IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7423229光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置
<>
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図1
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図2
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図3
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図4
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図5
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図6
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図7
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図8
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図9
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図10
  • 特許-光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】光学走査装置及びこれを搭載する画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20240122BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019166871
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043395
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 久倫
(72)【発明者】
【氏名】松下 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】太田 充広
(72)【発明者】
【氏名】片山 皓貴
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-237552(JP,A)
【文献】特開2016-102831(JP,A)
【文献】特開2013-044869(JP,A)
【文献】実開昭59-170814(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0209169(US,A1)
【文献】国際公開第2015/194283(WO,A1)
【文献】特開平06-273682(JP,A)
【文献】特開2005-202169(JP,A)
【文献】特開2018-069727(JP,A)
【文献】特開2015-049264(JP,A)
【文献】特開昭64-082009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10,26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光束を反射する複数の反射面を有する回転多面鏡と、前記回転多面鏡が固定されており前記回転多面鏡を回転させるモータ部と、を有し、レーザ光束を偏向する偏向ユニットと、
前記偏向ユニットが固定されているハウジングと、
前記ハウジングの開口を覆う蓋と、
を有し、被走査面をレーザ光束で走査する光学走査装置において、
前記ハウジングの内部空間を囲う前記ハウジングの複数の外壁であって前記回転多面鏡の回転軸の軸線方向と平行な面を有する前記複数の外壁のうち、前記回転軸を中心とする前記回転多面鏡の外接円に最も近い外壁は、前記回転軸の軸線方向における前記回転多面鏡の前記反射面の位置と対向する位置が空間となっており、
前記回転軸の軸線方向に対して垂直な方向に前記装置を見た時、前記外壁よりも前記外接円から離れた位置に前記空間を塞ぐように前記蓋の一部が設けられていることを特徴とする光学走査装置。
【請求項2】
前記外接円から前記外壁までの距離d[mm]が、前記外接円における前記回転多面鏡の周速をv[mm/s]とした時に、
d≦3.342×10-9-2.036×10-4v+12.39
の関係を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の光学走査装置。
【請求項3】
前記空間は、前記外壁に設けられた穴部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学走査装置。
【請求項4】
前記穴部を構成する前記外壁の前記穴部の周囲の部分には、前記回転多面鏡の回転方向に沿うように斜面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光学走査装置。
【請求項5】
感光体と、画像情報に応じたレーザ光束で前記感光体を走査する光学走査装置と、を有し、記録材に画像情報に応じた画像を形成する電子写真記録方式の画像形成装置において、
前記光学走査装置が請求項1乃至4いずれか一項に記載の光学走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記蓋は鉛直方向において前記ハウジングの上側に位置していることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
感光体と、画像情報に応じたレーザ光束で前記感光体を走査する光学走査装置と、を有し、記録材に画像情報に応じた画像を形成する電子写真記録方式の画像形成装置において、
前記光学走査装置が、
レーザ光束を反射する複数の反射面を有する回転多面鏡と、前記回転多面鏡が固定されており前記回転多面鏡を回転させるモータ部と、を有し、レーザ光束を偏向する偏向ユニットと、
前記偏向ユニットが固定されているハウジングと、
前記ハウジングの開口を覆う蓋と、
を有し
前記蓋は鉛直方向において前記ハウジングの下側に位置しており、
前記回転多面鏡の回転軸の軸線方向に対して垂直な方向に前記装置を見た時、
前記ハウジングの内部空間を囲う前記ハウジングの複数の外壁であって前記回転軸の軸線方向と平行な面を有する前記複数の外壁のうち、前記回転軸を中心とする前記回転多面鏡の外接円に最も近い外壁と、前記蓋の一部が、前記軸線方向において互いに重なっており、
この重なり領域が前記軸線方向における前記回転多面鏡の前記反射面の位置に対応する位置にはなく、前記軸線方向において前記回転多面鏡を基準に前記偏向ユニットと前記ハウジングの固定位置が設けられた側とは反対側のみに設けられており、
前記蓋の前記重なり領域となっている部分は前記垂直な方向において前記外壁よりも前記回転多面鏡に近い位置に設けられており、前記垂直な方向において前記外壁よりも前記回転多面鏡から離れた位置には設けられていないことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式のプリンタや複写機等の画像形成装置に搭載される光学走査装置であって、光源から出射するレーザ光を回転多面鏡で偏向して走査する光学走査装置、及びこれを搭載する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学走査装置の小型化のため、回転多面鏡を光学箱の外壁の近くに配置している光学走査装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5812704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転多面鏡は高速で回転しており、周囲の空気を撹拌する。撹拌された空気は回転多面鏡の近くに配置された壁に衝突し、騒音を発生する。騒音の周波数は回転多面鏡の反射面の数と対応しており、4面の場合は回転多面鏡の回転周波数の4倍の周波数の音となる。回転多面鏡が高速で回転すればするほど音の周波数と音圧が大きくなり、画像形成装置の出力速度アップに伴う騒音増大の一因となっている。また、回転多面鏡が外壁の近くに配置されているほど音は大きくなり、光学走査装置の小型化で生じる課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、小型でありながら騒音が抑えられた光学走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための本発明は、レーザ光束を反射する複数の反射面を有する回転多面鏡と、前記回転多面鏡が固定されており前記回転多面鏡を回転させるモータ部と、を有し、レーザ光束を偏向する偏向ユニットと、前記偏向ユニットが固定されているハウジングと、前記ハウジングの開口を覆う蓋と、を有し、被走査面をレーザ光束で走査する光学走査装置において、前記ハウジングの内部空間を囲う前記ハウジングの複数の外壁であって前記回転多面鏡の回転軸の軸線方向と平行な面を有する前記複数の外壁のうち、前記回転軸を中心とする前記回転多面鏡の外接円に最も近い外壁は、前記回転軸の軸線方向における前記回転多面鏡の前記反射面の位置と対向する位置が空間となっており、前記回転軸の軸線方向に対して垂直な方向に前記装置を見た時、前記外壁よりも前記外接円から離れた位置に前記空間を塞ぐように前記蓋の一部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、感光体と、画像情報に応じたレーザ光束で前記感光体を走査する光学走査装置と、を有し、記録材に画像情報に応じた画像を形成する電子写真記録方式の画像形成装置において、前記光学走査装置が、レーザ光束を反射する複数の反射面を有する回転多面鏡と、前記回転多面鏡が固定されており前記回転多面鏡を回転させるモータ部と、を有し、レーザ光束を偏向する偏向ユニットと、前記偏向ユニットが固定されているハウジングと、前記ハウジングの開口を覆う蓋と、を有し、前記蓋は鉛直方向において前記ハウジングの下側に位置しており、前記回転多面鏡の回転軸の軸線方向に対して垂直な方向に前記装置を見た時、前記ハウジングの内部空間を囲う前記ハウジングの複数の外壁であって前記回転軸の軸線方向と平行な面を有する前記複数の外壁のうち、前記回転軸を中心とする前記回転多面鏡の外接円に最も近い外壁と、前記蓋の一部が、前記軸線方向において互いに重なっており、この重なり領域が前記軸線方向における前記回転多面鏡の前記反射面の位置に対応する位置にはなく、前記軸線方向において前記回転多面鏡を基準に前記偏向ユニットと前記ハウジングの固定位置が設けられた側とは反対側のみに設けられており、前記蓋の前記重なり領域となっている部分は前記垂直な方向において前記外壁よりも前記回転多面鏡に近い位置に設けられており、前記垂直な方向において前記外壁よりも前記回転多面鏡から離れた位置には設けられていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型でありながら騒音が抑えられた光学走査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の光学走査装置の斜視図。
図2】実施例1の光学走査装置の部分断面図。
図3】騒音レベルの実験データを示したグラフ。
図4】比較例の光学走査装置の部分断面図。
図5】騒音レベルが変化しなくなる回転数と距離との関係を示したグラフ。
図6】実施例2の画像形成装置の断面図。
図7】実施例2の光学走査装置の部分断面図。
図8】実施例3の光学走査装置の部分斜視図。
図9】実施例3の光学走査装置の部分断面図。
図10】実施例3の変形例の部分斜視図と部分断面図。
図11】実施例1の画像形成装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
(画像形成装置)
図11はレーザビームプリンタの断面図である。プリンタ110は、画像情報に応じたレーザ光束で感光体103を走査するスキャナユニット(光学走査装置)101を有する。レーザ光束で走査されると感光体(被走査面)103には静電潜像が形成される。静電潜像はプロセスカートリッジ102に収容されたトナーによって現像される。なお、プロセスカートリッジ102とは、感光体103と、感光体103に作用するプロセス手段としての帯電手段や現像手段等を一体的に有するものである。
【0011】
一方、カセット104内に収容された記録材Pは、給送ローラ105によって1枚ずつ分離されながら給送され、次に中間ローラ106によって、さらに下流側に搬送される。搬送された記録材P上には、感光体103上に形成されたトナー像が転写ローラ107によって転写される。この未定着のトナー像が形成された記録材Pは、さらに下流側に搬送され、内部に発熱体を有する定着器108により加熱される。このかねつによりトナー像が記録材Pに定着される。その後、記録材Pは、排出ローラ109によって機外に排出される。
【0012】
スキャナユニット101の外側にはプリンタ110の外装111が近接して配置されている。外装111の位置はスキャナユニット101の位置で決まっている。
【0013】
(スキャナユニット)
図1はスキャナユニット101の斜視図である。1はレーザ光束を出射する半導体レーザユニット、2はコリメータレンズとシリンドリカルレンズとを一体にしたアナモコリメータレンズと、同期信号検知用レンズと、を一体に成形した複合アナモフィックコリメータレンズである。3は開口絞り、4はレーザ光束を反射する複数の反射面を有する回転多面鏡、5は、回転多面鏡4と、回転多面鏡4が固定されており回転多面鏡4を回転させるモータ部5mと、を有し、レーザ光束を偏向する偏向ユニットである。5aは回転多面鏡4の回転軸、6は同期信号検知センサ、7はfθレンズ(走査レンズ)、8は偏向ユニット5が固定されている光学箱(ハウジング)、9は光学箱8の開口を覆う蓋である。蓋9は鉛直方向において光学箱8の上側に位置している。
【0014】
半導体レーザユニット1から出射したレーザ光束Lは、レンズ2によって主走査方向では略平行光または収束光とされ、副走査方向では収束光とされる。レンズ2を通過したレーザ光束Lは、開口絞り3を通って光束幅が制限され、回転多面鏡4の反射面に結像する。そして、このレーザ光束Lは、回転多面鏡4の回転により偏向走査され、レンズ2の同期信号検知用レンズ部に入射する。同期信号検知用レンズ部を通過したレーザ光束Lは、同期信号検知センサ6に入射する。同期信号検知センサ6に入射するレーザ光束のタイミングに応じて、同期信号検知センサ6が同期信号を生成する。同期信号のタイミングを主走査方向の書き出しタイミングとする。回転多面鏡4の回転によって主走査方向に移動するレーザ光束Lは、fθレンズ7に入射する。fθレンズ7を通過したレーザ光束Lは、光学箱8の出射口から出射し、感光体103に結像する。
【0015】
図2は、図1に示したラインBxから矢印V1方向(回転軸5aの軸線方向に対して垂直な方向)へスキャナユニット101を見た時の図である。図1及び図2に示すように、光学箱8は、その内部空間を囲う複数の外壁8a~8dを有する。9a~9dは蓋9の複数の外壁である。
【0016】
図1に示すように、光学箱8の内部空間を囲う光学箱8の複数の外壁8a~8dであって回転軸5aと平行な複数の外壁8a~8dのうち、回転軸5aを中心とする回転多面鏡4の外接円4sに最も近い外壁は、外壁8aである。なお、外接円4sは、回転多面鏡4の4つの角部を結んだ円である。
【0017】
10は、回転多面鏡4の底面を含む平面と、回転多面鏡4の天面を含む平面との間の領域であり、回転軸5aの軸線方向における回転多面鏡4の反射面4rの位置と対向する位置である。この位置には外壁8aがなく空間8nとなっている。そして、回転軸5aの軸線方向に対して垂直な方向V1にスキャナユニット101を見た時、外壁8aよりも外接円4sから離れた位置に空間8nを塞ぐように蓋9の一部(蓋の外壁9a)が設けられている。光学箱8と蓋9とは防塵性能を確保するために光学箱8の外壁8aと蓋9の外壁9aとで重なり合っている。重なり領域Kは、回転時5aの軸線方向における回転多面鏡4の反射面4rの位置に対応する位置にはなく、軸線方向において回転多面鏡4を基準に偏向ユニット5と光学箱8の固定位置5fが設けられた側のみに設けられている。このような構造により、回転多面鏡4が回転することによって撹拌される空気が、回転多面鏡4の外接円4sに最も近い外壁8aに衝突しにくくなっている。
【0018】
図3は、回転多面鏡4で撹拌された空気が壁に衝突することによって生じる騒音の実験データをグラフ化したものである。縦軸は騒音レベル[dB]、横軸は回転多面鏡4の外接円4sから壁までの距離[mm]である。騒音レベルは、回転多面鏡4の回転の周波数を、回転多面鏡4の面数倍(4倍)した周波数の音圧である。本実施例の回転多面鏡4の直径は20[mm]である。このグラフから、壁が回転多面鏡4から離れるほど騒音レベルが下がり、静かになっていることがわかる。また、回転多面鏡4の回転数は、30000[min-1]、35000[min-1]、40000[min-1]の場合を示しており、回転数が高いほど騒音レベルが増大していることがわかる。したがって、回転多面鏡4の面数倍で生じる騒音を低減するためには、壁を回転多面鏡4の外接円4sからできるだけ離すのがよい。また、回転多面鏡4に対して壁が近接している場合、壁を1mm遠ざけると騒音レベルが約1[dB]強下がるため、1mm程度の距離の違いでも騒音に与える影響は大きい。
【0019】
図4は、比較例のスキャナユニットの断面図である。11は光学箱、11aは光学箱11の外壁、12は蓋、12aは蓋の外壁である。外壁11aは回転多面鏡4の外接円4sから5mm離れた位置に配置されている。外壁11aの厚みは2mm、外壁11aと外壁12aとの隙間は0.5mm、外壁12aの厚みは1.5mmである。回転多面鏡4の外接円4sから蓋12の外壁12aの外面までの距離は9mmとなる。外接円4sと外壁11aの間の距離5mmは、回転多面鏡4が回転することによって生じる騒音を抑えるために必要な距離である。外壁11aが更に回転多面鏡4に近づくと、騒音が大きくなってしまう。
【0020】
そこで、図2の様に、外壁8aの高さを領域10よりも低くし(即ち、回転軸5aの軸線方向における回転多面鏡4が対向する位置には外壁8aを設けない構成とする)、外壁8aに回転多面鏡4で撹拌された空気が衝突して騒音が発生しないようにする。これによって、蓋9の外壁9aが外接円4sから5mmとなる位置に配置しても、比較例と同等の騒音レベルを維持することができる。図2において、外接円4sから蓋9の外壁9aの外面までの距離は6.5mmとなる。したがって、スキャナユニット101の最外形を比較例と比較すると2.5mm縮小することができる。
【0021】
次に、本実施例の構成の騒音に対する特に効果的な範囲について述べる。図3から理解できるように、回転多面鏡4の外接円4sから壁(外壁8a)までの距離が長くなると、騒音レベルが低くなっており、ある程度距離があれば騒音レベルが変化しなくなることがわかる。つまり、回転多面鏡4の外接円4sと光学箱8の外壁8aとの距離が所定の距離の範囲内の場合、騒音レベルが高いので、本実施例の構成を採用すると騒音に対する効果が高い。
【0022】
図3の実験データから、先ず回転多面鏡4の回転数毎の所定の距離を算出する。回転数40000[min-1]のデータを2次曲線で近似すると、およそ以下の(式1)となる。
y=0.08958x-1.742x+41.95・・・(式1)
【0023】
ここで、yは騒音レベル[dB]、xは回転多面鏡の外接円4sと壁との距離[mm]である。
【0024】
同様に回転数35000[min-1]と30000[min-1]とのデータを2次曲線で近似すると各々以下の(式2)(式3)となる。
y=0.09095x-1.712x+36.50・・・(式2)
y=0.09345x-1.736x+33.05・・・(式3)
【0025】
次に騒音レベルが変化しなくなる、外接円4sから壁までの距離を求める。(式1)、(式2)、(式3)各々をxで微分して2次曲線の傾きが0となるxを求めると、40000[min-1]場合のxは約9.72[mm]、35000[min-1]の場合のxは約9.41[mm]、30000[min-1]の場合のxは約9.29[mm]となる。したがって、騒音レベルが変化しなくなる、外接円4sと壁の距離は、回転多面鏡4の回転数が高いほど長くなっており、回転数と、外接円4sと壁との距離と、関係があることがわかる。
【0026】
次に、騒音レベルが変化しなくなる回転数と距離との関係を一般化するために、回転数を外接円4sにおける周速に置き換えて、距離との関係をグラフ化してみる。図5が、そのグラフであり、縦軸が外接円4sから壁までの距離d[mm]、横軸が外接円4sにおける周速v[mm/s]である。これを2次曲線で近似するとおよそ以下の(式4)となる。
d=3.342×10-9-2.036×10-4v+12.39・・・(式4)
【0027】
ここで、dは外接円4sと壁との距離[mm]、vは外接円4sの位置での周速[mm/s]である。これより、騒音に大きな影響のあるおよその範囲は、以下の(式5)の不等式が成立する範囲とすることができる。
d≦3.342×10-9-2.036×10-4v+12.39・・・(式4)
【0028】
このように、本実施例によれば、小型でありながら騒音が抑えられた光学走査装置を提供できる。なお、本実施例では回転多面鏡4の面数が4面の場合を示したが、5面や6面その他の面数の場合でも同様の効果を得ることができる。
【0029】
(実施例2)
次に図6図7を用いて実施例2の光学走査装置について説明する。なお、実施例1と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
図6は実施例2のプリンタの断面図である。プリンタ113は、鉛直方向において蓋14が光学箱(ハウジング)13の下側に配置されている点、光学箱13の外壁が蓋14の外壁よりも外接円から遠い位置にある点、が実施例1と異なっている。図7はスキャナユニット112の、図2と同様の箇所の部分断面図である。13は光学箱、13aは光学箱13の外壁、14は蓋、14aは蓋14の外壁、15は回転多面鏡4の天面を含む平面と、底面を含む平面との間で形成された領域である。偏向ユニット5は光学箱13に固定されている。鉛直方向において蓋14が光学箱13の下側に配置されている。
【0031】
このような構成で、光学走査装置112の防塵性能を確保するため、図7に示すように、光学箱13の外壁13aは蓋14の外壁14aの外側に配置されている。即ち、回転軸5aの軸線方向に対して垂直な方向において、蓋14の外壁14aほうが光学箱13の外壁13aよりも回転多面鏡に近い位置に配置されている。蓋14の外壁14aは、領域15には配置されておらず、光学箱13の外壁13aで領域15の空間を閉じている。
【0032】
このように、スキャナユニット112は、回転軸5aの軸線方向に対して垂直な方向にスキャナユニットを見た時、回転軸5aを中心とする回転多面鏡4の外接円に最も近い外壁13aと、蓋14の一部14aが、回転軸5aの軸線方向において互いに重なっている。また、この重なり領域Kが軸線方向における回転多面鏡4の反射面4rの位置に対応する位置にはなく、軸線方向において回転多面鏡4を基準に偏向ユニット5と光学箱13の固定位置5fが設けられた側とは反対側のみに設けられている。更に、蓋14の重なり領域Kとなっている部分14aは外壁13aよりも回転多面鏡4に近い位置に設けられている。
【0033】
本実施例によっても、小型でありながら騒音が抑えられた光学走査装置を提供できる。
【0034】
(実施例3)
次に図8図9を用いて実施例3の光学走査装置について説明する。なお、実施例1、2と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図8はスキャナユニット113の偏向ユニット5の付近の部分斜視図である。16は光学箱、16aは光学箱16の外壁、16bは光学箱16の穴部である。
【0036】
図9(a)、(b)はスキャナユニット113の部分断面図である。18は回転多面鏡4の天面を含む平面と底面を含む平面との間で形成された領域であり、回転軸5aを中心として蓋17の外壁17aの内面までの距離を半径とした円柱状の領域である。18bは領域18の境界線を示している。領域18には、光学箱16の外壁16aはなく、穴部16bが開いている。穴部16bは蓋17の外壁17aで塞いであり、光学走査装置113の防塵性能を確保している。本例も、回転多面鏡4の外接円に最も近い外壁16aは、回転軸5aの軸線方向における回転多面鏡4の反射面4rの位置と対向する位置が空間(穴部16b)となっている構成である。更に、回転軸5aの軸線方向に対して垂直な方向にスキャナユニット113を見た時、外壁16aよりも外接円から離れた位置に空間(穴部16b)を塞ぐように蓋17の一部17aが設けられている。
【0037】
この構成により、回転多面鏡4で撹拌された空気が最も激しく衝突する部分は蓋17の外壁17aとなり、主たる騒音は回転多面鏡4で撹拌された空気と蓋17の外壁17aとの間で発生する。しかしながら、蓋17の外壁17aは十分に回転多面鏡から離れているので騒音レベルを小さく抑えることができる。
【0038】
図10は実施例3の変形例である。図10において、領域18には、光学箱19の外壁19aはなく、穴部19bが設けられている。穴部19bは蓋17の外壁17aで塞いであり、光学走査装置114の防塵性能を確保している。外壁19aの穴部19bに対応する位置には、斜面19c、19dが形成されている。即ち、穴部19bを構成する外壁19の穴部19bの周囲の部分には、回転多面鏡4の回転方向に沿うように斜面19c、19dが設けられている。この構成により、回転多面鏡4が図10(b)に示す矢印の方向に回転した際に、回転多面鏡4によって撹拌された空気が穴19bに極力滞ることなく撹拌されるようになっている。
【0039】
これによって、回転多面鏡4の周辺の空気の乱流を小さく抑えることができ、空気抵抗による回転多面鏡4の回転むらを極力低減することができる。その他の効果については実施例3と同様である。
【符号の説明】
【0040】
4 回転多面鏡
5 偏向ユニット
8、11、13、16、19 光学箱
8a、11a、13a、16a 光学箱の外壁
9、12、14、17 蓋
9a、12a、14a、17a、19a 蓋の外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11