(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】有孔パネル及びパネルセット
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240122BHJP
E04C 2/08 20060101ALI20240122BHJP
A47B 96/14 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04F13/08 H
E04C2/08 B
A47B96/14 Z
(21)【出願番号】P 2019163174
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】392036821
【氏名又は名称】DICデコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】倉井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】濱野 強
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-222657(JP,A)
【文献】特開2016-020563(JP,A)
【文献】実開平04-081581(JP,U)
【文献】国際公開第2015/049755(WO,A1)
【文献】特開2002-021291(JP,A)
【文献】特開平07-119276(JP,A)
【文献】特開2006-124913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0051769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04C 2/08
A47B 96/14
A47F 5/00
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板により形成されて壁に設置される有孔パネルであって、
パネル面を形成するパネル面部と、
前記パネル面部に規則的に配列され
、前記パネル面部と一体的に連続して形成された複数の孔部と、を備え、
前記複数の孔部の少なくとも一つは、内周面にネジ溝が形成されている、
有孔パネル。
【請求項2】
前記パネル面部に対して屈曲されてなる嵩上部と、
前記嵩上部に対して屈曲されてなる設置部と、を更に備え、
前記設置部には、貫通孔が形成されている、
請求項1に記載の有孔パネル。
【請求項3】
鋼板により形成されて壁に設置される有孔パネルであって、
パネル面を形成するパネル面部と、
前記パネル面部に規則的に配列された複数の孔部と、を備え、
前記複数の孔部の少なくとも一つは、内周面にネジ溝が形成されており、
前記パネル面部に対して屈曲されてなる嵩上部と、
前記嵩上部に対して屈曲されてなる設置部と、を更に備え、
前記設置部には、貫通孔が形成されている、
有孔パネル。
【請求項4】
前記複数の孔部は、前記パネル面部と一体的に連続して形成されている、
請求項3に記載の有孔パネル。
【請求項5】
前記パネル面部には、前記設置部に形成された前記貫通孔に対応する位置において貫通孔が形成されている、
請求項2~4の何れか一項に記載の有孔パネル。
【請求項6】
前記孔部は、前記パネル面部から前記パネル面の反対側に円筒状に延びる円筒部を有し、
前記ネジ溝は、前記円筒部の内周面に形成されている、
請求項1
~5の何れか一項に記載の有孔パネル。
【請求項7】
前記複数の孔部は、二軸方向に配列されている、
請求項1~
6の何れか一項に記載の有孔パネル。
【請求項8】
壁に設置される複数のパネルを備え、
前記複数のパネルは、互いに外形が同じであり、
前記複数のパネルの少なくとも一つは、請求項1~
7の何れか一項に記載の有孔パネルである、
パネルセット。
【請求項9】
前記複数のパネルの少なくとも二つは、互いに前記複数の孔部の配列が異なる前記有孔パネルである、
請求項
8に記載のパネルセット。
【請求項10】
前記複数のパネルの少なくとも一つは、前記有孔パネルとは異なるフラットパネルであり、
前記フラットパネルは、パネル面を形成するパネル面部を備え、
前記フラットパネルのパネル面部は、規則的に配列された複数の孔部が形成されていない、
請求項
8又は
9に記載のパネルセット。
【請求項11】
前記フラットパネルは、鋼板により形成されている、
請求項
10に記載のパネルセット。
【請求項12】
前記複数のパネルのそれぞれのパネル面部は、矩形に形成されている、
請求項
8~
11の何れか一項に記載のパネルセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に設置される有孔パネル及びパネルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の集合住宅等では、壁に孔が開けられるのを抑制するために、壁にパネルを設置し、このパネルに棚等の支持部材を設置することが考えられている。このようなパネルとしては、例えば、特許文献1に記載された収納兼飾り壁がある。この収納兼飾り壁は、複数の孔が形成されており、この孔に支持部材を引っ掛け又は挿入することにより、支持部材を着脱自在に設置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、収納兼飾り壁に対して支持部材を着脱自在に設置するものであるため、支持部材の安定性が十分でないという問題がある。特に、重量物を支持する場合は高い安定性が求められるため、この問題は極めて重要となる。しかも、収納兼飾り壁に単に孔が形成されているだけであるため、収納兼飾り壁に対する支持部材の設置方法が限定され、収納兼飾り壁に対して支持部材を強固に設置することができないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、棚等の支持部材を安定的に設置することができる有孔パネル及びパネルセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有孔パネルは、壁に設置される有孔パネルであって、パネル面を形成するパネル面部と、パネル面部に規則的に配列された複数の孔部と、を備え、複数の孔部の少なくとも一つは、内周面にネジ溝が形成されている。
【0007】
この有孔パネルでは、パネル面を形成するパネル面部に規則的に配列された複数の孔部が形成されているため、これらの孔部を利用することで、棚等の支持部材を自由に設置することができる。しかも、複数の孔部の少なくとも一つは、内周面にネジ溝が形成されているため、この孔部にネジを螺合させることにより、有孔パネルに支持部材を締結することができる。これにより、支持部材を安定的に設置することができる。
【0008】
有孔パネルは、鋼板により形成されていてもよい。この有孔パネルでは、鋼板により形成されているため、木製の場合に比べて、耐荷重性を低下させずに薄くすることができる。しかも、鋼板は磁力により吸着する強磁性体であるため、磁力によって支持部材を有孔パネルに吸着させることができる。
【0009】
孔部は、パネル面部からパネル面の反対側に円筒状に延びる円筒部を有し、ネジ溝は、円筒部の内周面に形成されていてもよい。この有孔パネルでは、孔部が、内周面にネジ溝が形成された円筒部を有するため、ネジ溝が形成されている部分の長さを十分に確保することができる。これにより、支持部材をより安定的に設置することができる。
【0010】
複数の孔部は、二軸方向に配列されていてもよい。この有孔パネルでは、複数の孔部が二軸方向に配列されているため、支持部材の設置自由度を向上させることができる。なお、複数の孔部が、直交する二軸方向に配列されている場合は、有孔パネルを容易に製造することができるとともに、有孔パネルに支持部材を容易に配置することができる。
【0011】
本発明に係るパネルセットは、壁に設置される複数のパネルを備え、複数のパネルは、互いに外形が同じであり、複数のパネルの少なくとも一つは、上記の何れかの有孔パネルである。
【0012】
本発明に係るパネルセットでは、互いに外形が同じ複数のパネルを備えるとともに、複数のパネルの少なくとも一つが上記の有孔パネルであるため、複数のパネルを意匠的に纏まるように配置することができるとともに、有孔パネルにより支持部材を安定的に設置することができる。
【0013】
複数のパネルの少なくとも二つは、互いに複数の孔部の配列が異なる有孔パネルであってもよい。このパネルセットでは、互いに複数の孔部の配列が異なる二つの有孔パネルを備えるため、二つの有孔パネル間で支持部材の設置の仕方を変えることができる。しかも、パネルセット全体において、複数の孔部の配列に変化を与えることができるため、意匠のバリエーションを増やすことができる。
【0014】
複数のパネルの少なくとも一つは、有孔パネルとは異なるフラットパネルであり、フラットパネルは、パネル面を形成するパネル面部を備え、フラットパネルのパネル面部は、規則的に配列された複数の孔部が形成されていなくてもよい。このパネルセットでは、複数のパネルの少なくとも一つがフラットパネルであるため、パネルセット全体において、規則的に配列された複数の孔部が形成された部分と、規則的に配列された複数の孔部が形成されていない部分と、を作り出すことができる。これにより、意匠のバリエーションを増やすことができる。例えば、フラットパネルの両隣に一対の有孔パネルを配置することで、棚の両端部を一対の有孔パネルに締結して、棚の中央部にフラットパネルを配置することができる。これにより、棚の耐荷重性を確保しつつ、棚の中央部の背面をフラットにすることができる。
【0015】
フラットパネルは、鋼板により形成されていてもよい。このパネルセットでは、フラットパネルが強磁性体である鋼板により形成されているため、磁力によって支持部材をフラットパネルに吸着させることができる。なお、有孔パネルがフラットパネルと同じ鋼板により形成されている場合は、フラットパネルと有孔パネルとの間で質感を統一させることもできる。
【0016】
複数のパネルのそれぞれのパネル面部は、矩形に形成されていてもよい。このパネルセットでは、複数のパネルのそれぞれのパネル面部が矩形に形成されているため、複数のパネルを容易に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、棚等の支持部材を安定的に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態のパネルセットを示す正面図である。
【
図2】本実施形態の有孔パネルを示す正面図である。
【
図3】本実施形態の有孔パネルを表側から見た斜視図である。
【
図4】本実施形態の有孔パネルを裏側から見た斜視図である。
【
図7】有孔パネルを設置している状態を示す斜視図である。
【
図9】有孔パネルを設置している状態を示す断面図である。
【
図10】有孔パネルが設置された状態を示す斜視図である。
【
図11】有孔パネルに支持部材が設置された状態を示す断面図である。
【
図12】有孔パネルに対する支持部材の設置例を説明する斜視図である。
【
図13】有孔パネルに対する支持部材の設置例を説明する斜視図である。
【
図16】パネルセットの変形例を示す正面図である。
【
図17】パネルセットの変形例を示す正面図である。
【
図18】パネルセットの変形例を示す正面図である。
【
図19】パネルセットの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施形態の有孔パネル及びパネルセットについて詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[パネルセット]
図1に示すように、本実施形態に係るパネルセット1は、壁2に設置される複数のパネル3を備える。複数のパネル3は、互いに外形が同じパネルである。本実施形態では、パネルセット1は、3つのパネル3を備え、そのうちの2枚は有孔パネル4であり、残りの1枚はフラットパネル5である。このパネルセット1では、例えば、フラットパネル5が中央に配置され、2枚の有孔パネル4がフラットパネル5の両隣にそれぞれ配置される。但し、パネルセットを構成する有孔パネル及びフラットパネルの数、複数のパネルの配置等は、特に限定されるものではない。また、パネルセットは、互いに外形が同じパネルの他に、異なる外形のパネルを備えていてもよい。
【0021】
[有孔パネル]
図1~
図5に示すように、有孔パネル4は、壁2に設置される部材である。有孔パネル4は、壁2に設置されることで、例えば、部屋等の空間の内装の一部となる。本実施形態では、有孔パネル4は、鋼板により形成されている。有孔パネル4の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.6mm以上1.6mm以下とすることができる。有孔パネル4は、平板状のパネル面部11と、パネル面部11に対して屈曲されてなる嵩上部12と、嵩上部12に対して屈曲されてなる設置部13と、を有する。なお、
図3は、表側の左上から見た有孔パネル4の斜視図であり、
図4は、裏側の右下から見た有孔パネル4の斜視図である。
【0022】
パネル面部11は、パネル面14を形成するための部位である。パネル面部11は、壁2とは反対側に向けられてパネル面14を形成する表面と、壁2側に向けられる裏面と、を有する。ここで、パネル面部11のパネル面14側(壁2とは反対側)を、単に表面側ともいい、パネル面部11のパネル面14とは反対側(壁2側)を、単に裏面側ともいう。パネル面部11は、矩形に形成されている。つまり、パネル面14が矩形に形成されている。パネル面部11は、互いに対向する一対の辺部11Aと、互いに対向する一対の辺部11Bと、の4つの辺部を有する。
【0023】
嵩上部12は、壁2に対してパネル面部11を嵩上げするための部位である。嵩上部12は、パネル面部11に対して略直角に屈曲されて、パネル面部11から裏面側に延びている。嵩上部12は、一対の辺部11Aから裏面側に延びる一対の嵩上部12Aと、一対の辺部11Bから裏面側に延びる一対の嵩上部12Bと、を有する。一対の嵩上部12Aは、それぞれ一対の辺部11Aに沿って延びる細長い矩形状に形成されている。一対の嵩上部12Bは、それぞれ一対の辺部11Bに沿って延びる細長い矩形状に形成されている。
【0024】
設置部13は、嵩上部12に対して略直角に屈曲されて、設置部13からパネル面部11と平行な方向に延びている。設置部13は、一対の嵩上部12Aから延びる一対の設置部13Aを有する。一対の設置部13Aは、一対の嵩上部12Aから互いに近接する方向に延びている。一対の設置部13Aは、それぞれ一対の辺部11Aに沿って延びる細長い矩形状に形成されている。なお、本実施形態では、設置部13は、一対の嵩上部12Bから延びていないが、一対の嵩上部12Bからも延びていてもよい。
【0025】
一対の設置部13Aには、後述するネジ22(
図7~
図9参照)を通すための貫通孔15が形成されている。ネジ22は、貫通孔15を通して壁2にねじ込むことにより、設置部13を壁2に締結するための締結部材である。貫通孔15は、例えば、一対の設置部13Aのそれぞれの両端部に形成されている。
図4では、一対の設置部13Aのそれぞれの両端部に、合計4個の貫通孔15が形成されている。
【0026】
パネル面部11には、設置部13に形成された貫通孔15に対応する位置に、ネジ22を通すための貫通孔16が形成されている。つまり、パネル面部11の四隅に、それぞれ貫通孔15が形成されている。
図2では、パネル面部11の四隅に、合計4個の貫通孔16が形成されている。パネル面部11に形成された貫通孔16の内径は、設置部13に形成された貫通孔15の内径よりも大きい。
【0027】
更に、パネル面部11には、貫通孔16とは別に、規則的に配列された複数の孔部17が形成されている。複数の孔部17は、互いに直交する二軸方向に配列されている。具体的には、複数の孔部17は、一対の辺部11Aと平行な方向と、一対の辺部11Bと平行な方向と、の二軸方向に配列されている。つまり、複数の孔部17は、格子状に配列されている。複数の孔部17は、例えば、二軸方向にそれぞれ4以上配列されていることが好ましい。また、各軸における孔部17の配列数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
図2では、パネル面部11に、一対の辺部11Aと平行な方向に8列、一対の辺部11Bと平行な方向に8列の、合計64個の孔部17が形成されている。
【0028】
複数の孔部17のピッチ、複数の孔部17のそれぞれの内径等は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、複数の孔部17のピッチを60mmとし、各孔部17の内径を6mmとすることができる。また、例えば、複数の孔部17のピッチを25mmとし、各孔部17の内径を5mmとすることができる。
【0029】
図5及び
図6に示すように、複数の孔部17のそれぞれは、円筒部17Aを有する。円筒部17Aは、パネル面部11から裏面側(パネル面14の反対側)に円筒状に延びており、内周側に貫通孔が形成されている。そして、円筒部17Aの内周面に、ネジ溝17Bが形成されている。ネジ溝17Bは、雌ネジを形成する。なお、ネジ溝17Bは、円筒部17Aの内周面の全域に形成されていてもよく、円筒部17Aの内周面の一部にのみ形成されていてもよい。
【0030】
このような孔部17は、如何なる方法により形成してもよい。例えば、パネル面部11と一体的に連続して(パネル面部11を加工することにより)孔部17を形成してもよく、パネル面部11とは別部材をパネル面部11に接合することにより孔部17を形成してもよい。パネル面部11と一体的に連続して孔部17を形成する方法としては、例えば、鋼板に対するバーリング加工及びタッピングにより形成する方法がある。つまり、パネル面部11をバーリング加工して円筒部17Aを形成し、円筒部17Aの内周面をタッピングしてネジ溝17Bを形成する。パネル面部11とは別部材をパネル面部11に接合することにより孔部17を形成する方法としては、例えば、貫通孔が形成された鋼板に、ナット等の別部材を溶接することにより形成する方法がある。つまり、パネル面部11の孔部17となる位置に貫通孔を形成し、この孔部17となる位置に、パネル面部11とは別体の、ネジ溝17Bが予め設けられたナット等の円筒部17Aを、溶接等により接合する。なお、本実施形態では、パネル面部11と一体的に連続して孔部17を形成するものとして説明する。
【0031】
円筒部17Aの長さは、特に限定されるものではない。例えば、円筒部17Aが壁2に当接されない観点から、円筒部17Aの長さは、嵩上部12の高さ(設置部13からパネル面部11までの長さ)未満とすることができる。また、パネル面部11と一体的に連続して孔部17を形成する場合、円筒部17Aの製造容易性及びネジ溝17Bに対するネジの締結性の観点から、円筒部17Aの長さは、パネル面部11の肉厚の0.5倍以上2.5倍以下とすることができる。一方、パネル面部11とは別部材をパネル面部11に接合することにより孔部17を形成する場合、ネジ溝17Bに対するネジの締結性及び円筒部17Aの長大化抑制の観点から、円筒部17Aの長さは、パネル面部11の肉厚の0.5倍以上30倍以下とすることができる。
【0032】
[フラットパネル]
フラットパネル5は、壁2に設置される部材である。フラットパネル5は、壁2に設置されることで、例えば、部屋等の空間の内装の一部となる。本実施形態では、フラットパネル5は、鋼板により形成されている。フラットパネル5は、規則的に配列された複数の孔部17が形成されていない点を除き、有孔パネル4と同形状である。
【0033】
[施工方法]
次に、パネルセット1の施工方法、つまり、壁2にパネルセット1を設置する方法について説明する。
【0034】
パネルセット1を施工する際は、2枚の有孔パネル4及び1枚のフラットパネル5のそれぞれを、所定の位置に配置して壁2に設置する。壁2に対する有孔パネル4の設置方法と壁2に対するフラットパネル5の設置方法とは同じであるため、壁2に対する有孔パネル4の設置方法を代表して説明する。
【0035】
壁2に対する有孔パネル4の設置は、例えば、
図7及び
図8に示すパネル締結部材20により行う。なお、パネル締結部材20は、パネルセット1を構成するものであってもよい。
図7及び
図8に示すパネル締結部材20は、筒状部材21と、ネジ22と、蓋23と、を備える。
【0036】
筒状部材21は、円筒状に延びる筒状部21Aと、筒状部21Aの一方端部から半径方向内側に延びる円板状の係止部21Bと、を有する。係止部21Bの半径方向中央部には、貫通孔21Cが形成されている。筒状部21Aの係止部21Bとは反対側の端部の内周面には、ネジ溝21Dが形成されている。ネジ溝21Dは、雌ネジを形成する。筒状部材21は、パネル面部11の貫通孔16を通過できるが設置部13の貫通孔15を通過できない寸法となっている。つまり、筒状部材21の外径は、パネル面部11の貫通孔16の内径よりも小さく、設置部13の貫通孔15の外径よりも大きい。
【0037】
ネジ22は、外周面にネジ溝が形成されたネジ部22Aと、ネジ部22Aに接続された頭部22Bと、を有する。ネジ部22Aは、パネル面部11の貫通孔16、設置部13の貫通孔15、及び筒状部材21の貫通孔21Cを通過できる寸法となっている。つまり、ネジ部22Aの外径は、パネル面部11の貫通孔16、設置部13の貫通孔15の内径、及び筒状部材21の貫通孔21Cよりも小さい。頭部22Bは、パネル面部11の貫通孔16を通過できるが設置部13の貫通孔15及び筒状部材21の貫通孔21Cを通過できない寸法となっている。つまり、頭部22Bの外径は、パネル面部11の貫通孔16の内径よりも小さく、設置部13の貫通孔15の外径及び筒状部材21の貫通孔21Cよりも大きい。
【0038】
蓋23は、パネル面部11の貫通孔16を覆うための部材である。蓋23は、外周面にネジ溝が形成されたネジ部23Aと、ネジ部23Aに接続された蓋部23Bと、を有する。ネジ部23Aのネジ溝は、筒状部材21のネジ溝21Dに螺合される雄ネジを形成する。蓋23は、筒状部材21のネジ溝21Dに螺合されることで、筒状部材21の係止部21Bとは反対側の開口を覆う。蓋23は、パネル面部11の貫通孔16を貫通できる寸法となっている。つまり、蓋23の外径は、パネル面部11の貫通孔16の内径よりも小さい。この場合、パネル面部11の貫通孔16と蓋部23Bとの間に大きな隙間が形成されないように、蓋部23Bの外径は、パネル面部11の貫通孔16の内径と略同じであるか、パネル面部11の貫通孔16の内径よりも僅かに小さいことが好ましい。
【0039】
筒状部材21に蓋23が螺合された状態における筒状部材21及び蓋23の長さは、パネル面部11から蓋23が突出しないように、設置部13の表面側の面からパネル面部11のパネル面14までの長さと略同じ又は僅かに短いことが好ましい。また、蓋23のネジ部23Aとは反対側の外周端縁は、パネル面14における引っ掛かりを抑制するために、面取り又はR加工が施されていることが好ましい。
【0040】
そして、
図7及び
図9に示すように、筒状部材21の貫通孔15にネジ22のネジ部22Aを挿入し、筒状部材21及びネジ22をパネル面部11の貫通孔16に挿入し、ネジ22のネジ部22Aを設置部13の貫通孔15から壁2にねじ込み、有孔パネル4を壁2に締結する。そして、筒状部材21のネジ溝21Dに蓋23のネジ部23Aをねじ込み、筒状部材21に蓋をする。これにより、
図10に示すように、パネル面部11の貫通孔16が蓋23で塞がれるとともに、パネル面部11のパネル面14から蓋23が突出することなく、有孔パネル4が壁2に設置された状態となる。
【0041】
壁2に有孔パネル4が設置されると、
図11に示すように、支持部材32に通したネジ31を有孔パネル4の孔部17に螺合させて、支持部材32を有孔パネル4に締結することで、支持部材32を有孔パネル4及び壁2に設置することができる。支持部材としては、特に限定されるものではないが、例えば、棚、棚を支持するL字アングル、荷物を吊り下げるフック等が挙げられる。
【0042】
例えば、
図12に示すように、支持部材32である2つのL字アングル32Aを、ネジ31により有孔パネル4の孔部17に締結する(
図11参照)。そして、有孔パネル4に締結された2つのL字アングル32Aに棚板33Aを締結する。これにより、2つのL字アングル32A及び棚板33Aが有孔パネル4に強固に設置される。なお、支持部材32は、2つのL字アングル32A及び棚板33Aの全体であってもよい。
【0043】
また、
図13に示すように、フラットパネル5が中央に配置され、2枚の有孔パネル4がフラットパネル5の両隣にそれぞれ配置されている場合、支持部材32である2つのL字アングル32Bを、ネジ31により、2枚の有孔パネル4のそれぞれの孔部17に締結する。そして、2枚の有孔パネル4のそれぞれに締結された2つのL字アングル32Bに棚板33Bを締結する。これにより、棚板33Bは、フラットパネル5を横断するように、2枚の有孔パネル4に強固に設置される。なお、支持部材32は、2つのL字アングル32B及び棚板33Bの全体であってもよい。
【0044】
また、有孔パネル4及びフラットパネル5は、鋼板により形成されていることから、
図12に示すように、棚35の裏面にマグネット36が取り付けられたマグネット吸着棚37を有孔パネル4及びフラットパネル5に磁力により吸着させる。これにより、マグネット吸着棚37は、有孔パネル4及びフラットパネル5に設置される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る有孔パネル4では、パネル面14を形成するパネル面部11に規則的に配列された複数の孔部17が形成されているため、これらの孔部17を利用することで、棚等の支持部材32を自由に設置することができる。しかも、複数の孔部17の内周面にネジ溝17Bが形成されているため、この孔部17にネジ31を螺合させることにより、有孔パネル4に支持部材32を締結することができる。これにより、支持部材32を安定的に設置することができる。なお、有孔パネル4に対する支持部材32の設置方法としては、孔部17のネジ溝17Bを利用した締結に限定されるものではなく、例えば、特許文献1に記載されたように、有孔パネル4の孔部17に支持部材を挿入する方法や、有孔パネル4の孔部17に支持部材を引っ掛ける方法などもある。
【0046】
また、本実施形態に係る有孔パネル4では、有孔パネル4及びフラットパネル5が鋼板により形成されているため、木製の場合に比べて、耐荷重性を低下させずに薄くすることができる。しかも、鋼板は磁力により吸着する強磁性体であるため、磁力によって支持部材32を有孔パネル4及びフラットパネルに吸着させることができる。なお、有孔パネル4とフラットパネル5とが同じ鋼板により形成することで、有孔パネルと10のフラットパネル5との間で質感を統一させることもできる。
【0047】
また、本実施形態に係る有孔パネル4では、孔部17が、内周面にネジ溝17Bが形成された円筒部17Aを有するため、ネジ溝17Bが形成されている部分の長さを十分に確保することができる。これにより、支持部材32をより安定的に設置することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る有孔パネル4では、複数の孔部17が互いに直交する二軸方向に配列されているため、支持部材32の設置自由度を向上させることができる。
【0049】
本実施形態に係るパネルセット1では、互いに外形が同じ複数のパネル3を備えるとともに、複数のパネル3の少なくとも一つが上述した有孔パネル4であるため、複数のパネル3を意匠的に纏まるように配置することができるとともに、有孔パネル4により支持部材32を安定的に設置することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るパネルセット1では、複数のパネル3の少なくとも一つがフラットパネル5であるため、パネルセット1全体において、規則的に配列された複数の孔部17が形成された部分と、規則的に配列された複数の孔部17が形成されていない部分と、を作り出すことができる。これにより、意匠のバリエーションを増やすことができる。例えば、
図13に示すように、フラットパネル5の両隣に一対の有孔パネル4を配置することで、棚板33の両端部に締結される2つのL字アングル32Bを一対の有孔パネル4に締結して、棚板33の中央部にフラットパネル5を配置することができる。これにより、棚板33の耐荷重性を確保しつつ、棚板33の中央部の背面をフラットにすることができる。これにより、例えば、孔部17に小物や液体が入り込むのを抑制することができるため、長期にわたって清浄な状態を維持することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るパネルセット1では、複数のパネル3のそれぞれのパネル面部11が矩形に形成されているため、複数のパネル3を容易に組み合わせることができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0053】
例えば、上記実施形態では、有孔パネルのパネル面部に形成された全ての孔部の内周面にネジ溝が形成されているものとして説明したが、複数の孔部の少なくとも一つの内周面にネジ溝が形成されていればよい。この場合、複数の孔部のうち、半数以上の孔部の内周面にネジ溝が形成されていることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、有孔パネルのパネル面部に形成された孔部が円筒部を備えるものとして説明したが、孔部は、円筒部を備えないものであってもよい。例えば、
図14に示す有孔パネル4Aの孔部17のように、円筒部を備えないものであってもよい。この場合であっても、孔部17の内周面にネジ溝17Bが形成されていることで、有孔パネル4Aに支持部材を締結することができ、支持部材を安定的に設置することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、筒状部材21、ネジ22、及び蓋23を備えるパネル締結部材20により、有孔パネル4を壁2に設置するものとして説明したが、壁2に対する有孔パネル4の設置方法は、これに限定されるものではない。例えば、釘等により有孔パネル4を壁2に打ち付けてもよく、
図15に示す有孔パネル4Bのように、ネジ22及び蓋23のみを備えるパネル締結部材20Bにより有孔パネル4を壁2に締結してもよい。
図15に示すパネル締結部材20Bでは、パネル面部11の貫通孔16の内周面にネジ溝が形成されている。そして、パネル面部11の貫通孔16及び設置部13の貫通孔15からネジ22を壁2にねじ込み、パネル面部11の貫通孔16のネジ溝に蓋部23Bをねじ込む。これにより、パネル面部11の貫通孔16を蓋23で塞ぐことができる。なお、パネル面部11の貫通孔16は、必ずしも塞がなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、パネルを壁に直接設置するものとして説明したが、壁に設置される支柱等の他部材を介して壁に設置するものとしてもよい。
【0057】
また、パネルセットが複数の有孔パネルを備える場合、複数の有孔パネルにおいて、複数の孔部の配列、複数の孔部のピッチ、複数の孔部のそれぞれの内径等は、全て同じであってもよく、全て異なっていてもよく、一部のみ異なっていてもよい。これにより、有孔パネル間で支持部材の設置の仕方を変えることができる。しかも、パネルセット全体において、複数の孔部の配列に変化を与えることができるため、意匠のバリエーションを増やすことができる。また、パネルセットが複数の有孔パネルを備える場合、内周面にネジ溝が形成された孔部を有する有孔パネルと、内周面にネジ溝が形成されていない孔部を有する有孔パネルと、が混在していてもよい。例えば、
図16に示すパネルセット1Cは、4枚のパネル3を備えている。そして、そのうちの2枚のパネル3は、上述した実施形態と同じ有孔パネル4である。残りの2枚のパネル3は、孔部の内周面にネジ溝が形成されておらず、有孔パネル4よりも、複数の孔部のピッチが狭く、複数の孔部のそれぞれの内径が小さい有孔パネル4Cである。
【0058】
また、上記実施形態では、パネル(有孔パネル及びフラットパネル)のパネル面部は矩形に形成されているものとして説明したが、パネル面部の形状は特に限定されるものではない。例えば、
図17に示すパネルセット1Dのように、パネル面部を三角形に形成してもよく、
図18に示すパネルセット1Eのように、パネル面部を六角形に形成してもよい。
図17に示すパネルセット1Dは、パネル面部が三角形に形成された3枚の有孔パネル4D及び3枚のフラットパネル5Dを備えている。これらのパネルを適宜配置することで、例えば、
図17に示すような六角形のパネルセット1Dを構成することができる。
図18に示すパネルセット1Eは、パネル面部が六角形に形成された2枚の有孔パネル4E及び1枚のフラットパネル5Eを備えている。これらのパネルを適宜配置することで、例えば、
図18に示すような三方に延びるパネルセット1Eを構成することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、有孔パネル及びフラットパネルが鋼板により形成されているものとして説明したが、有孔パネル及びフラットパネルの双方又は何れか一方が木材等の鋼板以外の素材により形成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、有孔パネルの複数の孔部が直交する二軸方向に配列されているものとして説明したが、有孔パネルの複数の孔部は、規則的に配列されていればよく、互いに傾斜する二軸方向に配列されていてもよく、三軸以上に配列されていてもよい。
【0061】
また、パネルセットは、少なくとも、互いに外形が同じ2以上のパネルを備えていればよく、それ以外の異なる形状のパネルが含まれていてもよい。例えば、パネルセットは、基準形状の基準パネルと、基準パネルよりも小さい異形パネルと、をそれぞれ複数備え、異形パネルを複数枚並べることで基準パネルと外形寸法が同じになるようにしてもよい。基準パネル及び異形パネルが矩形である場合、異形パネルの隣り合う辺のうち、少なくとも一方の辺が、基準パネルの対応する辺の整数分の1(1/n:但しnは整数)の長さとすることができる。換言すると、基準パネルの隣り合う辺のうち、少なくとも一方の辺が、異形パネルの対応する辺の整数倍の長さとすることができる。例えば、
図19に示すパネルセット1Gのように、異形パネルの隣り合う辺のうち、一方の辺が、基準パネルの対応する辺の整数分の1の長さであり、他方の辺が、基準パネルの対応する辺と同じ長さとしてもよい。
【0062】
図19に示すパネルセット1Gは、5枚のパネル3を備える。そのうちの2枚は上記実施形態の有孔パネル4であり、そのうちの1枚は上記実施形態のフラットパネル5であり、残りの2枚は上記実施形態とは異形状の異形有孔パネル6である。2枚の有孔パネル4及び1枚のフラットパネル5は、矩形の基準形状の基準パネルであり、2枚の異形有孔パネル6は、基準パネルよりも小さい矩形の異形パネルである。異形有孔パネル6は、外形が異なること以外、有孔パネル4と同様である。そして、異形有孔パネル6の隣り合う辺6a,6bのうち、一方の辺6aが、有孔パネル4の対応する辺4aの1/2(半分)の長さであり、他方の辺6bが、有孔パネル4の対応する辺4bと同じ長さである。このようなパネルセット1Gでは、2枚の異形有孔パネル6を突き合わせることで1枚の有孔パネル4と同じ大きさになる。このため、例えば、2枚の有孔パネル4及び1枚のフラットパネル5をL字状に配置し、その入隅部に2枚の異形有孔パネル6を配置することで、パネルセット1G全体を矩形とすることができる。
【0063】
なお、パネルセットに異形パネルが含まれる場合、異形パネルは、1つであってもよく複数であってもよい。また、パネルセットに異形パネルが複数含まれる場合、複数の異形パネルは、基準パネルと同じ形状となるように配置してもよく、基準パネルとは関係なく個別に配置してもよい。また、異形パネルは、有孔パネルであってもよく、フラットパネルであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,1C,1D,1E,1G…パネルセット、2…壁、3…パネル、4,4A,4B,4C,4D,4E…有孔パネル、4a,4b…辺、5,5D,5E…フラットパネル、6…異形有孔パネル、6a,6b…辺、11…パネル面部、11A…辺部、11B…辺部、12(12A,12B)…嵩上部、13(13A)…設置部、14…パネル面、15…貫通孔、16…貫通孔、17…孔部、17A…円筒部、17B…ネジ溝、20…パネル締結部材、20B…パネル締結部材、21…筒状部材、21A…筒状部、21B…係止部、21C…貫通孔、21D…ネジ溝、22…ネジ、22A…ネジ部、22B…頭部、23…蓋、23A…ネジ部、23B…蓋部、31…ネジ、32…支持部材、32A…L字アングル、32B…L字アングル、33…棚板、33A…棚板、33B…棚板、35…棚、36…マグネット、37…マグネット吸着棚。