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特許7423238自発光素子を用いた表示パネル、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】自発光素子を用いた表示パネル、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/16 20230101AFI20240122BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20240122BHJP
   H10K 50/82 20230101ALI20240122BHJP
   H10K 50/852 20230101ALI20240122BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240122BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20240122BHJP
【FI】
H10K50/16
H10K50/81
H10K50/82
H10K50/852
H10K59/10
H10K71/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019181658
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021057296
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 裕
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆宏
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080027(JP,A)
【文献】特表2008-509537(JP,A)
【文献】特開2019-033192(JP,A)
【文献】特開2019-021903(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104518108(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104518150(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0131558(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109728174(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/16
H10K 50/81
H10K 50/82
H10K 50/852
H10K 59/10
H10K 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配される複数の陽極と、
前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、
前記発光層の上方に配され、第1金属のフッ化物または第1金属の錯体を含む第1中間層と、
前記第1中間層上に接して配され、第2金属からなる金属層である第2中間層と、
前記第2中間層の上方に配される陰極と
を備え、
前記陽極と前記陰極は、一方が光透過性を備え、他方が光反射性を備え、
前記第1金属は、アルカリ金属とアルカリ土類金属とからなるグループから選択され、
前記第2金属は希土類から選択され、
前記第1中間層の膜厚は、4nm以上、10nm以下であり、
輝度保持率が95%以上であり、
前記輝度保持率は、初期状態における初期輝度に対する、80℃の環境下に7日間保管した後の輝度の割合〔%〕を示す
ことを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記第2金属は、イッテルビウムである
ことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記第2中間層上に接して配され、電子輸送性と電子注入性とのうち少なくとも1つを有する機能層をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極の前記発光層側の面とに囲まれる領域が、前記両面を反射面とする光共振器を構成している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項5】
基板の上方に複数の陽極を形成し、
前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、
前記発光層の上方に、第1金属のフッ化物または第1金属の錯体を含む第1中間層を形成し、
前記第1中間層上に、第2金属からなる金属層である第2中間層を形成し、
前記第2中間層の上方に配される陰極を形成し、
前記陽極と前記陰極は、一方が光透過性を備え、他方が光反射性を備え、
前記第1中間層の形成において、アルカリ金属とアルカリ土類金属とからなるグループから第1金属を選択し、
前記第2中間層の形成において、希土類から第2金属を選択し、
前記第1中間層の形成において、前記第1中間層の膜厚を4nm以上、10nm以下に形成し、
輝度保持率が95%以上であり、
前記輝度保持率は、初期状態における初期輝度に対する、80℃の環境下に7日間保管した後の輝度の割合〔%〕を示す
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第2金属としてイッテルビウムを選択する
ことを特徴とする請求項5に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記第2中間層上に、電子輸送性と電子注入性とのうち少なくとも1つを有する機能層をさらに形成する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極の前記発光層側の面とに囲まれる領域が、前記両面を反射面とする光共振器を構成している
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界発光現象や量子ドット効果を利用した自発光素子を備える表示パネル、および、その製造方法に関し、特に、共振器構造を有する自発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL素子、量子ドット効果を利用したQLEDなどの自発光素子を利用した表示装置が普及しつつある。
【0003】
自発光素子は、一対の電極(陽極および陰極)間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。そして、自発光素子は、多くの場合、発光層の他に、発光層に電子を供給するための機能層(電子輸送層、電子注入層)等が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構成を有している。
【0004】
自発光素子において、消費電力の低減や長寿命化の観点から、各色発光素子から光取り出し効率を向上させることも望まれている。この光取り出し効率を向上させるために、例えば特許文献1に示されるように、自発光素子たる各色の有機EL素子において、共振器構造を採用する技術も知られている。
【0005】
また、自発光素子において、機能層に仕事関数の低いアルカリ金属やアルカリ土類金属を含む層を用いることによって、良好な電子注入性が得られることも知られている。
【0006】
一方、仕事関数が低いアルカリ金属やアルカリ土類金属は、水分や酸素といった不純物と反応しやすい。そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む機能層は、不純物が存在すると劣化が促進しやすく、有機EL素子における発光効率の低下や発光寿命の短縮といった悪影響を引き起こして保管安定性が低下する原因となる。
【0007】
これに対して特許文献2には、発光層上に無機バリア層を設けた構成の有機EL素子が開示されている。このように無機バリア層を設けると、その無機バリア層よりも前に形成された有機発光媒体層の表面に吸着された不純物によって機能層が劣化するのを防止する働きをなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際出願第2012/020452号明細書
【文献】特許第4882508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された有機EL素子では、発光層上に設ける無機バリア層は、絶縁体または半導体もしくは仕事関数が4.0eV以上の金属から成り、電子注入性が低いため、陰極から発光層に電子が十分に供給されず、良好な発光特性が得られないこともある。
【0010】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、不純物に対する十分なブロック性を確保して良好な保管安定性を確保しつつ、良好な発光特性を得ることのできる自発光素子を備える表示パネルおよび表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記発光層の上方に配され、第1金属のフッ化物または第1金属の錯体を含む第1中間層と、前記第1中間層上に接して配され、第2金属からなる金属層である第2中間層と、前記第2中間層の上方に配される陰極とを備え、前記陽極と前記陰極は、一方が光透過性を備え、他方が光反射性を備え、前記第1金属は、アルカリ金属とアルカリ土類金属とからなるグループから選択され、前記第2金属は希土類から選択され、前記第1中間層の膜厚は、4nm以上、10nm以下であり、輝度保持率が95%以上であり、前記輝度保持率は、初期状態における初期輝度に対する、80℃の環境下に7日間保管した後の輝度の割合〔%〕を示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記形態の表示パネルによれば、上記構成により、第1中間層により陰極や電子注入層の劣化を抑止することができる。さらに、第2中間層が酸化されにくい希土類の単体層により構成されているため、第1中間層における第1金属の還元により陰極から発光層への電子注入性を高めることができるとともに、第2中間層自体の劣化を抑止することができる。したがって、陰極から発光層への電子注入性を高めて発光効率の向上を図るとともに、安定性の高い第2中間層により発光効率のばらつきや経時劣化を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る表示パネル100の構成を模式的に示す断面図である。
図2】第2中間層の材料の違いおよび膜厚の違いによる発光効率比の変化を示すグラフである。
図3】(a)は、第2中間層の材料の違いおよび第1中間層の膜厚の違いによる輝度保持率の違いを示すグラフであり、(b)は、第2中間層の材料の違いおよび第1中間層の膜厚の違いによる発光効率比の違いを示すグラフである。
図4】YbとBaの電子注入性の違いを示すグラフである。
図5】(a)は実施例に係る有機EL素子の模式断面図であり、(b)は比較例に係る有機EL素子の模式断面図である。
図6】実施例および比較例における追加中間層、第1中間層、第2中間層の膜厚及び材料と、第2中間層の特性ムラとの関係を示す表である。
図7】有機EL素子1に形成された光共振器構造における光の干渉について説明する模式断面図である。
図8】有機EL素子1から取り出される光の輝度値/Yの値と、発光層17の陽極側の面~機能層20と対向電極21との界面までの膜厚との関係を示すグラフである。
図9】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造過程を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極が形成された状態、(e)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。
図11】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態、(d)は、正孔注入層上に発光層が形成された状態を示す。
図12】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、発光層および隔壁上に第1中間層が形成された状態、(b)は第1中間層上に第2中間層が形成された状態、(c)は、第2中間層上に機能層が形成された状態、(d)は、機能層上に対向電極および封止層が形成された状態を示す。
図13】実施の形態に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪本開示の一態様に至った経緯≫
上記のように、アルカリ金属やアルカリ土類金属から選択された元素(本明細書における「第1金属」)を含む機能層を発光層の上に形成することで、当該機能層から発光層に対して優れた電子注入性を得ることができるが、水分や酸素といった不純物が発光層から機能層に移行することによって機能層が劣化する課題も存在するので、機能層の電子注入性を確保しながら、機能層の劣化を防止する方法が求められる。
【0015】
ここで、NaF、LiFをはじめとして、第1金属のフッ化物は、吸湿性が低く、水や酸素などの不純物をブロックする性質に優れているので、この第1金属のフッ化物で形成した層を発光層と機能層との間に介在させることによって、不純物による機能層の劣化を防止できることを見出した。
【0016】
これに対して、アルカリ金属やアルカリ土類金属とフッ素との結合を切る第2金属を含む層を中間層の上に設けて、第1金属を遊離させれば、中間層による不純物をブロックする性質と、発光層への電子供給性の両方を確保できるとの知見がある。第2金属としては、還元性を有する金属、すなわち、第1金属に対して電子注入性を有する金属であり、具体的には、アルカリ土類金属であるバリウムが用いられている。しかしながら、上述したように、アルカリ土類金属は、水分や酸素といった不純物と反応しやすく、不純物が存在すると劣化が促進しやすい。したがって、製造時や使用時による不純物の影響を容易に受ける課題がある。
【0017】
そこで、発明者らは、第2金属を含む層における第2金属の選択と層の構成について鋭意検討し、本開示に係る実施の態様に至った。
【0018】
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板の上方に配される複数の陽極と、前記複数の陽極のそれぞれの上方に配される発光層と、前記発光層の上方に配され、第1金属のフッ化物または第1金属の錯体を含む第1中間層と、前記第1中間層上に接して配され、第2金属からなる金属層である第2中間層と、前記第2中間層の上方に配される陰極とを備え、前記陽極と前記陰極は、一方が光透過性を備え、他方が光反射性を備え、前記第1金属は、アルカリ金属とアルカリ土類金属とからなるグループから選択され、前記第2金属は希土類から選択されることを特徴とする。
【0019】
また、本開示の一態様に係る表示パネルの製造方法は、基板の上方に複数の陽極を形成し、前記複数の陽極のそれぞれの上方に発光層を形成し、前記発光層の上方に、第1金属のフッ化物または第1金属の錯体を含む第1中間層を形成し、前記第1中間層上に、第2金属からなる金属層である第2中間層を形成し、前記第2中間層の上方に配される陰極を形成し、前記陽極と前記陰極は、一方が光透過性を備え、他方が光反射性を備え、前記第1中間層の形成において、アルカリ金属とアルカリ土類金属とからなるグループから第1金属を選択し、前記第2中間層の形成において、希土類から第2金属を選択することを特徴とする。
【0020】
上記態様の表示パネル、または、上記態様の製造方法によれば、第1中間層により陰極や電子注入層の劣化を抑止することができる。さらに、第2中間層が酸化されにくい希土類の単体層により構成されているため、第1中間層における第1金属の還元により陰極から発光層への電子注入性を高めることができるとともに、第2中間層自体の劣化を抑止することができる。したがって、陰極から発光層への電子注入性を高めて発光効率の向上を図るとともに、安定性の高い第2中間層により発光効率のばらつきや経時劣化を抑止することができる。
【0021】
また、上記態様に係る表示パネル、または、上記態様の製造方法において、以下のようにしてもよい。
【0022】
前記第2金属は、イッテルビウムである、としてもよい。
【0023】
また、前記第2金属としてイッテルビウムを選択する、としてもよい。
【0024】
これにより、第2中間層の酸化による劣化が起こりにくく電子流入性が高くなるため、発光効率のばらつきや経時劣化を抑止することができる。
【0025】
また、前記第2中間層上に接して配され、電子輸送性と電子注入性とのうち少なくとも1つを有する機能層をさらに備える、としてもよい。
【0026】
また、前記第2中間層上に、電子輸送性と電子注入性とのうち少なくとも1つを有する機能層をさらに形成する、としてもよい。
【0027】
これにより、陰極から発光層への電子注入性がさらに高まるため、発光効率をさらに向上させることができる。
【0028】
また、前記陽極の前記発光層側の面と、前記陰極の前記発光層側の面とに囲まれる領域が、前記両面を反射面とする光共振器を構成している、としてもよい。
【0029】
これにより、光取り出し効率を高めることができるため、発光効率をさらに向上させることができる。
【0030】
≪実施の形態≫
以下、本開示に係る自発光素子としての有機EL素子を備える表示パネルについて説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成及び作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
【0031】
1.表示パネルの構成
図1は、実施の形態1に係る表示パネルとしての有機EL表示パネル100(図13参照)の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。すなわち、有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)のそれぞれがサブ画素を構成し、発光色の異なる複数のサブ画素の集合が画素となる。図1では、その1つの画素の断面を示している。
【0032】
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(図1における紙面上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
【0033】
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
【0034】
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層20、対向電極21、および、封止層22を備える。画素電極13、対向電極21は、それぞれ、本開示の陽極、陰極に相当する。
【0035】
なお、基板11、層間絶縁層12、第1中間層18、第2中間層19、機能層20、対向電極21、および、封止層22は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
【0036】
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、サブ画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。これらよりプロセス温度に対して耐久性を有するように選択し、1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0037】
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、サブ画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
【0038】
<画素電極>
画素電極13は層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
【0039】
本実施形態においては、画素電極13は、光反射性の陽極として機能する。
【0040】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0041】
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0042】
なお、陽極は光透過性の電極であってもよく、この場合、陽極は、光透過性を備える導電性の金属酸化物、光透過性を備える金属薄膜のうち少なくとも一方を含む。導電性の金属酸化物としては、例えば、ITOやIZOを用いることができる。金属薄膜としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。金属薄膜の膜厚は、光透過性を確保するため、1nm~50nm程度が好ましい。
【0043】
<隔壁>
隔壁14は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁14は、サブピクセルごとに設けられた開口部14aを有する。
【0044】
本実施の形態においては、隔壁14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分においては、隔壁14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
【0045】
隔壁14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁14は、発光層17を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層17を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施の形態では、隔壁14は、樹脂材料からなり、隔壁14の材料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施の形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
【0046】
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔(ホール)の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15の材料の具体例としては、例えば、PEDOT/PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料が挙げられる。
【0047】
なお、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物で形成してもよい。遷移金属の具体例としては、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などである。遷移金属は複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与するからである。この場合、正孔注入層15は、大きな仕事関数を有することが好ましい。
【0048】
なお、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物上に導電性ポリマー材料を積層した積層構造であってもよい。
【0049】
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有し、正孔を正孔注入層15から発光層17へと効率よく輸送するため、正孔移動度の高い有機材料で形成されている。正孔輸送層16の形成は、有機材料溶液の塗布および乾燥により行われる。正孔輸送層16を形成する有機材料としては、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物を用いることができる。
【0050】
また、正孔輸送層16はトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンゼン誘導体を用いて形成されてもよい。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物等を用いてもよい。この場合、正孔輸送層16は、真空蒸着法により形成される。なお、正孔輸送層16の材料および製造方法は上述のものに限られず、正孔輸送機能を有する任意の材料を用いてよく、正孔輸送層16の製造に用いることのできる任意の製造方法で形成されてよい。
【0051】
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0052】
自発光素子1が有機EL素子である場合、発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。また、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。また、発光層17は、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。なお、自発光素子1は量子ドット発光素子(QLED;Quantum-dot Light Emitting Diode)であってもよく、発光層17の材料として量子ドット効果を有する材料を使用することができる。
【0053】
<第1中間層>
第1中間層18は、発光層17上に形成されており、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される第1金属のフッ化物、または、第1金属の錯体で形成されている。
【0054】
アルカリ金属に該当する金属は、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)、Fr(フランシウム)であり、アルカリ土類金属に該当する金属は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)である。これらのフッ化物で形成した膜は、不純物をブロックする働きをなす。また、錯体としては、例えば、Naqなどのキノリニウム錯体を用いることができる。
【0055】
従って、第1中間層18は、発光層17、正孔輸送層16、正孔注入層15、隔壁14の内部や表面に存在する不純物が、機能層20や対向電極21へと侵入するのを防止する働きをなす。
【0056】
第1金属としては、特に、Na、Li、K、Cs、Mg、Ca、Baから選択することが好ましい。
【0057】
<第2中間層>
第2中間層19は、第1中間層18上に形成されており、第1金属とフッ素、または、錯体との結合を分解する性質を有する第2金属を含む。第2金属は、希土類から選択される。
【0058】
第2中間層19は、第2金属からなる金属層からなる。ここで、第2金属からなる金属層とは、第2金属の純金属層、または、第2金属の純金属層とほぼ同等の特性を有する金属層を指す。すなわち、第2中間層19は金属層かつその構成要素のほとんどが第2金属であればよく、微量の不純物を含み、かつ、不純物以外の全てが第2金属からなる金属層は本開示の第2中間層に含まれる。
【0059】
第2金属としては、特に、Yb(イッテルビウム)が好ましい。
【0060】
<機能層>
機能層20は、第2中間層19上に形成されており、電子輸送性を有する有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料がドープされてなる。ここで、ドープとは、金属材料の金属原子または金属イオンを有機材料中に略均等に分散させることを指し、具体的には、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相を形成することを指す。なお、それ以外の相、特に、金属片や金属膜など、金属材料のみからなる相、または、金属材料を主成分とする相は、存在していないことが好ましい。また、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相において、金属原子または金属イオンの濃度は均一であることが好ましく、金属原子または金属イオンは凝集していないことが好ましい。金属材料としては、希土類金属から選択されることが好ましく、Yb(イッテルビウム)がより好ましい。本実施の形態では、Ybが選択される。また、機能層20における金属材料のドープ量は3~60wt%が好ましい。本実施の形態では、20wt%である。
【0061】
電子輸送性を有する有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
【0062】
<対向電極>
対向電極21は、透光性の導電性材料からなり、機能層20上に形成されている。本実施の形態においては、対向電極21は、光透過性の陰極として機能する。
【0063】
光透過性を具備する導電性材料の具体例としては、例えば、ITOやIZOなどの導電性酸化物があげられる。または、金属薄膜であってもよく、具体的には、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。金属薄膜の膜厚は、光透過性を確保するため、1nm~50nm程度が好ましい。
【0064】
なお、画素電極13(陽極)が光透過性である場合は、対向電極21が光反射性であることが好ましい。光反射性を具備する導電性材料としては、例えば金属材料が挙げられ、具体的には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0065】
<封止層>
封止層22は、正孔輸送層16、発光層17、機能層20などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0066】
本実施の形態においては、有機EL表示パネル100がトップエミッション型であるため、封止層22は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0067】
<その他>
なお図1には示されないが、封止層22の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層20を水分および空気などから保護できる。
【0068】
また、発光層17と第1中間層18との間に、電子輸送性を備える追加中間層を設けてもよい。追加中間層は、第1中間層18から電子を発光層17へと輸送する機能を有する。追加中間層は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成することができる。
【0069】
2.不純物ブロック性と電子注入性
正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17をウェットプロセスで形成する場合、これらの層の内部および表面に存在する不純物が機能層20に到達すると、機能層20の有機材料にドープされている金属と反応して、機能層20の機能を低下させる。
【0070】
また、不純物が有機材料と反応すると、有機材料が変質し、安定性を損なうおそれもある。
【0071】
隔壁14をウェットプロセスで形成する場合にも、隔壁14の内部および表面に存在する不純物が、同様に機能層20の機能低下を引き起こす原因となる。
【0072】
これに対して、本実施形態に係る有機EL素子1は、発光層17と機能層20との間に、第1中間層18および第2中間層19を備え、第1中間層18は、アルカリ金属のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含んでいるので、このフッ化物が発光層17側からの不純物の侵入を防ぐ。
【0073】
特にNaFは、吸湿性が低く、酸素との反応性が低いため、不純物をブロックする性能が優れ、発光層17側からの不純物の侵入を防ぐ。それによって機能層20に含まれる金属が不純物と反応するのを防ぎ、機能層20の電子供給能の低下を抑制することができ、さらに、対向電極21が不純物によって劣化するのを防止する。なお、NaFに替えてLiF、KF、CsF、MgF2、CaF2、BaF2を用いた場合も、同様の効果を奏する。
【0074】
一方でNaFは電気絶縁性が高いため、対向電極21および機能層20から供給される電子の発光層17への移動を阻害し、発光特性を低下させる問題がある。しかしながら、本実施の形態では、第1中間層18に隣接して、第2金属としてのYbで形成された金属層である第2中間層19が設けられている。第2金属であるYbは、第1中間層18中の第1金属であるNaのフッ化物(NaF)におけるNaとFとの結合を切る働きがあるので、第1中間層18中のNaFの一部が乖離して、Naが遊離する。
【0075】
Naは仕事関数が低く、電子供給能が高いため、対向電極21から発光層17への電子の移動をアシストする。それによって、発光特性の低下を抑制し、駆動電圧を低減することができる。同時に第1中間層18中のNaFにより良好な不純物ブロック性を得ることができる。
【0076】
このように、第1中間層18が、高い不純物ブロック性を有する第1金属のフッ化物を含むことにより、発光層17側からの不純物の侵入をブロックして機能層20(および対向電極21)の電子供給能の低下を抑制することができ、第2中間層19が、第1金属とフッ素との結合を切る第2金属からなることにより、第1金属が遊離し、絶縁性の高い第1中間層18を超えて機能層20から発光層17へと電子が移動しやすくなり、良好な発光特性を得ることができる。
【0077】
なお実際は、第1中間層18と第2中間層19の境界は明確には分かれておらず、第1中間層18を形成する材料と、第2中間層19を形成する材料とが、製造の過程で多少混ざり合って形成されている場合もある。即ち、第1中間層18および第2中間層19の膜厚が、それぞれ正確にD1、D2〔nm〕というわけではなく、その境界がはっきりしていない場合もある。
【0078】
ただしその場合でも、第1金属の濃度は、機能層20側よりも発光層17側で高く、第2金属の濃度は、発光層17側よりも機能層20側で高いので、上述した効果を奏する。
【0079】
ここでは、第1中間層18および第2中間層19を形成する際に、それぞれ膜厚がD1およびD2となるように意図した方法で形成した場合、形成された第1中間層18および第2中間層19の膜厚がそれぞれD1およびD2であるということとする。他の層の膜厚についても同様である。
【0080】
3.第2中間層の膜厚と発光効率比
図2は、第2中間層19の膜厚D2が互いに異なる複数の実施例と、第2中間層19に替えて、金属バリウムからなる第2中間層191を備える複数の比較例についての発光効率比を示すグラフである。図5(a)は実施例に係る有機EL素子の模式断面図である。また、図5(b)は比較例に係る有機EL素子の模式断面図である。なお、実施例、比較例のいずれにおいても、第1中間層18の膜厚D1は4nmとした。
【0081】
これら複数の実施例と複数の比較例に対して、電流密度が10mA/cm2となるように電圧を印加してその際の輝度を測定し、測定された輝度の値から発光効率を算出した。そして、発光効率を相対値としてグラフにプロットした。
【0082】
図2に示すように、実施例、比較例のいずれにおいても、第2中間層19の膜厚D2が0.2nmであるときに最も高い発光効率比を示した。その理由としては、画素電極13から発光層17へと注入される正孔の量が一定であるため、第2中間層19の膜厚D2が0.2nmであるときに発光層17において電子と正孔とがバランスし、それ以上の電子を注入しても電流密度が増加するだけで輝度が上昇しなかったと考えられる。また、以上の結果から、第2中間層19の材料がYbであってもBaであっても、自発光素子の発光効率に差はないと考えられる。
【0083】
4.第1中間層の膜厚と保存安定性
図3(a)は、第1中間層18の膜厚D1が異なる複数の実施例と比較例とで、保管安定性試験を行った結果を示すグラフである。
【0084】
具体的には、実施例と比較例のそれぞれにおいて、初期状態における輝度(初期輝度)を測定した後、80℃の環境下に7日間保管した後に再度輝度を測定し、輝度の保持率(初期輝度に対する高温保管後の輝度の割合〔%〕)を算出したものである。
【0085】
図3(a)に示すように、第1中間層18の膜厚D1が1nmの場合、輝度保持率が59%であって、保管安定性は低いが、膜厚D1が4nm以上の場合、輝度保持率が95%以上であり、良好な保管安定性を示している。
【0086】
これより、第1中間層18の膜厚D1が4nm以上あれば、良好な保管安定性が得られることがわかる。
【0087】
なお、膜厚D1が10nmの試験体では、輝度保持率が100%を超える結果となっている。これは、高温保管前の状態において、正孔と電子とのバランスが最適な状態からずれていたのが、高温保管により、最適なバランス状態に近づいたためと考えられる。
【0088】
また、以上の結果から、第2中間層19の材料がYbであってもBaであっても、自発光素子の保存安定性に差はないと考えられる。
【0089】
5.第1中間層の膜厚と発光効率比
図3(b)は、第1中間層18の膜厚D1が異なる複数の実施例および比較例についての発光効率比を示すグラフである。発光効率比は、「3.第2中間層の膜厚と発光効率比」と同様に、電流密度が10mA/cm2となるように電圧を印加してその際の輝度を測定し、測定された輝度の値から発光効率を算出し、相対値で示した。
【0090】
図3(b)に示すように、実施例、比較例のいずれにおいても、膜厚D1が6nm程度において発光効率が高くなり、膜厚D1が1nmにおいても10nmにおいても発光効率が低下した。
【0091】
この原因としては、以下のように考えられる。第1中間層18の膜厚D1が薄くなり過ぎると、第1金属の絶対量が少なくなるため、発光層17への電子注入性が低下したものと考えられる。一方で、第1中間層18の膜厚D1が厚くなり過ぎると、フッ素と結合したままの第1金属が絶縁体として機能するため、発光効率が低下するためと考えらえる。
【0092】
なお、第2金属としてBaを用いた場合、膜厚D1が10nmの比較例と膜厚D1が1nmの比較例とで発光効率が同程度であるのに対し、第2金属としてYbを用いた場合、膜厚D1が12nmの実施例と膜厚D1が1nmの実施例とで発光効率が同程度である。すなわち、第2金属としてBaを用いる比較例に対し、第2金属としてYbを用いる実施例では膜厚D1の上限値が大きい。その理由としては、第2金属としてのYbが第2金属としてのBaよりも第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を分解する機能が強いと考えられる。図4は、正孔注入層を設けずYbまたはBaをドープした電子注入層を備える有機EL素子(EOD;Electron Only Device)における、YbまたはBaの濃度と電流密度との関係を示すグラフである。図4に示すように、Ybをドープした電子注入層のほうがBaをドープした電子注入層より電流密度が高く、電子注入性が高い、すなわち、Ybは、Baより電子注入性が高い。したがって、第2金属としてYbを用いた場合においても、第2金属としてBaを用いた場合と比較して、第1金属のカチオン(実施例ではNa+)に電子を注入して還元する効果が強いものと考えられる。
【0093】
6.第2中間層の成膜安定性
図6に示すように、第1中間層18の膜厚及び成分、発光層17と第1中間層との間に設ける追加中間層の有無について様々な組み合わせにより実施例および比較例について有機EL表示パネルを製作し、第2中間層の成膜状態について評価した。
【0094】
追加中間層を設ける実施例3、6、比較例3、6では、追加中間層として、発光層17と第1中間層18との間に、電子輸送性材料であるオキサジアゾール誘導体(OXD)からなる膜厚10nmの膜を成膜した。また、実施例2、3、比較例2、3では、第1中間層18について、NaF単体の蒸着層に替えて、NaFと電子輸送性材料であるオキサジアゾール誘導体(OXD)との共蒸着層を用いた。さらに、実施例4、比較例4では、第1中間層18について、NaF単体の蒸着層に替えて、Naqを使用し、実施例5-6、比較例5-6では、第1中間層18について、Naqと電子輸送性材料であるオキサジアゾール誘導体(OXD)との共蒸着層を用いた。
【0095】
また、実施例1-6では第2中間層として膜厚1nmのYbの単層を用い、比較例では第2中間層として膜厚1nmのBaの単層を用いた。
【0096】
なお、結果については第2中間層の状態を示し、〇、△、×の順に特性ムラや第2金属の酸化物、第2金属の水酸化物の混入が多いことを示す。ここで、特性ムラとは、第2金属の酸化物の混入による電子注入性の低下、第2金属の水酸化物による光透過性の低下など、第2中間層としての機能の低下(特に、局所的な低下による機能の不均一性)を指す。
【0097】
図6に示すように、第1中間層18が膜厚1nmのNaF単層またはNaq単層である比較例1、4では、第2中間層191であるBa層の特性にムラが生じた。特に、比較例1、4では、水酸化バリウム(Ba(OH)2)に起因する白色の濁りが局所的に生じ、この部分では電子注入性が低下し光の透過率にも変化が生じるため、Ba層全体の特性としてムラが生じることとなった。また、第1中間層18が膜厚5nmのNaFまたはNaqと電子輸送性材料との共蒸着層である比較例2-3、5-6では、第2中間層191であるBa層の特性にムラが生じた。この原因は、第2中間層191の成膜時に酸素や水分の影響によりBaが酸化する、または発光層17やその下部から第1中間層18側に蒸散した水分がBaと反応することで酸化バリウムや水酸化バリウムが生じたものと考えられる。比較例2-3、5-6では、第1中間層18の膜厚が比較例1、4と比べて大きいため、第1中間層18を透過してBaに到達する水分量が少なく、比較例1、4ほどのムラが生じなかったものと考えられる。
【0098】
一方、実施例では、実施例1-6の全てにおいて第2中間層19であるYb層の特性にムラが生じず、酸化物や水酸化物による濁りも生じなかった。この原因としては、希土類であるYbの水分との反応性がBaと比べて十分に低く、水分による品質劣化が生じなかったものと考えられる。
【0099】
7.各層の光学膜厚と光共振器構造について
図7は、本実施形態にかかる有機EL素子の光共振器構造における光の干渉を説明する図である。
【0100】
有機EL素子1の光共振器構造において、発光層17における正孔輸送層16との界面近傍から出射されて各層を透過していく。この各層界面において光の一部が反射されることによって光の干渉が生じる。その主なものを例示すると以下のような干渉が挙げられる。
【0101】
第1の干渉としては、第1光路C1と第2光路C2との干渉である。発光層17から出射され対向電極21側に進行した光の一部が、対向電極21を透過して発光素子の外部に出射される第1光路C1と、発光層17から、画素電極13側に進行した光の一部が、画素電極13で反射された後、発光層17および対向電極21を透過して発光素子の外部に出射される第2光路C2とが形成される。そして、この直接光と反射光との干渉が生じる。
【0102】
図7に示す光学膜厚L1は、第1光路C1と第2光路C2との光学距離の差に対応している。この光学膜厚L1は、発光層17と画素電極13との間に挟まれた正孔注入層15、正孔輸送層16の合計の光学距離(膜厚と屈折率との積、nm)である。
【0103】
また、発光層17から対向電極21側に進行した光の一部が、対向電極21で反射されて、さらに画素電極13で反射された後、発光素子の外部に出射される第3光路C3も形成される。
【0104】
そして、この第3光路C3を経由する光と、上記第1光路C1を経由する光との干渉も第2の干渉として生じる。
【0105】
第2光路C2と第3光路C3との光学距離の差は図7に示す光学膜厚L2に対応する。この光学膜厚L2は、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層20の合計の光学距離である。
【0106】
また、第3の干渉として、第3光路C3を経由する光と、上記第2光路C2を経由する光との干渉も生じる。第1光路C1と第3光路C3との光学距離の差は、図7に示す光学膜厚L3に対応する。光学膜厚L3は、上記光学膜厚L1と光学膜厚L2の和である(L3=L1+L2)。光学膜厚L3は、画素電極13と対向電極21との間に挟まれた正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、機能層20の合計の光学距離である。
【0107】
通常、共振器構造において、光取り出し効率が極大値を示す光学膜厚に調整される。上記の各光路を経由する光が、互いに干渉によって強め合って光取り出し効率が高まるように、発光層17と画素電極13との間の光学膜厚L1、発光層17と対向電極21との間の光学膜厚L2、そして、画素電極13と対向電極21との間の光学膜厚L3は設定される。
【0108】
各光路長は、例えば、図8に示すように、光の取り出し効率が極大となるように設計することが好ましい。具体的には、発光層17から機能層20までの膜厚が、0次干渉となるaまたは1次干渉となるbの長さとなるよう光学膜厚L2を設計する。
【0109】
8.小括
以上説明したように、実施の形態に係る表示パネルによれば、第1中間層により陰極や電子注入層の劣化を抑止することができる。さらに、第2中間層が酸化されにくい希土類の単体層により構成されているため、第1中間層における第1金属の還元により陰極から発光層への電子注入性を高めることができるとともに、第2中間層自体の劣化を抑止することができる。したがって、陰極から発光層への電子注入性を高めて発光効率の向上を図るとともに、安定性の高い第2中間層により発光効率のばらつきや経時劣化を抑止することができる。
【0110】
9.表示パネルの製造方法
表示パネルの製造方法について、図面を用い説明する。図9は、実施の形態に係る表示パネル100の製造工程を示すフローチャートである。図10(a)~(e)、図11(a)~(d)、図12(a)~(d)は、有機EL素子1の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。
【0111】
(1)基板11の形成
まず、図10(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成し、(ステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
【0112】
(2)層間絶縁層12の形成
次に、図10(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
【0113】
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
【0114】
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
【0115】
(3)画素電極13の形成
次に、図10(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0116】
次に、図10(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS30)。
【0117】
(4)隔壁14の形成
次に、図10(e)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成し(図11(a))、隔壁14を焼成する(ステップS40)。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
【0118】
また、隔壁14の形成工程においては、さらに、隔壁14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
【0119】
(5)正孔注入層15の形成
次に、図11(b)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド410のノズル401から吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS50)。
【0120】
なお、正孔注入層15の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、正孔注入層15の成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、ステップ30における画素電極材料層130の形成後、画素電極材料層130上に正孔注入層15の材料からなる正孔注入材料層を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層とを同一のパターニング工程でパターニングして画素電極13と正孔注入層15の積層構造を形成する、としてもよい。
【0121】
(6)正孔輸送層16の形成
次に、図11(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド420のノズル402から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS60)。
【0122】
なお、正孔輸送層16の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、画素電極13、正孔注入層15、正孔輸送層16の全ての成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、上述したように、各層を同一のパターニング工程でパターニングしてもよい。
【0123】
(7)発光層17の形成
次に、図11(d)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド430Rのノズル403R、インクジェットヘッド430Gのノズル403G、インクジェットヘッド430Bのノズル403Bのそれぞれから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(ステップS70)。
【0124】
(8)第1中間層18の形成
次に、図12(a)に示すように、発光層17および隔壁14上に、第1中間層18を形成する(ステップS80)。中間層18は、例えば、NaFを真空蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0125】
(9)第2中間層19の形成
次に、図12(b)に示すように、第1中間層18上に、第2中間層19を形成する(ステップS90)。第2中間層19は、例えば、Ybを真空蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0126】
(10)機能層20の形成
次に、図12(c)に示すように、第2中間層19上に、機能層20を形成する(ステップS100)。機能層20は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属であるイッテルビウムとを共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0127】
(11)対向電極21の形成
次に、機能層20上に、対向電極21を形成する(ステップS110)。対向電極21は、ITO、IZO、Ag、Al等の材料を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
【0128】
(12)封止層22の形成
次に、図12(d)に示すように、対向電極21上に、封止層22を形成する(ステップS120)。封止層22は、SiN、SiONなどを用いて、スパッタリング法、CVD法により形成することができる。
【0129】
なお、封止層22の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
【0130】
10.表示装置の全体構成
図13は、有機EL表示パネル100を備えた表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図12に示すように、表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210~240と、制御回路250とから構成されている。
【0131】
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
【0132】
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)上記実施の形態においては、自発光素子(有機EL素子)1が機能層20を備え、追加中間層を備えないとしたが、必ずしも上記実施の形態の構成である必要はない。例えば、追加中間層と機能層20の双方を備えてもよいし、追加中間層を備え機能層20を備えないとしてもよいし、追加中間層と機能層20のいずれも備えない、としてもよい。
【0133】
また、同様に、正孔注入層15、正孔輸送層16についても上記実施の形態の構成である必要はなく、いずれか一方のみを備えるとしてもよいし、正孔注入層15、正孔輸送層16に替えて、双方の機能を兼ね備えた正孔注入輸送層を備えるとしてもよい。
【0134】
(2)上記実施の形態においては、R、G、Bのそれぞれに発光する3種類の発光層を設けた有機EL表示パネルについて説明したが、発光層の種類は2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。ここで、発光層の種類とは発光層や機能層の膜厚のバリエーションを指すものであり、同一の発光色であっても発光層や機能層の膜厚が異なる場合は、種類が異なる発光層と考えてよい。また、発光層の配置についても、RGBRGB…の配置に限られず、RGBBGRRGB…の配置であってもよいし、画素と画素との間に補助電極層やその他の非発光領域を設けてもよい。
【0135】
(3)上記実施の形態においては、有機EL素子1において正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17は全て塗布法により形成されるとしたが、他の方法、例えば、蒸着法、スパッタリング法などにより形成されるとしてもよい。
【0136】
(4)上記実施の形態においては、陰極が対向電極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL表示装置であるとした。しかしながら、例えば、表示装置はボトムエミッション型であってもよい。
【0137】
(5)以上、本開示に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、発光効率が高く、かつ、劣化しづらく長寿命の発光素子を製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 自発光素子(有機EL素子)
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極(陽極)
14 隔壁
14a 開口部
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 第1中間層
19 第2中間層
20 機能層
21 対向電極(陰極)
22 封止層
100 表示パネル(有機EL表示パネル)
200 駆動制御部
210~240 駆動回路
250 制御回路
1000 表示装置(有機EL表示装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13