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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20240122BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20240122BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F04B27/18 A
F04B39/10 Z
F16K31/06 305L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020568119
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001443
(87)【国際公開番号】W WO2020153244
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019007626
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】江島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-247512(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021789(WO,A2)
【文献】特開2008-014269(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135911(WO,A1)
【文献】特開2014-118939(JP,A)
【文献】国際公開第2013/176012(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 39/10
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動されるロッドと、
前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁座と主弁体とにより構成される主弁と、
前記バルブハウジングに形成され制御流体が供給される制御流体供給室と前記吸入ポートとの間を連通するCS連通路と、
前記CS連通路の外周に環状の弁座を有する連通路構成部材と該弁座に対して閉弁方向に付勢される開閉弁体とにより構成される開閉弁と、を備える容量制御弁であって、
前記開閉弁体は、前記弁座に接離するキャップと、前記キャップの外周端部と溶接されるベローズコアと、を備え、
前記キャップの外周端部には、溶接ビードを収容する凹部が設けられており、
前記キャップの外径は、前記ベローズコアの外径以下である容量制御弁。
【請求項2】
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動されるロッドと、
前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁座と主弁体とにより構成される主弁と、
前記バルブハウジングに形成され制御流体が供給される制御流体供給室と前記吸入ポートとの間を連通するCS連通路と、
前記CS連通路の外周に環状の弁座を有する連通路構成部材と該弁座に対して閉弁方向に付勢される開閉弁体とにより構成される開閉弁と、を備える容量制御弁であって、
前記開閉弁体は、前記弁座に接離するキャップと、前記キャップの外周端部と溶接されるベローズコアと、を備え、
前記キャップの外周端部には、溶接ビードを収容する凹部が設けられており、
前記ベローズコアは、前記キャップに対して谷折りの外径端部が溶接されている容量制御弁。
【請求項3】
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動されるロッドと、
前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁座と主弁体とにより構成される主弁と、
前記バルブハウジングに形成され制御流体が供給される制御流体供給室と前記吸入ポートとの間を連通するCS連通路と、
前記CS連通路の外周に環状の弁座を有する連通路構成部材と該弁座に対して閉弁方向に付勢される開閉弁体とにより構成される開閉弁と、を備える容量制御弁であって、
前記開閉弁体は、前記弁座に接離するキャップと、前記キャップの外周端部と溶接されるベローズコアと、を備え、
前記キャップの外周端部には、溶接ビードを収容する凹部が設けられており、
前記キャップと前記ベローズコアとは、外径端部同士の外周面を揃えて溶接されている容量制御弁。
【請求項4】
前記凹部は、前記弁座に着座する前記キャップのシール面と連続して該シール面の外周に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記凹部は、段状に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量を可変制御する容量制御弁に関し、例えば、自動車の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の吐出量を圧力に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
容量可変型圧縮機の連続駆動時において、容量制御弁は、制御コンピュータにより通電制御され、ソレノイドで発生する電磁力により弁体を軸方向に移動させ、主弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行っている。
【0004】
容量制御弁の通常制御時においては、容量可変型圧縮機における制御室の圧力が適宜制御されており、回転軸に対する斜板の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて吐出室に対する流体の吐出量を制御し、空調システムが所望の冷却能力となるように調整している。
【0005】
また、容量制御弁の制御ポートと吸入ポートとの間を連通させる液冷媒排出用のCS連通路を形成し、起動時に容量可変型圧縮機の制御室の冷媒を制御ポート、CS連通路、吸入ポートを通して容量可変型圧縮機の吸入室へ排出するようにして、起動時に制御室の圧力を迅速に低下させることで、容量可変型圧縮機の応答性を向上させるものも知られている(特許文献1参照)。詳しくは、容量制御弁は、ベローズコアにキャップが密封状に溶接されることにより構成される開閉弁体を備え、キャップが着座する環状の弁座を有する連通路構成部材に形成されたCS連通路内の吸入圧力Psをキャップの端面で受圧することによりベローズコアを収縮させ、開閉弁体のキャップを弁座から離間させることでCS連通路を開放できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-202572号公報(第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の容量制御弁においては、CS連通路内の吸入圧力Psの高まりをキャップの内径側に形成される凹部で受圧することにより、吸入圧力Psが高いときにベローズコアを収縮させてCS連通路を開放し、制御室の冷媒を吸入室に排出できるようになっているが、キャップに凹部を形成し該凹部の外側に環状の凸部が形成されているため、キャップの凹部における吸入圧力Psの受圧面が狭くなり、CS連通路の開放に高い吸入圧力Psが必要となっていた。また、連通路構成部材の開口を大きくしてキャップの外周端部まで吸入圧力Psの受圧面を広げようとすると、キャップとベローズコアとの溶接によって形成される溶接ビードの影響を受けてキャップを弁座に正確に着座させることができなくなる虞があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、キャップの受圧面を広く確保しつつ、溶接ビードの影響を受けない容量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は、
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動されるロッドと、
前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁座と主弁体とにより構成される主弁と、
前記バルブハウジングに形成され制御流体が供給される制御流体供給室と前記吸入ポートとの間を連通するCS連通路と、
前記CS連通路の外周に環状の弁座を有する連通路構成部材と該弁座に対して閉弁方向に付勢される開閉弁体とにより構成される開閉弁と、を備える容量制御弁であって、
前記開閉弁体は、前記弁座に接離するキャップと、前記キャップの外周端部と溶接されるベローズコアと、を備え、
前記キャップの外周端部には、溶接ビードを収容する凹部が設けられている。
これによれば、キャップの外周端部に設けられる凹部にベローズコアとの溶接箇所に形成される溶接ビードが収容され、弁座側への溶接ビードの盛り上がりが抑えられることにより、キャップを弁座に正確に着座させることができる。そのため、キャップの受圧面を広く確保しつつ、溶接ビードの影響を受けない容量制御弁を提供できる。
【0010】
前記凹部は、前記弁座に着座する前記キャップのシール面と連続して該シール面の外周に形成されていてもよい。
これによれば、キャップの受圧面を広く確保しつつ、キャップの板厚を薄く形成することができる。
【0011】
前記凹部は、段状に形成されていてもよい。
これによれば、溶接ビードが凹部に収容されやすくなり、溶接ビードの影響を確実に抑えることができる。
【0012】
前記キャップの外径は、前記ベローズコアの外径以下であってもよい。
これによれば、開閉弁体の外径をコンパクトに形成することができる。
【0013】
前記ベローズコアは、前記キャップに対して谷折りの外径端部が溶接されていてもよい。
これによれば、キャップの板厚を薄くしつつ、外周端部の強度を確保することができる。
【0014】
前記キャップと前記ベローズコアとは、外径端部同士の外周面を揃えて溶接されていてもよい。
これによれば、キャップおよびベローズコアの外周端部の強度を共に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例1の容量制御弁が組み込まれる斜板式容量可変型圧縮機を示す概略構成図である。
図2】実施例1の容量制御弁の通電状態において主弁が閉塞され、副弁が開放された様子を示す断面図である。
図3】実施例1の容量制御弁の通電状態において主弁が閉塞され、副弁が開放された様子を示す図2の拡大断面図である。
図4】実施例1の感圧体を示す分解図である。
図5】(a)は、実施例1のベローズコアにキャップが装着された溶接前の状態を示す断面図であり、(b)は、実施例1のベローズコアにキャップが溶接された状態を示す断面図である。
図6】(a)は、実施例2のベローズコアにキャップが装着された溶接前の状態を示す断面図であり、(b)は、実施例2のベローズコアにキャップが溶接された状態を示す断面図である。
図7】(a)は、実施例3のベローズコアにキャップが装着された溶接前の状態を示す断面図であり、(b)は、実施例3のベローズコアにキャップが溶接された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例に係る容量制御弁につき、図1から図5を参照して説明する。以下、図2の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。
【0018】
本発明の容量制御弁Vは、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機Mに組み込まれ、冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する)の圧力を可変制御することにより、容量可変型圧縮機Mの吐出量を制御し空調システムを所望の冷却能力となるように調整している。
【0019】
先ず、容量可変型圧縮機Mについて説明する。図1に示されるように、容量可変型圧縮機Mは、吐出室2と、吸入室3と、制御室4と、複数のシリンダ4aと、を備えるケーシング1を有している。尚、容量可変型圧縮機Mには、制御室4と吸入室3とを直接連通する図示しない連通路が設けられており、この連通路には吸入室3と制御室4との圧力を平衡調整させるための固定オリフィスが設けられている。
【0020】
また、容量可変型圧縮機Mは、ケーシング1の外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動される回転軸5と、制御室4内において回転軸5に対してヒンジ機構8により偏心状態で連結される斜板6と、斜板6に連結され各々のシリンダ4a内において往復動自在に嵌合された複数のピストン7と、を備え、電磁力により開閉駆動される容量制御弁Vを用いて、流体を吸入する吸入室3の吸入圧力Ps、ピストン7により加圧された流体を吐出する吐出室2の吐出圧力Pd、斜板6を収容した制御室4の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室4内の圧力を適宜制御することで斜板6の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストン7のストローク量を変化させて流体の吐出量を制御している。尚、説明の便宜上、図1においては、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vの図示を省略している。
【0021】
具体的には、制御室4内の制御圧力Pcが高圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は小さくなりピストン7のストローク量が減少するが、一定以上の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が略垂直状態、すなわち垂直よりわずかに傾斜した状態となる。このとき、ピストン7のストローク量は最小となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最小となることで、吐出室2への流体の吐出量が減少し、空調システムの冷却能力は最小となる。一方で、制御室4内の制御圧力Pcが低圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は大きくなりピストン7のストローク量が増加するが、一定以下の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が最大傾斜角度となる。このとき、ピストン7のストローク量は最大となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最大となることで、吐出室2への流体の吐出量が増加し、空調システムの冷却能力は最大となる。
【0022】
図2に示されるように、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vは、ソレノイド80を構成するコイル86に通電する電流を調整し、容量制御弁Vにおける主弁50、副弁53の開閉制御を行うとともに、CS連通路としての中間連通路55における吸入圧力Psにより開閉弁としての感圧弁54の開閉制御を行い、制御室4内に流入する、または制御室4から流出する流体を制御することで制御室4内の制御圧力Pcを可変制御している。尚、中間連通路55は、主弁体としての主副弁体51および連通路構成部材としての感圧弁部材52の内部に形成される中空孔が接続されることにより軸方向に亘って貫通しており、液冷媒排出用の流路を構成している。詳しくは、容量可変型圧縮機Mが停止状態で長時間放置されることにより制御室4で高圧となった流体が液化することがあるが、容量可変型圧縮機Mを起動するとともに容量制御弁Vを通電状態とすることにより、主弁50が閉塞されるとともに副弁53が開放され、さらに中間連通路55における高い吸入圧力Psにより、感圧体61が収縮して感圧弁54が開弁されることにより、制御室4の液冷媒が中間連通路55を介して吸入室3に短時間で排出できるようになっている。
【0023】
本実施例において、主弁50は、主副弁体51とバルブハウジング10に形成された主弁座10aとにより構成されており、主副弁体51の軸方向左端51aが主弁座10aに接離することで、主弁50が開閉するようになっている。副弁53は、主副弁体51と固定鉄心82の開口端面である軸方向左端面の内径側に形成される副弁座82aとにより構成されており、主副弁体51の軸方向右端51bが副弁座82aに接離することで、副弁53が開閉するようになっている。感圧弁54は、開閉弁体としての感圧体61を構成するキャップ70と感圧弁部材52の軸方向左端に形成される環状の弁座としての感圧弁座52aとにより構成されており、キャップ70の軸方向右端の外径側に形成されるシール面70aが感圧弁座52aに接離することで、感圧弁54が開閉するようになっている。
【0024】
次いで、容量制御弁Vの構造について説明する。図2に示されるように、容量制御弁Vは、金属材料または樹脂材料により形成されたバルブハウジング10と、バルブハウジング10内に軸方向に往復動自在に配置された主副弁体51、感圧弁部材52と、中間連通路55における吸入圧力Psに応じて主副弁体51、感圧弁部材52に軸方向右方への付勢力を付与する感圧体61と、バルブハウジング10に接続され主副弁体51、感圧弁部材52に駆動力を及ぼすソレノイド80と、から主に構成されている。
【0025】
図2に示されるように、ソレノイド80は、軸方向左方に開放する開口部81aを有するケーシング81と、ケーシング81の開口部81aに対して軸方向左方から挿入されケーシング81の内径側に固定される略円筒形状の固定鉄心82と、固定鉄心82に挿通され軸方向に往復動自在、かつその軸方向左端部が主副弁体51に挿嵌・固定されるロッドとしての駆動ロッド83と、駆動ロッド83の軸方向右端部が挿嵌・固定される可動鉄心84と、固定鉄心82と可動鉄心84との間に設けられ可動鉄心84を主弁50の開弁方向である軸方向右方に付勢するコイルスプリング85と、固定鉄心82の外側にボビンを介して巻き付けられた励磁用のコイル86と、から主に構成されている。
【0026】
ケーシング81には、軸方向左端の内径側が軸方向右方に凹む凹部81bが形成されており、この凹部81bに対してバルブハウジング10の軸方向右端部が略密封状に挿嵌・固定されている。
【0027】
固定鉄心82は、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から形成され、軸方向に延び駆動ロッド83が挿通される挿通孔82cが形成される円筒部82bと、円筒部82bの軸方向左端部の外周面から外径方向に延びる環状のフランジ部82dとを備え、固定鉄心82の開口端面の内径側、すなわち円筒部82bの軸方向左端面には副弁座82aが形成されている。
【0028】
また、固定鉄心82は、フランジ部82dの軸方向右端面をケーシング81の凹部81bの底面に当接させた状態で、ケーシング81の凹部81bに対して挿嵌・固定されるバルブハウジング10の軸方向右端の内径側において軸方向左方に凹む凹部10bに対して略密封状に挿嵌・固定されている。
【0029】
駆動ロッド83は、円柱状に形成され、主副弁体51に挿嵌・固定される軸方向左端部および可動鉄心84に挿嵌・固定される軸方向右端部が板状を成している。
【0030】
図2に示されるように、バルブハウジング10には、容量可変型圧縮機Mの吐出室2と連通する吐出ポートとしてのPdポート12と、容量可変型圧縮機Mの吸入室3と連通する吸入ポートとしてのPsポート13と、容量可変型圧縮機Mの制御室4と連通する制御ポートとしてのPcポート14が形成されている。
【0031】
また、バルブハウジング10は、その軸方向左端部に感圧体61を構成する後述する仕切調整部材71が略密封状に圧入されることにより有底略円筒形状を成している。尚、仕切調整部材71は、バルブハウジング10の軸方向における設置位置を調整することで、感圧体61の付勢力を調整できるようになっている。
【0032】
バルブハウジング10の内部には、Pdポート12と連通され主副弁体51の軸方向左端部が配置される第1弁室20と、Psポート13と連通され主副弁体51の軸方向右端部が配置される第2弁室30と、Pcポート14と連通され感圧体61が配置される制御流体供給室としての感圧室60と、が形成されている。
【0033】
また、バルブハウジング10の内部には、主副弁体51およびこの主副弁体51に接続された感圧弁部材52が軸方向に往復動自在に配置され、バルブハウジング10の内周面には、軸方向略中央に主副弁体51の外周面が略密封状態で摺動可能な小径のガイド孔10cが形成されている。
【0034】
バルブハウジング10の内部において、第1弁室20と第2弁室30は、主副弁体51の外周面とガイド孔10cの内周面により仕切られている。尚、ガイド孔10cの内周面と主副弁体51の外周面との間は、径方向に僅かに離間することにより微小な隙間が形成されており、主副弁体51は、バルブハウジング10に対して軸方向に円滑に相対移動可能となっている。
【0035】
図2に示されるように、主副弁体51は、円筒形状に構成され、主副弁体51の軸方向右端部には、ソレノイド80を構成する駆動ロッド83の軸方向左端部が挿嵌・固定されるとともに、主副弁体51の軸方向左端部には、略円筒形状かつ側面視略砲台形状に構成される別体の感圧弁部材52が略密封状に挿嵌・固定されており、共に軸方向に移動可能となっている。
【0036】
また、主副弁体51の軸方向右端部には、駆動ロッド83の板状の軸方向左端部が挿嵌・固定されることにより、駆動ロッド83の軸方向左端部の板面と主副弁体51の内周面との間が連通されており、副弁53の開弁時において第2弁室30から中間連通路55に流体が回り込めるようになっている。
【0037】
図3に示されるように、感圧弁部材52の軸方向左端部には、感圧弁座52aの外径側から軸方向右方かつ外径側に向けて漸次拡径するテーパ部52bが形成されており、感圧弁部材52の軸方向左端部が後述する溶接ビードWBに干渉しないようになっているため、感圧弁54の開弁時において感圧室60と中間連通路55との間を連通する流路を確実に形成できるようになっている。
【0038】
図2図4に示されるように、感圧体61は、金属材料により形成され、コイルスプリング63が内蔵されるベローズコア62と、ベローズコア62の軸方向右端における谷折りの外周端部62aに周方向に亘って略密閉状に溶接されるキャップ70と、ベローズコア62の軸方向左端における谷折りの外周端部62bに周方向に亘って密閉状に溶接される仕切調整部材71と、から構成されている。尚、図2および図3においては、説明の便宜上、ベローズコア62の軸方向右側の外周端部62aとキャップ70の外周端部70dとの溶接箇所に形成される溶接ビードWBのみを図示し、ベローズコア62の軸方向左側の外周端部62bと仕切調整部材71との溶接箇所に形成される溶接ビードの図示を省略している。
【0039】
図3および図4に示されるように、キャップ70は、円板状を成し、軸方向右端面の外径側に形成され、感圧弁部材52の感圧弁座52aに着座するシール面70aと、該シール面70aよりも内径側にシール面70aと面一に連続して形成され、中間連通路55における吸入圧力Psを受圧するPs受圧面70bとを有する平板部70cと、平板部70cの軸方向左端面の内径側から軸方向左方に突出する凸部70fと、から構成されている。キャップ70の凸部70fには、ベローズコア62に内蔵されるコイルスプリング63の軸方向右端部が外嵌されている。尚、コイルスプリング63の軸方向左端部は、仕切調整部材71の軸方向右端の内径側から軸方向右方に突出する凸部71fに外嵌されており、感圧体61、すなわちベローズコア62の収縮時において、キャップ70の凸部70fと仕切調整部材71の凸部71fとが当接することにより、感圧体61の収縮量が制限されている。
【0040】
また、感圧体61は、感圧室60内に配置されており、コイルスプリング63とベローズコア62の付勢力により、キャップ70のシール面70aは、感圧弁54の閉弁方向に付勢され感圧弁部材52の感圧弁座52aに当接されることにより、感圧弁54が閉弁された状態になっている。すなわち、駆動ロッド83、主副弁体51、感圧弁部材52を介してソレノイド80の軸方向左方への駆動力を感圧体61に作用させるとともに、感圧体61から軸方向右方への反力を受けられるようになっている。
【0041】
図4に示されるように、溶接前のキャップ70は、外周端部70dの軸方向左端が周方向に亘って面取り加工されることにより、バリ等の突起が除去されている。これによれば、図5(a)に示されるように、ベローズコア62にキャップ70が装着された状態において、ベローズコア62の軸方向右端における谷折りの外周端部62aを平板部70cの軸方向左端面に沿って密着させることができる。また、キャップ70の外径は、ベローズコア62の外径よりも小さく形成され、溶接前のキャップ70の外周端部70dとベローズコア62の軸方向右端の外周端部62aとの外周面は、周方向に亘って略面一に揃えられている。
【0042】
また、キャップ70の平板部70cの外周端部70dには、平板部70cの軸方向右端面の外径側に形成されるシール面70aと連続し、シール面70aよりも軸方向左方に段状に凹む凹部70eが周方向に亘って設けられている。すなわち、キャップ70の外周端部70dにおける軸方向右端面は、シール面70aから軸方向左方に離間した位置に形成される。
【0043】
尚、キャップ70の平板部70cにおける板厚は、ベローズコア62の外周端部62aの板厚よりも大きいことが好ましく、外周端部70dに凹部70eが形成されることからベローズコア62の外周端部62aの板厚の2倍以上であることが特に好ましい。
【0044】
図5(b)に示されるように、キャップ70の外周端部70dとベローズコア62の外周端部62aとを溶接することにより溶接箇所に形成される断面略円形状の溶接ビードWBは、その一部がキャップ70の外周端部70dに設けられる凹部70e内に収容される。
【0045】
これによれば、キャップ70の外周端部70dに設けられる凹部70eによってベローズコア62の外周端部62aとの溶接箇所に形成される溶接ビードWBの一部を収容することができ、感圧弁部材52に形成される感圧弁座52a側、すなわち軸方向右側への溶接ビードWBの盛り上がりを抑えてキャップ70のシール面70aを感圧弁座52aに正確に着座させることができるため、キャップ70のPs受圧面70bを広く確保しつつ、溶接ビードWBの影響を受けない容量制御弁Vを提供できる。
【0046】
尚、凹部70eの軸方向左方への凹み量は、溶接ビードWBがシール面70aよりも感圧弁座52a側、すなわち軸方向右側に飛び出さないように設定されており、凹部70eの軸方向左方への凹み量は、キャップ70の平板部70cの板厚の1/5以上の範囲が好ましい。また、キャップ70の外径側の板厚は、ベローズコア62の外周端部62aの板厚よりも大きいことが好ましい。本実施例では、キャップ70の外径側の板厚は0.3mm程度であり、凹部70eの軸方向左方への凹み寸法は0.1mm程度である。
【0047】
また、凹部70eは、平板部70cの軸方右端面において、シール面70aと連続して形成されているため、キャップ70のPs受圧面70bを広く確保しつつ、キャップ70の平板部70cの板厚を薄く形成することができる。
【0048】
また、凹部70eは、段状に形成されているため、溶接ビードWBが凹部70eに収容されやすくなり、感圧弁座52a側、すなわち軸方向右側への溶接ビードWBの不均一な盛り上がりによる影響も確実に抑えることができる。
【0049】
また、ベローズコア62は、キャップ70の外周端部70dに対して谷折りの外周端部62aを平板部70cの軸方向左端面に沿って密着させた状態で溶接されるため、キャップ70の平板部70cの板厚を薄くしつつ、キャップ70の外周端部の強度を確保することができる。
【0050】
また、キャップ70の外周端部70dとベローズコア62の外周端部62aとの外周面は、周方向に亘って略面一に揃えられた状態で溶接されるため、キャップ70の外周端部70dおよびベローズコア62の外周端部62aの強度を共に高めることができる。また、外径側から溶接を行うことができるため、作業性が良い。
【0051】
また、キャップ70の平板部70cにおける板厚は、ベローズコア62の外周端部62aの板厚よりも大きく構成されているため、溶接の熱によるキャップ70の外周端部70dにおける熱膨張または熱収縮による変形がシール面70a側まで影響し難くなっている。
【0052】
また、キャップ70の外径は、ベローズコア62の外径以下であるため、感圧体61における溶接ビードWBの外径側への飛び出しを抑えることができ、容量制御弁Vをコンパクトに構成することができる。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2に係る容量制御弁につき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
実施例2における容量制御弁Vについて説明する。図6(a)に示されるように、本実施例において、溶接前のキャップ170の平板部170cの外周端部170dには、平板部170cの軸方向右端面の外径側に形成されるシール面170aと連続し、シール面170aから軸方向左方に向けて漸次拡径する凹部としてのテーパ部170eが設けられている。
【0055】
これによれば、図6(b)に示されるように、キャップ170の外周端部170dに設けられるテーパ部170eによってベローズコア62の外周端部62aとの溶接箇所に形成される溶接ビードWBを収容することができるため、キャップ170のPs受圧面170bを広く確保しつつ、シール面170aが溶接ビードWBの影響を受けない容量制御弁Vを提供できる。また、テーパ部170eは、外周端部170dの軸方向左端と同様に面取り加工により形成できるため、製造が容易である。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3に係る容量制御弁につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0057】
実施例3における容量制御弁Vについて説明する。図7(a)に示されるように、本実施例において、溶接前のキャップ270の平板部270cの外周端部270dには、外周面の軸方向略中央から内径方向に凹む略半円形状の凹部としての溝270eが設けられている。
【0058】
これによれば、図7(b)に示されるように、キャップ270の外周端部270dの外周面から内径方向に凹む溝270eによってベローズコア62の外周端部62aとの溶接箇所に形成される溶接ビードWBを収容することができるため、キャップ270のPs受圧面270bを広く確保しつつ、シール面270aが溶接ビードWBの影響を受けない容量制御弁Vを提供できる。尚、溝270eは、略半円形状のものに限らず、例えば矩形状であってもよい。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0060】
例えば、前記実施例では、副弁53は設けなくともよく、主副弁体51の軸方向右端は、軸方向の荷重を受ける支持部材として機能すればよく、必ずしも密閉機能は必要ではない。
【0061】
また、主副弁体51と感圧弁部材52とを別体で構成する例について説明したが、両者は一体に形成されていてもよい。
【0062】
また、容量可変型圧縮機Mの制御室4と吸入室3とを直接連通する連通路および固定オリフィスは設けなくてもよい。
【0063】
また、感圧体は、内部にコイルスプリングを使用せず、ベローズコアが付勢力を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ケーシング
2 吐出室
3 吸入室
4 制御室
10 バルブハウジング
10a 主弁座
12 Pdポート(吐出ポート)
13 Psポート(吸入ポート)
14 Pcポート(制御ポート)
20 第1弁室
30 第2弁室
50 主弁
51 主副弁体(主弁体)
51a 軸方向左端
51b 軸方向右端
52 感圧弁部材(連通路構成部材)
52a 感圧弁座(弁座)
52b テーパ部
53 副弁
54 感圧弁(開閉弁)
55 中間連通路(CS連通路)
60 感圧室(制御流体供給室)
61 感圧体(開閉弁体)
62 ベローズコア
62a 軸方向右端部
62b 軸方向左端部
63 コイルスプリング
70 キャップ
70a シール面
70b Ps受圧面
70c 平板部
70d 外周端部
70e 凹部
71 仕切調整部材
80 ソレノイド
82 固定鉄心
82a 副弁座
83 駆動ロッド(ロッド)
170 キャップ
170e テーパ部(凹部)
270 キャップ
270e 溝(凹部)
V 容量制御弁
WB 溶接ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7