(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20240122BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20240122BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240122BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20240122BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240122BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240122BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20240122BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240122BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/03
B23K26/16
B23Q7/04 M
B23Q11/00 M
B23Q11/00 S
B23Q11/08 Z
B23Q17/24 C
B25J9/06 B
(21)【出願番号】P 2018081278
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】浮田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
【審判官】渋谷 善弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142928(JP,A)
【文献】特開2011-251398(JP,A)
【文献】特開2015-120225(JP,A)
【文献】特開2016-000435(JP,A)
【文献】特開平07-148592(JP,A)
【文献】実開平01-109391(JP,U)
【文献】特開2013-255972(JP,A)
【文献】特開2011-245569(JP,A)
【文献】特開2016-073989(JP,A)
【文献】特開2018-012110(JP,A)
【文献】特開平06-143084(JP,A)
【文献】特開2012-000630(JP,A)
【文献】特開2007-021574(JP,A)
【文献】特開2004-283835(JP,A)
【文献】特開2003-071760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B23Q 7/00 - 7/18
B23Q 11/00 - 11/14
B23Q 17/00 - 17/24
B25J 9/00 - 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工ワークを加工する加工ツールを移動させるための第1移動機構と、
前記被加工ワークを把持し、前記第1移動機構の動作に連動して前記被加工ワークの姿勢を変化させる把持機構と、
前記把持機構に前記被加工ワークを把持させる第2移動機構と、
前記把持機構と、前記第1移動機構と、前記第2移動機構と、を共通に固定するための共通ベースと、
前記被加工ワークの周囲の空気を吸入する吸入口を有する吸引機構と、を備え
、
前記加工ツールで前記被加工ワークを加工するとき、前記第2移動機構は、前記吸入口を前記被加工ワークに接近させることを特徴とする加工システム。
【請求項2】
前記把持機構は、第1把持装置と第2把持装置を備え、前記第2把持装置は前記第1把持装置に対向するように固定されており、
前記第1把持装置と前記第2把持装置は、前記第1把持装置と前記第2把持装置を結ぶ直線方向にそれぞれ移動可能であり、
前記共通ベースには、前記第1移動機構と前記第2移動機構が、前記直線方向に対して直交する方向に向かい合って配置されることを特徴とする請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記被加工ワークを搬入する搬入機構と、前記被加工ワークを搬出する搬出機構と、を備え、
前記搬入機構と前記搬出機構とは、平面視において、前記第2移動機構から放射状に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記第1移動機構、前記第2移動機構および前記把持機構を取り囲む周壁を有し、
前記搬入機構の搬入口と前記搬出機構の搬出口とは、前記周壁の外側に設けられることを特徴とする請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
前記把持機構の下方において前記被加工ワークの加工屑を回収し、当該加工屑を搬出する加工屑搬出機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加工システム。
【請求項6】
相互に直交する2軸または3軸に沿って前記加工ツールを移動させるためのアクチュエータをさらに備え、
前記アクチュエータの動作を制御するための補正制御コードを記憶し、前記第1移動機構が前記加工ツールを移動させるとき、前記補正制御コードに基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の加工システム。
【請求項7】
前記加工ツールは、レーザ光を出力するレーザヘッドを含むことを特徴とする請求項1から
6のいずれかに記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して所定の加工を行う加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークにレーザ切断などの加工を行う加工システムが知られている。例えば、特許文献1には、被加工物に対してレーザ切断を行うレーザ加工システムが記載されている。特許文献1に記載のレーザ加工システムは、被加工物を位置決めするための工具台と、レーザ切断ヘッドを所定の位置へ運ぶ第1のロボットと、被加工物を工具台上に位置決めする第2のロボットと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレーザ加工システムは、工具台と、第1、第2ロボットとが、別々に固定されており、設置したときのこれらの装置の相対的な位置や傾きの差は大きい場合が多い。このため、設置時にこれらの装置の相対的な位置や傾きを調整する手間が多く掛かるという問題がある。このような課題は、レーザ加工システムだけでなく、工具台上のワークに溶接、溶断、ろう付け、溝付け、吹付け、2Dまたは3D造形などの各種加工を行う加工システムについても生じうる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的は、容易に設置することが可能な加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の加工システムは、被加工ワークを加工する加工ツールを移動させるための第1移動機構と、被加工ワークを把持し、第1移動機構の動作に連動して被加工ワークの姿勢を変化させる把持機構と、把持機構に被加工ワークを把持させる第2移動機構と、把持機構と、第1移動機構と、第2移動機構と、を共通に固定するための共通ベースと、を備える。
【0007】
この態様によれば、前記把持機構と、前記第1移動機構と、前記第2移動機構と、を共通ベースに共通に固定することができる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に設置することが可能な加工システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る加工システムを示す平面図である。
【
図2】
図1の加工システムの一例を示す側面視の図である。
【
図3】
図1の加工システムの加工屑搬出機構の概要を示す模式図である。
【
図4】
図1の加工システムの共通ベースの一例を示す平面図である。
【
図5】
図1の加工システムの共通ベースの周辺を示す正面視の図である。
【
図6】
図1の加工システムの制御ユニットの一例を示すブロック図である。
【
図7】
図1の加工システムの切断動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の加工システムの溶接動作を示す正面視の図である。
【
図9】
図1の加工システムの溶接動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1の加工システムの軌跡の手動入力を示す説明図である。
【
図11】
図1の加工システムの軌跡補正動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、被加工ワーク(以下、単に「ワーク」という)に所定の加工を施す加工システムの設置を容易にする観点で研究し、以下のような知見を得た。例えば、レーザヘッドを有する第1ロボットでワークを加工する際に、第1ロボットの動作に連動してワークの姿勢を変化させる把持機構でワークを支持することが考えられる。この場合、姿勢が固定されたワークを加工する場合に比べて、複雑な軌跡での加工が可能となる。さらに、把持機構にワークを供給する第2ロボットを組み合わせることにより、省人化が可能な加工システムを実現することができる。
【0012】
第1ロボットは把持機構に把持されたワークに対して相対的な動作をし、第2ロボットは把持機構にワークを把持させる相対的な動作をする。このため、これらの装置間の相対位置がずれていると、加工精度が低下することが考えられる。また、これらの装置を別々のベースに固定すると各装置間の相対的な位置や傾きの差が大きくなり、この相対的な位置や傾きを調整する調整作業に多くの手間が掛かることが判明した。特に、3つ以上の装置が互いに連携して相対的な動作をする加工システムでは、装置間の関係が複雑化してこの問題が一層顕著になる。
【0013】
また、相対的な位置や傾きを調整した後、設置した床面の凹凸が変動することにより、各装置間の相対的な位置や傾きの差が大きくなって加工精度が低下することも考えられる。この場合、加工精度を維持するために、頻繁に再調整を繰り返すことになり、メンテナンスの手間が増大する。
【0014】
装置間の相対的な位置や傾きの差が大きい問題は、レーザ加工システムだけでなく、ワークを移動させながら、ワークに溶接、溶断、ろう付け、溝付け、吹付け、2Dまたは3D造形などの各種加工を行う加工システムについても生じうる。
【0015】
これらから、本発明者らは、装置間の相対的な位置や傾きの差を小さくするために、3つの装置を共通のベースに固定する構成を案出した。以下、この共通ベースを備えた加工システムについて説明する。
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよそその意味であることを示す。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0018】
[実施の形態]
まず、
図1、
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る加工システム100の全体構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る加工システム100を示す平面図である。
図2は、加工システム100の主要部分を示す側面図である。以下、主にXYZ直交座標系をもとに説明する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸の正方向側を「右側」、X軸の負方向側を「左側」ということもある。また、Y軸の正方向側を「前側」、Y軸の負方向側を「後側」、Z軸の正方向側を「上側」、Z軸の負方向側を「下側」ということもある。このような方向の表記は加工システム100の使用姿勢を制限するものではなく、加工システム100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0019】
(加工システム)
加工システム100は、第1移動機構10と、把持機構20と、第2移動機構12と、共通ベース24と、制御ユニット30と、搬入機構40と、搬出機構42と、加工屑搬出機構44と、レーザ発振機48と、冷却機構50と、吸引機構52と、周壁56と、を主に備える。
【0020】
第1移動機構10は、ワーク8を加工する加工ツールとしてレーザヘッド18を移動させるための装置である。把持機構20は、ワーク8を把持し、第1移動機構10の動作に連動してワークの姿勢を変化させるためのワーク支持手段であり、いわば姿勢可変支持機構である。第2移動機構12は、把持機構20にワークを把持させるための装置である。共通ベース24は、把持機構20と、第1移動機構10と、第2移動機構12と、を固定するための基台である。
【0021】
制御ユニット30は、主に、第1移動機構10、把持機構20および第2移動機構12の動作を制御するための制御手段である。制御ユニット30については後述する。
【0022】
搬入機構40は、加工前のワーク8(A)を搬入するための手段である。本実施形態の搬入機構40は、周壁56の外部から第2移動機構12の近傍まで加工前のワーク8(A)をX軸方向に搬送するコンベア40bを有する。
【0023】
搬出機構42は、加工後のワーク8(C)を搬出するための手段である。本実施形態の搬出機構42は、第2移動機構12の近傍から周壁56の外部まで加工後のワーク8(C)をX軸方向に搬送するコンベア42bを有する。
【0024】
図1に示すように、搬入機構40と搬出機構42とは、平面視において、第2移動機構12から放射状に延びる直線上に配置されている。また、搬入機構40と搬出機構42とは、第2移動機構12を挟んで配置されている。このように配置することにより、第2移動機構12の作業距離を短くして、第2移動機構12の作業時間を短くすることができる。搬入機構40の搬入口と搬出機構42の搬出口とは、後述する周壁56の外側に設けられている。
【0025】
図3も参照して、加工屑搬出機構44を説明する。
図3は、加工屑搬出機構44の概要を示す模式図である。加工屑搬出機構44は、ワーク8を加工した際の切粉や余材などの加工屑8yを搬出するための手段である。
図3に示すように、本実施形態の加工屑搬出機構44は、案内機構44sと、コンベア44bと、カバー部材44cと、を含む。案内機構44sは、把持機構20の下方でワーク8の加工屑8yを受けてコンベア44bに滑落させるシュートの機能を有する。コンベア44bは、案内機構44sの下方で加工屑8yを回収し、当該加工屑8yを周壁56の外部までX軸方向に搬送する。カバー部材44cは、コンベア44bの上側に配置され、加工屑8yに含まれるワーク8を加工した際の塵やガス(以下、ダストという)の拡散を抑制する。カバー部材44cは、コンベア44bの上側の少なくとも一部を覆う。加工屑搬出機構44の近傍には、後述する吸引機構52の第2吸入口52kが設けられ、集塵用の配管52hを通じて、ダストが排出される。
【0026】
コンベア44bの下流側には加工屑8yを回収して搬送するための搬送台車44dが配置される。コンベア44bは下流端に向けて斜め上方に延びており、回収した加工屑8yを上側から搬送台車44dに排出する。
【0027】
図1に示すように、レーザ発振機48は、レーザ光を発生させて光ケーブル48cを介してレーザヘッド18に供給するための手段である。本実施形態のレーザ発振機48はファイバーレーザであり、その動作は制御ユニット30に制御される。
【0028】
図1に示すように、冷却機構50は、チラー50aで冷却された冷水を配管50hを介して循環させることにより、レーザ発振機48および第1移動機構10を冷却するための手段である。
【0029】
図1に示すように、吸引機構52は、ワーク8を加工した際に生じるダストを集めて排出するための手段である。吸引機構52は、ワーク8の近傍に配置される第1吸入口52jと、加工屑搬出機構44の上流側に配置される第2吸入口52kと、集塵用の配管52hと、セパレータ52aと、集塵装置52mと、を含む。特に、吸入口52jは、ワーク8の周囲の空気を吸入するように構成される。集塵用の配管52hは、第1吸入口52jおよび第2吸入口52kからセパレータ52aの間に接続される。集塵装置52mは、セパレータ52aと配管を介して吸入口52j、52kから空気を吸入してダストを分離し清浄空気を排出する。
【0030】
図1に示すように、周壁56は、第1移動機構10、把持機構20および第2移動機構12を取り囲む所定の空間を仕切るための壁手段である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の加工システム100は、平面視で略矩形に組み付けられた周壁56の内側に加工空間を有する。加工空間を周壁56で囲むことにより、加工の際に生じる粉塵やガスおよび加工用のレーザの拡散範囲を限定し、これらから作業員を保護することができる。加工空間の床面Gfの略中央には、共通ベース24が設置される。共通ベース24は、床面Gfの凹凸や傾斜に関わらず、搭載機器を水平に支持するための搭載部を有している。共通ベース24の搭載部には、把持機構20、第1移動機構10および第2移動機構12が固定される。共通ベース24には、他の機器が固定されてもよい。
【0032】
(共通ベース)
図4、
図5を参照して、共通ベース24を説明する。
図4は、共通ベース24の一例を示す平面図である。
図5は、共通ベース24の一例を示す正面図である。これらの図は、共通ベース24に架台22及び移動機構載置部24g、24hが固定された状態を示している。
【0033】
共通ベース24に特別な制限はないが、本実施形態の共通ベース24は、Y軸に平行な長辺とX軸に平行な短辺とからなる平面視で略矩形の外枠24jを有する。外枠24jは、長辺に対応する一対のフレーム24aと短辺に対応する一対のフレーム24bとで構成される。強度を得るために、共通ベース24は、外枠24jの中でX軸に平行な2本のビーム24cと、Y軸に平行な2本のビーム24dと、を有する。
【0034】
共通ベース24は、架台22を支持するために、X軸に平行な長辺とY軸に平行な短辺とからなる平面視で略矩形の架台枠24kを有する。架台枠24kは、長辺に対応する一対のフレーム24eと短辺に対応する一対のフレーム24fとで構成される。フレーム24eは、フレーム24bより長く、架台枠24kのX軸方向の両端は、フレーム24bから外側に張出している。
図4に示す共通ベース24は、短辺の幅を二等分する二等分線Lmに対して線対称に構成され、長辺の幅を二等分する二等分線Lnに対して線対称に構成される。
【0035】
フレーム24aと、フレーム24bと、ビーム24cと、ビーム24dと、フレーム24eと、フレーム24fとには、それぞれ離隔して設けられる複数の取付部24pが設けられている。複数の取付部24pはボルト(不図示)などの固定部材により床面Gfに固定される。
【0036】
(架台)
共通ベース24の架台枠24kには、把持機構20を支持固定するための架台22が固定される。架台22に特別な制限はないが、本実施形態の架台22は、X軸方向に互いに離れて配置される一対の台部22bを含む。各台部22bは、平面視で略矩形板状の載置部22cと、載置部22cの四隅から下向きに延びて架台枠24kに固定される4本の脚部22dと、を含む。
【0037】
図4に示す架台22は、二等分線Lmに対して線対称に構成され、二等分線Lnに対して線対称に構成される。載置部22cは、二等分線Lmを挟んで二等分線Ln上に配置される。各載置部22cには、把持機構20の後述する第1把持装置20aと第2把持装置20bとが固定される。
【0038】
(移動機構載置部)
共通ベース24には、Y軸方向に離間して配置される移動機構載置部24g、24hが設けられる。移動機構載置部24g、24hは、平面視で略矩形の台状の部材で、2本のビーム24dと、フレーム24bとに固定される。移動機構載置部24g、24hは、架台22を挟んで二等分線Lm上に配置される。移動機構載置部24gには、第1移動機構10が固定され、移動機構載置部24hには、第2移動機構12が固定される。
【0039】
(把持機構)
次に、
図5を参照して、把持機構20を説明する。把持機構20は、第1把持装置20aと、第2把持装置20bと、制御ユニット30と、を含む。把持装置20a、20bは、ワーク8を把持する把持部20hと、把持部20hを回転させるモータ20mと、を含む。一例として、モータ20mはACサーボモータであってもよい。モータ20mの回転は制御ユニット30によって制御される。第2把持装置20bは、第1把持装置20aに対向するように第1把持装置20aと共通の架台22に固定される。架台22は、各把持装置20a、20bをX軸方向に移動することができる。例えば、把持装置20a、20bを開方向(互いに遠ざかる方向)に移動させた状態でワーク8をセットすることができる。
【0040】
第1把持装置20aは、ワーク8の一端部を把持して回転させる。第2把持装置20bは、ワーク8の他端部を把持して回転させる。この例では、第1把持装置20a及び第2把持装置20bは、X軸方向に水平に延びる回転軸Leを中心にワーク8を回転させる。制御ユニット30は、第1把持装置20aと第2把持装置20bとを互いに同期して回転させるように制御する。これらを同期して回転させることにより、ワーク8の振れ回りや捻れによる加工精度の低下を抑制することができる。
【0041】
次に、
図2を参照して、第1移動機構10および第2移動機構12を説明する。第1移動機構10は、ワーク8を加工するレーザヘッド18を移動可能なものであれば形態に制限はない。第2移動機構12は、搬入機構40のコンベア40b上の加工前のワーク8(A)を掴んで把持機構20に移動させ、第1把持装置20aおよび第2把持装置20bに把持させる動作を実行する。第2移動機構12は、加工後のワーク8(C)を把持機構20から外して、搬出機構42のコンベア42b上に移動する動作を実行する。第2移動機構12は、これらの動作を実行可能なものであれば形態に制限はない。
【0042】
第1移動機構10は、加工ツールを移動させることができるものであれば特別な制限はない。第1移動機構10は、例えば、1軸以上の自由度を持つロボットなど、自動制御またはプログラム可能なマニピュレータであってもよい。本実施形態の第1移動機構10は、多関節を有するいわゆる産業用の多関節型ロボットである。特に、第1移動機構10は、手首10bの回転用の関節10cと、手首10bの曲げ用の関節10dと、手首10bの旋回用の関節10eと、上腕10fの曲げ用の関節10gと、下腕10hの曲げ用の関節10jと、全体旋回用の関節10kと、を有する垂直6軸ロボットである。第1移動機構10の動作は制御ユニット30によって制御される。
【0043】
第1移動機構10の手首10bには、レーザヘッド18を支持するための支持ユニット14が固定されている。本実施形態の支持ユニット14は、直交する2軸(XY)または3軸(XYZ)のステージの各軸にリニアアクチュエータを有する多軸駆動ステージ(以下、「多軸ステージ16」という)を含む。特に、多軸ステージ16は、質量をレーザヘッド18と逆方向に駆動することによってレーザヘッド18の移動反力を打ち消すためのカウンタマス手段16mを有する。
【0044】
多軸ステージ16を含むことにより、支持ユニット14は、第1移動機構10の動作に加えて、レーザヘッド18を直交する2軸または3軸方向に駆動することができる。カウンタマス手段16mを有することにより、多軸ステージ16は、移動反力の影響を抑制しレーザヘッド18を高精度で駆動することができる。多軸ステージ16の動作は制御ユニット30によって制御される。レーザヘッド18に限定はないが、本実施形態のレーザヘッド18は、把持機構20に支持されたワーク8を切断または溶接するためのレーザ光を出力する。
【0045】
第2移動機構12は、把持機構20にワーク8を把持させることができるものであれば特別な制限はない。第2移動機構12は、例えば、1軸以上の自由度を持つロボットなど、自動制御またはプログラム可能なマニピュレータであってもよい。本実施形態の第2移動機構12は、多関節を有するいわゆる産業用の多関節型ロボットである。特に、第2移動機構12は、手首12bの回転用の関節12cと、手首12bの曲げ用の関節12dと、手首12bの旋回用の関節12eと、上腕12fの曲げ用の関節12gと、下腕12hの曲げ用の関節12jと、全体旋回用の関節12kと、を有する垂直6軸ロボットである。第2移動機構12の動作は制御ユニット30によって制御される。
【0046】
第2移動機構12の手首12bには、ワーク8を掴むための把持ハンド12mが固定されている。第2移動機構12は、第1移動機構10と把持機構20とを挟んでY軸方向に離間して配置される。つまり、第1移動機構10と第2移動機構12とは、互いにY軸方向に対向して二等分線Lm上に配置される。
【0047】
(制御ユニット)
図6も参照して制御ユニット30について説明する。
図6に示す制御ユニット30の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0048】
本実施形態の制御ユニット30は、周壁56の外部に設けられた操作盤28の内部に設けられている。制御ユニット30は、主に、把持機構20と、第1移動機構10と、第2移動機構12と、を制御する。制御ユニット30の各ブロックが1つのユニットに収容されることは必須ではなく、制御ユニット30は、複数のブロックが分離された複数のユニットから構成されていてもよく、これらのユニットは別々に設けられていてもよい。
【0049】
制御ユニット30は、画像取得部30aと、距離取得部30bと、第1移動機構制御部30eと、第2移動機構制御部30fと、第1把持装置制御部30gと、第2把持装置制御部30hと、加工ヘッド制御部30jと、制御コード記憶部30kと、手動データ取得部30mと、手動データ記憶部30nと、軌跡補正部30pと、ステージ制御部30qと、表示制御部30rと、搬入機構制御部30sと、搬出機構制御部30tと、加工屑搬出機構制御部30uと、画像データ特徴抽出部30vと、ビジュアルサーボ部30wと、を含む。
【0050】
画像取得部30aは、支持ユニット14に設けたカメラ38の撮像結果を取得する。本実施形態のカメラ38は、ワーク8を撮像するように配置される。特に、カメラ38は、ワーク8のレーザヘッド18からのレーザ光の照射点の周辺を撮像しており、画像取得部30aは、この撮像結果を動画像データとして取得すると共に、取得した動画像データを記憶する。
【0051】
距離取得部30bは、支持ユニット14に設けたハイトセンサ36の検知結果を取得する。ハイトセンサ36は、ワーク8からレーザヘッド18までの距離を検知しており、距離取得部30bは、この検知を距離データとして取得することができる。
【0052】
第1移動機構制御部30eは、作成されたロボットGコードにより第1移動機構10の動作を制御する。特に、レーザヘッド18からのレーザ光の照射点がロボットGコードにより指示される軌跡に沿って移動するように制御される。
【0053】
第2移動機構制御部30fは、作成されたロボット制御コードにより第2移動機構12の動作を制御する。特に、第2移動機構12は、加工前のワーク8(A)を把持機構20に把持させ、加工済みのワーク8(C)を把持機構20から外すように制御される。
【0054】
第1把持装置制御部30gは、作成された制御コードにより第1把持装置20aの回転を制御する。第2把持装置制御部30hは、作成された制御コードにより第2把持装置20bの回転を制御する。特に、把持装置制御部30g、30hは、第1把持装置20aと第2把持装置20bとを互いに同期して回転するように制御する。
【0055】
加工ヘッド制御部30jは、作成された制御コードによりレーザヘッド18のON・OFFを制御する。
【0056】
制御コード記憶部30kは、CADデータを元に作成されたロボットGコードなどを含む制御コードを記憶している。特に、制御コード記憶部30kは、第1移動機構制御部30e、第2移動機構制御部30f、第1把持装置制御部30g、第2把持装置制御部30hおよび加工ヘッド制御部30jの制御コードを記憶している。
【0057】
手動データ取得部30mは、後述する軌跡補正動作のために、ジョイスティックなどレバー操作を入力する操作入力部34から手動で入力された操作結果を取得する。手動データ記憶部30nは、手動データ取得部30mの取得結果を記憶する。
【0058】
軌跡補正部30pは、手動データ記憶部30nで記憶された操作履歴データに応じて、レーザヘッド18の軌跡を補正するためのデータ(以下、「修正制御コード」という)を演算により求める。ステージ制御部30qは、軌跡補正部30pで求められた修正制御コードに基づいて、多軸ステージ16の動作を制御してレーザヘッド18の軌跡を補正する。つまり、第1移動機構10は、ロボットGコードにより指示される軌跡に沿ってレーザヘッド18を移動させ、多軸ステージ16は、修正制御コードにより指示される軌跡に沿ってレーザヘッド18を移動させる。この結果、レーザヘッド18は、ロボットGコードの軌跡に修正制御コードの軌跡が重畳された重畳軌跡に沿って移動する。
【0059】
表示制御部30rは、画像取得部30aに記憶された動画像データを、液晶ディスプレイなどの表示部32に表示する。このとき、表示制御部30rは、この動画像に手動データ取得部30mで取得された手動操作結果を重畳表示することができる。
【0060】
搬入機構制御部30sは、第2移動機構12の動作に応じて搬入機構40の動作を制御し、加工前のワーク8(A)を第2移動機構12が把持可能な位置に移動させる。搬出機構制御部30tは、第2移動機構12の動作に応じて搬出機構42の動作を制御し、第2移動機構12が取り出した加工後のワーク8(C)を搬出機構42の出口側に移動させる。加工屑搬出機構制御部30uは、加工屑搬出機構44の動作を制御し、ワーク8を加工した際の加工屑8yを加工屑搬出機構44の出口側に移動させる。
【0061】
画像データ特徴抽出部30vとビジュアルサーボ部30wとは、後述するビジュアルサーボ動作を制御するための要素である。画像データ特徴抽出部30vは、カメラ38から画像取得部30aを介して取得したワーク8の実画像(リアルタイム画像)から画像処理によって、ワーク8の特徴を抽出する。画像データ特徴抽出部30vは、抽出したワーク8の特徴と予め作成されたロボット制御コードに基づく加工軌跡とのずれ量を演算により求め、このずれ量を修正制御データに変換する。
【0062】
ビジュアルサーボ部30wは、画像データ特徴抽出部30vで生成された修正制御データに応じてレーザヘッド18の軌跡をリアルタイムで補正する。本実施形態のビジュアルサーボ部30wは、レーザヘッド18の軌跡を補正するために、フィードバックされた修正制御データに基づいて多軸ステージ16の動作を制御する。
【0063】
以上、本実施形態の構成について説明した。以下、このように構成された本実施形態の動作について説明する。
【0064】
(切断動作)
図7を参照して、切断動作の一例について説明する。
図7は、本実施形態の切断動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S60を示している。処理S60は、レーザヘッド18によりワーク8を切断またはワーク8に孔を形成する処理である。この動作は、操作盤28から、切断動作をするための所定の操作がなされることにより実行される。
【0065】
操作者が加工前のワーク8(A)を搬入機構40の入口側に投入する(ステップS61)。このステップは、操作者は周壁56の外側で行うことができる。投入されたワーク8(A)は、コンベア40bによって第2移動機構12の近傍に搬送される。
【0066】
搬送された後、第2移動機構12によってワーク8(A)を把持機構20にセットする(ステップS62)。このステップでは、第2移動機構12は、ワーク8(A)を把持ハンド12mで把持して持ち上げ、把持機構20まで移動させる。
【0067】
ワーク8(A)をセットした後、第2移動機構12の腕を加工領域から退避させる(ステップS63)。
【0068】
第2移動機構12が退避した後、第1移動機構10によってレーザヘッド18を所定の位置関係になるまでワーク8(A)に接近させる(ステップS64)。
【0069】
ワーク8に接近した後、ワーク8(A)を把持機構20によって回転させながら、ワーク8(A)に対してレーザヘッド18からレーザ光を所定の軌跡に沿って照射し、ワーク8(A)の切断や孔形成などを行う(ステップS65)。このステップにおいて、制御ユニット30は、第1把持装置20aと第2把持装置20bとを互いに同期して回転するように制御する。このように制御することにより、ワークの振れ回りや捻れを小さくして、加工精度の低下を抑制することができる。
【0070】
切断などの加工を行った後、第1移動機構10の腕を加工領域から退避させる(ステップS66)。
【0071】
第1移動機構10が退避した後、第2移動機構12によって加工後のワーク8(C)を把持機構20から外し、搬出機構42の入口側に引き渡す(ステップS67)。引き渡されたワーク8(C)は、コンベア42bによって周壁56の外側に搬送される。
【0072】
加工後のワーク8(C)を外した後、加工により生じた加工屑8yを加工屑搬出機構44により周壁56の外側に搬出する(ステップS68)。連続して加工する場合は、ステップS61~ステップS68を繰り返す。以上が、切断動作の説明である。これらの各ステップは、制御ユニット30により制御される。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0073】
(溶接動作)
図8、
図9を参照して、溶接動作の一例について説明する。
図8は、溶接動作を示す正面視の図である。
図9は、本実施形態の溶接動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S70を示している。処理S70は、別々の2つのワーク8b、8cの互いの端部を溶接して一体化する処理である。なお、各ロボットの腕の退避や、ワークの搬入、搬出の各動作は、切断動作の処理S60と同様であり、重複する説明を省く。
【0074】
まず、第1把持装置20aと第2把持装置20bとをX軸方向に遠ざけるように移動させる(ステップS71)。この状態で、第1把持装置20aに第1ワーク8bを把持させる(ステップS72)。また、第2把持装置20bに第2ワーク8cを把持させる(ステップS73)。ステップS72、S73は第2移動機構12によって行われる。
【0075】
ワークを把持したら、第1把持装置20aと第2把持装置20bとを接近する方向に移動させることにより、第1ワーク8bに第2ワーク8cを接近または接触させる(ステップS74)。この状態で、レーザヘッド18を接近させ、レーザヘッド18からのレーザ光18eを第1ワーク8b及び第2ワーク8cに照射してこれらを溶接する(ステップS75)。このステップにおいて、制御ユニット30は、第1把持装置20aと第2把持装置20bとを互いに同期してワークを回転させるように制御する。ステップS74、S75は第1移動機構10によって行われる。
【0076】
溶接で一体化されたワーク8b、8cを把持装置20a、20bから取り外す(ステップS76)。ステップS76は第2移動機構12によって行われる。ワークを取り外すことにより処理S70は終了する。以上が、溶接動作の説明である。これらの各ステップは、制御ユニット30により制御される。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0077】
このように、第1把持装置20aと第2把持装置20bとが互いに同期してワークを回転させるので、別々のワークを無人の工程で溶接することが可能になる。
【0078】
(軌跡補正動作)
図10、
図11、
図6を参照して軌跡補正動作について説明する。
図10は、軌跡の手動入力を示す説明図である。
図11は、軌跡補正動作を説明する説明図である。ロボットで自動加工を行う場合、ワークのCADデータに基づいて、オフラインティーチングソフトを用いて、ロボットの各移動ポイントにおける移動指令を規定する制御コード(以下、「ロボットGコード」という)を作成する。
【0079】
しかし、ロボットGコードにより実際にロボットを動作させると、ロボットの精度や実際のワークの誤差などにより加工精度が低下することがある。そこで、本実施形態は、ロボットの移動軌跡を補正して加工精度を向上させる動作(以下、「軌跡補正動作」という)を行うために、手動データ取得部30mや軌跡補正部30pなどを備えている。本実施形態の軌跡補正動作は、手動により修正制御コードを入力する入力動作と、入力された修正制御コードに基づきレーザヘッド18を移動させる補正動作と、を含む。
【0080】
(入力動作)
入力動作について説明する。
図10、
図11に示すように、入力動作では、操作入力部34(ジョイスティックなど)により手動で操作された軌跡を取得する。具体的には、まず、加工前に、第1移動機構10をロボットGコードに沿って動作させ、カメラ38により動画撮影を行い、ロボットGコードによる軌跡データを記憶する。この軌跡データは、画像取得部30aに記憶される。
【0081】
次に、非加工時に、記憶された軌跡データを表示部32にスロー(例えば1/10速)で再生する。このとき、操作入力部34のレバー34bの左右への操作に応じて左右に移動するターゲットTm(カーソルマーク)を重畳表示する。表示部32に表示された基準線LsとターゲットTmとを目視しながら、ターゲットTmが基準線Lsをなぞるように手動でレバー34bを操作する。この操作により、レバー34bの操作履歴データは基準線Lsに対するロボットGコードのずれに対応しており、この操作履歴データに基づいて所定の演算により修正制御コードを求めることができる。基準線LsとターゲットTmとを目視しながら、手動により修正制御コードを作成するので、高精度の修正制御コードを容易に作成することができる。このように作成された修正制御コードは、手動データ記憶部30nに記憶される。
【0082】
(補正動作)
補正動作について説明する。加工時には、レーザヘッド18を、ロボットGコードによる移動と、修正制御コードによる移動と、を重畳させる。このことにより、レーザヘッド18の軌跡をより基準線Lsに近づけることができる。しかし、ロボットの応答速度が遅い場合には、ロボットの動作が修正制御コードに追従できない可能性がある。そこで、本実施形態は、修正制御コードで多軸ステージ16を駆動してレーザヘッド18を移動させる。多軸ステージ16は、ロボットよりも応答速度が速いので、修正制御コードに追従してレーザヘッド18を移動させることができる。特に、本実施形態の多軸ステージ16は、カウンタマス手段16mを有しているので、レーザヘッド18の追従精度を向上させることができる。
【0083】
(ビジュアルサーボ)
ワークの形状は、すべてのワークで一定ではなく、各ワークが異なる特徴を持つことがある。このため、予め作成された制御コードに基づいてシーケンシャルな加工を行うと、加工精度が個々のワークの特徴の影響を受けて低下することがある。そこで、本実施形態は、ワークの加工点の周辺の実画像をフィードバックしてリアルタイムでレーザヘッド18の軌跡を補正するビジュアルサーボ機能を有する。この機能は、加工動作のいわゆるリアルタイム補正動作を実現するものである。なお、ビジュアルサーボは、ビジュアルフィードバックと称されることがある。
【0084】
ビジュアルサーボの構成は、ワークの実画像に基づく画像情報をフィードバックして加工動作を制御する制御ループを有するものであればよい。本実施形態のビジュアルサーボ動作は、修正制御データをリアルタイムで生成する生成動作と、修正制御データに基づきリアルタイムで加工動作を制御する制御動作と、を含む。
【0085】
生成動作では、ワーク8の実画像から画像処理等によって、ワーク8の基準またはワーク8の特徴を抽出して、予め作成されたロボット制御コード(ロボットGコード)に基づく加工軌跡とのずれ量を演算により求め、このずれ量を修正制御データに変換する。
【0086】
加工動作では、生成された修正制御データに基づき、第1移動機構10または多軸ステージ16を駆動してレーザヘッド18の移動を制御する。多軸ステージ16は、ロボットよりも慣性が小さく応答速度が速いので、多軸ステージ16で修正制御することにより、制御ループのゲインを高く設定して、より緻密な制御をすることが可能になる。特に、本実施形態の多軸ステージ16は、カウンタマス手段16mを有しているので、レーザヘッド18の制御の精度を向上させることができる。
【0087】
ビジュアルサーボ機能を有することにより、本実施形態は、視覚による認識とロボットの制御を同時に行うので、変化する環境に対応した加工作業を行うことができる。
【0088】
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の加工システム100は、ワーク8を加工する加工ツールを移動させるための第1移動機構10と、ワーク8を把持し、第1移動機構10の動作に連動してワーク8の姿勢を変化させる把持機構20と、把持機構20にワーク8を把持させる第2移動機構12と、把持機構20と、第1移動機構10と、第2移動機構12と、を共通に固定するための共通ベース24と、を備える。
【0089】
この態様によると、把持機構20、第1移動機構10および第2移動機構12が共通ベース24に固定されるため、これらの装置の相対的な位置や傾斜の差を小さくすることができる。このため、加工システム100を設置する際の各装置の相対的な位置や傾きを調整する手間を軽減することができる。また、床面が変化したときの各装置の相対的な位置や傾きの変化を小さくすることができる。
【0090】
共通ベース24は、第1移動機構10と第2移動機構12とを、把持機構20を挟んで配置するように構成されてもよい。この場合、第1移動機構10と第2移動機構12とが同じ側に配置される場合と比べて、これらの腕が干渉する領域を小さくすることができる。このため、各ロボットの動作の自由度を高めることができる。
【0091】
ワーク8を搬入する搬入機構40と、ワーク8を搬出する搬出機構42と、を備え、搬入機構40と搬出機構42とは、平面視において、第2移動機構12から放射状に配置されてもよい。この場合、第2移動機構12の作業距離を短くして、第2移動機構12の作業時間を短くすることができる。
【0092】
第1移動機構10、第2移動機構12および把持機構20を取り囲む周壁56を有し、搬入機構40の搬入口と搬出機構42の搬出口とは、周壁56の外側に設けられてもよい。この場合、ロボットの旋回範囲および、把持機構20近傍での加工による有害ガスの発生領域を周壁によって囲むことができる。このため、作業員の安全性を高めることができる。
【0093】
把持機構20の下方においてワーク8の加工屑8yを回収し、当該加工屑8yを搬出する加工屑搬出機構44を備えてもよい。この場合、加工屑8yを把持機構20の下方で回収するため、加工屑8yの周囲への飛散を抑制することができる。
【0094】
ワーク8の周囲の空気を吸入する吸入口52jを有する吸引機構52を備え、加工ツールでワーク8を加工するとき、第2移動機構12は、吸入口52jをワーク8に接近させるようにしてもよい。この場合、ワーク8を加工するとき待機している第2移動機構12を利用するので、吸入口52jを移動させる別の設備を設ける場合と比べて設備の大型化を抑制することができる。
【0095】
ワーク8を撮像するカメラ38を備え、加工ツールでワーク8を加工するとき、第2移動機構12は、カメラ38をワーク8に接近させるようにしてもよい。この場合、ワーク8を加工するとき待機している第2移動機構12を利用するので、カメラ38を移動させる別の設備を設ける場合と比べて設備の大型化を抑制することができる。
【0096】
相互に直交する2軸または3軸に沿って加工ツールを移動させるためのアクチュエータをさらに備え、アクチュエータの動作を制御するための補正制御コードを記憶し、第1移動機構10が加工ツールを移動させるとき、補正制御コードに基づいてアクチュエータを制御するようにしてもよい。この場合、アクチュエータにより加工ツールの加工軌跡をより柔軟に制御することができる。
【0097】
加工ツールは、レーザ光を出力するレーザヘッド18を含んでもよい。この場合、レーザ光を用いた加工をすることができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。この実施の形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。この実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。
【0099】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0100】
[変形例]
実施の形態の説明では、吸入口52jが固定的に支持される例を示したが、本発明はこれに限定されない。吸入口52jは可動的に支持されてもよい。例えば、吸入効率を向上するため、ワーク8を加工するときには吸入口52jをワーク8に接近させ、それ以外のときは吸入口52jをワーク8から遠ざけるようにしてもよい。特に、加工ツールでワーク8を加工するとき、第2移動機構12は吸入口52jをワーク8に接近させるようにしてもよい。非加工時には第2移動機構12は吸入口52jをワーク8から遠ざけるようにしてもよい。接近させることにより、効率的にダストを吸入することができる。
【0101】
実施の形態の説明では、ワーク8を撮像するカメラ38が第1移動機構10に固定的に支持される例を示したが、本発明はこれに限定されない。カメラ38は可動的に支持されてもよい。例えば、ワーク8を鮮明に撮像するため、ワーク8を加工するときにはカメラ38をワーク8に接近させ、それ以外のときはカメラ38をワーク8から遠ざけるようにしてもよい。特に、加工ツールでワーク8を加工するとき、第2移動機構12はカメラ38をワーク8に接近させるようにしてもよい。非加工時には第2移動機構12はカメラ38をワーク8から遠ざけるようにしてもよい。接近させることにより、鮮明にワーク8を撮像することができる。
【0102】
実施の形態の説明では、第1移動機構10が多関節ロボットである例を示したが、本発明はこれに限定されない。第1移動機構10は、多関節ロボットに代えてガントリー型やカンチレバー型などの直交座標型ロボットであってもよい。
【0103】
実施の形態の説明では、周壁56が2つのロボットと把持機構20とを四方から囲む例を示したが、本発明はこれに限定されない。周壁56が四方を囲むことは必須ではなく、周壁56は、三方を囲むものであってもよいし、二方を囲むものであってもよい。
【0104】
実施の形態の説明では、制御ユニット30がそれぞれの構成要素を制御する例を示したが、本発明はこれに限定されない。制御ユニット30の機能の一部が別のユニットとして設けられてもよい。制御ユニット30が一体に構成されることは必須ではなく、幾つかに分割されて、論理的に連携するように構成されてもよい。
【0105】
上述の各変形例は、実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0106】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0107】
8・・ワーク、 8b・・第1ワーク、 8c・・第2ワーク、 10・・第1移動機構、 12・・第2移動機構、 16・・多軸ステージ、 18・・レーザヘッド、 20・・把持機構、 20a・・第1把持装置、 20b・・第2把持装置、 22・・架台、 24・・共通ベース、 28・・操作盤、 30・・制御ユニット、 40・・搬入機構、 42・・搬出機構、 44・・加工屑搬出機構、 48・・レーザ発振機、 50・・冷却機構、 52・・吸引機構、 56・・周壁、 100・・加工システム。