(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
E05B 65/10 20060101AFI20240122BHJP
E05B 65/02 20060101ALI20240122BHJP
E05B 5/02 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E05B65/10 L
E05B65/02 A
E05B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020032563
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓也
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299532(JP,A)
【文献】特開2000-145233(JP,A)
【文献】特開平9-4294(JP,A)
【文献】特開2009-41249(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0114268(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備えたキャビネット本体に係止片を備え、キャビネット本体の開口を覆うことが可能な扉に係止片と係止可能な鎖錠片を備え、施錠時に係止片と鎖錠片が係止するキャビネットであって、
移動可能なハンドルを扉に備え、
ハンドルが第一の位置にある場合に正面視でハンドルにより隠れる位置であって、ハンドルが第二の位置にある場合に正面視で露出する位置に孔部を配置し、
操作することで、キャビネット本体に固定された係止片を移動可能な状態とする解除部を内側、かつ、扉の正面に形成した孔部から臨む位置に備え、
扉を閉じた状態で、孔部を介して解除部を操作し、係止片を解錠位置まで移動させ、係止片と鎖錠片が係止しない状態とすることができるキャビネット。
【請求項2】
孔部を介して解除部を操作することにより、係止片が移動可能な状態とした際に、自重により係止片が施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する移動規制部を備えた請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
移動規制部は、
係止片が移動可能になった際に、係止片が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを最初に規制する第一移動規制部と、
第一移動規制部が無効化された場合に、係止片が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する第二移動規制部と、
を備え
、
第一移動規制部に備えられたねじを緩める方に回すことにより、第一移動規制部の無効化が可能な請求項2に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鎖錠構造を施錠状態とすることにより、扉に備えられたハンドルの操作をしても扉を開かないようにすることができる。また、錠が故障した場合、錠自体が強制解除手段を持たなくても、キャビネットの扉を開放できるようにすることができる鎖錠構造が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された構造は、扉の表面に別部材からなる錠装置を固定する取付板を備えさせ、この取付板を摺動させることで、錠装置の鎖錠片を筐体本体に形成した嵌合部から離脱させることで扉を開放させることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、この取付板は扉表面から突出させているため、取付板や取付板を移動可能とするねじが扉表面から露出し視認しやすい位置にあり、セキュリティ上問題となる場合がある。また、移動操作を行う取付板が扉表面上に突出しているので、ハンドル操作時などに手や物が引っ掛かりやすいという問題がある。また錠装置は取付板上に形成されているので、取付板よりも、さらに突出してしまうという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、錠装置付きの取付板を扉表面に移動可能に取り付けなくても、扉を閉めたまま、錠装置を用いずに解錠できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、開口を備えたキャビネット本体に係止片を備え、キャビネット本体の開口を覆うことが可能な扉に係止片と係止可能な鎖錠片を備え、施錠時に係止片と鎖錠片が係止するキャビネットであって、操作することで、キャビネット本体に固定された係止片を移動可能な状態とする解除部を内側、かつ、扉の正面に形成した孔部から臨む位置に備え、扉を閉じた状態で、孔部を介して解除部を操作し、係止片を解錠位置まで移動させ、係止片と鎖錠片が係止しない状態とすることができるキャビネットとする。
【0007】
また、孔部を介して解除部を操作することにより、係止片が移動可能な状態とした際に、自重により係止片が施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する移動規制部を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、移動規制部は、係止片が移動可能になった際に、係止片が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを最初に規制する第一移動規制部と、第一移動規制部が無効化された場合に、係止片が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する第二移動規制部と、を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、移動可能なハンドルを扉に備え、ハンドルが第一の位置にある場合に正面視でハンドルにより隠れる位置であって、ハンドルが第二の位置にある場合に正面視で露出する位置に孔部を配置した構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、錠装置付きの取付板を扉表面に移動可能に取り付けなくても、扉を閉めたまま、錠装置を用いずに解錠できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示したキャビネットのハンドルを寝かした状態を示した図である。
【
図3】
図1に示したキャビネットのハンドルを起こした状態を示した図である。
【
図5】係止部と鎖錠片が係止している状態を表す斜視図である。
【
図6】
図5とは異なる方向から見た、係止部と鎖錠片が係止している状態を表す斜視図である。
【
図7】係止部と鎖錠片が係止していない状態を表す斜視図である。
【
図8】
図7とは異なる方向から見た、係止部と鎖錠片が係止していない状態を表す斜視図である。
【
図9】
図3に示すハンドル周りを正面から見た状態を表す図である。
【
図10】解除部を操作しても係止片が移動しないようにするためのねじを取り付ける場合を表す図である。
【
図11】
図4とは異なる係止片を表す図である。ただし、係止片と鎖錠部は係止状態にある。
【
図12】
図11に示す係止片が下方に移動して、係止片と鎖錠部の係止状態が解除された解錠状態にあることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図8に示されていることから理解されるように、本実施形態のキャビネット1は、開口を備えたキャビネット本体2に係止片5を備え、キャビネット本体2の開口を覆うことが可能な扉3に係止片5と係止可能な鎖錠片61を備え、施錠時に係止片5と鎖錠片61が係止するものである。このキャビネット1は、操作することで、キャビネット本体2に固定された係止片5を移動可能な状態とする解除部を内側、かつ、扉3の正面に形成した孔部31から臨む位置に備え、扉3を閉じた状態で、孔部31を介して解除部を操作し、係止片5を解錠位置まで移動させ、係止片5と鎖錠片61が係止しない状態とすることができる。このため、錠装置6付きの取付板を扉3の表面に移動可能に取り付けなくても、扉3を閉めたまま、錠装置6を用いずに解錠できる。なお、扉3の正面に形成した孔部31から臨む位置には、扉3を閉じた状態で、孔部31を介して解除部を操作できる範囲を含む。つまり、扉3の正面に形成した孔部31に対向する位置だけを意味するのでは無く、扉3の正面に形成した孔部31に対向する位置から少しずれていても、孔部31から臨む位置である。
【0013】
ここで、実施形態のキャビネット1の基本的な構造について説明する。キャビネット1は開口を備えたキャビネット本体2と、キャビネット本体2の開口を覆うことが可能な扉3を備えている。扉3は、ヒンジによりキャビネット本体2に連結されており、回動可能となっている。また、扉3にはハンドル33が備えられており、使用者はハンドル33を持って扉3を開閉することができる。また、
図2及び
図3に示すことから理解できるように、実施形態のハンドル33は、動かすことができるものであり、扉3を開閉操作しない場合は、
図2に示すように、ハンドル33を寝かすことができ、扉3を開閉操作したい場合は、
図3に示すように、ハンドル33を起こすことができる。
【0014】
また、扉3には錠装置6が備えられており、錠装置6に鍵を差し込んで回すことで、扉3の裏側に位置する鎖錠片61を移動させることができる。鎖錠片61がキャビネット本体2に備えられた係止片5と係止した状態となると、扉3が開けられない施錠状態とすることができる。なお、鎖錠片61と係止片5の係止を解除すれば、扉3を開くことができる解錠状態とすることができる。
【0015】
ところで、実施形態のキャビネット1は、扉3を閉じた状態であっても、係止片5を解錠位置まで移動させ、係止片5と鎖錠片61が係止しない状態とすることができるように構成されている。このような構成とすることにより、鎖錠状態にある場合に鎖錠装置6を利用できない状態になっても、解錠状態にできる。具体的には、
図4に示すように、係止片5は、固定プレート21を介してキャビネット1に取り付けられている。この係止片5は解除部となるねじ81を締め付けることで固定プレート21に固定されている。この解除部となるねじ81を扉3の正面に形成した孔部31を介して緩めると係止片5は移動できるようになる。実施形態においては、解除部となるねじ81を緩めると、係止片5は垂直方向に移動可能となり、
図5から
図8に示すことから理解されるように、係止片5を持ち上げることが可能となる。
【0016】
なお、
図4に示す係止片5では、係止片5を移動可能な状態にする解除部と、移動経路となる長孔52と、鎖錠片61と係止する係止部51を備えている。この係止片5は上下方向に延びる長孔52を備えており、解除部となるねじ81を緩めることで、垂直方向に移動可能であるが、係止片5が左右移動をする構造としたり、回動する構造にしたりしても良い。実施形態では、解除部を緩めるために使用した孔部31から人手により係止片5を持ち上げて移動させて解錠すると、扉3が開けられるように構成している。
【0017】
実施形態の解除部は、長孔52に挿入されるねじ81であり、固定プレート21を介して係止片5をキャビネット本体2に固定するために用いられる。この解除部は、扉3の正面に形成した孔部31に対向する位置に配置されており、キャビネット1の外側から孔部31を通して水平方向にキャビネット1の中を見ると解除部が視認できる。なお、実施形態においては、ハンドル33を起こし、通常、孔部31に取り付けられている塞ぎ部材34を外した状態として、
図9に示すような状態とすれば、キャビネット1の外側から孔部31を通して解除部を視認できる。
【0018】
このように、移動可能なハンドル33を扉3に備え、ハンドル33が第一の位置にある場合に正面視でハンドル33により隠れる位置であって、ハンドル33が第二の位置にある場合に正面視で露出する位置に孔部31を配置した構成とすると、孔部31をハンドル33で隠せるため、好ましい。実施形態では、ハンドル33を寝かした状態においては、正面視でハンドル33の裏側に位置し、ハンドル33を起こした状態においては、正面視で露出する位置に孔部31を配置した構成としているが、このようにすると、ハンドル33に特殊な移動をさせる構造とする必要が無いため、好ましい。
【0019】
この実施形態では、キャビネット1の外側から孔部31を介して解除部のねじ81を工具で緩めると係止片5が移動可能な状態となるが、汎用品の工具では緩められない形状の特殊ねじを解除部に用いると、セキュリティを高めることができる。
【0020】
実施形態においては、解除部に用いられるねじ81を緩めて係止片5を移動可能な状態にすると、係止片5は自重により下方に移動しようとする。しかし、長孔52にねじ81を差し込んだ構成であるため、ねじ81の軸が長孔52の端部に引っかかる状態となると、係止片5は、それ以上は下方に移動しなくなる。つまり、ねじ81が長孔52の端部に引っかかる状態となっても解錠できない位置関係にあると、ねじ81を緩めただけでは、解錠できないことになる。実施形態では、このようにして係止片5が移動可能になった際に、係止片5が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを規制している。このように、孔部31を介して解除部を操作することにより、係止片5が移動可能な状態とした際に、自重により係止片5が施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する移動規制部を備えた構成とすることが好ましい。
【0021】
ここでは、係止片5が移動可能になった際に、係止片5が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを最初に規制する第一移動規制部と呼ぶことにするが、実施形態では、解除部として用いられるねじ81と長孔52の構成により第一移動規制部が構成される。
【0022】
解除部となるねじ81を回し続けて、このねじ81を取り外せるような状態にした場合、第一移動規制部の機能は無効化されるが、このように、第一移動規制部が無効化された場合に、係止片5が自重により施錠位置から解錠位置まで移動することを規制する第二移動規制部を備えた構成とすれば、セキュリティを高めることができる。
【0023】
図4に示す例の第二移動規制部は解除部の下方において、長孔52に挿入されて固定プレート21に固定されるねじ83である。なお、このねじ83は、長孔52に嵌るスペーサ84に挿入されて固定プレート21に固定されているものであり、係止片5をキャビネット本体2に対して締め付ける用途として用いられるものではない。
【0024】
第二移動規制部は上記のねじ83の他にも形成してもよい。例えば、
図4に示す例では、係止片5の上端から固定プレート21側の方向に延設した片53を第二移動規制部として併用している。そうすると、第一移動規制部に用いられるねじ81が完全に外されて無効化されても、片53が固定プレート21に当接することで係止片5の自重により施錠位置から解錠位置に移動することを抑制することができる。
【0025】
また、
図4に示す例では、解錠部として利用されるねじ81と、スペーサ84に挿入されるねじ83の双方が、長孔52に差し込まれる構成であるため、係止片5の上下移動時に、係止片5が不要に回転してしまうことを抑制できる。
【0026】
ところで、解除部を緩めても係止片5が移動できないように、管理者が選択できるようにしても良い。
図10に示す例においては、長孔52の上方に設けた穴部55にねじ86を挿入し、締め付けることで係止片5が移動しないようにできる。この穴部55に挿入されたねじ86は扉3に設けた孔部31から操作できないものであり、孔部31から操作できるねじ81を緩めても係止片5が固定プレート21に固定された状態を維持することができる。なお、穴部55にねじ86を挿入して締め付ける場合には、扉3が開いた状態で締め付ければよい。
【0027】
また、本発明は上記実施形態に限るものでは無い。例えば、
図11及び
図12に示すことから理解されるように、解除部のねじ81を緩めると係止片5が自重により解錠位置まで移動する構造としても良い。この場合も係止片5の移動は長孔52の範囲に規制される。
【0028】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 キャビネット
2 キャビネット本体
3 扉
5 係止片
31 孔部
33 ハンドル
61 鎖錠片
81 解除部