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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】吊り金具および吊り金具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 15/08 20060101AFI20240122BHJP
   B66C 1/66 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F16G15/08
B66C1/66 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022569987
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045843
(87)【国際公開番号】W WO2022131214
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020207776
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【弁理士】
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】小菅 幸介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理佳
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-513388(JP,A)
【文献】特開2001-248693(JP,A)
【文献】実開昭62-146036(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 15/08
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
荷に取り付けられると共に、吊り上げ手段が連結される回転金具を備える吊り金具の製造方法であって、
前記回転金具は、
前記荷の取り付け面に固定されるアンカー金具と、
前記アンカー金具に前記荷の取り付け面に垂直な回転軸で軸支される回転連結部材と、
前記アンカー金具に対して前記回転連結部材を回転自在に支持する第1軸受と、
前記アンカー金具に対して前記回転連結部材を回転自在に支持すると共に、前記第1軸受に対して前記回転軸の軸方向に離間している第2軸受と、
を備え、
前記回転連結部材には、前記アンカー金具に向かって突出する回転軸部が設けられていて、
前記アンカー金具には、前記荷に取り付けられる固定部と、前記固定部と一体化された金具連結部とが設けられていて、
前記金具連結部には、前記回転軸部を挿通する連結凹部が設けられていて、
前記第1軸受は、
前記連結凹部の内壁面から凹んでいる外接凹溝と、前記回転軸部の外周面から凹むと共に、前記外接凹溝と対向する内接凹溝と、前記内接凹溝と前記外接凹溝で形成される無端の通路に挿入される複数の第1ベアリングボールと、を備えていて、
前記第2軸受は、
前記回転軸部が挿入される前記連結凹部の開口部分に設けられていると共に内径側から外径側に凹む外接段部と、前記回転軸部の付け根部分に設けられていると共に、前記外接段部と対向する内接段部と、前記外接段部と前記内接段部で形成される無端の通路に挿入される複数の第2ベアリングボールと、を備えると共に、
前記回転軸部を前記連結凹部に所定深さだけ挿入する軸部挿入工程と、
前記軸部挿入工程に前後して、前記アンカー金具と前記回転連結部材とが前記軸方向と直交する方向で対向している対向部位に治具を配置して、当該対向部位に、前記第2ベアリングボールが移動可能な隙間を形成する治具配置工程と、
前記治具配置工程で形成された隙間に複数の前記第2ベアリングボールを挿入して、複数の前記第2ベアリングボールを前記外接段部に配置させる先ボール配置工程と、
前記先ボール配置工程の後に、前記治具を前記対向部位から取り外して前記回転軸部を前記連結凹部の奥側まで挿入して、前記外接段部と前記内接段部の双方が前記第2ベアリングボールと当接する状態とする冶具取り外し工程と、
前記冶具取り外し工程の後に、前記金具連結部の外周面から前記外接凹溝に至る投入孔から複数の前記第1ベアリングボールを挿入して、複数の前記第1ベアリングボールを前記外接凹溝と前記内接凹溝の双方に当接する状態とする後ボール配置工程と、
前記後ボール配置工程の後に、前記投入孔を封止する封止工程と、
を実行することを特徴とする吊り金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り金具および吊り金具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷を吊り上げるための吊り金具の中には、リフティングポイントと呼ばれるものがある。この吊り金具は、環状のリンクと、リンクの連結部分が回転可能な回転連結部材と、回転連結部材を回転自在に支持するアンカー金具とを有している。また、アンカー金具には、雄ネジ部が設けられていて、この雄ネジ部が荷の取り付け穴の雌ネジ部に捻じ込まれる。すなわち、荷の中には、たとえば建築部材や金型等のように雌ネジ部が設けられているものがあり、そのような荷の雌ネジ部に、上記の雄ネジ部を捻じ込んで固定し、リンク部材にフック等を掛ける。それにより、荷を持ち上げて移動させることが可能となっている。
【0003】
ところで、アンカー金具と回転連結部材の間に配置されるベアリングが1列のみの場合には、回転軸と垂直な方向(横方向)に荷重がかかった場合に、回転連結部材がアンカー金具に対して倒れることで、両者が直接摺動してしまう。このような直接の摺動を防ぐために、アンカー金具と回転連結部材の間にブッシュが配置されるものがある。しかしながら、このブッシュは滑り軸受として機能するので、アンカー金具と回転連結部材の間の回転性能が悪化してしまう。
【0004】
そこで、上記のような回転性能の悪化を防ぐために、2列のベアリングを有する吊り金具が特許文献1に開示されている。特許文献1の図5には、2列のベアリング(16,17)が、取付け部材(20)のガイドピン(24)の外周側と固定部材(21)の凹部(25)の内周側との間に配置されている構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献1の図1には、上側のベアリング(16)が固定部材(13)のガイドピン(12)の外周側と取付け部材(1)の凹部の内周側との間に配置されている。これと共に、下側のベアリング(17)が固定部材(13)のフランジ状の部分と、取付け部材(1)の下端面との間に配置されている構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献1の図8には、上側のベアリング(17)が連結部材(29)の上端面と、取付け部材(20)の段状の部分との間に配置されている。これと共に、下側のベアリング(16)が取付け部材(20)のガイドピン(24)の外周側と連結部材(29)の凹部(28)の内周側との間に配置されている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2005-513388号公報(図1図5および図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の図5に開示の構成においては、回転軸に垂直な方向(横方向)に荷重がかかった場合、ガイドピン(24)のうち、2列のベアリング(16,17)の接触部位の内側(内径が小さくなっている部分)で上記の荷重を受け止める状態となる。この場合、大きな荷重に抗するためには、ガイドピン(24)の直径を大きくする必要がある。しかしながら、ガイドピン(24)の直径を大きくすると、その分だけ、吊り金具の大型化を招いてしまう。
【0009】
また、特許文献1の図1に開示の構成においては、回転軸に垂直な方向(横方向)に荷重がかかった場合、下側のベアリング(17)が配置されている固定部材(13)のフランジ状の部分において、荷重を受け止めることができる。それにより、固定部材(13)のガイドピン(12)のうち、ベアリング(16)の接触部位の内側(内径が小さくなっている部分)の寸法を小さくすることが可能となっている。しかしながら、この構成では、下側のベアリング(17)を配置するために、固定部材(13)のフランジ状の部分と、取付け部材(1)の下端面の双方に凹状の溝を形成する必要がある。しかしながら、上記の溝を形成する場合、その分だけスペースが必要となり、その結果、固定部材(13)と取付け部材(1)の直径を大きくする必要があるので、吊り金具の大型化を招いてしまう。
【0010】
なお、特許文献1の図8に開示の構成においても、特許文献1の図1に開示の構成と同様な問題が生じる。すなわち、軸方向に垂直な方向(横方向)の荷重を受ける部位である上側のベアリング(17)を配置するために、連結部材(29)の上端面と、取付け部材(20)の段状の部分の双方に、双方に凹状の溝を形成する必要がある。しかしながら、上記の溝を形成する場合、その分だけスペースが必要となり、その結果、連結部材(29)と取付け部材(20)の直径を大きくする必要があるので、吊り金具の大型化を招いてしまう。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、2列以上のベアリングを配置しながらも寸法が大型化するのを防止することが可能であり、最適なベアリング構造を有する吊り金具および吊り金具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、荷に取り付けられると共に、吊り上げ手段が連結される回転金具を備える吊り金具であって、回転金具は、荷の取り付け面に固定されるアンカー金具と、アンカー金具に荷の取り付け面に垂直な回転軸で軸支される回転連結部材と、アンカー金具に対して回転連結部材を回転自在に支持する第1軸受と、アンカー金具に対して回転連結部材を回転自在に支持すると共に、第1軸受に対して回転軸の軸方向に離間している第2軸受と、を備え、回転連結部材には、アンカー金具に向かって突出する回転軸部が設けられていて、アンカー金具には、荷に取り付けられる固定部と、固定部と一体化された金具連結部とが設けられていて、金具連結部には、回転軸部を挿通する連結凹部が設けられていて、第1軸受は、連結凹部の内壁面から凹んでいる外接凹溝と、回転軸部の外周面から凹むと共に、外接凹溝と対向する内接凹溝と、内接凹溝と外接凹溝で形成される無端の通路に挿入される複数の第1ベアリングボールと、を備えていて、第2軸受は、回転軸部が挿入される連結凹部の開口部分に設けられていると共に内径側から外径側に凹む外接段部と、回転軸部の付け根部分に設けられていると共に、外接段部と対向する内接段部と、外接段部と内接段部で形成される無端の通路に挿入される複数の第2ベアリングボールと、を備えている、ことを特徴とする吊り金具が提供される。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、固定部は、荷の取り付け面に密着する座面を有するアンカー座部を有している、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第2ベアリングボールの直径は、第1ベアリングボールの直径よりも小さく設けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、金具連結部のうち連結凹部の開口部分の周囲には、回転連結部材に向かって突出する凸状部が突出していて、外接段部の底部から凸状部の頂部までの軸方向における突出高さは、第2ベアリングボールの直径よりも大きく設けられている、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、回転連結部材には、第1スラスト面と対向する第2スラスト面から凹んでいる対向凹部が設けられていて、対向凹部には、凸状部が入り込むことで、ラビリンス構造が形成されている、ことが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、荷に取り付けられると共に、吊り上げ手段が連結される回転金具を備える吊り金具の製造方法であって、回転金具は、荷の取り付け面に固定されるアンカー金具と、アンカー金具に荷の取り付け面に垂直な回転軸で軸支される回転連結部材と、アンカー金具に対して回転連結部材を回転自在に支持する第1軸受と、アンカー金具に対して回転連結部材を回転自在に支持すると共に、第1軸受に対して回転軸の軸方向に離間している第2軸受と、を備え、回転連結部材には、アンカー金具に向かって突出する回転軸部が設けられていて、アンカー金具には、荷に取り付けられる固定部と、固定部と一体化された金具連結部とが設けられていて、金具連結部には、回転軸部を挿通する連結凹部が設けられていて、第1軸受は、連結凹部の内壁面から凹んでいる外接凹溝と、回転軸部の外周面から凹むと共に、外接凹溝と対向する内接凹溝と、内接凹溝と外接凹溝で形成される無端の通路に挿入される複数の第1ベアリングボールと、を備えていて、第2軸受は、回転軸部が挿入される連結凹部の開口部分に設けられていると共に内径側から外径側に凹む外接段部と、回転軸部の付け根部分に設けられていると共に、外接段部と対向する内接段部と、外接段部と内接段部で形成される無端の通路に挿入される複数の第2ベアリングボールと、を備えると共に、回転軸部を連結凹部に所定深さだけ挿入する軸部挿入工程と、軸部挿入工程に前後して、アンカー金具と回転連結部材とが軸方向と直交する方向で対向している対向部位に治具を配置して、当該対向部位に、第2ベアリングボールが移動可能な隙間を形成する治具配置工程と、治具配置工程で形成された隙間に複数の第2ベアリングボールを挿入して、複数の第2ベアリングボールを外接段部に配置させる先ボール配置工程と、先ボール配置工程の後に、治具を対向部位から取り外して回転軸部を連結凹部の奥側まで挿入して、外接段部と内接段部の双方が第2ベアリングボールと当接する状態とする冶具取り外し工程と、冶具取り外し工程の後に、金具連結部の外周面から外接凹溝に至る投入孔から複数の第1ベアリングボールを挿入して、複数の第1ベアリングボールを外接凹溝と内接凹溝の双方に当接する状態とする後ボール配置工程と、後ボール配置工程の後に、投入孔を封止する封止工程と、を実行することを特徴とする吊り金具の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、2列以上のベアリングを配置しながらも寸法が大型化するのを防止することが可能であり、最適なベアリング構造を有する吊り金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る吊り金具の構成を示す斜視図である
図2図1に示す吊り金具の側面図である。
図3図1に示す吊り金具の構成を示す分解斜視図である。
図4図1に示す吊り金具の回転金具の構成を示す断面図である。
図5図1に示す吊り金具のうち、金具連結部と対向する軸受および下支持部を拡大して示す部分的な断面図である。
図6図5の変形例に係る、金具連結部と対向する軸受および下支持部を拡大して示す部分的な断面図である。
図7図1に示す吊り金具を製造するために、アンカー金具と回転連結部材の間にリングセットを装着した状態を示す斜視図である。
図8図7に示すアンカー金具と回転連結部材の間にリングセットを装着した状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る、吊り金具10について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、リンク孔85の延伸方向をX方向とし、図1において右上側をX1側、それとは逆の図1における左下側をX2側とする。また、図1において略U字形状の上環部82の両端を結ぶ方向をY方向とし、図1において右下側をY1側、それとは逆の図1における左上側をY2側とする。また、雄ネジ部40の軸方向をZ方向とし、雄ネジ部40から見てリンク連結部80側をZ1側(上側)、それとは逆のリンク連結部80から見て雄ネジ部40側をZ2側(下側)とする。
【0021】
<吊り金具の構成について>
図1は、吊り金具10の構成を示す斜視図である。図2は、吊り金具10の構成を示す側面図である。図3は、回転金具20の構成を示す分解斜視図である。図4は、回転金具20の構成を示す断面図である。図1から図4に示すように、吊り金具10は、回転金具20と、リンク120とを有している。これらのうち、回転金具20は、アンカー金具30と、回転連結部材60と、第1軸受100と、第2軸受110とを有している。
【0022】
アンカー金具30は、不図示の荷に取り付けられる部分であり、本実施の形態では、アンカー金具30は、概ね六角ボルトの頭部に凹みを形成した形状に設けられている。このアンカー金具30には、雄ネジ部40と、六角ボルトの頭部に相当する部分である金具連結部50と、アンカー座部45とが設けられている。雄ネジ部40は、ネジが形成されている軸状の部分であり、その雄ネジ部40が荷の取り付け穴に設けられた雌ネジに捻じ込まれる。それにより、アンカー金具30が荷に固定される。
【0023】
また、アンカー金具30には、アンカー座部45が設けられている。なお、雄ネジ部40とアンカー座部45とは、固定部に対応する。アンカー座部45は、荷の取り付け面と当接する座面45aを有する部位である。そのため、アンカー座部45は、雄ネジ部40の上端側(Z1側)に設けられると共に、その上端側(Z1側)と一体化されている。また、アンカー座部45は、金具連結部50の下方側(Z2側)に位置し、その金具連結部50と一体化されている。なお、たとえば図4に示すように、アンカー座部45は、雄ネジ部40の周囲に円形のリング状に設けられているが、金具連結部50の下側(Z2側)で雄ネジ部40の上側(Z1側)に円盤状に設けられているとしても良い。
【0024】
また、金具連結部50は、回転連結部材60と連結される部分である。図3に示すように、金具連結部50には、凹状の連結凹部51が設けられていて、この連結凹部51に回転連結部材60の回転軸部70が入り込む。なお、金具連結部50の外周側には外周部52が設けられている。外周部52は、スパナ等の工具が嵌合可能な形状(たとえば六角形状)に設けられていて、この外周部52に工具の作用部を嵌合させることで、雄ネジ部40を、荷の雌ネジ部に捻じ込み締め付ける際の作業性が向上する。
【0025】
また、金具連結部50には、投入孔53が設けられている(図3参照)。この投入孔53からは、第1軸受100を構成する複数のベアリングボール101(後述)が挿入される。また、投入孔53は、ネジ孔であり、この投入孔53には封止用の六角穴付きネジ130(以下、単にネジ130と称呼する)が捻じ込まれる。それにより、ベアリングボール101の脱落が防止される。
【0026】
また、連結凹部51の内壁側には、外接凹溝54と、外接段部55とが設けられている。なお、これら外接凹溝54と外接段部55については、後述する。
【0027】
図5は、金具連結部50と対向する第1軸受100、第2軸受110および下支持部81を拡大して示す部分的な断面図である。図4および図5に示すように、金具連結部50のうち、連結凹部51の開口部付近の周囲には、外接段部55よりも上方側(Z1側)に突出している凸状部56が設けられている。この凸状部56には、頂部56aが設けられていて、その頂部56aは、金具連結部50の外周側よりも連結凹部51の近傍において、最も上方側(Z1側)に位置する部分となっている。また、頂部56aから外接段部55までの高さ寸法H1は、後述するベアリングボール111の直径よりも大きく設けられている。そのため、外部からの異物侵入からベアリングボールを保護するとともに、潤滑剤を保持する構造となっている。
【0028】
なお、凸状部56は、後述する環状凹部81bに入り込んでラビリンス構造を形成している。それにより、第2軸受110への異物侵入防止及び潤滑剤の保持を一層良好なものとしている。
【0029】
図1から図4に示すように、回転連結部材60には、回転軸部70と、リンク連結部80とが設けられている。回転軸部70は、アンカー金具30の連結凹部51に差し込まれる軸状の部分である。この回転軸部70が連結凹部51に差し込まれることにより、回転軸部70の外周面70aと連結凹部51の内壁面51aとが径方向において対向するラジアル対向部分RA1が形成される。また、下支持部81の下面81aと金具連結部50の連結凹部51の周囲の上面50aとが対向することで、スラスト対向部分TH1が形成される。なお、上面50aは第1スラスト面に対応し、下面81aは第2スラスト面に対応する。
【0030】
この回転軸部70と連結凹部51の間には、第1軸受100を構成する複数のベアリングボール101と、第2軸受110を構成する複数のベアリングボール111とが配置される。それにより、回転連結部材60がアンカー金具30に対して回転軸部70の軸心を中心に回転自在となっている。
【0031】
なお、回転軸部70には、内接凹溝71と、内接段部72とが設けられているが、これら内接凹溝71と内接段部72については、後述する。
【0032】
また、リンク連結部80は、リンク連結部80の回転軸方向(Z方向)において、回転軸部70よりもアンカー金具30から離れる側(Z1側)に位置している部分である。このリンク連結部80は、下支持部81と、上環部82と、傾斜肩部83と、リンク受け部84と、リンク孔85とを有している。
【0033】
下支持部81は、回転連結部材60のうちアンカー金具30側に位置している部分であり、略円板状に設けられている。本実施の形態では、下支持部81のアンカー金具30と反対側の部位には、円柱状の一部を切り欠くことで、後述する傾斜肩部83およびリンク孔85が形成されているしている。なお、下支持部81の上側(Z1側)から下側(Z2側)に向かうように、略円筒状に切り欠いた部分は、リンク孔85の一部となっている。
【0034】
また、下支持部81の下面81a側には、環状凹部81bが設けられている。環状凹部81bは、内接段部72の外径側に隣接して上側(Z1側)に向かって凹む部分であり、上記の凸状部56が入り込む部分である。なお、上述したように、凸状部56と環状凹部81bとによって、ラビリンス構造が形成され、塵埃などの異物が第2軸受110側に入り込むのを防止している。また、第2軸受110や第1軸受100といった軸受部の潤滑剤が漏れ出るのを防止している。なお、環状凹部81bは、対向凹部に対応する。
【0035】
また、下支持部81の上面側(Z1側の面側)には、上環部82が設けられている。上環部82は、略U字形状の一端側と他端側とが下支持部81に連結されることで、下支持部81および上環部82で囲まれるリンク孔85が形成されている。なお、リンク孔85を正面視した場合、その形状は円形状となっている。しかしながら、リンク孔85の正面形状は円形状には限られず、楕円形状や長円形状に設けられていても良い。
【0036】
また、傾斜肩部83は、下支持部81と上環部82の境界付近に設けられていて、Z方向とY方向の両方に平行なZY平面に対して傾斜している。本実施の形態では、回転連結部材60を平面視したときの形状は、X方向およびY方向において、対称となっている。このため、下支持部81と上環部82の境界は合計4箇所存在するので、傾斜肩部83も合計4箇所存在している。
【0037】
また、傾斜肩部83の下方側(Z2側)には、リンク受け部84が設けられている。リンク受け部84は、フリー状態のリンク120が、リンク孔85への挿通部位を支点として回動したときに、リンク120と当接して、当該リンク120が雄ネジ部40側(下側;Z2側)に向かうように回動するのを規制する部位である。
【0038】
<第1軸受100および第2軸受110について>
次に、第1軸受100および第2軸受110について説明する。図3および図4に示すように、第1軸受100は、金具連結部50に設けられている外接凹溝54と、回転軸部70に設けられている内接凹溝71と、複数のベアリングボール101とを備えている。また、第2軸受110は、金具連結部50に設けられている外接段部55と、回転軸部70に設けられている内接段部72と、複数のベアリングボール111とを備えている。
【0039】
外接凹溝54は、連結凹部51に面する内壁面51aを凹ませた溝状の部分であり、その内部に第1軸受100を構成する複数のベアリングボール101が転動可能に配置される。図4に示すように、外接凹溝54は、内壁面51aのうち、高さ方向の中途部分に設けられている。この外接凹溝54は、円弧状(図4では、概ね半円状)の凹部であり、その曲率半径は、後述するベアリングボール101の半径と等しいか、ベアリングボール101の半径よりも若干大きく設けられている。
【0040】
このような外接凹溝54に対し、内接凹溝71が対向配置されている。内接凹溝71は、回転軸部70のうち外接凹溝54と対向する外周面70aを凹ませた溝状の部分であり、その内部に複数のベアリングボール101が転動可能に配置される。この内接凹溝71も上記の外接凹溝54と同様に、円弧状(図4では、概ね半円状)の凹部であり、その曲率半径は、後述するベアリングボール101の半径と等しいか、ベアリングボール101の半径よりも若干大きく設けられている。
【0041】
なお、外接凹溝54と内接凹溝71は、内壁面51aと外周面70aとが対向しているラジアル対向部分RA1に形成されている。
【0042】
また、ベアリングボール101は、第1ベアリングボールに対応する。このベアリングボール101は、上述した外接凹溝54と内接凹溝71に複数個挿入されるが、ベアリングボール101は、それらの内部を移動可能な状態となっている。また、外接凹溝54と内接凹溝71には、ベアリングボール101の間に隙間が生じないよう、ベアリングボール101が密に配置されている。
【0043】
このような構成により、第1軸受100は、ラジアルベアリングに類する構成よりも深い溝を有し、ラジアル荷重とともに大きなスラスト荷重を受けられる構造となっている。
【0044】
また、第2軸受110を構成する外接段部55は、連結凹部51のうち、回転軸部70が挿入される部分の開口部分に設けられている。すなわち、ラジアル対向部分RA1とスラスト対向部分TH1の境界部分B1に、上記の外接段部55が設けられている。なお、外接段部55が連結凹部51の開口部分に設けられることで、その開口部分の内径は、連結凹部51の他の部分の内径よりも大径に設けられている。
【0045】
上記の外接段部55には、R形状の部分が存在しており、そのR形状の部分に、第2軸受110を構成する複数のベアリングボール111が当接可能となっている。すなわち、無端の外接段部55のR形状の部分に沿って、複数のベアリングボール111が転動する。このように、外接段部55が連結凹部51における開口部分に位置することで、当該外接段部55は、上述した外接凹溝54と上下方向(Z方向)において一定の距離だけ離間している。なお、外接段部55の円弧状の部分の曲率半径は、後述するベアリングボール111の半径と等しいか、ベアリングボール111の半径よりも若干大きく設けられている。
【0046】
また、第2軸受110を構成する内接段部72は、回転軸部70の上端側の付け根部分において外接段部55と対向する部位に設けられているR形状の部分であり、第2軸受110を構成する複数のベアリングボール111が転動する。この内接段部72のR形状の部分の曲率半径は、後述するベアリングボール111の半径と等しいか、ベアリングボール111の半径よりも若干大きく設けられている。
【0047】
また、ベアリングボール111は、第2ベアリングボールに対応する。このベアリングボール111は、上述した外接段部55と内接段部72の間に複数個挿入されるが、ベアリングボール111は、それらの内部を移動可能な状態となっている。また、外接段部55と内接段部72には、隣り合うベアリングボール111の間に隙間が生じないよう、ベアリングボール111が密に配置される。なお、図4に示すように、ベアリングボール111が、R形状の外接段部55と、同じくR形状の内接段部72の両者に当接するように配置されることで、ベアリングボール111に作用する荷重は、雄ネジ部40の軸線方向に対し、略45度傾斜する方向となっている。それにより、ベアリングボール111は、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方の荷重を受け止めることが可能な、アンギュラベアリングに類する構成となっている。
【0048】
また、ベアリングボール111の直径は、ベアリングボール101の直径よりも小さく設けられている。それにより、金具連結部50のうち、外接段部55から外周面までの寸法(肉厚)を大きくすることが可能となる。それにより、吊り金具10の小型化を図ることが可能となっている。一方、ベアリングボール111の直径をあまりにも小さくすると、ベアリングボール111が摩耗した後に、外部に飛び出してしまう。
【0049】
以上のような、小型化と、ベアリングボール111の摩耗後に外部へのベアリングボール111の飛び出しを防止することを図るため、ベアリングボール101の直径とベアリングボール111の直径の比は、以下のように設定されることが好ましい。なお、以下では、ベアリングボール111の直径を直径D1とし、ベアリングボール101の直径を直径D2としている。
直径D1:直径D2=1:1.2~1.8
なお、上記の範囲内において、最も好適なのは、直径D1:直径D2=1:1.6程度のときである。
【0050】
また、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置は、図5に示す接線Aと、図6に示す接線Bの間に存在することが好ましい。図6は、図5の変形例に係る、金具連結部50と対向する第1軸受100、第2軸受110および下支持部81を拡大して示す部分的な断面図である。
【0051】
図5においては、回転軸部70の中心から外周面70aまでの距離と、回転軸部70の中心から接線Aまでの距離は、同等となっている。一方、図6においては、回転軸部70の中心から内壁面51aまでの距離と、回転軸部70から接線Bまでの距離は、同等となっている。したがって、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置は、外周面70aよりも外径側に突出している突出部としても良いが、その突出部は、内壁面51aよりも外径側に突出しない状態とすることが好ましい。
【0052】
上記のように、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置が、接線Aと接線Bの間に存在する理由は、次の通りである。すなわち、吊り金具10には、様々な容量(定格負荷)が存在しているが、そのような各容量の吊り金具10に、既製品のベアリングボール111を使用するためには、微調整できる範囲が必要である。そして、ベアリングボール111を、回転軸部70と回転連結部材60の下面81a(環状凹部81bよりも径方向の中央側の下面81a)に接するように配置した場合、可能な限り、ベアリングボール111同士の隙間が開かないようにするために、接線Aと接線Bの間の範囲にベアリングボール111が位置することが好ましい。
【0053】
たとえば、接線Aと接線Bの間の寸法よりも大きな寸法範囲に、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置が存在する場合、吊り金具10の水平引きで引っ張られる向きとは反対側に大きな隙間が形成され易くなり、その反対側にベアリングボール111が移動し易くなる。一方、接線Aと接線Bの間の寸法が小さくなると、上記のような既製品のベアリングボール111を使用するために微調整できる範囲が狭まる。したがって、上記のように、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置が、接線Aと接線Bの間に存在することが好ましい。
【0054】
また、接線Bの位置は、回転連結部材60とアンカー金具30(金具連結部50)がオーバーラップしないように設定されている。それにより、回転連結部材60とアンカー金具30(金具連結部50)の干渉を避けつつ、吊り金具10の重量が増加するのを回避している。
【0055】
なお、上記のような接線Aと接線Bの間に、ベアリングボール111の最も内径側が回転軸部70と接する位置が存在する場合、ベアリングボール101よりも小径のベアリングボール111を小さくすることで、吊り金具10の小型化を図ると共に、吊り金具10を水平引きした場合における、ベアリングボール111の接点を増やすことも可能となる。それにより、吊り金具10を水平引きした場合に、ベアリングボール111の接点をできる限り広い範囲に跨るようにすることで、回転連結部材60がアンカー金具30に対して倒れないように支えることが可能となる。
【0056】
また、リンク120は、所定長さの丸棒鋼(鋼線)を上述したリンク孔85に挿通すると共に、環状に曲げ加工し両端(図示せず)を溶接等で接合することで、無端の長円形状としたもので、回転連結部材60と連結されている。また、ネジ130は、投入孔53に捻じ込まれるネジであり、たとえば六角穴付きネジ(イモネジ)が好適である。
【0057】
<吊り金具10の組み付け方法(製造方法)について>
次に、吊り金具10の組み付け方法(製造方法)について説明する。吊り金具10の組み付けに際しては、先ず、連結凹部51に回転軸部70を挿入する(軸部挿入工程に対応)。そして、所定だけ挿入された後に、図7および図8に示すような、治具に対応するリングセット200を、アンカー金具30と回転連結部材60の間に装着する(治具配置工程に対応)。
【0058】
図7は、アンカー金具30と回転連結部材60の間にリングセット200を装着した状態を示す斜視図である。図8は、アンカー金具30と回転連結部材60の間にリングセット200を装着した状態を示す断面図である。
【0059】
図7および図8に示すリングセット200は、一対の半割リング210から構成されている。それぞれの半割リング210を平面視したときに、その形態は半円状に設けられている。しかしながら、一対の半割リング210の周方向における端部側に位置する端部面(符号省略)同士を突き合せたとき、一対の半割リング210の間には、隙間S1が形成される。この隙間S1の周方向長さL1は、ベアリングボール111の直径よりも大きく設けられている。それにより、この隙間S1からベアリングボール111を、外接段部55と内接段部72とで形成される隙間に向けて挿入可能となっている。
【0060】
また、半割リング210には係止段部212が設けられている。係止段部212は、半割リング210の内周側および下方側(Z2側)を、断面が矩形状となるように切り欠くことで段形状に形成されている部分である。この係止段部212の上部側には、挟持部213が設けられている。挟持部213は、次に述べるように、金具連結部50の上面50aと、下支持部81の下面81aとの間に挟み込まれる部分である。なお、挟持部213の厚み寸法(Z方向の寸法)は、ベアリングボール111の直径よりも大きくなっている。また、挟持部213の厚み寸法T1は、下面81aと頂部56aの間の間隔が、ベアリングボール111の直径よりも大きくなるように設けられている。
【0061】
このような構成の半割リング210を金具連結部50の上角部50bに係止させると、半割リング210は、金具連結部50のうち、上角部50bおよび凸状部56の間に位置する上面50aと、下支持部81の下面81aの間に挟み込まれる。ここで、挟持部213の厚み寸法(Z方向の寸法)は、ベアリングボール111の直径よりも大きく設けられている。このため、上述した隙間S1からベアリングボール111を挿入して、外接段部55と内接段部72の間の隙間に、当該ベアリングボール111を供給可能となる。したがって、隙間S1から順次、ベアリングボール111を外接段部55と内接段部72の間の隙間に向けて供給する(先ボール配置工程に対応)。
【0062】
なお、ベアリングボール111を供給するのに際しては、アンカー金具30に対して回転連結部材60を回転させながら行うようにすることで、複数のベアリングボール111を外接段部55と内接段部72の間のリング状の隙間内で移動させつつ供給することができる。また、連結凹部51に回転軸部70を挿入するのに先立って、半割リング210を上角部50bに係止させるようにしても良い。また、ベアリングボール111を外接段部55と内接段部72の間のリング状の隙間に供給するのに際しては、適宜、潤滑剤を供給することが好ましい。
【0063】
次に、必要とされる個数のベアリングボール111を隙間S1から供給した後に、上面50aと下面81aの間から半割リング210を取り外す(冶具取り外し工程に対応)。それにより、回転軸部70が連結凹部51の奥側まで挿入される状態となると共に、ベアリングボール111が外接段部55と内接段部72の間で挟み込まれる状態となる。
【0064】
この後に、投入孔53を介して、ベアリングボール101を外接凹溝54と内接凹溝71の間の隙間に供給する(後ボール配置工程に対応)。この場合も、アンカー金具30に対して回転連結部材60を回転させながら行うようにすることで、複数のベアリングボール101を外接凹溝54と内接凹溝71の間のリング状の隙間内で移動させつつ供給することができる。なお、ベアリングボール101を外接凹溝54と内接凹溝71の間のリング状の隙間に供給するのに際しては、適宜、潤滑剤を供給することが好ましい。
【0065】
そして、上記のベアリングボール101の供給が完了した後に、投入孔53に対してネジ130を捻じ込むことで、投入孔53を封止する(封止工程に対応)。以上のようにして、吊り金具10の組み付けが完了する。
【0066】
<効果について>
以上のような構成の吊り金具10においては、回転金具20は、荷の取り付け面に固定されるアンカー金具30と、アンカー金具30に荷の取り付け面に垂直な回転軸で軸支される回転連結部材60と、アンカー金具30に対して回転連結部材60を回転自在に支持する第1軸受100と、アンカー金具30に対して回転連結部材60を回転自在に支持すると共に、第1軸受100に対して回転軸の軸方向に離間している第2軸受110と、を備える。そして、回転連結部材60には、アンカー金具30に向かって突出する回転軸部70が設けられていて、アンカー金具30には、荷に取り付けられる雄ネジ部40およびアンカー座部45(固定部)と、雄ネジ部40およびアンカー座部45(固定部)と一体化された金具連結部50とが設けられていて、金具連結部50には、回転軸部70を挿通する連結凹部51が設けられている。
【0067】
また、第1軸受100は、連結凹部51の内壁面51aから凹んでいる外接凹溝54と、回転軸部70の外周面から凹むと共に、外接凹溝54と対向する内接凹溝71と、内接凹溝71と外接凹溝54で形成される無端の通路に挿入される複数のベアリングボール101(第1ベアリングボール)と、を備えている。また、第2軸受110は、回転軸部70が挿入される連結凹部51の開口部分に設けられていると共に内径側から外径側に凹む外接段部55と、回転軸部70の付け根部分に設けられていると共に、外接段部55と対向する内接段部72と、外接段部55と内接段部72で形成される無端の通路に挿入される複数のベアリングボール111(第2ベアリングボール)と、を備えている。
【0068】
このように構成することで、連結凹部51の内部側には、外接凹溝54、内接凹溝71およびベアリングボール101(第1ベアリングボール)で構成される第1軸受100が配置されている。また、連結凹部51の開口部分には、外接段部55と内接段部72およびベアリングボール111(第2ベアリングボール)で構成される第2軸受110が配置されている。このため、2列の軸受が、アンカー金具30と回転連結部材60の間に配置される状態となる。しかも、連結凹部51の開口部分と、回転軸部70の付け根部分に、外接段部55と内接段部72の2つの段部が対向し、しかも外接段部55は、連結凹部51の開口部分に設けられるのみならず内径側から外径側に凹むことで、第2軸受110は、アンギュラベアリングに類する構成とすることができる。
【0069】
ここで、たとえば特許文献1の図1図8に示すような、スラストベアリングに類する構成を備える場合、ベアリングボールを挿入するための凹状の溝が必要となり、その凹状の溝を挟んで内径側と外径側には、ベアリングボールの移動を阻止するための堤部が必要となる。したがって、外径側と内径側の2つの堤部が必要となるので、その分だけ、径方向の寸法が大きくなってしまう。しかしながら、本実施の形態では、第2軸受110においては、外接段部55は、連結凹部51の開口部分に設けられるのみならず内径側から外径側に凹んでいるので、ので、ベアリングボールの移動を阻止するための堤部は、外径側のみに存在する。このため、第2軸受110の小径化を図ることが可能となる。
【0070】
また、リンク120が倒れた状態(図1に示すリンク120の長手がY方向に沿う状態)で、そのY方向(横方向)に荷重(横向き荷重)が掛かった場合に、上記のアンギュラベアリングに類する構成の第2軸受110で、横向き荷重を受け止めることができる。なお、このとき、ベアリングボール111には、径方向に対して交差する方向である、軸方向(Z方向)か、径方向に傾斜する方向に沿って、ベアリングボール111が押圧される。このため、特許文献1の図5に示す場合のように、ベアリングボール111の内径側で荷重を受け止める状態よりも外径側で荷重を受け止めることができる。このように、ベアリングボール111の内径側で荷重を受け止める状態よりも外径側で荷重を受け止めることができるので、その分だけ、第2軸受110の寸法を小径化することができる。それにより、吊り金具10の小型化を図ることができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、雄ネジ部40を備える固定部は、荷の取り付け面に密着する座面45aを有するアンカー座部45を有している。このように構成する場合には、アンカー座部45の座面45aが荷の取り付け面に接触することで、吊り金具10を荷に良好に取り付けることが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態では、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)の直径は、ベアリングボール101(第1ベアリングボール)の直径よりも小さく設けられている。このため、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)が収納される外接段部55および内接段部72が省スペースで済む。それにより、金具連結部50の肉厚を小さくすることができ、径方向の寸法を小さくすることができ、加えて金具連結部50の軸方向(Z方向)および回転軸部70の軸方向(Z方向)の寸法を小さくすることができる。そのため、吊り金具10の小型化を図ることが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態では、金具連結部50のうち連結凹部51の開口部分の周囲には、上面50a(スラスト面)から回転連結部材60に向かって突出する凸状部56が突出していて、外接段部55の底部から凸状部56の頂部56aまでの軸方向(Z方向)における突出高さは、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)の直径よりも大きく設けられている。
【0074】
このように構成することで、吊り金具10を使用するにつれて、アンカー金具30と回転連結部材60の間に摩耗によるガタが大きくなっても、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)が外部に飛び出してしまうのを、凸状部56によって防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態では、回転連結部材60には、上面50a(第1対向面)と対向する下面81a(第2対向面)から凹んでいる環状凹部81b(対向凹部)が設けられていて、環状凹部81b(対向凹部)には、凸状部56が入り込むことで、ラビリンス構造が形成されている。
【0076】
このように、凸状部56が環状凹部81b(対向凹部)に入り込んでラビリンス構造を形成していることで、外接段部55と内接段部72の対向部分に向かい、外部から塵埃が侵入しがたくなる。そのため、塵埃侵入によるベアリング性能の低下を長期に亘って防止することが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態における吊り金具10の製造方法は、回転軸部70を連結凹部51に所定深さだけ挿入する軸部挿入工程と、軸部挿入工程に前後して、アンカー金具30と回転連結部材60とが軸方向(Z方向)と直交する方向で対向している対向部位に半割リング210(治具)を配置して、当該対向部位に、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)が移動可能な隙間を形成する治具配置工程とを実行する。また、吊り金具10の製造方法は、治具配置工程で形成された隙間に複数のベアリングボール111(第2ベアリングボール)を挿入して、複数のベアリングボール111(第2ベアリングボール)を外接段部55に配置させる先ボール配置工程と、ボール配置工程の後に、半割リング210(治具)を、上記の対向部位から取り外して回転軸部70を連結凹部51の奥側まで挿入して、外接段部55と内接段部72の双方がベアリングボール111(第2ベアリングボール)と当接する状態とする冶具取り外し工程を実行する。また、吊り金具10の製造方法は、冶具取り外し工程の後に、金具連結部50の外周面から外接凹溝54に至る投入孔53から複数のベアリングボール101(第1ベアリングボール)を挿入して、複数のベアリングボール101(第1ベアリングボール)を外接凹溝54と内接凹溝71の双方に当接する状態とする後ボール配置工程と、後ボール配置工程の後に、投入孔53を封止する封止工程と、を実行する。
【0078】
このように、治具配置工程においては、アンカー金具30と回転連結部材60とが軸方向(Z方向)と直交する方向で対向している対向部位に半割リング210(治具)を配置して、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)が移動可能な隙間を形成することで、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)の挿入作業が容易となる。また、後ボール配置工程においては、投入孔53から複数のベアリングボール101(第1ベアリングボール)を挿入して外接凹溝54と内接凹溝71の対向部分に供給することで、ベアリングボール101(第1ベアリングボール)の挿入作業が容易となる。そのため、生産性を向上させることが可能となる。
【0079】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0080】
上述の実施の形態では、吊り金具10は、回転金具20と、リンク120を備えている。しかしながら、吊り金具は、回転金具20のみから構成されても良い。
【0081】
また、上述の実施の形態では、アンカー金具30の金具連結部50に連結凹部51が設けられていると共に、回転連結部材60に回転軸部70が設けられ、この回転軸部70が連結凹部51に挿入されている。しかしながら、アンカー金具30に回転軸部70に対応する部分を設けると共に、回転連結部材60に連結凹部に対応する部分を設けるようにしても良い。
【0082】
また、上述の実施の形態では、第1軸受100と第2軸受110の2つの軸受部が設けられている構成が開示されている。しかしながら、軸受部は2つには限られず、3つ以上設ける構成を採用しても良い。
【0083】
また、上述の実施の形態では、回転軸部70の軸方向の中心からベアリングボール101(第1ベアリングボール)の径方向の外側までの距離と、回転軸部70の軸方向の中心からベアリングボール111(第2ベアリングボール)の径方向の外側までの距離については、特段、記載されていない。ここで、ベアリングボール101(第1ベアリングボール)の径方向の外側までの距離が、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)の径方向の外側までの距離よりも小さくても良いが、ベアリングボール101(第1ベアリングボール)の径方向の外側までの距離が、ベアリングボール111(第2ベアリングボール)の径方向の外側までの距離以上である方が、好ましい。
【0084】
また、上述の実施の形態では、アンカー座部45は、回転軸心までの距離が外周部52よりも小さいか、または回転軸心までの距離が外周部52と同等に設けられている。しかしながら、アンカー座部45は、回転軸心までの距離が外周部52よりも大きく設けるようにしても良い。また、アンカー座部45の形態は、円形のリング状(円盤状)には限られず、たとえば三角形、四角形等の多角形形状としても良く、長円形状としても良く、その他、適宜の形状を採用可能である。
【0085】
また、アンカー座部45が、回転軸心までの距離が外周部52よりも大きく設けるように構成する場合、アンカー座部45のうち外周部52よりも飛び出しているフランジ状の部分に取付孔を形成し、その取付孔に別体の取付孔を形成するようにしても良い。この場合、取付孔に別体の取付ボルト(締結部材に相当)を差し込んで、荷のネジ孔等に捻じ込むことで、吊り金具10を荷に取り付けることが可能である。このように構成する場合には、荷の取り付け面に対し、アンカー座部45の座面45aが比較的広い面積で接触する構成とすることができる。そのため、金属製の吊り金具10に対し、荷の取り付け面の強度が弱い場合には、荷の取り付け面に対してダメージを与えるのを防止することができる。
【0086】
また、上述の実施の形態では、雄ネジ部40は、固定部の一部に対応し、荷の取り付け穴に形成された雌ネジに捻じ込まれるものとしている。しかしながら、固定部は、雄ネジ部40に代えて、雄ネジが形成されていない軸状部材としても良い。この場合には、荷の取り付け穴には雌ネジが形成されていなくても良い。この場合、たとえば、くさびやピンや止め輪によって、軸状部材が荷の取り付け穴から抜け止めするようにしても良い。
【0087】
なお、上記のように、アンカー座部45のフランジ状の部分に取付孔を設ける場合には、軸状部材にねじ山が形成された雄ネジ部40は、ねじ山を省略して、単なる軸状部材としても良い。この場合には、ねじ山が形成されていない軸状部材が、固定部の一部に相当する。
【符号の説明】
【0088】
10…吊り金具、20…回転金具、30…アンカー金具、40…雄ネジ部(固定部の一部に対応)、45…アンカー座部(固定部の一部に対応)、45a…座面、50…金具連結部、50a…上面(第1スラスト面に対応)、50b…上角部、51…連結凹部、51a…内壁面、52…外周部、53…投入孔、54…外接凹溝、55…外接段部、56…凸状部、56a…頂部、60…回転連結部材、70…回転軸部、70a…外周面、71…内接凹溝、72…内接段部、80…リンク連結部、81…下支持部、81a…下面(第2スラスト面に対応)、81b…環状凹部(対向凹部に対応)、82…上環部、83…傾斜肩部、84…リンク受け部、85…リンク孔、100…第1軸受、101…ベアリングボール(第1ベアリングボールに対応)、110…第2軸受、111…ベアリングボール(第2ベアリングボールに対応)、120…リンク、130…六角穴付きネジ、200…リングセット、210…半割リング、212…係止段部、213…挟持部、B1…境界部分、RA1…ラジアル対向部分、S1…隙間、TH1…スラスト対向部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8