(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20240122BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240122BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/52 301H
H01R13/42 Z
(21)【出願番号】P 2021171274
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
(72)【発明者】
【氏名】曽根 隆
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-114052(JP,A)
【文献】特開2020-202741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 13/73-13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方嵌合空間に配置された相手方端子金具に対して物理的且つ電気的に接続させる端子金具と、
ハウジング挿入方向に沿って前記相手方嵌合空間に挿入口から嵌め入れられる嵌合壁、及び、前記端子金具を内方の端子収容室に収容させ且つ前記嵌合壁と共に前記相手方嵌合空間に挿入される端子収容部を有するハウジングと、
互いの軸心の位置を合わせた前記嵌合壁及び前記相手方嵌合空間の嵌合完了位置で、前記嵌合壁の外周面と前記相手方嵌合空間の内周面との間における環状又は筒状の隙間を周方向に亘って埋める環状又は筒状の弾性変形可能なシール部材と、
前記端子収容部に対する組付け完了位置で前記端子収容部に保持させ、かつ、前記ハウジング挿入方向と向きの同じ端子挿入方向に沿って前記端子収容室に挿入された前記端子金具を前記端子収容室に保持させる抜け止め部材と、
を備え、
前記ハウジングは、前記嵌合完了位置で前記相手方嵌合空間の前記内周面側の当接部に当接させる被当接部を有し、
前記被当接部は、対になる前記当接部と共に少なくとも3箇所に設け、かつ、前記嵌合壁の前記軸心から前記当接部との接点位置までの距離と前記相手方嵌合空間の前記軸心から前記接点位置までの距離とを同じにするものとして
形成され、
前記端子収容室は、前記端子挿入方向に対して直交する調芯方向へと前記端子金具を相対移動させ得る室内空間に形成され、
前記抜け止め部材は、前記組付け完了位置で前記端子挿入方向とは逆向きの端子抜去方向に向けた前記端子収容部に対する前記端子金具の動きを係止するものであり、前記組付け完了位置で前記端子金具の被係止部に対して前記端子抜去方向側に対向配置させ、前記被係止部の前記端子抜去方向への動きを係止する端子係止部を有し、
前記端子金具は、前記組付け完了位置の前記抜け止め部材の前記端子係止部を収容させ、かつ、自身を前記端子係止部に対して前記調芯方向に相対移動させ得る抜け止め収容部を有することを特徴としたコネクタ。
【請求項2】
前記被当接部は、前記嵌合壁の前記外周面よりも突出させることを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記相手方嵌合空間は、長円形の貫通孔であり、
前記嵌合壁は、前記相手方嵌合空間と相似形状の長円形の前記外周面を有するものとして形成され、
前記シール部材は、前記相手方嵌合空間と相似形状の長円形の長円環状又は長円筒状に成形され、
前記被当接部は、前記相手方嵌合空間の前記挿入口の周縁における環状のテーパ面に設けた前記当接部に前記嵌合完了位置で当接させることを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、端子金具が相手方端子金具に対して設計上の所定の位置に置かれなければ、端子金具と相手方端子金具との間の電気的な接続品質が得られなかったり、相手方との部品間で過負荷を生じさせたりしてしまう可能性がある。よって、従来のコネクタにおいては、端子金具と相手方端子金具との物理的な位置関係を調整できるように構成しておくことがある。例えば、下記の特許文献1には、ハウジングに対して端子金具を相対移動可能な状態で収容しておくことで、その端子金具の調芯機能を持たせたコネクタについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコネクタは、ハウジングと当該ハウジングが嵌入される相手方の嵌入部との間で軸心にずれが生じてしまうと、たとえハウジングに対して端子金具を調芯できたとしても、その端子金具を相手方端子金具に対して適切に調芯できなくなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、端子金具の適切な調芯が可能なコネクタを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、相手方嵌合空間に配置された相手方端子金具に対して物理的且つ電気的に接続させる端子金具と、ハウジング挿入方向に沿って前記相手方嵌合空間に挿入口から嵌め入れられる嵌合壁、及び、前記端子金具を内方の端子収容室に収容させ且つ前記嵌合壁と共に前記相手方嵌合空間に挿入される端子収容部を有するハウジングと、互いの軸心の位置を合わせた前記嵌合壁及び前記相手方嵌合空間の嵌合完了位置で、前記嵌合壁の外周面と前記相手方嵌合空間の内周面との間における環状又は筒状の隙間を周方向に亘って埋める環状又は筒状の弾性変形可能なシール部材と、前記端子収容部に対する組付け完了位置で前記端子収容部に保持させ、かつ、前記ハウジング挿入方向と向きの同じ端子挿入方向に沿って前記端子収容室に挿入された前記端子金具を前記端子収容室に保持させる抜け止め部材と、を備え、前記ハウジングは、前記嵌合完了位置で前記相手方嵌合空間の前記内周面側の当接部に当接させる被当接部を有し、前記被当接部は、対になる前記当接部と共に少なくとも3箇所に設け、かつ、前記嵌合壁の前記軸心から前記当接部との接点位置までの距離と前記相手方嵌合空間の前記軸心から前記接点位置までの距離とを同じにするものとして形成され、前記端子収容室は、前記端子挿入方向に対して直交する調芯方向へと前記端子金具を相対移動させ得る室内空間に形成され、前記抜け止め部材は、前記組付け完了位置で前記端子挿入方向とは逆向きの端子抜去方向に向けた前記端子収容部に対する前記端子金具の動きを係止するものであり、前記組付け完了位置で前記端子金具の被係止部に対して前記端子抜去方向側に対向配置させ、前記被係止部の前記端子抜去方向への動きを係止する端子係止部を有し、前記端子金具は、前記組付け完了位置の前記抜け止め部材の前記端子係止部を収容させ、かつ、自身を前記端子係止部に対して前記調芯方向に相対移動させ得る抜け止め収容部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタは、少なくとも3組以上の被当接部と当接部の組み合わせによって、嵌合完了位置で相手方嵌合空間の軸心の位置に対して嵌合壁の軸心の位置を合わせ込み、嵌合完了位置で相手方嵌合空間の内周面に対するハウジングの位置ずれを抑えることができる。従って、このコネクタは、端子金具を適切に調芯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のコネクタを相手方コネクタと共に別角度から見た斜視図であり、これらの嵌合接続後を表している。
【
図4】
図4は、実施形態のコネクタを相手方コネクタと共に別角度から見た斜視図であり、これらの嵌合接続前を表している。
【
図5】
図5は、実施形態のコネクタについてハウジング及び第2シール部材を抜き出して電線引出口側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のコネクタを端子収容部側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、
図6のY-Y線断面を90度回転させた部分拡大図である。
【
図11】
図11は、ハウジングと第2シール部材の分解斜視図である。
【
図12】
図12は、端子金具と抜け止め部材の分解斜視図である。
【
図13】
図13は、係止状態の端子金具と抜け止め部材を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、端子収容部と抜け止め部材の分解斜視図である。
【
図15】
図15は、ハウジングの一部を切り欠いて内方の係止状態の端子収容部と抜け止め部材を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、ハウジングの一部を切り欠いて内方の係止状態の端子収容部と抜け止め部材を別角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを
図1から
図16に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図10の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、電線Weの端末に取り付けられ、この電線Weの先の機器(図示略)に対して電気接続される。そして、このコネクタ1は、相手方機器500の相手方端子金具510(
図3及び
図4)に電気接続させることによって、この相手方機器500と電線Weの先の機器との間を電気接続させる。その相手方端子金具510は、相手方機器500の筐体500aの相手方嵌合空間500bに配置され、この相手方嵌合空間500bに嵌入されたコネクタ1に電気接続させる。例えば、ここでは、電線Weの先の機器が車両のインバータであり、相手方機器500が車両の回転機である。
【0012】
このコネクタ1は、端子金具10とハウジング20とシールドシェル30と抜け止め部材40とを備える(
図6及び
図7)。
【0013】
端子金具10は、金属等の導電性材料で成形される。例えば、この端子金具10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。この端子金具10は、電線Weに対して電気接続させるべく、この電線Weの端末に取り付けられる。また、この端子金具10は、相手方嵌合空間500bに配置された相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる。よって、この端子金具10は、相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる端子接続部11と、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続部12と、を有する(
図7)。
【0014】
端子接続部11は、例えば、相手方端子金具510の相手方端子接続部511との間で嵌合接続させるものであってもよく、その相手方端子接続部511との間で螺子止め固定させるものであってもよい。本実施形態の端子接続部11は、相手方端子接続部511に対して嵌合接続させるものとして形成される。よって、端子接続部11と相手方端子接続部511は、その内の一方が雌端子形状に形成され、その内の他方が雄端子形状に形成される。
【0015】
ここで示す端子接続部11は、筒状の雌端子形状に形成され、その内方に相手方端子接続部511を差し込ませる(
図3)。この端子接続部11は、ハウジング挿入方向に沿った相手方嵌合空間500bへのコネクタ1のハウジング20の嵌入に伴って、そのハウジング挿入方向とは逆向きに相手方端子接続部511が差し込まれる。この端子接続部11は、例えば、角筒状又は円筒状に形成される。ここでは、端子接続部11が角筒状に形成されている(
図7)。そして、ここで示す相手方端子接続部511は、片体状(所謂雄タブ状)の雄端子形状に形成されている(
図3及び
図4)。
【0016】
また、ここで示す端子接続部11には、その内方に一体又は別体の弾性接点部13aが設けられている(
図10)。その弾性接点部13aは、弾性変形に伴う弾発力で接点と相手方端子接続部511との間の接触圧力を確保させる部位である。ここでは、端子金具10とは別体の接点部材13が弾性接点部13aを有している。このコネクタ1においては、その接点部材13を端子接続部11の内方に組み付けることによって、その端子接続部11の内方に弾性接点部13aを配置している。その弾性接点部13aは、片体状の相手方端子接続部511の一方の平面に接触し、その平面に例えば直交方向の弾発力を作用させる。
【0017】
電線接続部12は、電線Weの端末の芯線に対して、例えば、圧着又は溶着させることによって、この電線Weに対して物理的且つ電気的に接続させる。ここで示す電線接続部12は、2枚のバレル片を剥き出しの芯線に加締め接続させることによって、その芯線に圧着させている。
【0018】
この例示の端子金具10は、その端子接続部11と電線接続部12を直線上に配置したストレート形状のものとして成形されている。よって、電線Weは、その直線に沿う端子金具10の延在方向に電線接続部12から引き出される。但し、この端子金具10は、端子接続部11と電線接続部12を直交配置させるなど、これらを交差させて配置したものであってもよい。
【0019】
ここで示すコネクタ1は、その対になる端子金具10と電線Weの組み合わせを3組備えている。
【0020】
ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング20は、端子金具10と電線Weを内方の収容完了位置に収容させる。そして、このハウジング20においては、その端子金具10が収容完了位置で収容状態のまま保持され、かつ、その電線Weが内方から外方に引き出される。
【0021】
このハウジング20は、ハウジング挿入方向に沿って相手方嵌合空間500bに挿入口500cから嵌め入れられる嵌合壁21を有する(
図3及び
図4)。この嵌合壁21と相手方嵌合空間500bは、嵌合壁21の外周面21aと相手方嵌合空間500bの内周面500b
1におけるそれぞれのハウジング挿入方向に対する直交断面形状が軸心P(
図5)を同じにする相似形状となるように形成される。そして、このコネクタ1においては、互いの軸心Pの位置を合わせて嵌合壁21と相手方嵌合空間500bを嵌め込ませる。ここで示す相手方嵌合空間500bは、長円形の貫通孔として形成されている。よって、ここで示す嵌合壁21は、その相手方嵌合空間500bと相似形状の長円形の外周面21aを有するものとして形成されている。
【0022】
また、このハウジング20は、端子金具10を内方の端子収容室20aに収容させる端子収容部22を有する(
図1、
図3及び
図6から
図10)。端子金具10は、後述する電線引出口24aからハウジング挿入方向と向きの同じ端子挿入方向に沿って端子収容室20aに挿入される。端子収容部22は、嵌合壁21よりもハウジング挿入方向側に突出させており、この嵌合壁21と共に挿入口500cから相手方嵌合空間500bに挿入される。
【0023】
このコネクタ1においては、弾性接点部13aの弾性変形に伴う接点と相手方端子接続部511との間の接触圧力を過不足なく発生させるべく、その接触圧力の作用方向へと端子金具10を相手方端子接続部511に対して相対移動し得るものとして端子収容室20aに収容させる。つまり、このコネクタ1には、その接触圧力の作用方向に沿う端子金具10の調芯機能を持たせている。よって、端子収容室20aは、端子挿入方向に対して直交する調芯方向へと端子金具10を相対移動させ得る室内空間に形成される。このため、この端子収容室20aは、端子収容部22の第1壁体22aと第2壁体22bに対してそれぞれに隙間を空けて端子金具10を配置できるように形成されている(
図8及び
図10)。
【0024】
第1壁体22aと第2壁体22bは、端子収容部22において端子収容室20aを成す壁体であり、調芯方向で互いに間隔を空けて対向配置されている。また、端子収容室20aにおいては、弾性接点部13aの接点と相手方端子接続部511との間の接触圧力を過不足なく発生させ得るだけの相手方端子接続部511に対する端子金具10の相対移動量が確保できるように、第1壁体22aと端子金具10との間の隙間の大きさ及び第2壁体22bと端子金具10との間の隙間の大きさが設定される。
【0025】
ここで示す端子収容部22は、角筒状に形成されており、その内方の端子収容室20aに角筒状の端子接続部11が収容される。そして、ここで示す端子収容部22においては、互いに間隔を空けて対向配置される2組の一対の壁体の内の一方が第1壁体22aと第2壁体22bになる。その端子収容室20aの中では、端子接続部11の1つの壁体を第1壁体22aに対向配置させ、端子接続部11のその壁体に間隔を空けて対向配置させた端子接続部11の別の壁体を第2壁体22bに対向配置させる。また、ここで示す端子収容部22においては、筒軸方向における一方の開口から相手方端子接続部511が端子収容室20aに挿入され、その端子収容室20aの中で相手方端子接続部511が端子接続部11に差し込まれる。
【0026】
このハウジング20は、その端子収容部22を端子金具10毎に有している。そして、このハウジング20においては、それぞれの端子収容部22が端子挿入方向と調芯方向とに対する直交方向に間隔を空けて並べられている。このハウジング20は、嵌合壁21よりもハウジング挿入方向側に配置され、そのそれぞれの端子収容部22における嵌合壁21からの突出部分を外方から間隔を空けて覆う筒状のフード部23を有する(
図1、
図3及び
図6から
図11)。ここで示すフード部23は、相手方嵌合空間500bと相似形状の長円形の外周面を有する長円筒状に形成されている。ハウジング20においては、そのフード部23とそれぞれの端子収容部22との間の長円環状の隙間に相手方ハウジング520の長円筒状の相手方端子収容部521(
図3及び
図4)が嵌入され、これと共に、その相手方端子収容部521の内方のそれぞれの相手方端子接続部511が各々の端子収容室20aに挿入される。その相手方ハウジング520は、相手方機器500の筐体500aに固定され、この筐体500aの相手方嵌合空間500bに配置される(
図3及び
図4)。
【0027】
また、このハウジング20には、電線Weを内方に収容させ且つ外方に引き出させる円筒状の電線収容部24が電線We毎に設けられている(
図7及び
図11)。この電線収容部24の内方には、その内周面と電線Weの外周面との間の円筒状の隙間の一部を埋める円筒状のシール部材(以下、「第1シール部材」という。)51が組み付けられている(
図7)。電線Weの端末に取り付けられた端子金具10は、その電線収容部24の電線引出口24a(
図7及び
図11)から端子収容室20aまで挿入されていく。このコネクタ1は、そのそれぞれの電線収容部24の電線引出口24aと電線Weとの間の隙間に嵌め込ませるリヤホルダ60を備えている(
図1、
図2、
図4及び
図7)。
【0028】
ところで、ここで示すコネクタ1においては、フード部23が嵌合壁21の外周面21aよりも大きな相似形状の外周面を有している。そして、このコネクタ1は、互いの軸心Pの位置を合わせた嵌合壁21及び相手方嵌合空間500bの嵌合完了位置で、その嵌合壁21の外周面21aと相手方嵌合空間500bの内周面500b
1との間における環状又は筒状の隙間を周方向に亘って埋める環状又は筒状の弾性変形可能なシール部材(以下、「第2シール部材」という。)52を備える(
図1、
図3から
図8、
図10及び
図11)。この第2シール部材52は、内周面側に複数の環状のリップ(以下、「内周リップ」という。)52aを有すると共に、外周面側に複数の環状のリップ(以下、「外周リップ」という。)52bを有する防水部材である(
図11)。この第2シール部材52は、相手方嵌合空間500bと相似形状の長円形の長円環状又は長円筒状に成形される。ここで示す第2シール部材52は、相手方嵌合空間500bと相似形状の長円筒状に成形され、嵌合壁21の外周面21aに組み付けられる。
【0029】
この第2シール部材52においては、内周リップ52aを嵌合壁21の外周面21aと相似形状の長円形のまま押し潰した状態で嵌合壁21の外周面21aに密着させる。そして、この第2シール部材52においては、嵌合完了位置で外周リップ52bを相手方嵌合空間500bの内周面500b1と相似形状の長円形のまま押し潰した状態で相手方嵌合空間500bの内周面500b1に密着させる。これにより、この第2シール部材52は、周方向の各位置で均等な防水機能を発揮させることができる。そして、この第2シール部材52は、嵌合壁21及び相手方嵌合空間500bのそれぞれの軸心Pの位置を合わせることもできるので、端子金具10の端子接続部11を相手方端子金具510の相手方端子接続部511に対して適切に調芯させることもできる。
【0030】
しかしながら、コネクタ1においては、それぞれの構成部品に公差が設定されており、その公差の範囲内での構成部品間の位置ずれを許容している。このため、このコネクタ1においては、嵌合完了位置の内周リップ52aや外周リップ52bにおける周方向の各位置での潰れ量にばらつきが生じ、相手方嵌合空間500bの軸心Pの位置に対して嵌合壁21の軸心Pの位置がずれてしまう可能性がある。つまり、このコネクタ1は、このままでは端子金具10の調芯機能を低下させてしまう虞がある。そこで、このコネクタ1においては、ハウジング20を次のように形成して、端子金具10の調芯機能の低下を抑える。
【0031】
ハウジング20には、嵌合完了位置で相手方嵌合空間500bの内周面500b
1側の当接部500d
1に当接させる被当接部25を設ける(
図1、
図3、
図5及び
図11)。この被当接部25は、対になる当接部500d
1と共に少なくとも3箇所に設ける。また、この被当接部25は、嵌合壁21の外周面21aよりも突出させる。そして、この被当接部25は、嵌合壁21の軸心Pから当接部500d
1との接点位置Pcまでの距離と相手方嵌合空間500bの軸心Pから接点位置Pcまでの距離とを同じにするものとして形成される(
図5)。これにより、このコネクタ1は、嵌合完了位置で相手方嵌合空間500bの軸心Pの位置に対して嵌合壁21の軸心Pの位置を合わせ込むことができる。従って、このコネクタ1は、嵌合完了位置で相手方嵌合空間500bの内周面500b
1に対するハウジング20の位置ずれを抑制できるので、端子金具10を適切に調芯させることができる。更に、このコネクタ1においては、嵌合完了位置の内周リップ52aや外周リップ52bにおける周方向の各位置での潰れ量のばらつきを抑えることができるので、第2シール部材52が周方向の各位置で均等な防水機能を発揮することができる。
【0032】
ここで示す当接部500d
1は、相手方嵌合空間500bの挿入口500cの周縁における環状のテーパ面500dに設けている(
図3から
図5)。このテーパ面500dは、挿入口500cからハウジング挿入方向に向かうに連れて相手方嵌合空間500bの軸心Pに近づく傾斜面である。このため、ここで示す被当接部25は、嵌合壁21よりも電線収容部24側で嵌合壁21の外周面21aよりも突出させ、テーパ面500dの当接部500d
1に嵌合完了位置で当接させる。ここで示す被当接部25と当接部500d
1の組み合わせは、嵌合壁21の外周面21aとテーパ面500dの周方向に沿って6箇所に設けている(
図5)。
【0033】
シールドシェル30は、それぞれの電線収容部24を外方から覆うことによって、内方の電線Weに対する外部からのノイズの侵入を抑える。よって、このシールドシェル30は、金属材料(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)で成形されている。
【0034】
このシールドシェル30は、それぞれの電線収容部24を外方から覆う長円筒状の筒部31を有する(
図1、
図2、
図4及び
図7)。ハウジング20には、嵌合壁21と被当接部25よりも電線収容部24側の長円形の外周面に長円環状のシール部材(以下、「第3シール部材」という。)53が組み付けられている(
図7及び
図11)。この第3シール部材53は、そのハウジング20の長円形の外周面とシールドシェル30の筒部31の内周面との間の長円筒状の隙間の一部を埋める防水部材である。
【0035】
その筒部31には、長円環状のフランジ部32が連結されている(
図1、
図2、
図4、
図6及び
図7)。シールドシェル30は、そのフランジ部32から突出させた固定部33を雄螺子部材Bで相手方機器500の筐体500aの雌螺子部Nに螺子止め固定している(
図4)。
【0036】
抜け止め部材40は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この抜け止め部材40は、端子収容部22に組み付ける。この抜け止め部材40は、その組付け完了位置で端子金具10の電線引出口24a側への位置ずれの抑止と端子金具10の電線引出口24aからの抜け止めとを図るものである。つまり、この抜け止め部材40は、組付け完了位置で端子挿入方向とは逆向きの端子抜去方向に向けた端子収容部22に対する端子金具10の動きを係止するものであり、その端子金具10を端子収容室20aに保持させる。この抜け止め部材40は、端子金具10毎に設けられたものであってもよく、複数の端子金具10毎に設けられたものであってもよく、全ての端子金具10を抜け止めの対象とするものであってもよい。ここで示す抜け止め部材40は、端子金具10毎に1つずつ設けられている。
【0037】
この抜け止め部材40は、端子収容部22に対する組付け完了位置で当該端子収容部22に保持させる。そこで、この抜け止め部材40には、端子収容部22に保持させる被保持部41Aを設ける(
図8、
図10及び
図12から
図15)。更に、この抜け止め部材40には、端子収容部22に対する端子抜去方向への動きを当該端子収容部22に係止させる被係止部(以下、「第1被係止部」という。)42Aを設ける(
図8、
図10及び
図12から
図14)。一方、端子収容部22には、抜け止め部材40を一方の調芯方向に向けた抜け止め挿入方向で端子収容室20aに挿入させる抜け止め挿入孔22cと、組付け完了位置の抜け止め部材40の被保持部41Aに対して抜け止め挿入方向とは逆向きの抜け止め抜去方向に対向配置させ、その被保持部41Aの抜け止め抜去方向への動きを係止する抜け止め保持部22dと、を設ける(
図8、
図10及び
図14から
図16)。更に、この端子収容部22には、組付け完了位置の抜け止め部材40の第1被係止部42Aに対して端子抜去方向側に対向配置させ、その抜け止め部材40の第1被係止部42Aの端子抜去方向への動きを係止する抜け止め係止部22eを設ける(
図8及び
図10)。
【0038】
ここで示す端子収容部22においては、第1壁体22aが抜け止め挿入孔22cを有している(
図8、
図10、
図14及び
図16)。この抜け止め挿入孔22cは、抜け止め部材40を第1壁体22a側から第2壁体22b側に向けて挿入させる貫通孔である。更に、その第1壁体22aにおいては、抜け止め係止部22eとして抜け止め挿入孔22cの端子抜去方向側の周壁を利用する(
図8及び
図10)。
【0039】
ところで、その抜け止め挿入孔22cは、フード部23で外方から覆われている。このため、ハウジング20においては、そのフード部23における抜け止め挿入孔22cに対向配置されている箇所に貫通孔23aを設け、この貫通孔23aを介して抜け止め部材40を抜け止め挿入孔22cに挿入させる(
図8、
図10及び
図14)。
【0040】
また、ここで示す端子収容部22においては、抜け止め部材40の被保持部41Aを端子収容室20aから室外に挿通させる抜け止め挿通孔22fを第2壁体22bが有している(
図8及び
図15)。この抜け止め挿通孔22fは、抜け止め挿入孔22cから端子収容室20aに挿入された被保持部41Aを抜け止め挿入方向に沿って端子収容室20aから室外に抜け出させる貫通孔である。更に、第2壁体22bにおいては、抜け止め保持部22dとして抜け止め挿通孔22fの周壁を利用する(
図8及び
図15)。ここで示す第2壁体22bの抜け止め保持部22dについては、この第2壁体22bにおける抜け止め挿通孔22fの端子挿入方向側の周壁を利用している。そして、ここで示す被保持部41Aについては、抜け止め部材40が組付け完了位置のときに、端子挿入方向に突出させ且つ抜け止め抜去方向に抜け止め挿通孔22fの端子挿入方向側の周壁を対向配置させる突起部として形成される(
図8)。ここでは、被保持部41Aが爪状に形成されている。
【0041】
更に、ここで示すコネクタ1には、被保持部41Aと抜け止め保持部22dの組み合わせの他に、別の被保持部41Bと抜け止め保持部22gの組み合わせを設けている(
図10)。つまり、抜け止め部材40は、第2壁体22bの抜け止め保持部22dに係止させる一方の被保持部41Aとは別に設けて、端子収容部22に保持させる他方の被保持部41Bを有している。そして、端子収容部22は、第2壁体22bに設けた一方の抜け止め保持部22dの他に、組付け完了位置の抜け止め部材40の他方の被保持部41Bに対して抜け止め抜去方向に対向配置させ、その他方の被保持部41Bの抜け止め抜去方向への動きを係止する他方の抜け止め保持部22gを有している。この他方の抜け止め保持部22gは、第1壁体22aに設けている。例えば、ここで示す第1壁体22aの他方の抜け止め保持部22gについては、この第1壁体22aにおける抜け止め挿入孔22cの端子抜去方向側の周壁を利用している。そして、ここで示す他方の被保持部41Bについては、抜け止め部材40が組付け完了位置のときに、端子抜去方向に突出させ且つ抜け止め抜去方向に抜け止め挿入孔22cの端子抜去方向側の周壁を対向配置させる突起部として形成される。ここでは、他方の被保持部41Bが爪状に形成されている。
【0042】
また更に、ここで示すコネクタ1には、一方の被保持部41Aと抜け止め保持部22dの組み合わせを2組設け(
図15)、他方の被保持部41Bと抜け止め保持部22gの組み合わせを1組設けている(
図10)。そして、ここで示すコネクタ1には、第1被係止部42Aと抜け止め係止部22eの組み合わせを2組設けている。ここで示すコネクタ1においては、その2組の一方の被保持部41Aと抜け止め保持部22dの組み合わせ、1組の他方の被保持部41Bと抜け止め保持部22gの組み合わせ、及び、2組の第1被係止部42Aと抜け止め係止部22eの組み合わせによって、抜け止め部材40を端子収容部22に対する組付け完了位置で当該端子収容部22に保持させる。
【0043】
また、抜け止め部材40は、端子収容部22に対する組付け完了位置で端子抜去方向に向けた当該端子収容部22に対する端子金具10の動きを係止する。そこで、この抜け止め部材40には、端子収容部22に対する組付け完了位置で端子金具10に対して端子抜去方向側に対向配置させ、その端子金具10の端子抜去方向への動きを係止する端子係止部43を設ける(
図8、
図9及び
図12から
図14)。一方、端子金具10には、組付け完了位置の抜け止め部材40の端子係止部43に対して端子挿入方向側に対向配置させ、その端子係止部43に端子抜去方向への動きを係止させる被係止部14を設ける(
図8、
図9、
図12及び
図13)。更に、この端子金具10には、組付け完了位置の抜け止め部材40の端子係止部43を収容させ、かつ、自身を端子係止部43に対して調芯方向に相対移動させ得る抜け止め収容部15を設ける(
図8から
図10、
図12及び
図13)。
【0044】
ここで示す抜け止め収容部15は、端子接続部11における端子挿入方向と調芯方向とに対する直交方向のそれぞれの側壁11a,11bに当該側壁11a,11bを切り欠いて形成される(
図12及び
図13)。それぞれの抜け止め収容部15は、それぞれの側壁11a,11bの一部を調芯方向に切り欠いた空間である。よって、抜け止め部材40は、それぞれの抜け止め収容部15毎に端子係止部43を設けている。それぞれの抜け止め収容部15は、抜け止め部材40が組付け完了位置のときに、それぞれに端子係止部43を収容させるので、その端子係止部43よりも端子挿入方向側に端子収容部22の壁が存在することになる。そこで、ここで示す端子金具10の被係止部14としては、それぞれの抜け止め収容部15の端子挿入方向側の周壁を利用している。
【0045】
具体的に、ここで示す抜け止め部材40は、端子挿入方向に間隔を空けて対向配置させ、かつ、端子挿入方向と調芯方向とに対する直交方向に延在させた軸状の第1軸部44Aと第2軸部44Bを有する(
図12、
図14及び
図16)。そして、ここで示す抜け止め部材40は、その第1軸部44Aと第2軸部44Bの一方の端部同士を連結させ、かつ、その端部側から抜け止め挿入方向に延在させた片体状の第1片部45Aと、その第1軸部44Aと第2軸部44Bの他方の端部同士を連結させ、かつ、その端部側から抜け止め挿入方向に延在させた片体状の第2片部45Bと、を有する(
図9、
図12及び
図14)。
【0046】
ここでは、第1軸部44Aを端子挿入方向側に配置し、かつ、第2軸部44Bを端子抜去方向側に配置している。そして、この抜け止め部材40においては、第1片部45Aと第2片部45Bとにより両持ちとなっている第2軸部44Bに、例えば、端子挿入方向及び端子抜去方向への撓みが可能な可撓性を持たせている。この抜け止め部材40においては、端子収容部22に対する組付け完了位置で第1軸部44Aと第2軸部44Bを抜け止め挿入孔22cに配置させる。よって、その抜け止め挿入孔22cは、その第1軸部44Aと第2軸部44Bとを配置し得る形状と大きさに形成される。
【0047】
また、この抜け止め部材40においては、第1片部45Aと第2片部45Bのそれぞれの端子挿入方向側の端部を端子係止部43として利用する(
図12及び
図14)。よって、この抜け止め部材40においては、端子収容部22に対する組付け完了位置のときに、第1片部45Aが一方の抜け止め収容部15に収容され、第2片部45Bが他方の抜け止め収容部15に収容される。更に、この抜け止め部材40においては、第1片部45Aと第2片部45Bのそれぞれの端子抜去方向側の端部を第1被係止部42Aとして利用する(
図12)。
【0048】
また、ここで示す抜け止め部材40は、第1片部45Aから抜け止め挿入方向に延在させた軸状で可撓性を持つ片持ちの第1可撓部46Aと、第2片部45Bから抜け止め挿入方向に延在させた軸状で可撓性を持つ片持ちの第2可撓部46Bと、を有する(
図12から
図14)。その第1可撓部46Aと第2可撓部46Bは、端子挿入方向及び端子抜去方向への撓みが可能な可撓性を持っている。そして、この第1可撓部46Aと第2可撓部46Bのそれぞれの自由端には、一方の被保持部41Aが設けられている。
【0049】
また、ここで示す抜け止め部材40は、第2軸部44Bにおける延在方向の中央から抜け止め抜去方向に突出させた突出部47を有する(
図8、
図10、
図14及び
図16)。ここで示す突出部47は、方体状に形成され、その端子抜去方向側の壁面から他方の被保持部41Bを突出させている(
図10)。
【0050】
また、ここで示す抜け止め部材40は、端子収容部22に対する組付け完了位置を越えて抜け止め挿入方向に押し込まれぬよう当該端子収容部22に係止される被係止部(以下、「第2被係止部」という。)42Bを有する(
図8、
図10、
図12から
図14及び
図16)。この第2被係止部42Bは、第1軸部44Aにおける延在方向の中央から抜け止め抜去方向で且つ端子挿入方向に突出させ、端子収容部22の第2壁体22bに係止させる。
【0051】
以上示したように、本実施形態のコネクタ1は、少なくとも3組以上の被当接部25と当接部500d1の組み合わせによって、嵌合完了位置で相手方嵌合空間500bの軸心Pの位置に対して嵌合壁21の軸心Pの位置を合わせ込み、嵌合完了位置で相手方嵌合空間500bの内周面500b1に対するハウジング20の位置ずれを抑えることができる。従って、このコネクタ1は、端子金具10を適切に調芯させることができる。例えば、本実施形態のコネクタ1は、端子金具10を抜け止め部材40によって調芯方向へと相対移動が可能な状態でハウジング20に保持しているが、相手方嵌合空間500bの内周面500b1に対するハウジング20の位置ずれ抑制効果によって、端子金具10の調芯方向へ調芯機能を効果的に発揮させることができる。よって、このコネクタ1は、端子金具10が相手方端子金具510との間での適切な接触圧力を得ることができる。故に、このコネクタ1は、端子金具10と相手方端子金具510との間での電気的な接続品質が高品質になり、また、相手方との部品間での過負荷の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 コネクタ
10 端子金具
14 被係止部
15 抜け止め収容部
20 ハウジング
20a 端子収容室
21 嵌合壁
21a 外周面
22 端子収容部
25 被当接部
40 抜け止め部材
43 端子係止部
52 第2シール部材(シール部材)
500b 相手方嵌合空間
500b1 内周面
500c 挿入口
500d テーパ面
500d1 当接部
510 相手方端子金具
P 軸心
Pc 接点位置