(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】高周波電源装置及び高周波電力の出力方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240122BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240122BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240122BHJP
H02M 7/497 20070101ALI20240122BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
H02M7/497
(21)【出願番号】P 2019176060
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】深野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】中森 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】板谷 耕司
(72)【発明者】
【氏名】濱石 悟
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201630(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016266(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/093537(WO,A1)
【文献】特開2017-022136(JP,A)
【文献】特開2015-090759(JP,A)
【文献】特表2019-516273(JP,A)
【文献】特開2013-214583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05H 1/46
H01L 21/3065
H02M 7/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を生成する高周波生成部と、該高周波生成部が生成する高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御する制御部と、該制御部により振幅又は位相が制御された高周波信号に基づいて大きさが制御される高周波電力を出力する高周波出力部とを備える高周波電源装置であって、
前記制御部は、
制御周期における第1期間においては、前記高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが予め設定された第1レベルとなるように前記高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期における前記第1期間以外の第2期間においては、前記高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが前記第1レベルよりも低い予め設定された第2レベルとなるように前記高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御しているときに、
前記第1期間中の前記第1レベルを異なるレベルに変更する場合、又は、前記第1期間の長さの比を異なる比の目標比に変更する場合は、予め定めた移行周期回数を有する移行期間を設定し、
前記移行期間の前記制御周期の1周期中に前記高周波出力部が出力する高周波電力の平均値が一定になるように、
前記第1レベル及び前記第2レベルのうちの前記第1レベルを異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる比に変化させる制御、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる長さの比に変化させる制御、又は、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を変化させない制御
のいずれかの制御を行い、
更に、前記高周波出力部と負荷とのインピーダンス整合を図る整合器を備え、
前記整合器は、第1期間に関するタイミングが通知された場合に、前記第1期間におけるインピーダンスの整合を図る
高周波電源装置。
【請求項2】
前記高周波生成部が生成する高周波信号は、同一周波数の第1高周波信号及び第2高周波信号を含み、
前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにおける前記第1高周波信号と前記第2高周波信号との位相差を制御し、
前記高周波出力部は、
前記第1高周波信号及び前記第2高周波信号それぞれに応じた位相の第1高周波電圧及び第2高周波電圧を生成し、
生成した第1高周波電圧及び第2高周波電圧それぞれに基づく高周波電力を前記位相差に応じた割合で合成する電力合成部を含む
請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにおける前記高周波信号の振幅を制御し、
前記高周波出力部は、前記制御部によって振幅が制御された高周波信号に応じた大きさの高周波電力を出力する
請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
前記高周波出力部が出力する高周波電力を検出する電力検出部を更に備え、
前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて前記電力検出部が検出する高周波電力の大きさと、現在の変調周期における前記第1レベル及び前記第2レベルとが一致するように、前記振幅又は前記位相を調整する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の高周波電源装置。
【請求項5】
第1高周波信号及び第2高周波信号を生成する高周波生成部と、該高周波生成部が生成する第1高周波信号及び第2高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御する制御部と、該制御部により振幅又は位相が制御された第1高周波信号及び第2高周波信号それぞれに基づいて大きさが制御される高周波電力を出力する第1高周波出力部及び第2高周波出力部とを備える高周波電源装置であって、
前記制御部は、
制御周期における第1期間においては、前記第1高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが予め設定された第1レベルとなるように前記第1高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期における前記第1期間以外の第2期間においては、前記第2高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが前記第1レベルよりも低い予め設定された第2レベルとなるように前記第2高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御しているときに、
前記第1期間中の前記第1レベルを異なるレベルに変更する場合、又は、前記第1期間の長さの比を異なる比の目標比に変更する場合は、予め定めた移行周期回数を有する移行期間を設定し、
前記移行期間の前記制御周期の1周期中に前記第1高周波出力部及び第2高周波出力部が出力する高周波電力の和の平均値が一定になるように、
前記第1レベル及び前記第2レベルのうちの前記第1レベルを異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる比に変化させる制御、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる長さの比に変化させる制御、又は、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を変化させない制御
のいずれかの制御を行い、
更に、
前記第1高周波出力部と負荷とのインピーダンス整合を図る第1の整合器と、
前記第2高周波出力部と負荷とのインピーダンス整合を図る第2の整合器と
を備え、
第1の前記整合器は、第1期間に関するタイミングが通知された場合に、前記第1期間におけるインピーダンスの整合を図り、
第2の前記整合器は、第2期間に関するタイミングが通知された場合に、前記第2期間におけるインピーダンスの整合を図る
高周波電源装置。
【請求項6】
高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御し、振幅又は位相が制御された高周波信号に基づいて大きさが制御される高周波電力を高周波出力部から出力する方法であって、
制御周期における第1期間においては、前記高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが予め設定された第1レベルとなるように前記高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期における前記第1期間以外の第2期間においては、前記高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが前記第1レベルよりも低い予め設定された第2レベルとなるように前記高周波信号の前記振幅又は前記位相を制御しているときに、
前記第1期間中の前記第1レベルを異なるレベルに変更する場合、又は、前記第1期間の長さの比を異なる比の目標比に変更する場合は、予め定めた移行周期回数を有する移行期間を設定し、
前記移行期間の前記制御周期の1周期中に前記高周波出力部が出力する高周波電力の平均値が一定になるように、
前記第1レベル及び前記第2レベルのうちの前記第1レベルを異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる比に変化させる制御、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を異なる長さの比に変化させる制御、又は、
前記第1レベル及び前記第2レベルをそれぞれ異なるレベルに変化させるとともに、前記第1期間の長さの比を変化させない制御
のいずれかの制御を行い、
前記高周波出力部と負荷とのインピーダンス整合を図る整合器を用いて、第1期間に関するタイミングが通知された場合に、前記第1期間におけるインピーダンスの整合を図る
高周波電力の出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に高周波電力を供給する高周波電源装置及び高周波電力の出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造に用いられるプラズマ処理装置に高周波電力を供給する方式の一つとして、プラズマの生成に適した比較的高い周波数の高周波電力を第1電源から上部電極に供給し、被処理体におけるプラズマ中のイオンの引き込みに適した比較的低い周波数の高周波電力を第2電源から下部電極に供給する方式がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1電源の高周波電力を所定周波数でオン/オフ又はハイレベル/ロウレベル(以下、包括的に第1レベル/第2レベルと言う)に振幅偏移変調してプラズマを連続的に生成する時間を短縮することにより、被処理基板に対するチャージングダメージを抑制する技術が考案されている。また、第2電源の高周波電力を第2周波数で第1レベル/第2レベルに変調して被処理基板上の所定の膜のエッチングが進行する時間を断続させることにより、いわゆるマイクロローディング効果を低減して高エッチングレート(時間当たりのエッチング量)でのエッチングが可能になるとされている。
【0004】
一方、プラズマ状態等の処理条件を、いわゆるレシピに従って各処理ステップで順次切り替えることが行われている。例えば、プラズマを間欠的に生成させる場合に、プラズマを生成する高周波電力の大きさを第1レベル/第2レベルに周期的に変調させている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-90759号公報
【文献】特開2013-214583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術によれば、高周波電力が無変調の状態から振幅偏移変調された状態へと不連続に変化したり、高周波電力の大きさが第1レベル及び第2レベルから第3レベル及び第4レベルへと階段状に変化したりすることとなるため、プラズマ中のイオンやラジカルの発生条件が急変してプラズマが不安定になる虞があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波電力の急変を緩和することが可能な高周波電源装置及び高周波電力の出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、高周波信号を生成する高周波生成部と、該高周波生成部が生成する高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御する制御部と、該制御部により振幅又は位相が制御された高周波信号に基づいて大きさが制御される高周波電力を出力する高周波出力部とを備える高周波電源装置であって、前記制御部は、前記高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが、制御周期における第1期間に第1レベルとなり、前記制御周期における前記第1期間以外の第2期間に前記第1レベルより低い第2レベルとなるように前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期の長さに対する前記第1期間の長さの比及び前記第2レベルの少なくとも一方を漸減又は漸増させ、前記高周波出力部が出力する高周波電力の平均値が一定になるように、前記少なくとも一方を漸減させる場合は前記第1レベルを漸増させ、前記少なくとも一方を漸増させる場合は前記第1レベルを漸減させる。
【0009】
本発明の一態様に係る高周波電力の出力方法は、高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御し、振幅又は位相が制御された高周波信号に基づいて大きさが制御される高周波電力を出力する方法であって、前記高周波電力の大きさが、制御周期における第1期間に第1レベルとなり、前記制御周期における前記第1期間以外の期間に前記第1レベルより低い第2レベルとなるように前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期の長さに対する前記第1期間の長さの比及び前記第2レベルの少なくとも一方を漸減又は漸増させ、前記高周波電力の平均値が一定になるように、前記少なくとも一方を漸減させる場合は前記第1レベルを漸増させ、前記少なくとも一方を漸増させる場合は前記第1レベルを漸減させる。
【0010】
本態様にあっては、高周波生成部が生成する高周波信号の振幅又は位相を制御部が周期的に制御することにより、振幅又は位相が制御された高周波信号に基づいて高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが第1期間及び第2期間それぞれにて周期的に第1レベル及び該第1レベルより低い第2レベルとなる。制御部は、更に、上記振幅又は位相を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比及び第2レベルのうち、少なくとも一方を漸減又は漸増させ、且つ第1レベルを漸増又は漸減させて高周波出力部が出力する高周波電力の平均値を一定にする。即ち、上記少なくとも一方が漸減された場合は第1レベルが漸増し、上記少なくとも一方が漸増された場合は第1レベルが漸減して、高周波電力の平均値が一定に保たれる。
【0011】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、前記高周波生成部が生成する高周波信号は、同一周波数の第1高周波信号及び第2高周波信号を含み、前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにおける前記第1高周波信号と前記第2高周波信号との位相差を制御し、前記高周波出力部は、前記第1高周波信号及び前記第2高周波信号それぞれに応じた位相の第1高周波電圧及び第2高周波電圧を生成し、生成した第1高周波電圧及び第2高周波電圧それぞれに基づく高周波電力を前記位相差に応じた割合で合成する電力合成部を含む。
【0012】
本態様にあっては、高周波生成部が生成する同一周波数の第1高周波信号と第2高周波信号との位相差を制御部が上記第1期間及び第2期間それぞれにて各別に制御し、位相差が制御された第1高周波信号及び第2高周波信号それぞれに応じた位相の第1高周波電圧及び第2高周波電圧を高周波出力部が生成する。高周波出力部は、更に、生成した第1高周波電圧及び第2高周波電圧それぞれに基づく高周波電力を、第1高周波電圧及び第2高周波電圧の位相差に応じた割合で合成して出力する。これにより、第1高周波電圧及び第2高周波電圧それぞれに基づく高周波電力を第1期間と第2期間とで異なる割合で合成することにより、第1期間及び第2期間それぞれにて出力する高周波電力の大きさを上記第1レベル及び第2レベルに変化させる。
【0013】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにおける前記高周波信号の振幅を制御し、前記高周波出力部は、前記制御部によって振幅が制御された高周波信号に応じた大きさの高周波電力を出力する。
【0014】
本態様にあっては、高周波生成部が生成する高周波信号の振幅を制御部が上記第1期間及び第2期間それぞれにて制御し、振幅が制御された高周波信号に応じた大きさの高周波電力を高周波出力部が生成する。これにより、第1期間及び第2期間それぞれにて出力される高周波電力の大きさが上記第1レベル及び第2レベルに変化する。
【0015】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、前記高周波出力部が出力する高周波電力を検出する電力検出部を更に備え、前記制御部は、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて前記電力検出部が検出する高周波電力の大きさと、現在の変調周期における前記第1レベル及び前記第2レベルとが一致するように、前記振幅又は前記位相を各別に制御する。
【0016】
本態様にあっては、第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部が出力する高周波電力の検出された大きさと、現在の変調周期の第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部が出力すべき高周波電力の目標値である第1レベル及び第2レベルとが一致するように、制御部が上述の振幅又は位相を制御する。これにより、各変調周期にて出力される高周波電力の大きさが正確に調整される。
【0017】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、第1高周波信号及び第2高周波信号を生成する高周波生成部と、該高周波生成部が生成する第1高周波信号及び第2高周波信号の振幅又は位相を周期的に制御する制御部と、該制御部により振幅又は位相が制御された第1高周波信号及び第2高周波信号それぞれに基づいて大きさが制御される高周波電力を出力する第1高周波出力部及び第2高周波出力部とを備える高周波電源装置であって、前記制御部は、前記第1高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが制御周期における第1期間に第1レベルとなり、前記第2高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが前記制御周期における前記第1期間以外の第2期間に前記第1レベルより低い第2レベルとなるように前記振幅又は前記位相を制御し、前記制御周期の長さに対する前記第1期間の長さの比及び前記第2レベルの少なくとも一方を漸減又は漸増させ、前記第1高周波出力部及び前記第2高周波出力部が出力する高周波電力の和の平均値が一定になるように、前記少なくとも一方を漸減させる場合は前記第1レベルを漸増させ、前記少なくとも一方を漸増させる場合は前記第1レベルを漸減させる。
【0018】
本態様にあっては、高周波生成部が生成する第1高周波信号及び第2高周波信号の振幅又は位相を制御部が周期的に制御することにより、振幅又は位相が制御された第1高周波信号及び第2高周波信号それぞれに基づいて第1高周波出力部及び第2高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが第1期間及び第2期間それぞれにて周期的に第1レベル及び該第1レベルより低い第2レベルとなる。制御部は、更に、上記振幅又は位相を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比及び第2レベルのうち、少なくとも一方を漸減又は漸増させ、且つ第1レベルを漸増又は漸減させて高周波出力部が出力する高周波電力の平均値を一定にする。即ち、上記少なくとも一方が漸減された場合は第1レベルが漸増し、上記少なくとも一方が漸増された場合は第1レベルが漸減して、高周波電力の平均値が一定に保たれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高周波電力の急変を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1に係る高周波電源装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る高周波電源装置で第1期間を漸減させる場合の高周波電力を模式的に示す説明図である。
【
図4】実施形態1に係る高周波電源装置で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。
【
図5】パルス生成部及び高周波生成部それぞれにデューティ比及び位相差を設定する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】変形例1に係る高周波電源装置で第1期間を漸減させる場合の高周波電力Psを模式的に示す説明図である。
【
図7】変形例1に係る高周波電源装置で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。
【
図8】変形例2に係る高周波電源装置で第2レベルを漸減させる場合の高周波電力Psを模式的に示す説明図である。
【
図9】変形例2に係る高周波電源装置で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。
【
図10】実施形態2に係る高周波電源装置の構成例を示すブロック図である。
【
図11】パルス生成部にデューティ比及びパルスレベルを設定する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態3に係る高周波電源装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る高周波電源装置100の構成例を示すブロック図である。高周波電源装置100は、同一周波数の高周波信号S1及びS2(第1高周波信号及び第2高周波信号に相当)を生成する高周波生成部1と、該高周波生成部1が生成する高周波信号S1及びS2の位相を制御する制御部2と、位相が制御された高周波信号S1及びS2に基づいて大きさが調整される高周波電力Psを出力する高周波出力部3とを備える。
【0022】
高周波電源装置100は、更に、制御部2が高周波信号S1及びS2の位相を制御すべきタイミングを通知するパルスを生成するパルス生成部4と、高周波出力部3が出力する高周波電力を検出する電力検出部5とを備える。高周波出力部3が出力する高周波電力は、電力検出部5と、負荷とのインピーダンス整合を図る整合器200とを介して、プラズマ処理装置等の負荷に供給される。
【0023】
高周波生成部1は、例えばダイレクト・デジタル・シンセサイザで構成され、電圧がv(t)=Asin(2πft+φ1)で表される高周波信号S1と、電圧がv(t)=Asin(2πft+φ2)で表される高周波信号S2とを生成する。Aは例えば一定の振幅である。fは制御部2から設定される周波数であり、例えば2MHz、13.56MHz、27MHz、60MHz等の工業用のRF帯(Radio Frequency)の周波数である。高周波信号S1及びS2の位相差であるφ2-φ1(又はφ1-φ2)は、制御部2から設定された位相差θとなるように調整される。制御部2が位相φ1及びφ2を高周波生成部1に設定する場合は、高周波信号S1及びS2の位相差がθ=φ2-φ1(又はφ1-φ2)となるように高周波生成部1が調整すればよい。
【0024】
制御部2は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、演算等の処理を行う。一時的に発生した情報はRAM(Random Access Memory )に記憶される。CPUによる各処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予めRAMにロードし、ロードされたコンピュータプログラムをCPUで実行するようにしてもよいし、制御部2をマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0025】
高周波出力部3は、高周波生成部1が生成した高周波信号S1及びS2それぞれに応じた位相の高周波電圧V1及びV2(第1高周波電圧及び第2高周波電圧に相当)を生成するDC-RF変換部31及び32と、DC-RF変換部31及び32それぞれが生成した高周波電圧V1及びV2それぞれに基づく高周波電力P1およびP2を合成する電力合成部33とを有する。DC-RF変換部31及び32には、直流電源30から直流電力が供給される。電力合成部33で合成された高周波電力Psは、フィルタ回路34で高調波が除去されて基本波成分が負荷側に出力される。
【0026】
DC-RF変換部31及び32は、例えばハーフブリッジ型のD級アンプと、該D級アンプの出力に含まれる直流をカットするコンデンサと、D級アンプの出力に含まれる高調波を除去するLCローパスフィルタとで構成される。DC-RF変換部31が生成する高周波電圧V1は、電圧がv(t)=Bsin(2πft+θ1)で表される。DC-RF変換部32が生成する高周波電圧V2は、電圧がv(t)=Bsin(2πft+θ2)で表される。Bは直流電源30の電圧に応じた一定の振幅である。高周波電圧V1及びV2の位相差であるθ2-θ1(又はθ1-θ2)は、高周波信号S1及びS2の位相差θと同等である。
【0027】
電力合成部33は、高周波電圧V1及びV2それぞれに基づいてDC-RF変換部31及び32から出力される高周波電力P1及びP2を、高周波電圧V1とV2との位相差、即ち高周波信号S1とS2との位相差に応じて合成することにより、出力する高周波電力Psの大きさを調整する。ここで電力合成部33について説明する。
【0028】
図2は、電力合成部33の構成例を示す回路図である。電力合成部33は、抵抗器Rと、1対1の伝送トランスTtとを含むハイブリッド回路によって構成されている。電力合成部33は、2つの入力ポートN1及びN2と、1つのサムポートNsとを有する。入力ポートN1には、高周波電圧V1が印加され、入力ポートN2には、高周波電圧V2が印加される。
【0029】
入力ポートN1の一端は、抵抗器Rの一端及び伝送トランスTtの一方の巻き線の巻き始めである一端に接続されている。伝送トランスTtの一方の巻き線の他端は、他方の巻き線の巻き始めである一端及びサムポートNsの一端に接続されている。伝送トランスTtの他方の巻き線の他端は、抵抗器Rの他端及び入力ポートN2の一端に接続されている。入力ポートN1,N2及びサムポートNsそれぞれの他端は、接地電位に接続されている。
【0030】
サムポートNsに接続される負荷のインピーダンスがR0/2である場合、抵抗器Rの抵抗値を2R0とすることにより、入力ポートN1及びN2それぞれの入力インピーダンスがR0となることが知られている。詳細については、特開2017-201630号公報に記載されている。従って、入力ポートN1及びN2それぞれから入力される高周波電力P1及びP2は、高周波電圧V1及びV2を表す上記の電圧式を用いて以下の式(1)及び(2)の通りに表される。
【0031】
P1=B2 sin2 (2πft+θ1)/R0・・・・・・・・・・・・・・(1)
P2=B2 sin2 (2πft+θ2)/R0・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0032】
上記の公報によれば、高周波電圧V1及びV2それぞれを表す上述の電圧式を用いて入力ポートN1及びN2に流入する電流と、抵抗器Rに流れる電流とが算出される。そして、伝送トランスTtの一方の巻線及び他方の巻線に流れる電流が算出され、サムポートNsから出力される電流が算出されて、サムポートNsから出力される高周波電圧Vs及び高周波電力Psそれぞれが以下の式(3)及び(4)の通りに表される。従って、高周波電力Psの平均値Ps_avrは、以下の式(5)で表される。
【0033】
Vs=Bcos(θ/2)・sin(2πft+θ/2)・・・・・・・・・(3)
Ps=Vs2 /(R0/2)
=2B2 cos2 (θ/2)・sin2 (2πft+θ/2)/R0・・(4)
Ps_avr=B2cos2 (θ/2)/R0・・・・・・・・・・・・・・(5)
但し、θ:θ2-θ1
【0034】
式(1)、(2)及び(4)を対比することにより、電力合成部33に入力される高周波電力(P1+P2)のうち、電力合成部33から出力される高周波電力Psの割合ηは、以下の式(6)で表される。残りの高周波電力は抵抗器Rで消費される。高周波電力P1及びP2を合成する割合ηを先に決めた場合、位相差θは以下の式(7)により求まる。
【0035】
η=cos2 (θ/2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
θ=2arccos(√η)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
【0036】
なお、サムポートNsに接続される負荷のインピーダンスがRo/2と異なる場合であっても、位相差θを0から2πの範囲で変化させることにより、電力合成部33から出力される高周波電力Psの大きさを調整することができる。電力合成部33の構成は
図2に示すものに限定されず、例えば、いわゆる90°ハイブリッド回路を用いて高周波電力P1及びP2を合成するようにしてもよい。以下では、フィルタ回路34での電力損失を無視して、電力合成部33が出力する高周波電力Psが、そのままの大きさで高周波出力部3から出力されるものとして説明する。
【0037】
図1に戻って、パルス生成部4は、例えば汎用のタイマIC又はマイクロコンピュータに内蔵のタイマで構成され、制御部2から設定された周期及びデューティ比を有するパルスを生成する。このパルスの波高値は、いわゆるロジックレベルである。パルスの周期は、制御部2から高周波生成部1に設定される周波数fの逆数である周期よりも十分に長い。パルス生成部4は、生成したパルスを制御部2に与えることにより、パルスのオン期間の開始時点及びパルスのオフ期間の開始時点を制御部2に周期的に通知する。
【0038】
便宜上、パルス生成部4に100%のデューティ比が設定された場合であっても、2つの開始時点が制御部2に通知されるものとする。以下では、パルス生成部4が生成するパルスのオン期間及びオフ期間それぞれを第1期間及び第2期間と言う。また、第1期間及び第2期間の繰り返し周期を制御周期という。
【0039】
電力検出部5は、方向性結合器を含み、高周波出力部3が負荷側へ出力する進行波電力と、負荷側から反射された反射波電力とを検出して検出結果を制御部2にフィードバックする。電力検出部5が進行波電力のみを検出するようにしてもよい。
【0040】
整合器200は、高周波電源装置100から独立して高周波出力部3と負荷とのインピーダンスの整合を図ることができるが、高周波出力部3が出力する高周波電力Psの大きさが、比較的短い周期で変化する場合は、常時インピーダンスの整合を図るのが困難となる場合がある。そこで、本実施形態1では、整合器200は、上記の第1期間に重点的にインピーダンスの整合を図るものとする。このため、整合器200は制御部2から第1期間に関するタイミングが通知される。整合器200に対してパルス生成部4から直接的に第1期間を示す信号が与えられるようにしてもよい。
【0041】
上述の構成により、制御部2は、負荷に供給される高周波電力Psの大きさを第1期間及び第2期間それぞれにて第1レベル及び第2レベルに周期的に変化させることができる。制御部2は、第1期間及び第2期間それぞれの開始時点が通知されるようにするために、パルス生成部4に対してパルスの周期及びデューティ比を設定する。デューティ比は、第1期間及び第2期間の繰り返し周期、即ち制御周期に対する第1期間の比である。これにより、パルス生成部4は、例えば割込により、第1期間の開始時点及び第2期間の開始時点を制御部2に周期的に通知する。
【0042】
パルス生成部4から第1期間及び第2期間それぞれの開始時点が通知された場合、制御部2は、電力合成部33から出力される高周波電力Psの大きさが第1レベル及び第2レベルとなるように、高周波生成部1に相異なる位相差を設定する。ここで制御部2が設定する位相差と、高周波電力Psの第1レベル及び第2レベルとの関係は、予め式(5)及び(7)に基づいて算出して不図示の記憶部に記憶するようにしてもよいし、設定の都度算出するようにしてもよい。具体的には、式(5)で表される高周波電力Psの平均値Ps_avrの最大値(B2/R0)に対する第1レベル及び第2レベルそれぞれの割合ηを算出し、算出した2つのηに対する位相差θを式(7)に基づいて各別に算出する。高周波電力Psの平均値Ps_avrの最大値は、実測によって求めてもよい。
【0043】
制御部2が高周波生成部1に位相差θを設定した場合、DC-RF変換部31及び32それぞれが出力する高周波電力P1及びP2は、電力合成部33にてθに応じた割合ηで合成されて負荷に供給される。これにより、負荷に供給される高周波電力Psは、第1期間及び第2期間それぞれにて第1レベル及び第2レベルとなるように調整されるが、実際の高周波電力P1及びP2の大きさは、上述の式(1)及び(2)で表されるように負荷のインピーダンス(R0/2)の変動の影響を受ける。また、電力合成部33の入力インピーダンスとDC-RF変換部31及び32の出力インピーダンス、並びに電力合成部33の出力インピーダンスと負荷のインピーダンスについても必ずしも整合がとれているとは限らない。この結果、電力合成部33における合成の割合ηも式(6)で算出される値とは異なる値となる。
【0044】
そこで、第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部3から負荷に供給される高周波電力Psが目標の第1レベル及び第2レベルに近づくように、フィードバック制御を行ってもよい。具体的に制御部2は、第1期間及び第2期間それぞれにて電力検出部5からフィードバックされた進行波電力(又は進行波電力と反射電力の差分)の検出結果と、目標の第1レベル及び第2レベルとの偏差を各別に算出し、算出した偏差がゼロに近づくように高周波生成部1に設定する位相差θを増減する制御を行う。より具体的なフィードバック制御については種々公知の方法が存在するため、ここでの説明を省略する。
【0045】
上記のフィードバック制御に際し、電力検出部5から進行波電力の検出結果がフィードバックされる場合は、負荷で消費される電力が目標の第1レベル及び第2レベルよりも反射波電力の分だけ少なくなるように制御される。また、電力検出部5から進行波電力と反射電力の差分の検出結果がフィードバックされる場合は、実際に負荷で消費される電力が目標の第1レベル及び第2レベルとなるように制御される。フィードバック制御の応答が比較的遅い場合は、例えば、電力検出部5からフィードバックされた検出結果の平均値と、目標の第1レベル及び第2レベルの平均値とが一致するように、制御部2が第1期間及び第2期間それぞれにて設定する位相差θを、1又は複数の制御周期毎に一括的に決定して制御するようにしてもよい。
【0046】
前述したように、高周波出力部3から負荷に供給される高周波電力Psの大きさが第1レベル及び第2レベルから、該第1レベル及び第2レベルとは全く異なるレベルに急激に変化した場合は、プラズマが不安定になる虞がある。第1期間のデューティ比が急激に変化する場合についても同様の虞がある。そこで、本実施形態1にあっては、第1期間のデューティ比を変化させる場合、デューティ比を漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる。これにより、第1期間のデューティ比の時間変化と、第1レベルの時間変化とが滑らかになり、且つ高周波出力部3から負荷に供給される高周波電力Psの平均値が一定に維持されて、プラズマが安定に保たれる。
【0047】
図3は、実施形態1に係る高周波電源装置100で第1期間を漸減させる場合の高周波電力Psを模式的に示す説明図である。
図3に示す2つの図は、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてある。上段の図は第1期間及び第2期間を含む制御周期が第1期間から始まる場合を例示し、下段の図は制御周期が第2期間から始まる場合を例示している。制御周期はTとし、第1期間のデューティ比を制御周期毎に75%、50%、25%と漸減させ、これに併せて第1レベルを1167W、1500W、2500Wと漸増させる。
【0048】
上段の図に示す第1期間及び下段の図に示す第2期間は、パルス生成部4が生成するパルスのオン期間に対応している。制御部2は、例えばパルス生成部4に設定するデューティ比を漸減させることにより、パルス生成部4から通知されるタイミングに同期して、上段の図の第1期間を漸減させる。なお、デューティ比を漸減させる際のステップ幅は25%に限定されず、より細かいステップ幅で漸減させてもよいし、同じデューティ比を複数周期だけ継続させた後により小さいデューティ比に減少させるようにしてもよい。デューティ比の減少率が直線的でなくてもよい。本実施形態1では、第2レベルは600Wに固定されている。
【0049】
例えば、上段の図において、第1の制御周期、第2の制御周期及び第3の制御周期それぞれにおける高周波電力Psの平均値Ps1、Ps2及びPs3は、以下の式(8)、(9)及び(10)の通りとなる。単位はWであり、小数点以下を四捨五入してある。各式にて減算している「100」の値は、第2期間における反射電力の想定値である。第1期間ではインピーダンスの整合が図られているものとしている。
【0050】
Ps1=1167×0.75+(600-100)×0.25=1000・・(8)
Ps2=1500×0.50+(600-100)×0.50=1000・・(9)
Ps3=2500×0.25+(600-100)×0.75=1000・・(10)
【0051】
下段の図においては、各制御周期が第2期間から始まるという違いがあるだけであって、各制御周期における高周波電力Psの平均値は、上段の図の場合と同様である。なお、
図3では、第1期間のデューティ比を漸減させる場合の高周波電力Psの時間変化について説明したが、第1期間のデューティ比を漸増させる場合は、時間軸の向きを逆にした図で表される。この場合は、第1期間のデューティ比の漸増に伴って第1レベルを漸減させることとなる。
【0052】
図4は、実施形態1に係る高周波電源装置100で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。この図表の内容がテーブルとして不図示の記憶部に記憶されている。テーブルには、第1レベル及び第2レベルそれぞれについて、デューティ比が100%,75%,50%,25%の場合の電力(W)と位相差と振幅(相対値)とが記憶されている。第1レベル及び第2レベルそれぞれの電力は、
図3に示す電力と対応している。
図4に示すパルスレベルは、電力の大きさに対応するパルス状の電圧信号のレベルの相対値を示すものであり、後述する実施形態2及び3で用いる。
【0053】
例えば、電力合成部33で合成された高周波電力Psの最大値が2500Wである場合、位相差θ14はゼロであり、位相差θ13は、式(6)より1500/2500=cos
2 (θ/2)を満たすθである。同様に、位相差θ12は1167/2500=cos
2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ11は1000/2500=cos
2 (θ/2)を満たすθである。位相差θ22からθ24は、600/2500=cos
2 (θ/2)を満たすθである。デューティ比が100%の場合、第1レベル及び第2レベルという2レベルが存在することはないが、便宜上どちらのレベルも1000Wとして位相差及び振幅が記憶されている。以下では、
図4に示す図表に対応するテーブルを参照して位相差θを制御する方法について、フローチャートを用いて説明する。
【0054】
図5は、パルス生成部4及び高周波生成部1それぞれにデューティ比及び位相差を設定する制御部2の処理手順を示すフローチャートである。図中のPa及びPtは、
図4に示す図表の各列の内容を記憶する領域の先頭アドレスを示すポインタ(以下、単に列のポインタと言う)である。即ち、各列の内容を配列と見做す場合、Pa及びPtは配列のアドレスを示すポインタである。Paは現在参照している列の先頭アドレス示し、Ptは最終的に目標とする列の先頭アドレスを示すものである。ΔPは各列の先頭アドレス間の距離を示す差分である。制御部2は、現在の列のポインタPa及び目標の列のポインタPtを記憶している。
【0055】
図3に示すように第1期間のデューティ比を漸減させる場合、制御部2は、最終的に目標とするデューティ比である25%に対応する列のポインタをPtに設定し、隣り合う列間の距離(正の値)をΔPに設定して
図5に示す処理を起動する。Paの初期値は、100%のデューティ比に対応する列のポインタである。上記とは逆に第1期間のデューティ比を漸増させる場合、制御部2は、目標とする新たなデューティ比に対応する列のポインタをPtに設定する際に、隣り合う列間の距離の符号を反転した値(負の値)をΔPに設定する。
【0056】
図5の処理が起動された場合、制御部2は、目標とするデューティ比に対応する列のポインタPtを不図示の記憶部に一時的に記憶する(S11)。次いで、制御部2は、現在の列のポインタPaにΔPを加算する(S12)。これにより、ΔPが正の値である場合は、Paが示す列が1段階だけデューティ比が小さい隣の列となり、ΔPが負の値である場合は、Paが示す列が1段階だけデューティ比が大きい隣の列となる。
【0057】
その後、制御部2は、ポインタPaにより
図4に示す図表に対応するテーブルを参照し(S13)、Paが示す列の内容からデューティ比を読み出す(S14)。制御部2は、読み出したデューティ比をパルス生成部4に設定する(S15)。ここで設定されたデューティ比は、現在の制御周期に続く次の制御周期に反映される。パルス生成部4には、初期化処理にて制御周期が設定されているものとする。次いで、制御部2は、Paが示す列の内容から第1レベル及び第2レベルそれぞれに対応する位相差を読み出す(S16)。
【0058】
その後、制御部2は、パルス生成部4から第1期間の立ち上がりが通知されたか否かを判定し(S17)、通知されていない場合(S17:NO)、立ち上がりが通知されるまで待機する。第1期間の立ち上がりが通知された場合(S17:YES)、制御部2は、ステップS16で予め読み出した位相差のうち、第1レベルに対応する位相差を高周波生成部1に設定する(S18)。
【0059】
その後、制御部2は、パルス生成部4から第2期間の立ち上がりが通知されたか否かを判定し(S19)、通知されていない場合(S19:NO)、立ち上がりが通知されるまで待機する。第2期間の立ち上がりが通知された場合(S19:YES)、制御部2は、ステップS16で予め読み出した位相差のうち、第2レベルに対応する位相差を高周波生成部1に設定する(S20)。
【0060】
その後、制御部2は、現在の列のポインタPaが目標の列のポインタPtと一致するか否かを判定し(S21)、一致する場合(S21:YES)、以後は第1レベル及び第2レベルそれぞれに対応する位相差を周期的に設定するために、ステップS17に処理を移す。一方、PaがPtと一致しない場合(S21:NO)、制御部2は、ステップS21で記憶したPtに変更があるか否かを判定する(S22)。
【0061】
Ptに変更がない場合(S22:NO)、第1期間のデューティ比の漸減又は漸増が完了していないので、制御部2は、現在の列のポインタPaを1つ進めるためにステップS12に処理を移す。一方、Ptに変更がある場合(S22:YES)、目標とする列のポインタが変更されたので、制御部2は、第1期間のデューティ比の漸減又は漸増のシーケンスを最初から再開するために、ステップS11に処理を移す。
【0062】
以上の
図5に示す制御部2の処理手順は、
図3の上段に示すような第1レベルが第2レベルよりも先に変化する場合に対応するものであった。
図3の下段に示すような第2レベルが第1レベルよりも先に変化する場合の制御部2の処理手順については、
図4に示す図表に対応するテーブルと、
図5に示す処理手順の一部を変更すればよい。具体的には、先ずテーブルの各列に記憶するデューティ比を、第1期間のデューティ比ではなく、第2期間のデューティ比とする。
【0063】
これにより、
図5のステップS15では第2期間のデューティ比がパルス生成部4に設定されるため、1つの制御周期にて第2期間の開始時点が先に通知される。従って、制御部2は、
図5のステップS17にて第2期間の立ち上がりを待ち受け、ステップS18にて第2レベルに対応する位相差を高周波生成部1に設定し、ステップS19にて第1期間の立ち上がりを待ち受け、ステップS20にて第1レベルに対応する位相差を高周波生成部1に設定すればよい。
【0064】
以上のように本実施形態1によれば、高周波生成部1が生成する高周波信号S1及びS2の位相を制御部2が周期的に制御することにより、位相が制御された高周波信号S1及びS2に基づいて高周波出力部3が出力する高周波電力Psの大きさが第1期間及び第2期間それぞれにて周期的に第1レベル及び該第1レベルより低い第2レベルとなる。制御部2は、更に、上記位相を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比を漸減させ、且つ第1レベルを漸増させて、高周波出力部3が出力する高周波電力Psの平均値を一定にする。従って、高周波電力Psの急変を緩和することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1によれば、高周波生成部1が生成する同一周波数の高周波信号S1と高周波信号S2との位相差θを制御部2が上記第1期間及び第2期間それぞれにて各別に制御し、位相差θが制御された高周波信号S1及び高周波信号S2それぞれに応じた位相の高周波電圧V1及び高周波電圧V2を、高周波出力部3に含まれるDC-RF変換部31及び32が生成する。高周波出力部3は、更に、生成した高周波電圧V1及び高周波電圧V2それぞれに基づく高周波電力P1及びP2を、高周波電圧V1及び高周波電圧V2の位相差θに応じた割合で合成して出力する。従って、高周波電圧V1及び高周波電圧V2それぞれに基づく高周波電力P1及びP2を第1期間と第2期間とで異なる割合で合成することにより、第1期間及び第2期間それぞれにて出力する高周波電力Psの大きさを上記第1レベル及び第2レベルに変化させることができる。
【0066】
更に、実施形態1によれば、第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部3が出力する高周波電力Psについて電力検出部5で検出された大きさと、現在の変調周期の第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部3が出力すべき高周波電力Psの目標値である第1レベル及び第2レベルとが一致するように、制御部2が上述の位相を各別に制御する。従って、各変調周期にて高周波出力部3が出力する高周波電力Psの大きさを正確に調整することができる。
【0067】
(変形例1)
実施形態1は、第1期間のデューティ比を漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる形態であるのに対し、変形例1は、第1期間のデューティ比及び第2レベルを共に漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる形態である。変形例1に係る高周波電源装置のブロック構成は、実施形態1の
図1に示す高周波電源装置100と同様であるため、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図6は、変形例1に係る高周波電源装置100で第1期間を漸減させる場合の高周波電力Psを模式的に示す説明図である。
図6に示す2つの図は、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてある。上段の図は第1期間及び第2期間を含む制御周期が第1期間から始まる場合を例示し、下段の図は制御周期が第2期間から始まる場合を例示している。第1期間のデューティ比を制御周期毎に75%、50%、25%と漸減させ、これに併せて第1レベルを1167W、1500W、2500Wと漸増させると共に、第2レベルを933W、766W、600Wと漸減させる。
【0069】
例えば、上段の図において、第1の制御周期、第2の制御周期及び第3の制御周期それぞれにおける高周波電力Psの平均値Ps1、Ps2及びPs3は、以下の式(11)、(12)及び(13)の通りとなる。単位はWであり、小数点以下を四捨五入してある。
【0070】
Ps1=1056×0.75+(933-100)×0.25=1000・・(11)
Ps2=1333×0.50+(766-100)×0.50=1000・・(12)
Ps3=2500×0.25+(600-100)×0.75=1000・・(13)
【0071】
下段の図においては、各制御周期が第2期間から始まるという違いがあるだけであって、各制御周期における高周波電力Psの平均値は、上段の図の場合と同様である。なお、
図6では、第1期間のデューティ比を漸減させる場合の高周波電力Psの時間変化について説明したが、第1期間のデューティ比を漸増させる場合は、時間軸の向きを逆にした図で表される。この場合は、第1期間のデューティ比の漸増に伴って第1レベルを漸減させると共に第2レベルを漸増させることとなる。
【0072】
図7は、変形例1に係る高周波電源装置100で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。この図表の内容が記憶されているテーブルには、第1レベル及び第2レベルそれぞれについて、デューティ比が100%,75%,50%,25%の場合の電力(W)と位相差と振幅(相対値)とが記憶されている。第1レベル及び第2レベルそれぞれの電力は、
図6に示す電力と対応している。
【0073】
例えば、電力合成部33で合成された高周波電力Psの最大値が2500Wである場合、位相差θ34はゼロであり、位相差θ33は、式(6)より1333/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。同様に、位相差θ32は1056/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ31は1000/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。また、位相差θ44は、600/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ43は766/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ42は933/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。
【0074】
高周波生成部1に周期的に位相差を設定する制御部2の処理手順を示すフローチャートは、実施形態1に示すものと全く同一であるため、図示及びその説明を省略する。
【0075】
以上のように本変形例1によれば、制御部2は、高周波生成部1が生成する高周波信号S1及びS2の位相を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比を漸減させ、且つ第1レベルを漸増させると共に第2レベルを漸減させて、高周波出力部3が出力する高周波電力Psの平均値を一定にする。従って、高周波電力Psの急変を緩和することが可能となる。
【0076】
(変形例2)
実施形態1は、第1期間のデューティ比を漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる形態であるのに対し、変形例2は、第2レベルを漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる形態である。変形例2に係る高周波電源装置のブロック構成は、実施形態1の
図1に示す高周波電源装置100と同様であるため、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図8は、変形例2に係る高周波電源装置100で第2レベルを漸減させる場合の高周波電力Psを模式的に示す説明図である。
図8に示す2つの図は、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてある。上段の図は第1期間及び第2期間を含む制御周期が第1期間から始まる場合を例示し、下段の図は制御周期が第2期間から始まる場合を例示している。第1期間のデューティ比を25%に固定し、第1レベルを1375W、1750W、2125W、2500Wと漸増させると共に、第2レベルを975W、850W、725W、600Wと漸減させる。
【0078】
例えば、上段の図において、第1の制御周期、第2の制御周期及び第3の制御周期それぞれにおける高周波電力Psの平均値Ps1、Ps2及びPs3は、以下の式(14)、(15)及び(16)の通りとなる。単位はWである。
【0079】
Ps1=1375×0.25+(975-100)×0.75=1000・・(14)
Ps2=1750×0.25+(850-100)×0.75=1000・・(15)
Ps3=2500×0.25+(600-100)×0.75=1000・・(16)
【0080】
下段の図においては、各制御周期が第2期間から始まるという違いがあるだけであって、各制御周期における高周波電力Psの平均値は、上段の図の場合と同様である。なお、
図8では、第1期間のデューティ比を漸減させる場合の高周波電力Psの時間変化について説明したが、第1期間のデューティ比を漸増させる場合は、時間軸の向きを逆にした図で表される。この場合は、第1期間のデューティ比の漸増に伴って第1レベルを漸減させると共に第2レベルを漸増させることとなる。
【0081】
図9は、変形例2に係る高周波電源装置100で用いられるデューティ比と位相差の対応関係を示す図表である。この図表の内容が記憶されているテーブルには、第1レベル及び第2レベルそれぞれについて、デューティ比が一律に25%の場合の電力(W)と位相差と振幅(相対値)とが記憶されている。第1レベル及び第2レベルそれぞれの電力は、
図8に示す電力と対応している。
【0082】
例えば、電力合成部33で合成された高周波電力Psの最大値が2500Wである場合、位相差θ55はゼロであり、位相差θ54は、式(6)より2125/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。同様に、位相差θ53は1750/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ52は1375/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであ、位相差θ51は1000/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。また、位相差θ65は、600/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ64は725/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。位相差θ63は850/2500=cos2 (θ/2)を満たすθであり、位相差θ62は975/2500=cos2 (θ/2)を満たすθである。
【0083】
高周波生成部1に周期的に位相差を設定する制御部2の処理手順を示すフローチャートは、実施形態1に示すものと全く同一であるため、図示及びその説明を省略する。
【0084】
以上のように本変形例2によれば、制御部2は、高周波生成部1が生成する高周波信号S1及びS2の位相を周期的に制御する間に、第1レベルを漸増させ、且つ第2レベルを漸減させて、高周波出力部3が出力する高周波電力Psの平均値を一定にする。従って、高周波電力Psの急変を緩和することが可能となる。
【0085】
(実施形態2)
実施形態1は、高周波生成部1が生成する高周波信号S1及びS2の位相を制御部2が周期的に制御し、位相が制御された高周波信号S1及びS2に基づいて高周波出力部3が出力する高周波電力Psの大きさが、周期的に第1レベル及び第2レベルとなる形態であった。これに対し、実施形態2は、高周波生成部が生成する高周波信号の振幅を制御部が周期的に制御し、振幅が制御された高周波信号に基づいて高周波出力部が出力する高周波電力の大きさが、周期的に第1レベル及び第2レベルとなる形態である。
【0086】
図10は、実施形態2に係る高周波電源装置100bの構成例を示すブロック図である。高周波電源装置100bは、高周波信号Smを生成する高周波生成部1bと、該高周波生成部1bが生成する高周波信号Smの振幅を制御する制御部2bと、振幅が制御された高周波信号Smに応じた大きさの高周波電力Poを出力する高周波出力部9とを備える。高周波電源装置100bは、更に、高周波出力部9が出力する高周波電力Poを検出する電力検出部5を備える。高周波出力部9が出力する高周波電力Poは、電力検出部5と、負荷とのインピーダンス整合を図る整合器200とを介して負荷に供給される。実施形態1に対応する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
高周波生成部1bは、高周波の連続信号S0を発振する高周波発振部6と、該高周波発振部6が発振した連続信号S0を変調するための矩形波状のパルス信号Vpを生成するパルス生成部7と、高周波発振部6が発振した連続信号S0及びパルス生成部7が生成したパルス信号Vpを乗算して連続信号S0の振幅を変調する乗算器8とを有する。矩形波状の信号とは、階段状の立ち上がり及び立ち下がりを有し、且つ立ち上がり前及び立ち下がり後のレベルが必ずしもゼロレベルではない信号である。ここでは、矩形波状の信号も広義のパルス信号とみなし、信号の立ち上がりから立ち下がりまでをオン期間とする。
【0088】
制御部2bはCPU、ROM及びRAMを有し、ハードウェア的には実施形態1の
図1に示す制御部2と同様に構成されている。一方、ソフトウェア的には、制御部2がパルス生成部4にデューティ比を、高周波生成部1に位相差θをそれぞれ周期的に設定するのに対し、制御部2bは、パルス生成部7にデューティ比及び2つのパルスレベルを周期的に設定する。詳細については後述する。
【0089】
高周波発振部6は、例えばダイレクト・デジタル・シンセサイザで構成され、電圧がv(t)=A0sin(2πft+φ)で表される高周波の連続信号S0を発振して乗算器8の一方の乗算入力に入力する。A0は一定の振幅である。φは初期位相である。fは制御部2bから設定される周波数であり、例えば2MHz、13.56MHz、27MHz、60MHz等の工業用のRF帯の周波数である。
【0090】
パルス生成部7は、例えばダイレクト・デジタル・シンセサイザで構成され、制御部2bから設定された周期、デューティ比及び2つのパルスレベルに従い、ハイレベル及びロウレベルを有するパルス信号Vpを生成して乗算器8の他方の乗算入力に入力する。パルス信号Vpの周期は、制御部2bから高周波発振部6に設定される周波数fの逆数である周期よりも十分に長い。パルス生成部7は、生成したパルス信号Vpがハイレベルである期間の開始時点及びロウレベルである期間の開始時点を制御部2bに周期的に通知する。
【0091】
便宜上、パルス生成部7に100%のデューティ比が設定された場合であっても、2つの開始時点が制御部2bに通知されるものとする。以下では、パルス生成部7が生成するパルス信号Vpがハイレベル及びロウレベルのそれぞれである期間を第1期間及び第2期間と言う。また、第1期間及び第2期間の繰り返し周期を制御周期という。
【0092】
乗算器8は、例えばアナログ乗算器又はデジタル変調器で構成され、2つの乗算入力に入力された高周波の連続信号S0の瞬時値とパルス信号Vpの瞬時値との乗算処理を行うことにより、高周波の連続信号S0を振幅偏移変調した高周波信号Smを出力する。パルス信号Vpの信号レベルが一定の基準レベルLrでデューティ比が100%である場合、乗算器8が出力する高周波信号Smは、上記の連続信号S0を表す電圧式を用いて以下の式(17)の通りに表される。
【0093】
Sm=Lr・B0sin(2πft+φ)・・・・・・・・・・・・・・・・(17)
但し、B0:一定の振幅
【0094】
高周波出力部9は、リニアアンプで構成され、乗算器8からの(即ち高周波生成部1bからの)高周波信号Smを直線的に増幅して高周波電圧Voを出力する。これにより、高周波電圧Voに応じた大きさの高周波電力Poが負荷側に供給される。高周波出力部9から負荷側を見たインピーダンスは、実施形態1と同様にR0/2とする。パルス信号Vpの信号レベルが一定の基準レベルLrである場合、高周波出力部9が出力する高周波電力Poは、式(17)を用いて以下の式(18)の通りに表される。この場合、高周波電力Poの平均値Po_avrは、以下の式(19)の通り、基準レベルLrの二乗に比例するように表される。
【0095】
Po=(G・Lr・B0)2 sin2 (2πft+φ)/(R0/2)・・・(18)
Po_avr=(G・Lr・B0)2 /R0・・・・・・・・・・・・・・・(19)
但し、G:高周波出力部9の増幅率
【0096】
上述の構成により、制御部2bは、負荷に供給される高周波電力Poの大きさを第1期間及び第2期間それぞれにて第1レベル及び第2レベルに周期的に変化させることができる。制御部2bは、第1期間及び第2期間それぞれの開始時点が通知されるようにするために、パルス生成部7に対してパルス信号Vpの周期及びデューティ比を設定する。デューティ比は、第1期間及び第2期間の繰り返し周期、即ち制御周期に対する第1期間の比である。これにより、パルス生成部7は、例えば割込により、第1期間の開始時点及び第2期間の開始時点を制御部2bに周期的に通知する。
【0097】
パルス生成部7から第1期間及び第2期間それぞれの開始時点が通知された場合、制御部2bは、高周波出力部9から出力される高周波電力Poの大きさが第1レベル及び第2レベルとなるように、パルス生成部7に相異なるパルスレベルを設定する。第1期間及び第2期間それぞれの開始時点でパルス生成部7に設定されたパルスレベルは、パルス生成部7が生成するパルス信号Vpのオン期間及びオフ期間の信号レベルに反映される。そして、これらの信号レベルに基づいて高周波電力Poの大きさが第1レベル及び第2レベルとなる。
【0098】
ここで制御部2bが設定するパルスレベルと、第1レベル及び第2レベルとの関係は、予め式(19)に基づいて算出して不図示の記憶部に記憶するようにしてもよいし、設定の都度算出するようにしてもよい。具体的には、式(19)で表される高周波電力Poの平均値Po_avrに対する第1レベル及び第2レベルそれぞれの倍率を算出し、算出した2つの倍率それぞれの平方根に上記の基準レベルLrを乗じてハイレベル及びロウレベルのパルスレベルを算出する。パルス信号Vpの信号レベルが一定の基準レベルLrである場合の高周波電力Poの平均値Po_avrは、実測によって求めてもよい。
【0099】
第1期間及び第2期間それぞれにて高周波出力部9から負荷に供給される高周波電力Poが目標の第1レベル及び第2レベルに近づくように、フィードバック制御を行うことができるのは、実施形態1の場合と同様である。また、第1レベル又は第2レベルを変化させる際に、併せて第1期間のデューティ比を漸減(又は漸増)させたりしてプラズマの安定を保つようにするのも、実施形態1、変形例1及び変形例2の場合と同様である。
【0100】
例えば、第1期間のデューティ比を漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる場合は、実施形態1の
図4に示す図表を用い、デューティ比の変化に応じてパルス生成部7に設定するパルスレベルを変化させる。この場合、第1期間は、パルス生成部7が生成する矩形波状のパルス信号Vpのオン期間に対応している。制御部2は、例えばパルス生成部7に設定するデューティ比を漸減させることにより、パルス生成部7から通知されるタイミングに同期して第1期間を漸減させることができる。
【0101】
同様に、第1期間のデューティ比及び第2レベルを共に漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる場合は、変形例1の
図7に示す図表を用い、デューティ比の変化に応じてパルス生成部7に設定するパルスレベルを変化させる。また、第2レベルを漸減(又は漸増)させ、併せて第1レベルを漸増(又は漸減)させる場合は、変形例2の
図9に示す図表を用い、目標の第2レベルに向けてパルス生成部7に設定するパルスレベルを漸減(又は漸増)させ、且つ目標の第1レベルに向けてパルス生成部7に設定するパルスレベルを漸増(又は漸現)させる。
【0102】
なお、
図4、
図7及び
図9では、第1レベルが1000Wのときのパルスレベルを基準レベルLrとし、1000Wに対する第1レベル及び第2レベルそれぞれの倍率の平方根を、基準レベルLrに対する相対的なパルスレベルとしてある。以下では、
図4、
図7及び
図9に示す図表に対応するテーブルを参照してパルスレベルを制御する方法について、フローチャートを用いて説明する。
【0103】
図11は、パルス生成部7にデューティ比及びパルスレベルを設定する制御部2bの処理手順を示すフローチャートである。図中のステップS36、S38及びS40を除くステップS31からS42までは、実施形態1の
図11に示すステップS11からS22までに対応しており、処理内容は同様である。従って、ステップS36、S38及びS40を中心に説明する。
【0104】
図11の処理が起動されてステップS31からS35までの処理を終えた場合、制御部2bは、Paが示す列の内容から第1レベル及び第2レベルそれぞれに対応するパルスレベルを読み出す(S36)。その後、制御部2bは、パルス生成部7から第1期間の立ち上がりが通知されたか否かを判定し(S37)、通知されていない場合(S37:NO)、立ち上がりが通知されるまで待機する。第1期間の立ち上がりが通知された場合(S37:YES)、制御部2bは、ステップS36で予め読み出したパルスレベルのうち、第1レベルに対応するパルスレベルをパルス生成部71に設定する(S38)。
【0105】
その後、制御部2bは、パルス生成部7から第2期間の立ち上がりが通知されたか否かを判定し(S39)、通知されていない場合(S39:NO)、立ち上がりが通知されるまで待機する。第2期間の立ち上がりが通知された場合(S39:YES)、制御部2bは、ステップS36で予め読み出したパルスレベルのうち、第2レベルに対応するパルスレベルをパルス生成部7に設定する(S40)。以下は実施形態1の場合と同様である。
【0106】
以上のように本実施形態2によれば、高周波生成部1bが生成する高周波信号Smの振幅を制御部2bが周期的に制御することにより、振幅が制御された高周波信号Smに基づいて高周波出力部9が出力する高周波電力Poの大きさが第1期間及び第2期間それぞれにて周期的に第1レベル及び該第1レベルより低い第2レベルとなる。制御部2bは、更に、上記振幅を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比及び第2レベルのうち、少なくとも一方を漸減又は漸増させ、且つ第1レベルを漸増又は漸減させて高周波出力部9が出力する高周波電力Poの平均値を一定にする。従って、高周波電力Poの急変を緩和することが可能となる。
【0107】
また、実施形態2によれば、高周波生成部1bが生成する高周波信号Smの振幅を制御部2bが第1期間及び第2期間それぞれにて制御し、振幅が制御された高周波信号Smに応じた大きさの高周波電力Poを高周波出力部9が生成する。従って、第1期間及び第2期間それぞれにて出力する高周波電力Poの大きさを第1レベル及び第2レベルに変化させることができる。
【0108】
(実施形態3)
実施形態2は、1つの高周波出力部9が第1レベル及び第2レベルに振幅偏移変調された高周波電力Poを負荷に供給する形態であった。これに対し、実施形態3は、一の高周波出力部(第1高周波出力部に相当)9が第1期間だけ第1レベルの高周波電力Po1を負荷に供給し、他の高周波出力部(第2高周波出力部に相当)9が第2期間だけ第2レベルの高周波電力Po2を負荷に供給する形態である。
【0109】
図12は、実施形態3に係る高周波電源装置100cの構成例を示すブロック図である。高周波電源装置100cは、高周波信号Sm1,Sm2(第1高周波信号,第2高周波信号に相当)を生成する高周波生成部1cと、該高周波生成部1cが生成する高周波信号Sm1,Sm2の振幅を制御する制御部2cと、振幅が制御された高周波信号Sm1,Sm2それぞれに応じた大きさの高周波電力Po1,Po2を出力する高周波出力部9,9とを備える。
【0110】
高周波電源装置100cは、更に、高周波出力部9,9それぞれが出力する高周波電力Po1,Po2を検出する電力検出部5,5を備える。高周波出力部9,9それぞれが出力する高周波電力Po1,Po2は、電力検出部5,5と、負荷とのインピーダンス整合を図る整合器200,200とを介して、プラズマ処理装置である負荷300が有する一方の電極301に供給される。負荷300が有する他方の電極302は接地されている。実施形態1及び2に対応する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0111】
高周波生成部1cは、高周波の連続信号S0を発振する高周波発振部6と、該高周波発振部6が発振した連続信号S0を変調するためのパルス信号Vp1,Vp2を生成するパルス生成部7bと、高周波発振部6が発振した連続信号S0及びパルス生成部7bが生成したパルス信号Vp1,Vp2を各別に乗算して連続信号S0の振幅を変調する乗算器8,8とを有する。
【0112】
制御部2cはCPU、ROM及びRAMを有し、実施形態2の
図10に示す制御部2bと同様に構成されている。但し、電力検出部5,5の検出結果を各別に入力し、整合器200,200に対して第1期間,第2期間に関するタイミングを各別に通知する。整合器200,200に対してパルス生成部7bから直接的に第1期間,第2期間を示す信号が与えられるようにしてもよい。
【0113】
高周波発振部6は、発振した連続信号S0を分配して乗算器8,8それぞれの一方の乗算入力に入力するが、相異なる周波数の連続信号を乗算器8,8に各別に入力するようにしてもよい。
【0114】
パルス生成部7bは、制御部2cから設定された周期及びデューティ比で、比較的ハイレベルのパルス信号Vp1を生成して一方の乗算器8の他方の乗算入力に入力すると共に、パルス信号Vp1のオフ期間にパルス信号Vp1よりロウレベルのパルス信号Vp2を生成して他方の乗算器8の他方の乗算入力に入力する。換言すれば、パルス生成部7bは、実施形態2のパルス生成部7が生成する矩形波状のパルス信号Vpのうち、第1期間中の信号をパルス信号Vp1とし、第2期間中の信号をパルス信号Vp2として各別に出力する。パルス信号Vp1,Vp2は、オフ期間がゼロレベルである狭義のパルス信号である。パルス生成部7bは、生成したパルス信号Vp1,Vp2それぞれの開始時点を制御部2cに周期的に通知する。
【0115】
便宜上、パルス生成部7bに100%のデューティ比が設定された場合であっても、2つの開始時点が制御部2cに通知されるものとする。以下では、パルス生成部7bが生成するパルス信号Vp1及びVp2それぞれのオン期間を第1期間及び第2期間と言う。また、第1期間及び第2期間の繰り返し周期を制御周期という。
【0116】
乗算器8,8それぞれは、高周波の連続信号S0を振幅偏移変調した高周波信号Sm1,Sm2を出力する。高周波出力部9,9それぞれは、乗算器8,8からの(即ち高周波生成部1cからの)高周波信号Sm1,Sm2を直線的に増幅して高周波電圧Vo1,Vo2を出力する。これにより、高周波電圧Vo1,Vo2それぞれに応じた大きさの高周波電力Po1,Po2が負荷300側に供給される。
【0117】
上述の構成により、制御部2cは、負荷300に供給される高周波電力Po1の大きさが第1期間だけ第1レベルとなるように調整することができる。また、制御部2cは、負荷300に供給される高周波電力Po2の大きさが第2期間だけ第2レベルとなるように調整することができる。制御部2cは、第1期間及び第2期間それぞれの開始時点が通知されるようにするために、パルス生成部7bに対してパルスの周期及びパルス信号Vp1のデューティ比を設定する。デューティ比は、第1期間及び第2期間の繰り返し周期、即ち制御周期に対する第1期間の比である。これにより、パルス生成部7bは、例えば割込により、第1期間の開始時点及び第2期間の開始時点を制御部2cに周期的に通知する。
【0118】
パルス生成部7bから第1期間の開始時点が通知された場合、制御部2cは、一の高周波出力部9から出力される高周波電力Po1の大きさが第1レベルとなるように、パルス生成部7bに一のパルスレベルを設定する。また、パルス生成部7bから第2期間の開始時点が通知された場合、制御部2cは、他の高周波出力部9から出力される高周波電力Po2の大きさが第2レベルとなるように、パルス生成部7bに他のパルスレベルを設定する。ここで制御部2cが設定するパルスレベルと、第1レベル又は第2レベルとの関係は、実施形態2と同様に予め算出して不図示の記憶部に記憶するようにしてもよいし、設定の都度算出するようにしてもよい。
【0119】
第1期間,第2期間それぞれにて高周波出力部9,9から負荷300に供給される高周波電力Po1,Po2が目標の第1レベル,第2レベルに近づくように、フィードバック制御を行うことができるのは、実施形態1及び2の場合と同様である。また、第1レベル又は第2レベルを変化させる際に、併せて第1期間のデューティ比を漸減(又は漸増)させたりしてプラズマの安定を保つようにするのも、実施形態1,2、変形例1及び変形例2の場合と同様である。
【0120】
上述の通り、制御部2cがパルス生成部7bに設定する内容は、実施形態2の制御部2bがパルス生成部7に設定する内容と同様であるため、パルス生成部7bに周期的にデューティ比及びパルスレベルを設定する制御部2cの処理手順は、実施形態2の
図11に示すものと同様になる。よって、ここでの処理手順を示すフローチャートの図示及びその説明を省略する。
【0121】
以上のように本実施形態3によれば、高周波生成部1cが生成する高周波信号Sm1,Sm2の振幅を制御部2cが周期的に制御することにより、振幅が制御された高周波信号Sm1,Sm2それぞれに基づいて高周波出力部9,9が出力する高周波電力Po1,Po2の大きさが第1期間,第2期間それぞれにて周期的に第1レベル,第2レベルとなる。制御部2cは、更に、上記振幅を周期的に制御する間に、制御周期に対する第1期間のデューティ比及び第2レベルのうち、少なくとも一方を漸減又は漸増させ、且つ第1レベルを漸増又は漸減させて高周波出力部9,9それぞれが出力する高周波電力Po1,Po2の平均値を一定にする。即ち、上記少なくとも一方が漸減された場合は第1レベルが漸増し、上記少なくとも一方が漸増された場合は第1レベルが漸減して、高周波電力Po1,Po2の平均値が一定に保たれる。従って、高周波電力Poの急変を緩和することが可能となる。
【0122】
実施形態3にあっては、高周波信号Sm1,Sm2のそれぞれについて、実施形態2の場合と同様に制御部2cが振幅を制御することにより、負荷300に供給される高周波電力Po1,Po2それぞれの大きさが第1レベル,第2レベルとなる例について説明した。しかしながら、負荷300に供給される2系統の高周波電力それぞれの大きさを第1レベル及び第2レベルとするための構成が、実施形態3の通りに限定されるものではない。例えば、高周波信号Sm1,Sm2に代えて2つ一組の高周波信号を二組発生させ、各組の高周波信号について、実施形態1の場合と同様に制御部が位相差を制御することにより、負荷300に供給される2系統の高周波電力それぞれの大きさが第1レベル及び第2レベルとなるようにしてもよい。
【0123】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
100、100b、100c 高周波電源装置
1、1b、1c 高周波生成部
2、2b、2c 制御部
3 高周波出力部
30 直流電源
31、32 DC-RF変換部
33 電力合成部
R 抵抗器
N1、N2 入力ポート
Ns サムポート
Tt 伝送トランス
34 フィルタ回路
4 パルス生成部
5 電力検出部
6 高周波発振部
7、7b パルス生成部
8 乗算器
9 高周波出力部
200 整合器
300 負荷
301、302 電極