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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】地中連続壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
E02D5/20 103
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019067222
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165212
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】金本 清臣
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-117031(JP,U)
【文献】特開平05-280045(JP,A)
【文献】実開昭52-095205(JP,U)
【文献】特開2017-145595(JP,A)
【文献】特開2015-175179(JP,A)
【文献】特開2010-242318(JP,A)
【文献】特公昭47-042086(JP,B1)
【文献】実公昭47-038415(JP,Y1)
【文献】実開昭52-124508(JP,U)
【文献】特開昭48-079409(JP,A)
【文献】特開2000-319853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に隣接して構築される第1エレメントと第2エレメントとが、継手部を介して連結される地中連続壁の施工方法において、
前記継手部は、
前記第1エレメントおよび前記第2エレメントの互いに連結される側の端面に高さ方向全体にわたって設けられ、一方の面に前記第1エレメントのコンクリートが定着し、他方の面に前記第2エレメントのコンクリートが定着する仕切り板と、
前記仕切り板における前記第1エレメントと前記第2エレメントとが隣接する方向に交差する方向の側端部に前記高さ方向全体にわたって取り付けられた側部材と、を有し、
地盤の前記第1エレメントが構築される領域を掘削し第1掘削部を形成する第1掘削工程と、
前記第1掘削部における前記第2エレメントが構築される側の端部に前記継手部を設置する継手部設置工程と、
前記第1掘削部に前記第1エレメントのコンクリートを打設する第1エレメントコンクリート打設工程と、
地盤の前記第2エレメントが構築される領域を掘削し第2掘削部を形成する第2掘削工程と、
前記第2掘削部に前記第2エレメントのコンクリートを打設する第2エレメントコンクリート打設工程と、を有し、
前記継手部設置工程と前記第1エレメントコンクリート打設工程との間に、前記継手部と前記第1掘削部の側面との隙間に該隙間を閉塞する隙間閉塞手段を設置する隙間閉塞手段設置工程を行い、
前記第1エレメントコンクリート打設工程の後に、前記隙間閉塞手段を撤去する隙間閉塞手段撤去工程を行い、
前記側部材は、
前記仕切り板の側端部に接合される側板部と、
前記側板部における前記第2エレメント側の端部から前記第1掘削部の側面に向かって延びる前板部と、を有し、
前記隙間閉塞手段は、液体または気体の供給および排出により膨張および収縮するチューブ体であり、
前記隙間閉塞手段設置工程では、前記側板部と前記第1掘削部の側面との間で、かつ前記前板部よりも前記第1エレメント側に前記隙間閉塞手段を設置することを特徴とする地中連続壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RC造の地中連続壁は、地中に間隔をあけて先行エレメントを設け、先行して設けられた先行エレメントの間に後行エレメントを設けることで構築されることがある。先行エレメントと後行エレメントとの連結は、互いに荷重(せん断力)を伝達可能となるように一体に連結する場合と、互いに接触させるが互いに荷重の伝達をしない状態に連結する場合とがある。
先行エレメントと後行エレメントとは、互いに荷重を伝達可能となるように一体に連結されている方が、互いに荷重の伝達をしない場合と比べて構造的な性能として望ましいとされている。
【0003】
特許文献1および2には、先行エレメントと後行エレメントとの間で波形鋼板などの接続部材を介して鉛直方向のせん断力(面内せん断力)を伝達させる地中連続壁が開示されている。
これらの地中連続壁では、先行エレメントの凹部に後行エレメントの凸部が嵌合するように構成され、先行エレメントのコンクリートに埋設されるとともに凹部内に突出する接続部材が凹部に打設された後行エレメントのコンクリートに埋設されることで先行エレメントと後行エレメントとが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3982327号公報
【文献】特開2010-242318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に開示された地中連続壁では、先行エレメントの構築時に、接続部材がセットされた打ち継ぎ治具を用いて、接続部材を先行エレメントのコンクリートに埋設するとともに、凹部を形成している。そして、先行エレメントのコンクリートが硬化した後に、打ち継ぎ治具を剥離させ、接続部材の後行エレメントに埋設される部分を露出させている。このため、特許文献1および2に開示された地中連続壁では、打ち継ぎ治具の剥離工程に、手間がかかるという問題がある。
また、先行エレメントが構築される先行掘削部を掘削して打ち継ぎ治具を設置した際に、打ち継ぎ治具と先行掘削部の側面との間に隙間があると、先行エレメントのコンクリートを打設した際に、このコンクリートが後行エレメント側に流出する虞があり、施工に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、容易に施工することができるとともに、第1エレメント(先行エレメント)と第2エレメント(後行エレメント)との間で面内せん断力を効率的に伝達させることができる地中連続壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る地中連続壁の施工方法は、地盤に隣接して構築される第1エレメントと第2エレメントとが、継手部を介して連結される地中連続壁の施工方法において、前記継手部は、前記第1エレメントおよび前記第2エレメントの互いに連結される側の端面に高さ方向全体にわたって設けられ、一方の面に前記第1エレメントのコンクリートが定着し、他方の面に前記第2エレメントのコンクリートが定着する仕切り板と、前記仕切り板における前記第1エレメントと前記第2エレメントとが隣接する方向に交差する方向の側端部に前記高さ方向全体にわたって取り付けられた側部材と、を有し、地盤の前記第1エレメントが構築される領域を掘削し第1掘削部を形成する第1掘削工程と、前記第1掘削部における前記第2エレメントが構築される側の端部に前記継手部を設置する継手部設置工程と、前記第1掘削部に前記第1エレメントのコンクリートを打設する第1エレメントコンクリート打設工程と、地盤の前記第2エレメントが構築される領域を掘削し第2掘削部を形成する第2掘削工程と、前記第2掘削部に前記第2エレメントのコンクリートを打設する第2エレメントコンクリート打設工程と、を有し、前記継手部設置工程と前記第1エレメントコンクリート打設工程との間に、前記継手部と前記第1掘削部の側面との隙間に該隙間を閉塞する隙間閉塞手段を設置する隙間閉塞手段設置工程を行い、前記第1エレメントコンクリート打設工程の後に、前記隙間閉塞手段を撤去する隙間閉塞手段撤去工程を行い、前記側部材は、前記仕切り板の側端部に接合される側板部と、前記側板部における前記第2エレメント側の端部から前記第1掘削部の側面に向かって延びる前板部と、を有し、前記隙間閉塞手段は、液体または気体の供給および排出により膨張および収縮するチューブ体であり、前記隙間閉塞手段設置工程では、前記側板部と前記第1掘削部の側面との間で、かつ前記前板部よりも前記第1エレメント側に前記隙間閉塞手段を設置することを特徴とする。
【0014】
本発明では、液体または気体の供給および排出により膨張および収縮するチューブ体の隙間閉塞手段によって継手部と第1掘削部の側面との隙間を塞ぐことができるため、第1エレメントのコンクリートが第2エレメント側に流出することを確実に防止することができ、地中連続壁の施工を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地中連続壁を容易に施工することができるとともに、第1エレメントと第2エレメントとの間で面内せん断力を効率的に伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による地中連続壁の水平断面図である。
図2】シャッタが取り付けられた継手部を説明する水平断面図である。
図3】地中連続壁の施工方法の先行掘削工程を説明する図である。
図4】地中連続壁の施工方法の先行エレメントコンクリート打設工程を説明する図である。
図5】地中連続壁の施工方法の後行掘削工程を説明する図である。
図6】地中連続壁の施工方法の後行エレメントコンクリート打設工程を説明する図である。
図7】本発明の第2実施形態による地中連続壁の継手部の一例を示す図8のA-A線断面に対応する水平断面図である。
図8】本発明の第2実施形態による地中連続壁の継手部の一例を示す図7のB-B線断面に対応する鉛直断面図である。
図9】本発明の第3実施形態による地中連続壁の継手部の水平断面図である。
図10】本発明の第4実施形態による地中連続壁および地中連続壁の施工方法を説明する水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による地中連続壁1Aについて、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態による地中連続壁1Aは、複数の壁状のエレメント2,3が継手部4を介して連結されている。地中連続壁1Aの壁面に直交する水平方向を壁厚さ方向とし、壁面に沿った方向で壁厚さ方向に直交する水平方向を壁長さ方向とし、壁厚さ方向および壁長さ方向に直交する方向を上下方向または高さ方向とする。
地中連続壁1Aを構成する複数のエレメント2,3は、先行して施工される先行エレメント2(第1エレメント)2と、先行エレメント2の後に施工される後行エレメント3(第2エレメント)3とから構成され、先行エレメント2と後行エレメント3とが継手部4を介して壁長さ方向に配列されている。
先行エレメント2および後行エレメント3は、いずれも地盤11を掘削して構築されている。
先行エレメント2を構築するために地盤11を掘削して形成した空間を先行掘削部12とし、後行エレメント3を構築するために地盤11を掘削して形成した空間を後行掘削部13とする。先行掘削部12と後行掘削部13とは、壁長さ方向に隣接している。
【0018】
先行エレメント2および後行エレメント3は、それぞれコンクリート21,31に縦筋22,32および横筋23,33が埋設されたRC造の壁体となっている。先行エレメント2と後行エレメント3とは、壁厚さ方向および高さ方向の寸法が同じ寸法に設定され、それぞれの壁芯を一致させるように配列されている。先行エレメント2と後行エレメント3とは、それぞれの壁長さ方向の端部2a,3aを、継手部4を介して突き合わせるように配置されている。
以下では、先行エレメント2と後行エレメント3との連結部分および継手部4の説明において、壁長さ方向のうち先行エレメント2に対して後行エレメント3が配置されている側を前側とし、後行エレメント3に対して先行エレメント2が配置されている側を後側とし、壁長さ方向を前後方向と表記することがある。
【0019】
継手部4は、仕切り板41と、仕切り板41に接合されたT字形のT形ガイド49と、を有している。
仕切り板41は、先行エレメント2および後行エレメント3の高さ全体にわたる高さに形成されている。
仕切り板41は、板面が壁長さ方向を向く鉛直面となる第1仕切り板部42と、第1仕切り板部42の壁厚さ方向の一方の端部から前側に向かって漸次壁厚さ方向の一方側に斜めに延びる第2仕切り板部43と、第1仕切り板部42の壁厚さ方向の他方の端部から前側に向かって漸次壁厚さ方向の他方側に斜めに延びる第3仕切り板部44と、を有している。
仕切り板41は、上下方向から見て前側に開口するC字形状に形成されている。仕切り板41の第1仕切り板部42、第2仕切り板部43および第3仕切り板部44に囲まれた凹部を仕切り板凹部45とする。
仕切り板41は、壁厚さ方向に各エレメント2,3の軸芯に対して線対称に形成されている。第2仕切り板部43と第3仕切り板部44とは壁厚さ方向に各エレメント2,3の軸芯に対して線対称に形成されている。
【0020】
仕切り板41は、壁厚さ方向の一方側の端部(第2仕切り板部43の壁厚さ方向の一方側の端部)が、先行掘削部12の壁厚さ方向の一方側の側面122と当接または近接し、壁厚さ方向の他方側の端部(第3仕切り板部44の壁厚さ方向の他方側の端部)が、先行掘削部12の壁厚さ方向の他方側の側面123と当接または近接するように配置されている。
仕切り板41には、一方の面に複数の突起部411が形成された縞鋼板が用いられている。本実施形態では、突起部411がある面が前側(後行エレメント3側)となっている。
【0021】
T形ガイド49は、後行エレメント3のコンクリート31を打設する前に継手部4をジェット洗浄機を用いてウォータージェット洗浄する際に、ジェット洗浄機の移動をガイドする部材である。
T形ガイド49は、第1仕切り板部42の前面の壁厚さ方向の略中央に第1仕切り板部42の高さ全体にわたって接合されている。T形ガイド49は、第1仕切り板部42の前面から前側に延びる第1T形ガイド板部491と、第1T形ガイド板部491の先端部に接合され、第1T形ガイド板部491の先端部から壁厚さ方向の両側に突出する第2T形ガイド板部492と、を有している。T形ガイド49は、第1T形ガイド板部491と第2T形ガイド板部492とがT字形を形成するように接続されている。
第2T形ガイド板部492は、第2仕切り板部43および第3仕切り板部44の前端部よりも後側に配置されている。
T形ガイド49は、ジェット洗浄機に形成された上下方向に延びる溝部に挿入され、ジェット洗浄機の上下方向の移動をガイドするように構成されている。
【0022】
仕切り板41の後面は、先行エレメント2のコンクリート21と定着し、仕切り板41の前面は、後行エレメント3のコンクリート31と定着される。T形ガイド49は、後行エレメント3のコンクリート31に埋設される。
【0023】
図2に示すように、第2仕切り板部43および第3仕切り板部44の前端部は、仕切り板凹部45を前側から塞ぐシャッタ5を着脱可能に構成されている。シャッタ5は、平板状の鋼板で形成され、第2仕切り板部43および第3仕切り板部44に取り付けられると、板面が各エレメント2,3の軸芯に直交する向きに配置されている。
第2仕切り板部43および第3仕切り板部44の前端部それぞれには、シャッタ5を上下方向にスライド可能に支持するガイド部431,441が設けられている。ガイド部431,441は、シャッタ5の縁部が挿入される溝部を有している。
【0024】
次に、第1実施形態による地中連続壁1Aの施工方法について説明する。
まず、図3に示すように、地盤11の先行エレメント2が構築される領域に先行掘削部12を掘削する(第1掘削工程)。なお、図3では、後の継手部4の設置についても示している。
本実施形態では、先行エレメント2が構築される領域のみの掘削を行い、後行エレメント3側に余掘りを行わない。
【0025】
続いて、先行掘削部12の壁長さ方向の端部(前端部)121に継手部4を設置する(継手部設置工程)。
このとき、継手部4の仕切り板41には、シャッタ5を取り付けた状態とし、シャッタ5の前面を先行掘削部12の前端面121と当接させる。
このようにすることにより、後行掘削部13が掘削されていない先行エレメント2の構築時には、仕切り板41の前面が地盤11と当接せず、シャッタ5の前面が地盤11と当接するため、仕切り板41に土が付着することを防止できるとともに、仕切り板凹部45の内部に掘削土が流入することを防止できる。
【0026】
続いて、図4に示すように、先行エレメント2の縦筋22および横筋23の配筋を行う。なお、図4では、後の先行エレメント2のコンクリート21の打設についても示している。
続いて、先行エレメント2のコンクリート21を打設する(第1エレメントコンクリート打設工程)。
先行掘削部12に先行エレメント2のコンクリート21を打設し、先行エレメント2の縦筋22および横筋23をコンクリート21に埋設するとともに、コンクリート21を継手部4の仕切り板41の後面と定着させる。
【0027】
続いて、図5に示すように、地盤11の後行エレメント3が構築される領域に後行掘削部13を掘削する(第2掘削工程)。
後行掘削部13が掘削された後に、シャッタ5を仕切り板41から取り外し、継手部4の仕切り板凹部45を後行掘削部13側に開口させる。
【0028】
続いて、図6に示すように、後行エレメント3の縦筋32および横筋33の配筋を行う。なお、図6では、後の後行エレメント3のコンクリート31の打設についても示している。
続いて、後行エレメント3のコンクリート31を打設する(第2エレメントコンクリート打設工程)。
後行掘削部13に後行エレメント3のコンクリート31を打設し、後行エレメント3の縦筋32、横筋33をコンクリート31に埋設するとともに、コンクリート31を継手部4の仕切り板41の前面と定着させ、仕切り板41の前面の突起部411をコンクリート31に埋設する。
後行エレメント3のコンクリート31を打設した後、養生期間を設けてコンクリート31を硬化させる。
このようにして、地中連続壁1Aが構築される。
【0029】
次に、上述した第1実施形態による地中連続壁1Aの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による地中連続壁1Aでは、先行エレメント2および後行エレメント3の互いに連結される側の端面に高さ方向全体にわたって設けられる仕切り板41に縞鋼板を用いるため、縞鋼板の複数の突起部411を介して、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させることができる。
そして、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させるためのせん断伝達要素(縞鋼板の複数の突起部411)は、仕切り板41を設置することで設けられ、さらに、せん断伝達要素を仮支持し後に撤去が必要となる治具を必要としないため、地中連続壁1Aを容易に施工することができる。
【0030】
(他の実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
(第2実施形態)
図7および図8に示すように、第2実施形態による地中連続壁1Bでは、継手部4Bの仕切り板41Bに第1実施形態のような縞鋼板ではなく、表面が平坦な鋼板が用いられ、仕切り板41Bの第1仕切り板部42Bの前側および後側に孔あき鋼板ジベル46が接合されている。
【0031】
仕切り板41Bは、第1実施形態の仕切り板41と同様に、板面が壁長さ方向を向く鉛直面となる第1仕切り板部42Bと、第1仕切り板部42Bの壁厚さ方向の一方の端部から前側に向かって漸次壁厚さ方向の一方側に斜めに延びる第2仕切り板部43Bと、第1仕切り板部42Bの壁厚さ方向の他方の端部から前側に向かって漸次壁厚さ方向の他方側に斜めに延びる第3仕切り板部44Bと、を有し、第1仕切り板部42B、第2仕切り板部43Bおよび第3仕切り板部44Bに囲まれた仕切り板凹部45Bを有している。
また、第1実施形態と同様に、仕切り板41Bの第2仕切り板部43Bおよび第3仕切り板部44Bの前端部は、仕切り板凹部45Bを前側から塞ぐシャッタ5を上下方向にスライド可能に支持するガイド部431,441が設けられている。
【0032】
孔あき鋼板ジベル46は、長尺の平板状に形成され、板面を貫通する丸孔461が長手方向に一定の間隔をあけて複数設けられている。孔あき鋼板ジベル46は、板面が壁厚さ方向を向く鉛直面となる向きで仕切り板41Bの前面および後面に接合され、仕切り板41Bから前側または後側に突出している。
孔あき鋼板ジベル46は、第1仕切り板部42の前面および後面それぞれに壁厚さ方向に一定の間隔をあけて複数設けられている。第1仕切り板部42の前面に接合された孔あき鋼板ジベル46と、後面に接合された孔あき鋼板ジベル46とは、第1仕切り板部42を介して壁長さ方向に並んでいる。
【0033】
上述した第2実施形態による地中連続壁1Bでは、先行エレメント2および後行エレメント3の互いに連結される側の端面に高さ方向全体にわたって設けられる仕切り板41Bの両面に孔あき鋼板ジベル46が接合されているため、孔あき鋼板ジベル46の丸孔461に充填された先行エレメント2のコンクリート21および後行エレメント3のコンクリート31を介して、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させることができる。
そして、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させるためのせん断伝達要素(孔あき鋼板ジベル46)は、仕切り板41Bに接合されていて、仕切り板41Bを設置することで設けられ、さらに、せん断伝達要素を仮支持し後に撤去が必要となる治具を必要としないため、地中連続壁1Bを容易に施工することができる。
【0034】
(第3実施形態)
図9に示すように、第3実施形態による地中連続壁1Cは、継手部4Cの仕切り板41Cに、表面に三角錐の凹部412および凸部413が多数形成された三角錐状凹凸鋼板が用いられている。三角錐状凹凸鋼板は、三角錐状の凹部(凸部)をプレス形成した鋼板で、一方の面に三角錐状の凹部412が形成され、他方の面に三角錐状の凸部413が形成されていて、トラスコアパネルなどと称されている。凹部412および凸部413は、凹部412の反対側に凸部413が配置されている。なお、仕切り板41Cに対する凹部412および凸部413の大きさは、図9に示す形態に限定されない。
【0035】
仕切り板41Cは、高さ方向および壁厚さ方向に直線状に延びていて、壁厚さ方向の一方の端部が先行掘削部12の壁厚さ方向の一方の側面122と当接または近接する位置に配置され、壁厚さ方向の他方の端部が先行掘削部12の壁厚さ方向の他方の側面123と当接または近接する位置に配置されている。
本実施形態では、仕切り板41Cの凹部412が形成されている側が後側(先行エレメント2側)となり、凸部413が形成されている側が前側(後行エレメント3側)となるように配置されている。このため、仕切り板41Cの凹部412の内部には、先行エレメント2のコンクリート21が充填され、仕切り板41Cの凸部413は、後行エレメント3のコンクリート31に埋設される。
【0036】
第3実施形態では、仕切り板41Cの壁厚さ方向の両端部に前側に突出し、先端部(前端部)にシャッタ5が着脱されるシャッタ支持板47,48が設けられている。
シャッタ支持板47,48の前端部には、シャッタ5を上下方向にスライド可能に支持するガイド部471,481が設けられている。ガイド部471,481は、シャッタ5の縁部が挿入される溝部を有している。
第3実施形態では、仕切り板41C、シャッタ支持板47,48に囲まれ、前方に開口する仕切り板凹部45Cが形成されている。
【0037】
上述した第3実施形態による地中連続壁1Cでは、先行エレメント2および後行エレメント3の互いに連結される側の端面に高さ方向全体にわたって設けられる仕切り板41Cに三角錐状凹凸鋼板が用いられているため、三角錐状凹凸鋼板の凸部413および三角錐状凹凸鋼板の凹部412に充填されたコンクリート21を介して、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させることができる。
そして、先行エレメント2と後行エレメント3との間で面内せん断力を効率的に伝達させるためのせん断伝達要素(三角錐状凹凸鋼板の凹部412および凸部413)は、仕切り板41Cを設置することで設けられ、さらに、せん断伝達要素を仮支持し後に撤去が必要となる治具を必要としないため、地中連続壁1Cを容易に施工することができる。
【0038】
(第4実施形態)
図10に示すように、第4実施形態による地中連続壁1Dは、継手部4Dが仕切り板41Dと、仕切り板41Dの壁厚さ方向の一方側の端部に取り付けられた第1側部材61と、仕切り板41Dの壁厚さ方向の他方側の端部に取り付けられた第2側部材62と、を有している。
仕切り板41Dには、両面に凸条部63と凹条部64とが交互に配列され、断面形状が波形となるように加工された波形鋼板が用いられている。
第1側部材61と、第2側部材62とは、各エレメント2,3の軸芯に対して線対称となるように設けられている。
第1側部材61および第2側部材62は、断面形状がL字形の長尺の型材で、高さ方向に延びる向きに配置されている。第1側部材61および第2側部材62は、仕切り板41Dの高さ方向の長さ寸法と同じ長さ寸法に設定されている。
第1側部材61および第2側部材62の断面形状のL字形を構成する直交して接続される2つの片を前板部611,621および側板部612,622とする。
【0039】
第1側部材61は、前板部611の板面が壁長さ方向を向く鉛直面となり、側板部612が前板部611の壁厚さ方向の他方側の端部(仕切り板41D側の端部)から後側に突出する向きに配置される。
第2側部材62は、前板部621の板面が壁長さ方向を向く鉛直面となり、側板部622が前板部621の壁厚さ方向の一方側の端部(仕切り板41D側の端部)から後側に突出する向きに配置される。
【0040】
第1側部材61および第2側部材62それぞれの前板部611,621は、前面が仕切り板41Dの前端部41aと同じ位置、または仕切り板41Dの前端部41aよりもやや前側(例えば1~2mm前側)に配置されている。
第1側部材61および第2側部材62それぞれの側板部612,622は、仕切り板41D側の面が仕切り板41Dの側部と当接し、仕切り板41Dに接合されている。
側板部612,622は、仕切り板41Dの前後方向(壁長さ方向)の寸法よりも長く形成され、後端部が仕切り板41Dの後端部よりも後側に配置されている。
仕切り板41Dの凹条部64の壁厚さ方向の両端部は、第1側部材61および第2側部材62によって塞がれている。
第1側部材61および第2側部材62は、前板部611,621の前面が先行掘削部(第1掘削部)12の側面122,123と当接または近接するように配置されている。
【0041】
第4実施形態による地中連続壁1Dの施工方法では、第1実施形態と同様に先行掘削部12を掘削し(第1掘削工程)、継手部4Dを設置する(継手部設置工程)。そして、先行エレメント3のコンクリート31を打設する(第1コンクリート打設工程)前に、継手部4Dと先行掘削部12の側面122,123との隙間に該隙間を閉塞する隙間閉塞手段7を設置する(隙間閉塞手段設置工程)。
隙間閉塞手段7は、例えばギャップガードなどで、液体または気体の供給および排出により膨張および収縮するチューブ体で構成されている。なお、隙間閉塞手段7には、液体および気体の両方を供給したり、排出したりしてもよい。
隙間閉塞手段設置工程では、隙間閉塞手段7を第1側部材61の側板部612と先行掘削部12の壁厚さ方向の一方側の側面122との間に継手部4Dの高さ方向全体にわたって配置するとともに、隙間閉塞手段7を第2側部材62の側板部622と先行掘削部12の壁厚さ方向の他方側の側面123との間に継手部4Dの高さ方向全体にわたって配置する。
隙間閉塞手段7は、第1側部材61の側板部612と先行掘削部12の側面122との間、第2側部材62の側板部622と先行掘削部12の側面123との間のそれぞれに1つまたは複数設けられ、第1側部材61および第2側部材62の側板部612,622と先行掘削部12の側面122,123との隙間を塞ぐようにする。
【0042】
先行エレメント3のコンクリート31を打設した後に、隙間閉塞手段7を撤去する(隙間閉塞手段撤去工程)。
隙間閉塞手段7を撤去した後に、後行掘削部13を掘削し(第2掘削工程)、第1実施形態と同様に後行エレメント3を構築する。
【0043】
上述した第4実施形態による地中連続壁1Dの施工方法では、隙間閉塞手段7によって継手部4Dと先行掘削部12の側面122,123との隙間を塞ぐことができるため、先行エレメント2のコンクリート21が後行エレメント3側に流出することを確実に防止することができ、地中連続壁1Dの施工を容易にすることができる。
【0044】
以上、本発明による地中連続壁の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1-第4実施形態では、継手部4,4B,4Cには、仕切り板41,41B,41Cに接合され、後行エレメント3側に突出するT形ガイド49が設けられているが、T形ガイド49が設けられていなくてもよい。
また、上記の第1および第2実施形態では、仕切り板41,41Bが、第1仕切り板部42、第2仕切り板部43および第3仕切り板部44を有し、仕切り板凹部45を有するように断面形状がC字形となるように形成されているが、平板状に形成されていてもよい。このような場合は、第3実施形態と同様に、仕切り板の壁厚さ方向の両側から前側に延びて前端部にシャッタを着脱可能なシャッタ支持板が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1A-1D 地中連続壁
2 先行エレメント(第1エレメント)
3 後行エレメント(第2エレメント)
4,4B-4D 継手部
7 隙間閉塞手段
11 地盤
12 先行掘削部(第1掘削部)
13 後行掘削部
21,31 コンクリート
41,41B-41D 仕切り板
46 孔あき鋼板ジベル
49 T形ガイド
122,123 側面
411 突起部
412 凹部
413 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10