(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】車両のバッテリケース用冷却器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240122BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20240122BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240122BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240122BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240122BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240122BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M50/20
H01M10/613
H01M10/625
B60K1/04 Z
H01M10/6568
(21)【出願番号】P 2019172370
(22)【出願日】2019-09-22
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】五之治 巧
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035378(JP,A)
【文献】特開2008-265466(JP,A)
【文献】特開2014-116313(JP,A)
【文献】国際公開第2019/066244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置した一対の第1メイン流路部と第2メイン流路部とを有し、
前記第1メイン流路部と第2メイン流路部との間を連結した複数のサブ流路部を有し、
前記第1及び第2メイン流路部と前記サブ流路部との連結部に冷媒の流れ方向を切り換えるための整流部材を有し
、
前記第1メイン流路部は、冷媒の流入部と流出部を有し
、
前記流入部と流出部とは、途中に開口部を有する間欠状の隔壁部にて仕切られていて、前記流入部が前記サブ流路部と連結されていることを特徴とする車両のバッテリーケース用冷却器。
【請求項2】
前記整流部材は所定の傾斜角を有し、前記第1又は第2メイン流
路部からサブ流路部に向けて整流するためのものと、逆にサブ流路部から第1又は第2メイン流路部に向けて整流するためのものを有することを特徴とする請求項1
記載の車両のバッテリケース用冷却器。
【請求項3】
前記第1及び第2メイン流路部と複数のサブ流路部を一方の面に取り付けた冷却パネルを有し、
前記冷却パネルの他方の面をバッテリケース側に配置可能である請求項
2記載の車両のバッテリケース用冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車,ハイブリッド自動車等の駆動源に用いる二次電池からなる電池モジュール,電池パック等のバッテリーを冷却するための冷却器及びその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車,ハイブリッド自動車等には走行用のモーターが搭載され、このモーターに供給する電力源として二次電池が使用されている。
二次電池は、充電と放電が繰り返し行われるが、航続距離の長距離化に伴い車両への搭載量も多くなり、充電や放電の際の発熱量も多くなることから冷却手段が必要となる。
【0003】
例えば特許文献1には主流路と、この主流路から電池セルの間に分岐した副流路を有し、主流路側に断面積を縮小する凸部を設けることで、その流速変化による圧力差で副流路に流れを促進させる冷却構造を開示する。
しかし、このような構造にあっては、凸部による圧力損失を誘導するものであって、冷媒の流れが逆に悪化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンパクトな構造でありながら冷却効率が高く、車両のバッテリケースへの取付性に優れる冷却器提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両のバッテリケース用冷却器は、対向配置した一対の第1メイン流路部と第2メイン流路部とを有し、前記第1メイン流路部と第2メイン流路部との間を連結した複数のサブ流路部を有し、前記第1及び第2メイン流路部と前記サブ流路部との連結部に冷媒の流れ方向を切り換えるための整流部材を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、対向配置した一対の第1メイン流路部と第2メイン流路部とは、循環する冷媒源と接続するためのものであり、第1メイン流路部と第2メイン流路部のうち一方から冷媒を流入させ、他方から冷媒を流出させる構造でもよいが、例えば第1メイン流路部に冷媒の流入部と流出部の両方を設けると、冷媒源との接続構造がコンパクトになる。
この場合に第1メイン流路部に形成する流入経路と流出経路とは隔壁部で仕切ってあっってもよいが、限らずしも仕切る必要はない。
【0008】
本発明において、前記整流部材は所定の傾斜角を有し、前記第1又は第2メイン流出部からサブ流路部に向けて整流するためのものと、逆にサブ流路部から第1又は第2メイン流路部に向けて整流するためのものを有するようにするのが好ましい。
ここで、整流部材の傾斜角や傾斜面の大きさを調整することで、冷媒の流れを調整することができる。
【0009】
本発明において、前記第1及び第2メイン流路部と複数のサブ流路部を一方の面に取り付けた冷却パネルを有し、前記冷却パネルの他方の面をバッテリケース側に配置可能にしてもよい。
このようにすると、各種車両のバッテリケースに取り付けることができる。
なお、バッテリケース側に配置するとは、バッテリーを冷却するためにバッテリーに直接接触させる場合や、バッテリケースを介して接触させる等、その構造に制限はない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る冷却器は一対のメイン流路部と、その間に設けた複数のサブ流路部からなり、メイン流路部からサブ流路部に流れを誘導する、又はサブ流路部からメイン流路部に流れを誘導する整流部材を内部に設けたので、全体として配管部品が少なくコンパクトな構造になる。
また、整流部材の傾斜面や大きさを調整することで、冷媒の流れる途中で冷えている冷媒と熱交換により、相対的に暖まった冷媒とを混合させながら冷却器内を循環させることもできる。
【0011】
また、冷却パネルの一方の面に本発明に係る冷却構造を設けた場合には、冷却パネルの他方の面を車両のバッテリケース側に取り付けるだけでよく、バッテリケースの内部構造に制限されることなく、冷却機能を付与することができる。
これにより、各種仕様の車種に対して広く搭載できるため、設計自由度が高く、また、本発明に係る冷却器をバッテリケースに取り付けることで、バッテリケースへの外部からの荷重に対しても保護効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る車両のバッテリケース用冷却器の構造例を示す。(a)は要部断面図、(b)は外観図を示す。
【
図2】(a)は冷却器から冷却パネルを取り除いた状態を示し、(b)は流路部の内部構造を示す。
【
図3】第1メイン流路部と第2メイン流路部の分解図を示す。
【
図4】(a)は第1メイン流路部とサブ流路部の連結部の構造例を示し、(b)は冷却パネルとサブ流路部との連結構造例を示す。
【
図5】(a)は第2の実施例を示し、(b)はA-A線部分断面図を示す。
【
図6】(a)はB-B線断面図、(b)はC-C線断面図、(c)はD-D線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る冷却器は、車両に搭載した電池モジュール等の二次電池のバッテリケースに取り付けて冷却制御するものであり、その構造例を以下、図に基づいて説明する。
図1は、実施例1として冷却器10の外観を(b)に示し、その冷媒の流路構造(要部断面図)を(a)に示す。
図2(a)は、冷却パネル20を取り除いた状態を示し、(b)はさらにその内部構造を示し、
図3には部品の分解図として部品の内部構造を模式的に示す。
【0014】
冷却器10は冷却水等の冷媒の流入部11aと流出部11bとを有する第1メイン流路部11を有し、これに対向して所定の間隔を隔て第2メイン流路部12を有する。
第1メイン流路部11と第2メイン流路部12との間は複数のサブ流路部13にて連結してある。
図1に示した実施例1は、6つのサブ流路部13からなり、それぞれのサブ流路部13は
図4(b)に部分断面図を示すように、日字断面形状からなる例となっている。
サブ流路部13の断面形状や流路の本数は、要求される冷却性能を考慮して設定される。
これらのサブ流路部及びメイン流路部はアルミニウム合金の押出材を用いて容易に製作できる。
【0015】
第1メイン流路部11は、途中に開口部11dを有する間欠状の隔壁部11cにて仕切られていて、内側の流入部11aと外側の流出部11bとが形成されている。
このように、隔壁部11cに開口部11dを設けて間欠状にすると、冷えた冷媒と暖まった冷媒を混合することができるが、冷媒仕様に応じて例えば
図7に示すように、流出部11bに通じる開口部以外は連続した隔壁部111cにしてもよい。
流入部11aから供給された冷媒は、第1メイン流路部11とサブ流路部13との連結部の後方側に設けた整流部材14にて流れ方向が切り換えられ、サブ流路部13の内部に沿って流れる。
整流部材14は、水平方向に所定の傾斜角を有する傾斜片14aを有する。
この傾斜片14aは流路断面を完全にふさぐものではなく、所定の大きさからなり一部の冷媒はそのまま第1メイン流路部11に沿って後方に流れる。
サブ流路部13から第2メイン流路部12側に流れ込んだ冷媒は、次の整流部材14により次のサブ流路部13側に順次誘導される。
図1では最も右側のサブ流路部13からは第1メイン流路部11を経由して流出部11bから外部に流出する。
冷媒の流れを
図1に矢印で示した。
【0016】
本発明に係る冷却器10は、このパイプ状の第1メイン流路部11,第2メイン流路部12との間を複数のパイプ状のサブ流路部13にて連結した構造でもよい。
本実施例では
図3に示すように、冷媒の流入出部側に配置した前端部材15と、その反対側に配置した後端部材16にて枠体し、その上面に冷却パネル20を取り付けることでモジュール化した例になっている。
【0017】
本発明において、メイン流路部への整流部材14の取付構造や、サブ流路部との連結構造に制限はない。
本実施例では、
図2に示すように第1メイン流路部11及び第2メイン流路部12の上面に所定の角度を設けて、スリット部11eを形成し傾斜片14aを差し込みシールした例になっている。
また
図4(a)に示すように、サブ流路部13の端部を第1及び第2メイン流路部側に差し込み連結した例になっているとともに、サブ流路13の上面に凹凸部13aを形成することで、冷却パネル20との間に熱伝導性接着剤を用いて、連結固定しやすくなっている。
【0018】
図5に実施例2の冷却器を示す。
本実施例は、サブ流路部13の断面が4つのホロー部を形成した例になっている。
サブ流路部13の両側にフランジ部13b,13bを形成し、このフランジ部を冷却パネルの下面に締結することで、熱伝導性接着剤23に圧縮力を加えるようにして冷却パネル21に固定することができる。
この場合に、
図5(c)に示すようにスポット溶接したブラケット30を介してボルト30a等にて固定してもよく、また、
図5(d)に示すように冷却器10の下側にアンダーカバー31をボルト31a等を介して取り付けてもよい。
図6にバッテリケースのフレーム1,2に冷却器10を取り付けた構造例を示す。
第1メイン流路部11,第2メイン流路部12に設けたフランジ部11g,12aを介して連結することもできる。
本実施例では、前端部材15,後端部材16にもそれぞれ連結用のフランジ部15a,16aを設けてある。
この際に、
図6(a)に示すようにサブ流路部13の端部にシール材17を設けて連結してもよい。
また、冷却パネル21の上面に熱伝導部材22を貼り付け、これを介してバッテリケース側に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0019】
10 冷却器
11 第1メイン流路部
11a 流入部
11b 流出部
12 第2メイン流路部
13 サブ流路部
14 整流部材
14a 傾斜片
15 前端部材
16 後端部材
20 冷却パネル