(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】原稿読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20240122BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H04N1/387 800
H04N1/04 106A
H04N1/12 Z
(21)【出願番号】P 2019192024
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】関 哲志
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075600(JP,A)
【文献】特開2019-134348(JP,A)
【文献】特開2015-015686(JP,A)
【文献】特開2005-196659(JP,A)
【文献】特開2017-098712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/38 - 1/393
H04N 1/04 - 1/207
G06T 1/00
1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される原稿トレイと、
前記原稿トレイに載置された前記原稿の幅方向の位置を規制する原稿ガイドと、
前記原稿トレイに載置された前記原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されている前記原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段による前記原稿の読取結果から、前記原稿の搬送方向の先端部及び後端部に基づいて傾き量を検出し、前記原稿の前記搬送方向の先端部と前記幅方向の横端部
の交点を前記原稿の傾きを補正するための回転中心位置
として検出する傾き検出手段と、
前記回転中心位置を基準に前記読取結果を前記傾き量だけ回転させることで、前記読取結果に対して傾き補正を行う補正手段と、
前記原稿ガイドの位置と前記回転中心位置とに基づいて、前記回転中心位置が傾き補正を可能な正常範囲にあるか否かを判定し、前記正常範囲にある場合に前記傾き補正を行った前記読取結果を出力し、前記正常範囲にない場合に前記傾き補正を行っていない前記読取結果を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする、
原稿読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転中心位置が、前記正常範囲にある場合に前記横端部が正常に検出されたと判断して前記傾き補正を行った前記読取結果を出力し、前記正常範囲にない場合に前記横端部が誤検出されたと判断して前記傾き補正を行っていない前記読取結果を出力することを特徴とする、
請求項1記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記幅方向における前記回転中心位置が、前記原稿ガイドの位置から前記幅方向に所定距離の範囲である前記正常範囲の外である場合に、前記傾き補正を行わずに前記読取結果を出力することを特徴とする、
請求項1または2記載の原稿読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の原稿から画像(原稿画像)を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機や複写機は、読取センサにより原稿画像を読み取って該原稿画像を表す画像データを生成する画像読取装置と、画像データに基づく画像をシートに印刷する画像形成装置と、を組み合わせて構成される。画像読取装置は、複数枚の原稿を連続して搬送しながら原稿画像を読み取る場合に、自動原稿搬送装置(以下、「ADF:Auto Document Feeder」という。)を用いる。ADFは、搬送ローラにより原稿を搬送する。搬送ローラは、摩耗等の要因により原稿を斜行して搬送することがある。原稿が斜行する場合、読取センサは原稿が搬送方向に対して傾いた状態で原稿画像を読み取ることになる。この場合、読み取られた原稿画像も傾いている。そのために、一般的に、画像データに対して傾きを補正する傾き補正処理が行われる。
【0003】
画像データの傾き補正は、一般的に、処理に使用可能するメモリの容量等により、最大補正角度が決定する。特許文献1では、原稿画像が最大補正角度以上に傾く場合に、ユーザにより、傾き補正を行わないか或いは最大補正角度まで補正を行うかが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ADFは、読取センサの読取位置にリードローラや流し読みガラスを備える。リードローラや流し読みガラスにゴミや傷があると、原稿画像の読み取りの際に、画像データにゴミや傷の画像が含まれることがある。画像データの傾き補正は、原稿の端部を検出し、端部から傾き量及び画像データを回転させるときの回転中心を検出して行われる。画像データに含まれる傷やゴミは、原稿の端部として誤検出される可能性がある。画像データに含まれる傷やゴミが原稿の端部に誤検出される場合、傾き量が正常な値とならずに、画像データの正確な傾き補正が行われなくなることがある。特許文献1の技術であっても、原稿の斜行が最大補正角度以内である場合に、原稿端部の誤検出に対応できない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、不適切な傾き補正が実施された結果が出力されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の原稿読取装置は、原稿が載置される原稿トレイと、前記原稿トレイに載置された前記原稿の幅方向の位置を規制する原稿ガイドと、前記原稿トレイに載置された前記原稿を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送されている前記原稿を読み取る読取手段と、前記読取手段による前記原稿の読取結果から、前記原稿の搬送方向の先端部及び後端部に基づいて傾き量を検出し、前記原稿の前記搬送方向の先端部と前記幅方向の横端部の交点を前記原稿の傾きを補正するための回転中心位置として検出する傾き検出手段と、前記回転中心位置を基準に前記読取結果を前記傾き量だけ回転させることで、前記読取結果に対して傾き補正を行う補正手段と、前記原稿ガイドの位置と前記回転中心位置とに基づいて、前記回転中心位置が傾き補正を可能な正常範囲にあるか否かを判定し、前記正常範囲にある場合に前記傾き補正を行った前記読取結果を出力し、前記正常範囲にない場合に前記傾き補正を行っていない前記読取結果を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不適切な傾き補正が実施された結果の出力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】(a)、(b)は、原稿の横端部の検出結果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
(画像読取装置の構成)
図1は、本実施形態の画像読取装置の構成図である。画像読取装置1000は、原稿画像を読み取る画像読取部200と、原稿を画像読取部200の読取位置へ搬送する自動原稿搬送装置(ADF100)と、を備える。画像読取装置1000は、例えば複写機や複合機に用いられる場合、画像形成装置上に設けられる。
【0012】
画像読取部200は、筐体内に光学スキャナユニット202を備え、筐体のADF100側に原稿台ガラス209、流し読みガラス201、及び白基準板210を備える。光学スキャナユニット202は、原稿台ガラス209上に載置された原稿から原稿画像を読み取る場合に、
図1の矢印で示す副走査方向に一定速度で移動しながら、原稿画像を1ラインずつ読み取る。原稿台ガラス209上に載置された原稿から原稿画像を読み取る処理を「固定読み」という。光学スキャナユニット202は、ADF100を用いて原稿から原稿画像を読み取る場合に、ADF100により搬送される原稿が読取位置を通過するタイミングで原稿画像を1ラインずつ読み取る。この場合、光学スキャナユニット202は、移動しない。ADF100を用いて原稿から原稿画像を読み取る処理を「流し読み」という。白基準板210は、固定読み及び流し読みを行う前に光学スキャナユニット202により読み取られる。光学スキャナユニット202は、白基準板210の読取結果を白色の基準として、キャリブレーションが行われる。
【0013】
ADF100は、1枚以上のシート状の原稿で構成される原稿束Sを積載する原稿トレイ30と、給紙ローラ1と、原稿の搬送開始前に原稿束Sが原稿トレイ30から搬送方向の下流側へ突出することを規制する分離パッド21及び分離ローラ2とを備える。本実施形態の原稿トレイ30は普通紙を最大で100枚積載可能である。原稿トレイ30には原稿有無検知センサ14が設けられる。原稿有無検知センサ14は、原稿トレイ30上の原稿の有無を検知する。給紙ローラ1は、原稿トレイ30に積載された原稿束Sの最上位の原稿面に落下して回転する。これにより、原稿束の最上位の原稿が給紙される。給紙ローラ1によって給紙された原稿は、分離ローラ2と分離パッド21とによって1枚に分離されて搬送経路を搬送される。原稿の分離は公知の分離技術によって実現されている。
【0014】
搬送経路には、引抜ローラ3、レジストローラ4、読取上流ローラ5、リードローラ6、読取下流ローラ7、及び排紙ローラ12が設けられる。分離ローラ2及び分離パッド21によって分離された原稿は、引抜ローラ3、レジストローラ4、及び読取上流ローラ5により搬送経路を画像の読取位置へ搬送される。このとき、レジストローラ4は、原稿の斜行を補正する。レジストローラ4による斜行の補正は以下のように行われる。
引抜ローラ3により原稿が搬送されてくる際に、レジストローラ4は回転を停止している。そのために引抜ローラ3によりレジストローラ4へ搬送される原稿は、引抜ローラ3によりレジストローラ4に先端が突き当てられる。原稿の先端がレジストローラ4に突き当てられた後も引抜きローラ3は所定距離だけ原稿を搬送する。これにより原稿はループ状の撓みを形成し、搬送時の斜行が解消される。
【0015】
読取位置には、流し読みガラス201とリードローラ6とが搬送経路を挟んで設けられる。原稿は、流し読みガラス201とリードローラ6の間を通過する際に、原稿画像が光学スキャナユニット202により読み取られる。
【0016】
読取位置を通過した原稿は、読取下流ローラ7により排紙ローラ12へ搬送される。読取下流ローラ7と排紙ローラ12との間の搬送経路には、原稿をレジストローラ4へ戻す反転経路19が設けられる。原稿の表面(第1面)の原稿画像のみを読み取る場合、排紙ローラ12は、読取位置通過後の原稿を排紙トレイ13へ排出する。原稿の両面の画像を読み取る場合、原稿は反転経路19へ搬送される。原稿は、反転経路19を通過することで、表裏が反転してレジストローラ4へ搬送される。レジストローラ4に搬送された原稿は、読取位置で裏面(第2面)の原稿画像が読み取げられる。原稿の反転は以下のように行われる。
原稿は、後端が排紙ローラ12を抜ける前に搬送が停止される。そして排紙ローラ12が逆回転することで、原稿が反転経路19側へ搬送される。原稿は、反転経路19を介してレジストローラ4へ搬送され、第1面と同様に第2面の原稿画像が読み取られる。さらに、第2面の原稿画像が読み取られた原稿は、再度、反転経路19を介してレジストローラ4へ搬送される。両面の原稿画像が読み取られた後であるために、原稿は、原稿画像を読み取られることなく読取位置を通過して、排紙トレイ13へ排出される。
【0017】
搬送経路には、搬送経路の上流側から順に分離後センサ15、レジストセンサ17、リードセンサ18、及び排紙センサ11が設けられる。分離後センサ15は、給紙ローラ1及び分離ローラ2により給紙された原稿を検知する。レジストセンサ17は、レジストローラ4の搬送方向の上流に設けられ、搬送される原稿を検知する。レジストセンサ17の検知結果に応じてレジストローラ4の駆動が制御される。リードセンサ18は、読取上流ローラ5の搬送方向の上流側に設けられ、搬送される原稿を検知する。リードセンサ18の検知結果に応じて読取上流ローラ5及びリードローラ6の駆動が制御され、且つ光学スキャナユニット202の読取動作が制御される。排紙センサ11は、排紙ローラ12の搬送方向の上流に設けられ、搬送される原稿を検知する。排紙センサ11の検知結果に応じて、排紙ローラ12の駆動が制御される。
【0018】
画像読取部200の光学スキャナユニット202は、流し読み及び固定読み時に、
図1の奥行き方向(原稿の搬送方向に直交する方向)を主走査方向として原稿画像を読み取る。光学スキャナユニット202は、光源(発光部)となるLED(Light Emitting Diode)203a、203b、複数のミラー204a~204c、及び受光部となる画像読取センサ208を備える。LED203a、203bは、原稿の画像が形成される面を照射する。原稿に照射された光の反射光は、ミラー204a~204cにより画像読取センサ208に導かれる。画像読取センサ208は、反射光を受光し、該反射光を電気信号に変換した画像データを出力する。この画像データは、原稿に形成された原稿画像と、原稿の周囲の画像と、を含む画像を表す。原稿の周囲の画像は、例えば読取位置に設けられる流し読みガラス201及びリードローラ6の画像である。
【0019】
(コントローラ)
図2は、画像読取装置1000の動作を制御するコントローラの説明図である。コントローラは、第1コントローラ310及び第2コントローラ300を備える。第1コントローラ310と第2コントローラ300とは、通信ライン354及び画像ライン353により相互通信可能に接続される。第1コントローラ310は、画像読取装置1000に設けられる。第2コントローラ300は、例えば画像読取装置1000が複写機や複合機を構成する場合に、画像形成装置に設けられる。
【0020】
第1コントローラ310は、CPU(Central Processing Unit)801、ROM(Read Only Memory)802、及びRAM(Random Access Memory)803を備える。CPU801は、第2コントローラ300からの指示によりROM802に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像読取装置1000の動作を制御する。その際に、RAM803は、ワークエリアを提供する。第1コントローラ310は、さらに傾き検出部830及び画像処理部833を備える。傾き検出部830は、画像データに基づいて、原稿搬送時の原稿(原稿画像)の傾きを検出する。画像処理部833は、傾き検出部830で検出される傾き量に応じて画像データを補正する傾き補正処理を含む画像処理を行う。傾き検出部830及び画像処理部833の詳細は後述する。CPU801、ROM802、RAM803、傾き検出部830、及び画像処理部833は、バスB1を介して通信可能に接続される。
【0021】
バスB1には、分離モータ820、読取モータ821、分離後センサ15、原稿ガイド幅検出センサ10、原稿有無検知センサ14、レジストセンサ17、リードセンサ18、排紙センサ11、及び光学スキャナユニット202も接続される。分離モータ820は、給紙ローラ1、分離ローラ2、引抜ローラ3、及びレジストローラ4を回転駆動する。読取モータ821は、読取上流ローラ5、リードローラ6、読取下流ローラ7、排紙ローラ12を回転駆動する。
【0022】
CPU801は、分離モータ820を正転させることで、原稿を搬送方向の下流へ搬送するように、給紙ローラ1、分離ローラ2、引抜ローラ3、及びレジストローラ4を回転させる。CPU801は、読取モータ821を正転させることで、原稿を搬送方向の下流へ搬送するように、読取上流ローラ5、リードローラ6、読取下流ローラ7、排紙ローラ12を回転させる。CPU801は、読取モータ821を反転させることで、原稿を反転経路19へ搬送するように、排紙ローラ12を回転させる。
【0023】
分離モータ820及び読取モータ821はパルスモータである。CPU801は、分離後センサ15、レジストセンサ17、リードセンサ18、及び排紙センサ11による搬送経路上の原稿の検知結果に応じて、分離モータ820及び読取モータ821の駆動パルス数を制御して、原稿を搬送する。CPU801は、分離後センサ15、レジストセンサ17、リードセンサ18、及び排紙センサ11による検知結果により、搬送中の原稿の位置を監視することができる。また、CPU801は、分離後センサ15、レジストセンサ17、及びリードセンサ18の原稿の検知タイミングと、分離モータ820の駆動パルス数とにより、搬送中の原稿の搬送方向の長さ(原稿長)を検出することができる。つまり、CPU801、分離後センサ15、レジストセンサ17、リードセンサ18、及び分離モータ820は原稿長検出機能を有する。
【0024】
CPU801は、光学スキャナユニット202のLED203及び画像読取センサ208の動作を制御して、原稿画像の読取機能を実現する。具体的には、CPU801は、リードセンサ18が原稿を検知したタイミングに基づいてLED203を発光させて、読取位置を通過する原稿に光を照射する。画像読取センサ208は、原稿による光の反射光を受光して画像データを出力する。CPU801は、画像読取センサ208による読取結果である画像データに基づいて、傾き検出部830及び画像処理部833により、傾き補正を行う。傾き補正後の画像データは、画像処理部833から第2コントローラ300へ画像ライン353を介して送信される。CPU801は、画像データの先端部の基準となる垂直同期信号及び1ラインの画素先端部の基準となる水平同期信号を第2コントローラ300へ通信ライン354を介して送信する。
【0025】
第2コントローラ300は、CPU901、ROM902、RAM903、画像処理部905、及び画像メモリ906を備える。CPU901、ROM902、RAM903、画像処理部905、及び画像メモリ906は、バスB2を介して通信可能に接続される。バスB2には、操作部904も接続される。CPU901は、ROM902に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像読取装置1000を含めた全体システムの動作を制御する。その際に、RAM803は、ワークエリアを提供する。
【0026】
CPU901は、CPU801との間で通信ライン354を介して画像読取制御に関するデータの送受信を行う。画像処理部905は、画像処理部833から画像ライン353を介して画像データを取得する。画像処理部905は、取得した画像データに所定の処理を行い、画像メモリ906に格納する。操作部904は、入力装置と出力装置とを備えるユーザインタフェースである。入力装置には、入力キーやテンキー等のキーボタン、タッチパネル等がある。出力装置には、ディスプレイやスピーカがある。CPU901は、操作部904による指示等の入力を受け付ける。CPU901は、操作部904に画面表示を行うことで各種の通知や入力補助を行う。
【0027】
図3は、ADF100の原稿トレイ30に載置された原稿の、搬送方向に直交する方向(主走査方向)の長さ(原稿幅)の検出方法の説明図である。原稿トレイ30には、一対の原稿ガイド板31が設けられる。原稿ガイド板31は、原稿トレイ30に載置される原稿の主走査方向の辺を規制して原稿束Sを整える。原稿ガイド幅検出センサ10は、一対の原稿ガイド板31の間隔(原稿ガイド幅A)を検出する。CPU801は、原稿ガイド幅検出センサ10の検出結果により、原稿ガイド幅Aを取得する。通常、ユーザは、原稿を原稿トレイ30上に設置して、原稿ガイド板31を原稿の幅に合わせる。そのために原稿ガイド幅Aは、原稿幅と等しくなる。つまりCPU801は、原稿ガイド幅検出センサ10の検出結果により、原稿トレイ30に載置された原稿の原稿幅を検出可能である。このように原稿ガイド幅検出センサ10は、原稿幅検出機能を有する。
【0028】
(傾き検出及び傾き補正)
原稿の傾き検出及び傾き補正について説明する。原稿は、レジストローラ4で斜行が補正された後であっても、読取位置へ搬送されるまでの間に再び斜行する場合がある。原稿は、斜行することで、光学スキャナユニット202が1ラインの画像を読み取る方向(主走査方向)に対して傾いた状態で読み取られる。このような傾いた状態で読み取られた画像を補正するために、原稿の傾き検出及び傾き補正が行われる。
【0029】
傾き検出部830は、画像読取センサ208から画像データを取得する。画像データには、上記の通り、原稿画像の他に原稿の周囲の画像が含まれる。傾き検出部830は、画像データから原稿の端部の影を抽出して、該影により、原稿の搬送方向の先端部及び後端部を検出する。傾き検出部830は、原稿の先端部及び後端部に基づいて原稿の傾き量を検出する。
また、傾き検出部830は、画像データから抽出する原稿の端部の影により、搬送方向に直交する原稿の横端部を検出する。傾き検出部830は、原稿の先端部及び横端部に基づいて回転中心の位置(例えば座標)を検出する。回転中心は、傾き補正時に原稿画像を回転する際の中心位置となる。
【0030】
CPU801は、傾き検出部830から原稿の傾き量及び回転中心の位置を取得する。CPU801は、取得した原稿の傾き量及び回転中心の位置を画像処理部833に設定する。画像処理部833は、CPU801により設定される回転中心の位置及び傾き量に基づいて、アフィン変換により画像データを処理して、読み取った原稿画像を回転する。
これにより原稿画像の傾きが補正される。本実施形態では、画像読取センサ208の主走査方向の長さ及び画像メモリ容量の制約により、原稿画像の傾きが5度未満までしか補正できない場合について説明する。
【0031】
画像処理部833は、アフィン変換により、傾き量に応じた角度θを補正するための画素の位置(主走査(X)、副走査(Y))を算出する。アフィン変換の一般式を以下に示す。
X = xcosθ ‐ ysinθ + x0
Y = xsinθ + ycosθ + y0
X:主走査方向の補正後の画素位置
Y:副走査方向の補正後の画素位置
x:補正前の主走査方向の画素位置
y:補正前の副走査方向の画素位置
x0:主走査方向の平行移動量(主走査傾き補正基準位置)
y0:副走査方向の平行移動量(副走査傾き補正基準位置)
θ:原稿先端部から算出された傾き基づく角度
【0032】
x0及びy0は、傾き補正された画像データ(原稿画像)を平行移動させるための移動量である。画像データの平行移動により、原稿画像の先端部及び横端部の出力位置を合わせることが可能となる。上記のアフィン変換の式は一般式であり、集積回路で実現する際にはcosθ≒1として、以下の演算式が用いられている。
X = x ‐ ytanθ + x0
Y = xtanθ + y + y2
X:主走査方向の補正後の画素位置
Y:副走査方向の補正後の画素位置
x:補正前の主走査方向の画素位置
y:補正前の副走査方向の画素位置
x0:主走査方向の平行移動量(主走査傾き補正基準位置)
y0:副走査方向の平行移動量(副走査傾き補正基準位置)
tanθ:原稿の傾き量
【0033】
本実施形態では原稿の先端部の影により傾きを検出し、回転中心を基準としてアフィン変換による画像回転により、傾き補正が行われる。傾き検出及び傾き補正は、この方法に限定されるものではなく、回転中心の位置が得られる方法であれば別の方法であってもよい。
【0034】
(回転中心位置異常判定)
図4は、原稿が斜行した状態を例示する。
図4は、原稿幅Aの原稿が主走査方向に対して角度θで読取位置を通過する状態を表す。
図5は、原稿の横端部の検出結果の説明図である。
図5(a)は、原稿の先端部、横端部、及び回転中心が正常に検出された状態を表す。
図5(b)は、原稿の先端部が正常に検出され、横端部及び回転中心が誤検出された状態を表す。ユーザは、原稿幅Aの原稿を原稿トレイ30に載置し、原稿ガイド板31により原稿を整列させる。この場合、原稿ガイド板31の間隔は原稿幅Aを表す。
【0035】
図4に示すように原稿が傾いた状態で後端部が原稿ガイド板31間に収まる位置にある場合、傾き補正の回転中心となる原稿の先端部の頂点の位置は、原稿トレイ30から主走査方向にαだけ外にはみ出た位置になると考えられる。読取位置にあるリードローラ6や流し読みガラス201にゴミや傷が付着する場合、読み取った原稿画像にゴミや傷の画像が含まれる。ゴミや傷の画像は、原稿の横端部の誤検出の原因となる。そのために画像データにゴミや傷の画像が含まれる場合、傾き検出部830は、回転中心を正常に検出できない可能性がある。例えば回転中心は、主走査方向に原稿ガイド板31の位置から所定距離(α)以上離れた位置に誤検出される(
図5(a)、5(b))。
【0036】
ここで、αは、原稿幅A、原稿長Lをとして、以下の式で示される(
図4参照)。
A+α = B+C
= Asin(180-90-θ)°+L/tan(180-90-θ)°
α = Asin(180-90-θ)°+L/tan(180-90-θ)°-A
【0037】
上記の通り、原稿長Lは、分離後センサ15、レジストセンサ17、及びリードセンサ18のそれぞれが原稿を検知してから検知しなくなるまでの分離モータ820及び読取モータ821の駆動パルス数をカウントすることで算出される。CPU801は、原稿搬送開始前時に原稿ガイド幅検出センサ10により原稿ガイド幅A(原稿幅A)を取得し、原稿搬送中に原稿長Lを取得する。またCPU801は、原稿画像の読取結果(画像データ)から傾き検出部830が検出した原稿の傾き量θを取得する。CPU801は、これらの取得した原稿ガイド幅A、原稿長L、及び傾き量θにより、上記の式から原稿毎にαの値を算出することができる。
【0038】
CPU801は、上記の式により算出したαの値と、傾き補正時の回転中心の位置とを比較して、回転中心の位置が正常か否かを判断することができる。具体的には、CPU801は、回転中心の位置が、原稿ガイド板31の位置から主走査方向にαより内側(原稿中心に近づく方向)にある場合は正常、外側(原稿中心から遠ざかる方向)にある場合は異常であると判断することができる。αは、回転中心の位置が正常であるか否かを判定する基準値となる。基準値は、原稿ガイド板31の位置から主走査方向に所定距離の範囲(正常範囲)を設定する。
【0039】
なお、本実施形態では、αの値は、原稿の後端部の位置を仮定して上記の式を用いて算出されるが、これに限定されない。例えば、画像読取装置1000の製造時に原稿サイズと原稿の傾き量との関係を検出して第1コントローラ310内のメモリに保存しておき、原稿サイズ毎にαの値が決定されてもよい。また、αの値は所定値が事前に設定されていてもよい。
【0040】
(傾き補正処理)
図6は、傾き補正処理を含む画像読取処理を表すフローチャートである。ユーザは、原稿を原稿トレイ30に載置して、操作部904により原稿画像の読取開始を指示する。このときユーザは、原稿トレイ30に載置した原稿の主走査方向を原稿ガイド板31により規制する。読取開始の指示は、操作部904から第2コントローラ300のCPU901に入力される。CPU901は、読取開始の指示に応じて第1コントローラ310のCPU801へ画像読取処理の実行命令を送信する。CPU801は、CPU901から画像読取処理の実行命令を受信して画像読取処理を開始する。原稿トレイ30に原稿が載置されるために、CPU801は流し読みにより原稿画像を読み取る。
【0041】
CPU801は、分離モータ820及び読取モータ821を制御して原稿トレイ30に載置された原稿の給送を開始する(S101)。CPU801は、リードセンサ18が原稿を検知したタイミングに応じて光学スキャナユニット202を動作させることで、原稿画像の読み取りを開始する(S102)。画像読取センサ208は、読取結果として画像データを出力する。
【0042】
傾き検出部830は、画像読取センサ208から出力される画像データに基づいて、原稿の傾き量及び回転中心の位置を検出する。CPU801は、傾き検出部830から傾き量及び回転中心の位置を取得する(S103)。CPU801は、上記の回転中心位置異常判定で説明した処理により、回転中心の位置が正常な傾き補正時にとりうる範囲(正常範囲)を設定する(S104)。正常範囲は、例えば上記の基準値で表される。
【0043】
CPU801は、傾き検出部830から取得した回転中心の位置と正常範囲とを比較する(S105)。回転中心の位置が正常範囲内にある場合(S105:Y)、CPU801は、原稿の端部が正常に検出されていると判断して、正常な傾き補正が実行可能であると判定する。この場合、CPU801は、画像処理部833に傾き補正処理を実行させる(S109)。回転中心の位置が正常範囲内にない場合(S105:N)、CPU801は、原稿の端部が誤検出されていると判断して、正常な傾き補正が実行不可能であると判定する。この場合、CPU801は、画像処理部833に傾き補正処理を実行させない(S106)。なお、画像処理部833は、傾き補正処理を行うか否かにかかわらず、画像データに対して他の所定の画像処理を行う。
【0044】
CPU801は、画像処理部833に傾き補正処理を実行させる場合であっても、或いは実行させない場合であっても、画像処理部833に画像データを第2コントローラ300の画像処理部905へ送信させる(S107)。画像データの送信後にCPU801は、原稿有無検知センサ14の検知結果に基づいて原稿トレイ30に原稿が有るか否かを判定する(S108)。原稿が有る場合(S108:Y)、CPU801は、S101以降の処理を再度行うことになる。原稿が無い場合(S108:N)、CPU801は、画像読取処理を終了する。
【0045】
以上の処理では、原稿の傾き量によらず、原稿の横端部が誤検出される場合に傾き補正が行われない。なお、原稿の横端部が誤検出される場合に、回転中心の位置を原稿ガイド板31の間に移動させる処理を行い、傾き補正を実行するようにしてもよい。また、画像読取装置1000は、例えば原稿の向きを変えるようにユーザに通知して、向きが変えられた原稿からリードローラ6のゴミを隠すようにして原稿画像を読み取ってもよい。また、原稿の端部が誤検出される場合、CPU801は、第2コントローラ300のCPU901により操作部904に傾き補正が行われないことを表示して、再度の画像読取を促してもよい。
【0046】
(傾き補正処理の他の例)
図7は、傾き補正処理を含む画像読取処理を表す別のフローチャートである。この処理は、
図6の処理と同様に、ユーザによる操作部904からの読取開始の指示に応じて実行される。S201~S205の処理は、
図6のS101~S105の処理と同様であるために説明を省略する。
【0047】
CPU801は、傾き検出部830から取得した回転中心の位置が正常範囲内にある場合(S205:Y)、原稿の端部が正常に検出されていると判断して、正常な傾き補正が実行可能であると判定する。この場合、CPU801は、画像処理部833に傾き補正処理を実行させる(S208)。CPU801は、画像処理部833に処理後の画像データを第2コントローラ300の画像処理部905へ送信させる(S209)。画像データの送信後にCPU801は、原稿有無検知センサ14の検知結果に基づいて原稿トレイ30に原稿が有るか否かを判定する(S210)。原稿が有る場合(S210:Y)、CPU801は、S101以降の処理を再度行うことになる。原稿が無い場合(S210:N)、CPU801は、画像読取処理を終了する。
【0048】
CPU801は、傾き検出部830から取得した回転中心の位置が正常範囲内にない場合(S205:N)、原稿の端部が誤検出されていると判断して、正常な傾き補正が実行不可能であると判定する。この場合、CPU801は中断処理を行う(S206)。CPU801は、中断処理により、第2コントローラ300のCPU901に読取中断信号を送信する。また、CPU801は、中断処理により、ADF100の搬送経路に搬送中の原稿をすべて排出する。CPU801は、回転中心の位置が正常範囲内にない原因をリードローラ6や流し読みガラス201のゴミや傷であるとして、第2コントローラ300のCPU901により操作部904に清掃を促す清掃画面を表示する(S207)。
図8は、清掃画面の例示図である。ユーザは、この清掃画面に応じて清掃を行い、画像読取処理を再度指示することになる。
【0049】
以上の処理では、回転中心が正常範囲内である場合に傾き補正が行われ、正常範囲外である場合に傾き補正が行われない。また、回転中心が正常範囲外である場合には、ユーザに対してリードローラ6及び流し読みガラス201の清掃が指示される。清掃後にユーザは、原稿の読み取りを再度行うことで、傾きが正常に補正された原稿画像の読取結果を得ることができる。
【0050】
以上のように本実施形態の画像読取装置1000は、原稿の端部を誤検出する場合に傾き補正を実行しないことで、画像データの不正確な傾き補正を防止することができる。画像データの傾き補正を行わない場合、画像読取装置1000は、回転中心位置を移動した後に傾き補正を行ってもよい。また、画像データの傾き補正を行わない場合、画像読取装置1000は、ユーザへの再度の画像読取の催促や、リードローラ6及び流し読みガラス201の清掃を指示してもよい。