得た。
【0146】
(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(G1)の合成:
【化34】
【0147】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3-クロロ-4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(150mg、0.374mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(G1)を収率37.04%、50mgで白色固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.35(d,J=7.64Hz,1H),8.03(d,J=5.68Hz,1H),7.86-7.80(m,2H),7.52(t,J=8.84Hz,1H),5.39(d,J=5.24Hz,1H),4.43(t,J=5.22Hz,1H),4.11-4.06(m,1H),3.73(d,J=5.24Hz,1H),3.31-3.24(m,2H),3.19-3.11(m,2H),1.11(d,J=6.64Hz,3H),0.74(s,3H),0.73(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=361、3分の実行においてR=1.43分。
【0148】
実施例9:(2R)-N-[(2S)-2-[(3,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(H1)の合成
【化35】
【0149】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化36】
【0150】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(75mg、0.307mmol)および3,4-ジフルオロ-安息香酸(2)(48.6mg、0.307mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率60.09%、71mgでガム状物として得た。
【0151】
(2R)-N-[(2S)-2-[(3,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(H1)の合成:
【化37】
【0152】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(3,4-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(71mg、0.185mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(3,4-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(H1)を収率66.04%、42mgでオフホワイトの粘性固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.32(d,J=7.8Hz,1H),7.90-7.80(M,2H),7.69(brs,1H),7.59-7.52(m,1H),5.41(d,J=5.36Hz,1H),4.44(brs,1H),4.10-4.06(m,1H),3.72(d,J=5.36Hz,1H),3.28-3.10(m,4H),1.11(d,J=6.48Hz,3H),0.73(S,6H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=345、3分の実行においてR=1.43分。
【0153】
実施例10:(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(I1)の合成
【化38】
【0154】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化39】
【0155】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(75mg、0.307mmol)および5-クロロ-2-フルオロ-安息香酸(2)(53.58mg、0.307mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率69.08%、85mgでガム状物として得た。
【0156】
(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(I1)の合成:
【化40】
【0157】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(5-クロロ-2-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(80mg、0.2mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブタンアミド(I1)を収率53.13%、40mgで無色の粘性ガム状物として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.29(d,J=6.88Hz,1H),7.83(brs,1H),7.60-7.58(m,2H),7.35(t,J=9.18Hz,1H),5.42(d,J=5Hz,1H),4.45(brs,1H),4.06-4.02(m,1H),3.73(d,J=5Hz,1H),3.30-3.25(m,2H),3.17-3.12(m,2H),1.10(d,J=6.4Hz,3H),0.77(s,3H),0.76(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=361、3分の実行においてR=1.43分。
【0158】
実施例11:(2R)-N-[(2S)-2-[(2,5-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(J1)の合成
【化41】
【0159】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,5-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)の合成:
【化42】
【0160】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(1)(75mg、0.307mmol)および2,5-ジフルオロ-安息香酸(2)(48.53mg、0.307mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,5-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)を収率67.8%、80mgでガム状物として得た。
【0161】
(2R)-N-[(2S)-2-[(2,5-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(J1)の合成:
【化43】
【0162】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,5-ジフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(3)(70mg、0.182mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-N-[(2S)-2-[(2,5-ジフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミド(J1)を収率61.34%、45mgで無色の粘性ガム状物として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.25(d,J=7.16Hz,1H),7.84(t,J=5.92Hz,1H),7.41-7.34(m,3H),5.41(d,J=5.48Hz,1H),4.45(t,J=5.6Hz,1H),4.07-4.02(m,1H),3.73(d,J=5.48Hz,1H),3.32-3.24(m,2H),3.19-3.12(m,2H),1.10(d,J=6.6Hz,3H),0.77(s,3H),0.76(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=345、3分の実行においてR=1.37分。
【0163】
実施例12:(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)-ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド(A2)の合成
【化44】
【0164】
[(R)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)の合成:
【化45】
【0165】
手順:((R)-2-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(1)(1.5g、7.168mmol)を用いて[(S)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程1)と同じように、[(R)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)を収率82.46%、2gでオフホワイト固体として得た。
【0166】
((R)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)の合成:
【化46】
【0167】
手順:[(R)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(3)(2.5g、7.388mmol)を用いて((S)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程2)と同じように、((R)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)を収率97.49%、1.5gで無色ガム状物として得た。
【0168】
[(R)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)の合成:
【化47】
【0169】
手順:((R)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)(300mg、1.441mmol)およびL-(+)-パントラクトン(5)(375mg、2.881mmol)を用いて[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程3)と同じように、[(R)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)を収率57.44%、280mgで無色ガム状物として得た。
我々が受け取ったL-(+)-パントラクトンはエナンチオマー的に純粋ではなかった。
**生成物6は、[(R)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステルおよび[(R)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステルの混合物(およそ1:1)として得た。混合物を使用し、ジアステレオマー分離を最終生成物に対して行った。
【0170】
{(R)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)の合成:
【化48】
【0171】
手順:[(R)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)(330mg、2.881mmol)を用いて{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程4)と同じように、{(R)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)を収率75.86%、280mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0172】
(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)の合成:
【化49】
【0173】
手順:{(R)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)(280mg、0.74mmol)を用いて(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(A1合成の工程5)と同じように、(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)を収率99.56%、180mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0174】
(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)の合成:
【化50】
【0175】
手順:(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)(180mg、0.737mmol)および2,4,5-トリフルオロ-安息香酸(9)(129.75mg、0.737mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)を収率94.44%、280mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0176】
(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]-プロピル]ブタンアミド(A2)の合成:
【化51】
【0177】
手順:(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)(280mg、0.696mmol)および分取HPLC(カラム名称:Chiralpak IC(4.6×250mm)、5μ、ARD/K/7788、移動相:ヘキサン/EtOH/IPアミン:80/20/0.1、流速:1.0ml/分、溶解性:MeOH)による最終ジアステレオマー分離を用いて一般的手順Bと同じように、(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド(A2)(より速く移動する画分)を収率13.88%、35mgで無色ガム状物として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.24(d,J=7.56Hz,1H),7.84(t,J=5.88Hz,1H),7.72-7.63(m,2H),5.41(d,J=5.48Hz,1H),4.44(t,J=5.58Hz,1H),4.07-4.03(m,1H),3.73(d,J=5.48Hz,1H),3.32-3.24(m,2H),3.19-3.12(m,2H),1.10(d,J=6.64Hz,3H),0.77(s,3H),0.76(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=363、3分の実行においてR=1.38分。**2つのジアステレオマーの混合物
【0178】
実施例13:(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)-ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド(A3)の合成
【化52】
【0179】
[(R)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)の合成:
【化53】
【0180】
手順:((R)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)(300mg、1.441mmol)およびD-(-)-パントラクトン(5)(375mg、2.881mmol)を用いて[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程3)と同じように、[(R)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)を収率47.18%、230mgで無色ガム状物として得た。
【0181】
{(R)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)の合成:
【化54】
【0182】
手順:[(R)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6)(240mg、0.709mmol)を用いて{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程4)と同じように、{(R)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)を収率85.69%、230mgでオフホワイト固体として得た。
【0183】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)の合成:
【化55】
【0184】
手順:{(R)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7)(230mg、0.608mmol)を用いて(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(A1合成の工程5)と同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)を収率94.17%、140mgで無色ガム状物として得た。
【0185】
(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)の合成:
【化56】
【0186】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((R)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8)(140mg、0.573mmol)および2,4,5-トリフルオロ-安息香酸(9)(100.917mg、0.573mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)を収率91.06%、210mgで無色ガム状物として得た。
【0187】
(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]-プロピル]ブタンアミド(A3)の合成:
【化57】
【0188】
手順:(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(R)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10)(210mg、0.522mmol)を用いて一般的手順Bと同じように、(2R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2R)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]プロピル]-ブタンアミド(A3)を収率47.6%、90mgで淡茶色の粘性ガム状物として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.23(d,J=8Hz,1H),7.83(t,J=5.88Hz,1H),7.70-7.64(m,2H),5.42(d,J=5.4Hz,1H),4.45(t,J=5.5Hz,1H),4.04-4.00(m,1H),3.72(d,J=5.4Hz,1H),3.31-3.26(m,2H),3.16-3.06(m,2H),1.09(d,J=6.56Hz,3H),0.79(s,3H),0.75(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=363、3分の実行においてR=1.38分。
【0189】
実施例14:(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)-ホルムアミド]プロピル]ブタンアミド(A4)の合成
【化58】
【0190】
[(S)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)の合成:
【化59】
【0191】
手順:((S)-2-アミノ-1-メチル-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル(4)(350mg、1.681mmol)およびL-(+)-パントラクトン(5)(437.42mg、3.361mmol)を用いて[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程3)と同じように、[(S)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)を収率45.72%、260mgで無色ガム状物として得た。L-(+)-パントラクトンは、エナンチオマー的に純粋ではないことが分かった。**生成物6は、[(S)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステルおよび[(S)-2-((R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステルの混合物(およそ1:1)として得た。混合物を使用し、ジアステレオマーを最終生成物から分離した。
【0192】
{(S)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)の合成:
【化60】
【0193】
手順:[(S)-2-((S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-ブチリルアミノ)-1-メチル-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6**)(260mg、0.768mmol)を用いて{(S)-1-メチル-2-[((R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(A1合成の工程4)と同じように、{(S)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)を収率75.66%、220mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0194】
(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)の合成:
【化61】
【0195】
手順:{(S)-1-メチル-2-[((S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボニル)-アミノ]-エチル}-カルバミン酸ベンジルエステル(7**)(220mg、0.582mmol)を用いて(R)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(A1合成の工程5)と同じように、(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)を収率91.42%、130mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0196】
(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)の合成:
【化62】
【0197】
手順:(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸((S)-2-アミノ-プロピル)-アミド(8**)(130mg、0.533mmol)および2,4,5-トリフルオロ-安息香酸(9)(93.77mg、0.533mmol)を用いて一般的手順Aと同じように、(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)を収率88.62%、190mgで無色ガム状物として得た。**2つのジアステレオマーの混合物
【0198】
(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]-プロピル]ブタンアミド(A4)の合成:
【化63】
【0199】
手順:(S)-2,2,5,5-テトラメチル-[1,3]ジオキサン-4-カルボン酸[(S)-2-(2,4,5-トリフルオロ-ベンゾイルアミノ)-プロピル]-アミド(10**)(190mg、0.472mmol)および分取HPLC(カラム名称:Chiralpak IC(4.6×250mm)、5μ、ARD/K/7788、移動相:ヘキサン/EtOH/IPアミン:80/20/0.1、流速:1.0ml/分、溶解性:MeOH)による最終ジアステレオマー分離を用いて一般的手順Bと同じようにして、(2S)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-N-[(2S)-2-[(2,4,5-トリフルオロフェニル)ホルムアミド]-プロピル]ブタンアミド(A4)(より速く移動する画分)を収率14.61%、25mgで無色ガム状物として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.23(d,J=8Hz,1H),7.83(t,J=5.88Hz,1H),7.70-7.64(m,2H),5.42(d,J=5.4Hz,1H),4.45(t,J=5.5Hz,1H),4.04-4.00(m,1H),3.72(d,J=5.4Hz,1H),3.31-3.26(m,2H),3.16-3.06(m,2H),1.09(d,J=6.56Hz,3H),0.79(s,3H),0.75(s,3H)。LCMS(HCOOH:ACN):M+H=363、3分の実行においてR=1.38分。
【0200】
実施例15:抗マラリア活性
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)株NF54を、25mMのNaHCO、10%のヒトA型血清および5%(v/v)のヒト0型赤血球(Sanquin、オランダ)で補充されたロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地中で培養した。無性血液段階の寄生生物に対する複製アッセイを、10%のヒト血清を有するRPMI1640培地中で寄生生物を0.83%の寄生虫血症および3%のヘマトクリット値に希釈することによって行った。30μlの希釈された寄生生物を、DMSOおよびRPMI1640培地で連続希釈した30μlの化合物と混ぜ合わせて、60μLの総アッセイ体積中に0.1%の最終DMSO濃度にした。37℃、3%のO、4%のCOでの72時間のインキュベーション後、30μLの希釈されたSYBR(登録商標)Green試薬を、製造者(Life Technologies)の使用説明書に従って添加し、蛍光強度を、Biotek Synergy(登録商標)2プレートリーダーを使用して定量化した。生殖母細胞の生存率アッセイを、10%のヒト血清を有するRPMI1640培地中、5%のヘマトクリット値で1%の無性血液段階の寄生生物を有する培養フラスコに接種することによって開始した。接種の4日後から9日後まで、培養物を50mMのN-アセチルグルコサミンで処理して、無性血液段階の寄生生物を除いた。接種の11日後、生殖母細胞(主に段階IV)を、Percoll(登録商標)密度勾配遠心分離によって分離した。生殖母細胞を、384ウェルプレートに5,000個細胞/ウェルの密度で播種し、DMSOに希釈された化合物、その後にRPMI1640培地と混ぜ合わせて、10%のヒト血清を有する60μLの体積のRPMI1640培地中、0.1%の最終DMSO濃度に達した。37℃、3%のO、4%のCOでの72時間のインキュベーション後、30μLのONE-Glo(登録商標)試薬(Promega)を添加し、発光を、Biotek Synergy 2リーダーを使用して定量化した。IC50値は、最小二乗法を使用して、4つのパラメーターのロジスティック回帰モデルをデータにフィッティングすることによって誘導して、最適のフィットを見出した。熱帯熱マラリア原虫NF54の無性血液段階の寄生生物および生殖母細胞に対する得られたIC50値を第2表に示す。
【0201】
【表3】
【0202】
実施例16:ヒト初代肝細胞における代謝安定性
本発明の化合物の代謝安定性を、肝細胞リレーアッセイにおいて評価した。ヒト初代肝細胞(Xenotech)を、コラーゲンでコーティングされた96ウェルプレートにおいて、1%のPenStrep(Gibco 15140-122)、1%のFungizone(登録商標)(Gibco 15290026)、10%の熱失活ウシ胎仔血清(hiFBS)(Gibco 10270-106)、0.1IU/mlのインスリン(Sigma I2643)および7μMのヘミコハク酸ヒドロコルチゾン(Sigma H2270)で補充されたWilliams E(Gibco(登録商標)32551087)中、37℃および5%のCOで培養した。試験化合物を、0.1 DMSO中10μMの最終濃度まで添加した。24時間ごとに、細胞上清を、新たにプレーティングした、代謝的に完全な活性細胞に移した。定期的な時間間隔で、上清のアリコートを、将来の分析のために凍結した。インキュベーションの最後に、すべての試料を解凍し、時間における化合物レベルをLC-MS分析によって決定した。データを線形回帰によって解析した。得られたクリアランス値および半減期を第3表に示す。データは、試験されたすべての化合物が、ヒト肝細胞において低いクリアランスを示すことを示す。
【0203】
【表4】
【0204】
実施例17:インビボ抗マラリア活性
インビボでの存在する寄生虫血症の低減を、熱帯熱マラリア原虫感染についてのヒト化マウスモデルを使用して調べた。雌NODscidIL2Rγヌルマウスに、11日間、1日あたり0.6mlのヒト血液を静脈内注射によって移植した。その後、マウスを、0.2mlの体積中2.10の寄生生物を注射することによって、熱帯熱マラリア原虫株Pf3D70087/N9に感染させた。感染の4日後、マウスを、50mg/kgの試験化合物の単回用量で治療した。この目的で、化合物を、70%のTween(登録商標)-80(d=1.08g/ml)および30%のエタノール(d=0.81g/ml)中で製剤化し、続いて、HOに10倍希釈し、強制経口投与した。寄生虫血症を、2μlの尾の血液の毎日の収集によって追跡した。ヘマトクリット値を、蛍光標識細胞分取(FACS)によって決定し、寄生虫血症を、>10,000個の赤血球における顕微鏡法によって決定した。図1は、パントテンアミドアナログのインビボ有効性を示す。この図は、熱帯熱マラリア原虫の無性血液段階の感染についてのヒト化マウスモデルにおける時間での寄生虫血症(感染したヒト赤血球の%)を示す。凡例に示された化合物は、感染4日後(矢印によって示す)に50mg/kgの単回経口用量として投薬され、寄生虫血症をさらに3日間追跡した。図1に示したデータは、試験されたすべてのパントテンアミドアナログが、50mg/kgの単回経口用量で、血液期の寄生虫血症の劇的な低減を示すことを示す。
【0205】
【表5】
【0206】
比較例
MMV689258と示された化合物が国際公開第2016/072854号に開示された。この化合物について、代謝安定性およびインビボ有効性のデータを、それぞれ、本実施例16および17に記載の同じプロトコールに従って、得た。結果を下記の第5表にまとめる。このデータから推測できるように、MMV689258と示された化合物は、本発明の化合物よりも実質的に低い代謝安定性を有し、インビボでの効果が実質的に低い。
【0207】
【表6】
図1