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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】子供用育児器具
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
B60N2/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019196334
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070344
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116273(JP,A)
【文献】特開2019-026147(JP,A)
【文献】米国特許第05061012(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第1623891(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0201170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
B60R 22/00-48
B62B 9/24
B62J 1/00-28
A47D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と背もたれ部とを含む座席と、
前記座席に設けられ、前記座席に着座した子供のを拘束する拘束位置と、子供のを拘束しない開放位置とに切り換えられるベルトユニットと、
前記座席に設けられ、前記ベルトユニットの前記拘束位置に対応する第1位置と、前記ベルトユニットの前記開放位置に対応する第2位置との間を変位可能な変位部材と、
前記変位部材の前記第2位置へ向かう移動と、前記ベルトユニットの前記開放位置に向かう移動とを連動するように、その一端が前記ベルトユニットに連結され、その他端が前記変位部材に連結される第1連結部材と、
前記変位部材を前記第2位置に付勢する付勢部材とを備える、子供用育児器具。
【請求項2】
前記ベルトユニットは、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記開放位置から前記拘束位置へと切り換え可能である、請求項1に記載の子供用育児器具。
【請求項3】
前記肩ベルトユニットは、肩ベルトと、その一端が前記背もたれ部に連結され、その他端部が前記肩ベルトに連結された肩ベルト支持部とを含み、
前記肩ベルト支持部は、前記第1連結部材に連結されている、請求項1または2に記載の子供用育児器具。
【請求項4】
前記座席に着座した子供の股を拘束し、前記変位部材の前記第1位置に対応する股拘束位置と、前記座席に着座した子供の股を拘束しない、前記変位部材の前記第2位置に対応する股開放位置との間を変位可能な股部部材をさらに備える、請求項1~のいずれかに記載の子供用育児器具。
【請求項5】
前記変位部材の前記第2位置へ向かう移動と、前記股部部材の前記股開放位置に向かう移動とを連動するように、その一端が前記変位部材に連結され、その他端が前記股部部材に連結される第2連結部材をさらに備え、
前記股部部材が前記拘束位置から前記開放位置に位置変更することに伴って、前記肩ベルトユニットが前記拘束位置から前記開放位置に位置変更する、請求項に記載の子供用育児器具
【請求項6】
前記付勢部材は、前記変位部材を第2位置に付勢するためのばねである、請求項に記載の子供用育児器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供用育児器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、チャイルドシートなどの子供用育児器具には、子供を座席に支持するための肩ベルト、股ベルトおよび腰ベルトが設けられている。子供をチャイルドシートの座席に座らせる場合、これらのベルトの上に子供を座らせた後、子供の下になったベルトを外側に引き出して連結するか、これらのベルトを座席の側方に避けた後に子供を座らせて連結する必要があり、手間がかかっていた。
【0003】
このような問題を解決するため、子供をチャイルドシートに座らせる場合に、ベルトが邪魔にならないようにしたチャイルドシートとして、たとえば、米国特許7445286号公報(特許文献1)および特開2019-26147号公報(特許文献2)が知られている。
【0004】
特許文献1,2のチャイルドシートは、肩ベルトが常に開放させる方向にテンションがかかっているため、肩ベルトを開放した場合に、肩ベルトが上方に跳ね上がる。そのため、子供をチャイルドシートに座らせて肩ベルトを装着する場合に、肩ベルトが邪魔になることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7445286号公報
【文献】特開2019-26147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1,2のチャイルドシートは、子供をチャイルドシートに座らせる場合であっても、肩ベルトが邪魔になることがない。しかし、特許文献1,2の肩ベルトは、肩ベルトに接続されるばねなどの弾性部材で常に開放させる方向にテンションがかけられているため、弾性部材が子供に直接触れる場合があり、子供に不快感を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、子供を着座させる際にベルトが邪魔になることがなく、子供に不快感を与えることがない子供用育児器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明の一態様に係る子供用育児器具は、座面部と背もたれ部とを含む座席と、座席部に設けられ、座席に着座した子供の体を拘束する拘束位置と、子供の体を拘束しない開放位置とに切り換えられる拘束ベルトユニットと、座席に設けられ、拘束ベルトユニットの拘束位置に対応する第1位置と、拘束ベルトユニットの開放位置に対応する第2位置との間を変位可能な変位部材と、変位部材の第2位置へ向かう移動と、拘束ベルトユニットの開放位置に向かう移動とを連動するように、その一端が拘束ベルトユニットに連結され、その他端が変位部材に連結される第1連結部材と、変位部材を第2位置に付勢する付勢部材とを備える。
【0009】
好ましくは、拘束ベルトユニットは、付勢部材の付勢力に抗して、開放位置から拘束位置へと切り換え可能である。
【0010】
好ましくは、拘束ベルトユニットは、座席に着座した子供の肩を拘束する肩ベルトユニットを含む。
【0011】
好ましくは、肩ベルトユニットは、肩ベルトと、その一端が背もたれ部に連結され、その他端部が肩ベルトに連結された肩ベルト支持部とを含み、肩ベルト支持部は、第1連結部材に連結されている。
【0012】
好ましくは、子供用育児器具は、座席に着座した子供の股を拘束し、変位部材の第1位置に対応する股拘束位置と、座席に着座した子供の股を拘束しない、変位部材の第2位置に対応する股開放位置との間を変位可能な股部部材をさらに備える。
【0013】
好ましくは、変位部材の第2位置へ向かう移動と、股部部材の股開放位置に向かう移動とを連動するように、その一端が変位部材に連結され、その他端が股部部材に連結される第2連結部材をさらに備え、拘束ベルトユニットが拘束位置から開放位置に位置変更することに伴って、股部部材が股拘束位置から股開放位置に位置変更する。
【0014】
好ましくは、付勢部材は、変位部材を第2位置に付勢するためのばねである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、子供を着座させる際にベルトが邪魔になることがなく、子供に不快感を与えることがない子供用育児器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図である。
図2】本実施の形態に係るチャイルドシートの一部分を取り出して示す斜視図である。
図3】本実施の形態に係るチャイルドシートの肩ベルトユニットおよび股部部材の位置変更を示す模式図であり、(A)は肩ベルトユニットが拘束位置に位置することを示し、(B)は肩ベルトユニットが開放位置に位置することを示す。
図4】本実施の形態における肩ベルトユニットを拡大して示す模式図である。
図5】本実施の形態におけるスライド部材の内部構造を示す模式図である。
図6】本実施の形態に係るチャイルドシートの肩ベルトユニットおよび股部部材の位置変更を示す模式図であり、(A)は肩ベルトユニットが拘束位置に位置することを示し、(B)は肩ベルトユニットが開放位置に位置することを示す。
図7】本実施の形態に係るチャイルドシートの股部部材が股拘束位置に位置することを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は部分側面図であり、(C)は図7(B)のVII(C)線に沿う断面図である。
図8】本実施の形態に係るチャイルドシートの股部部材が股開放位置に位置することを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は部分側面図であり、(C)は図8(B)のVIII(C)線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
(チャイルドシートの概要について)
図1図2を参照して、本実施の形態に係る子供用育児器具としてのチャイルドシート1の概要について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応し、左右方向は、チャイルドシート1の前方から見た左右方向に対応している。
【0019】
チャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席本体3を備える。
【0020】
ベース本体2は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席本体3を下方から支持するベース部20を含む。ベース部20の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポート21が設けられている。ベース部20の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIX22が設けられている。ベース部20の上方には、ベース本体2に対して回転可能に支持される座席本体3が設けられている。
【0021】
座席本体3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。図1では、座席本体3上において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。なお、座席本体3は、シート体30を介して、ベース本体2に対して回転可能に設けられてもよい。シート体30は、座席本体3を左右後方から包囲している。座席本体3は、シート体30に固定されており、座席本体3とシート体30は、ベース部20に対して回転可能に設けられる。
【0022】
座席本体3は、座面部4と背もたれ部5と含む。座席本体3には、子供が着座する。そのため、座面部4は、子供の臀部を支持し、背もたれ部5は、座面部4の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する。なお、図2に示すように、背もたれ部5の前面上には、スライド部材6が重なっている。
【0023】
スライド部材6は、背もたれ部5の前面に重なって、上下方向に摺動可能である。スライド部材6は、ヘッドレストとして機能する。そのため、スライド部材6は、子供の後頭部を保護する立壁部61と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部62とを含む。側壁部62は、立壁部61の左右方向両端部に取り付けられ、前方に向かって突出する。なお、スライド部材6上においても、座席本体3と同様に、やわらかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されていてもよい。スライド部材6には、後述する肩ベルト84が貫通する肩ベルト通し穴63が設けられる。
【0024】
図1に示すように、背もたれ部5には、座席本体3に着座した子供の両肩を拘束する肩ベルト84が設けられる。また、座面部4には、座席本体3に着座した子供の股(両太腿)の間を延びる股部部材9と、子供の腰を拘束する一対の腰ベルト12とが設けられる。これらの腰ベルト12、肩ベルト84および股部部材9は、股部部材9の先端に設けられるバックル14により、子供の腹部付近で連結される。これらの肩ベルト84、腰ベルト12および股部部材9は、いわゆる5点ベルトである。なお、図2では、これら5点ベルトの図示を省略している。また、肩ベルト84と腰ベルト12は、それぞれ別のベルトで形成されていなくてもよく、たとえば1本のベルトで連続して設けられていてもよい。また、図2では、後述する肩ベルト支持部181の図示を簡略化している。
【0025】
(本実施の形態について)
次に、図3図8を参照して、本実施の形態に係るチャイルドシート1について説明する。図3(A),図6(A)は、肩ベルトユニット8が肩拘束位置に位置し、股部部材9が股拘束位置に位置することを示し、図3(B),図6(B)は、肩ベルトユニット8が肩開放位置に位置し、股部部材9が股開放位置に位置することを示す。図3では、スライド部材6と背もたれ部5との図示を簡略化している。図4は、肩ベルトユニット8を拡大して示す模式的な正面図であり、図5は、スライド部材の内部構造を示す模式的な側面図である。また、図7は、股部部材9が股拘束位置に位置することを示し、図8は、股部部材9が股開放位置に位置することを示す。
【0026】
本実施の形態のチャイルドシート1は、バックル14(図3)の連結を解除することで、肩ベルトユニット8が肩拘束位置(図3(A),図6(A))から肩開放位置(図3(B),図6(B))に位置変更し、それに伴って、股部部材9が股拘束位置(図3(A),図6(A),図7)から股開放位置(図3(B),図6(B),図8)に位置変更する。なお、肩・股拘束位置は、座席本体3に着座した子供の体を拘束する位置であり、肩・股開放位置は、子供の体を拘束しない位置である。
【0027】
チャイルドシート1は、概略的には、肩ベルトユニット8と、変位部材140と、付勢部材143と、第1連結部材173と、股部部材9と、第2連結部材170とを備える。肩ベルトユニット8は第1連結部材173を介して変位部材140に連結しており、変位部材140は第2連結部材170を介して股部部材9に連結している。このため、バックル14の連結を解除することで、肩ベルトユニット8が開放し、さらに股部部材9を開放させることが可能となる。それぞれの構成について詳細に説明する。
【0028】
図4を参照して、肩ベルトユニット8について説明する。肩ベルトユニット8は、座席本体3に着座した子供の体を拘束する肩ベルト84と、肩ベルト84に連結される肩ベルト支持部181とを含む。肩ベルト84は、たとえば長尺状の帯状の紐である。肩ベルト84は、背もたれ部5に設けられる。具体的には、図3(A),図3(B)に示すように、肩ベルト84は、ループ状に設けられ、スライド部材6に設けられる肩ベルト通し穴63と背もたれ部5に設けられる長孔51を貫通して、背もたれ部5の裏面側を通り、座面部4の下方にまで延びる。
【0029】
特に図4図5を参照して、肩ベルト支持部181は、支持部本体182と、支持部本体182から連続する土台部186と、支持部本体182をスライド部材6に対して回動する回動部183とを含む。支持部本体182は、たとえば撓み可能なコイルばね、非金属性の板状部材などで形成されている。支持部本体182は、子供の体に直接当たる可能性がある部材であるため、柔らかい素材であることが好ましい。土台部186は、円柱状であり、剛性を有してもよいし、支持部本体182と同様に弾性可能であってもよい。回動部183は、球状であり、スライド部材6に対してたとえば360度回動する。回動部183は、肩ベルト通し穴63の上方に設けられている。
【0030】
図4に示すように、支持部本体182の下方には、肩ベルト84が位置する。上下に重ね合わされた支持部本体182と肩ベルト84とは、筒状のパッド85で覆われている。パッド85は、着座した子供の肩に当接する位置に設けられる。肩ベルト支持部181は、パッド85を介して肩ベルト84と当接することで肩ベルト84と連結する。このように、肩ベルト支持部181と肩ベルト84とが連結するとは、縫い付けたり接着したりするなど、肩ベルト支持部181と肩ベルト84とが直接接続されることだけでなく、単に当接していることも含まれる。
【0031】
特に図5図6を参照して、変位部材140について説明する。変位部材140は、スライド部材6に設けられている。具体的には、変位部材140は、肩ベルト支持部181の上方に取り付けられている。変位部材140は、肩ベルト支持部181の回動部183から離れて設けられている。
【0032】
また、変位部材140は、肩ベルトユニット8の肩拘束位置に対応する第1位置(図6(A))と、肩ベルトユニット8の肩開放位置に対応する第2位置(図6(B))との間を変位可能である。具体的には、変位部材140は、変位本体部141と、変位本体部141を回動可能に支持する軸142とを含む。軸142は、スライド部材6の幅方向中央部近傍に設けられる。変位部材140は、軸142を支点に上下に回転する。変位本体部141は、後述する第1連結部材173の一端部171と第2連結部材170の一端部174と連結している。
【0033】
同図を参照して、付勢部材143は、変位部材140を第2位置(図6(B))に付勢する。つまり、変位部材140を常に上方に付勢する。付勢部材143は、たとえば、ねじりばね、圧縮ばね、引っ張りばねなどの種々のばねである。本実施の形態では、付勢部材143としてねじりばねが採用されている。
【0034】
次に、第1連結部材173について説明する。第1連結部材173は、たとえば長尺状のワイヤなどである。第1連結部材173は、変位部材140と肩ベルト支持部181とを連結する。具体的には、第1連結部材173は、その一端部174が変位部材140に連結され、その他端部175が肩ベルト支持部181の土台部186に連結されている。第1連結部材173の他端部175は、肩ベルト支持部181の回動部183を超えて下方に取り付けられている。
【0035】
上述のように、変位部材140と肩ベルトユニット8は、第1連結部材173により連結されている。そのため、肩ベルト支持部181と変位部材140は連動する。具体的には、肩ベルトユニット8が付勢部材143の付勢力に抗して肩拘束位置(図6(A))にある場合は、変位部材140が下方に移動し、肩ベルトユニット8が付勢部材143の付勢力に抗せず肩開放位置(図6(B))にある場合は、変位部材140が上方に移動している。
【0036】
これにより、バックル14の連結を解除することで、肩ベルトユニット8が肩開放位置(図6(B))に移動し、第1連結部材173が緩むため、付勢部材143の付勢力に従って、変位部材140が上方に移動する。また、バックル14を連結することで、肩ベルトユニットが肩拘束位置(図6(A))に移動し、第1連結部材173が引っ張られるため、付勢部材143の付勢力に抗して、変位部材140が下方に移動する。
【0037】
従来のチャイルドシートは、肩ベルト自体に弾性部材が設けられているため、肩ベルトを肩開放位置に付勢するための弾性力の調整が困難であった。これに対し、本実施の形態では、肩ベルトユニット8と変位部材140を連動させ、変位部材140を付勢部材143で付勢しているため、付勢部材143の付勢力の調整を簡単に行うことができる。さらに、変位部材140および付勢部材143は、スライド部材6内に設けられているため、それらが子供に直接触れて、不快感を与えることがない。
【0038】
図6図8を参照して、股部部材9について説明する。股部部材9は、股拘束位置と股開放位置とに切り換わる。股拘束位置は、股部部材9が座面部4に対して立ち上がっている位置であり、股開放位置は、股部部材9が前方に倒れている位置である。
【0039】
特に図1に示すように、股部部材9は、子供の股の間を延びる部材である。股部部材9は、典型的には帯状の紐の股ベルトであるが、たとえば板状部材および筒状部材などベルトタイプに限定されない。
【0040】
図6に示すように、股部部材9は、上下に延びる部材であり、上端部92と、下端部93と、上端部92と下端部93との間に設けられる軸94とを含む。下端部93は、第2連結部材170が連結されている移動部材176に連結されている。これにより、第2連結部材170の移動に連動して股部部材9も移動する。
【0041】
具体的には、図6(A),図7に示すように、股部部材9が股拘束位置に変位すると、股部部材9は軸94を中心に回転し、股部部材9の下端部93に連結されている移動部材176が前方に移動することで、第2連結部材170が引っ張られて、変位部材140が第1位置に変位する。また、図6(B)、図8に示すように、変位部材140が第2位置に変位すると、第2連結部材170が引っ張られて、移動部材176が後方に移動することで、股部部材9が軸94を中心に回転し、上端部92が前方に移動して股部部材9が股開放位置に変位する。下端部93に連結されている移動部材176については、後述する。
【0042】
次に、第2連結部材170について説明する。上述のように、第2連結部材170は、たとえば長尺状のワイヤである。第2連結部材170は、変位部材140と股部部材9とを連結する。具体的には、第2連結部材170は、その一端部171が変位部材140に連結され、その他端部172(図7,8)が股部部材9に連結されている。
【0043】
第2連結部材170は、第1連結部材173よりも長い。また、第1連結部材173の一端部174の位置は、第2連結部材170の一端部171の位置よりも幅方向外方(変位部材140の軸142より離れた位置)に位置する。具体的には、変位部材140において、軸142から第2連結部材170の一端部171までの直線距離は、軸142から第1連結部材173の一端部174までの直線距離よりも小さい。これにより、変位部材140が移動した場合の第1連結部材173の移動量は第2連結部材170の移動量よりも大きい。
【0044】
上述のように、変位部材140と股部部材9は、第2連結部材170により連結されている。そのため、変位部材140と股部部材9は連動する。具体的には、股部部材9が股拘束位置(図6(A))にあり、股部部材9の移動部材176が前方に位置する場合は、変位部材140が付勢部材143の付勢力に抗して第1位置に位置する。また、変位部材140が付勢部材143の付勢力に抗せず第2位置する場合(図6(B))は、股部部材9の移動部材176が後方に位置し、股部部材9が股開放位置に位置する。
【0045】
特に図7図8を参照して、股部部材9に連結される移動部材176について説明する。移動部材176は、第1筐体177と、第2筐体178と、後述する第2連結部材170を支持し、第1,2筐体177,178内を前後方向(紙面では左右方向)に移動する支持部179とを含む。第1筐体177の一対の側壁部には、下向き略L字状の第1貫通孔177aが形成されている。第1貫通孔177aは、横穴177bと、横穴177bに連なる縦穴177cとを含む。縦穴177cは、横穴177bの前方端に設けられ、横穴177bの寸法より短い。縦穴177cは、股部部材9が第1位置(図8)にある場合に、移動部材176の位置をロックするロック機構である。
【0046】
なお、ロック機構は、本実施の形態の第1貫通孔177aの形状に限定されるものではなく、たとえば、第1筐体177の側壁部に設けられるフックなどで支持部179の移動を仮ロックするものであってもよい。
【0047】
第2筐体178は、その前方端が股部部材9の下端部93と連結されている。これにより、股部部材9を第1位置(図6(A),図7)から第2位置(図6(B),図8)に位置変更することで、前方から後方に移動する。なお、図7(B),図8(B)において、第2筐体178を破線で示している。また、図7図8に示すように、第2筐体178の一対の側壁部には、第2貫通孔178aが形成されている。第2貫通孔178aは、横穴178bと、横穴178bから連なる傾斜穴178cとを含む。傾斜穴178cは、横穴178bの前方端に設けられ、横穴177bの寸法とほぼ同一である。
【0048】
支持部179は、本体部179aと、本体部179aから左右方向(図7(C),図8(C)の紙面上で上下方向)に突出する一対の突出部179bとを含む。一対の突出部179bは、第1貫通孔177aと第2貫通孔178aを連続して貫通する。なお、図7(B),図8(B)において、支持部179を一点鎖線で示している。本体部179aは、後述する第2連結部材170を支持している。これにより、股部部材9を第1位置(図6(A),図7)から第2位置(図6(B),図8)に位置変更することで、支持部179は、前方から後方に移動する。
【0049】
(切り換え方法について)
次に、図3図6図8を参照して、肩ベルトユニット8の切り換え方法について説明する。
【0050】
肩ベルトユニット8を肩拘束位置から肩開放位置へ切り換える方法について説明する。まず、バックル14の連結を解除する。図6(A)の状態の股部部材9の上端部92を手で握り、軸94を中心に後方に回転させて、図6(B)の状態に変位させる。股部部材9の下端部93と移動部材176の第2筐体178の前方は連結されているため、股部部材9の回転に伴って、移動部材176も後方に移動する。
【0051】
具体的には、図7に示すように、支持部179の突出部179bは、第2貫通孔178aと第1貫通孔177aとを同時に貫通する。そのため、股部部材9が股開放位置に移動することで、突出部179bは、第2貫通孔178aの横穴178bから傾斜穴178cに移動することに伴って、第1貫通孔177aの縦穴177cから横穴177bに移動して、図8に示す状態となる。図6(B)に示すように、第2連結部材170が緩み、付勢部材143の付勢により変位部材140が上方に回転することで、第1連結部材173が引っ張られて、肩ベルトユニット8は肩開放位置に変位する。
【0052】
次に、肩ベルトユニット8を肩開放位置から肩拘束位置へ切り換える方法について説明する。図6(B)の状態の股部部材9の上端部92を手で握り、軸94を中心に後方に回転させて、図6(A)の状態に変位させる。股部部材9の下端部93と移動部材176の第2筐体178の前方は連結されているため、股部部材9の回転に伴って、移動部材176も前方に移動する。
【0053】
具体的には、股部部材9が回転して股拘束位置に変位すると、第2筐体178は前方に移動する。図7に示すように、支持部179の突出部179bは、第2貫通孔178aと第1貫通孔177aとを同時に貫通する。そのため、突出部179bは、第2貫通孔178aの横穴178bから傾斜穴178cに移動することに伴って、第1貫通孔177aの横穴177bからに縦穴177c移動する。これにより、第2連結部材170が連結している支持部179は前方に移動する。
【0054】
図6(A)に示すように、支持部179が前方に移動することで、第2連結部材170が引っ張られ、変位部材140は付勢部材143の付勢力に反して下方に回転する。これにより、変位部材140に連結されている第1連結部材173が緩み、肩ベルトユニット8は自重で下がり肩拘束位置に変位する。つまり、股部部材9が股開放位置から股拘束位置に変位することに伴って、肩ベルトユニット8が自重で肩拘束位置に移動する。
【0055】
図6(A),図7に示すように、股部部材9が股拘束位置にある場合に、支持部179の突出部179bは、第1筐体177の第1貫通孔177aの縦穴177cに位置する。これにより、股部部材9が股拘束位置にある場合には、股部部材9の位置を仮ロックすることができる。
【0056】
また、股部部材9が股開放位置であるにも関わらず、使用者が肩ベルトユニット8を掴んで肩開放位置から肩拘束位置に無理やり操作した場合であっても、第2連結部材170は緩んだ状態であるため、第2連結部材170が切断するおそれがない。
【0057】
(着座させる際の動作について)
子供を座席本体3に着座させる際の動作は、次の通りである。
【0058】
図3(B)に示すように、肩ベルトユニット8は肩開放位置にあり、股部部材9は股開放位置にある。この状態で、肩開放位置にある肩ベルト84の下方の座席本体3に子供を着座させ、子供の両太腿の間に股部部材9を通す。さらに、図3(A)に示すように、股部部材9を股拘束位置に変位させて、肩ベルトユニット8を肩拘束位置に変位させる。これにより、子供をチャイルドシート1に乗せる際に、肩ベルト84および股部部材9が連動するため、子供を肩ベルト84で確実に拘束することが可能となる。
【0059】
子供をチャイルドシート1から降ろしたい場合は、肩ベルト84、腰ベルト12および股部部材9とバックル14との連結を解除する。さらに、図3(B)に示すように、肩ベルトユニット8が肩開放位置に変位し、それに伴って股部部材9が股開放位置に変位する。これにより、子供をチャイルドシート1から降ろす際に、股部部材9および肩ベルト84が邪魔になることがない。
【0060】
以上より、股部部材9を股拘束位置に変位させると、肩ベルトユニット8も肩拘束位置に変位させることができるため、子供をチャイルドシート1に乗せる場合に、簡単にチャイルドシート1に拘束することができる。また、バックル14の連結を解除するだけで、簡単に肩ベルトユニット8を肩開放位置に位置変更させ、股部部材9を股開放位置に位置変更させることができるため、子供をチャイルドシート1から降ろす場合に、肩ベルト84と股部部材9が邪魔になることがない。
【0061】
なお、上記実施の形態では、拘束ベルトユニットは、背もたれ部5に設けられる肩ベルトユニット8であるとした。しかし、肩ベルトユニット8は、子供の体を拘束するものであればよく、たとえば腰ベルト12などであってもよい。また、肩ベルト84と腰ベルト12とが1本のベルトで連続して設けられている場合は、肩ベルト84と腰ベルト12の両方を拘束位置と開放位置とに切り換えることができる。つまり、拘束ベルトユニットは、肩ベルトユニット8および腰ベルト12を含んでいてもよい。なお、座面部4と背もたれ部5の間から腰ベルト12が延びている場合も、腰ベルト12は、背もたれ部5に設けられることとする。
【0062】
また、上記実施の形態では、変位部材140はスライド部材6に設けられるとしたが、ベース本体2、座席本体3、およびシート体30のいずれかに設けられていればよい。なお、座席は、ベース本体2、座席本体3、スライド部材6およびシート体30を含んでいる。
【0063】
さらに、上記実施の形態では、子供用育児器具がチャイルドシートであるとして説明したが、これに限定されず、たとえば乳母車、ベビーラック、育児椅子などの座席付き育児器具であればよい。
【0064】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 チャイルドシート、4 座面部、5 背もたれ部、6 スライド部材、8 肩ベルトユニット(拘束ベルトユニット)、9 股部部材、140 変位部材、143 付勢部材、170 第2連結部材、171 一端部、172 他端部、173 第1連結部材、174 一端部、175 他端部、181 肩ベルト支持部。
図1
図2
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図7
図8