(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】制御弁及び建設機械用油圧システム
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20240122BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20240122BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F16K11/07 Z
F16K27/04
F15B11/00 H
(21)【出願番号】P 2019044604
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田島 豊三
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-3902(JP,A)
【文献】実開昭60-127103(JP,U)
【文献】特開2000-170707(JP,A)
【文献】特開平4-191577(JP,A)
【文献】特開昭56-101467(JP,A)
【文献】特開2017-172638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 27/00-27/12
F16K 3/00- 3/36
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、
前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能な弁体と、
前記弁体を挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部と
、
スプール孔が設けられたバルブボディと、
を備え
、
前記バイパス通路部は、前記弁体を挟んで前記上流側と前記下流側との間に、異なる2つの通路部を有し、
前記弁体は、前記スプール孔内に移動可能に設けられたスプールであり、
前記センター通路部は、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、
前記バイパス通路部は、
前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、
前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部とを有し、
前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、及び前記第4連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、
前記スプールは、
中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、
前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝とを有し、
2つの前記流路溝は、前記異なる2つの通路部である
制御弁。
【請求項2】
前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部及び前記タンク側センター通路部の少なくとも何れか一方と前記スプール孔とを連通する他のバイパス通路部を有する請求項
1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記他のバイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通する第5連通口を有する他のポンプ側バイパス通路部を有し、
前記スプールは、
中立状態で前記第4連通口に設けられた他のランドと、
前記他のランドにおける前記スプールの移動方向一端に設けられた他の流路溝とを有する
請求項
2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記バイパス通路部の流路断面積は、前記センター通路部の流路断面積よりも小さい請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の制御弁。
【請求項5】
前記バイパス通路部の途中に、前記バイパス通路部を流れる流体の流量を調整可能な他の弁体を備えた
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の制御弁。
【請求項6】
ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、
前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部に連通されるスプール孔が設けられたバルブボディと、
前記スプール孔内に移動可能に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能なスプールと、
前記スプールを挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部と
を備え、
前記センター通路部は、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、
前記バイパス通路部は、
前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、
前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部とを有し、
前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、及び前記第4連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、
前記スプールは、
中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、
前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝とを有する制御弁。
【請求項7】
ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、
前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部に連通されるスプール孔が設けられたバルブボディと、
前記スプール孔内に移動可能に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能なスプールと、
前記スプールを挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部と
を備え、
前記センター通路部は、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、
前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、
前記バイパス通路部は、
前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、
前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部と、
前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通する第5連通口を有する他のポンプ側バイパス通路部とを有し、
前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、前記第4連通口、及び前記第5連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、
前記スプールは、
中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、
中立状態で前記第4連通口に設けられた他のランドと、
前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝と、
前記他のランドにおける前記スプールの移動方向一端に設けられた他の流路溝とを有する
制御弁。
【請求項8】
請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の制御弁と、
前記制御弁に接続される前記ポンプと、
前記ポンプから前記制御弁を介して供給される圧油に基づいて駆動されるアクチュエータとを備えた
建設機械用油圧システム。
【請求項9】
前記センター通路部に連結された複数の前記制御弁を備え、
複数の前記制御弁のうち、少なくとも最も前記ポンプに近い最上流に位置する前記制御弁は、前記バイパス通路部を有する
請求項
8に記載の建設機械用油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁及び建設機械用油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベル等の建設機械は、バケットやブーム等を駆動させる建設機械用油圧システムを備えている。建設機械用油圧システムは、複数の制御弁を備えている。この種の制御弁は、バルブボディと、バルブボディ内に設けられたセンター通路、センター通路に連通されるスプール孔、及びスプール孔に連通されるシリンダ通路と、スプール孔内に移動可能に設けられたスプールとを備えている。センター通路は、一端がポンプから延びるポンプ通路に接続され、他端がタンクへと延びるタンク通路に接続されている。シリンダ通路は、バケットやブームを駆動させるアクチュエータに接続されている。スプールは、シリンダ孔の内周面と摺動する複数のランドを備えている。
【0003】
ランドは、センター通路やシリンダ通路を開閉させ、ポンプから圧送された圧油の流れを切り替える機能を有している。つまり、スプールを中立位置としたとき、センター通路が開放されてポンプから圧送された圧油がそのままタンクに流れる場合がある。また、スプールの移動に伴うランドの位置によって、ポンプから圧送された圧油がアクチュエータに供給される場合がある。アクチュエータに供給される圧油の流量は、スプールの位置によって制御される。
【0004】
ここで、ポンプから圧送された圧油は、制御弁を介してアクチュエータに供給されるので、制御弁を通過する際に圧力損失が生じる。この圧力損失は、アクチュエータの駆動効率に影響を及ぼす。このため、ポンプから圧送された圧油の圧力損失を低減させ、できる限りアクチュエータを効率よく駆動させる技術が提案されている。例えば、ポンプ通路とシリンダ通路との間にバイパス通路を設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建設機械用油圧システムによって複数のアクチュエータを駆動させる場合、オープンセンタ式の油圧回路を採用する場合がある。この種の油圧回路は、センター通路に複数の制御弁を連結している。そして、制御弁のスプールを中立状態としたときにセンター通路の下流側へと圧油が流れ、下流側の制御弁に圧油が供給される。
【0007】
ここで、センター通路を流れる圧油は制御弁を通過する際に圧力損失が生じてしまう。このため、センター通路の下流側に位置する制御弁に接続されているアクチュエータの駆動効率が低下してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる制御弁及び建設機械用油圧システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る制御弁は、ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能な弁体と、前記弁体を挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部と、スプール孔が設けられたバルブボディと、を備え、前記バイパス通路部は、前記弁体を挟んで前記上流側と前記下流側との間に、異なる2つの通路部を有し、前記弁体は、前記スプール孔内に移動可能に設けられたスプールであり、前記センター通路部は、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部とを有し、前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、及び前記第4連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、前記スプールは、中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝とを有し、2つの前記流路溝は、前記異なる2つの通路部である。
【0010】
このように構成することで、ポンプからタンクへと流れる流体の通路部として、センター通路部の他に、バイパス通路部の分を増加させることができる。このため、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる。
また、バイパス通路部を通る流体がさらに2つの通路部を通って流れることになるので、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を確実に低減できる。
さらに、バルブボディ内に簡素な構造でバイパス通路部を設けることができる。また、バイパス通路部上に、異なる2つの通路部を設けることができる。このため、制御弁を安価で小型化しつつ、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる。
【0011】
上記構成であって、前記バイパス通路部は、前記弁体を挟んで前記上流側と前記下流側との間に、異なる2つの通路部を有してもよい。
【0012】
このように構成することで、バイパス通路部を通る流体がさらに2つの通路部を通って流れることになるので、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を確実に低減できる。
【0013】
上記構成であって、スプール孔が設けられたバルブボディを備え、前記弁体は、前記スプール孔内に移動可能に設けられたスプールであり、前記センター通路部は、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部とを有し、前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、及び前記第4連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、前記スプールは、中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝とを有し、2つの前記流路溝は、前記異なる2つの通路部でもよい。
【0014】
このように構成することで、バルブボディ内に簡素な構造でバイパス通路部を設けることができる。また、バイパス通路部上に、異なる2つの通路部を設けることができる。このため、制御弁を安価で小型化しつつ、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる。
【0015】
上記構成であって、前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部及び前記タンク側センター通路部の少なくとも何れか一方と前記スプール孔とを連通する他のバイパス通路部を有してもよい。
【0016】
このように構成することで、さらにバイパス通路部が増大される。このため、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失をさらに低減できる。
【0017】
上記構成であって、前記他のバイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通する第5連通口を有する他のポンプ側バイパス通路部を有してもよい。前記スプールは、中立状態で前記第4連通口に設けられた他のランドと、前記他のランドにおける前記スプールの移動方向一端に設けられた他の流路溝とを有してもよい。
【0018】
このように構成することで、バルブボディ内に簡素な構造でさらにバイパス通路部を増大できる。このため、制御弁を安価で小型化しつつ、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失をさらに低減できる。
【0019】
上記構成であって、前記バイパス通路部の流路断面積は、前記センター通路部の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0020】
このように構成することで、バイパス通路部を設けるための占有スペースをできる限り省スペース化できる。このため、制御弁を小型化できる。
【0021】
上記構成であって、前記バイパス通路部の途中に、前記バイパス通路部を流れる流体の流量を調整可能な他の弁体を備えてもよい。
【0022】
このように構成することで、バイパス通路部を流れる流体の流量を制御できる。このため、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減しつつ、制御弁の制御を高精度に行うことができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る制御弁は、ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部に連通されるスプール孔が設けられたバルブボディと、前記スプール孔内に移動可能に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能なスプールと、前記スプールを挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部とを備え、前記センター通路部は、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部とを有し、前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、及び前記第4連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、前記スプールは、中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝とを有する。
【0024】
このように構成することで、ポンプからタンクへと流れる流体の通路部として、センター通路部の他に、バルブボディ内に簡素な構造でバイパス通路部を設けることができる。このため、制御弁を安価で小型化しつつ、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる。
【0025】
本発明の他の態様に係る制御弁は、ポンプとタンクとを連通するセンター通路部と、前記センター通路部の途中に設けられ、前記センター通路部に連通されるスプール孔が設けられたバルブボディと、前記スプール孔内に移動可能に設けられ、前記センター通路部を流れる流体の流量を調整可能なスプールと、前記スプールを挟んで前記センター通路部の上流側と下流側とを接続するバイパス通路部とを備え、前記センター通路部は、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記上流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第1連通口を有するポンプ側センター通路部と、前記バルブボディの前記スプール孔よりも前記下流側に設けられるとともに前記スプール孔に連通される第2連通口を有するタンク側センター通路部とを有し、前記バイパス通路部は、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第3連通口を有するポンプ側バイパス通路部と、前記タンク側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通される第4連通口を有するタンク側バイパス通路部と、前記ポンプ側センター通路部の途中から分岐されて前記スプール孔に連通する第5連通口を有する他のポンプ側バイパス通路部とを有し、前記第1連通口、前記第2連通口、前記第3連通口、前記第4連通口、及び前記第5連通口は、この順で前記スプールの移動方向に沿ってずれて配置されており、前記スプールは、中立状態で前記第2連通口、及び前記第3連通口に対応する位置に設けられたランドと、中立状態で前記第4連通口に設けられた他のランドと、前記ランドにおける前記スプールの移動方向両端に設けられた流路溝と、前記他のランドにおける前記スプールの移動方向一端に設けられた他の流路溝とを有する。
【0026】
このように構成することで、ポンプからタンクへと流れる流体の通路部として、センター通路部の他に、バルブボディ内に簡素な構造でバイパス通路部を設けることができる。このバイパス通路部に加えて、バルブボディ内に簡素な構造でさらにバイパス通路部を増大できる。このため、制御弁を安価で小型化しつつ、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を確実に低減できる。
【0029】
本発明の他の態様に係る建設機械用油圧システムは、上述の制御弁と、前記制御弁に接続される前記ポンプと、前記ポンプから前記制御弁を介して供給される圧油に基づいて駆動されるアクチュエータとを備えた。
【0030】
このように構成することで、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減でき、アクチュエータの駆動効率を向上できる。
【0031】
上記構成であって、前記センター通路部に連結された複数の前記制御弁を備えてもよい。複数の前記制御弁のうち、少なくとも最も前記ポンプに近い最上流に位置する前記制御弁は、前記バイパス通路部を有していてもよい。
【0032】
このように構成することで、各制御弁に供給される流体の圧力損失を効率よく低減できる。
【発明の効果】
【0033】
上述の制御弁及び建設機械用油圧システムは、ポンプからタンクへと流れる流体の圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態における建設機械用油圧システムの概略構成図。
【
図2】本発明の第1実施形態における油圧制御弁を模式的に表した断面図。
【
図4】本発明の第2実施形態における油圧制御弁を模式的に表した断面図。
【
図5】本発明の第3実施形態における油圧制御弁を模式的に表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、建設機械用油圧システム1の概略構成図である。
図1に示すように、建設機械用油圧システム1は、例えば油圧ショベル等の建設機械に搭載される。建設機械用油圧システム1は、複数の油圧アクチュエータ(請求項のアクチュエータに相当)2と、各油圧アクチュエータ2に所望の圧油を供給する第1油圧ポンプ(請求項のポンプに相当)3と、油圧アクチュエータ2と第1油圧ポンプ3との間に設けられる複数の油圧制御弁(請求項の制御弁に相当)4とを主構成としている。
【0037】
複数の油圧アクチュエータ2としては、油圧シリンダ2aや油圧モータ2bがある。油圧シリンダ2aは、例えばアーム駆動用、バケット駆動用、ブーム駆動用として用いられる。油圧モータ2bは、例えばキャブ旋回用、走行用として用いられる。なお、油圧アクチュエータ2としては、これらに限られるものではない。
第1油圧ポンプ3としては、例えばポジティブコントロール制御方式の可変容量型油圧ポンプが用いられる。
【0038】
油圧制御弁4は、各油圧アクチュエータ2への圧油の流量を調整する。複数の油圧制御弁4は、第1油圧ポンプ3と第1タンク(請求項のタンクに相当)5とを連通するセンター通路(タンデム通路)6、及びセンター通路6から分岐されたパラレル通路7を介して連結されている。パラレル通路7には、各油圧制御弁4に対応するようにチェック弁8が設けられている。チェック弁8は、各油圧制御弁4に供給された圧油の逆流を防止する。
以下、油圧制御弁4について詳しく説明する。なお、複数の油圧制御弁4は、同一構成であるので、以下の説明では、1つの油圧制御弁4についてのみ説明し、その他の油圧制御弁4についての説明を省略する。
【0039】
図2は、油圧制御弁4を模式的に表した断面図である。
図2に示すように、本実施形態の油圧制御弁4は、複数の油路を備えたバルブボディ9と、バルブボディ9内に配置されたスプール(請求項の弁体に相当)10と、スプール10を移動させるスプール作動機構部11とを備えている。
なお、センター通路6に複数の油圧制御弁4を連結する構成としては、1つのバルブボディ9に、複数のスプール10を連結する構成としてもよいし、1つのスプール10を備えたバルブボディ9を複数連結する構成としてもよい。以下では、1つのスプール10を備えたバルブボディ9について説明する。しかしながら、1つのバルブボディ9に、複数のスプール10を連結する構成であっても、以下の構成を採用することができる。
【0040】
バルブボディ9には、センター通路6と、センター通路6から分岐されたバイパス通路12と、第1シリンダポート13及び第2シリンダポート14と、第1圧油排出通路15及び第2圧油排出通路16と、これらセンター通路6、バイパス通路12、第1シリンダポート13、第2シリンダポート14、第1圧油排出通路15及び第2圧油排出通路16に連通されるスプール孔17とが設けられている。なお、
図2では、スプール孔17の中心軸をO1として一点鎖線で示している。
【0041】
センター通路6は、バルブボディ9におけるスプール孔17よりも第1油圧ポンプ3側に設けられたポンプ側センター通路18と、バルブボディ9におけるスプール孔17よりも第1タンク5側に設けられたタンク側センター通路19とを備えている。各センター通路18,19の流路断面積は、ほぼ同一である。
ポンプ側センター通路18は、スプール孔17に連通される第1連通口21を備えている。タンク側センター通路19は、スプール孔17に連通される第2連通口22を備えている。
【0042】
バイパス通路12は、ポンプ側センター通路18から分岐されたポンプ側バイパス通路23と、タンク側センター通路19から分岐されたタンク側バイパス通路24とを備えている。各バイパス通路23,24の流路断面積は、各センター通路18,19の流路断面積よりも小さい。
ポンプ側バイパス通路23は、スプール孔17に連通される第3連通口25を備えている。タンク側バイパス通路24は、スプール孔17に連通される第4連通口26を備えている。各連通口21,22,25,26は、この順でスプール孔17の中心軸O1に沿って第1方向(
図2における左方向)D1にずれて配置されている。
【0043】
第1シリンダポート13及び第2シリンダポート14は、センター通路6及びバイパス通路12よりも中心軸O1方向の両側に配置されている。第1シリンダポート13及び第2シリンダポート14には、油圧アクチュエータ2が接続される。
第1圧油排出通路15及び第2圧油排出通路16は、第1シリンダポート13及び第2シリンダポート14よりも中心軸O1方向の両側に配置されている。第1圧油排出通路15及び第2圧油排出通路16は、バルブボディ9及び油圧アクチュエータ2内を循環した圧油を第1タンク5に排出するためのものである。
【0044】
スプール孔17における第1シリンダポート13と第2シリンダポート14との間の領域は、圧油が通過する中間通路27となる。また、第1シリンダポート13と中間通路27との間には、第1油圧ポンプ3からの圧油が供給される第1供給ポート28が設けられている。第2シリンダポート14と中間通路27との間には、第1油圧ポンプからの圧油が供給される第2供給ポート29が設けられている。第1供給ポート28及び第2供給ポート29は、図示しないブリッジ状供給通路を介してセンター通路6に連通されている。
【0045】
バルブボディ9内に配置されたスプール10は、スプール孔17内に収納されている。スプール10は、スプール孔17の断面形状に対応するように円柱状に形成されている。スプール10の中心軸O2は、スプール孔17の中心軸O1と一致している。スプール10は、スプール孔17内を中心軸O1に沿って第1方向D1及び第1方向D1とは反対側の第2方向D2(
図2における右方向)に移動可能である。なお、以下の説明では、スプール10の径方向を、単に径方向と称して説明する。
【0046】
スプール10には、複数のランド31~36(第1中間ランド31、第2中間ランド32、第1ランド33、第2ランド34、第3ランド35及び第4ランド36)等が設けられている。各ランド31~36は、ポンプ側センター通路18、タンク側センター通路19、ポンプ側バイパス通路23、タンク側バイパス通路24、中間通路27、第1シリンダポート13、第2シリンダポート14、第1圧油排出通路15、及び第2圧油排出通路16を流れる圧油の流量及び方向を変更している。各ランド31~36の外径は、スプール孔17の内径よりも僅かに小さい。各ランド31~36は、スプール10が第1方向D1及び第2方向D2に移動したときに、スプール孔17内を摺動する。
【0047】
第1中間ランド31及び第2中間ランド32は、油圧アクチュエータ2が駆動していない無負荷状態(以下、「スプール10の中立状態」という)で、中間通路27内の中央に設けられている。より具体的には、スプール10の中立状態のとき、第1中間ランド31は、第2連通口22と径方向で対向する位置に設けられている。また、スプール10の中立状態のとき、第2中間ランド32は、第3連通口25と径方向で対向する位置に設けられている。
【0048】
各中間ランド31,32の中心軸O2方向両側には、3つの流路溝37,38,39(第1流路溝37、第2流路溝38、第3流路溝39)がスプール10の全周に渡って設けられている。
ここで、油圧制御弁4は、スプール10の中立状態で、中間通路27が開放されてポンプ側センター通路18とタンク側センター通路19とが連通されるとともに、ポンプ側バイパス通路23とタンク側バイパス通路24とが連通される、いわゆるオープンセンタ方式が採用されている(詳細は後で述べる)。
【0049】
第1ランド33は、各中間ランド31,32よりも第2方向D2側で、かつ第1供給ポート28に対応した位置に設けられている。スプール10の中立状態では、第1ランド33は、第1供給ポート28と第1シリンダポート13との間を閉塞している。
第2ランド34は、各中間ランド31,32よりも第1方向D1側で、かつ第2供給ポート29に対応した位置に設けられている。スプール10の中立状態では、第2ランド34は、第2供給ポート29と第2シリンダポート14との間を閉塞している。
【0050】
第3ランド35は、第1ランド33よりも第2方向D2側で、かつ第1圧油排出通路15に対応した位置に設けられている。スプール10の中立状態では、第3ランド35は、第1圧油排出通路15と第1シリンダポート13との間を閉塞している。
第4ランド36は、第2ランド34よりも第1方向D1側で、かつ第2圧油排出通路16に対応した位置に設けられている。スプール10の中立状態では、第4ランド36は、第2圧油排出通路16と第2シリンダポート14との間を閉塞している。
【0051】
第1ランド33、第2ランド34、第3ランド35、及び第4ランド36の外周面には、図示しない切欠き部が複数形成されている。この切欠き部は、圧油の通路となる。
このように構成されたスプール10は、スプール作動機構部11によって中心軸O1,O2に沿って移動する。
【0052】
スプール作動機構部11は、スプール10の第1方向D1側に設けられている。スプール作動機構部11は、パイロットスプールや圧力室(いずれも図示しない)を備えた作動機構部本体41と、作動機構部本体41に連結されている調節部42と、調節部42を介して作動機構部本体41に連結されている第2油圧ポンプ43とを備えている。
調節部42は、作動機構部本体41の圧力室の内圧を調節する。調節部42は、操作レバー44を備えている。操作レバー44の操作に基づいて、第2油圧ポンプ43から圧送される圧油の作動機構部本体41への供給が制御される。作動機構部本体41へ供給される圧油に基づいて、スプール10が中心軸O1,O2に沿って移動される。作動機構部本体41へ供給された圧油は、その後第2タンク45に還流される。
【0053】
次に、油圧制御弁4の圧油の流れについて説明する。
まず、
図2、
図3に基づいて、スプール10の中立状態について説明する。
図3は、
図2のA部拡大図である。
図2、
図3に示すように、スプール10の中立状態では、中間通路27が開放されてポンプ側センター通路18とタンク側センター通路19とが連通されるとともに、ポンプ側バイパス通路23とタンク側バイパス通路24とが連通される。このとき、ポンプ側センター通路18を流れる圧油は、ポンプ側センター通路18を通って第1連通口21と第1ランド33との間に形成された隙間から第1流路溝37に流れ込む(矢印Y1参照)。第1流路溝37に流れ込んだ圧油は、第2連通口22と第1中間ランド31との間に形成された隙間からタンク側センター通路19に流れ込む(矢印Y2参照)。
【0054】
また、ポンプ側センター通路18を流れる圧油は、ポンプ側バイパス通路23に流れ込む(矢印Y3参照)。ポンプ側バイパス通路23に流れ込んだ圧油は、第3連通口25と第2中間ランド32の中心軸O1方向両端との間に形成された2つの隙間から第2流路溝38、及び第3流路溝39に流れ込む(矢印Y4,Y5参照)。第2流路溝38に流れ込んだ圧油は、第2連通口22と第1中間ランド31との間に形成された隙間からタンク側センター通路19に流れ込む(矢印Y6参照)。第3流路溝39に流れ込んだ圧油は、第4連通口26と第2ランド34との間に形成された隙間からタンク側バイパス通路24に流れ込む(矢印Y7参照)。タンク側センター通路19に流れた圧油と、タンク側バイパス通路24に流れた圧油とは、その後合流し、第1タンク5に還流される。
【0055】
なお、上記の隙間はいずれもスプール孔17、及びスプール10の全周に渡って形成されている。このため、これら隙間からスプール孔17、タンク側センター通路19、及びタンク側バイパス通路24に圧油が流れ込む際の圧油の圧力損失は小さい。
また、第1タンク5への還流は、センター通路6を介して第1タンク5に還流されることを意味している。つまり、複数の油圧制御弁4を有する建設機械用油圧システム1(
図1参照)では、下流側に位置する油圧制御弁4のポンプ側センター通路18に圧油が流れていくということである。
【0056】
次に、スプール10を中立状態から移動させた場合について説明する。
まず、操作レバー44の操作に基づいて、スプール孔17内を、第1方向D1に向かってスプール10を移動させた場合について説明する。
スプール10を第1方向D1に向かって移動させたとき、第1ランド33の切欠き部を介し、第1供給ポート28、及び第1シリンダポート13が連通される。また、このとき、第4ランド36の切欠き部を介し、第2シリンダポート14、及び第2圧油排出通路16が連通される。さらに、各中間ランド31,32によって、中間通路27、タンク側センター通路19、及びタンク側バイパス通路24が閉塞される。
【0057】
すると、ポンプ側センター通路18に流れ込んだ圧油は、第1供給ポート28、第1ランド33の切欠き部、及び第1シリンダポート13を介して油圧アクチュエータ2に供給される。これにより、油圧アクチュエータ2が駆動される。このとき、油圧アクチュエータ2から排出された作動油は、第2シリンダポート14、第4ランド36の切欠き部、及び第2圧油排出通路16を介して第1タンク5に還流される。
【0058】
次に、操作レバー44の操作に基づいて、スプール孔17内を、第2方向D2に向かってスプール10を移動させた場合について説明する。
スプール10を第2方向D2に向かって移動させたとき、第2ランド34の切欠き部を介し、第2供給ポート29、及び第2シリンダポート14が連通される。また、このとき、第3ランド35の切欠き部を介し、第1シリンダポート13及び第1圧油排出通路15が連通される。さらに、各中間ランド31,32によって、中間通路27、タンク側センター通路19、及びタンク側バイパス通路24が閉塞される。
【0059】
すると、ポンプ側バイパス通路23に流れ込んだ圧油は、第2供給ポート29、第2ランド34の切欠き部、及び第2シリンダポート14を介し、油圧アクチュエータ2に供給される。これにより、油圧アクチュエータ2が駆動される。このとき、油圧アクチュエータ2から排出された作動油は、第1シリンダポート13、第3ランド35の切欠き部、及び第1圧油排出通路15を介して第1タンク5に還流される。
【0060】
このように、上述の油圧制御弁4は、センター通路6の途中、つまり、ポンプ側センター通路18とタンク側センター通路19との間に設けられたスプール10と、スプール10を挟んでセンター通路6の第1油圧ポンプ3側(ポンプ側センター通路18)と第1タンク5側(タンク側センター通路19)とを接続するバイパス通路12(ポンプ側バイパス通路23、タンク側バイパス通路24)とを備えている。このため、第1油圧ポンプ3から第1タンク5へと流れる圧油の通路として、センター通路6を流れる1つの通路T1(
図3の矢印Y1から矢印Y2へと流れる圧油の通路T1)の他に、バイパス通路12を流れる2つの通路T2,T3(
図3の矢印Y4から矢印Y6へと流れる圧油の通路T2、及び
図3の矢印Y5から矢印Y7へと流れる圧油の通路T3)分を増加させることができる。このため、第1油圧ポンプ3から第1タンク5へと流れる圧油の圧力損失を低減できる。
【0061】
また、バイパス通路12を設けるにあたり、バルブボディ9に、ポンプ側バイパス通路23とタンク側バイパス通路24とを設けている。そして、各バイパス通路23,24のスプール孔17に連通する第3連通口25及び第4連通口26の他に、各センター通路18,19のスプール孔17に連通する第1連通口21及び第2連通口22を、中心軸O1,O2に沿って第1連通口21、第2連通口22、第3連通口25、第4連通口26の順にずらして配置している。さらに、スプール10の中立状態で、第2連通口22に対応する位置(径方向で対向する位置)に第1中間ランド31を設けているとともに、第3連通口25に対応する位置(径方向で対向する位置)に第2中間ランド32を設けている。各中間ランド31,32の中心軸O1,O2方向両端には、流路溝37,38,39を設けている。このように構成しているので、バルブボディ9内に簡素な構造でバイパス通路12を設けることができるとともに、異なる2つの圧油の通路T2,T3(
図3参照)を設けることができる。このため、油圧制御弁4を安価で小型化しつつ、第1油圧ポンプ3から第1タンク5へと流れる圧油の圧力損失を低減できる。
【0062】
また、各バイパス通路23,24の流路断面積は、各センター通路18,19の流路断面積よりも小さい。このため、各バイパス通路23,24を設けるための占有スペースをできる限り省スペース化できる。このため、油圧制御弁4を小型化できる。
【0063】
なお、上述の第1実施形態では、バルブボディ9に設けられているセンター通路6及びバイパス通路12を、第1油圧ポンプ3側に設けられているポンプ側センター通路18及びポンプ側バイパス通路23とし、第1タンク5側に設けられているタンク側センター通路19及びタンク側バイパス通路24とした場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、バルブボディ9の第1タンク5側にポンプ側センター通路18及びポンプ側バイパス通路23を設け、バルブボディ9の第1油圧ポンプ3側にタンク側センター通路19及びタンク側バイパス通路24を設けてもよい。
【0064】
(第2実施形態)
次に、
図4に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図4は、第2実施形態における油圧制御弁204を模式的に表した断面図である。
図4は、前述の
図3に対応している。
図4に示すように、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態ではポンプ側バイパス通路23が1つであるのに対し、第2実施形態ではポンプ側バイパス通路23がさらに分岐され、2つのポンプ側バイパス通路223A,223B(第1ポンプ側バイパス通路223A、第2ポンプ側バイパス通路223B)を備えている点である。
【0065】
第1ポンプ側バイパス通路223Aは、第1実施形態におけるポンプ側バイパス通路23に相当する。すなわち、第1ポンプ側バイパス通路223Aは、スプール孔17に連通される第3連通口25を備えている。
第2ポンプ側バイパス通路(請求項の他のバイパス通路、他のポンプ側バイパス通路に相当)223Bは、スプール孔17に連通される第5連通口51を備えている。第5連通口51は、第3連通口25よりも第1方向D1にずれて配置されている。
【0066】
スプール210には、このスプール210の中立状態で中間通路27内の中央に設けられる第1中間ランド31及び第2中間ランド32の他に、第3中間ランド(請求項の他のランドに相当)52が設けられている。第3中間ランド52は、スプール210の中立状態のとき、第4連通口26と径方向で対向する位置に設けられている。第3中間ランド52の第1方向D1側には、第4流路溝(請求項の他の流路溝に相当)53がスプール210の全周に渡って設けられている。第2ポンプ側バイパス通路223B、第3中間ランド52、及び第4流路溝53を設ける分、第2シリンダポート14、第2圧油排出通路16、第3ランド35等は、前述の第1実施形態よりも第1方向D1にずれる。
【0067】
次に、スプール210の中立状態での各ポンプ側バイパス通路223A,223Bを通過する圧油の流れを説明する。
第1ポンプ側バイパス通路223Aに流れ込んだ圧油の流れは、前述の第1実施形態におけるポンプ側バイパス通路23に流れ込んだ圧油の流れと同様である。すなわち、圧油は、第3連通口25と第2中間ランド32の中心軸O1方向両端との間に形成された2つの隙間から第2流路溝38、及び第3流路溝39に流れ込む(矢印Y4,Y5参照)。第2流路溝38に流れ込んだ圧油は、第2連通口22と第1中間ランド31との間に形成された隙間からタンク側センター通路19に流れ込む(矢印Y6参照)。第3流路溝39に流れ込んだ圧油は、第4連通口26と第2中間ランド32との間に形成された隙間からタンク側バイパス通路24に流れ込む(矢印Y7参照)。
【0068】
一方、第2ポンプ側バイパス通路223Bに流れ込んだ圧油は、第5連通口51と第3中間ランド52との間に形成された隙間から第4流路溝53に流れ込む(矢印Y8参照)。第4流路溝53に流れ込んだ圧油は、第4連通口26と第3中間ランド52との間に形成された隙間からタンク側バイパス通路24に流れ込む(矢印Y9参照)。タンク側センター通路19に流れた圧油と、タンク側バイパス通路24に流れた圧油とは、その後合流し、第1タンク5(
図4では図示しない)に還流される。
【0069】
したがって、第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、2つのポンプ側バイパス通路223A,223Bを備えているので、圧油の通路T4(
図4の矢印Y8から矢印Y9へと流れる圧油の通路T4)分を増加できる。このため、第1油圧ポンプ3から第1タンク5へと流れる圧油の圧力損失をさらに低減できる。
また、バイパス通路を増設するにあたり、バルブボディ209に、第1ポンプ側バイパス通路223Aに加えて第2ポンプ側バイパス通路223Bを設けている。さらに、スプール210に第3中間ランド52、及び第4流路溝53を追加で設けている。このように、バルブボディ209に簡素な構造でバイパス通路を増設できる。
【0070】
なお、上述の第2実施形態では、第1実施形態のポンプ側バイパス通路23を2つのポンプ側バイパス通路223A,223Bとした場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第1実施形態のタンク側バイパス通路24を2つのバイパス通路に分岐させてもよい。また、第1実施形態のポンプ側バイパス通路23とタンク側バイパス通路24の両方の通路23,24を分岐させてもよい。さらに、分岐数は2つに限られるものではなく、第1実施形態の各通路23,24を3つ以上に分岐してもよい。そして、この分岐数に応じてスプール210の中間ランドの個数を変更すればよい。
【0071】
(第3実施形態)
次に、
図5に基づいて、本発明の第3実施形態を説明する。
図5は、第3実施形態における油圧制御弁304を模式的に表した断面図である。
図5は、前述の
図3に対応している。
図5に示すように、第3実施形態では、バイパス通路12の途中に油圧制御弁304とは別の補助制御弁60を設けた。この点、前述の第1実施形態と相違する点である。
【0072】
より詳しくは、バイパス通路12は、ポンプ側センター通路18及びタンク側センター通路19から分岐されたポンプ側バイパス通路323及びタンク側バイパス通路324を備えている。各バイパス通路323,324は、バルブボディ9のスプール孔17に連通されておらず、補助制御弁60に接続されている。このため、油圧制御弁304のスプール310は、1つの中間ランド69のみ備えている。
【0073】
補助制御弁60は、バルブボディ61と、バルブボディ61内に配置されたスプール(請求項の他の弁体に相当)62とを備えている。なお、補助制御弁60のバルブボディ61は、油圧制御弁304のバルブボディ309と一体としてもよい。つまり、油圧制御弁304のバルブボディ309の一部を、補助制御弁60のバルブボディ61としてもよい。
【0074】
バルブボディ61には、ポンプ側バイパス通路323及びタンク側バイパス通路324と、これらバイパス通路323,324に連通されるスプール孔63とが設けられている。
ポンプ側バイパス通路323は、スプール孔63に連通される第1補助連通口64を備えている。タンク側バイパス通路324は、スプール孔63に連通される第2補助連通口65を備えている。各補助連通口64,65は、スプール孔63の中心軸O3に沿ってずれて配置されている。
【0075】
スプール62は、スプール孔17内に心軸O3に沿って移動自在に収納されている。スプール62は、図示しないスプール作動機構部の操作に基づいて移動する。
スプール62は、2つのランド66,67と、これらランド66,67の間に設けられた流路溝68とを備えている。スプール62の中立状態では、流路溝68及びスプール孔63を介してポンプ側バイパス通路323とタンク側バイパス通路324とが連通されている。スプール62が中立状態から移動した場合、各ランド66,67によって第1補助連通口64や第2補助連通口65が閉塞される。
【0076】
したがって、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態によれば、バイパス通路12の途中に補助制御弁60を設けているので、バイパス通路12を流れる圧油の流量を制御できる。このため、油圧制御弁304の制御を高精度に行うことができる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、油圧制御弁4,204,304は、第1油圧ポンプ3と第1タンク5とを連通するセンター通路6の途中に設けられている場合について説明した。また、油圧制御弁4は、各油圧アクチュエータ2への圧油の流量を調整するものである場合について説明した。しかしながら、各実施形態で述べたバイパス通路12の構成は、油以外のさまざまな流体の流量を調整する制御弁に採用可能である。
【0078】
また、上述の実施形態では、センター通路6に複数の油圧制御弁4,204,304が連結されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、センター通路6に1つのみ油圧制御弁4,204,304を設けてもよい。
また、複数の油圧制御弁4,204,304の全てにバイパス通路12を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくとも最も第1油圧ポンプ3に近い最上流に位置する油圧制御弁4,204,304に、バイパス通路12を設けてあればよい。このように構成することで、各油圧制御弁4,204,304に供給される圧油の圧力損失を効率よく低減できる。
【符号の説明】
【0079】
1…建設機械用油圧システム、2…油圧アクチュエータ(アクチュエータ)、3…第1油圧ポンプ(ポンプ)、4,204,304…油圧制御弁(制御弁)、5…第1タンク(タンク)、6…センター通路、9,209,309…バルブボディ、10,210,310…スプール(弁体)、12…バイパス通路、17…スプール孔、18…ポンプ側センター通路、19…タンク側センター通路、21…第1連通口、22…第2連通口、23,223…ポンプ側バイパス通路、223A…第1ポンプ側バイパス通路、223B…第2ポンプ側バイパス通路(他のバイパス通路)、24,324…タンク側バイパス通路、25…第3連通口、26…第4連通口、31…第1中間ランド(ランド)、32…第2中間ランド(ランド)、37…第1流路溝、38…第2流路溝(流路溝、通路)、39…第3流路溝(流路溝、通路)、51…第5連通口、52…第3中間ランド(他のランド)、53…第4流路溝(他の流路溝)、60…補助制御弁、62…スプール(他の弁体)、T1、T2,T3,T4…通路