(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240122BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240122BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20240122BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20240122BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240122BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240122BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240122BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20240122BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240122BHJP
【FI】
G09F9/30 309
G09F9/00 338
G09F9/00 348
G09F9/30 330
G09F9/30 365
H05B33/04
H05B33/06
H05B33/10
H05B33/14 A
H05K1/14 C
H05K3/36 A
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2018237305
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】趙 動 旭
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118692(JP,A)
【文献】特開2006-235333(JP,A)
【文献】特開2003-330005(JP,A)
【文献】特開2006-323373(JP,A)
【文献】特表2015-506050(JP,A)
【文献】特開2015-033764(JP,A)
【文献】特開平11-054780(JP,A)
【文献】特開2017-138541(JP,A)
【文献】特開平10-177178(JP,A)
【文献】特開2018-177634(JP,A)
【文献】特開2002-367771(JP,A)
【文献】特開2005-338589(JP,A)
【文献】特開2010-237405(JP,A)
【文献】特開2010-244708(JP,A)
【文献】国際公開第2003/003108(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0079901(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0013722(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042707(US,A1)
【文献】特開2017-050071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0112212(US,A1)
【文献】特開2010-177155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133-1/1334
1/1339-1/135
G09F 9/00-9/46
H01J11/00-17/64
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H05K 1/14
3/36
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板の間に設けられた表示層および配線層と、
前記配線層の端面と接続され、前記第1および第2の基板の端面の一部を覆う接合パッドと、
前記接合パッドを介して前記配線層の端面と接続されたフレキシブル回路基板と、
前記接合パッドを覆う封止材と、
前記封止材の表面に封止膜と、を有し、
前記封止膜は、無機ナノシートと、有機樹脂層とをナノメートル単位で積層した複合膜であり、
前記複合膜の積層方向は、前記封止膜の面方向と垂直であ
り、
前記表示層の端面から前記第1および第2基板の端面までの領域にシール材が配置され、
前記封止材は、隣接する前記接合パッドの間に配置され、隣接する前記接合パッド、前記第1および第2基板の端面、前記フレキシブル回路基板、および前記シール材に接触し、
前記封止材および前記シール材のそれぞれは吸湿機能を有するゲッター材を含み、
前記封止膜は、前記第1および第2の基板の前記端面に鉛直な断面視においてU字状をなすとともに、前記封止膜の全体を覆う、ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示層が有機発光層である請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記封止材が、さらに前記配線層の端面を覆う請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記無機ナノシートは、層状無機化合物のへき開物である請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記層状無機化合物はフッ素化スメクタイトおよびフッ素化雲母からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記封止膜はさらにカーボンおよび赤外線吸収発熱色素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記無機ナノシートの面方向は前記封止膜の面方向と略平行である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記封止材および前記封止膜のそれぞれは、前記第1および第2の基板の端面に接触している、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に設けられた表示層および配線層と、前記配線層の端面と接続し、前記第1および第2の基板の端面の一部を覆う接合パッドと、前記接合パッドを介して前記配線層の端面と接続するフレキシブル回路基板と、を有する表示装置の端面に対し、前記接合パッドを封止材で覆う工程と、
前記封止材の表面に、封止膜を設ける工程と、を有し、
前記封止膜は、無機ナノシートと、有機樹脂層とをナノメートル単位で積層した複合膜であり、
前記複合膜の積層方向は、前記封止膜の面方向と垂直であ
り、
前記表示層の端面から前記第1および第2基板の端面までの領域にシール材が配置され、
前記封止材は、隣接する前記接合パッドの間に配置され、隣接する前記接合パッド、前記第1および第2基板の端面、前記フレキシブル回路基板、および前記シール材に接触し、
前記封止材および前記シール材のそれぞれは吸湿機能を有するゲッター材を含み、
前記封止膜は、前記第1および第2の基板の前記端面に鉛直な断面視においてU字状をなすとともに、前記封止膜の全体を覆う、ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記表示層が有機発光層である請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記接合パッドを前記封止材で覆う工程が、前記配線層の端面を覆うことを含む請求項9または10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記無機ナノシートが、層状無機化合物を分散液中でへき開することにより調製されたものである請求項9~11のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記層状無機化合物はフッ素化スメクタイトおよびフッ素化雲母からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項12に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記封止膜が、カーボンおよび赤外線吸収発熱色素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する封止膜形成用塗工液を硬化して得られたものである請求項9~13のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記封止膜が、前記封止膜形成用塗工液を赤外線レーザーの照射により仮硬化した後、さらに加熱によって本硬化して得られたものである請求項14に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記無機ナノシートの面方向は前記封止膜の面方向と略平行である、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記封止材および前記封止膜のそれぞれは、前記第1および第2の基板の端面に接触している、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、表示装置は、移動通信端末機、電子手帳、電子書籍、PMP(Portable Multimedia Player)、ナビゲーション、UMPC(Ultra Mobile PC)、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC(Personal Computer)、およびウォッチフォン(watch phone)などの携帯用電子機器だけでなく、テレビ、ノートパソコン、およびモニタなどの様々な製品の表示画面として広く使用されている。
【0003】
一般的な表示装置では、基板の非表示部に設けられたパッド部において、基板表面に形成された配線の端部と、パネル駆動接続電極とが接合パッドを介して接続されている。近年、表示画像の高精細化に伴う配線の複雑化に伴い、基板上の配線の端部と、パネル駆動接続電極とを接続する接合パッド間のピッチがより狭くなってきている。
【0004】
表示装置の非表示部における電気的接続の構成においては、通常接合パッド間の絶縁不良を抑制するために、接合パッドを覆うようにして封止材が設けられる。例えば、特許文献1には、基板上の端子電極と接続電極との接続部を封止樹脂層により被覆した構成が開示されている。特許文献1における封止樹脂層は、白金族を担持したカーボンナノチューブを含む光硬化型樹脂により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された封止材を用いても、接合パッド間のピッチの狭幅化に伴う絶縁不良を抑制するのには十分とは言えなかった。そのため、非表示部における電気的接続において、より効果的に接合パッド間の絶縁不良を抑制した構成を有する表示装置が求められている。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、非表示部での電気的接続における絶縁不良を効果的に抑制した表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられた表示層および配線層と、前記配線層の端面と接続された接合パッドと、前記接合パッドを介して前記配線層の端面と接続されたフレキシブル回路基板と、前記接合パッドを覆う封止材と、前記封止材の表面に封止膜と、を有し、前記封止膜は、無機ナノシートと、有機樹脂層とをナノメートル単位で積層した複合膜であることを特徴とする表示装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられた表示層および配線層と、前記配線層の端面と接続された接合パッドと、前記接合パッドを介して前記配線層の端面と接続されたフレキシブル回路基板と、を有する表示装置の端面に対し、前記接合パッドを封止材で覆う工程と、前記封止材の表面に、封止膜を設ける工程と、を有し、前記封止膜は、無機ナノシートと、有機樹脂層とをナノメートル単位で積層した複合膜であることを特徴とする表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非表示部での電気的接続における絶縁不良を効果的に抑制した表示装置およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の端面に設けられた接合パッドの配置を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6(A)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図6(B)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図6(C)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図6(D)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図6(E)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図6(F)】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図7】実施例に係る封止膜について水蒸気透過率を測定した結果を示す図である。
【
図8】実施例に係る封止膜について水蒸気透過率を測定した結果を示す図である。
【
図10】実施例に係る封止膜について水蒸気透過率を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示装置の好適な例を添付した図を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る表示装置を示す斜視図である。
図2および
図3は、本実施形態に係る表示装置の端部を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態において、各図面は説明のための模式図であり、寸法通りではない。特に、反復される多数の構成要素は、図示の明瞭化のためにその数量を大幅に減少して図示する。また、以降の説明において、表示装置の矩形の表示面の隣接する2辺の方向をそれぞれX方向およびY方向といい、表示面に垂直な方向、すなわち、X-Y平面に垂直な方向をZ方向という。本実施形態において、「上」または「下」という表現は、現実の使用における位置関係を限定するものではない。
【0014】
図1に示す表示装置1は液晶ディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの平面型表示装置である。表示装置1が液晶ディスプレイから構成される場合、表示装置1は、基板、画素TFT(Thin Film Transisotr)、液晶層、偏光板、カラーフィルタ、バックライトなどを備える。画素TFTはアレイ状に配列され、ゲートライン、データラインに接続される。画素TFTにはストレージキャパシタ、液晶キャパシタが接続されている。液晶キャパシタはデータラインから供給された信号電圧Vと共通電圧との差電圧を保持するとともに、液晶を駆動して光透過率を制御する。ストレージキャパシタは液晶キャパシタに保持された電圧を安定に保持させる。液晶層は、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モードなどにより駆動され得る。
【0015】
また、表示装置1が有機ELから構成される場合、表示装置1は、基板と、基板上に形成されたバリア層である無機膜と、無機膜上に形成されたOLED層とを備える。基板は典型的にはガラス基板であるが、高分子材料、例えばポリイミドなどの柔軟性を有するフィルム基板であってもよい。無機膜は、無機材料、例えば窒化ケイ素から形成される。OLED層は陽極、陰極、発光層などの層を有しており、アレイ状に配列された複数のOLED素子を有する。表示装置1は、OLED層で発生した光を基板側に向けて放出するボトムエミッションタイプ、あるいは基板とは逆方向に放出するトップエミッションタイプであってもよい。
【0016】
表示装置1は上述の構成に限定されず、様々な構成をとり得る。例えば、表示装置1は折り曲げ可能なフレキシブルディスプレイであってもよい。この場合、表示装置1を構成する基板にプラスティックフィルムなど柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置1は、第1の基板11と、第2の基板12と、封止膜13と、フレキシブル回路基板14と、駆動回路基板15とを有する。
【0018】
第1の基板11および第2の基板12はいずれも矩形であり、それぞれ、例えばガラス基板や樹脂基板であってよい。第1の基板11は表示装置1の表示面を構成する。また、第1の基板11と対向する第2の基板12は、第1の基板11と第2の基板との間に設けられる後述の配線層等を支持する部材である。
【0019】
フレキシブル回路基板14は帯状の柔軟な回路基板である。フレキシブル回路基板14の一端は表示装置1の端面に接着されており、フレキシブル回路基板14の表示装置1との接着面は、第1の基板11の端面および第2の基板12の端面と並行である。フレキシブル回路基板14は、後述の配線層の端面と接続し、表示装置1に表示画像(映像)を形成するための信号を配線層に伝達する。
【0020】
駆動回路基板15は矩形の回路基板であり、フレキシブル回路基板14の一端と接続している。駆動回路基板15が接続するフレキシブル回路基板14の端部は、表示装置1と接着しているフレキシブル回路基板14の端部と反対の側の端部である。駆動回路基板15は、表示装置1に表示画像(映像)を形成するための信号をフレキシブル回路基板14に伝達する。
【0021】
封止膜13は、無機ナノシートと、有機樹脂層とがナノメートル単位で積層された複合膜である。封止膜13の厚みは、100nm以上100μm以下であることが好ましい。また、封止膜13中の無機ナノシートの含有率は30質量%以上であることが好ましい。
無機ナノシートは、層状無機化合物のへき開物であってよい。無機ナノシートは、層状無機化合物が単位層(すなわち1層)~数十層(特に10層)までへき開されたものであることが好ましく、できる限り単位層に近くなるようにへき開されたものであることがより好ましい。ここで、層状無機化合物は、例えばスメクタイト族粘土および雲母属粘土に代表される粘土鉱物等であり、具体的には、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよびオクトシリケートが挙げられる。特に、透明性が高く、合成が容易であることから、層状無機化合物はフッ素化スメクタイトおよびフッ素化雲母からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。無機ナノシートのアスペクト比は、300:1以上であることが好ましい。
有機樹脂層の材料としては、通常封止用に用いられる樹脂を用いることができる。
封止膜13はさらにカーボンおよび赤外線吸収発熱色素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有してもよい。
【0022】
封止膜13において、無機ナノシートは、封止膜13の内部で分散し、かつ、無機ナノシートの面方向は封止膜13の面方向と略平行となるように設けられている。酸素および水分は、無機ナノシートにより封止膜13の面方向と直交する方向への進路を妨害されるため、封止膜13の内部において最短の経路を取ることができない。そのため、周囲環境からの酸素および水分は、最短経路から大きく逸れた複雑で非常に長い経路を辿らなければ封止材22まで到達できない。すなわち、封止膜13は、無機ナノシートと有機樹脂層がナノメートル単位で積層されることで形成されるため、高度な遮蔽性を有する。
【0023】
封止膜13は、第1の基板11の端面と第2の基板12の端面との間を覆う部分の最外層として設けられる。封止膜13は、上で述べたように高度な遮蔽性を有し、表示装置1の端面における電気的接続部分に周囲環境から水分が浸入することを効果的に抑制する。
【0024】
図2は表示装置1のY-Z平面に平行な断面の一部を拡大して示す図である。
図2に示すように、表示装置1は、さらに配線層16と、表示層としての有機発光層18と、シーリング材19と、接合パッド20と、接続電極21と、封止材22とを有する。
【0025】
配線層16は、第1の基板11と第2の基板12との間に設けられており、配線層16の端面は、第1の基板11の端面および第2の基板12の端面と同じ位置で揃えられている。配線層16は、例えば、アルミ(Al)、銅(Cu)等の低抵抗の導電性材料の単体による単層構造により形成することができる。また、配線層16は、アルミ(Al)、銅(Cu)等の低抵抗の導電性材料の単体と、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の材料の単体との積層構造により形成することもできる。
配線層16は不図示の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)と接続し、駆動回路基板15からの信号を薄膜トランジスタに伝達して有機発光層18を駆動し、表示装置1における表示画像(映像)を形成する。
【0026】
有機発光層18は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を利用した赤色(R)画素、緑色(G)画素、青色(B)画素および白色(W)画素を含む複数の画素を有する。表示層としての有機発光層18は、配線層16と第1の基板11との間に設けられ、有機発光層18の端面は第1の基板11の端面および第2の基板12の端面よりも内側に位置している。有機発光層18は、配線層16からの信号により表示装置1における表示画像(映像)を形成するための光を発する。
なお、本発明に係る表示装置が有する表示層は、第1の基板11と第2の基板12との間に設けられていればよく、上記の本実施形態における表示層としての有機発光層18の位置に限られない。
【0027】
シーリング材19は、通常封止用に用いられる樹脂を用いることができ、吸湿機能を有するゲッター材を含んでいてもよい。シーリング材19は、有機発光層18の端面から第1の基板11および第2の基板12の端面までの領域に設けられている。これによりシーリング材19は、表示装置1の端面から有機発光層18に水分が浸入することを防ぐ。
【0028】
接合パッド20は、銀(Ag)を含むペーストを用いて形成される。接合パッド20は、配線層16の端面と接続し、第1の基板11の端面のシーリング材19と接する側の辺を含む一部の領域から、第2の基板12の配線層16と接する側の辺を含む一部の領域までを覆って形成されている。接合パッド20は、配線層16と接続している限り、
図2のZ軸方向の長さに制限は無い。
接合パッド20は、先に述べたフレキシブル回路基板14と配線層16の端面との接続を介しており、フレキシブル回路基板14から配線層16への、表示装置1に表示画像(映像)を形成するための信号の伝達を中継する。
【0029】
なお、
図2では配線層16の端面が、第1の基板11の端面および第2の基板12の端面と同じ位置となるように設けられて接合パッド20と接続しているが、配線層16の端面と接合パッド20の接続の形態はこれに限られない。例えば、配線層16の端面は第1の基板11の端面および第2の基板12の端面よりも内側に位置するように配置され、後述の接合パッド20との接続を良好にするために、配線層16の端面と接合パッド20との間に接続補助用パッドが設けられても良い。
【0030】
接続電極21は、フレキシブル回路基板14が表示装置1の端面に接着する側の面の上に設けられた電極であり、フレキシブル回路基板14および接合パッド20と接続している。これにより、接続電極21は、フレキシブル回路基板14から接合パッド20への表示装置1に表示画像(映像)を形成するための信号の伝達を中継する。
【0031】
封止材22は、通常封止用に用いられる樹脂で構成されており、さらに吸湿機能を有するゲッター材を含んでいてもよい。封止材22は、表示装置1の端面において、接合パッド20、接続電極21およびフレキシブル回路基板14の一部を覆って形成されている。封止材22によって覆われているフレキシブル回路基板14の一部は、接続電極21が設けられている部分を含んでいる。封止材22を上記のように設けることで、接合パッド20、接続電極21およびフレキシブル回路基板14における電気的な接続を、周囲環境の水分から保護する。
【0032】
封止材22の表面には、さらに封止膜13が設けられている。すなわち、本実施形態に係る表示装置1は、封止材22だけでなく、さらに封止材22の表面の少なくとも一部を覆う、高度な遮蔽性を有する封止膜13を有することで、周囲環境からの水分の浸入を効果的に抑制できる。これにより、本実施形態に係る表示装置1は、接合パッド間の絶縁不良をより効果的に抑制した構成となっている。
【0033】
図3は表示装置1のX-Y平面に平行な断面の一部を拡大して示す図である。
図3で示す断面のZ軸方向の位置は、配線層16を含む位置である。
図3に示すように、表示装置1はまた絶縁層17を有する。
絶縁層17は、通常電極間を絶縁するために用いられる樹脂で構成される。絶縁層17は複数設けられた配線層16の間の領域を覆って設けられている。
【0034】
図3に示すように、表示装置1では複数の配線層16が互いに絶縁層17を介して独立に設けられている。また、接合パッド20は、複数の配線層16にそれぞれ対応するように複数設けられている。複数の接合パッド20は互いに接しておらず、各々独立して設けられる。接合パッド20は対応する配線層16と電気的に接続し、互いに独立して設けられている限り、形状および大きさに特に制限は無い。例えば、
図3では接合パッド20のX方向の幅が配線層16よりも大きい例を示しているが、配線層16のX方向の幅と同じか、それよりも小さくても良い。
【0035】
接合パッド20のX方向の幅が、配線層16のX方向の幅よりも小さいとき、封止材22は配線層16の接合パッド20で覆われていない端面を覆うことが好ましい。本実施形態に係る表示装置1においては、封止材22は表示装置1の端面のX軸方向に沿って、複数の接合パッド20、複数の接続電極21およびフレキシブル回路基板14を連続的に覆っている。
【0036】
図4は、表示装置1の端面に設けられた接合パッド20の配置を示す側面図である。先にも述べたように、接合パッド20は、複数の配線層16に対応するように複数設けられるが、隣り合う接合パッド20は互いに絶縁されている。しかし周囲環境からの水分により接合パッド20を形成するペーストがマイグレーションを起こし、絶縁不良を生じることがあるため、封止材22は特に周囲環境の水分から接合パッド20を保護するために設けられる。封止材22としては、通常封止用に用いられる樹脂を用いることができ、また、封止材22は吸湿機能を有するゲッター材を含んでいてもよい。
【0037】
続いて、本実施形態に係る表示装置1の製造方法について
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る表示装置1の製造方法を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態に係る表示装置1の製造方法を説明する図である。
【0038】
まず、
図6(A)に示すように、第1の基板11、配線層16、絶縁層17、有機発光層18および第2の基板12を積層して形成された表示装置1の前駆体に対し、有機発光層18の端面を覆うようにシーリング材19を塗工する(ステップS1)。
【0039】
次に、
図6(B)に示すように、接合パッド20を、複数の配線層16の端面それぞれと接続するように形成する(ステップS2)。
【0040】
次に、
図6(C)に示すように、フレキシブル回路基板14を、フレキシブル回路基板14の上に設けられた接続電極21と接合パッド20が接続するように、表示装置1の前駆体の端面に接着する(ステップS3)。すなわち、フレキシブル回路基板14は、接合パッド20を介して配線層の端面と接続される。
このとき、フレキシブル回路基板14は、例えば異方性導電膜等を用いて接着されても良い。
また、駆動回路基板15とフレキシブル回路基板14とは、フレキシブル回路基板14を表示装置1の前駆体に接着する前に、予め接続されていても良いし、ステップS3よりも後段で接続されても良い。
【0041】
次に、
図6(D)および(E)に示すように、封止材22を表示装置1の前駆体の端面に塗工し、接合パッド20を覆う(ステップS4)。
封止材22の塗工は、次のように段階的に行っても良い。まず
図6(D)に示すようにフレキシブル回路基板14の内側の面(表示装置1の前駆体と対向する側の面)と、表示装置1の前駆体の端面との間に塗工する。その後、
図6(E)に示すようにフレキシブル回路基板14の外側の面(表示装置1の前駆体と対抗する側の面と反対側の面)を覆うように塗工する。
【0042】
次に、封止材22に対して紫外線を所定時間照射することにより、封止材22を仮硬化する(ステップS5)
【0043】
次に、
図6(F)に示すように、封止材22の表面に封止膜形成用塗工液23を塗工する。(ステップS6)
【0044】
封止膜形成用塗工液23は、無機ナノシートおよび有機樹脂を溶媒に分散させることで調整することができる。無機ナノシートは、層状無機化合物を分散液中で、例えば公知の微分散装置を用いて単位層(すなわち1層)~数十層(特に10層)までへき開することにより調製することができる。
【0045】
封止膜形成用塗工液23はさらに、カーボンおよび赤外線吸収発熱色素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有してもよい。封止膜形成用塗工液23がカーボンを含有することで、形成される封止膜に遮光性を付与することができる。また、カーボンおよび赤外線吸収発熱色素は、赤外線の照射により発熱するため、後段における封止膜形成用塗工液23の本硬化の前に、赤外線レーザーを照射することで封止膜形成用塗工液23を仮硬化することが可能となり、操作性が向上する。
【0046】
次に、封止材22および封止膜形成用塗工液23を加熱により本硬化させ、封止材22の表面に封止膜13を設ける(ステップS7)。これにより、上述した第1の実施形態に係る表示装置1の製造工程が完了する。なお、本硬化においては、さらに紫外線を照射してもよい。
【0047】
<実施例>
[実施例1]
無機ナノシートとしてフッ素化スメクタイトであるフルオロヘクトライト(FHT)、有機樹脂としてエポキシ樹脂(商品名:リカレジンBPO-20E、新日本理化株式会社製)を用い、これらをDMF(N,N-dimethylformamide)に分散して封止膜形成用塗工液を調製した。
なお、用いたFHTのアスペクト比は1000:1である。
FHTは、分散材などを含めた固形分に対して70質量%となるように用いた。
上記で得られた封止膜形成用塗工液1gを、ポリエチレンナフタレートフィルム(PEN Film、商品名:テオネックス Q65HA、帝人フィルムソリューション社製)上に塗工した。
続いて得られた塗膜をオーブンにより50℃から180℃まで、1℃/minで昇温した後、さらに180℃で2時間保つことで加熱し、硬化して実施例1に係る封止膜を得た。
【0048】
[実施例2および3]
実施例1における封止膜の形成を、実施例2では3回、実施例3では5回繰り返し、それぞれ3層からなる実施例2に係る封止膜および5層からなる実施例3に係る封止膜を得た。
【0049】
[比較例1]
実施例1で用いたのと同じPEN Filmをそれのみで用い、比較例1とした。
【0050】
(評価)
上記で得られた実施例1~3に係る封止膜および比較例1のPEN Filmについて、水蒸気透過率(WVTR)を測定した。
WVTRの測定には水蒸気透過度測定装置(商品名:Aquatran3、Mocon社製)を用い、40℃、90%RH、測定面積5cm
2の条件下でWVTRを経時的に測定した。
得られた結果を
図7に示す。
【0051】
図7より、無機ナノシートを有する封止膜が優れた遮蔽性を有し、周囲環境からの水分の浸入による接合パッド間の絶縁不良を効果的に抑制できることがわかる。また、封止膜は、多層構成とすることで、遮蔽性が高くなることがわかる。
【0052】
[実施例4~6]
実施例1における封止膜形成用塗工液の調製において、FHTを、分散材などを含めた固形分に対して57質量%となるように用いた。それ以外は実施例1と同様にして、封止膜形成用塗工液を調整した。
調整後の封止膜形成用塗工液について、実施例4では0.025g、実施例5では0.05g、実施例6では0.1gをPEN Film上に塗工した。
続いて、得られた塗膜を実施例1と同様にして加熱、硬化し、実施例4~6に係る封止膜を得た。
【0053】
(評価)
実施例4~6に係る封止膜および比較例1のPEN Filmについて、上で述べたのと同様にしてWVTRを測定した。
得られた結果を
図8に示す。
【0054】
図8より、無機ナノシートを有する封止膜が優れた遮蔽性を有し、周囲環境からの水分の浸入による接合パッド間の絶縁不良を効果的に抑制できることがわかる。また、封止膜形成用塗工液の塗布量を多くすることで、遮蔽性を向上できることがわかる。
図9(A)、(B)および(C)は、それぞれ実施例4、5および6に係る封止膜を示す模式図である。
図9(A)および(B)に示すように、ベース24であるPEN film上に形成された封止膜が厚くなることで有機樹脂13b中の無機ナノシート13aの層が厚くなり、遮蔽性が高まると考えられる。しかし、
図9(C)に示すように、封止膜の厚みの程度が大きすぎると、無機ナノシートの配向性が低下し、遮蔽性を向上する効果が抑えられると考えられた。
【0055】
[実施例7および8]
実施例1における封止膜形成用塗工液の調製において、有機樹脂を用いなかった。また、実施例7においては、FHTの代わりにベントナイトの主成分鉱物であるモンモリロナイト(MMT)を、分散材などを含めた固形分に対して70質量%となるように用いた。また、実施例8においては、FHTを、分散材などを含めた固形分に対して70質量%となるように用いた。
なお、用いたMMTのアスペクト比は500:1である。
調整後の封止膜形成用塗工液について、実施例7、8では1gをPEN Film上に塗工した。
続いて、得られた塗膜を実施例1と同様にして加熱、硬化し、実施例7および8に係る封止膜を得た。
【0056】
(評価)
実施例7、8に係る封止膜および比較例1のPEN Filmについて、上で述べたのと同様にしてWVTRを測定した。
得られた結果を
図10に示す。
【0057】
図10より、無機ナノシートであるMMTおよびFHTを有する封止膜が優れた遮蔽性を有し、周囲環境からの水分の浸入による接合パッド間の絶縁不良を効果的に抑制できることがわかる。また、無機ナノシートとしてMMTを用いた実施例7では、WVTR測定値で1.4g/m
2/dayの遮蔽性能を示したのに対し、FHTを用いた実施例8では、WVTR測定値で0.07g/m
2/dayの遮蔽性能が得られた。このことから、MMTに比べてアスペクト比がより高い無機ナノシートであるFHTを用いたとき、より高い遮蔽性を有する封止膜を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0058】
1 表示装置
11 第1の基板
12 第2の基板
13 封止膜
13a 無機ナノシート
13b 有機樹脂
14 フレキシブル回路基板
15 駆動回路基板
16 配線層
17 絶縁層
18 有機発光層
19 シーリング材
20 接合パッド
21 接続電極
22 封止材
23 封止膜形成用塗工液
24 ベース