(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ベッドマットレスのカバー体及びその縫製方法
(51)【国際特許分類】
A47C 31/10 20060101AFI20240122BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20240122BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A47C31/10
A47G9/02 N
A47C27/00 Z
(21)【出願番号】P 2023155580
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】高尾 直幹
(72)【発明者】
【氏名】小野 信吾
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4095300(US,A)
【文献】米国特許第3013283(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/10
A47G 9/02
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドマットレスの中材を被覆するカバー体であって、
前記中材のコーナー部は垂直に配置された一対の平坦部と該一対の平坦部の間の縁部とを備え、
前記カバー体は前記中材のコーナー部を被覆するコーナー被覆部を備え、
前記コーナー被覆部は連続した布地を備え、
前記コーナー被覆部は前記中材の縁部に対向する可変部及び前記平坦部に対向するシート部を有し、前記可変部は前記シート部よりも保形性が小さい、
カバー体。
【請求項2】
前記コーナー被覆部の前記シート部は前記連続した布地の一部が折り重なってかつ縫合されている、請求項1に記載のカバー体。
【請求項3】
前記コーナー部の前記シート部は他の部材で補強されている、請求項1に記載のカバー体。
【請求項4】
前記中材を請求項1に記載のカバー体で被覆してなる、ベッドマットレス。
【請求項5】
請求項2に記載のカバー体の製造方法であって、
前記連続した布地を準備するステップと、
前記連続した布地において前記中材の縁部に対向する可変部を規定するステップと、
前記連続した布地において、前記可変部の両端を折り重ねるステップと、
前記折り重なれた部分を縫合するステップと、
を備えてなるカバー体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベッドマットレスのカバー体及びその縫製方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッドマットレスはクッション性を有する中材と該中材を被覆するカバー体とを備えている。
洗濯等を容易にしたり、その意匠を容易に変更したりするため、中材に対してカバー体を着脱自在とすることが好ましい。
本願発明に関連する技術を開示する文献として特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベッドマットレスの中材のクッション性は、ベッドマッドレスに要求される使用態様に応じて様々に調整される。
ここに、ベッドマットレスの中材に柔らかさが求められたとき、下記の課題があった。
カバー体の表面にしわが生じることを避けるために、中材に対してカバー体をタイトに被覆させることが一般的である。このとき、ベッドマットレスの中材が柔らかいと、カバー体により中材がその厚さ方向に圧縮されて、ベッドマットレスの側面が変形する。板状の中材を備えたベッドマットレスは、本来、その上面や側面は平面的であるべきである。しかしながら、中材が柔らかいと、カバー体に圧縮されて中材の側面が外側へ膨らんだり、しわができたりしてその平面性が阻害される。その結果、ベッドマットレスのコーナー部において上面(若しくは下面)と側面との境界線、又は側面間の境界線の縁部の直線性が損なわれ、設計通りの意匠性が発現されないおそれがある。
【0005】
複数の布地を準備し、それらの端縁を縫い合わせてカバー体を構成し、縫い合わされた端縁を中材の縁部に対向させることにより、当該縁部に対向するカバー体の部分の直線性を確保することができる。しかしながら、複数の布地を縫い合わせることには手間がかかるし、カバー体のコーナー被覆部に縫い合わせた部分があると、これを中材のコーナー部に対向させたとき、コーナー被覆部が中材のコーナー部に対して完全に追従できず、わずかながらも両者の間に空間が生じる。この空間が、ベッドマットレスのコーナー部の意匠性を害するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その第1局面は次のように規定される。即ち、
ベッドマットレスの中材を被覆するカバー体であって、
前記中材のコーナー部は垂直に配置された一対の平坦部と該一対の平坦部の間の縁部とを備え、
前記カバー体は前記中材のコーナー部を被覆するコーナー被覆部を備え、
前記コーナー被覆部は連続した布地を備え、
前記コーナー被覆部は前記中材の縁部に対向する可変部及び前記平坦部に対向するシート部を有し、前記可変部は前記シート部よりも保形性が小さい、
カバー体。
【0007】
このように規定されるカバー体によれば、そのコーナー被覆部の可変部を中材のコーナー部の縁部に対向させ、かつ、そのコーナー被覆部のシート部を中材の平坦部へ対向させることで、コーナー被覆部は中材のコーナー部に沿って隙間なく対向できる。これは、コーナー被覆部が連続した布地で形成されているため、カバー体と中材との間に空間ができ難いこと、かつ、中材の縁部に対向している可変部は保形性が小さいためこれが優先的に変形することに起因する。換言すれば、カバー体の応力が当該可変部に集中するので、シート部の変形が抑制される。
【0008】
カバー体のコーナー被覆部においてシート部の変形が抑制されることにより、ベッドマットレスの側面、上面及び下面の変形が抑制され、その平坦性が維持される。マットレスの側面、上面及び下面の変形が抑制されることで、これら各平坦面を繋ぐ縁部の直線性も維持される。
保形性の小さい可変部にコーナー被覆部の変形が集中する。換言すれば、保形性の小さい可変部が変形したとしても、中材の縁部までをも変形させることはなく、もっぱら縁部に追従してこれに沿うように変形する。よって、中材の縁部の直線性が維持される。
【0009】
この発明の第2局面に規定のカバー体は次のように規定される。
第1局面に規定のカバー体において、前記コーナー被覆部の前記シート部は前記連続した布地の一部が折り重なってかつ縫合されている。
このように規定される第2局面のカバー体によれば、布地を折り重ねてこれを縫合することでシート部の保形性が大きくなる。布地は変形部も含めてコーナー被覆部を構成するものなので、カバー体の構成部品を可及的に少なくすることができる。よって、カバー体の製造コストを低減できる。
【0010】
この発明の第3局面に規定のカバー体は次のように規定される。
第1局面に規定のカバー体において、前記コーナー部の前記シート部は他の部材で補強されている。
このように規定される第3局面のカバー体によれば、シート部を他の部材で補強することによりその保形性を大きくできる。他の部材の材質等を選択することで、シート部の補強度合いを任意に調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は中材とカバー体との関係を示す模式図である。
【
図2】
図2はこの発明の実施形態のカバー体で中材を被覆した状態を示す模式図である。
【
図3】
図3はこの発明の他の実施形態のカバー体で中材を被覆した状態を示す模式図である。
【
図4】
図4はこの発明の他の実施形態のカバー体とこれで中材へ被覆した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について説明をする。
図1は中材10とカバー体20とを示し、
図1Aは中材10を示し、
図1Bはカバー体20を示し、
図1Cは中材10をカバー体20で被覆したベッドマットレス1を示す。
【0013】
中材10は板状のクッション部材である。
クッション部材はベッドマットレスの用途や使用状況に応じて任意に選択可能である。例えば、フィラメント3次元結合体(商品名:株式会社エアウィーヴ製エアファイバー)、ポリウレタンフォーム、等を選択することができる。中材10はその全体において同一の材料で形成されていてもよいし、硬さや反発力を調整するため、その厚さ方向及び/又は幅方向に異なる材料(材質、発泡の度合い)としてもよい。
中材10の形状は、下地となるベッドに応じて任意に設計できるが、矩形薄板状とすることが一般的である。
【0014】
そのため、中材10は直交する平坦部である上面11、側面12、13を備え、各平坦部と平坦部とは直線状の端縁15、16及び17を備える。少なくとも一対の平坦部と端縁とでコーナー部が形成される。例えば側面12及び側面13並びに端縁15とでコーナー部19が形成される。
この例では、中材10として、高さ:10~600mm、幅:300~2500mm、長さ:1000~2500mmのフィラメント3次元結合体のものを採用する。
【0015】
カバー体20は布製であり、中材10の外形寸法と同じ外径寸法を有する袋体である。中材10を収納するため、一辺が線状ファスナーにより開閉可能である。
図中の符号21はコーナー被覆部であり、中材10のコーナー部に対向する。
以下の説明では、中材10において側面12と側面13とが端縁15でつながれたコーナー部19とコーナー被覆部21とに着目して説明を進める。
【0016】
カバー体20のコーナー被覆部21の詳細構成を
図2Aに示す。
このコーナー被覆部21は1枚の布地25からなり、可変部22とシート部23とを備える。
可変部22はシート部23で挟まれており、可変部22において布地25は何ら折り畳まれておらず、一枚ものである。シート部23において布地25は可変部22から下側に向けて折り畳まれ、折り畳みは三重であり、かつ補強糸27で縫合されている。
このように構成されたコーナー被覆部21によれば、意匠面(最上面)において布地25が連続している。よって、コーナー被覆部21に特異な意匠性を与えられる。例えば、このコーナー被覆部21に対する模様形成が容易になる。
【0017】
図2(B)の例では、シート部23の端縁(可変部22と反対側の縁)が平坦部12や平坦部13の途中までとされている。カバー体20のコーナー被覆部21がその機能を奏して中材10のコーナー部19を何ら変形せずに、その当初の形状に沿うようにされていれば、ベッドマットレスとしての意匠性が害されることはない。
勿論、中材10の平坦部12及び平坦部13の全面に対向するようにカバー体20のシート部を設けてもよいし、
図2(A)に示した比較的短いシート部23を繰り返して配置させてもよい。
【0018】
シート部23における布地25の折り畳み(重ね合わせ)の度合いは、布地25自体の折れ曲がり性、縫合の密度等を考慮して、シート部23に求められる保形性に応じて、任意に選択される。シート部23から布地25の端縁を引き出すためには、折り畳みは3以上の奇数回とする。
シート部23に十分な保形性を確保できれば、縫合の密度も任意に選択できる。
【0019】
縫合のパターンは任意であり、汎用的な刺し子のパターンを採用することで、シート部23に任意の意匠性を与えることができる。
補強糸27の色や太さの選択も任意である。縫合の容易性からシート部23を1本の補強糸27で縫合することが好ましいが、複数の補強糸27を用いて、それぞれ異なる色としたり、刺し子のパターンとしたりすることで1つのシート部23の布地を縫合することもできる。
【0020】
図2に示すカバー体20は次のようにして形成できる。
連続した布地25を準備する。布地25の幅は中材10の平坦部12及び13の合計の幅の3倍以上とする。
次に、中材10の縁部に対向する部分、即ち可変部22を規定する。このとき、可変部22の両脇にはそれぞれ平坦部12及び平坦部13の幅の3倍以上の幅の布地を存在させる。
次に、可変部22の両脇の布地25の部分を三重に折り重ね、針やテープなどで、仮止めする。
折り重ねた部分を刺し縫いして縫合する。
【0021】
このようにして形成されるカバー体20において、布地25が一枚の可変部22の保形性は、布地25が三重でありかつ差し縫いで補強されたシート部23の保形性に比べて小さくなる。
これにより、カバー体20で中材10をタイトに被覆したとき、カバー体のコーナー被覆部の可変部が中材10の縁部に沿うように変形し、その直線性を維持するとともに、保形性の高いシート部は中材の平坦部に対向してその平坦性を維持する。
【0022】
図3に他の実施形態のカバー体のコーナー被覆部121を示す。なお、
図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
このコーナー被覆部121はシート部123、123の間に可変部122が挟まれた構造であり、シート部123、123と可変部122とは連続した布地25でつながれている。シート部123の裏面(中材10に対向する面)には、補強シート130が貼り付けられて、シート部123の保形性を可変部122のそれより大きくしている。
【0023】
シート部123の裏面へ補強シート130を貼り付けることにより、コーナー被覆部121の表面には連続した布地25が無地の状態で表出する。これによりコーナー被覆部121にシンプルな意匠性を与えられる。
上記の例では、補強シート130をシート部123の裏面へ貼り付けているが、シート部123に袋を設けて、そこに補強シートを差し込むこともできる。補強シート130をシート部123の布地へ縫合することを避けるものではない。
補強シート130は、布地25より剛性の高い材料であれば、その材質は特に限定されない。フォーム材などの可撓性のある高分子材料の薄板を採用することができる。
【0024】
図4に他の実施形態のカバー体のコーナー被覆部221を示す。なお、
図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
このコーナー被覆部221はシート部223、223の間に可変部222が挟まれた構造であり、シート部223、223と可変部222とは連続した布地25でつながれている。
【0025】
この例ではシート部223において可変部222へつながる部分に短い第2折返し部2231が設けられる。この第2折返し部2231においても布地25は折り返されているが、補強糸27による縫合の密度を、可変部222の本体部2233よりも小さく、その保形性を、本体部2233と可変部222との間の大きさとする。
これにより、可変部222とシート部223との間での変形を滑らかにすることができる。
【0026】
第2折返し部2231を設けることで、可変部222の幅をより狭くすることができる。
第2折返し部2231の幅は特に限定されないが、可変部222の幅と同じか、若しくはその2倍の幅とすることができる。
【0027】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 ベッドマットレス
10 中材
11、12、13 平坦面
15、16、17 縁部
19 コーナー部
20 カバー体
21、121、221 コーナー被覆部
22、122、222 可変部
23、123、223 シート部
27 補強糸
130 補強シート
【要約】
【課題】ベッドマットレスの中材が柔らかいと、カバー体に圧縮されてその平面性が阻害される。その結果、コーナー部において平坦面間の境界線の縁部の直線性が損なわれ、設計通りの意匠性が発現されないおそれがある。
【解決手段】ベッドマットレスの中材を被覆するこの発明のカバー体は、中材のコーナー部は垂直に配置された一対の平坦部と該一対の平坦部の間の縁部とを備え、カバー体は中材のコーナー部を被覆するコーナー被覆部を備え、コーナー被覆部は連続した布地で形成され、コーナー被覆部は中材の縁部に対向する可変部及び平坦部に対向するシート部を有し、可変部はシート部よりも保形性が小さい。
【選択図】
図1