(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】粉砕装置及びボイラシステム並びに粉砕装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20240122BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20240122BHJP
F23K 3/02 20060101ALI20240122BHJP
B02C 23/24 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B02C15/04
F23L15/00 A
F23K3/02 302
B02C23/24
(21)【出願番号】P 2019121475
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-02-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡太朗
(72)【発明者】
【氏名】澤 昇吾
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102621(JP,A)
【文献】特開昭54-132860(JP,A)
【文献】特開2003-021471(JP,A)
【文献】特表2012-511692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043675(US,A1)
【文献】特開昭56-070853(JP,A)
【文献】特開2015-001347(JP,A)
【文献】特開昭58-088042(JP,A)
【文献】特開2000-297930(JP,A)
【文献】特開昭56-152750(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109237511(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00 - 7/18
15/00 - 17/24
9/00 - 11/08
19/00 - 25/00
F23L 1/00 - 99/00
F23C 9/08
13/00 - 13/08
99/00
F23D 1/00 - 1/06
17/00 - 99/00
F23G 5/02
5/033- 5/12
5/44 - 5/48
F23K 1/00 - 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を為す筐体と、
前記筐体の内部に配置され、固体燃料を粉砕する粉砕部と、
前記筐体の内部であって前記粉砕部の鉛直上方に配置され、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を分級する分級部と、
前記筐体に接続され、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を前記分級部へ搬送する搬送用ガスを前記筐体の内部へ供給する搬送用ガス流路と、
前記筐体の内部であって前記搬送用ガス流路の出口に向かって噴射液を噴射することができる位置または前記搬送用ガス流路内で、前記搬送用ガスに噴射液を噴射
し前記搬送用ガスを冷却する噴射部と、を備える粉砕装置。
【請求項2】
開度を調整することで前記搬送用ガス流路の内部を流通する前記搬送用ガスの流量を調整する流量調整部と、
前記流量調整部の開度を検出する開度検出部と、
前記流量調整部の開度が所定の開度となるように、前記流量調整部へ開度指令信号を送信する開度指令部と、
前記開度指令部が送信する前記開度指令信号における開度と前記開度検出部が検出する開度との差が、所定の値よりも大きい場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第1噴射制御部と、を備えた請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記搬送用ガスとともに前記分級部で分級された所定の粒径範囲の粉砕された前記固体燃料を、前記筐体の外部へ排出する排出部と、
前記排出部から排出される前記搬送用ガスの温度を検出する排出温度検出部と、
前記排出温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備える請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記搬送用ガスとともに前記分級部で分級された所定の粒径範囲の粉砕された前記固体燃料を、前記筐体の外部へ排出する排出部と、
前記排出部から排出される前記搬送用ガスの温度を検出する排出温度検出部と、
前記排出温度検出部が検出した温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第2噴射制御部と、を備えた請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記排出温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備える請求項4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記搬送用ガス流路から前記筐体の内部へ供給される前記搬送用ガスの温度を検出する供給温度検出部と、
前記供給温度検出部が検出した温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第3噴射制御部と、を備えた請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記供給温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備える請求項6に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記搬送用ガス流路は、第1流路と、前記第1流路に接続される第2流路と、を有し、
前記第1流路は、前記第2流路と接続する接続位置よりも上流側に、内部を流通する前記搬送用ガスを加熱する加熱部が設けられ、
前記噴射部は、前記加熱部よりも下流側であって、かつ、前記接続位置よりも上流側の前記第1流路に設けられている請求項1から請求項7のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項9】
前記筐体の底面には、前記筐体の外部と連通する排出口が形成されていて、
前記搬送用ガス流路は、前記噴射部が設けられる位置から前記筐体との接続位置との間に、前記噴射部側の方が前記筐体側よりも鉛直上方に位置するように傾斜する傾斜部を有する請求項8に記載の粉砕装置。
【請求項10】
前記粉砕部よりも前記搬送用ガスの流れにおける上流側と前記粉砕部よりも前記搬送用ガスの流れにおける下流側との差圧を計測する差圧計測部を備え、
前記分級部は、所定の粒径範囲よりも大きい粉砕された前記固体燃料を回転するブレードで弾いて前記粉砕部へ戻す回転式分級機であって、
前記回転式分級機の回転数は、前記差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される請求項1から請求項9のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項11】
前記粉砕部は、前記固体燃料が載置される回転テーブルと、前記回転テーブル上の前記固体燃料を押圧して粉砕する粉砕ローラとを有し、
前記粉砕ローラの押圧力は、前記差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される請求項10に記載の粉砕装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の粉砕装置と、
前記粉砕装置で粉砕された固体燃料を燃焼し、蒸気を生成するとともに排ガスを排出するボイラと、を備え、
前記ボイラから排出された前記排ガスの熱によって、搬送用ガスの少なくとも一部を加熱するボイラシステム。
【請求項13】
外殻を為す筐体の内部に配置された粉砕部で固体燃料を粉砕する粉砕工程と、
前記筐体の内部であって前記粉砕部の鉛直上方に配置された分級部で、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を分級する分級工程と、
前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を前記分級部へ搬送する搬送用ガスを搬送用ガス流路で前記筐体の内部へ供給する供給工程と、
前記筐体の内部であって前記搬送用ガス流路の出口に向かって噴射液を噴射することができる位置または前記搬送用ガス流路内で前記搬送用ガスに噴射液を噴射
し前記搬送用ガスを冷却する噴射工程と、を備えた粉砕装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕装置及びボイラシステム並びに粉砕装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)は、粉砕機(ミル)で所定粒径より小さい微粉状に粉砕して、燃焼装置へ供給される。ミルは、回転テーブルへ投入された石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を、回転テーブルとローラの間で噛み砕くことで粉砕し、回転テーブルの外周から供給される搬送用ガスによって、粉砕されて微粉状となった燃料を分級機で所定の粒径範囲のものを選別し、ボイラへ搬送して燃焼装置で燃焼させている。火力発電プラントでは、ボイラで燃焼して生成された燃焼ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、該蒸気により発電機に接続された蒸気タービンを回転駆動することで発電が行われる。
【0003】
このようなミルでは、搬送用ガスは空気予熱器で加熱されて供給される高温の熱ガスと加熱されない冷ガスとを混合することで、搬送用ガスの温度が所定の温度となるように調整する場合がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、一例として、押込ファンで送出された空気の一部を、一次空気予熱器および熱空気ダンパから成る熱空気系統ならびに冷空気ダンパを設置した冷空気系統にそれぞれ通すように構成されるミルが記載されている。このミルでは、冷空気ダンパおよび熱空気ダンパで調整され、混合された冷空気及び熱空気を一次空気(搬送用ガス)として、一次空気ファンを介してミル内に取り込まれる。また、冷空気ダンパ及び熱空気ダンパを操作し、冷空気と熱空気との流量配分を変えることにより、ミルへ送出する一次空気の熱量を変えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のミルは、冷空気ダンパ及び熱空気ダンパの開度を調整し、冷空気と熱空気との流量配分を変化させることにより、搬送用空気の温度を変えている。このようなミルは、例えば、冷空気ダンパ又は熱空気ダンパが故障して開度の調整ができなくなった場合に、ミルへ供給される搬送用ガスの温度を調整することができない可能性がある。特に、熱空気ダンパを閉じる方へ開度の調整することができなくなった場合には、必要以上に温度上昇して高温化した搬送用ガスがミルへ供給されることとなる可能性がある。搬送用ガスが必要以上に高温化してミルへ供給されると、ミルの内部の温度が通常運用温度を超えて上昇し、ミル内の固体燃料が自然着火してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高温化した搬送用ガスを冷却することで、粉砕装置(ミル)の内部の温度を低下させること、又は、粉砕装置の内部の温度の上昇を抑制することができる粉砕装置及びボイラシステム並びに粉砕装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の粉砕装置及びボイラシステム並びに粉砕装置の運転方法は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る粉砕装置は、外殻を為す筐体と、前記筐体の内部に配置され、固体燃料を粉砕する粉砕部と、前記筐体の内部であって前記粉砕部の鉛直上方に配置され、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を分級する分級部と、前記筐体に接続され、前記粉砕部で粉砕した前記固体燃料を前記分級部へ搬送する搬送用ガスを前記筐体の内部へ供給する搬送用ガス流路と、前記筐体内の前記搬送用ガス流路の出口近傍または前記搬送用ガス流路内で、前記搬送用ガスに噴射液を噴射する噴射部と、を備える。
【0009】
上記構成では、筐体内の搬送用ガス流路出口近傍または搬送用ガス流路内で、搬送用ガスに噴射液を噴射する噴射部を備えている。搬送用ガスに噴射液が噴射されると搬送用ガスの熱によって噴射液が気化(蒸発)し、その際の気化熱(蒸発熱)によって搬送用ガスが冷却される。その後、搬送用ガスは、筐体の内部を流通する。このため、搬送用ガスを冷却することで、粉砕装置の内部の温度を低下させること、又は、粉砕装置の内部の温度の上昇を抑制することができる。よって、例えば、粉砕装置の内部の温度が通常運用温度を超えて上昇した際に噴射部から噴射液を噴射する場合には、粉砕装置の内部の通常運用を超える温度上昇を抑制し、固体燃料の自然着火を抑制して粉砕装置の安全性を向上させることができる。また、例えば、搬送用ガスの温度が所定の温度となるように、噴射部から噴射液を噴射する場合には、搬送用ガスの温度を所定の温度に保つことができる。
また、噴射液が蒸発することで、搬送用ガス中の酸素分圧が低下するので、固体燃料の自然着火をより抑制することができる。
なお、搬送用ガスに噴射液を噴射するとは、搬送用ガスを対象として噴射液を噴射することを意味する。すなわち、搬送用ガスの主流に噴射液を噴射することを意味する。また、筐体内の搬送用ガス流路の出口近傍とは、筐体の内部であって搬送用ガス流路の出口(搬送用ガス流路と筐体との接続部分)に向かって噴射液を噴射することができる位置である。
【0010】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、開度を調整することで前記搬送用ガス流路の内部を流通する前記搬送用ガスの流量を調整する流量調整部と、前記流量調整部の開度を検出する開度検出部と、前記流量調整部の開度が所定の開度となるように、前記流量調整部へ開度指令信号を送信する開度指令部と、前記開度指令部が送信する前記開度指令信号における開度と前記開度検出部が検出する開度との差が、所定の値よりも大きい場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第1噴射制御部と、を備えてもよい。
【0011】
開度指令部が送信する開度指令信号における開度と開度検出部が検出する開度との差が、所定の値よりも大きい場合には、流量調整部が故障している可能性がある。流量調整部が故障し、搬送用ガス流路内の搬送用ガスの流量を調整できなくなると、筐体内に供給される高温の搬送用ガスの量も調整することができなくなり、粉砕装置の内部の温度が通常運用温度を超えて上昇する可能性がある。
上記構成では、開度指令部が送信する開度指令信号における開度と開度検出部が検出する開度との差が、所定の値よりも大きい場合に、噴射部から噴射液を噴射する。すなわち、流量調整部が故障している可能性がある場合に、噴射部から噴射液を噴射している。これにより、流量調整部が故障し、筐体内に供給される搬送用ガス中に取り込まれる高温側の搬送用ガスの量を調整することができなくなって、搬送用ガスが高温化した場合であっても、噴射液により搬送用ガスの温度を低下させることができるので、粉砕装置の内部における通常運用温度を超える温度上昇を抑制することができる。したがって、粉砕装置の安全性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記搬送用ガスとともに前記分級部で分級された所定の粒径範囲の粉砕された前記固体燃料を、前記筐体の外部へ排出する排出部と、前記排出部から排出される前記搬送用ガスの温度を検出する排出温度検出部と、前記排出温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備えてもよい。
【0013】
上記構成では、噴射部から噴射液を噴射すると搬送用ガスが冷却されるため、搬送用ガスが供給される粉砕装置の内部の温度も低下し、排出部から排出される搬送用ガスおよび搬送用ガスとともに排出される粉砕された固体燃料の温度も低下して、粉砕された固体燃料の自然着火を抑制する。
上記構成では、出口温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、噴射部から噴射される噴射液の量を調整する。したがって、粉砕装置から排出される搬送用ガスおよび搬送用ガスと共に排出される粉砕された固体燃料の温度を所定の温度に維持することができる。所定の温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラへ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度であってもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記搬送用ガスとともに前記分級部で分級された所定の粒径範囲の粉砕された前記固体燃料を、前記筐体の外部へ排出する排出部と、前記排出部から排出される前記搬送用ガスの温度を検出する排出温度検出部と、前記排出温度検出部が検出した温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第2噴射制御部と、を備えてもよい。
【0015】
排出部から排出される搬送用ガスの温度が高い場合には、粉砕装置の内部の温度が上昇している可能性がある。または、搬送用ガスの流量を調整する流量調整部が故障している可能性がある。上記構成では、排出部から排出される搬送用ガスの温度が所定の温度(所定の閾値の温度)よりも高い場合に、噴射部から噴射液が噴射される。これにより、粉砕装置の内部の温度が上昇している場合や搬送用ガスの流量を調整する流量調整部が故障している場合であっても、噴射液により搬送用ガスの温度を低下させることができるので、粉砕装置の内部の温度上昇を抑制することができる。所定の温度(所定の閾値の温度)とは、例えば、粉砕された固体燃料の供給先であるボイラで、固体燃料を好適に燃焼することができる温度として適切な範囲の上限の温度であってもよい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記排出温度検出部が検出した温度が所定の値となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備えてもよい。
【0017】
上記構成では、排出温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、噴射部から噴射される噴射液の量を調整する。したがって、粉砕装置から排出される搬送用ガスおよび搬送用ガスとともに排出される粉砕された固体燃料の温度を所定の温度に維持することができる。所定の温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラへ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度であってもよい。
【0018】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記搬送用ガス流路から前記筐体の内部へ供給される前記搬送用ガスの温度を検出する供給温度検出部と、前記供給温度検出部が検出した温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記噴射部から前記噴射液を噴射する第3噴射制御部と、を備えてもよい。
【0019】
搬送用ガス流路から筐体内へ供給される搬送用ガスの温度が高い場合には、粉砕装置の内部の温度が上昇する可能性がある。または、搬送用ガスの流量を調整する流量調整部が故障している可能性がある。上記構成では、搬送用ガス流路から筐体内へ供給される搬送用ガスの温度が所定の温度(所定の閾値の温度)よりも高い場合に、噴射部から噴射液が噴射される。これにより、粉砕装置の内部の温度が上昇しそうな場合や搬送用ガスの流量を調整する流量調整部が故障している場合であっても、噴射液により搬送用ガスの温度を低下させることができるので、粉砕装置の内部の温度上昇を抑制することができる。所定の温度(所定の閾値の温度)とは、例えば、粉砕された固体燃料の供給先であるボイラで、固体燃料を好適に燃焼することができる温度として適切な範囲の上限の温度であってもよい。
【0020】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記供給温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、前記噴射部から噴射される前記噴射液の量を調整する噴射量調整部を備えてもよい。
【0021】
上記構成では、供給温度検出部が検出した温度が所定の温度となるように、噴射部から噴射される噴射液の量を調整する。したがって、筐体内へ供給される搬送用ガスの温度を所定の温度に維持することができる。これにより、筐体内から搬送用ガスとともに排出される粉砕された固体燃料の温度を所定の温度に維持することができる。所定の温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラへ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度であってもよい。
【0022】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記搬送用ガス流路は、第1流路と、前記第1流路に接続される第2流路と、を有し、前記第1流路は、前記第2流路と接続する接続位置よりも上流側に、内部を流通する前記搬送用ガスを加熱する加熱部が設けられ、前記噴射部は、前記加熱部よりも下流側であって、かつ、前記接続位置よりも上流側の前記第1流路に設けられていてもよい。
【0023】
上記構成では、第1流路には、第2流路と接続する接続位置よりも上流側に、内部を流通する搬送用ガスを加熱する加熱部が設けられている。これにより、第1流路を流通する搬送用ガスは、加熱部で加熱されて高温側の搬送ガスとなった後に、第2流路から合流した搬送用ガスによって冷却される。また、上記構成では、噴射部が、加熱部と接続位置との間に設けられている。これにより、噴射部は、加熱部で加熱された後であって第2流路からの搬送用ガスによって冷却される前の搬送用ガスに対して、噴射液を噴射している。すなわち、噴射部は、高温側の搬送用ガスに対して噴射液を噴射している。したがって、高温側の搬送用ガスの熱によって、噴射部から噴射された噴射液が蒸発し易い。よって、好適に噴射液を蒸発させて、搬送用ガスを冷却することができる。
また、上記構成では、噴射部が搬送用ガス流路に設けられている。すなわち、噴射部が粉砕部よりも搬送用ガス流れにおける上流側に設けられている。これにより、噴射部を筐体の内部の搬送用ガス流路から離れた位置に設置する場合は、粉砕部で粉砕され分級部へ搬送される固体燃料と噴射部との衝突が生じる可能性あるが、その衝突を抑制することができる。したがって、粉砕された固体燃料による噴射部の摩耗を抑制することができ、噴射部の損傷を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記筐体の底面には、前記筐体の外部と連通する排出口が形成されていて、前記搬送用ガス流路は、前記噴射部が設けられる位置から前記筐体との前記接続位置との間に、前記噴射部側の方が前記筐体側よりも鉛直上方に位置するように傾斜する傾斜部を有してもよい。
【0025】
噴射部から噴射された噴射液のうち、蒸発しなかった噴射液は、搬送用ガス流路の底部に落下する。上記構成では、搬送用ガス流路が傾斜部を有している。これにより、搬送用ガス流路の底部に落下した噴射液は、傾斜部によって筐体方向へ流れる。このとき、搬送用ガス流路の底部に沿って流れる噴射液は、表面積が増大するので、蒸発し易くなる。したがって、好適に噴射液を蒸発させることができるので、気化熱によって搬送用ガスを好適に冷却することができる。
また、上記構成では、筐体の底面には、筐体の外部と連通する排出口が形成されている。これにより、搬送用ガス流路内で蒸発せずに、筐体まで到達した噴射液を排出口から筐体の外部へ排出することができる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記粉砕部よりも前記搬送用ガスの流れにおける上流側と前記粉砕部よりも前記搬送用ガスの流れにおける下流側との差圧を計測する差圧計測部を備え、前記分級部は、所定粒径よりも大きい粉砕された前記固体燃料を回転するブレードで弾いて前記粉砕部へ戻す回転式分級機であって、前記回転式分級機の回転数は、前記差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整されてもよい。
【0027】
噴射部から噴射液を噴射すると筐体の内部の温度分布が変化すると共に、粉砕部から分級部(回転式分級機)へと向かう搬送用ガスの流速も変化する。例えば、流量調整部が故障し、搬送用ガスの流量が変わらない状態で、噴射部から噴射液を噴射すると、搬送用ガスに加え、蒸発した噴射液の流量も加わり、粉砕部から分級部(回転式分級機)へと向かう搬送用ガスの流速は増加する。これにより、搬送用ガスによって、所定粒径よりも大きい固体燃料も回転式分級機まで搬送されることとなる。所定粒径よりも大きい固体燃料は、回転式分級機のブレードで弾かれ、粉砕部へと戻される。このように、噴射部から噴射液を噴射することで、粉砕部と回転式分級機との間を循環する固体燃料の量が増加する。このため、搬送用ガスの筐体内部での流通に対して粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧が増大する。
回転式分級機は回転数が増加すると、所定粒径よりも大きい固体燃料が通過し難くなる。一方、回転数が減少すると、所定粒径よりも大きい固体燃料が通過し易くなる。このように、回転式分級機の回転数によって、回転式分級機を通過する固体燃料の量が変化する。これにより、粉砕部と回転式分級機との間を循環する固体燃料の量も変化するため、粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧も変化する。すなわち、回転式分級機の回転数を調整することで、粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧を調整することができる。
上記構成では、回転式分級機の回転数は、差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される。これにより、噴射部から噴射液を噴射した場合であっても、粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧を所定の範囲とすることができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る粉砕装置は、前記粉砕部は、前記固体燃料が載置される回転テーブルと、前記回転テーブル上の前記固体燃料を押圧して粉砕する粉砕ローラとを有し、前記粉砕ローラの押圧力は、前記差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整されてもよい。
【0029】
粉砕ローラの押圧力を増大すると、固体燃料がより細かく粉砕される。このため、回転式分級機を通過する固体燃料の量が増加する。このように、粉砕ローラの押圧力によって、回転式分級機を通過する固体燃料の量が変化する。これにより、粉砕部と回転式分級機との間を循環する固体燃料の量も変化するため、搬送用ガスの筐体の内部での流通に対して粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧も変化する。すなわち、粉砕ローラの押圧力を調整することで、差圧を調整することができる。
上記構成では、粉砕ローラの押圧力は、差圧計測部が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される。これにより、噴射部から噴射液を噴射した場合であっても、粉砕部よりも上流側と粉砕部よりも下流側との差圧を所定の範囲とすることができる。
【0030】
本発明の一態様に係るボイラシステムは、上記いずれかの粉砕装置と、前記粉砕装置で粉砕された固体燃料を燃焼し、蒸気を生成するとともに排ガスを排出するボイラと、を備え、前記ボイラから排出された前記排ガスの熱によって、搬送用ガスの少なくとも一部を加熱する。
【0031】
上記構成では、ボイラから排出された排ガスの熱によって、搬送用ガスの少なくとも一部を加熱する。これにより、ボイラから排出される排ガスの熱エネルギを、搬送用ガスの加熱に利用することができる。したがって、排ガスの熱エネルギを利用しない構造と比較して、ボイラシステム全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0032】
本発明の第1態様に係る粉砕装置の運転方法は、外殻を為す筐体の内部に配置された粉砕部で固体燃料を粉砕する粉砕工程と、前記筐体の内部であって前記粉砕部の鉛直上方に配置された分級部で、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を分級する分級工程と、前記粉砕部で粉砕された前記固体燃料を前記分級部へ搬送する搬送用ガスを搬送用ガス流路で前記筐体の内部へ供給する供給工程と、前記筐体内の前記搬送用ガス流路の出口近傍または前記搬送用ガス流路内で前記搬送用ガスに噴射液を噴射する噴射工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高温化した搬送用ガスを冷却することで、粉砕装置(ミル)の内部の温度を低下させること、又は、粉砕装置の内部の温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発電プラントの概略構成図である。
【
図2】
図1の固体燃料粉砕装置の模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1の固体燃料粉砕装置の制御部を示すブロック図である。
【
図4】
図1の固体燃料粉砕装置の制御部が行う水噴射処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の水噴射処理中の一次空気の温度、回転式分級機の回転数、ローラの押圧力及び噴射部から噴射される水の量の変化を示すグラフである。
【
図6】
図3の制御部の変形例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る固体燃料粉砕装置の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る粉砕装置及びボイラシステム並びに粉砕装置の運転方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る第1実施形態について、
図1から
図5を用いて説明する。
本実施形態に係る発電プラント1は、固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを備えている。
【0037】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、一例として石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ200のバーナ部220へ供給する装置である。
図1に示す固体燃料粉砕装置100とボイラ200とで構成されたボイラシステム2を含む発電プラント1は、1台の固体燃料粉砕装置100を備えるものであるが、1台のボイラ200の複数のバーナ部220のそれぞれに対応する複数台の固体燃料粉砕装置100を備えるシステムとしてもよい。
【0038】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、ミル(粉砕装置)10と、給炭機20と、送風部30と、状態検出部40と、制御部50とを備えている。
なお、本実施形態では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示している。
【0039】
ボイラ200に供給する石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕するミル10は、石炭のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。
ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
本実施形態に係る固体燃料粉砕装置100は、バイオマス燃料の中でも、吸水性が低いもの(例えば、ブラックペレット等)を粉砕するのに、適している。
【0040】
ミル10は、ハウジング(筐体)11と、駆動部14と、粉砕部15と、回転式分級機(分級部)16と、燃料供給部17と、回転式分級機16を回転駆動させるモータ18とを備えている。粉砕部15は、回転テーブル12とローラ(粉砕ローラ)13とを備えている。
ハウジング11は、鉛直方向に延びる筒状に形成されるとともに、回転テーブル12とローラ13と回転式分級機16と燃料供給部17とを収容する筐体である。
ハウジング11の天井部42の中央部には、燃料供給部17が取り付けられている。この燃料供給部17は、バンカ21から導かれた固体燃料をハウジング11内に供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向に沿って配置され、下端部がハウジング11内部まで延設されている。
【0041】
ハウジング11の底面部41付近には駆動部14が設置され、この駆動部14から伝達される駆動力により回転する回転テーブル12が回転自在に配置されている。
回転テーブル12は、平面視円形の部材であり、燃料供給部17の下端部が対向するように配置されている。回転テーブル12の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。燃料供給部17は、固体燃料(本実施形態では例えば石炭やバイオマス燃料)を上方から下方の回転テーブル12に向けて供給し、回転テーブル12は供給された固体燃料をローラ13との間で粉砕するもので、粉砕テーブルとも呼ばれる。
【0042】
固体燃料が燃料供給部17から回転テーブル12の中央へ向けて投入されると、回転テーブル12の回転による遠心力によって固体燃料は回転テーブル12の外周側へと導かれ、ローラ13との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料は、搬送用ガス流路(以降は、一次空気流路と記載する)100aから導かれた搬送用ガス(以降は、一次空気と記載する)によって上方へと巻き上げられ、回転式分級機16へと導かれる。すなわち、回転テーブル12の外周側の複数箇所には、一次空気流路100aから流入する一次空気をハウジング11内の回転テーブル12の上方の空間に流出させる吹出口(図示省略)が設けられている。吹出口の上方にはベーン(図示省略)が設置されており、吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。ベーンにより旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって、回転テーブル12上で粉砕された固体燃料をハウジング11内の上方の回転式分級機16へと導く。なお、一次空気に混合した固体燃料の粉砕物のうち、所定粒径より大きいものは回転式分級機16により分級されて、または、回転式分級機16まで到達することなく、落下して回転テーブル12に戻されて、再び粉砕される。
【0043】
ローラ13は、燃料供給部17から回転テーブル12に供給された固体燃料を粉砕する回転体である。ローラ13は、回転テーブル12の上面に押圧されて回転テーブル12と協働して固体燃料を粉砕する。
図1では、ローラ13が代表して1つのみ示されているが、回転テーブル12の上面を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数のローラ13が対向して配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つのローラ13が周方向に均等な間隔で配置される。この場合、3つのローラ13が回転テーブル12の上面と接する部分(押圧する部分)は、回転テーブル12の回転中心軸からの距離が等距離となる。
【0044】
ローラ13は、ジャーナルヘッド45によって、上下に揺動可能となっており、回転テーブル12の上面に対して接近離間自在に支持されている。ローラ13は、外周面が回転テーブル12の上面に接触した状態で、回転テーブル12が回転すると、回転テーブル12から回転力を受けて連れ回りするようになっている。燃料供給部17から固体燃料が供給されると、ローラ13と回転テーブル12との間で固体燃料が押圧されて粉砕されて、微粉燃料となる。
【0045】
ジャーナルヘッド45の支持アーム47は、中間部が水平方向に沿った支持軸48によって、ハウジング11の側面部に支持軸48を中心としてローラ上下方向に揺動可能に支持されている。また、支持アーム47の鉛直上側にある上端部には、押圧装置49が設けられている。押圧装置49は、ハウジング11に固定され、ローラ13を回転テーブル12に押し付けるように、支持アーム47等を介してローラ13に荷重を付与する。
【0046】
駆動部14は、回転テーブル12に駆動力を伝達し、回転テーブル12を中心軸回りに回転させる装置である。駆動部14は、回転テーブル12を回転させる駆動力を発生する。駆動部14は、制御部50からの指令により、回転テーブル12の回転数を調整可能とされてもよい。
【0047】
回転式分級機16は、ハウジング11の上部に設けられ中空状の略逆円錐形状の外形を有している。回転式分級機16は、その外周位置に上下方向に延在する複数のブレード16aを備えている。各ブレード16aは、回転式分級機16の中心軸線周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。また、回転式分級機16は、ローラ13により粉砕された固体燃料を所定粒径(例えば、石炭では70~100μm)より大きいもの(以下、所定粒径を超える粉砕された固体燃料を「粗粉燃料」という。)と所定粒径以下のもの(以下、所定粒径以下の粉砕された固体燃料を「微粉燃料」という。)に分級する装置である。回転により分級する回転式分級機16は、ロータリセパレータとも呼ばれ、制御部50によって制御されるモータ18により回転駆動力を与えられ、ハウジング11の上下方向に延在する円筒軸(図示省略)を中心に燃料供給部17の周りを回転する。モータ18は、制御部50からの指令により、回転式分級機16の回転数を調整可能とされている。
【0048】
回転式分級機16に到達した粉砕された固体燃料は、ブレード16aの回転により生じる遠心力と、一次空気の気流による向心力との相対的なバランスにより、大きな径の粗粉燃料は、ブレード16aによって叩き落とされ、回転テーブル12へと戻されて再び粉砕され、微粉燃料はハウジング11の天井部42にある出口(排出部)19に導かれる。
回転式分級機16によって分級された微粉燃料は、出口19から供給流路100bへ排出され、一次空気とともに後工程へと搬送される。供給流路100bへ流出した微粉燃料は、ボイラ200のバーナ部220へ供給される。なお、供給流路100bの出口19の近傍には、ハウジング11から排出される一次空気の温度を計測する第2温度計19a(
図2参照)が設けられている。
【0049】
燃料供給部17は、ハウジング11の上端を貫通するように上下方向に沿って下端部がハウジング11内部まで延設されて取り付けられ、燃料供給部17の上部から投入される固体燃料を回転テーブル12の略中央領域に供給する。燃料供給部17は、給炭機20から固体燃料が供給される。
【0050】
給炭機20は、バンカ21と、搬送部22と、モータ23とを備える。搬送部22は、モータ23から与えられる駆動力によってバンカ21の直下にあるダウンスパウト部24の下端部から排出される固体燃料を搬送し、ミル10の燃料供給部17に導かれる。
通常、ミル10の内部には、粉砕された固体燃料である微粉燃料を搬送するための一次空気が供給されて、圧力が高くなっている。バンカ21の直下にある上下方向に延在する管であるダウンスパウト部24には内部に燃料が積層状態で保持されていて、ダウンスパウト部24内に積層された固体燃料層により、ミル10側の一次空気と微粉燃料が逆流入しないようなシール性を確保している。
ミル10へ供給する固体燃料の供給量は、搬送部22のベルトコンベアのベルト速度で調整されてもよい。
【0051】
送風部30は、ローラ13により粉砕された固体燃料を乾燥させるとともに回転式分級機16へ供給するための一次空気をハウジング11の内部へ送風する装置である。
送風部30は、ハウジング11へ送風される一次空気を適切な温度に調整するために、本実施形態では熱ガス送風機30aと、冷ガス送風機30bと、熱ガスダンパ30cと、冷ガスダンパ30dとを備えている。
【0052】
本実施形態では、熱ガス送風機30aは、エアヒータ51(加熱部)で加熱された空気(以下、「熱ガス」ともいう。)を送風する送風機(PAF:Primary Air Fan)である。熱ガス送風機30aの下流側には熱ガスダンパ(流量調整部)30cが設けられている。熱ガスダンパ30cの開度は制御部50によって制御される。熱ガスダンパ30cの開度によって熱ガス送風機30aが送風する熱ガスの流量が決定する。
【0053】
冷ガス送風機30bは、常温の外気(以下、「冷ガス」ともいう。)を送風する送風機(PAF:Primary Air Fan)である。冷ガス送風機30bの下流側には冷ガスダンパ30dが設けられている。冷ガスダンパ30dの開度は制御部50によって制御される。冷ガスダンパ30dの開度によって冷ガス送風機30bが送風する冷ガスの流量が決定する。
【0054】
一次空気の流量は、本実施形態では熱ガス送風機30aが送風する一次空気の流量と冷ガス送風機30bが送風する一次空気の流量の合計の流量となり、一次空気の温度は、熱ガス送風機30aが送風する一次空気と冷ガス送風機30bが送風する一次空気の混合比率で決まり、制御部50によって制御される。
また、熱ガス送風機30aが送風する一次空気に、ガス再循環通風機を介して電気集塵機など環境装置を通過したボイラ200から排出された燃焼ガスの一部を導き、混合気とすることで、一次空気流路100aから流入する一次空気の酸素濃度を調整してもよい。
【0055】
本実施形態では、ハウジング11の状態検出部40により、計測または検出したデータを制御部50に送信する。本実施形態の状態検出部40は、例えば、差圧計測手段であり、一次空気流路100aからミル10内部へ一次空気が流入する部分及びミル10内部から供給流路100bへ一次空気及び微粉燃料が排出する出口19との差圧をミル10内の差圧として計測する。例えば,回転式分級機16の分級性能により、ミル10内部を回転式分級機16付近と回転テーブル12付近の間で循環する粉砕された固体燃料の循環量の増減とこれに対するミル10内の差圧の上昇低減が変化する。すなわち、ミル10の内部に供給する固体燃料に対して、出口19から排出させる微粉燃料を調整して管理することができるので、微粉燃料の粒度がバーナ部220の燃焼性に影響しない範囲で、多くの微粉燃料をボイラ200に設けられたバーナ部220に供給することができる。
また、本実施形態の状態検出部40は、例えば、温度計測手段(第1温度計54e)であり、ローラ13により粉砕された固体燃料を回転式分級機16へ供給するための一次空気のハウジング11の内部に供給する一次空気の温度を検出して、上限温度を超えないように送風部30を制御する。なお、一次空気は、ハウジング11内において、粉砕物を乾燥しながら搬送することによって冷却されるので、ハウジング11の上部空間の温度は、例えば約60~80度程度となる。
また、本実施形態では、状態検出部40として、出口19から排出される一次空気の温度を計測する第2温度計(排出温度検出部)19a(
図2参照)や、回転テーブル12の上方の空間と回転テーブル12の下方の空間との差圧を検出する差圧計(差圧計測部)55(
図2参照)等も設けられている。
【0056】
制御部50は、固体燃料粉砕装置100の各部を制御する装置である。制御部50は、例えば、駆動部14に駆動指示を伝達することによりミル10の運転に対する回転テーブル12の回転速度を制御してもよい。制御部50は、例えば回転式分級機16のモータ18へ駆動指示を伝達して回転速度(回転数)を制御することで、分級性能を調整することにより、ミル10内の差圧を所定の範囲に適正化して微粉燃料の供給を安定化させることができる。また、制御部50は、例えば給炭機20のモータ23へ駆動指示を伝達することにより、搬送部22が固体燃料を搬送して燃料供給部17へ供給する固体燃料の供給量を調整することができる。また、制御部50は、開度指示を送風部30に伝達することにより、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御して一次空気の流量と温度を制御することができる。
【0057】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0058】
次に、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させるボイラ200について説明する。
ボイラ200は、火炉210とバーナ部220とを備えている。
【0059】
バーナ部220は、供給流路100bから供給される微粉燃料を含む一次空気と、熱交換器(図示省略)から供給される二次空気とを用いて微粉燃料を燃焼させて火炎を形成する装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、蒸発器,過熱器,エコノマイザなどの熱交換器(図示省略)を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
【0060】
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、環境装置(脱硝装置、電気集塵機などで図示省略)で所定の処理を行うとともに、空気予熱器などの熱交換器(本実施形態ではエアヒータ51)で外気との熱交換が行われ、誘引通風機(図示省略)を介して煙突(図示省略)へと導かれて大気へと放出される。熱交換器において燃焼ガスとの熱交換により加熱された外気は、前述した熱ガス送風機30aに送られる。
ボイラ200の各熱交換器への給水は、エコノマイザ(図示省略)において加熱された後に、蒸発器(図示省略)および過熱器(図示省略)によって更に加熱されて高温高圧の蒸気が生成され、発電部である蒸気タービン(図示省略)へと送られて発電機(図示省略)を回転駆動して発電が行われ、発電プラント1を構成する。
【0061】
次に、送風部30及び送風部30に関連する構成の詳細について
図1から
図5を用いて説明する。
送風部30は、一次空気流路100aを介して、一次空気をハウジング11の内部へ供給する。詳細には、
図2の矢印A1で示す熱ガスと、矢印A2で示す冷ガスとを混合することで、矢印A3で示す一次空気とし、ハウジング11の内部へ供給する。一次空気流路100aの下流端(一次空気流路100aの出口)は、ハウジング11の側壁部に接続している。
【0062】
一次空気流路100aは、
図1及び
図2に示すように、熱ガスが流通する熱ガスダクト(第1流路)52と、冷ガスが流通する冷ガスダクト(第2流路)53と、熱ガスダクト52の下流端及び冷ガスダクト53の下流端が接続され、熱ガスと冷ガスとが混合されたガスである一次空気が流通する供給ダクト54と、を備えている。熱ガスダクト52の下流端部と冷ガスダクト53の下流端部とは接続位置Pで接続している。
【0063】
本実施形態では、熱ガスダクト52には、熱ガス送風機30aと、熱ガス送風機30aの下流側に配置される熱ガスダンパ30cとが設けられている。また、熱ガスダクト52には、熱ガス送風機30aの上流側にエアヒータ51が設けられ、熱ガスダンパ30cの下流側に噴射部60が設けられている。
熱ガスダクト52は、
図2に示すように、上下方向に延在する鉛直部52aと、鉛直部52aの下端から曲折して略水平方向に延びる水平部52bと、を有している。水平部52bの下流端が、接続位置Pで供給ダクト54と接続されている。鉛直部52aは凡そ鉛直上下方向に配置されるものであり厳密に鉛直上下方向でなくてもよく、また水平部52bは凡そ水平方向に配置されるものであり厳密に水平方向でなくてもよい。
【0064】
エアヒータ51は、ボイラ200から排出された排ガスと外気とを熱交換することで、外気を加熱する。エアヒータ51に適用される熱交換器は、どのような形式の熱交換器でもよく、例えば、回転再生式熱交換器等が適用されてもよい。エアヒータ51で加熱された外気は、熱ガスとして、熱ガスダクト52内を流通する。
【0065】
熱ガスダンパ30cは、鉛直部52aに設けられている。また、熱ガスダンパ30cは、開度を調整することで、熱ガスダクト52内を流通する熱ガスの流量を調整する。熱ガスダンパ30cには、第1開度指示計30ca(開度検出部)が設けられている。第1開度指示計30caは、熱ガスダンパ30cの開度を計測し、計測結果を制御部50へ送信する。
【0066】
噴射部60は、熱ガスダクト52内に水(噴射液)を噴射する噴射ノズル61と、噴射ノズル61へ水を供給する水供給配管62と、を有する。なお、噴射部60から噴射される噴射液は、一次空気の熱ガスの熱によって蒸発するものであればよく、水に限定されない。
【0067】
噴射ノズル61は、熱ガスダクト52の内部であって、熱ガスダンパ30cの下流側の近傍に設けられている。本実施形態では、熱ガスダクト52のうち、鉛直部52aと水平部52bとの接続部分(すなわち、略直角に湾曲している部分)付近に設けられている。噴射ノズル61は、熱ガスダクト52の内周面から離間して配置されている。具体的には、噴射ノズル61は、例えば、水平部52bの流路断面(長手方向の断面)における略中心に配置される。噴射ノズル61は、熱ガス流れにおける下流側へ向かって、略水平方向へ水を噴射する。詳細には、噴射ノズル61から噴射される水は、水平部52bの流路断面を均一に覆うように噴射される。また、噴射ノズル61は、細い粒子径(好ましくは0.1mm以下)となるように、水を噴射する。これにより、噴射した水は一次空気の熱ガスにより効率的に蒸発させることができる。
なお、噴射ノズル61を配置する位置は上記説明の位置に限定されず、例えば、熱ガスダクト52の内周面と接触して配置されていてもよい。このような場合には、熱ガスの流れと交差するように水を噴射することで、水平部52bの流路断面を均一に覆うように噴射してもよい。また、噴射ノズル61は複数設けてもよい。
また、噴射ノズル61は、熱ガスダクト52から引き抜き可能に構成されていてもよい。このように、構成することで、噴射ノズル61を容易に点検や交換することができる。また、噴射ノズル61近傍に点検口を設けてもよい。このように構成することで、噴射ノズル61を容易に点検することができる。
【0068】
水供給配管62は、噴射ノズル61と水供給装置(図示省略)とを接続しており、水供給装置から噴射ノズル61へ水を供給する。水供給配管62には、上流側から順番に、制御弁63、ストレーナ64及び流量計65が設けられている。
制御弁63は、全閉状態(開度0%)から全開状態(開度100%)までの間で開度を調整可能に構成されている。制御弁63は、制御部50からの指令によって開度を調整することで、内部を流通して噴射ノズル61へ供給される水の量を調整する。ストレーナ64は、水供給配管62を流通する水から異物を除去する。ストレーナ64を設けることで、噴射ノズル61へ供給される水に含まれる異物が減少するので、噴射ノズル61の目詰まりを抑制することができる。流量計65は、水供給配管62の内部を流通する水の流量を計測する。流量計65は、計測した流量を制御部50へ送信する。なお、制御弁63とは別に、水供給配管62に開閉弁を設けてもよい。
なお、噴射ノズル61、水供給配管62及びその近傍のダクトは、高温の熱ガスと低温の水にさらされ熱衝撃が発生する場合があることから、十分な肉厚を確保するように構成することが望ましい。また、ステンレス鋼や熱衝撃の感受性の低い材料で製作されることが望ましい。
【0069】
冷ガスダクト53には、冷ガス送風機30bと、冷ガス送風機30bの下流側に配置される冷ガスダンパ30dとが設けられている。
【0070】
冷ガスダンパ30dは、開度を調整することで、冷ガスダクト53内を流通する冷ガスの流量を調整する。冷ガスダンパ30dには、第2開度指示計30da(開度検出部)が設けられている。第2開度指示計30daは、冷ガスダンパ30dの開度を計測し、計測結果を制御部50へ送信する。
【0071】
供給ダクト54は、接続位置Pから略水平に延びる第1水平部分54aと、第1水平部分54aの下流端から延びる傾斜部分54bと、傾斜部分54bの下流端から略水平に延びる第2水平部分54cと、第2水平部分54cの下流端から延びてハウジング11に接続する傾斜した下流端部分54dと、を有している。
傾斜部分54bは、噴射部60側(上流側)の方がハウジング11側(下流側)よりも鉛直上方に位置するように、水平面に対して傾斜している。また、下流端部分54dも、上流側の方が下流側よりも鉛直上方に位置するように、水平面に対して傾斜している。熱ガスダンパ30cと冷ガスダンパ30dの配置により、傾斜部分54bは、省略してもよい。供給ダクト54の下流端(ハウジング11との接続部分)の近傍には、第1温度計(供給温度検出部)54eが設けられている。第1温度計54eは、供給ダクト54からハウジング11へ供給される一次空気の温度を計測する。
【0072】
また、一次空気流路100aの噴射ノズル61よりも下流側に、噴射ノズル61から噴射され蒸発(気化)しなかった水を排出する排水部68を設けてもよい。排水部68は、熱ガスダクト52と冷ガスダクト53との接続位置P近傍に形成されている。排水部68は、ダクトの底面に形成された開口である排水口(図示省略)と、排水口と連通する排水配管66と、を有する。排水配管66は、排水口から流入した水を、所定の排水処理施設(図示省略)まで搬送する。排水配管66には、排水配管弁67が設けられている。排水配管弁67は、開閉弁であり、排水配管66を排水が流通する状態と、排水配管66を排水が流通しない状態とを切り換えることができる。
【0073】
次に、スクレーパ70について説明する。スクレーパ70は、
図2に示すように、回転テーブル12の下方に配置される。スクレーパ70は、一端が回転テーブル12に固定されるアーム部71と、アーム部71の他端部(回転支持部に固定される一端部とは逆の端部)から鉛直下方側に延びる掃出部72と、を有する。すなわち、スクレーパ70は、回転テーブル12と同軸に回転可能となっている。アーム部71は、ハウジング11の側面部方向に略水平に延びている。掃出部72は、下端がハウジング11の底面部41の上面に当接するように配置され、底面部41の上面を摺動する。
【0074】
また、ハウジング11の底面部41であって、掃出部72の回転軌道上には、開口(以下、「スピレージシュート73」という。)が形成されている。スピレージシュート(排出口)73は、排出管74を介して、ハウジング11の外側に配置されるスピレージホッパ75に連通している。スクレーパ70により掃出されたハウジング11の底面部41に落下した固体燃料等が、スピレージシュート73から排出管74へ排出される。排出された固体燃料等は、排出管74の途中に設けた仕切弁76を開放した際にスピレージホッパ75に搬送される。
【0075】
また、制御部50は、
図3に示すように、熱ガスダンパ30c及び冷ガスダンパ30dへ開度指令信号を送信する開度指令部50aと、所定の場合に水を噴射するように噴射部60を制御する第1噴射制御部50bと、噴射部60から噴射される水の量を調整する制御弁63を制御する噴射量調整部50cと、回転式分級機16のモータ18の回転数を調整する回転数制御部50dと、ローラ13の押圧力を調整する押圧装置49を制御する押圧力制御部50eと、各種閾値等を記憶する記憶部50fと、を備えている。
【0076】
開度指令部50aは、熱ガスダンパ30c及び冷ガスダンパ30dの開度が所定の開度となるように、各ダンパへ開度指令信号を送信する。すなわち、熱ガスダンパ30c及び冷ガスダンパ30dは、開度指令信号の開度となるように、開度を調整する。
【0077】
第1噴射制御部50bは、第1温度計54eの温度が所定の閾値(以下、「入口温度閾値」という。)よりも大きく、かつ、熱ガスダンパ30cへ送信した開度指令部50aの開度と第1開度指示計30caが計測した開度との差が所定の閾値(以下、「開度差閾値」という。)よりも大きい場合に、熱ガスダンパ30cの開度が適切に制御されていないと判断して、水を噴射するように噴射部60を制御する。
【0078】
噴射量調整部50cは、第2温度計19aが計測した温度が所定の範囲(以下、「出口温度範囲」という。)内ではない場合に、噴射部60から噴射される水の量を調整する。具体的には、第2温度計19aが計測する温度が、所定の温度(以下、「目標出口温度」という。)となるように、噴射する水の量を調整する。
【0079】
回転数制御部50dは、差圧計55が計測する差圧が、所定の範囲(以下、「目標差圧範囲」という。)よりも大きい場合に、目標差圧範囲内となるように回転式分級機16の回転数を制御する。具体的には、差圧計55が計測する差圧が目標差圧範囲より大きい場合には、モータ18を制御し、回転式分級機16の回転数を減少させる。
【0080】
押圧力制御部50eは、差圧計55が計測する差圧が、所定の範囲(以下、「目標差圧範囲」という。)よりも大きい場合に、目標差圧範囲内となるようにローラ13の押圧力を制御する。具体的には、差圧計55が計測する差圧が目標差圧範囲より大きい場合には、押圧装置49を制御し、ローラ13の押圧力を増大させる。
【0081】
記憶部50fは、入口温度閾値、開度差閾値、出口温度閾値、目標出口温度及び目標差圧範囲等を記憶している。
【0082】
以下に、本実施形態での制御部50が行う水噴射処理の一例について、
図4のフローチャートを用いて説明する。本処理は、固体燃料粉砕装置100の運転中に、所定の時間毎に繰り返して実行される。
【0083】
まず、制御部50は、S1で、第1温度計54eが計測した温度が、記憶部50fに記憶された入口温度閾値よりも大きいか否かを判断する。入口温度閾値よりも大きい場合には、S2へ進む。入口温度閾値よりも小さい場合には、S1を繰り返す。
制御部50は、S2で、開度指令部50aが熱ガスダンパ30cへ送信した開度と第1開度指示計30caが計測した開度との差が、記憶部50fに記憶されている開度差閾値よりも大きい否かを判断する。開度差閾値よりも大きい場合には、熱ガスダンパ30cが故障して第1温度計54eの温度が上昇していると判断して、S3へ進む。開度差閾値よりも小さい場合には、S1へ戻る。
制御部50は、S3で、制御弁63を開状態として、噴射ノズル61から水を噴射する。このとき、噴射ノズル61から噴射される水の量は、所定の量とする。噴射ノズル61から水を噴射すると、制御部50はS4へ進む。
【0084】
制御部50は、S4で、第2温度計19aが計測した温度が、記憶部50fに記憶された出口温度範囲内か否かを判断する。出口温度範囲内と判断した場合には、S5へ進む。出口温度範囲内ではないと判断した場合には、S6へ進む。
制御部50は、S6で、第2温度計19aが計測した温度が出口温度範囲よりも大きい場合には、開度が大きくなるように制御弁63を制御し、噴射される水の量を増加させる。そして、第2温度計19aが計測する温度が、目標出口温度となるように、噴射する水の量を調整する。また、第2温度計19aが計測した温度が出口温度範囲よりも小さい場合には、噴射する水による一次空気の冷却効果が大きいと判断して、開度が小さくなるように制御弁63を制御し、噴射する水の量を減少させる。そして、目標出口温度となるように、噴射する水の量を調整する。S6を終えると、制御部50は、S4へ戻る。
【0085】
制御部50は、S5で、差圧計55が計測する差圧が目標差圧範囲内か否かを判断する。目標差圧範囲内である場合には、本処理を終了する。目標差圧範囲内ではない場合には、S7へ進む。
制御部50は、S7で、差圧計55が計測した差圧が目標差圧範囲よりも大きい場合には、回転式分級機16を通過する粉砕された固体燃料を増加させてミル10の運転安定性を確保するために、回転式分級機16の回転数が小さくなるようにモータ18を制御する。そして、差圧が目標差圧範囲内となるように、回転数を調整する。差圧計55が計測した差圧が目標差圧範囲よりも小さい場合には、回転式分級機16の回転数が大きくなるようにモータ18を制御する。そして、差圧が目標差圧範囲内となるように、回転数を調整する。S7を終えると、制御部50は、S8へ進む。
【0086】
制御部50は、S8で、差圧計55が計測する差圧が目標差圧範囲内か否かを判断する。目標差圧範囲内である場合には、本処理を終了する。目標差圧範囲内ではない場合には、S9へ進む。
制御部50は、S9で、差圧計55が計測した差圧が目標差圧範囲よりも大きい場合には、粉砕された固体燃料の粗粉燃料を減少させるために、ローラ13の押圧力が大きくなるように押圧装置49を制御する。そして、差圧が目標差圧範囲内となるように、押圧力を調整する。差圧計55が計測した差圧が目標差圧範囲よりも小さい場合には、ローラ13の押圧力が小さくなるように押圧装置49を制御する。そして、差圧が目標差圧範囲内となるように、押圧力を調整する。S9を終えると、制御部50は、本処理を終了する。
【0087】
このようにして、噴射部60から水を噴射する。噴射部60からの水の噴射は、メンテナンス等のために固体燃料粉砕装置100を停止し熱ガスダンパ30cを修理するまで、もしくは、固体燃料粉砕装置100の運転中に自然と熱ガスダンパ30cの故障が解消するまで続けられる。固体燃料粉砕装置100の運転中に自然と熱ガスダンパ30cの故障が解消する事態としては、熱ガスダンパ30cに異物が挟まることで熱ガスダンパ30cの開度調整が一時的に不能となっていたが、運転中に異物が外れる事態等が考えられる。
噴射部60からの水の噴射を停止する際には、差圧計55が計測する差圧の値が目標差圧範囲内を維持するように、回転式分級機16の回転数及びローラ13の押圧力を通常の値に戻す。
【0088】
上記で説明した構成の変形例の1つとして、第1噴射制御部50bは、第1温度計54eに代わり、第2温度計19aの温度に基づいて噴射部60を制御してもよい。具体的には、第1噴射制御部50bは、第2温度計19aの温度が所定の閾値(以下、「出口温度閾値」という。)よりも大きく、かつ、熱ガスダンパ30cへ送信した開度指令部50aの開度と第1開度指示計30caが計測した開度との差が所定の開度差閾値よりも大きい場合に、熱ガスダンパ30cの開度が適切に制御されていないと判断して、水を噴射するように噴射部60を制御してもよい。
【0089】
また、上記で説明した構成の変形例の1つとして、第1噴射制御部50bは、
図6に示すように、搬送用ガスの温度によらず、冷ガスダンパ30dや熱ガスダンパ30cの開度に基づいて噴射部60を制御してもよい。具体的には、第1噴射制御部50bは、熱ガスダンパ30cへ送信した開度指令部50aの開度と第1開度指示計30caが計測した開度との差が所定の開度差閾値よりも大きい場合、もしくは冷ガスダンパ30dへ送信した開度指令部50aの開度と第2開度指示計30daが計測した開度との差が所定の開度差閾値よりも小さい場合、熱ガスダンパ30cもしくは冷ガスダンパ30dの開度が適切に制御されていないと判断して、水を噴射するように噴射部60を制御してもよい。
【0090】
次に、水噴射処理中の一次空気の温度、回転式分級機16の回転数、ローラ13の押圧力及び噴射部60から噴射される水の量の変化について、
図5のグラフを用いて説明する。(a)は、ハウジング11に供給される一次空気の温度(後述する入口温度)の変化(実線A)及びハウジング11から排出される一次空気の温度(後述する出口温度)の変化を示している(実線B)。(b)は、ローラ13の押圧力の変化(実線C)、回転式分級機16の回転数の変化(実線D)を示している。(c)は、噴射部60から噴射される水の量の変化(実線E)を示している。
【0091】
固体燃料粉砕装置100が通常に運転している状態(すなわち、時間T1で熱ガスダンパ30cが故障する前の状態)では、熱ガスダンパ30cで流量を調整された高温の熱ガス(本実施形態では、一例として、略300℃)と、冷ガスダンパ30dで流量を調整された冷ガス(本実施形態では、一例として、略20℃)とを混合することで、ハウジング11に供給される一次空気の温度(すなわち、第1温度計54eで計測される温度。以下、「入口温度」という。)及びハウジング11から排出される一次空気の温度(すなわち、第2温度計19aで計測される温度。以下、「出口温度」という。)が目標の温度範囲となるように調整している。本実施形態では、(a)に示すように、入口温度の目標温度が一例として略250℃であり、出口温度の目標温度が一例として略80℃となるように各ダンパの開度を調整している。
【0092】
時間T1で熱ガスダンパ30cが故障したとすると、第1温度計54eで計測される入口温度が上昇する。また、それに伴って、第2温度計19aで計測される出口温度も上昇する。熱ガスダンパ30cが故障していると制御部50が判断した場合(
図4のS1参照)、(c)に示すように、時間T2のタイミングで、噴射部60から水が噴射される。この時、所定の流量の水が噴射される。
【0093】
時間T2のタイミングで水が噴射されることで、(a)に示すように、入口温度が低下する。なお、(a)の破線は、噴射部60から水を噴射しなかった場合の入口温度を示している。また、時間T2のタイミングで水が噴射されることで、出口温度の上昇も抑制される。
また、噴射部60から水を噴射するとハウジング11の内部の温度分布が変化すると共に、搬送用ガスに、蒸発した水(蒸気)の流量も加わることで、粉砕部15から分級部(回転式分級機16)へと向かう一次空気の流速も増加する。これにより、所定粒径よりも大きい粉砕された固体燃料(粗粉燃料)も一次空気によって回転式分級機16まで搬送されることとなる。搬送された所定粒径よりも大きい粗粉燃料は、回転式分級機16のブレード16aで弾かれ、回転テーブル12へと戻される。このように、噴射部60から水を噴射することで、回転テーブル12と回転式分級機16との間を循環する粗粉燃料の量が増加する。このため、回転テーブル12の上方の空間(すなわち、回転テーブル12よりも上流側の空間)と、回転テーブル12の下方の空間(すなわち、回転テーブル12よりも下流側の空間)との差圧が増大する。これを解消すべく、時間T2のタイミングで回転式分級機16の回転数を低減させる。これにより、分級性能を低下させて回転式分級機16を固体燃料が通過させやすくし、粗粉燃料の循環量を低下させ、前術の差圧増大を抑制している。一方で、回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧が軽微に留まった場合は、時間T2のタイミングで回転式分級機16の回転数を増加させる(
図5(b)の破線参照)。これにより、回転式分級機16の分級性能を向上させて、流速の増加による粗粉の排出を抑制し、後流側での未燃分の増加を抑制している。なお、時間T2のタイミングまでは、回転式分級機16は、定格の回転数で回転している。
【0094】
回転式分級機16の回転数を低減させても、十分に前述の差圧増大を抑制することができない場合には、時間T3のタイミングで、ローラ13の押圧力を増大させる。ローラ13の圧力を増大させることで、固体燃料がより細かく粉砕される。これにより、粗粉燃料が減少して粉砕された固体燃料が回転式分級機16を通過し易くすることができる。これにより、粉砕された固体燃料の循環量を低下させ、前述の差圧増加を抑制する。なお、時間T3のタイミングまでは、ローラ13の押圧力は、定格の押圧力とされている。ローラ13の押圧力を増大させるために必要なエネルギよりも、回転式分級機16の回転数を増大させるエネルギの方が小さいため、本実施形態のように、回転式分級機16の回転数を増大させてからローラ13の押圧力を増大させることで、消費エネルギを低減させることができる。
【0095】
噴射部60は、時間T2で水を噴射すると、その後は、出口温度が80℃となるように、噴射する水の量を調整する。(a)に示すように、出口温度が熱ダンパ故障前の目標温度の80℃となっても、入口温度は熱ダンパ故障前の250℃よりもαだけ高い温度となる場合がある。これは、ダクト内での一次空気の流速が早い場合など、噴射部60から噴射された水の一部が第1温度計54e通過前に蒸発完了せず、ミル10のハウジング11内部等で蒸発して蒸気となり、その際の気化熱(蒸発熱)によって低下した出口温度を、入口温度の増加分αで補うことで、ミル10内で固体燃料の乾燥に使用される熱量を確保する為である。
したがって、仮に、入口温度の目標温度を基準とする場合には、入口温度の目標温度を熱ダンパ故障前の温度よりもαだけ高い温度となるようにして、水の噴射量を調整することで、出口温度を熱ダンパ故障前の温度と同等の目標温度とすることができる。なお、入口温度の増加分αについては、試運転時等に実機検証の上決定することが望ましい。
【0096】
時間T4のタイミングで熱ガスダンパ30cの故障が解消すると、(c)に示すように、噴射部60から噴射する水の量を漸次減少させる。これにより、時間T7のタイミングで噴射部60からの水の噴射が停止される。時間T4のタイミングで熱ガスダンパ30cの故障が解消すると、回転式分級機16の回転数も徐々に増大させ、時間T5のタイミングで定格回転数に戻す。また、ローラ13の押圧力も徐々に減少させ、時間T6のタイミングで定格の押圧力に戻す。
【0097】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、固体燃料粉砕装置100のミル10の外殻を為すハウジング11の内部へ一次空気を供給する一次空気流路100aとして、例えば、熱ガスダクト52内に水を噴射する噴射部60を備えている。換言すれば、熱ガスの主流に対して水を噴射する噴射部60を備えている。噴射部60から水が噴射されると熱ガスの熱によって水が蒸発し、その際の気化熱(蒸発熱)によって熱ガスが冷却される。また、水の熱容量によって、熱ガスが冷却される。すなわち、水の潜熱及び顕熱によって、熱ガスが冷却される。その後、冷却された熱ガスは一次空気として、ハウジング11の内部を流通する。このため、熱ガスを冷却することで、固体燃料粉砕装置100の内部の温度を低下させること、又は、固体燃料粉砕装置100の内部の温度の上昇を抑制することができる。
また、水が蒸発することで、一次空気の酸素分圧が低下するので、ハウジング11内の固体燃料の自然着火を抑制することができる。ミル10の内部の通常運用を超える温度上昇を抑制し、固体燃料の自然着火を抑制して固体燃料粉砕装置100の安全性を向上させることができる。
【0098】
開度指令部50aが送信する開度指令信号における開度と第1開度指示計30caが検出する熱ガスダンパ30cの開度との差が大きい場合には、熱ガスダンパ30cが故障している可能性がある。熱ガスダンパ30cが故障し、熱ガスダクト52内の熱ガスの流量を調整できなくなると、ハウジング11内に供給される一次空気の温度及び量も調整することができなくなり、ミル10の内部の温度が通常運用温度を超えて上昇する可能性がある。
本実施形態では、開度指令部50aが送信する開度指令信号における開度と第1開度指示計30caが検出する開度との差が、開度差閾値よりも大きい場合に、噴射部60から水を噴射する。すなわち、熱ガスダンパ30cが故障している可能性がある場合に、噴射部60から水を噴射している。これにより、熱ガスダンパ30cが故障し、ハウジング11内に供給される一次空気中に取り込まれる高温ガスの量を調整することができなくなって一次空気が高温化した場合であっても、噴射部60からの水によって、一次空気の温度を低下させることができるので、ミル10の内部における通常運用温度を超える温度上昇を抑制することができる。したがって、ミル10の安全性を向上させることができる。
【0099】
本実施形態では、噴射部60から水を噴射すると一次空気が冷却されるため、一次空気が供給されるミル10の内部の温度も低下し、ハウジング11から排出される一次空気および一次空気とともに排出される粉砕された固体燃料の温度も低下して、粉砕された固体燃料の自然着火を抑制する。
本実施形態では、第2温度計19aが検出した温度が所定の温度となるように、噴射部60から噴射される水の量を調整する。したがって、ミル10から排出される一次空気および一次空気とともに排出される粉砕された固体燃料の温度を所定の目標出口温度(本実施形態では、一例として、80℃)に維持することができる。所定の目標出口温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラ200のバーナ部220へ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度であってもよい。
【0100】
本実施形態では、熱ガスダクト52には、冷ガスダクト53と接続する接続位置Pよりも上流側に、内部を流通する外気を加熱するエアヒータ51が設けられている。これにより、熱ガスダクト52を流通する熱ガスは、エアヒータ51で加熱された後に、冷ガスダクト53から合流する冷ガスによって冷却される。本実施形態では、噴射ノズル61が、エアヒータ51と接続位置Pとの間に設けられている。これにより、噴射部60は、エアヒータ51で加熱された後であって冷ガスダクト53からの冷ガスによって冷却される前の高温の熱ガスに対して、水を噴射している。したがって、温度の高い熱ガスの熱によって、噴射部60から噴射された水が蒸発し易い。よって、好適に水を蒸発させて、熱ガスを冷却することができる。
また、本実施形態では、噴射ノズル61が一次空気流路100aに設けられている。すなわち、噴射ノズル61が回転テーブル12よりも一次空気流れにおける上流側に設けられている。これにより、噴射部60をハウジング11の内部に設置する場合は、回転テーブル12から回転式分級機16へ搬送される粉砕された固体燃料と、噴射部60との衝突が生じる可能性あるが、その衝突を抑制することができる。したがって、粉砕された固体燃料による噴射部60の摩耗を抑制することができ、噴射部60の損傷を抑制することができる。
【0101】
噴射部60から噴射された水のうち、蒸発しなかった水は、一次空気流路100aの底部に落下する。本実施形態では、一次空気流路100aが傾斜部分54bを有している。これにより、一次空気流路100aの底部に落下した水は、傾斜部分54bおよび傾斜した下流端部分54dによってハウジング11方向へ流れる。このとき、一次空気流路100aの底部に沿って流れる水は、表面積が増大するので、蒸発し易くなる。したがって、好適に水を蒸発させることができるので、気化熱によって一次空気を好適に冷却することができる。
また、本実施形態では、ハウジング11内にはスクレーパ70が設けられ、ハウジング11の底面には、ハウジング11の外部と連通するスピレージホッパ75が形成されている。これにより、一次空気流路100a内で蒸発せずに、ハウジング11まで到達した水をスピレージホッパ75からハウジング11の外部へ排出することができる。
また、本実施形態では、一次空気流路100aの底面に排水配管66が設けられている。このため、排水配管66からも蒸発しなかった水を排出することができる。
【0102】
噴射部60から水を噴射するとハウジング11の内部の温度分布が変化すると共に、粉砕部15から分級部(回転式分級機16)へと向かう一次空気の流速も変化する。例えば、熱ガスダンパ30cが故障し、一次空気の流量が変わらない状態で、噴射部60から噴射液を噴射すると、一次空気に加え、蒸発した水及び、蒸発した蒸気の流量も加わり、回転テーブル12から回転式分級機16へと向かう一次空気の流速が増大する。これにより、所定粒径よりも大きい粉砕された固体燃料も一次空気によって回転式分級機16まで搬送されることとなる。搬送された所定粒径よりも大きい粉砕された固体燃料(粗粉燃料)は、回転式分級機16のブレード16aで弾かれ、回転テーブル12へと戻される。このように、噴射部60から水を噴射することで、回転テーブル12と回転式分級機16との間を循環する粗粉燃料の量が増加する。このため、回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧が増大する。
回転式分級機16は回転数が増加すると、所定粒径よりも大きい粗粉燃料が通過し難くなる。一方、回転数が減少すると、所定粒径よりも大きい粗粉燃料が通過し易くなる。このように、回転式分級機16の回転数によって、回転式分級機16を通過する粗粉燃料の量が変化する。これにより、回転テーブル12と回転式分級機16との間を循環する粗粉燃料の量も変化するため回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧も変化する。すなわち、回転式分級機16の回転数を調整することで、差圧計55が計測する差圧を調整することができる。
本実施形態では、回転式分級機16の回転数は、差圧計55が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される。これにより、噴射部60から水を噴射した場合であっても、回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧を所定の範囲とすることができる。したがって、ミル10の安定運転を維持することができる。
【0103】
ローラ13の押圧力を増大すると、固体燃料がより細かく粉砕される。このため、粉砕された固体燃料の粗粉燃料の割合が減少して、回転式分級機16を通過する粉砕された固体燃料の量が増加する。このように、ローラ13の押圧力によって、回転式分級機16を通過する粉砕された固体燃料の量が変化する。これにより、回転テーブル12と回転式分級機16との間を循環する粗粉燃料の量も変化するため、回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧も変化する。すなわち、回転式分級機16の回転数を調整することで、差圧計55が計測する差圧を調整することができる。
本実施形態では、ローラ13の押圧力は、差圧計55が計測する差圧が所定の範囲となるように調整される。これにより、噴射部60から水を噴射した場合であっても、回転テーブル12の上方の空間と、回転テーブル12の下方の空間との差圧を所定の範囲とすることができて、ミル10の安定運転を維持することができる。
【0104】
本実施形態では、ボイラ200から排出された排ガスの熱によって、外気を加熱して熱ガスとしている。これにより、ボイラ200から排出される排ガスの熱エネルギを、一次空気の加熱に利用することができる。したがって、排ガスの熱エネルギを利用しない構造と比較して、発電プラント1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0105】
エアヒータ51として、回転再生式熱交換器を用いている場合には、エアヒータ51で加熱した熱ガスに、排ガスからの灰等の異物が混入する。このため、熱ガスが流通する熱ガスダクト52に配置された熱ガスダンパ30cは、冷ガスダンパ30dと比較して故障し易くなる可能性がある。本実施形態では、故障し易い熱ガスダンパ30cを監視して、噴射部60から水を噴射しているので、より好適にミル10の安定運転を維持することに対応することができる。
【0106】
搬送用ガスとして空気を用いている場合、一次空気の比熱(1kJ/kg・kと仮定)と水の気化熱(2250kJ/kg)を用いると、例えば、一次空気の温度を10℃程度下げたい場合は、一次空気の流量の0.4~0.5重量%程度の少量の水を供給して噴射させて、蒸発させることができればよい。このとき、噴射される水の粒径が直径0.1mm程度のミストとなるように噴射することで水の表面積は非常に大きくなり一次空気から短時間で十分な伝熱量を得て蒸発が完了し、効率的に一次空気(熱ガス)の冷却効果を得られる。
【0107】
また、本実施形態では、熱ガスダンパ30cが故障した場合であっても、固体燃料粉砕装置100のミル10の運転を停止させることなく、ミル10の内部の温度の上昇を抑制することができる。したがって、固体燃料粉砕装置100の稼働率を向上させることができ、発電プラント1の安定した運転維持することができる。
【0108】
次に、本発明の第2実施形態について、
図7を参照して説明する。
[第2実施形態]
本実施形態では、
図7に示すように、冷ガスダクト53、冷ガスダンパ30d及び冷ガス送風機30bが設けられていない点で、第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では、制御部50が、噴射部60から噴射される水の流量を調整する第2噴射制御部(図示省略)を有している。第2噴射制御部は、固体燃料粉砕装置100のミル10が通常の運転を行っている際に、噴射部60から水を噴射する。具体的には、第2噴射制御部は、ハウジング11から排出される一次空気の温度(すなわち、第2温度計19aによって計測される温度)が、所定の温度となるように、熱ガスダンパ30cの開度及び噴射部60から噴射する水の量を調整する。
【0109】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、第2温度計19aが計測した温度により、ハウジング11から排出される一次空気の温度が、所定の目標出口温度となるように、熱ガスダンパ30cの開度及び噴射部60から噴射する水の流量を調整する。これにより、所定の温度の一次空気及び一次空気と共に排出される粉砕された固体燃料を供給先へ供給することができる。所定の目標出口温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラ200へ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度であってもよい。
【0110】
また、本実施形態では、ハウジング11へ供給する一次空気の全量が、エアヒータ51を通過する外気によって賄われる。よって、排ガスの熱量からミル10を経由してボイラ200へと供給する量が増加することで、排ガスから回収する熱量を増加させことができる。したがって、発電プラント1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0111】
なお、制御部50は、第2噴射制御部の代わりに、第3噴射制御部(図示省略)を備えていてもよい。第3噴射制御部は、ハウジング11内へ供給される一次空気の温度(すなわち、第1温度計54eが計測する温度)が、所定の温度となるように、熱ガスダンパ30cの開度及び噴射部60から噴射する水の量を調整する。
このように構成することで、ミル10の内部の温度が上昇しそうな場合や一次空気の流量を調整する熱ガスダンパ30c等が故障している場合であっても、噴射部60から噴射される水により一次空気の温度を低下させることができる。これにより、ミル10の内部の温度上昇を抑制することができる。所定の温度とは、例えば、粉砕された固体燃料を好適に供給先であるボイラ200へ搬送して、粉砕された固体燃料を好適に燃焼することができる温度として適切な範囲の上限の温度であってもよい。
また、制御部50は、第2噴射制御部と第3噴射制御部の両方を備えていてもよい。
【0112】
なお、本発明は、上記各実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では、熱ガスダンパ30cの開度を監視し、熱ガスダンパ30cが故障したと判断した場合に、噴射部60から水を噴射する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷ガスダンパ30dの開度を監視し、冷ガスダンパ30dが故障したと判断して一次空気の温度を冷却できなくなった場合に、噴射部60から水を噴射してもよい。
【0113】
また、噴射部60(噴射ノズル61)を設置する位置は、上記実施形態で説明した一次空気流路100a内の位置に限定されない。噴射部60を設置する位置は、一次空気の主流に水を噴射できる位置であり、一次空気の主流が流通する流路又は当該流路の近傍であればよい。例えば、ハウジング11内に噴射部60を配置してもよい。具体的には、例えばハウジング11中の一次空気流路100a出口近傍で噴射部60を設置して、一次空気流路100a出口方向へ水を噴射してもよい。また、冷ガスダクト53や供給ダクト54に配置してもよい。また、熱ガスダクト52のうち、熱ガスダンパ30cの上流側に設けてもよい。
【0114】
また、噴射ノズル61を下流端部分54dに設けて、一次空気流路100aの底面に向けて水を噴射させて、その後に蒸発できなかった水が底面を沿って流れるようにさせてもよい。このように構成することで、噴射部60に一次空気を冷却する機能とともに、一次空気流路100aのダクト内に堆積した粉砕された固体燃料を一次空気流路100aのダクト内からハウジング11の内部へ排出する機能も持たせることができる。
【0115】
また、噴射ノズル61を下流端部分54dに設けて、一次空気流路100aの流路断面を覆うように水を噴出させてもよい。このように構成することで、噴射部60に一次空気を冷却する機能とともに、一次空気流路100aのダクト内へ粉砕された固体燃料が流入することを抑制する機能も持たせることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 :発電プラント
2 :ボイラシステム
10 :ミル(粉砕装置)
11 :ハウジング(筐体)
12 :回転テーブル
13 :ローラ(粉砕ローラ)
14 :駆動部
15 :粉砕部
16 :回転式分級機(分級部)
16a :ブレード
17 :燃料供給部
18 :モータ
19 :出口(排出部)
19a :第2温度計(排出温度検出部)
20 :給炭機
21 :バンカ
22 :搬送部
23 :モータ
24 :ダウンスパウト部
30 :送風部
30a :熱ガス送風機
30b :冷ガス送風機
30c :熱ガスダンパ(流量調整部)
30ca :第1開度指示計(開度検出部)
30d :冷ガスダンパ
30da :第2開度指示計
40 :状態検出部
41 :底面部
42 :天井部
45 :ジャーナルヘッド
47 :支持アーム
48 :支持軸
49 :押圧装置
50 :制御部
50a :開度指令部
50b :第1噴射制御部
50c :噴射量調整部
50d :回転数制御部
50e :押圧力制御部
50f :記憶部
51 :エアヒータ(加熱部)
52 :熱ガスダクト(第1流路)
52a :鉛直部
52b :水平部
53 :冷ガスダクト(第2流路)
54 :供給ダクト
54a :第1水平部分
54b :傾斜部分(傾斜部)
54c :第2水平部分
54d :下流端部分
54e :第1温度計(供給温度検出部)
55 :差圧計(差圧計測部)
60 :噴射部
61 :噴射ノズル
62 :水供給配管
63 :制御弁
64 :ストレーナ
65 :流量計
66 :排水配管
67 :排水配管弁
68 :排水部
70 :スクレーパ
71 :アーム部
72 :掃出部
73 :スピレージシュート(排出口)
74 :排出管
75 :スピレージホッパ
100 :固体燃料粉砕装置
100a :一次空気流路(搬送用ガス流路)
100b :供給流路
200 :ボイラ
210 :火炉
220 :バーナ部