(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】不均一に配置されているコンタクトを有する電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6461 20110101AFI20240122BHJP
H01R 13/6585 20110101ALI20240122BHJP
H01R 13/6581 20110101ALI20240122BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R13/6585
H01R13/6581
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019161705
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-08-09
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】ティーイー・コネクティビティ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン,スコット エリック
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジュニア,グラハム ハリー
(72)【発明者】
【氏名】シーナ,マイケル フランク
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-142861(JP,U)
【文献】特開2013-004282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6461
H01R 13/6585
H01R 13/6581
H01R 24/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ(112)を画定する導電性シェル(110)と、
前記キャビティ内に配置されている誘電体ホルダ(114)と、
前記キャビティ内の前記誘電体ホルダに取り付けられ、対(132)で配置されている複数の電気コンタクト(116)であって、前記対は、相殺配置(134)内の複数の対と、前記相殺配置にある前記複数の対から離間した隔離対(140)とを含む、前記複数の電気コンタクトとを備え、
前記隔離対から前記複数の電気コンタクトのうちの最も隣接する電気コンタクトまでの離間距離(204)が、前記相殺配置にある前記複数の対の各々から前記複数の電気コンタクトのうちの対応する最も隣接する電気コンタクトまでのそれぞれの離間距離(210)よりも大き
く、
前記相殺配置(134)内の前記複数の対(132)は、第1の側部対(208)と第2の側部対(212)とに隣接し、かつ前記第1の側部対(208)と前記第2の側部対(212)との間に配置されている中央対(206)を含み、
前記中央対の前記電気コンタクト(116)は、中央軸(216)に沿って方向付けられ、前記第1の側部対の前記電気コンタクト(116)は、前記中央軸に対して傾斜した第1の側部軸(218)に沿って方向付けられ、前記第2の側部対の前記電気コンタクト(116)は、前記中央軸に対して傾斜し、かつ前記第1の側部軸を横切る第2の側部軸(222)に沿って方向付けられており、
前記第1の側部対(208)および前記第2の側部対(212)の各々の一方の前記電気コンタクト(116A)は、前記中央対(206)の前記電気コンタクト(116A、116B)の各々から略等距離にあり、前記第1の側部対および前記第2の側部対の各々の他方の前記電気コンタクト(116B)は、前記中央対の前記電気コンタクトの各々から略等距離にはない、
電気コネクタ(100)。
【請求項2】
前記キャビティ(112)は円形断面形状を有する、請求項1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項3】
前記隔離対(140)の前記電気コンタクト(116)は、前記中央軸(216)に対して垂直な隔離軸(230)に沿って方向付けられ、前記中央軸が前記隔離対を二分するように前記中央対(206)に対して位置決めされている、請求項
1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項4】
前記誘電体ホルダ(114)は、前面(128)、前記前面と反対側の後面(302)、および前記前面から前記後面まで延びる外面(304)を有し、前記誘電体ホルダは、前記誘電体ホルダの周囲に沿って周方向に離間した複数のチャネル(306)を前記外面に沿って画定し、
前記隔離対(140)の前記電気コンタクト(116)と前記相殺配置(134)内の前記電気コンタクトの少なくとも一部とは、前記複数のチャネル内に保持されている、請求項1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項5】
前記電気コネクタは、前記相殺配置(134)内の3つの対と前記隔離対(140)とを含む、前記電気コンタクト(116)の計4つの対(132)を有する、請求項1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項6】
前記誘電体ホルダ(114)は、1つまたは複数のエアポケット(402)を内部に画定し、前記1つまたは複数のエアポケットは、前記隔離対(140)と前記相殺配置(134)内の前記複数の対(132)との間に配置されている、請求項1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項7】
前記導電性シェル(110)は、前記キャビティ(112)内に突出する複数のリブ(502)を備え、前記複数のリブのそれぞれは、前記隔離対(140)と前記相殺配置(134)内の前記対(132)との間の位置で前記誘電体ホルダ(114)の外面(304)を貫通して、前記隔離対と前記相殺配置にある前記対との間に電気シールドを提供する、請求項1に記載の電気コネクタ(100)。
【請求項8】
キャビティ(112)を画定する導電性シェル(110)と、
前記キャビティ内に配置されている誘電体ホルダ(114)と、
前記キャビティ内の前記誘電体ホルダに取り付けられ、対(132)で配置されている複数の電気コンタクト(116)であって、前記対は、相殺配置(134)内の複数の対と、前記相殺配置にある前記複数の対から離間した隔離対(140)とを含む、前記複数の電気コンタクトとを備え、
前記隔離対から前記複数の電気コンタクトのうちの最も隣接する電気コンタクトまでの離間距離(204)が、前記相殺配置にある前記複数の対の各々から前記複数の電気コンタクトのうちの対応する最も隣接する電気コンタクトまでのそれぞれの離間距離(210)よりも大きく、
前記誘電体ホルダ(114)は、1つまたは複数のエアポケット(402)を内部に画定し、前記1つまたは複数のエアポケットは、前記隔離対(140)と前記相殺配置(134)内の前記複数の対(132)との間に配置されている、
電気コネクタ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、一般に、デバイス間に導電性経路を確立するための電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一部の公知の電気コネクタは、差動信号を伝えるために、対で配置された電気コンタクトを複数対有する。差動信号の伝送は、電気コンタクトの1つまたは複数の隣接する対から対応する電気コンタクト対に結合する、電磁干渉、あるいはクロストーク、により悪化することがある。
【0003】
クロストークの有害な影響を減らす1つの方法は、コンタクト対間の間隔を大きくすることであるが、この方法は、所定の部品サイズおよび指定のコンタクト密度を有するコネクタには使用できないことがある。例えば、電気コネクタに詰める電気コンタクトを少なくすることにより、コンタクト間の隔離が大きくなるため、信号伝送を向上させる(例えば、クロストークを低減させる)ことができるが、コネクタのコンタクト密度を高めるという一般的な傾向があるため、コンタクト密度を低下させることは望ましくない、または許容されない可能性がある。
【0004】
一部の公知のコネクタは、導電性シールド部材または層を隣接するコンタクト対の間に設置することにより、電気コンタクトをクロストークから遮蔽しようとしている。電気シールドによって、追加の部品および組立ステップが加わることにより、電気コネクタの複雑性および費用が増加するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複雑で費用のかかる電気シールドを対の間に設けることなく、信号伝送性能要件を満たす電気コンタクトの複数の対を有する電気コネクタが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
導電性シェルと、誘電体ホルダと、電気コンタクトとを備える電気コネクタにより、解決策が提供される。導電性シェルはキャビティを画定する。誘電体ホルダはキャビティ内に配置されている。電気コンタクトは、キャビティ内の誘電体ホルダに取り付けられ、対で配置されている。対は、相殺配置にある複数の対と、相殺配置にある対から離間した隔離対とを含む。隔離対から電気コンタクトのうちの最も隣接する電気コンタクトまでの離間距離が、相殺配置にある対の各々から電気コンタクトのうちの対応する最も隣接する電気コンタクトまでのそれぞれの離間距離よりも大きい。
【0007】
以下で、添付図面を参照しながら本発明について例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による電気コネクタの斜視図である。
【
図2】
図1に示す電気コネクタの正面断面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す電気コネクタの誘電体ホルダの分離斜視図である。
【
図4】代替実施形態による電気コネクタの正面断面図である。
【
図5】第2の代替実施形態による電気コネクタの正面断面図である。
【
図6】第3の代替実施形態による電気コネクタの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つまたは複数の実施形態において、導電性シェルと、誘電体ホルダと、電気コンタクトとを備える電気コネクタが提供される。導電性シェルはキャビティを画定する。誘電体ホルダはキャビティ内に配置されている。電気コンタクトは、キャビティ内の誘電体ホルダに取り付けられ、対で配置されている。対は、相殺配置にある複数の対と、相殺配置にある対から離間した隔離対とを含む。隔離対から電気コンタクトのうちの最も隣接する電気コンタクトまでの離間距離が、相殺配置にある複数の対の各々から電気コンタクトのうちの対応する最も隣接する電気コンタクトまでのそれぞれの離間距離よりも大きい。
【0010】
1つまたは複数の実施形態において、シェルと、誘電体ホルダと、電気コンタクトとを備える電気コネクタが提供される。シェルはキャビティを画定する。誘電体ホルダはキャビティ内に配置されている。電気コンタクトは、キャビティ内の誘電体ホルダに取り付けられ、対で配置されている。対は、相殺配置にある中央対、第1の側部対、および第2の側部対と、相殺配置から離間した隔離対とを含む。中央対は、第1の側部対と第2の側部対との間に配置されている。中央対の電気コンタクトは、中央軸に沿って方向付けられ、第1の側部対の電気コンタクトは、中央軸に対して傾斜した第1の側部軸に沿って方向付けられ、第2の側部対の電気コンタクトは、中央軸に対して傾斜し、かつ第1の側部軸を横切る第2の側部軸に沿って方向付けられる。
【0011】
1つまたは複数の実施形態において、導電性シェルと、誘電体ホルダと、電気コンタクトとを備える電気コネクタが提供される。導電性シェルは、円形断面形状を有するキャビティを画定する。誘電体ホルダはキャビティ内に配置されている。誘電体ホルダは、前面、前面と反対側の後面、および前面から後面へ延びる外面を有する。電気コンタクトは、キャビティ内の誘電体ホルダに取り付けられ、対で配置されている。対は、相殺配置にある複数の対と、相殺配置にある対から離間した隔離対とを含む。隔離対から電気コンタクトのうちの最も隣接する電気コンタクトまでの離間距離が、相殺配置にある複数の対の各々から電気コンタクトのうちの対応する最も隣接する電気コンタクトまでのそれぞれの離間距離よりも大きい。
【0012】
本開示の実施形態は、電磁干渉(例えば、クロストーク)の有害な影響を減らすように設計された特定の構成の電気コンタクトの複数の対を有する電気コネクタを提供する。この構成において、電気コンタクトの対は、電気コネクタの嵌合領域に沿って不均一に分散されている。例えば、電気コンタクトのいくつかの隣接する対の間の間隔は、他の隣接する対の間の間隔よりも大きくてよい。加えて、電気コンタクトの対は、それぞれの対の両方の電気コンタクトを通って画定されるそれぞれの対軸線に沿って方向付けられる。本明細書に開示された構成において、対軸線のすべてが互いに平行または垂直とは限らず、むしろ、少なくとも1つの対軸線は別の対軸線に対して傾斜している。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、電気コンタクトの複数の対のいくつかは、相殺を使用してクロストーク抵抗を向上させるために、互いに対して特定の位置および向きで比較的近接して配置されている。電気コンタクトの少なくとも1つの対は、距離に基づく隔離によってクロストーク抵抗を向上させるために、隣接する電気コンタクト対から比較的遠くに(例えば、相殺を使用する複数の対の間のそれぞれの間隔よりも遠くに)離間している。
【0014】
1つまたは複数の実施形態において、電気コネクタは、個々の電気コンタクト対を囲んで電気コンタクト対をクロストークおよびその他の電磁干渉から電気的に遮蔽する導電性シールドを有していない。また、電気導体には、電気コンタクト対の間に延びて電気コンタクト対の各々を分離する仕切り壁を有する導電性シールド部材がない。電気コネクタは、電気コンタクト対をまとめて囲む導電性シェルを有することができる。1つまたは複数の実施形態において、少なくともいくつかの隣接する電気コンタクト対が互いに遮蔽されず、これらの電気コンタクト対のクロストーク抵抗が、介在するシールドによってではなく相殺および/または隔離によってもたらされるようになっていてもよい。
【0015】
本明細書に開示された電気コネクタの実施形態の少なくとも1つの技術的効果は、隣接するコンタクト対の間に導電性シールド部材および/または層を設置する場合でも、これらをより少なくすることによって、公知の電気コネクタと比較して費用および複雑性を低減させ得ることである。本明細書に開示された実施形態の別の技術的効果は、電気コンタクトの開示された構成に起因する、公知の電気コネクタよりも大きいコンタクト密度により、一定の信号伝送品質基準または要件を満たすまたはこれを超えることを可能にすることである。逆に、所与の電気コネクタのサイズおよびコンタクトのサイズならびに所望のコンタクト密度に対して、本明細書に開示された実施形態による電気コネクタは、電気コンタクトの開示された構成に起因する、公知の電気コネクタよりも高い伝送品質を提供することができる。
【0016】
図1は、実施形態による電気コネクタ100の斜視図である。電気コネクタ100は複数の電気ケーブル102に取り付けられる。場合により、各電気ケーブル102は絶縁ワイヤであってよい。電気ケーブル102の一部のみを
図1に示すが、電気ケーブル102は電気コネクタ100から回路基板などの電気デバイスまで延びることができる。電気コネクタ100は、前端部104と、前端部104と反対側の後端部106とを有する。例示した実施形態において、前端部104は、相補的な相手側コネクタに係合および結合して、両コネクタにまたがる導電性経路を提供するように構成されている嵌合端部である。電気ケーブル102は、電気コネクタ100の後端部106から突出する。
本明細書で使用される場合、「前」、「後」、「上」、「下」、「内側」、および「外側」などの相対的なまたは空間に関する用語は、例示した向きにおける参照された要素を特定および区別するためにのみ使用され、重力および/または電気コネクタ100の周囲環境に対する特定の位置または向きを必ずしも必要としない。
【0017】
電気コネクタ100は、キャビティ112を画定するシェルまたはハウジング110を備える。電気コネクタ100はまた、誘電体ホルダ114と複数の電気コンタクト116とを備える。誘電体ホルダ114は、キャビティ112内に配置され、電気コンタクト116を指定位置に保持する。例えば、誘電体ホルダ114は、電気コンタクト116(本明細書ではコンタクト116とも称する)を特定の位置に保持することにより、相殺および隔離を使用してクロストークに抗することができる。コンタクト116は電気ケーブル102に電気的に終端接続されて、コンタクト116が電気ケーブル102に電気的に接続され機械的に固定されるようになっている。例えば、場合により、コンタクト116を電気ケーブル102の導電性コアに圧着またははんだ付けすることができる。
例示した実施形態において、コンタクト116の各々は、電気ケーブル102のうちの対応する異なる1つに終端接続される。例えば、
図1において、電気コネクタ100は8個のコンタクト116を有し、8本の電気ケーブル102が電気コネクタ100の後端部106から突出している。
【0018】
コンタクト116は、前端部104またはその近くにある相手側インターフェースで相手側コネクタの相補コンタクトに係合するように構成される。例示した実施形態において、コンタクト116は、相手側コンタクトのソケットに受け入れるように構成されたピン118を備える。代替実施形態において、コンタクト116は、ブレード、ソケットを画定するチューブ、偏向可能なばねビームなどの異なる形状を有することができる。
【0019】
シェル110は、前端部120と、前端部120と反対側の後端部122とを有する。場合により、シェル110の前端部120および後端部122は、電気コネクタ100の前端部104および後端部106をそれぞれ画定する。1つまたは複数の実施形態によるシェル110は導電性である。シェル110の導電性により、シェル110は、電気コネクタ100と隣接するコネクタおよびその他の電子デバイスとの間の電磁干渉に対して遮蔽することができる。シェル110は導電性材料を含む。例えば、導電性材料は、1つまたは複数の金属、導電性ポリマー(ICP)材料、損失性誘電材料などであってよい。損失性誘電材料は、金属粒子を含浸させた誘電体基板を有する。
【0020】
シェル110は、内面124と外面126とを有する。内面124はキャビティ112を画定する。キャビティ112は、前端部120から後端部122までシェル110を完全に貫通して延びることができる。例示した実施形態において、キャビティ112は円形断面形状を有する。代替実施形態において、キャビティ112は、長円形、楕円形、角丸の多角形状などの別の曲線形状であってもよい。
図1の外面126は全体として円筒形であるが、代替実施形態において別の形状であってもよい。外面126は電気コネクタ100の外面であり、外面126が周囲環境に晒される(例えば、別の部品に囲まれていない)ようになっている。代替実施形態において、電気コネクタ100は、シェル110の外面126を囲む追加のハウジング部品を有することができる。
【0021】
誘電体ホルダ114は、1つまたは複数のプラスチックなどの誘電材料を含むことができる。場合により、誘電材料は、電気絶縁をもたらすために、比較的低い誘電率を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または別のポリマーであってもよい。誘電体ホルダ114は、シェル110の前端部120から窪んでいてもよい。誘電体ホルダ114は、前端部120から離間した前面128を有して、相手側コネクタの一部を受け入れる受入空間130をシェル110内に画定する。ピン118は誘電体ホルダ114の前面128を越えて突出し、受入空間130内で露出して相手側コネクタの相補コンタクトに係合する。
【0022】
電気コンタクト116は対132で配置されている。各対132は差動信号を伝送するように構成することができ、対132が差動対であり得るようになっている。対132は、対132の2つのコンタクト116に沿って画定された2つの導電性経路間の電圧差に基づいて差動信号を伝送することができるため、対132の2つのコンタクト116を比較的近接して位置させることができる。1つまたは複数の実施形態において、コンタクト116の対132のいくつかを相殺配置134に集め、少なくとも1つの他の対132を相殺配置134内の対132から離間させる。
図1は、相殺配置134から離間した1つの隔離対140を示す。
【0023】
図2は、
図1に示す電気コネクタ100の正面断面図である。断面線は、シェル110および受入空間130(
図1に示す)内の電気コンタクト116のピン118を通って取ったものである。例示した実施形態において、電気コネクタ100は、コンタクト116の1つの隔離対140と、相殺配置134内の複数の対132とを有する。電気コンタクト116のうちの少なくともいくつかが、シェル110の内面124近くに位置しているが、内面124からは離間して、いずれのコンタクト116もシェル110に係合しないようになっている。例えば、コンタクト116を、空隙202または介在する誘電体カラーもしくはスリーブを介して内面124から分離させて、コンタクト116の電気短絡を避けることができる。
【0024】
隔離対140は、相殺配置134内の対132よりも、コンタクト116の隣接する対132から大きく隔離されている。例えば、隔離対140は、最も隣接する電気コンタクト116から第1の離間距離204だけ離間している。本明細書に記載の離間距離は、隣接する異なる対132の最も近い2つのコンタクト116間の距離を指す。第1の離間距離204は、隔離対140の一方のコンタクト116と、隔離対140のそのコンタクト116に最も隣接する(異なる対132の)コンタクト116との間の距離である。相殺配置134内の対132は、隔離対140よりも互いに近接して配置されている。例えば、相殺配置134内の第1の対206は、相殺配置134内の第2の対208から第2の離間距離210だけ離間している。
第2の離間距離210は第1の離間距離204より短い。別の例において、相殺配置134内の第3の対212は、第3の離間距離214を介して第1の対206から離間している。第3の離間距離214も第1の離間距離204より短い。第2の離間距離210および第3の離間距離214は、略等しくても(例えば、互いの1%、5%、または10%以内)、少なくとも互いに同様の長さ(例えば、互いの25%以内)であってもよい。
【0025】
隔離対140と相殺配置134内の対132との間隔が比較的大きいと、隔離対140と相殺配置134内の対132との電磁干渉(例えば、クロストーク)を、間隔がより狭い構成と比較して低減させることができる。電磁干渉が低減するのは、電磁エネルギーが隔離対140と相殺配置134内の隣接する対132との間で誘電体ホルダ114および/または空気などの誘電体媒質を通って比較的大きい距離を移動しなければならず、離間距離210全体を移動するエネルギーの量が減少するためであり得る。隔離対140は、電気コネクタ100の他のコンタクト116からの距離を介してクロストークに抗するように構成されている。
【0026】
例示した実施形態において、相殺配置134内の対132は、第1の対206、第2の対208、および第3の対212を含む。3つの対206、208、212が、相殺配置134内のすべての対132である。
図2において、電気コネクタ100は、1つの隔離対140および3つの対206、208、212により定義される、コンタクト116の計4つの対132(例えば、計8個のコンタクト116)を有する。代替実施形態において、電気コネクタ100は、これより多いまたは少ないコンタクト116を有していてもよい。例えば、1つの代替実施形態において、相殺配置134は第1の対206および第2の対208のみを有していてもよい。
【0027】
相殺配置134において、第1の対206は第2の対208に隣接している。第1の対206のコンタクト116は、第1の軸216において方向付けられる。例えば、第1の軸216は、第1の対206の2つのコンタクト116のピン118の各々の中心を通って延びる。第2の対208のコンタクト116は、第2の軸218において方向付けられる。例示した実施形態において、第2の軸218は第1の軸216に対して傾斜しており、第2の軸218が第1の軸216を横切るが第1の軸216に対して垂直ではないようになっている。したがって、第2の軸218は第1の軸216に対して平行でも垂直でもない。
【0028】
第1の対206は第3の対212にも隣接している。例えば、第1の対206は、第2の対208と第3の対212との間に配置することができる。本明細書において、第1の対206を中央対206とも称し、第1の軸216を中央軸216とも称する。本明細書において、第2の対208および第3の対212を、それぞれ第1の側部対208および第2の側部対212とも称する。第2の軸218を第1の側部軸218と称する。第2の側部対212のコンタクト116は、第2の側部軸222において方向付けられる。第2の側部軸222は中央軸216に対して傾斜している(例えば、平行でも垂直でもない)。第1の側部軸218と第2の側部軸222とは互いに横切り、第1の側部軸218と第2の側部軸222とが平行でないようになっている。
図2において第1の側部軸218および第2の側部軸222は鋭角を形成しているが、代替実施形態において、第1の側部軸218と第2の側部軸222とは垂直であっても鈍角であってもよい。
【0029】
隔離対140のコンタクト116は、隔離軸230に沿って方向付けられる。例示した実施形態における隔離軸230は、中央軸216に対して垂直(例えば、直角)である。したがって、中央対206は隔離対140に対して垂直である。中央対206と隔離対140とは、中央軸216が隔離対140を二分するように相対的に位置決めすることができる。例えば、
図2に示すように、中央軸216は隔離対140の2つのコンタクト116間に延びる。この位置では、隔離対140のコンタクト116は中央対206のコンタクト116から等距離にある。前述した比較的大きい間隔に加えて、隔離対140と中央対206とが等距離であると、例えば、中央対206から隔離対140への電磁ノイズ電圧が隔離対140の両方のコンタクト116に影響するため、クロストークに抗する。
差動信号は2つの導電性経路の電圧間の差として処理されるため、両方のコンタクト116に結合された共通のノイズ電圧は信号に影響しない。例えば、2つのコンタクト116に加わる電磁ノイズは効果的に相殺される。
【0030】
例示した実施形態において、第1の側部対208の一方の電気コンタクト116Aは、中央対206の2つのコンタクト116間で略等距離に位置する。例えば、第1の側部対208のコンタクト116Aと中央対206の第1のコンタクト116Aとの離間距離210は、第1の側部対208のコンタクト116Aと中央対206の第2のコンタクト116Bとの離間距離211に略等しい(例えば、離間距離211の1%、5%、または10%以内)。この等距離位置において、前述したように、第1の側部対208のコンタクト116Aと中央対206の2つのコンタクト116A、116Bとの間のノイズの少なくとも一部が効果的に相殺される。これは、ノイズが中央対206の両方のコンタクト116A、116Bに共通であるからである。
例示した実施形態において、第1の側部対208の他方の電気コンタクト116Bは、中央対206の2つのコンタクト116から略等距離にはない。例えば、第2のコンタクト116Bは、中央対206の第2のコンタクト116Bよりも第1のコンタクト116Aの近くに位置する。第1の側部対208の第2のコンタクト116Bは、第1のコンタクト116Aよりも中央対206から遠くに離間している。第2のコンタクト116Bと中央対206との間の距離により、クロストークに抗する隔離をもたらす。
【0031】
第2の側部対212は、中央対206の反対側で第1の側部対208と左右対称になっていてよい。例えば、例示した構成における電気コンタクト116は、中央軸216について対称であってよい。第2の側部対212の一方の電気コンタクト116Aは、中央対206の2つのコンタクト116間で略等距離に位置する。第2の側部対212の他方の電気コンタクト116Bは、中央対206の2つのコンタクト116から等距離にはなく、第2の側部対212の第1のコンタクト116Aよりも中央対206から遠くに離間し、隔離によりクロストークに抗する。
【0032】
図3は、
図1および
図2に示す電気コネクタ100の誘電体ホルダ114の分離斜視図である。誘電体ホルダ114は、前面128、前面128と反対側の後面302、および前面128から後面302まで長手方向軸310に沿って延びる外面304を有する。
図3では、誘電体ホルダ114は円筒形状であるが、他の実施形態において、多角柱形状などの異なる形状であってもよい。
【0033】
誘電体ホルダ114は、外面304に沿って複数のチャネル306を画定する。チャネル306は、誘電体ホルダ114の周囲に沿って周方向に離間している。チャネル306は、長手方向軸310に平行に細長く延びている。各チャネル306は誘電体ホルダ114の全長に延びることができ、チャネル306が前面128および後面302に沿って開くようになっている。例示した実施形態において、チャネル306は円筒形状であるが、代替実施形態において、1つまたは複数の平面を有していてもよい。
【0034】
チャネル306は、電気コンタクト116(
図2に示す)を内部に受け入れるように構成されている。各コンタクト116を、対応する異なるチャネル306に装填することができる。チャネル306は、コンタクト116を定位置にしっかりと保持するような大きさに作られている。例えば、誘電体ホルダ114は少なくとも部分的に柔軟で、コンタクト116を誘電体ホルダ114の周囲から半径方向内側へ押すことにより、コンタクト116をチャネル306にはめ込むことができるようになっていてもよい。例示した実施形態において、チャネル306は、誘電体ホルダ114内のコンタクト116が
図2に示す配置を実現できるように特定の構成に配置されている。チャネル306は対312で配置され、各対312は、コンタクト116の対応する異なる対132(
図2に示す)との関係を維持している。
場合により、電気ケーブル102(
図1に示す)の一部がチャネル306内に延びていてもよい。
【0035】
図3では、ほとんどの対312のチャネル306の両方が誘電体ホルダ114の周囲に沿って互いに隣接して位置し、2つのチャネル306が周方向に離間するようになっている。例えば、隔離対140(
図2に示す)の電気コンタクト116と相殺配置134(
図2)内の電気コンタクト116の少なくとも一部とは、誘電体ホルダ114の外面304に沿って別々に形成されたこれらのチャネル306内に保持される。1つの対312Aでは、チャネル306は互いに半径方向に離間しているが、周方向には離間していない。チャネル306の対312Aは、コンタクト116の中央対206(
図2)を受け入れるように構成されている。
実施形態において、中央対206の第1のコンタクト116A(
図2)は、周囲から対312Aの外側チャネル306Bを通過し、2つのチャネル306A、306Bを分割する仕切り壁316を横切って内側チャネル306Aに入るように移動することにより、対312Aの内側チャネル306Aに装填することができる。仕切り壁316は、コンタクト116Aの力により拡張可能なスロット314を画定することができ、コンタクト116Aは内側チャネル306Aに入ることができる。
【0036】
図4は、代替実施形態による電気コネクタ100の正面断面図である。
図1~
図3に示す電気コネクタ100とは異なり、
図4の誘電体ホルダ114は、1つまたは複数のエアポケット402を内部に画定する。エアポケット402は誘電体ホルダ114の中空開口部であり、エアポケット402に周囲空気が流入することができる。エアポケット402内の空気は低い誘電率を有し、コンタクト116の対132の間のクロストークおよびその他の電磁干渉に対する抵抗を向上させることができる。
【0037】
例示した実施形態において、誘電体ホルダ114は、互いに離間した2つのエアポケット402を備える。
図4では、エアポケット402は、誘電体ホルダ114の前面128に沿って開いている。場合により、エアポケット402は、誘電体ホルダ114を後面302(
図3に示す)まで完全に延びて貫通することができる。両方のエアポケット402は、隔離対140と相殺配置134内の対132との間の誘電体ホルダ114の空き領域404に位置する。2つのエアポケット402のうちの第1のエアポケット402Aは、隔離対140と第1の側部対208の第2のコンタクト116Bとの間に配置されている。2つのエアポケット402のうちの第2のエアポケット402Bは、隔離対140と第2の側部対212の第2のコンタクト116Bとの間に配置されている。
エアポケット402A、402B内の空気の低損失特性により、隔離対140と第1の側部対208および第2の側部対212との間のクロストークを低減させることができる。
【0038】
代替実施形態において、誘電体ホルダ114は、1つのみまたは3つ以上のエアポケット402を画定することができる。例えば、
図4に示す2つのエアポケット402A、402Bを分離する誘電体ホルダ114の材料を除去することにより、2つのエアポケット402A、402Bを組み合わせて1つのエアポケット402にすることができる。
【0039】
図5は、第2の代替実施形態による電気コネクタ100の正面断面図である。
図1~
図4に示す電気コネクタ100とは異なり、
図5のシェル110は、キャビティ112を含むシェル110の内面124から突出する2つのリブ502を備える。2つのリブ502は導電性であってよい。リブ502はシェル110と一体であっても、別個であって内面124に結合されてもよい。リブ502は、隔離対140と相殺配置134内の対132との間のそれぞれの位置で誘電体ホルダ114の外面304を貫通して、隔離対140と相殺配置134内の対132との間に電気シールドを提供する。例えば、リブ502のうちの第1のリブ502Aは、隔離対140と第1の側部対208の第2のコンタクト116Bとの間に延びる。リブ502のうちの第2のリブ502Bは、隔離対140の他側に配置されている。
第2のリブ502Bは、隔離対140と第2の側部対212の第2のコンタクト116Bとの間にある。リブ502の導電性により、隔離対140と第1の側部対208および第2の側部対212との間のクロストークを電気シールドによって低減させることができる。
【0040】
図6は、第3の代替実施形態による電気コネクタ100の正面断面図である。
図6に例示した実施形態は、
図4および
図5に示す代替実施形態の態様を組み合わせたものである。例えば、
図6の電気コネクタ100は、誘電体ホルダ114のエアポケット402と、シェル110から延びるリブ502とを備えて、電気シールドを提供する。