(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】シート給送装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/46 20060101AFI20240122BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B65H3/46 D
B65H3/52 330Z
(21)【出願番号】P 2019128407
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】津田 智司
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016458(JP,A)
【文献】特開2019-052020(JP,A)
【文献】特開2016-204150(JP,A)
【文献】特開2016-101994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/46
B65H 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載部材を備え、前記積載部材に積載されたシートを収容する収容手段と、
前記積載部材に積載されたシートを給送する給送手段と、
前記給送手段によって給送されたシートを1枚ずつ分離するための分離手段と、を備えるシート給送装置であって、前記分離手段はシート給送装置から取り外すことが可能なシート給送装置において、
前記分離手段は、前記給送手段と当接離間が可能であって回転可能な分離回転体と、前記分離回転体を前記給送手段に向かって付勢する付勢部材と、前記シート給送装置が有する係合部材に係合される被係合部材と、を有し、
前記係合部材は、前記被係合部材を係合する第1の位置と前記被係合部材から離れた第2の位置に移動可能であり、
前記分離手段が前記シート給送装置に装着された状態で前記係合部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した場合、前記分離手段は前記付勢部材を利用して取り外し方向に移動することを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記分離手段は、前記分離回転体を回転可能に保持する第1の保持部材と、前記第1の保持部材を揺動可能に保持する第2の保持部材と、を備え、前記付勢部材は、前記第2の保持部材に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記第1の保持部材を付勢することで、前記分離回転体を前記給送手段に当接させることを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記被係合部材は、前記第1の保持部材の一部を覆うカバー部材を兼ねることを特徴とする請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第2の保持部材は、第1の位置決め部を備え、
前記シート給送装置は、前記第1の位置決め部を位置決めするための第2の位置決め部を備え、
前記分離手段が前記シート給送装置に装着された状態で前記第1の位置決め部は前記第2の位置決め部に位置決めされることを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記被係合部材は、前記
係合部材と係合する被係合部を備え、
前記分離手段を前記シート給送装置に装着する場合において、前記
被係合部によって前記係合部材を前記第2の位置へ向かって移動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記係合部材は、前記取り外し方向と交差する方向にスライド移動するスライド部材であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記収容手段は、シートを積載する収容部を前記シート給送装置に対して着脱可能に構成され、前記収容部を装着した状態において前記分離手段と前記給送手段は当接し、前記収容部を前記シート給送装置から取り外した状態において前記分離手段と前記給送手段が離間することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記分離手段は、前記シート給送装置に装着された状態で前記係合部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した場合、前記給送手段と当接した状態と離間した状態のどちらの状態であっても、前記付勢部材を利用して取り外し方向に移動することを特徴とする請求項8に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記係合部材は、第2の付勢部材を備え、
前記分離手段は、前記シート給送装置に装着された状態で前記係合部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した場合、前記付勢部材と前記第2の付勢部材を利用して取り外し方向に移動することを特徴とする請求項9に記載のシート給送装置。
【請求項11】
積載部材を備え、前記積載部材に積載されたシートを収容する収容手段と、
前記積載部材に積載されたシートを給送する給送手段と、
前記給送手段によって給送されたシートを1枚ずつ分離するための分離手段と、
前記分離手段によって分離されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成装置であって、前記分離手段は前記画像形成装置から取り外すことが可能な画像形成装置において、
前記分離手段は、前記給送手段と当接離間が可能であって回転可能な分離回転体と、前記分離回転体を前記給送手段に向かって付勢する付勢部材と、前記
画像形成装置が有する係合部材に係合される被係合部材と、を有し、
前記係合部材は、前記被係合部材を係合する第1の位置と前記被係合部材から離れた第2の位置に移動可能であり、
前記分離手段が前記
画像形成装置に装着された状態で前記係合部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した場合、前記分離手段は前記付勢部材を利用して取り外し方向に移動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記分離手段は、前記分離回転体を回転可能に保持する第1の保持部材と、前記第1の保持部材を揺動可能に保持する第2の保持部材と、を備え、前記付勢部材は、前記第2の保持部材に保持されていることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記付勢部材は、前記第1の保持部材を付勢することで、前記分離回転体を前記給送手段に当接させることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記被係合部材は、前記第1の保持部材の一部を覆うカバー部材を兼ねることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第2の保持部材は、第1の位置決め部を備え、
前記
画像形成装置は、前記第1の位置決め部を位置決めするための第2の位置決め部を備え、
前記分離手段が前記
画像形成装置に装着された状態で前記第1の位置決め部は前記第2の位置決め部に位置決めされることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記被係合部材は、前記係合部材と係合する被係合部を備え、
前記分離手段を前記
画像形成装置に装着する場合において、前記
被係合部によって前記係合部材を前記第2の位置へ向かって移動させることを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記係合部材は、前記取り外し方向と交差する方向にスライド移動するスライド部材であることを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離手段を備えるシート給送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置には、収容手段からシートを搬送するシート給送装置が備えられている。シート給送装置には、重なり合った複数枚の用紙の搬送(重送)を防止して一枚ずつ搬送する分離手段が備えられている。
【0003】
この分離手段として、フィードローラと高摩擦係数のゴム等で形成された分離ローラでニップを形成し、1枚ずつ繰り出す方式のものがある。この分離ローラは板状のパッド方式や、内部にトルクリミッタを備えたローラ方式等があるが、いずれも所定の圧でフィードローラに向かって付勢している。
【0004】
複数のシートとの摺擦によって摩耗が生じた分離手段は、分離性能が低下する懸念がある。そこで、特許文献1には、分離手段を交換する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では分離手段を取り外す際に分離手段を装置本体に係合させていたストッパ部材の取り扱いが煩雑であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、分離手段を取り外す際のユーザビリティを向上させたシート給送装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、積載部材を備え、前記積載部材に積載されたシートを収容する収容手段と、前記積載部材に積載されたシートを給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたシートを1枚ずつ分離するための分離手段と、を備えるシート給送装置であって、前記分離手段はシート給送装置から取り外すことが可能なシート給送装置において、前記分離手段は、前記給送手段と当接離間が可能であって回転可能な分離回転体と、前記分離回転体を前記給送手段に向かって付勢する付勢部材と、前記シート給送装置が有する係合部材に係合される被係合部材と、を有し、前記係合部材は、前記被係合部材を係合する第1の位置と前記被係合部材から離れた第2の位置に移動可能であり、前記分離手段が前記シート給送装置に装着された状態で前記係合部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した場合、前記分離手段は前記付勢部材を利用して取り外し方向に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分離手段を取り外す際のユーザビリティを向上させたシート給送装置および画像形成装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】シート給送装置と画像形成装置の概略図である。
【
図2】(a)収容手段の装着状態における、分離回転体と給送部材の当接状態を示す断面図である。(b)収容手段が外された状態における、分離回転体と給送部材の離間状態を示す断面図である。
【
図3】シート給送装置の構成を示す概略断面図である。
【
図4】(a)分離手段を分離回転体側から見た概略斜視図である。(b)分離手段を第2の保持部材側から見た概略斜視図である。
【
図5】(a)分離手段の装着状態、(b)係合部材が第2の位置(退避位置)へ移動した状態、(c)分離手段がシート給送装置から外れた状態
【
図6】係合部材と第1の位置決め部の係合状態を示す概略断面図
【
図7】(a)収容手段の装着状態における、分離ニップ解除レバー33の動作と第1の保持部材への作用を示した図である。(b)収容手段が外された状態における、分離ニップ解除レバー33の動作と分第1の保持部材への作用を示した図である。
【
図8】(a)実施例2における分離手段の装着状態を示す図である。(b)実施例2における係合部材が第2の位置に到達したときの状態を示す図である。
【
図9】実施例3における分離手段の構成を示す概略斜視図である。
【
図10】実施例3における分離手段と係合部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施例1)
図1は、実施例1に係るシート給送装置と画像形成装置の概略図である。ここでは、画像形成装置として電子写真方式のカラーレーザープリンタ(以下、プリンタ100)を例にとって図面に則して説明する。ここでは、プリンタ100は、電子写真方式を採用しているが、本発明はこれに限定されず、インクジェット方式に適用可能である。なお、本実施例において、プリンタ100の一部が、シートを給送するシート給装装置30を構成しているが他の構成であってもよい。たとえば、プリンタ100にオプション装置として接続される給送デッキをシート給送装置としてもよい。
【0013】
図1に示すようにプリンタ100は、画像形成部100Aと、シート給送装置30によって構成されている。画像形成部100Aは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像を形成する4つの感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kを備える。さらに画像形成部100Aは、これら4つの感光体ドラムと接触し、4つの感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kに形成されたトナー像が1次転写される無端の中間転写ベルト102を備える。さらに、画像形成部100Aは、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kに対して中間転写ベルト102の内周側から押圧する1次転写ローラ106Y、106M、106C、106Kを備える。1次転写ローラ106Y、106M、106C、106Kは、不図示の転写電源から転写電圧が印加され、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kと中間転写ベルト102との間に電位差を生じさせる。この電位差によって、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kから中間転写ベルト102にトナー像を1次転写させる。さらに、画像形成部100Aは、中間転写ベルト102に転写された画像をシートSに二次転写する二次転写ローラ105を備える。
【0014】
画像形成部100Aにおいて画像形成動作が開始されると、レーザースキャナー103により画像信号に応じた光が一定電位に帯電した感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kに照射される。その結果、感光体ドラム101Y、101M、101C、101K上に静電潜像が形成される。
【0015】
次に、現像カートリッジ104Y、104M、104C、104Kに収納されたトナーで現像することにより、感光体ドラム101Y、101M、101C、101K上にトナー画像(可視像)が形成される。感光体ドラム101Y、101M、101C、101K上に形成されたトナー画像は、次に中間転写ベルト102に1次転写され、そして中間転写ベルト102上のトナー画像は2次転写部へと中間転写ベルト102により搬送される。
【0016】
このようなトナー画像形成動作に並行して、シート給送装置30からシートSが1枚ずつ給送される。このシートSは斜行補正を行うレジストローラ110によって中間転写ベルト102と2次転写ローラ105のニップにより形成される2次転写部に搬送される。ここで、シートSは中間転写ベルト102上に形成されたトナー画像に対してシートSのシート搬送方向位置を合わせる必要があるため、レジストローラ110の搬送速度制御を行う事でシートSのタイミング合わせが行われる。そして、2次転写部で2次転写ローラ105に二次転写電圧を印加することによってトナー画像が中間転写ベルト102からシートSへ転写される。
【0017】
トナー画像が転写されたシートSは、その後、定着手段111へ搬送され、定着手段111において加熱、加圧されることでトナー画像がシートSに定着される。シートSは定着後、排出ローラ112によって装置上部の排出部113へ排出される。
【0018】
また、プリンタ100は開閉可能な開閉部材であるドア115を有し、このドア115を開放することで後述する分離手段である分離ユニット10が露出し、X方向に着脱可能になっている。
【0019】
次に、本実施例におけるシート給送装置30について、
図1、2、3を用いて説明する。
図2(a)は、給送カセット35の装着状態における、分離ローラ11とフィードローラ26の当接状態を示す断面図である。
図2(b)は、給送カセット35が外された状態における、分離ローラ11とフィードローラ26の離間状態を示す断面図である。
【0020】
シート給送装置30は、給送手段である給送ユニット20および分離手段である分離ユニット10、給紙駆動ユニット(不図示)、シート給送装置30に対して着脱可能な収容手段である給送カセット35を有する。給送カセット35は、収容部であるカセットトレイ36と、シートSが積載される積載部材である積載板37を備え、積載板37がカセットトレイ36に揺動可能に設けられている。
【0021】
給送ユニット20は、本実施例ではプリンタ100に設けられており、給送ローラユニット21が給送ユニット20に対して着脱可能である。給送ローラユニット21は、ローラホルダ22によりピックアップローラ25とフィードローラ26がそれぞれ回転可能に保持している。
【0022】
給送ローラユニット21は給送ユニット20に装着されている状態において、フィードローラ26の回転軸を中心に回動可能に給送ユニット20に保持されている。さらに、給送ローラユニット21は、給送圧アーム27を介して給送バネ28によりP方向に付勢されており、ピックアップローラ25が積載板37上のシートSに所定の付勢力で圧接されるようになっている。
【0023】
給送ユニット20に対向する位置に、分離ユニット10が設けられている。分離ユニット10は、分離回転体である分離ローラ11、第1の保持部材である分離ローラホルダ12、第2の保持部材である分離ベース13を備えている。さらに分離ユニット10は、付勢部材である分離バネ15と、分離ローラ11、分離ローラホルダ12、分離ベース13をカバーするカバー部材である分離カバー14から構成される。分離ローラ11の内部には小型のトルクリミッタが内蔵されており、回転方向に対して所定のトルクでブレーキが掛けられている。分離ローラホルダ12は分離ローラ11を回転可能に保持し、分離ベース13に対して揺動中心12aを中心に揺動可能に保持されている。即ち、分離ベース13は分離ローラホルダ12を保持する保持部材である。
【0024】
分離バネ15は、分離ベース13に固定され、分離ローラホルダ12を押圧している。分離ユニット10は、分離ローラ11がフィードローラ26の対向位置にくるようにシート給送装置30に装着されており、分離バネ15の付勢力により、分離ローラ11はフィードローラ26に対して押圧される。なお、分離ユニット10はシート給送装置30に対してX方向に着脱自在に保持されており、この保持構成におよび取り外し、装着動作については後に詳細に説明する。尚、シート給送装置30が画像形成装置100の一部を構成する場合は、分離ユニット10は画像形成装置100に対して着脱可能である。
【0025】
次にシート給送装置30の給送動作について説明する。給送カセット35がシート給送装置30に挿入されると、積載板37が上昇し、最上位シートSとピックアップローラ25が当接する。このとき、前述のようにピックアップローラ25は給送圧アーム27を介して給送バネ28の付勢力を受け、シートSに所定の圧で当接する。その後、ピックアップローラ25とフィードローラ26は不図示の駆動ユニットからの駆動を受け、共に
図3における反時計周りに回転する。
【0026】
ピックアップローラ25が回転を始めるとシートSは、ピックアップローラ25とシートSとの間の摩擦により
図3における右方向に移動を始める。その後、フィードローラ26と分離ローラ11で形成する分離ニップに到達する。この分離ニップはピックアップローラ25によって2枚以上のシートSが分離ニップに送られてきたときに、シートSを分離し、1枚だけ下流に送る機能を持っている。
【0027】
前述のように分離ローラ11にはトルクリミッタ内蔵されており、シートSの搬送方向とは逆方向に抵抗力としてのトルクが与えられている。このトルクは分離ニップにシートSが1枚だけある時には分離ローラ11がフィードローラ26に従動して回転し、分離ニップに記録材Sが2枚入ると停止するような設定になっている。よって、分離ニップでシートSを1枚ずつ下流に搬送することができる。その後、ピックアップローラ25とフィードローラ26の回転によりレジストローラ110へと搬送される。
【0028】
分離ユニット10の構成と保持方法について、
図4及至
図6を用いて詳細に説明する。
図4(a)は、分離ユニット10を分離ローラ11側から見た概略斜視図である。
図4(b)は、分離ユニット10を分離ベース13側から見た概略斜視図である。
【0029】
図5は、係合部材である分離シャッター31の動きと分離ユニット10の着脱動作を示す概略図である。
図5(a)は、分離ユニット10の装着状態、
図5(b)は分離シャッター31が第2の位置(退避位置)へ移動した状態、
図5(c)は分離ユニット10がシート給送装置30から外れた状態をそれぞれ示している。
図6は分離シャッター31と突部13a、13bの係合状態を示す概略断面図であり、
図5(a)におけるA-A断面図である。
【0030】
前述のように、分離ユニット10は分離ローラ11、分離ローラホルダ12、分離ベース13、分離バネ15、分離カバー14から構成されており、
図4に示すように、分離ベース13と分離カバー14で内側が覆われる形でユニット化されている。このような形態でユニット化することで、ユーザーやサービスマンなどのオペレータが内部部品に触れにくくなり、ハンドリングしやすくしている。
【0031】
分離ベース13にはシート給送装置30に対して位置決めするための第1の位置決め部である突部13a、13bが両側に1対ずつ設けられている。また、分離カバー14には後述するシート給送装置30に設けられた分離シャッター31に当接し、分離ユニット10の装着時に分離シャッター31を移動させるための被係合部であるカム部14aが設けられている。即ち、分離カバー14は、被係合部であるカム部14aを備える被係合部材(スライド部材)であり、分離ローラホルダ12をカバーするカバー部材を兼ねている。
【0032】
シート給送装置30には
図5および
図6に示すように分離シャッター31(係合部材)が配設されている。分離シャッター31は
図6に示すようにシート給送装置30のレール部30a~30dと係合し、
図6における左右方向への移動が規制されつつ、シート給送装置30に対してスライド動作可能に保持されている。スライド方向は、分離ユニット10の取り外し方向と交差する方向である。さらに、シャッターバネ32によって
図5(a)における矢印方向に付勢されている。この
図5(a)における分離シャッター31の位置を第1の位置とする。分離ユニット10がシート給送装置30に装着され、分離シャッター31が第1の位置にあるとき、
図6に示すように、分離ユニット10は分離ベース13の突部13a、13bがシート給送装置30側の第2の位置決め部である凹部30f、30gに嵌合している。また、分離シャッター31は分離ベース13の突部13aと13bに係合し、分離ユニット10のX方向への移動を規制する。この状態が分離ユニット10のシート給送装置30への装着状態である。
【0033】
また、分離シャッター13は第1の位置から
図5(b)における矢印方向に移動可能になっており、ユーザーやサービスマンなどのオペレータが把持部31aを持って
図5(b)における矢印方向に移動させることができる。オペレータが分離シャッター13を
図5(b)における矢印方向に移動させていくと、やがて分離シャッター13と分離ベースの突部13a、13bの係合が解除され、分離ユニット10がX方向に移動可能になる。このときの分離シャッター13の位置を第2の位置とする。
【0034】
本実施例では、給送カセット35がシート給送装置30から引き出されると、分離ニップが解除され、分離ローラ11とフィードローラ26が離間する構成になっている。これは給送カセット35をシート給送装置30から引き出す際に分離ニップにシートSが残留するのを防ぐためである。即ち、分離ニップ解除機構によって分離ローラ11はフィードローラ26に対して当接離間可能な構成である。
【0035】
この分離ニップ解除機構を
図2、
図7を用いて説明する。
図2は分離ユニット10にかかる力の関係を示した概略断面図である。
図2(a)は、給送カセット35の装着状態における、分離ローラ11とフィードローラ26の当接状態を示す断面図である。
図2(b)は、給送カセット35が外された状態における、分離ローラ11とフィードローラ26の離間状態を示す断面図である。
【0036】
分離ニップ解除レバー33の動作と分離ローラホルダ12シート給送装置30が停止中において給送カセット35の装着状態、(b)はシート給送装置30が停止中において給送カセット35が外された状態をそれぞれ示している。
【0037】
図7(a)は、給送カセット35の装着状態における、分離ニップ解除レバー33の動作と分離ローラホルダ12への作用を示した図である。
図7(b)は、給送カセット35が外された状態における、分離ニップ解除レバー33の動作と分離ローラホルダ12への作用を示した図である。
【0038】
分離ニップ解除レバー33は不図示の付勢部材によってH方向に付勢されている。給送カセット55が挿入されると、給送カセット35は分離ニップ解除レバー33のカセット当接部33bに当接し、付勢部材の付勢力に抗って分離ニップ解除レバー33をI方向に移動させる。給送カセット35がシート給送装置30に装着完了すると
図2(a)および
図7(a)の状態になり、分離ニップ解除レバー33は分離ローラホルダ12に作用しない。給送カセット35が取り外されると分離ニップ解除レバー33は付勢部材の作用で
図7のH方向に移動する。分離ニップ解除レバー33がH方向に移動すると
図7(b)に示すように分離ニップ解除レバー33の当接部33aが分離ローラホルダ12の離間カム部12bに当接する。すると、
図2(b)に示すように分離ローラホルダ12は揺動中心12aを中心に回転し、分離ローラ11はフィードローラ26から離間する。この分離ニップ解除レバー33によって分離ローラ11とフィードローラ26の当接状態、離間状態を変更する。
【0039】
分離ユニット10の取り外し動作について
図1~
図6を用いて詳細に説明する。
図3および
図5に示すように、分離ユニット10は、シートSの搬送方向下流方向(X方向)に取り外し可能になっている。以下、X方向が取り外し方向である。
【0040】
分離ユニット10は通常、
図5(a)に示すような装着状態にある。ユーザーやサービスマンなどのオペレータが分離ユニット10を外す時には、まず、
図1に示すドア115を開放し、
図5のように分離ユニット10を露出させる。その後、オペレータは分離シャッター31の把持部31aを把持し、分離シャッター31を
図5(b)における矢印方向に移動させ、分離シャッター31を第2の位置に移動させる。分離シャッター31が第2の位置に到達し、分離シャッター31と分離ベースの突部13a、13bの係合が解除されると、分離バネ15の力fによるポップアップ力Fにより、分離ユニット10は
図5(c)のように分離ユニット10はX方向に突出する。オペレータはこの突出した分離ユニット10を回収するだけで、取り外しが完了する。この時、分離ユニット10はシートSの搬送方向下流側から取り外しているため、給送ローラユニット21を取り外す必要はない。
【0041】
次に、分離ユニット10を突出させる力であるポップアップ力Fについて説明する。このポップアップ力Fは装着状態における分離ユニット10が受けるX方向の力と言い換えられる。前述のように、装着状態において分離ユニット10はX方向を分離シャッター31によって規制されている。すなわち、分離ユニット10が受けるX方向の力Fは給送動作中も含め分離シャッター31で受けている。この分離ユニット10の位置精度はシート給送装置30の分離性能に影響する。そのため、分離ユニット10から受ける力による分離シャッター31の変形を抑え、分離ユニット10の位置変動を小さくする必要がある。本実施例においては
図6のように分離シャッター31を支持するレール部30a~30dをそれぞれ分離ベース13の突部13a、13bの近傍に配置している。このように分離ユニット10から力を受ける箇所の近傍で支持することで、分離シャッター31のたわみを抑制し、分離ユニット10の位置変動を抑えている。
【0042】
一方で、分離ユニット10が受けるX方向の力Fを分離ユニット10がX方向に突出する力(ポップアップ力)として利用している。このポップアップ力Fの伝達経路は給送カセット35が装着されているときと取り外されているときで異なる。
【0043】
まず、給送カセット35が装着されている場合について説明する。給送カセット35が装着されているとき、分離ユニット10は
図2(a)に示すように、分離ローラ11とフィードローラ26が当接している状態になっている。この時、前述のように分離ローラ11は分離ローラホルダ12を介して分離バネ15の付勢力fを受け、F1の力でフィードローラ26に当接している。すなわち、分離ローラ11は反力として同じ力F1を受ける。このF1は分離ローラホルダ12を介して分離ベース13に伝わる。このF1のX方向分力がポップアップ力Fであり、ポップアップ力Fは分離バネ15の付勢力fを利用して得ている。
【0044】
さて、このポップアップ力Fの大きさは分離ニップの方向によって変わる。本実施例においては
図1(a)に示すように、分離ローラ11はフィードローラ26に対して、フィードローラ26の中心を通る鉛直線Qに対して右側に当接している。このように、フィードローラ26の中心よりも回転方向下流側に分離ローラ11を当接させることで、分離ユニット10は分離バネ15の作用によりF1のX方向の分力すなわち、シートSの搬送方向下流方向にポップアップ力Fを得ることができる。また、
図2(a)に示すQに対する分離ニップの垂線がなす角θが0°~90°の間においては、θが大きいほど得られるポップアップ力Fは大きくなる。
【0045】
次に給送カセット35が外されている場合について説明する。給送カセット35が外されているとき、分離ユニット10は
図2(b)に示すように、分離ローラ11とフィードローラ26が離間し、分離ローラホルダ12と分離ニップ解除レバー33が当接している状態になっている。この時も分離ローラホルダ12は分離バネ15の付勢力fを受けるが、分離ローラ11とフィードローラ26は離間しているため、フィードローラ26には伝わらない。分離バネ15の付勢力fはシート給送装置30側の分離ニップ解除レバーにF2として伝わり、分離ローラホルダ12はその反力を受け、分離ベース13に伝わる。このF2のX方向分力がポップアップ力Fであり、この時もポップアップ力Fは分離バネ15の付勢力fを利用して得ている。
【0046】
次に、分離ユニット10の装着動作について
図5を用いて説明する。分離ユニット10を装着する際は、取り外し動作と逆の順番である。つまり、
図5(c)の状態から分離ユニット10をXとは逆の方向へ移動させていき、
図5(b)の位置まで挿入する。分離ユニットが装着されていないとき、分離シャッター31はシャッターバネ32の作用により、第1の位置にある。分離ユニット10の分離カバー14には分離ユニット10の挿抜方向に対して傾斜した面を持つカム部14aが設けられている。このカム部14aは分離ユニット10の装着過程で分離シャッター31を
図5(b)の矢印方向に押し広げ、突部13a、13bが通過可能な位置(第2の位置)に移動(スライド移動)させる。分離ユニット10の突部13a、13bがシート給送装置30の凹部30f、30gと嵌合すると、分離ユニット10のカム部14aは分離シャッター31から解放され、分離シャッター31は第1の位置に移動する(
図5(a))。すなわちオペレータが分離ユニット10を装着する際には分離シャッター31を移動させる必要はなく、分離ユニット10を把持して挿入するだけで装着することができる。
【0047】
以上、本実施例によれば、分離シャッター31を移動させることによって分離ユニット10の係合状態が解放され、同時に分離バネ15の付勢力fの反力Fを受けることで、分離ユニット10が取り外し方向に突出する。そのため、分離ユニット10を交換するオペレータが取り外す対象である分離ユニット10を認識しやすい。また、分離ユニット10はシート給送装置30に対して分離シャッター31で位置決めされているだけなので、分離シャッター31を第2の位置に移動させることで、分離ユニット10のシート給送装置30との位置決めが解除される。すなわち、オペレータは分離シャッター31を移動させるだけで分離ユニット10を取り外すことができる。
【0048】
また、分離ローラ11を付勢する分離バネ15の力を利用することで、低コストで交換対象である分離ユニット10の視認性を上げるとともに、分離シャッター31を移動するという1ステップで分離ユニット10を外すことができる。
【0049】
なお、本実施例においては、係合部材である分離シャッター31は分離ユニット10の両側に設けていたが、ユーザビリティが許容するのであれば、片側だけでも良い。その場合も分離シャッター31が第2の位置に移動したときに分離ユニット10の片側のX方向の規制が解除され、ポップアップ力Fを受けるので、同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施例においては給送カセット35がシート給送装置30から取り外された時には分離ローラ11はフィードローラ26から離間する構成となっている。しかしながら、本実施例はこれに限定されず、分離ニップを開放しない場合や、給送カセット35の挿抜過程で一時的に分離ニップを開放する構成に適用してもよい。その際、分離ローラホルダ12の離間カム部12bと当接する部材を給送カセット35に設けてもよい。分離バネfの反力を利用して分離ユニット10を挿抜方向Xに付勢する構成であれば適用可能である。
【0051】
(実施例2)
実施例1では分離バネ15の付勢力fでポップアップ力Fを発生させ、分離ユニット10を突出させていた。一方、実施例2においてはポップアップ力Fに加えて、分離シャッター131にポップアップ力Fを発生する機能を加え、分離シャッター131が第2の位置に到達したときの分離ユニット140の突出力を増大させることを特徴とする。尚、本実施例において実施例1と同一の構成に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図8は、実施例2の係合部材である分離シャッター131が移動した際の板バネ部131b(第2の付勢部材)の分離手段である分離ユニット140への作用を示す概略断面図であり、実施例1の
図5(a)におけるB-B断面に対応している。
図8(a)は分離ユニット140が装着状態、(b)は分離シャッター131が第2の位置に到達したときの状態をそれぞれ示している。
【0053】
本実施例において、分離シャッター131には分離ユニット140の取り外し時のポップアップ力Fをアシストするための板バネ部131bが設けられている。また、分離ユニット140の分離ベース143には分離シャッター131が第2の位置にあるときに板バネ部131bと当接する当接部143cが設けられている。本実施例においても分離ユニット140装着時には分離ユニット140のX方向の移動は位置決め部143aおよび143bが分離シャッター131と係合することによって規制されている。
【0054】
分離ユニット140が装着状態(
図8(a))にあるとき、分離シャッター131の板バネ部131bは分離ユニット140とは離間しており、作用しない。オペレータが分離ユニット140を取り外すために分離シャッター131を
図8(b)における矢印方向に移動させると、分離シャッター131の板バネ部131bは分離シャッター131の移動に伴い、
図8における上方向へたわむ。その結果、分離シャッター131が第2の位置に到達し、分離ユニット140のX方向への規制が解除されるまでたわみ続ける。板バネ部131bは分離シャッター131が第2の位置に到達したとき(
図8(b))には当接部143cに対してF3の力を与えており、分離ユニット140のX方向の規制が解除されると、たわみが解放される。たわみが解放されることによって、分離ユニット140に当接部143cを介して追加のポップアップ力F3を付与する。
【0055】
このような構成にすることで分離バネ15によるポップアップ力Fが小さい場合でも追加のポップアップF3を与えることで分離ユニット140取り外し時の突出力をコントロールすることができ、ユーザビリティの向上が図れる。
【0056】
なお、本実施例においては分離シャッター131に板バネ形状を設けることで追加のポップアップ力F3を付与したが、第2の付勢部材を分離シャッター131に設けてもよい。
【0057】
(実施例3)
実施例1、2ではスライド式の分離シャッター31、131を使用して分離ユニット10、140の位置決めを行っていた。実施例3においては回動式のシャッター231を使用し、シャッターバネ32を使用しない構成について説明する。
【0058】
図9は、本実施例における分離ユニット210と分離シャッター231の構成を示す概略斜視図である。
図10は、実施例3における分離ユニット210と分離シャッター231の動作を示す概略断面図であり、
図9におけるD-D断面に対応している。
図9(a)は分離ユニット210の装着状態、
図9(b)は分離シャッター231を回動させたときの状態である。
【0059】
本実施例において、分離ユニット210は実施例1、2と異なり、分離ベース213の上下方向に延びる位置決め軸213aが分離シャッター231と係合することでX方向を規制されている。分離シャッター231は分離ユニット210の位置決め軸213aと平行な回動軸231cを中心にシート給送装置30に対して回動可能に保持されている。分離シャッター231には分離ベース213の位置決め軸213aと係合し、分離ユニット210のX方向の移動を規制する係止部231dが設けられている。
図10(a)に示すように、係止部231dは回動軸231cと同心円の形状になっており、回動軸231cは
図10における左右方向において分離ユニット210の位置決め軸213aと同じ位置に配置されている。このような構成にすることで、分離ユニット210からX方向の力を受けても分離シャッター231が受けても分離シャッター231が開き、分離ユニット210が移動しないようになっている。また、分離シャッター231には分離シャッター231が回動したときに分離ベース213をX方向に押し出す押出部231eが設けられている。一方、分離ベース213には分離シャッター231の押出部231eと当接する当接部213dが設けられている。
【0060】
分離ユニット210が装着状態にあるとき、分離ユニット210と分離シャッター231は
図10(a)の状態になっており、分離ユニット210は位置決め軸213aが分離シャッター231の係止部231dと係合することでX方向の移動が規制されている。分離ユニット210を交換するときにオペレータは分離シャッター231を
図10における反時計回りに回動させる。すると、分離シャッター231の係止部231dが分離ユニット210の位置決め軸213aから外れる。この時、分離ユニット210は実施例1、2と同様にポップアップ力Fを受ける。分離シャッター231が第2の位置に到達し、分離ユニット210のX方向の規制が解除されると同時に分離シャッター231の押出部231eは分離ベース213の当接部213dと当接する。さらに分離シャッター231を回動させると、分離シャッター231の当接部231eが分離ベース213の当接部213dを押すことで分離ユニット210をX方向に移動させる(
図10(b))。
【0061】
なお、分離ユニット210の取付け時には分離ユニット210は分離シャッター231が第2の位置にあるときに分離ベース213の当接部213dと分離シャッター231の押出部231eが当接する。そこからさらに分離ユニット210を装着方向(X方向の逆方向)へ押し込むことで分離シャッター231は第1の位置へ戻る。同時に分離ユニット210はポップアップ力Fにより位置決め軸213aが分離シャッター231の係止部231dに当接する位置まで押し戻され、分離ユニット210の装着が完了する(
図10(a))。
【0062】
このような構成にすることで、分離ユニット210がポップアップ力Fで突出した後も分離ユニット210をさらに突出させることが可能になり、突出量を調整し、所望の視認性を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 分離ユニット
11 分離ローラ(分離回転体)
12 分離ローラホルダ(第1の保持部材)
13 分離ベース(第2の保持部材)
14 分離カバー(被係合部材)
26 フィードローラ(給送手段)
30 シート給送装置
31 分離シャッター(係合部材)
131 分離シャッター(係合部材)
231 分離シャッター(係合部材)