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特許7423097循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法及びキット、複合材料フィルム、その製造方法、薬物検査法、並びに凍結保存液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法及びキット、複合材料フィルム、その製造方法、薬物検査法、並びに凍結保存液
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240122BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20240122BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/09
C12Q1/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022507398
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 CN2020126634
(87)【国際公開番号】W WO2021088902
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】62/931,236
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522047398
【氏名又は名称】キャンサー フリー バイオテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ポ-ハン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ウェイ-シン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,シ-ペイ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0300832(US,A1)
【文献】特表2010-524494(JP,A)
【文献】特開2015-136318(JP,A)
【文献】国際公開第1993/003139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1種または複数種の粒子及び溶剤を混合して混合液を形成するステップと、
前記混合液を基材に載置し、粒子層を形成するステップと、
スチレン及びその派生物、ポリエステルモノマー、酸化ケイ素化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる媒質材料を前記粒子層に添加するステップと、
前記媒質材料に重合反応を発生させ、前記粒子層を前記基材に固定するように誘電体層を形成するステップと、を含むことを特徴とする循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記金属粒子は、金粒子、銀粒子、チタン粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記金属酸化物粒子は二酸化チタン粒子であり、前記酸化ケイ素粒子は二酸化ケイ素粒子(silicon dioxide particles)、シリカ粒子(silica particles)、ポリジ
メチルシロキサン粒子(polydimethylsiloxane particles)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記1種または複数種の粒子の粒径は10nm~10μmの間の範囲であることを特徴とする
請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項4】
表面プラズマ処理、親水性ポリマー塗布、酸またはアルカリ溶液ですすぐ、またはそれらの組み合わせを含む前記混合液を前記基材上に載置する前に前記基材に対し親水化前処理を施すステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記混合液を前記基材に載置した後、載置処理を施し、前記混合液の前記1種または複数種の粒子を自己集合配列させ、前記粒子層を形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記置処理を施した後、除湿乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、またはそれらの組み合わせを含む乾燥処理を行うステップを更に含むことを特徴とする請求項5に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記スチレン派生物は、カルボキシル化スチレン(carboxylated styrene)、スチレンスルホン酸(styrene sulfonic acid)、またはそれらの組み合わせを含み、前記ポリエ
ステルモノマーはメタクリル酸メチル(methylmethacrylate)を含むことを特徴とする請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記酸化ケイ素化合物は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ
ることを特徴とする請求項1に記載の循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法。
【請求項9】
略規則的に配列されている1種または複数種の粒子を含み、前記1種または複数種の粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる粒子層と、
前記粒子層の前記1種または複数種の粒子の間に介在し、ポリスチレン及びその派生物、ポリエステル、二酸化ケイ素、シリカゲル(silica gel)、シリコーン樹脂(silicone)、シリコーンゴム(silicone rubber)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ
る誘電体層と、を備え、
前記1種または複数種の粒子の部分的表面が前記誘電体層により被覆されずに露出することを特徴とする循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルム。
【請求項10】
循環腫瘍細胞を体外で拡大するためのキットであって、
培養容器と幹細胞培養液を含む培養液を備え、
前記培養容器は、
基材と、
前記基材に付着する請求項9に記載の複合材料フィルムと、を含むことを特徴とする循環腫瘍細胞を体外で拡大するためのキット。
【請求項11】
複数の循環腫瘍細胞及び培養液を混合することにより、細胞液を形成するステップと、請求項1に記載の前記製造方法により製造した前記複合材料フィルムに前記細胞液を接触させ、これら前記循環腫瘍細胞を前記1種または複数種の粒子に付着すると共に拡大するステップと、を含むことを特徴とする循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法で拡大した後のこれら前記循環腫瘍細胞に薬物を添加するステップと、
これら前記循環腫瘍細胞の生存率を検査するステップと、を含むことを特徴とする薬物の効果を検査する方法。
【請求項13】
凍結保存液と請求項11に記載の方法により拡大された拡大後の循環腫瘍細胞とを混合して混合物を形成すること、および前記混合物を-70℃以下の温度で凍結保存することを含み、
前記凍結保存液は、冷凍試薬と、アルカリ性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor、bFGF)及び上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)を有する培養液と、を含む、拡大後の循環腫瘍細胞を凍結保存するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環腫瘍細胞を拡大する分野に関し、より詳しくは、循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルム、循環腫瘍細胞を体外で拡大する複合材料フィルムの製造方法、循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法、体外で拡大循環腫瘍細胞的キット、薬物の効果を検査する方法、並びに凍結保存液に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞は元の腫瘍細胞が脱離すると循環器系(血液等)に進入し、血液中のこれらがん細胞を循環腫瘍細胞(circulating tumor cells、CTC)と呼ぶ。CTC計数は新興のがんのバイオマーカー方式であり、多くの研究により、この方法ががんの予後(prognosis)を予測し、且つ患者の化学療法及び標的療法に対する反応が有効かどうかを検証するための根拠として、細胞数を監視することを可能にすることを実証している。現在、関連する臨床の運用の多くはCTC数により病理の進行を判断している。然しながら、少数の研究論文では、CTCが薬物に対する患者の治療反応を即時直接反映することが実証されているが、但し、この方式で得られるCTC数は非常に限られており、広範に応用することが出来なかった。その主な原因はCTC数を拡大するのに適合した技術がなく、少量のCTCでは精確な遺伝子検査及び薬物アレルギー試験を行えないことであった。また、体外でCTCの生体を培養する成功率は非常に低く(20%未満)、6ヶ月以上もの時間がかかり、臨床での応用が限られていた。CTC数のボトルネックを突破することが腫瘍転移研究及び臨床の応用で最も切迫している研究課題であった。
【発明の概要】
【0003】
[発明が解決しようとする課題]
そこで、本発明の実施例には循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルム、循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法、循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法、体外で循環腫瘍細胞を拡大するキット、薬物の効果を検査する方法、及び凍結保存液を開示し、循環腫瘍細胞を拡大する数量を有効的に増やす。
【0004】
具体的には、本発明の第一態様は、本発明の実施例は循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法を開示し、金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1種または複数種の粒子及び溶剤を混合して混合液を形成するステップと、前記混合液を基材に載置し、粒子層を形成するステップと、スチレン及びその派生物、ポリエステルモノマー、酸化ケイ素化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる媒質材料を前記粒子層に添加するステップと、前記媒質材料に重合反応を発生させ、前記粒子層を前記基材に固定するように誘電体層を形成するステップと、を含む。
【0005】
本発明のある実施例において、前記金属粒子は、金粒子、銀粒子、チタン粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記金属酸化物粒子は二酸化チタン粒子であり、前記酸化ケイ素粒子は二酸化ケイ素粒子(silicon dioxide particles)、シリカ粒子(silica particles)、ポリジメチルシロキサン粒子(polydimethylsiloxane particles)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0006】
本発明のある実施例において、前記1種または複数種の粒子の粒径は10nm~10μmの間の範囲である。
【0007】
本発明のある実施例において、前記製造方法は、表面プラズマ処理、親水性ポリマー塗布、酸またはアルカリ溶液ですすぐ、またはそれらの組み合わせを含む前記混合液を前記基材上に載置する前に前記基材に対し親水化前処理を施すステップを更に含む。
【0008】
本発明のある実施例において、前記製造方法は、前記混合液を前記基材に載置した後、載置処理を施し、前記混合液の前記1種または複数種の粒子を自己集合配列させ、前記粒子層を形成するステップを更に含む。
【0009】
本発明のある実施例において、前記製造方法は、前記置処理を施した後、除湿乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、またはそれらの組み合わせを含む乾燥処理を行うステップを更に含む。
【0010】
本発明のある実施例において、前記スチレン派生物は、カルボキシル化スチレン(carboxylated styrene)、スチレンスルホン酸(styrene sulfonic acid)、またはそれらの組み合わせを含み、前記ポリエステルモノマーはメタクリル酸メチル(methylmethacrylate)を含む。
【0011】
本発明のある実施例において、前記酸化ケイ素化合物は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0012】
本発明の第二態様は、本発明の実施例に開示する循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムは、略規則的に配列されている1種または複数種の粒子を含み、前記1種または複数種の粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる粒子層と、前記粒子層の前記1種または複数種の粒子の間に介在し、ポリスチレン及びその派生物、ポリエステル、二酸化ケイ素、シリカゲル(silica gel)、シリコーン樹脂(silicone)、シリコーンゴム(silicone rubber)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる誘電体層と、を備え、前記1種または複数種の粒子の部分的表面が前記誘電体層により被覆されずに露出する。
【0013】
協力会社について、本発明の実施例に開示する循環腫瘍細胞を体外で拡大するキットは、培養容器と幹細胞培養液を含む培養液を備え、前記培養容器は、基材と、前記基材に付着する前記製造方法により製造した前記複合材料フィルムと、を含む。
【0014】
本発明の第四態様は、本発明の実施例に開示する循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法、複数の循環腫瘍細胞及び培養液を混合することにより、細胞液を形成するステップと、前記製造方法により製造した前記複合材料フィルムに前記細胞液を接触させ、これら前記循環腫瘍細胞を前記1種または複数種の粒子に付着すると共に拡大するステップと、を含む。
【0015】
本発明の第五態様は、前述の第四態様に記載の方法で拡大した後のこれら前記循環腫瘍細胞に薬物を添加するステップと、これら前記循環腫瘍細胞の生存率を検査するステップと、を含む。
【0016】
本発明の第六態様は、本発明の実施例に開示する拡大後の循環腫瘍細胞を凍結保存するための凍結保存液は、冷凍試薬と、アルカリ性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor、bFGF)及び上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)を有する培養液と、を含む。
【0017】
上述の技術手段は以下の利点または有益な効果を有している。本発明に係る複合材料フィルムは循環腫瘍細胞を拡大する数量を有効的に増やし、循環腫瘍細胞を付着すると共に拡大するための基底として適合する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例の技術手段をより明確に説明するため、以下、実施例の描写において使用する添付図面を簡単に紹介する。以下、描写する添付図面は本発明のいくつかの実施例を図示し、本分野の普通の技術者ならば、創造性を働かせなくとも、これら添付図面に基づいて他の添付図面を獲得することができることを明らかにする。
図1】本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法のフローチャートである。
図2】本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法のステップ概略図である。
図3】本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法のフローチャートである。
図4】本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法のステップ概略図である。
図5】本発明の実験例1の複合材料フィルムの画像である。
図6A】本発明の比較例1の材料フィルムのSEM図である。
図6B】本発明の実験例1の複合材料フィルムのSEM図である。
図7A】比較例1の材料フィルムで乳がん細胞を培養した後の細胞形態の光学顕微鏡図である。
図7B】比較例1の材料フィルムで乳がん細胞を培養した後、すり磨きを行った後に前記細胞液を清潔な培養用プレートに収集した光学顕微鏡図である。
図8A】実験例1の複合材料フィルムで乳がん細胞を培養した後の細胞形態の光学顕微鏡図である。
図8B】実験例1の複合材料フィルムで乳がん細胞を培養した後、すり磨きを行った後に前記細胞液を清潔な培養用プレートに収集した光学顕微鏡図である。
図9】本発明の実験例1の複合材料フィルムで肺がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、取り出して特性評価染色を行った状況を図示する。
図10】本発明の実験例1の複合材料フィルムで肺がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、他の特性評価染色を行った状況を図示する。
図11】本発明の実験例1の複合材料フィルムで胃がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、取り出して特性評価染色を行った状況を示す。
図12】比較例1の材料フィルム及び実験例1の複合材料フィルムをそれぞれ使用して1名の肺がん患者及び1名の卵巣がん患者の循環腫瘍細胞を培養し、4週間後に細胞を拡大した状況の細胞活性計数の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例の添付図面を結合し、本発明の実施例中の技術手段を明確且つ完全に描写する。明らかに、描写する実施例は本発明の一部分の実施例であり、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、本分野の普通の技術者が創造性を働かせずに獲得した全ての他の実施例は、全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0020】
本発明は循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法を提供する。図1は本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法100のフローチャートである。図1に示すように、複合材料フィルムの製造方法100は下記ステップを含む。1種または複数種の粒子及び溶剤を混合して混合液を形成する(ステップS102)、混合液を基材に載置し、粒子層を形成する(ステップS104)、媒質材料を粒子層に形成する(ステップS106)、及び媒質材料に重合反応を発生させ、粒子層を基材に固定するように誘電体層を形成する(ステップS108)。
【0021】
図2は本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムの製造方法のステップ概略図である。以下、実施例と共に図1及び図2を参照する。
【0022】
まず、1種または複数種の粒子22及び溶剤24を混合して混合液20を形成する(ステップS102)。前述の1種または複数種の粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。いくつかの実施例において、金属粒子は、金粒子(Au particles)、銀粒子(Ag particles)、チタン粒子(Ti particles)、他の適合する金属粒子、またはそれらの組み合わせを含む。金属酸化物粒子は、二酸化チタン粒子(Titanium dioxide particles)、他の適合する金属酸化物粒子、またはそれらの組み合わせを含む。酸化ケイ素粒子は二酸化ケイ素粒子(silicon dioxide particles)、シリカ粒子(silica particles)、ポリジメチルシロキサン粒子(polydimethylsiloxane particles)、他の適合する酸化ケイ素粒子、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記1種または複数種の粒子の粒径は10nm~10μmの間の範囲であり、または400nm~10μmの間の範囲であり、或いは500nm~10μmの間の範囲であり、若しくは1μm~10μmの間の範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態では、粒子22は1種類のみ選ばれる。いくつかの実施形態では、粒子22は2種類以上が選ばれる。粒子22の種類は任意で選択でき、例えば、粒子22は2種類の金属粒子、または1種類の金属粒子に1種類の金属酸化物粒子を組み合わせる、或いは1種類の金属酸化物粒子に1種類の酸化ケイ素粒子を組み合わせる、若しくは2種類の酸化ケイ素粒子でもよい。これらは例示にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
前述の溶剤24は制限しないが、例えば、極性溶剤(例えば、水や他の極性溶剤、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、またはアセトン(acetone))、アルコール系溶剤(例えば、メタノール(methanol)やエタノール(ethanol))、芳香族溶剤(例えば、トルエン(toluene)、ベンゼン(benzene)、キシレン(xylene)、または他の芳香族溶剤)、非極性溶剤(例えば、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone、MEK)、クロロホルム(Chloroform))、またはそれらの組み合わせである。
【0025】
いくつかの実施形態では、混合液20にステップS104の粒子層の粒子の間の間隔を調整するための補助材料を添加する。補助材料は例えば、プラスチック粒子や樹脂でもよく、後続の媒質材料に溶解されるか被覆される。
【0026】
混合液20を形成(ステップS102)した後、混合液20を基材12に載置し、粒子層202を形成する(ステップS104)。いくつかの実施形態では、図2に示すように、基材12を備えている培養容器10に混合液20を注入するが、他の方法を使用して混合液20を培養容器10内に載置してもよく、例えば、塗布、噴霧、或いは他の適合する方法でもよい。いくつかの実施形態では、基材12はガラスシートまたはプラスチックシートであるが、但しこれらに限られない。ある実施形態において、培養容器10は制限されないが、例えば、培養皿、少なくとも6つのウェル(6-well)を有している多孔プレート、或いは384個のウェル(384-well)を有している多孔プレートでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、混合液20を基材12に載置(ステップS104)する前に、基材12に対し表面プラズマ処理、親水性ポリマー塗布、酸またはアルカリ溶液ですすぐ、またはそれらの組み合わせを含む親水化前処理を施す。表面プラズマ処理は、例えば、酸素プラズマまたは大気プラズマで処理する。親水性ポリマー塗布は、例えば、ポリエステル類ポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(poly(2-hydroxyethyl methacrylate)、双性イオン性ポリマー(zwitterionic polymer)、またはポリエチレングリコール(polyethylene glycol)を塗布する。酸またはアルカリ溶液ですすぐステップは、例えば、塩酸、酢酸、または水酸化ナトリウム水溶液を使用してすすぐ。
【0028】
いくつかの実施形態では、混合液20を基材12に載置(ステップS104)した後、載置処理を行い、混合液20の1種または複数種の粒子22を自己集合配列させ、粒子層202を形成する。載置処理の時間に制限はなく、液層201中の粒子22を自己集合配列させる、或いは溶剤24を部分的にまたは完全に揮発させることができればよい。前述の「自己集合配列」とは、液層201中の粒子22を基材12上に自動的に略規則的に配列し、粒子22と粒子22との間を一定範囲の間隔に維持することを指し、この間隔は粒子22の選択したサイズを根拠とし、粒子の間隔は前記粒子の直径の0~3倍の間の範囲とする。例えば、粒子22の直径が10μmである場合、自己集合配列後の粒子間隔は0μm~30μmの間の範囲とする。
【0029】
いくつかの実施形態では、載置処理を施した後、乾燥処理を行う。乾燥処理は除湿乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、またはそれらの組み合わせを含む。乾燥処理は溶剤24を完全に揮発させ、粒子22を残留させるために用いられている(即ち、粒子層202を形成する)。
【0030】
粒子層202を形成(ステップS104)した後、粒子層202に媒質材料26を添加する(ステップS106)。いくつかの実施形態では、図2に示すように、媒質材料26を培養容器10に注入するが、他の方法を使用して媒質材料26を培養容器10内に載置してもよく、例えば、塗布、噴霧、或いは他の適合する方法でもよい。いくつかの実施形態では、図2に示すように、媒質材料26が粒子層202を完全には被覆せず、粒子22の部分的な表面が露出している。
【0031】
媒質材料26は、スチレン及びその派生物、ポリエステルモノマー、酸化ケイ素化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。スチレン派生物はカルボキシル化スチレン(carboxylated styrene)、スチレンスルホン酸(styrene sulfonic acid)、またはそれらの組み合わせを含む。ポリエステルモノマーはメタクリル酸メチル(methylmethacrylate)を含む。酸化ケイ素化合物は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane)、またはそれらの組み合わせのような有機酸化ケイ素化合物を含む。
【0032】
媒質材料26を粒子層202に添加(ステップS106)した後、媒質材料26に重合反応を発生させ、粒子層202を基材12に固定するように誘電体層26'を形成し(ステップS108)、これにより粒子層202及び誘電体層26'を備えている複合材料フィルム203を形成する。重合方法はフリーラジカル重合法(Free-radical polymerization)、活性カチオン(cationic polymerization)、アニオン重合法(anionic polymerization)、或いは縮合重合法(condensation)等を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、媒質材料26は加熱または紫外線により重合反応を開始させ、重合させて硬化させた後に誘電体層26'を形成する。誘電体層26'はポリスチレン及びその派生物(例えば、ポリカルボキシル化スチレンまたはポリスチレンスルホン酸)、ポリエステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル)、二酸化ケイ素(silicon dioxide)、シリカゲル(silica gel)、シリコーン樹脂(silicone)、シリコーンゴム(silicone rubber)、またはそれらの組み合わせを含む。この複合材料フィルム203は実験を経て循環腫瘍細胞を高効率で拡大する性能を有していると共に操作において高い信頼性及び高い安定性を備えていることが確認されている。
【0033】
本発明は循環腫瘍細胞を体外で拡大するための複合材料フィルムを更に提供する。図2に示すように、複合材料フィルム203は粒子層202及び粒子層202の粒子22の間(即ち、粒子22の間の隙間箇所)に介在する誘電体層26'を備えている。
【0034】
粒子層202は、金属粒子、金属酸化物粒子、酸化ケイ素粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1種または複数種の粒子22を含む。
【0035】
誘電体層26'はポリスチレン及びその派生物(例えば、ポリカルボキシル化スチレンやポリスチレンスルホン酸)、ポリエステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル)、二酸化ケイ素、シリカゲル(silica gel)、シリコーン樹脂(silicone)、シリコーンゴム(silicone rubber)、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0036】
図2に示すように、1種または複数種の粒子22の部分的な表面が前記誘電体層26'により被覆されずに露出することにより、循環腫瘍細胞が粒子22に付着すると共に拡大するのを助けている点に留意すべきである。
【0037】
本発明は循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法を更に提供する。図3は本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法200のフローチャートである。図3に示すように、循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法200は下記ステップを含む。循環腫瘍細胞及び培養液を混合し、細胞液を形成する(ステップS202)、及び細胞液を前述の複合材料フィルムに接触させ、循環腫瘍細胞を1種または複数種の粒子に付着すると共に拡大する(ステップS204)。図4は本発明のいくつかの実施例に係る循環腫瘍細胞を体外で拡大する方法のステップ概略図である。以下、実施例と同時に図3及び図4を参照する。
【0038】
まず、循環腫瘍細胞32及び培養液34を混合し、細胞液30を形成する(ステップS202)。いくつかの実施形態では、ある実施形態において、循環腫瘍細胞32は生体の血液中から分離することで得られる。一実施例では、生体の血液に対し分離プログラムを実施し、循環腫瘍細胞32を含む末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)を取得した後、抗体形式の白血球分離試薬を使用して末梢血単核細胞中の余剰の白血球を除去し、細胞のサイズを純化して循環腫瘍細胞32を取得する。上述の生体の血液源は人体であるが、他の動物でもよく、例えば、猫、犬、或いは他の飼育可能な哺乳類でもよい。循環腫瘍細胞32は制限しないが、例えば、小細胞性肺がん、肺がん、乳がん、すい臓がん、肉腫、メラノーマ、肝がん、食道がん、大腸直腸がん、鼻咽頭がん、或いは脳腫瘍の腫瘍細胞から得られる。
【0039】
ある実施形態において、培養液34は幹細胞培養液を含む。培養液34中の他の成分は、循環腫瘍細胞32の種類に基づいて適合する成分を選択する。いくつかの実施例では、培養液34は基底培養液を含み、例えば、MEM、DMEM或いはRPMI1640及び他の適合する基底培養液である。いくつかの実施形態では、培養液34は微生物及び真菌による汚染を回避する抗生物質を更に含む。ある実施形態において、培養液34は1種または複数種の組み換え成長因子を更に含み、例えば、アルカリ性線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、及び発表されている文献に記載の循環腫瘍細胞の成長を支持するための他の補充剤である。いくつかの実施例では、培養液34が血小板溶解液を含む。
【0040】
細胞液30を形成(ステップS202)した後、複合材料フィルム203に細胞液30を接触させ、循環腫瘍細胞32を粒子22に付着すると共に拡大する(ステップS204)。図4に示すように、循環腫瘍細胞32を拡大した後に循環腫瘍細胞塊32'を形成する。
【0041】
拡大後の拡大循環腫瘍細胞32及び循環腫瘍細胞塊32'はパーソナライズされた薬物候補の評価に用いられる。これにより、本発明は薬物の効果を検査する方法を提供し、拡大後の循環腫瘍細胞32及び循環腫瘍細胞塊32'に薬物を添加した後、循環腫瘍細胞32及び循環腫瘍細胞塊32'の生存率を検査するステップを含む。これにより、この薬物が循環腫瘍細胞32の生存率を十分に低下させられるかどうか判断する。複数種の薬物(既知の薬物または新薬)に上述の方法を使用して検査した後、低循環腫瘍細胞32の生存率を明確に最も低下させた1種類の薬物をがん治療に対応する優先的な薬物とし、或いはパーソナライズされた薬物療法の選択を提案する。
【0042】
本発明は培養容器及び培養液を備えている循環腫瘍細胞を体外で拡大するためのキットを更に提供する。キットは培養容器10及び培養液34を備えている(図4参照)。培養容器10は基材12及び基材12に付着する複合材料フィルム203を含む(粒子層202及び誘電体層26'を備えている)。培養液34は幹細胞培養液を含む。培養液34の実施例は上述のものを参照し、その説明は省略する。このキットを取得した後、循環腫瘍細胞を組み合わせて使用し、循環腫瘍細胞を効率的且つ安定的に体外で拡大する。
【0043】
図5は本発明の実験例1の複合材料フィルムの画像である。実験例1の複合材料フィルムの製造ステップは、粒子を含む混合液を形成するステップと、基材に対し親水化前処理を施すステップと、粒子を含む混合液を親水化前処理を施した基材に載置し、粒子層を形成するステップと、粒子層に媒質材料を添加するステップと、媒質材料に重合反応を発生させるステップと、を含む。図5に示すように、粒子層には破損がなく、厚さが均一であり、基材との間には良好な接著性がある。これにより、親水化前処理を施した基材が基材間に良好な接著性がある良好な品質の粒子層を形成するのを助けている。
【0044】
図6Aは本発明の比較例1の材料フィルムのSEM図である。比較例1の実験例1との差異は、比較例1の製造方法は媒質材料を粒子層に添加する及び媒質材料に重合反応を発生させる等のステップを含んでいない点である。換言すれば、比較例1の材料フィルムには誘電体層がない。図6Aに示すように、図6Aのいくつかの粒子の間には破孔があり、これにより粒子が容易に脱落し、循環腫瘍細胞を付着すると共に拡大して後続の分析を行うのに不利になる。
【0045】
図6Bは本発明の実験例1の複合材料フィルムのSEM図である。図6Bに示すように、図6Bの粒子の間にある誘電体層は完全であり、いかなる隙間もない。
【0046】
図7Aは比較例1の材料フィルムで乳がん細胞を培養した後の細胞形態の光学顕微鏡図である。図7Aには、比較例1の材料フィルム上で循環腫瘍細胞及び循環腫瘍細胞塊を増殖して形成したコロニーを示す(図中の矢印で標示する箇所)。
【0047】
図7Bは比較例1の材料フィルムで乳がん細胞を培養した後、すり磨きを行って清潔な培養用プレートに前記細胞液を収集した光学顕微鏡図である。24孔プレートを例にすると、すり磨き条件は、各すすぎ液の総体積を20 mLのリン酸塩緩衝生理食塩水とし、流速を1 mL/secとする。図7Bに示すように、すり磨きを行った後、細胞がスムーズに収集されるが、大量の粒子が脱落するため、後続の検査分析に影響が及ぶ。
【0048】
図8Aは実験例1の複合材料フィルムで乳がん細胞を培養した後の細胞形態の光学顕微鏡図である。図8Aには、実験例1の複合材料フィルム上で循環腫瘍細胞及び循環腫瘍細胞塊を増殖して形成したコロニーを示す(図中の矢印で標示する箇所)。
【0049】
図8Bは実験例1の複合材料フィルムで乳がん細胞を培養した後、すり磨きを行った後に清潔な培養用プレートに前記細胞液を収集する光学顕微鏡図である。すり磨き条件は上述のものと同じである。図8Bに示すように、すり磨きを行った後、細胞がスムーズに収集されると共に極少数の粒子のみが脱落する現象が発生する。これから分かるように、実験例1の複合材料フィルムの粒子層は循環腫瘍細胞を付着すると共に拡大する以外、後続のフローチャート(例えば、反復すり磨き)において良好な状態を更に保持し、極めて好ましい信頼性を有している。
【0050】
図9は本発明の実験例1の複合材料フィルムで肺がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、取り出して特性評価染色を行った状況を示す。免疫蛍光染色写真では、EpCAMは緑色の蛍光色で表現し、CD45は赤色の蛍光色で表現し、DPAIは青色の蛍光色で表現する。拡大後の細胞はよくあるEpCAMの特性を尚保留し、CD45信号はなく、よって、前記細胞がPBMC関連細胞である可能性を排除している。
【0051】
図10は本発明の実験例1の複合材料フィルムで肺がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、他の特性評価染色を行った状況を示す。免疫蛍光染色写真では、Pan-cytokeratinは緑色の蛍光色で表現し、DPAIは青色の蛍光で表現する。拡大後の細胞が尚も腫瘍細胞の特性を有していることを再度証明している。
【0052】
図11は本発明の実験例1の複合材料フィルムで胃がん患者の循環腫瘍細胞を第4週まで培養した後、取り出して特性評価染色を行った状況を示す。免疫蛍光染色写真では、EpCAMは緑色の蛍光色で表現し、CD45は赤色の蛍光色で表現し、DPAIは青色の蛍光色で表現する。ここから分かるように、拡大後の循環腫瘍細胞表現が上皮細胞接着分子(EpCAM)及びDAPIの蛍光信号を尚も有し、拡大後の細胞が腫瘍細胞の特性を有していることを証明し、但し、T細胞及びB細胞のよくある特性(CD45)の蛍光信号は未表現である。
【0053】
図12は比較例1の材料フィルム及び実験例1の複合材料フィルムをそれぞれ使用して1名の肺がん患者及び1名の卵巣がん患者の循環腫瘍細胞を培養し、4週間後に細胞を拡大した状況の細胞活性計数の比較図である。図12に示すように、実験例1の複合材料フィルムは循環腫瘍細胞の拡大数を効果的に増やしている。よって、本発明の複合材料フィルムは循環腫瘍細胞を付着すると共に拡大するための基底として非常に適合している。
【0054】
本発明は拡大後の循環腫瘍細胞を凍結保存するための凍結保存液を更に提供し、これは冷凍試薬及び培養液を備えている。培養液はアルカリ性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor、bFGF)及び上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)を含む。いくつかの実施例では、培養液は血小板溶解液を更に含む。
【0055】
この凍結保存液は拡大後の循環腫瘍細胞と混合し、-70oC以下の環境(例えば、液体窒素)で再度冷凍保存するために用いられている。実験からは、本発明の複合材料フィルムの表面で解凍後の循環腫瘍細胞が成長活性を回復し、且つ遺伝物質及び生化学的特性が冷凍前後で改変されていないことが分かった。よって、循環腫瘍細胞は冷凍後にも上述の薬物の効果を検査する方法に尚も応用可能であり、新薬の開発過程の薬物の毒殺効果試験にも更に応用可能である。
【0056】
いくつかの実施形態では、培養液は3種類の10ng/ml(ng/ml)のアルカリ性線維芽細胞成長因子、10ng/mlの上皮成長因子、及び3%~20%の血小板溶解液を少なくとも含む。いくつかの実施形態では、培養液の基底液はDMEM/F12培養基であり、DMEM/F12培養基中に10ng/ml(ng/ml)のアルカリ性線維芽細胞成長因子、10ng/mlの上皮成長因子、及び10%の血小板溶解液を添加する。
【0057】
いくつかの実施形態では、培養液は1種または複数種の組み換え成長因子を更に含み、例えば、発表されている文献に記載の循環腫瘍細胞の成長を支持する他の補充剤である。
【0058】
いくつかの実施形態では、培養液はB27添加剤(B27 supplement)のような添加剤を更に含む。いくつかの実施例において、培養液はMEM、RPMI1640、他の適合する基底培養液、またはそれらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施例では、培養液は微生物及び真菌の汚染を回避する抗生物質を更に含む。
【0059】
上述の実施形態は本発明の技術思想及び特徴を説明するためのものにすぎず、当該技術分野を熟知する者に本発明の内容を理解させると共にこれをもって実施させることを目的とし、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。従って、本発明の精神を逸脱せずに行う各種の同様の効果をもつ改良又は変更は、後述の請求項に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0060】
10 培養容器
12 基材
20 混合液
22 粒子
24 溶剤
26 媒質材料
26' 誘電体層
30 細胞液
32 循環腫瘍細胞
32' 循環腫瘍細胞塊
34 培養液
100 方法
200 方法
201 液層
202 粒子層
203 複合材料フィルム
S102 ステップ
S104 ステップ
S106 ステップ
S108 ステップ
S202 ステップ
S204 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12