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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】連結トラック
(51)【国際特許分類】
   B62D 13/04 20060101AFI20240122BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B62D13/04
B62D53/00 B
B62D53/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021045027
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144144
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [試験日] 令和 2年10月30日~令和 3年 2月12日 令和 3年 2月26日~令和 3年 3月 8日 [試験場所] 株式会社いすゞ北海道試験場 [移送日] 令和 2年10月30日、令和 3年 2月12日 令和 3年 2月26日、令和 3年 3月 8日 [移送経路] フルハーフ北海道株式会社(北海道苫小牧市晴海町43-3)と、株式会社いすゞ北海道試験場(北海道勇払郡むかわ町米原489番地)との間の公道 [試験日] 令和 3年 2月18日、令和 3年 2月19日 [試験場所] フルハーフ北海道株式会社近隣の公道(道道243号及び日高道(沼ノ端東IC-厚真IC)等) [移送日] 令和 3年 3月10日~令和 3年 3月15日 [移送経路] フルハーフ北海道株式会社(北海道苫小牧市晴海町43-3)~(公道)~苫小牧港(北海道苫小牧市入船町1丁目2-34)~(デイブレイクスベルによる海上輸送)~川崎港(神奈川県川崎市川崎区5)~(公道)~日本フルハーフ株式会社(神奈川県厚木市上依知上ノ原3034 厚木工場)
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】作道 弘也
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-001937(JP,A)
【文献】特開昭47-025821(JP,A)
【文献】実開平03-037081(JP,U)
【文献】特表2017-528357(JP,A)
【文献】特開昭59-106305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 13/04
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルトラクタに、セミトレーラにドリーを装着することにより構成されたフルトレーラを連結した連結トラックであって、
該セミトレーラは、複数の車軸を有し、該車軸の最後軸に慣性ステアリング機構を配設すると共に、該連結トラックが前進走行において所定の速度以上となった場合に、該慣性ステアリング機構の操舵を直進方向で固定するロック機構を備え
該複数の車軸は2軸であり、最後軸のみに慣性ステアリング機構を配設し、
該連結トラックが該フルトラクタの操舵により旋回する場合、該フルトレーラは、該ドリーの車軸及び該セミトレーラの最後軸の二つの車軸が操舵軸として機能して旋回し、
該慣性ステアリング機構に装着されるタイヤはシングルタイヤである連結トラック。
【請求項2】
該慣性ステアリング機構は、後退時、及び後退後に前進となった直後から低速走行が維持されている場合に、該慣性ステアリング機構の操舵が直進方向で固定される請求項1に記載の連結トラック。
【請求項3】
該ドリーの車軸に装着されるタイヤは、シングルタイヤである請求項1又は2に記載された連結トラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルトラクタとセミトレーラとを、脱着式のドリーを介して連結する連結トラックに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックは、国内の貨物輸送において中心的な役割を果たしており、輸送する荷物に応じて、様々なタイプのトラックが提案されている。また、近年のトラック輸送においては、ドライバー不足が深刻さを増しており、トラックによる貨物輸送の省人化によってより効率を向上させることが求められている。
【0003】
上記したトラックによる貨物輸送の省人化を図るべく、例えば、荷物収納用の荷箱を積載したフルトラクタを前側車両とし、該フルトラクタに荷物を収納する荷箱を備えたトレーラを被牽引車両として連結した連結トラックが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-144516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した連結トラックを構成する被牽引車両としては、後ろ側の車軸のみを有し単独では自立できないセミトレーラと、前輪と後輪とを備えて自立可能なフルトレーラとを選択し得る。いずれにしても、現行法で許容される全長25mまで設定することが可能であり、全長が長大となることから、旋回(右折及び左折)する際の道路占有幅が大きくなって、走行可能な経路が限定されるという問題がある。したがって、該連結トラックの構成を検討する際には、該道路占有幅が小さくなるように配慮する必要がある。
【0006】
また、日本では、運転時に小回りが利くセミトレーラが多く普及しており、上記した連結トラックを構成する際には、フルトラクタに、汎用性の高いセミトレーラを牽引させることが好ましい。該セミトレーラは、一般的には、荷箱を備えずそれだけでは貨物車両とならないセミトラクタによって牽引されるトレーラであり、セミトラクタとセミトレーラとの連結は、セミトラクタ側に配設されたカプラと称される受け口と、セミトレーラ側に配設されたキングピンとで連結することが多い。したがって、カプラを有しないフルトラクタによってセミトレーラを牽引する場合には、カプラを備えた脱着式のドリー(dolly)と呼ばれる台車を介して連結することになる。
【0007】
フルトラクタとセミトレーラとを、該ドリーを介して連結して連結トラックを構成する場合、フルトラクタとドリーを連結する前側の第1の連結点と、ドリーとセミトラクタとを連結する後ろ側の第2の連結点とで、計2ヶ所の連結点により連結され、さらに上記したように、全長も長大になることから、連結トラックを構成する際には、高速走行時の直進安定性を損なわないように配慮する必要もある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、旋回する際の道路の占有幅を低減すると共に、直進安定性の悪化を回避することができる連結トラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、フルトラクタに、セミトレーラにドリーを装着することにより構成されたフルトレーラを連結した連結トラックであって、該セミトレーラは、複数の車軸を有し、該車軸の最後軸に慣性ステアリング機構を配設すると共に、該連結トラックが前進走行において所定の速度以上となった場合に、該慣性ステアリング機構の操舵を直進方向で固定するロック機構を備え、該複数の車軸は2軸であり、最後軸のみに慣性ステアリング機構を配設し、該連結トラックが該フルトラクタの操舵により旋回する場合、該フルトレーラは、該ドリーの車軸及び該セミトレーラの最後軸の二つの車軸が操舵軸として機能して旋回し、該慣性ステアリング機構に装着されるタイヤはシングルタイヤである連結トラックが提供される。
【0010】
慣性ステアリング機構は、後退時、及び後退後に前進となった直後から低速走行が維持されている場合に、該慣性ステアリング機構の操舵が直進方向で固定されることが好ましい。さらに、該ドリーの車軸に装着されるタイヤは、シングルタイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連結トラックは、フルトラクタに、セミトレーラにドリーを装着することにより構成されたフルトレーラを連結した連結トラックであって、該セミトレーラは、複数の車軸を有し、該車軸の最後軸に慣性ステアリング機構を配設すると共に、該連結トラックが前進走行において所定の速度以上となった場合に、該慣性ステアリング機構の操舵を直進方向で固定するロック機構を備え、該複数の車軸は2軸であり、最後軸のみに慣性ステアリング機構を配設し、該連結トラックが該フルトラクタの操舵により旋回する場合、該フルトレーラは、該ドリーの車軸及び該セミトレーラの最後軸の二つの車軸が操舵軸として機能して旋回し、該慣性ステアリング機構に装着されるタイヤはシングルタイヤである構成を備えていることから、旋回する際の道路の占有幅を低減すると共に、直進安定性の悪化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の連結トラックの側面図である。
図2図1に記載の連結トラックを上面から見た概略図である。
図3図2に示す連結トラックのセミトレーラの後軸を示す概略図である。
図4図3に示す後軸を構成する後々軸に配設されたロック機構を拡大して示す斜視図である。
図5】(a)図4に示すロック機構がロック解除状態にある場合の一部断面図、(b)該ロック機構がロック状態にある場合の一部断面図である。
図6】連結トラックが旋回した場合におけるセミトレーラの後軸の慣性ステアリング機構の作動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成される連結トラックに係る実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1図2には、本実施形態の連結トラック1が示されている。連結トラック1は、牽引車両であるフルトラクタ10と、被牽引車両であるセミトレーラ20と、フルトラクタ10とセミトレーラ20とを連結しセミトレーラ20と脱着可能なドリー30とを備えている。
【0015】
フルトラクタ10は、運転席11と前輪12とを備えたキャブ14と、キャブ14の後方に配設されフレーム13上に配設された箱型荷箱16とを少なくとも備えている。キャブ14の床下には、図示を省略する内燃機関が配設され、該内燃機関の駆動力は、図示を省略するトランスミッション、ドライブシャフト等を介して、フルトラクタ10の駆動輪182、182を備えた後軸18に伝達される。
【0016】
セミトレーラ20は、箱型荷箱22と、箱型荷箱22の下面に配設されたフレーム21に支持された後軸24とを備える。後軸24は、後前軸242と、後々軸244とを備え、後前軸242には車輪242aが、後々軸244には車輪244aが装着される。セミトレーラ20は、元々前軸を備えておらず、牽引車両に連結されていない状態では、セミトレーラ20の前側にて、図示を省略する補助足を展開しなければ自立することができない。
【0017】
ドリー30は、ドリーフレーム32と、ドリーフレーム32の前端部に配設される前側連結部34と、ドリーフレーム32の後方に配設される後側連結部を構成するカプラ36と、カプラ36の直下でドリーフレーム32に支持された車輪38a、38aを備えた車軸38と、を備えている。前側連結部34は、フルトラクタ10の後端部の図示を省略する連結器に連結され、カプラ36には、セミトレーラ20の前方下部に配設された図示を省略するキングピンが連結される。セミトレーラ20にドリー30を装着することにより、セミトレーラ20が自立可能となって、形式上、いわゆるフルトレーラとなる。連結トラック1が走行中に旋回する際には、前側連結部34、及びカプラ36が、平面視で連結トラック1を見たときの折れ曲がり部を形成する。
【0018】
本実施形態のフルトラクタ10の後軸18は2軸で構成され、図2からも理解されるように、後軸18によって回転駆動される車輪182、182は、小径の所謂ダブルタイヤである。また、セミトレーラ20に配設される後軸24の後々軸244に配設された車輪244a、244aは、シングルタイヤであり、前記したフルトラクタ10の後軸18に配設された車輪182よりも大径であって、該車輪182を構成する1本の車輪182の幅よりも大きい寸法で構成される。そして、セミトレーラ20の車輪244a、244aの径及び幅は、ダブルタイヤであるフルトラクタ10の後軸18と同等の耐荷重性能を発揮する寸法に設定されており、スーパーシングルタイヤ、又はワイドシングルタイヤと称される。なお、図2では、説明の都合上、フルトラクタ10の箱型荷箱16、及びセミトレーラ20の箱型荷箱22を1点鎖線で示し、箱型荷箱16の下面に配設されたフレーム13、フレーム21、後軸18、箱型荷箱22の下面に配設されたフレーム21、後軸24等を実線で示している。
【0019】
上記の連結トラック1のセミトレーラ20の後軸24について、図3を参照しながら、さらに詳細に説明する。なお、図3は、連結トラック1の進行方向を矢印Fで、後退方向を矢印Bで示し、フレーム21等は適宜省略している。
【0020】
図3に示すように、セミトレーラ20の後軸24において前方の軸を構成する後前軸242は、車軸25によって連結された車輪242a、242aを備える。車輪242a、242は直進方向に固定されており、ステアリング機構を備えていない。これに対し、後軸24において後方の軸を構成する後々軸244は、アクスルビーム26と、アクスルビーム26の両端に配設されたステアリングナックル27、27と、ステアリングナックル27、27を連結する連結棒28と、ステアリングナックル27、27に支持された車輪244a、244aとを備えている。これにより、車輪244a、244aは操舵可能な慣性ステアリング機構を構成している。さらに、該後々軸244には、車輪244a、244aを直進方向で固定するロック機構40が配設されている。この後々軸244によって実現される慣性ステアリング機構は、特定の駆動源によって車輪244a、244aを操舵するのではなく、連結トラック1の旋回方向が変化するのに伴って作用する慣性により、車輪244a、244aを、図中破線で示すように、左右に操舵する機構である。
【0021】
図3に加え、図4図5を参照しながら、後々軸224に配設されるロック機構40についてより具体的に説明する。図4は、後々軸244においてロック機構40が配設された部分を斜め後方から見た斜視図であり、説明の都合上、分解した状態を示している。
【0022】
図4に示すように、ロック機構40は、左右方向に延びるアクスルビーム26に一端側が溶接等の手段により固定された基台41と、基台41に図示を省略する固定手段により固定されるピン駆動手段42と、連結棒28に配設され左右方向に延びる板状のスライドプレート29とを備えている。基台41は、アクスルビーム26から図中手前側の矢印Bで示す後退方向に延びる上部41aと、上部41aの他端側で下方に折り曲げられた折り曲げ部41bと、折り曲げ部41bから矢印Fで示す前進方向に延びる下部41cとを備え、上部41aと下部41cとの間に空間部41dが形成されている。基台41の上部41a、下部41cには、上下方向に貫通する矩形状の貫通孔41e、41fが配設されている。該貫通孔41e、41fは、平面視で見て一致する形状である。
【0023】
ピン駆動手段42は、導入口43aから圧縮空気が導入されるエアチャンバー43と、該エアチャンバー43の下端から下方に延び、エアチャンバー43に駆動されて上下方向に進退する軸部44と、軸部44の下端部に配設された角柱形状のピン45とを備えている。上記した連結棒28のスライドプレート29には、平面視で見て、上記した貫通孔41e、41fの形状、及び寸法に対応し、後退方向に開いた形状の切欠き29aが形成されている。上記したピン45は、貫通孔41e、41f、及び切欠き29aを通過可能な大きさで形成されている。
【0024】
図4に示すように、連結棒28のスライドプレート29は、上記した空間部41dに挿入されるものであり、後々軸244の車輪244a、244aが左右方向に操舵されるに伴い、連結棒28と共に左右方向(図3図4中で矢印R1で示す方向)にスライドする。また、ピン駆動手段42に配設されたピン45は、基台41の上部41a側から貫通孔41e、41fに挿入して貫通させられ、エアチャンバー43は、図示を省略する固定手段により上部41aに対して固定される。スライドプレート29の切欠き29aは、後々軸244の車輪244a、244aが直進方向と一致したときに、上記した貫通孔41e、41fと上下方向で一致する位置に位置付けられる。
【0025】
図3に示すように、エアチャンバー43には、エアチャンバー43に圧縮空気を送り込む圧縮空気供給手段46がエアー配管47を介して接続され、圧縮空気供給手段46には、車両制御装置50からの指示信号を伝達する電気配線52が接続されている。車両制御装置50からの指示信号により圧縮空気供給手段46の作動が制御され、エアー配管47を介して圧縮空気の導入、又は排出が実施されて、ピン駆動手段42の軸部44と共にピン45を上下方向に進退させることができる。
【0026】
車両制御装置50は、コンピュータによって構成され、上記した圧縮空気供給手段46の他に、図示を省略するブレーキ及びエアーサスペンション等に供給される圧縮空気の制御も実施することもできる。車両制御装置50には、電気配線53a、53bを介して、例えば、運転席に配設されたシフトレバー54の位置を示すシフトレバー位置信号や、連結トラック1の車速を検出する速度センサ56からの速度信号等が入力される。
【0027】
上記したロック機構40のエアチャンバー43に対して圧縮空気が導入されているときは、図5(a)に示すように、ピン45がスライドプレート29よりも下方側に位置付けられて、ロック解除状態とされていることから、連結棒28は水平方向(図3図4中R1で示す方向)で自由に移動することができる。これにより、後々軸244の車輪244a、244aは、慣性ステアリング機構として機能する。これに対し、車両制御装置50によって該後々軸244を慣性ステアリング機構として機能させないロック状態にすべき運転状態であると判断された場合は、車両制御装置50から伝達される指示信号に基づいて圧縮空気供給手段46を作動して、エアチャンバー43から圧縮空気を排出して、図示を省略する弾性部材の作用によりピン45が上昇させられる。
【0028】
ここで、ロック機構40がロック解除状態とされた状態からロック状態となるようにする場合において、後々軸244の車輪244a、244aが直進方向にない場合は、上記したピン45及び貫通孔41e、41fと、スライドプレート29の切欠き29aとの位置が上下方向で一致せず、ピン45は、スライドプレート29の切欠き29aに進入することができない。よって、その間は、連結棒28が左右方向に移動可能である状態が維持され、慣性ステアリング機構として機能する状態が維持される。これに対し、上記のようにピン45が上昇させられている状態で、セミトレーラ20が直進走行になり、車輪244a、244aが直進方向に位置付けられた場合は、ピン45と、スライドプレート29の切欠き29aとの位置が上下方向で一致して、図5(b)に示すように、ピン45が矢印R2で示す方向に上昇して切欠き29a内に進入し、後々軸244に構成された慣性ステアリング機構の操舵が直進方向で固定されて、後々軸244はロック状態となる。なお、後々軸244について、再びロック解除状態とすべきと判定されたならば、エアー配管47を介して圧縮空気が導入されて、ピン45がスライドプレート29よりも下方側に位置付けられて、ロック解除状態とされる。
【0029】
本実施形態の連結トラック1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、その作用効果について、以下に説明する。
【0030】
図1、2に示す本実施形態の連結トラック1が市街地等において前進走行し、上記した速度センサ56によって検出される速度が、所定の速度未満、例えば、一般道の制限速度である60km/h未満である場合には、車両制御装置50から、上記したロック機構40に対する指示信号が送られて、図5(a)に示すように、ロック機構40のピン45は、連結棒28に配設されたスライドプレート29の切欠き29aよりも下方側に位置付けられて、ロック解除状態とされる。この結果、後々軸244は、連結棒28が左右方向に自由に移動することが可能な慣性ステアリング機構として機能する。すなわち、図6に示すように、連結トラック1の運転者のステアリング操作に伴い、フルトラクタ10が矢印R3で示す左方向に旋回する際には、フルトラクタ10に追随して、前側連結部34で連結されたドリー30も左方に旋回し、ドリー30のカプラ36で連結されたセミトレーラ20もこれに追随して左方に旋回する。
【0031】
上記したように、速度センサ56によって検出される速度が、60km/h未満である場合であって、セミトレーラ20が前進しながら旋回する際には、後軸24の後前軸242の車輪242a、242aは、セミトレーラ20の旋回方向と一体的に動くのに対し、後々軸244の車輪244a、244aは直進軌道を継続しようとする。その結果、車輪244a、244aは、セミトレーラ20の旋回方向に対して矢印R4で示す右方側を向き、旋回時に生じる後々軸244の車輪244a、244aの反力がキャンセルされて、旋回中心は、後前軸242寄りとなり、セミトレーラ20の旋回半径が小さくなって、連結トラック1の道路占有幅も小さいものとなる。これは、左方に旋回することに限定されず、右方に旋回する際にも同様に機能する。
【0032】
上記した車両制御装置50には、例えば、以下のような条件1~3が設定されており、いずれかの条件を満たした場合には、セミトレーラ20の後軸24に配設されたピン駆動手段42のエアチャンバー43から圧縮空気を排出して、ピン45を上昇させる。
【0033】
・条件1
前進走行状態において、所定の速度(例えば70km/h)以上となったとき
・条件2
後退状態(シフトレバー位置が「R」)になったとき
・条件3
上記後退状態から前進状態(シフトレバー位置が「D」)に移行し、その後、低速走行(例えば15km/h以下)が維持されていると判断されるとき
【0034】
上記した条件1について、より具体的に説明する。例えば、上記した連結トラック1が、所定の速度を超える高速走行となる場合、セミトレーラ20の後軸24の後々軸244が慣性ステアリング機構を構成しているため、連結トラック1の直進走行が不安定になり、ふらつきの原因となる場合がある。そこで、上記した条件1を満たす場合、より具体的には、速度センサ56によって検出される連結トラック1の速度が、所定の速度(70km/h)以上となった場合に、車両制御装置50から指示信号が送られて、圧縮空気供給手段46が作動して、上記したピン駆動手段42のエアチャンバー43にから圧縮空気を排出して、ピン45が上昇する。ここで、例えば、連結トラック1が直進しておらず、カーブを走行中である場合においては、上記したように、ピン45と連結棒28のスライドプレート29の切欠き29aが上下方向で一致しないため、後軸24の後々軸244は、慣性ステアリングとして機能し続ける。その後、連結トラック1の走行速度が70km/h以上である状態を維持したまま直進走行に移行し、該後々軸244の車輪244a、244aが直進方向に操舵された場合に、ピン45とスライドプレート29の切欠き29aとが上下方向で一致するため、ピン45が該切欠き29aに進入させられて、後々軸244の慣性ステアリング機構の操舵が直進方向で固定されるロック状態とされる。このように、後々軸244の操舵がロック状態とされることで、直進走行する際の走行安定性が向上する。なお、上記したように、ロック機構40の作用により後々軸244がロック状態とされて車輪244a、244aが直進方向に固定された後、上記した所定の速度(70km/h)よりも低いロック解除速度(例えば60km/h)未満となった場合には、車両制御装置50からの指示信号に基づいて、圧縮空気がエアチャンバー43に導入される。これにより、ピン45が下降してスライドプレート29の切欠き29aから脱し、ロック機構40はロック解除状態とされ、その結果、後々軸244は、慣性ステアリング機構として復帰する。
【0035】
次に、上記した条件2及び条件3について、より具体的に説明する。連結トラック1が停止した状態において、運転者がシフトレバー54を操作してシフトレバー54の位置が「R」にあることが電気配線53を介して車両制御装置50に伝達されると、上記した条件2が満たされたと判断する。これにより、車両制御装置50から指示信号が送られて、圧縮空気がエアチャンバー43から排出されてピン45が上昇する。ここで、例えば、セミトレーラ20の後軸24の後々軸244に配設された車輪244a、244aが直進状態にある場合は、ピン45とスライドプレート29の切欠き29aとが上下方向で一致していることから、ピン45が該切欠き29aに進入させられて、後々軸244の慣性ステアリング機構がロック状態となる。このように、条件2が満たされ、後々軸244がロック状態とされることで、後々軸244の車輪244a、244aが直進方向で固定されて、後退時の車両制御性が確保される。
【0036】
また、上記した条件2が満たされることにより車両制御装置50からロック機構40に指示信号が送られて、ピン45が上昇しようとした場合であっても、セミトレーラ20の後軸24の後々軸244に配設された車輪244a、244aが直進状態にない場合は、ピン45とスライドプレート29の切欠き29aとが上下方向で一致しない。その場合は、後々軸244がロック状態とはならず、車輪244a、244aが、左右に自由に振れる状態であることから、後退時の車両制御性が悪い。そこで、運転者は、シフトレバー54を操作して、シフトレバー54の位置を「R」から、前進走行を行うべく「D」(ドライブ)位置とし、運転席11のハンドルを操作して、切り返しをしながら低速で前進する。このように、連結トラック1の後退直後に前進となってから低速(例えば15km/h未満)走行が維持されている場合に、上記した条件3を満たす状態であると判定される。その結果、エアチャンバー43から圧縮空気が排出されピン45が上昇する状態が維持される。後退に続き低速での前進走行が行われ、運転席のハンドル操作が行われることで、いずれかのタイミングで、ピン45とスライドプレート29の切欠き29aとが上下方向で一致し、ピン45が切欠き29aに進入させられて、後々軸244のステアリング機構がロック状態となる。このように、後々軸244の慣性ステアリング機構がロック状態とされることで、後々軸244の車輪244a、244aが直進方向で固定されることから、次にシフトレバー54の位置が「R」とされて後退する際の車両制御性が確保され、連結トラック1を後退させながら所望の位置に位置付けることが容易になる。
【0037】
上記したように、本実施形態では、少なくとも、後軸24の後々軸244に配設された車輪244a、244aは、シングルタイヤが選択されている。これにより、ダブルタイヤを採用する場合と比して、左右の輪間距離(トレッド)が拡大することから、後々軸244に上記した慣性ステアリング機構を採用した場合であっても、ダブルタイヤを採用する場合に比して、直進安定性が確保され、高速走行時のふらつきの発生を抑制することができる。特に、本実施形態では、ドリー30に装着された車輪38a、38a、後軸24の後前軸242に装着された車輪242a、242aいずれも、シングルタイヤを採用しており、後軸24の最後軸に慣性ステアリング機構を採用した場合であっても、直進安定性がより確保される。
【0038】
上記した実施形態のロック機構40においては、圧縮空気をロック機構40のエアチャンバー43から排出することで、連結棒28のスライドプレート29の切欠き29aに、ピン45を進入させて、後々軸244の操舵を直進方向でロックするようにしている。このような構成とすることで、例えば、後々軸244を、強制的に直進方向とするための電気的、又は油圧等による駆動源を必要とせず、ロック機構40のピン45を上下させるだけの簡易な構成で、後々軸244を直進方向に固定することができる。
【0039】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態のセミトレーラ20に配設された後軸24は、2つの車軸を有するものであったが、3つの車軸を備えるものであってもよい。その場合は、少なくとも最後軸に慣性ステアリング機構を配設するようにすればよい。さらに、本発明は、セミトレーラ20に配設される後軸24の最後軸のみに慣性ステアリング機構を配設することに限定されず、最後軸以外の軸にも慣性ステアリング機構を配設してもよい。
【0040】
また、上記した実施形態のロック機構40では、ロック解除状態にあるとき、ピン45が、スライドプレート29の切欠き29aよりも下方に位置付けられる構成としたが、本発明はこれに限定されず、ロック解除状態にあるとき、ピン45が、スライドプレート29の切欠き29aよりも上方に位置付けられるようにしてもよい。ロック機構40を構成する基台41の上下方向の向き、エアチャンバー43を配設する位置等は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、セミトレーラ20の構造に応じて、適宜変更することが可能である。
【0041】
さらに、上記した実施形態では、ロック機構40を構成するピン45を上下方向に進退させる駆動源として、エアチャンバー43を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の駆動源、例えば、電動アクチュエータ、油圧アクチュエータ等を採用したものを除外しない。さらに、上記した実施形態では、ロック機構40をロック状態とする条件として、条件1~3を例示し、所定の速度(例えば70km/h、15km/h)を作動の条件とするように説明したが、各条件において設定される速度は、本発明が採用される車両、目標とする車両安定性能等に応じて適宜設定されるものであり、上記した速度に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1:連結トラック
10:フルトラクタ
11:運転席
12:前輪
13:フレーム
14:キャブ
16:箱型荷箱
18:後軸
182:後輪
20:セミトレーラ
21:フレーム
22:箱型荷箱
24:後軸
242:後前軸
242a:車輪
244:後々軸
244a:車輪
25:車軸
26:アクスルビーム
27:ステアリングナックル
28:連結棒
29:スライドプレート
29a:切欠き
30:ドリー
32:ドリーフレーム
34:前側連結部
36:カプラ
38:車軸
38a:車輪
40:ロック機構
41:基台
41a:上部
41b:折り曲げ部
41c:下部
41d:空間部
42:ピン駆動手段
43:エアチャンバー
44:軸部
45:ピン
46:圧縮空気供給手段
47:エアー配管
50:車両制御装置
52:電気配線
53a、53b:電気配線
54:シフトレバー
56:速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6