(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240122BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240122BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/18
B41J2/165 501
(21)【出願番号】P 2019199389
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177568(JP,A)
【文献】特開2017-177423(JP,A)
【文献】特開2016-101726(JP,A)
【文献】特開2019-166731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位変化に応じて変位する圧電素子によってインクを吐出する複数の吐出部を備えた記録手段と、
前記記録手段を含む循環経路においてインクの循環を実行可能な循環手段と、
前記吐出部からインクを吐出させ、インクの吐出によって前記吐出部に生じた残留振動を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した残留振動に基づいて前記吐出部におけるインクの吐出状態を判定する判定手段と、
前記検出手段による残留振動の検出と、前記循環手段による循環とを並行して実行させないよう制御する制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判定手段による判定と、前記循環手段による循環とを並行して実行させないように制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、吐出異常と判定された前記吐出部の数を示す値に基づいて、前記判定手段および前記循環手段を用いた回復動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、吐出異常と判定された前記吐出部の数の、前記吐出部の総数に対する割合を示す値に基づいて、前記判定手段および前記循環手段を用いた回復動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記値が第1の値以下であると、前記判定手段による判定を実行し、
前記値が第1の値よりも大きい第2の値以下であると、前記循環手段によるインクの循環を実行することを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記値が前記第1の値以下であると、その大きさに応じて、実行する判定の回数が異なることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記値が前記第1の値を超え、かつ、前記第2の値以下であると、その値に応じて、実行するインクの循環の時間が異なることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記記録手段の吐出状態の判定回数に基づいて回復動作を実行し、
前記判定回数が設定回数を超えていないと、前記判定手段による判定を実行して前記記録手段の吐出状態の判定を実行し、前記判定回数が前記設定回数を超えていると、前記循環手段によるインクの循環を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記吐出部の吐出状態の判定回数に基づいて回復動作を実行し、
前記判定回数が設定回数を超えていないと、判定の対象となる前記吐出部に対して前記判定手段による判定を実行し、前記判定回数が前記設定回数を超えていると、前記吐出部を含む循環経路において前記循環手段によるインクの循環を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記循環手段によるインクの循環は、前記設定回数を超えた前記判定回数に応じて、その時間を変更することを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
装置起動時に、前記判定手段による判定を実行し、該判定の結果に基づく前記回復動作を実行することを特徴とする請求項3から10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記判定手段による判定の際には、前記制御手段は前記循環手段により、判定の対象となる前記吐出部で生じた前記残留振動の検出精度に影響が生じない循環経路におけるインクの循環を限定的に実行させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記循環手段によるインクの循環を実行しているときに、前記判定手段による判定を実行するタイミングとなると、前記制御手段は、前記循環手段によりインクの循環を停止し、所定の時間が経過した後に、前記判定手段により前記吐出部におけるインクの吐出状態の判定を行うことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
電位変化に応じて変位する圧電素子によってインクを吐出する複数の吐出部を備えた記録手段と、
前記記録手段を含む循環経路においてインクの循環を実行可能な循環手段と、
前記吐出部からインクを吐出させ、インクの吐出によって前記吐出部に生じた残留振動を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した残留振動に基づいて前記吐出部におけるインクの吐出状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定を行うタイミングに基づいて、前記循環手段がインクを循環するタイミングを制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記記録手段は、前記吐出部から吐出するインクが供給され、前記圧電素子と対向する空間である圧力室を有し、
前記循環手段は、前記記録手段の前記圧力室を含む前記循環経路においてインクの循環を実行可能であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
電位変化に応じて変位する圧電素子によってインクを吐出する複数の吐出部を備えた記録手段と、
前記記録手段を含む循環経路においてインクの循環を実行可能な循環手段と、
を備えたインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記吐出部からインクを吐出させ、インクの吐出によって前記吐出部に生じた残留振動を検出する検出工程を有し、
前記検出工程
を行うときには前記循環手段によるインクの循環を実行しない
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好に維持および回復する回復動作を実行するインクジェット記録装置、および当該インクジェット記録装置を制御する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子を変位させて吐出部から液体を吐出するインクジェット記録装置において、液体吐出ヘッドの吐出異常を判定する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の技術では、圧電素子の駆動による液体吐出後の吐出部に生じる残留信号に基づいて、吐出部における液体の吐出状態を検出し、この検出結果に応じて液体吐出ヘッドにおける吐出異常を判定するようにしている。また、インク特性の変化による着弾精度の悪化などを抑制するために、特許文献2には、記録ヘッドとタンクとの間でインクを循環させる構成を備えたインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-114049号公報
【文献】特開2017-121784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の、インクを循環させる構成を備えたインクジェット記録装置では、特許文献1の技術を用いて吐出異常を検出する場合、循環動作によって、吐出口近傍に循環流が生じ、残留振動の検出精度にばらつきが生じる虞がある。その結果、吐出部における吐出異常を正確に判定することができなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクを循環する構成を備えたインクジェット記録装置において、吐出部における吐出異常を正確に判定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるインクジェット記録装置は、電位変化に応じて変位する圧電素子によってインクを吐出する複数の吐出部を備えた記録手段と、前記記録手段を含む循環経路においてインクの循環を実行可能な循環手段と、前記吐出部からインクを吐出させ、インクの吐出によって前記吐出部に生じた残留振動を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した残留振動に基づいて前記吐出部におけるインクの吐出状態を判定する判定手段と、前記検出手段による残留振動の検出と、前記循環手段による循環とを並行して実行させないよう制御する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクを循環させる構成を備えたインクジェット記録装置において、吐出部における吐出異常を正確に判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1カセットから給送された記録媒体の搬送経路図である。
【
図5】記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。
【
図6】メンテナンスユニットの構成を示す斜視図である。
【
図9】吐出部におけるインクの吐出動作を説明する図である。
【
図10】判定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【
図11】振幅情報および周期情報と、判定情報との対応関係を示す図である。
【
図12】第1記録処理、第2記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【
図13】第3記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【
図14】第1判定方法で用いる閾値を示す表である。
【
図15】第2判定方法で用いる閾値を示す表である。
【
図17】第2実施形態での回復処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【
図18】第3実施形態での回復処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【
図19】吐出異常の吐出部の数に対する回復動作を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の実施形態では、液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置として、インクジェット記録装置を例として説明することとする。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1乃至
図16を参照しながら、本発明の第1実施形態によるインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFによって自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0015】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。即ち、記録ヘッド8は、複数色のインクを吐出可能に構成されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0016】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0017】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0018】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0019】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0020】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0021】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0022】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0023】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0024】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0025】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0026】
記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0027】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0028】
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0029】
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。
図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0030】
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。
図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
【0031】
同様に、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sは、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。すなわち、第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0032】
また、A4サイズの記録媒体Sの両面記録を行う場合には、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は
図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。
【0033】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。
【0034】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0035】
図5は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図5に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図5における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0036】
一方、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置から
図5に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0037】
図6(a)はメンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、
図6(b)はメンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。
図6(a)は
図1に対応し、
図6(b)は
図5に対応している。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は
図6(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10は鉛直方向上方に移動しており、ワイピングユニット17はメンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10はy方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている。
【0038】
一方、
図6(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は鉛直方向下方に移動しており、ワイピングユニット17がメンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
【0039】
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ヘッド8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
【0040】
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
【0041】
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
【0042】
本実施形態では、ブレードワイパユニット171によるワイピング動作を行いバキュームワイパユニット172によるワイピング動作を行わない第1のワイピング処理と、両方のワイピング処理を順番に行う第2のワイピング処理を実施することができる。第1のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を
図5のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16から引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。この移動により、吐出口面8aに付着するインク等はブレードワイパ171aに拭き取られる。すなわち、ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16から引き出された位置からメンテナンスユニット16内へ移動する際に吐出口面8aをワイピングする。
【0043】
ブレードワイパユニット171が収納されると、プリントコントローラ202は、次にキャップユニット10を鉛直方向上方に移動させ、キャップ部材10aを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させる。そして、プリントコントローラ202は、その状態で記録ヘッド8を駆動して予備吐出を行わせ、キャップ部材10a内に回収されたインクを吸引ポンプによって吸引する。
【0044】
一方、第2のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を
図5のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。これにより、ブレードワイパ171aによるワイピング動作が吐出口面8aに対して行われる。次に、プリントコントローラ202は、再び記録ヘッド8を
図5のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて所定位置まで引き出す。続いて、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を
図5に示すメンテナンス位置に下降させながら、平板172aと位置決めピン172dを用いて吐出口面8aとバキュームワイパユニット172の位置決めを行う。その後、プリントコントローラ202は、上述したバキュームワイパユニット172によるワイピング動作を実行する。プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向上方に退避させ、ワイピングユニット17を収納した後、第1のワイピング処理と同様に、キャップユニット10によるキャップ部材内への予備吐出と回収したインクの吸引動作を行う。
【0045】
(インク供給ユニット)
次に、
図7を用いて本実施形態のインク循環系の流路構成を説明する。
図7は、本実施形態のインクジェット記録装置1で採用するインク供給ユニット15を含むインク循環系の流路構成を示す図である。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から供給されたインクを記録ヘッド8へ供給する。
図7では、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に
図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、インク供給ユニット15の各構成について説明する。
【0046】
インクは、主にサブタンク151と記録ヘッド8との間を循環する。記録ヘッド8では、画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
【0047】
所定量のインクを収容するサブタンク151は、記録ヘッド8へインクを供給するための供給流路C2と、記録ヘッド8からインクを回収するための回収流路C4とに接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、記録ヘッド8、および回収流路C4が、インクが循環する循環流路となる循環経路を構成する。また、サブタンク151は、空気が流れる流路C0に接続されている。
【0048】
サブタンク151には複数の電極ピンで構成される液面検知手段151aが設けられている。インク供給制御部209は、これら複数のピン間の導通電流の有無を検知することによって、インク液面の高さ、即ち、サブタンク151内のインク残量を把握することができる。減圧ポンプP0は、サブタンク151のタンク内部を減圧するための負圧発生源である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。
【0049】
メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141とを接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141の接続を切り替えるためのタンク供給弁V1が配されている。
【0050】
インク供給制御部209は、液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検知すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5を閉じる。また、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量を超えたことを検知すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。
【0051】
供給流路C2は、サブタンク151から記録ヘッド8へインクを供給するための流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2とが配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、記録ヘッド8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環することができる。記録ヘッド8によって単位時間あたりに吐出されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、記録ヘッド8が単位時間あたりのインク消費量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
【0052】
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側とを接続する流路である。リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。リリーフ弁V3は、駆動機構によって開閉されるのではなく、ばね付勢されており、所定の圧に達すると弁が開くように構成されている。例えば、供給ポンプP1からIN流路80bに供給される単位時間あたりのインク供給量が、記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2から回収流路C4に流れる単位時間あたりのインク流量との合計値よりも多い場合を想定する。この場合には、リリーフ弁V3は、自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。リリーフ流路C3の構成を設けることにより、記録ヘッド8に対するインク供給量が、記録ヘッド8でのインク消費量に応じて調整され、循環経路内の圧力を画像データによらず安定させることができる。
【0053】
回収流路C4は、記録ヘッド8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4とが配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となって記録ヘッド8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、記録ヘッド8内のIN流路80bとOUT流路80cとの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cとの間でインクを循環させることができる。
【0054】
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときの逆流を防止するための弁でもある。本実施形態の循環経路では、サブタンク151は記録ヘッド8よりも鉛直方向において上方に配置されている(
図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151と記録ヘッド8との水頭差によって、サブタンク151から記録ヘッド8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
【0055】
なお、供給弁V2も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151から記録ヘッド8へのインクの供給を防止するための弁としても機能する。
【0056】
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151の空気室(インクが収容されていない空間)とを接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は、供給流路C2における記録ヘッド8の上流側であり、かつ、供給弁V2より下流側に接続される。ヘッド交換流路C5の他端は、サブタンク151の上方に接続してサブタンク151内部の空気室と連通する。ヘッド交換流路C5は、記録ヘッド8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中の記録ヘッド8からインクを引き抜くときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録ヘッド8にインクを充填するとき、および、記録ヘッド8からインクを回収するとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。
【0057】
次に、記録ヘッド8内の流路構成について説明する。供給流路C2より記録ヘッド8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、第1の負圧制御ユニット81と、第2の負圧制御ユニット82とに供給される。第1の負圧制御ユニット81は、例えば、-90mmAqのように、弱い負圧(大気圧との圧力差が小さい負圧)に制御圧力が設定されている。第2の負圧制御ユニット82は、例えば、-180mmAqのように、強い負圧(大気圧との圧力差が大きい負圧)に制御圧力が設定されている。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82とにおける圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
【0058】
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)、および第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。個別供給流路と個別回収流路との経路中に、各吐出口に連通し、インクが充填される圧力室が設けられており、記録を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れが生じる。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって消費されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
【0059】
(記録素子基板80aの構成)
図8(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、
図8(b)は、
図8(a)の断面線VIIIb-VIIIbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室85と、インクを吐出する吐出口86と、が設けられている。圧力室85において、吐出口86と対向する位置には記録素子84が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路88と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路89とが吐出口86毎に複数形成されている。
【0060】
より詳細には、記録素子基板80aはその内部に、圧電素子である記録素子84と、インクが充填される圧力室85と、圧力室85に連通する吐出口86と、記録素子84と接合された振動板87とを備えている。記録素子84は、駆動信号Vinが供給されることで駆動し、この駆動によって、圧力室85内のインクを吐出口86から吐出させる。
【0061】
圧力室85は、吐出口86が形成されたノズルプレート90と、振動板87と、流路壁91、92とにより区画される空間となっている。圧力室85は、供給口93を介して第1リザーバ94と連通している。第1リザーバ94は、個別供給流路88、共通供給流路80bおよび供給流路C2を介して、記録素子基板80aに対応するサブタンク151と連通している。また、圧力室85は、排出口95を介して第2リザーバ96と連通しており、第2リザーバ96は、個別回収流路89、共通回収流路80cおよび回収流路C4を介して、対応するサブタンク151と連通している。
【0062】
上述した構成により、記録素子基板80aでは、インクが、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出する流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路88→第1リザーバ94→圧力室85→第2リザーバ96→個別回収流路89→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子84によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口86から吐出されることによって記録ヘッド8の外部へ排出される。一方、吐出口86から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
【0063】
以上の構成のもと、記録動作や後述する回復動作などを行うとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1とヘッド交換弁V5とを閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を開き、供給ポンプP1および回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→記録ヘッド8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2から記録ヘッド8に流入するインクの流量が調整される。
【0064】
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は、供給ポンプP1および回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を閉じる。これにより、記録ヘッド8内のインクの流れは止まり、サブタンク151と記録ヘッド8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
【0065】
記録ヘッド8からインクを回収するとき、インク供給制御部209は、大気開放弁V0、タンク供給弁V1、供給弁V2、および回収弁V4を閉じ、ヘッド交換弁V5を開き、減圧ポンプP0を駆動する。これにより、サブタンク151内が負圧状態になり、記録ヘッド8内のインクは、ヘッド交換流路C5を経由してサブタンク151へ回収される。このように、ヘッド交換弁V5は、通常の記録動作や待機時には閉じられており、記録ヘッド8からインクを回収する際に開放される弁である。なお、記録ヘッド8への充填においてヘッド交換流路C5にインクを充填する際もヘッド交換弁V5は開放される。なお、本実施形態では、上記のように、インク供給制御部209および各種ポンプなどが、記録ヘッド8を含む循環経路においてインクの循環を実行可能な循環部として機能している。
【0066】
本実施形態では、記録素子84として、電位変化に応じて変位する圧電素子を採用する。なお、圧電素子としては、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型などを採用してもよい。具体的には、記録素子84は、
図8(b)のように、第1電極Z1と、第2電極Z2と、第1電極Z1および第2電極Z2の間に設けられた圧電体Zmとを備えている。そして、第2電極Z2が電位VBSに設定された給電線(不図示)に電気的に接続され、第1電極Z1に駆動信号Vinが供給されることで、第1電極Z1および第2電極Z2間に電圧が印加される。そして、印加された電圧に応じて、記録素子84が+Z方向または-Z方向に変位し、その結果、記録素子84が振動する。なお、記録素子84の制御は、プリントコントローラ202によりヘッドI/F206を介して実行される。
【0067】
流路壁91、92により形成される開口部には、振動板87が設置されている。振動板87には、第2電極Z2が接合されている。このため、記録素子84が駆動信号Vinにより駆動されて振動すると、振動板87も振動する。そして、振動板87の振動により圧力室85の容積(圧力室85内の圧力)が変化し、圧力室85内に充填されたインクが吐出口86より吐出される。インクの吐出により圧力室85内のインクが減少した場合、第1リザーバ94から圧力室85へインクが供給される。また、第1リザーバ94へは、サブタンク151から供給流路C2、共通供給流路80bおよび個別供給流路88を介してインクが供給される。以下の説明では、記録素子84、当該記録素子84が配置される圧力室85、当該記録素子84と対向する位置に形成された吐出口86、および当該記録素子84に接合された振動板87を含む領域を総称して吐出部97と称する。
【0068】
図9(a)~(c)は、吐出部97におけるインクの吐出動作を説明する図である。インクの吐出動作では、まず、プリントコントローラ202は、例えば、
図9(a)に示す状態において、記録素子84に駆動信号Vinとして供給される駆動波形信号の電位を変化させることで、当該記録素子84が+Z方向に変位するような歪を発生させる。この記録素子84の+Z方向への変位によって、振動板87は+Z方向に撓む(
図9(b)参照)。振動板87を+Z方向に撓ませた状態では、振動板87を+Z方向に撓ませる前の状態、つまり、
図9(a)に示す状態と比較して、吐出部97における圧力室85の容積は拡大する。
【0069】
次に、プリントコントローラ202は、記録素子84に駆動信号Vinとして供給される駆動波形信号の電位を変化させることで、当該記録素子84が-Z方向に変位するような歪を発生させる。この記録素子84の-Z方向への変位によって、振動板87は-Z方向に撓む(
図9(c)参照)。このように、振動板87を-Z方向に撓ませることで、振動板87を+Z方向に撓ませた状態、つまり、
図9(b)に示す状態から、圧力室85の容積が急激に収縮し、圧力室85を満たすインクの一部が、吐出口86からインク滴として吐出される。
【0070】
(吐出部におけるインクの吐出状態の判定)
吐出部97では、インクを吐出する際には、記録素子84に駆動信号Vinが供給されて、記録素子84および振動板87が+Z方向と-Z方向とに変位する。このため、インクの吐出に際して吐出部97に振動が発生するとともに、インクの吐出後にも、インクの吐出時に生じた振動に起因する振動が残留する。以下、吐出部97においてインク吐出後に残留する振動を、「残留振動」と適宜に称する。
【0071】
<吐出部の吐出状態を検知するための構成>
図2に示すように、記録ヘッド8には、記録素子基板80aにおける各吐出部97のインクの吐出によって生じる残留振動に基づいて残留振動信号を生成する検出回路902が設けられている。また、記録ヘッド8には、画像データに基づいてヘッドI/F206を介してプリントコントローラ202から出力される駆動信号Vinを各吐出部97に供給するか否かを切り替える供給回路904が設けられている。また、プリントエンジンユニット200には、検出回路902で生成された残留振動信号に基づいて、吐出部97におけるインクの吐出状態を判定可能な判定回路900が設けられている。
【0072】
供給回路904は、記録素子84の駆動による吐出部97からのインクの吐出によって生じた残留振動に基づく検出信号を検出する。また、供給回路904は、検出信号を検出回路902に供給するか否かを切り替える機能を備えている。検出回路902は、供給回路904から供給された検出信号に基づいて、残留振動信号を生成する。検出回路902は、判定回路900に接続されており、生成した残留振動信号は判定回路900に出力される。判定回路900は、残留振動信号に基づいて、吐出部97におけるインクの吐出状態を判定する。そして、判定回路900は、判定結果を示す判定情報を生成し、生成した判定情報をプリントコントローラ202に出力する。プリントコントローラ202では、この判定情報に基づいて、記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を判定することとなる。本実施形態では、判定回路900、検出回路902、および供給回路904などが、吐出部97におけるインクの吐出状態を判定する判定部として機能している。
【0073】
<吐出部の吐出状態を判定する判定処理>
記録装置1では、検出回路902で生成された残留振動信号に基づいて、判定回路900において吐出部97における吐出状態を判定する判定処理を行う。具体的には、この判定処理では、各吐出部97におけるインクの吐出状態が良好(正常)であるか否か、つまり、各吐出部97において吐出異常が生じていないか否かを判定することとなる。本願明細書では、「吐出異常」とは、吐出部97におけるインクの吐出状態が異常となること、つまり、吐出部97からインクを正確に吐出することのできない状態の総称とする。
【0074】
より詳細には、「吐出異常」とは、駆動信号Vinにより記録素子84を駆動して吐出部97からインクを吐出させようとしても、駆動信号Vinが規定する態様によりインクを吐出できない状態である。ここで、駆動信号Vinが規定するインクの態様とは、吐出口86から駆動信号Vinの波形により規定される量のインクを吐出するとともに、当該波形により規定される吐出速度でインクを吐出することである。即ち、駆動信号Vinが規定するインクの態様によりインクを吐出できない状態とは、吐出部97からインクを吐出できない状態のほかに、例えば、駆動信号Vinにより規定されるインクの吐出量とは異なる量のインクが吐出部97から吐出される状態などを含む。また、例えば、駆動信号Vinにより規定されるインクの吐出速度と異なる速度でインクが吐出されるために記録媒体上の所望の着弾位置にインクを着弾させることができない状態などを含む。
【0075】
図10は、判定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
図10のフローチャートで示される一連の処理は、プリントコントローラ202がROM203に記憶されているプログラムコードをRAM204に展開し実行することにより行われる。あるいはまた、
図7におけるステップの一部または全部の機能をAICまたは電子回路などのハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。以下、本願明細書におけるフローチャートにおいて同様である。
【0076】
判定処理が開始されると、まず、各記録素子基板80aに設けられた複数の吐出部97の中から残留振動を検出する対象とする、つまり、判定の対象とする対象吐出部を選択する(S1002)。次に、対象吐出部を駆動させて、当該対象吐出部に残留振動を生じさせる(S1004)。即ち、S1004では、対象吐出部における記録素子84を駆動することで、当該対象吐出部における吐出口86からインクを吐出させる。この記録素子84の駆動によって生じた残留振動を供給回路904が検出し、供給回路904から検出回路902へ残留振動に基づく検出信号を出力する。その後、検出回路902が、入力された検出信号から残留振動信号を生成する(S1006)。生成された残留振動信号は、検出回路902から判定回路900に出力される。
【0077】
そして、判定回路900が、残留振動信号に基づいて、対象吐出部の吐出状態を判定し(S1008)、当該判定の結果、つまり、対象吐出部の吐出状態を示す判定情報を生成する(S1010)。なお、S1008における対象吐出部の吐出状態の判定方法については後述する。また、生成した判定情報については、判定の対象となった吐出部97を特定する情報と関連付けられて、例えば、ROM203に記憶される。その後、すべての吐出部97について判定情報を生成したか否かを判定し(S1012)、すべての吐出部97について判定情報を生成したと判定されると、この判定処理を終了する。また、S1012で、すべての吐出部97について判定情報を生成していないと判定されると、まだ判定していない吐出部97を対象吐出部に選択し(S1014)、S1004に戻る。
【0078】
<吐出部における吐出状態の判定方法>
次に、判定回路900による吐出部における吐出異常の判定方法について説明する。一般的に、吐出部97に生じる残留振動は、吐出口86の形状、圧力室85に充填されたインクの重量、圧力室85に充填されたインクの粘度などにより決定される固有振動周波数を有する。そして、吐出異常の原因に応じて、残留振動の周波数または残留振動の振幅は、通常、下記のようになる。
【0079】
圧力室85に気泡が混入しているために吐出部97で吐出異常が生じている場合には、圧力室85に気泡が混入していない場合と比較して、残留振動の周波数は高くなる。また、吐出口86近傍に紙粉などの異物が付着しているために吐出部97で吐出異常が生じている場合には、異物が付着していない場合と比較して、残留振動の周波数は低くなる。また、圧力室85に充填されたインクが増粘しているために吐出部97で吐出異常が生じている場合には、インクが増粘していない場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。また、また、圧力室85にインクが充填されていないために吐出部97で吐出異常が生じている場合には、残留振動の振幅が小さくなる。
【0080】
検出回路902において生成される残留振幅信号は、吐出状態の判定の対象となる対象吐出部において生じている残留振動に応じた波形を示す。具体的には、残留振動信号は、対象吐出部において生じる残留振動の周波数に応じた周波数を示し、対象吐出部において生じる残留振動の振幅に応じた振幅を示す。このため、判定回路900は、残留振動信号に基づいて、対象吐出部におけるインクの吐出状態を判定することができる。なお、以下の説明では、「対象吐出部におけるインクの吐出状態の判定」を、「対象吐出部への判定」とも称する。
【0081】
判定回路900は、対象吐出部への判定において、残留振動信号の1周期の時間長NTcを測定し、当該測定の結果を示す周期情報Info-Tを生成する。また、判定回路900は、対象吐出部への判定において、残留振動信号が所定の振幅を有しているか否かを示す振幅情報Info-Sを生成する。具体的には、判定回路900は、残留振動信号の1周期の時間長NTcを測定している期間において、残留振動信号の電位が、閾値電位Vth-O以上となり、かつ、閾値電位Vth-U以下となるか否かを判定する。なお、閾値電位Vth-Oは、残留振動信号の振幅中心レベルの電位Vth-Cよりも高電位であり、閾値電位Vth-Uは、電位Vth-Cよりも低電位である。そして、当該判定の結果が肯定の場合には、振幅情報Info-Sに、残留振動信号が所定の振幅を有していること示す値として、例えば、「1」を設定する。一方、当該判定の結果が否定の場合には、振幅情報Info-Sに、振幅振動信号が所定の振幅を有していないことを示す値として、例えば、「0」を設定する。そして、判定回路900は、周期情報Info-Tおよび振幅情報Info-Sに基づいて、対象吐出部におけるインクの吐出状態の判定結果を示す判定情報Sttを生成する。
【0082】
図11は、周期情報Info-Tおよび振幅情報Info-Sと、判定情報Stt
との対応関係が示された表である。本実施形態では、振幅情報Info-Sと周期情報Info-Tとに基づいて、
図11のように5つの判定情報Sttを生成する。具体的には、判定回路900は、周期情報Info-Tの示す時間長NTcを、閾値Tth1、閾値Tth2、閾値Tth3の一部または全部と比較することで、対象吐出部における吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定情報Sttを生成する。
【0083】
閾値Tth1は、対象吐出部の吐出状態が良好であるときの残留振動の1周期の時間長と、圧力室85に気泡が混入しているときの残留振動の1周期の時間長との境界となる値である。閾値Tth2は、対象吐出部の吐出口86付近に異物が付着しているときの残留振動の1周期の時間長と、圧力室85におけるインクが増粘しているときの残留振動の1周期の時間長との境界となる値である。閾値Tth3は、対象吐出部の吐出口86付近に異物が付着しているときの残留振動の1周期の時間長と、圧力室85におけるインクが増粘しているときの残留振動の1周期の時間長との境界となる値である。なお、各閾値の関係は、「Tth1<Tth2<Tth3」を満たす。
【0084】
そして、振幅情報Info-Sが「1」であり、かつ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth1≦NTc≦Tth2」を満たす場合には、判定回路900は、対象吐出部におけるインクの吐出状態は良好であると判定する。そして、判定回路900は、判定情報Sttとして、対象吐出部の吐出状態が良好であることを示す値、例えば、「1」を設定する。
【0085】
また、振幅情報Info-Sが「1」であり、かつ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「NTc<Tth1」を満たす場合には、判定回路900は、対象吐出部において気泡による吐出異常が生じていると判定する。そして、判定回路900は、判定情報Sttとして、対象吐出部において気泡による吐出異常が発生していることを示す値、例えば、「2」を設定する。
【0086】
また、振幅情報Info-Sが「1」であり、かつ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth2<NTc≦Tth3」を満たす場合には、判定回路900は、対象吐出部において吐出口86付近の異物の付着による吐出異常が生じていると判定する。そして、判定回路900は、判定情報Sttとして、対象吐出部において吐出口86付近の異物の付着による吐出異常が生じていることを示す値、例えば、「3」を設定する。
【0087】
また、振幅情報Info-Sが「1」であり、かつ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth3<NTc」を満たす場合には、判定回路900は、対象吐出部においてインクの増粘による吐出異常が生じていると判定する。そして、判定回路900は、判定情報Sttとして、対象吐出部においてインクの増粘による吐出異常が発生していることを示す値、例えば、「4」を設定する。
【0088】
また、振幅情報Info-Sが「0」の場合には、判定回路900は、対象吐出部において吐出異常が生じていると判定する。そして、判定回路900は、判定情報Sttとして、対象吐出部において吐出異常が発生していることを示す値、例えば、「5」を設定する。
【0089】
なお、本実施形態では、判定情報Sttを、対象吐出部における吐出状態をその原因に応じて「1」から「5」までの5値の情報としたが、これに限定されるものではない。即ち、判定情報Sttは、時間長NTcが「Tth1≦NTc≦Tth2」を満たすか否かを示す2値の情報であってもよい。つまり、判定情報Sttは、少なくとも対象吐出部におけるインクの吐出状態が良好であるか否かを示す情報を含めばよく、その原因に応じて、3値、4値、あるいは6値以上の情報としてもよい。なお、判定回路900で生成された判定情報Sttは、当該判定情報Sttに対応する対象吐出部を特定する情報と関連付けて、例えば、RAM204などの記憶領域に記憶される。
【0090】
(記録ヘッドにおけるインクの吐出状態の判定)
本実施形態では、記録装置1は、記録処理中にインクを循環させることで、例えば、使用頻度の少ない吐出口近傍のインクの増粘を防止するようにしている。また、記録装置1は、上記ワイピング処理以外に、圧力室85を含む循環経路におけるインクの循環や、吐出口86からのインクの吐出を伴う吐出部97における吐出状態の判定を行うことで、吐出部97において生じたインクの吐出異常を解消するようにしている。
【0091】
記録装置1では、印刷の開始を指示する印刷指示が入力されると、第1記録処理と、第2記録処理とのいずれかが実行される。第1記録処理は、記録動作のみを行う。第2記録処理は、記録動作とともに、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づいて吐出状態を良好に維持、回復するための回復動作を行う。また、記録装置1では、記録動作開始後に所定のタイミングで第3記録処理が実行される。
【0092】
具体的には、記録装置1に対して、ホスト装置400からの印刷ジョブの入力、操作パネル104からの印刷指示の入力があると、メインコントローラ101はプリントコントローラ202に対して第1記録処理または第2記録処理を実行するように指示する。そして、プリントコントローラ202は、第1記録処理または第2記録処理を実行する。
【0093】
メインコントローラ101では、印刷指示が入力されると、例えば、入力された印刷指示の内容や前回の記録処理からの経過時間などに基づいて、第1記録処理または第2記録処理を選択する。具体的には、ユーザから回復動作を実行しない第1記録処理での印刷指示が入力された場合や、前回の記録処理からの経過時間が、予め設定された時間を超過していない場合などには、メインコントローラ101は第1記録処理を選択する。また、ユーザから記録ヘッド8のインクの吐出状態に応じて回復動作を行う第2記録処理での印刷指示が入力された場合や、前回の記録処理からの経過時間が予め設定された時間を超過している場合などには、メインコントローラ101は第2記録処理を選択する。なお、第2記録処理が選択される条件については、上記した条件に限定されるものではなく、適宜設定可能としてもよい。
【0094】
また、メインコントローラ101は、記録動作開始後に、記録枚数、記録量、あるいは記録時間などに基づく所定のタイミングとなったと判定すると、プリントコントローラ202に対して第3記録処理を実行するように指示する。そして、プリントコントローラ202は第3記録処理を実行する。なお、記録枚数に基づく所定のタイミングは、例えば、センサによる通紙枚数に基づいて判定される。記録量に基づく所定のタイミングは、例えば、記録ドット数に基づいて判定される。記録時間に基づく所定のタイミングは、例えば、記録動作を開始あるいは再開してからの経過時間に基づいて判定される。
【0095】
<第1記録処理>
図12(a)は、第1記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。第1記録処理が開始されると、まず、インクの循環を開始する(S1202)。S1202では、プリントコントローラ202が、インク供給制御部209とヘッドI/F206とを介して、各インクについて、循環経路におけるインクの循環を実行する。次に、記録媒体への記録を行う記録動作を実行する(S1204)。S1204では、プリントコントローラ202が、ヘッドI/F206、搬送制御部207、およびヘッドキャリッジ制御部208を制御して、記録媒体を搬送するとともに当該記録媒体に対して記録する記録動作を実行する。その後、記録動作が終了したか否かを判定し(S1206)、記録動作が終了したと判定されると、インクの循環を停止して(S1208)、第1記録処理を終了する。即ち、S1208では、プリントコントローラ202が、インク供給制御部209とヘッドI/F206とを介して、各インクについて、循環経路におけるインクの循環を停止する。
【0096】
<第2記録処理>
図12(b)は、第2記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。この第2記録処理では、吐出部97の吐出状態に基づいて、記録ヘッド8全体のインクの吐出状態を判定した後に、記録動作を実行することとなる。なお、吐出部97の吐出状態を判定する際、インクの循環動作を実行すると、吐出口86近傍に循環流が生じるなどして、吐出部97における残留振動の検出精度にばらつきが生じる。このため、第2記録処理では、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態を判定する際にインクを循環しない。即ち、本実施形態では、プリントコントローラ202が、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態の判定と、インクの循環と、を並行して実行させないように制御する制御部として機能している。
【0097】
第2記録処理が開始されると、まず、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好か否か判定する(S1210)。即ち、S1210では、プリントコントローラ202が、判定処理を実行して、各吐出部97の吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づいて、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好か否かを判定する。なお、各吐出部97の吐出状態に基づく記録ヘッド8のインクの吐出状態の良否の判定の詳細については後述するが、基本的には次のようになる。例えば、吐出異常と判定された吐出部97の数が、所定条件により定められている第1の数以下である場合には、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8における吐出状態が良好であると判定する。また、吐出異常と判定された吐出部97の数が、上記第1の数より多い場合には、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8における吐出状態が良好でない、つまり、記録ヘッド8に吐出異常が生じていると判定する。
【0098】
ところで、インクジェット方式により記録する記録装置では、通常、吐出異常の吐出部が検出されると、当該吐出部から吐出されるインクを、当該吐出部とは別の吐出部から吐出されるインクによって補完する補完処理が実行される。従って、吐出異常が生じた吐出部97の数が、例えば、上記補完処理を実行することで、許容範囲内で記録画像の品質を低下させない数であれば、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態は良好であると判定される。一方、吐出異常が生じた吐出部97の数が、例えば、上記補完処理を実行しても、許容範囲を超えて記録画像の品質を低下させる数であれば、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好でないと判定される。
【0099】
S1210において、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好でないと判定されると、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行し(S1212)、後述するS1214に進む。なお、S1212の後に、S1210に戻り、再度記録ヘッド8のインクの吐出状態の良否を判定するようにしてもよい。また、S1210において、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好であると判定されると、S1214に進み、インクの循環を開始し、記録動作を実行する(S1216)。その後、記録動作が終了したか否かを判定し(S1218)、記録動作が終了したと判定されると、インクの循環を停止して(S1220)、第2記録処理を終了する。なお、S1214からS1220までの具体的な処理内容については、上記S1202からS1208までの処理と同じであるため説明を省略する。
【0100】
<第3記録処理>
図13は、第3記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。この第3記録処理では、記録動作中の所定のタイミングで、記録ヘッド8のインクの吐出状態を判定することとなる。第3記録処理では、第2記録処理と同様に、吐出部97における残留振動の検出精度のばらつきを生じさせないために、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態の判定と、インクの循環とを、並行して実行しない。
【0101】
第3記録処理が開始されると、記録媒体への記録を一時中断し(S1302)、インクの循環を停止する(S1304)。即ち、S1302では、プリントコントローラ202が、ヘッドI/F206、搬送制御部207、およびヘッドキャリッジ制御部208を制御して、記録媒体に対する記録を中断する。また、S1304の具体的な処理内容は、上記S1208と同じため説明を省略する。
【0102】
次に、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好であるか否かを判定する(S1306)。S1306において、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好でないと判定されると、ワイピング処理を実行し(S1308)、後述するS1310に進む。一方、S1306において、記録ヘッド8のインクの吐出状態が良好であると判定されると、S1310に進み、インクの循環を開始し、記録動作を再開する(S1312)。その後、記録動作が終了したか否かを判定し(S1314)、記録が終了したと判定されると、インクの循環を停止して(S1316)、第3記録処理を終了する。S1306からS1316までの具体的な処理内容については、上記S1210からS1220までの処理と同じであるため説明を省略する。なお、S1312では、S1302で一時中断したところから記録動作を再開することとなる。
【0103】
S1306において実行される記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好であるか否かの判定は、S1304においてインクの循環を停止し、一定時間が経過した後に実行されることとなる。一定時間としては、循環経路において循環していたインクの循環流が落ち着く、つまり、残留振動の検出精度に影響が生じなくなる時間とする。
【0104】
<記録ヘッドにおけるインクの吐出状態の判定方法>
上記した第1記録処理、第2記録処理、および第3記録処理において実行する、記録ヘッドの吐出状態を判定するための方法としては、例えば、下記の第1判定方法、第2判定方法、または第3判定方法の3つの判定方法を用いることができる。より詳細には、まず、判定処理により、各吐出部97におけるインクの吐出状態を判定し、次に、この判定の結果に基づいて、下記のいずれかの判定方法により、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態を判定することとなる。
【0105】
・第1判定方法
第1判定方法においては、プリントコントローラ202が、判定回路900から出力された判定情報に基づいて、吐出異常と判定された吐出部97の数を取得し、当該数に基づいて、記録ヘッド8全体のインクの吐出状態の良否を判定する。例えば、記録ヘッド8として、記録素子基板80aに対応するチップ15個を直列的に配列し、個々のチップに5色のインクを吐出可能な吐出部97がインク色ごとに1024個ずつ形成されている記録ヘッドを想定する。5色のインクは、ブラック(K1、K2)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(y)のインクとする。なお、上記したように吐出部97は、記録素子84、圧力室85、吐出口86などを含む。この記録ヘッド8における吐出部97の総数は、76800(5×1024×15)個となる。
【0106】
図14は、第1判定方法において用いられる、インク色ごとに設定された閾値を示す表であり、(a)は、吐出異常と判定された吐出部97の数が閾値となっており、(b)は、吐出異常と判定された吐出部97の割合が閾値となっている。なお、
図14(a)(b)で示す閾値については、あくまで一例であって、記録ヘッド8の構成などに応じて適宜に変更可能である。インクジェット方式により記録する記録装置では、通常、上記したように、吐出異常が生じた吐出部からのインクの吐出を補完する補完処理が実行される。従って、第1判定方法で用いられる閾値は、例えば、こうした補完処理を行うことで記録画像の品質に影響を生じさせなくすることが可能な上限の値となる。なお、下記第2判定方法および第3判定方法についても同様である。こうした閾値については、例えば、実験的に求められる。
【0107】
第1判定方法では、
図14(a)のように、インク色ごとに、吐出異常と判定された吐出部97の数を閾値として予め設定しておく。そして、記録ヘッド8におけるインクの吐出異常の判定では、インク色ごとに、判定処理で吐出異常と判定された吐出部97の数と、それに対応する閾値とを比較する。すべてのインク色について、吐出異常と判定された吐出部97の数が、対応する閾値以下であるときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好であると判定する。一方、少なくとも1つのインク色について、吐出異常と判定された吐出部97の数が、対応する閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好でないと判定する。
【0108】
また、閾値は、各インク色とは別に全インク色の合計に対しても設定する。各インク色では閾値以下であっても、吐出異常と判定された吐出部97の全インク色の合計数が当該閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好でないと判定する。一方、上記合計数が当該閾値以下のときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好であると判定する。
【0109】
なお、ブラックインクは、吐出部97に吐出異常が生じたときに、当該吐出異常に起因する記録画像の変化が目立ちやすい。このため、ブラックインクについては、対応する閾値を比較的小さく設定することが好ましい。また、イエローインクは、吐出部97に吐出異常が生じたときに、当該吐出異常に起因する記録画像の変化が目立ちにくい。このため、イエローインクについては、対応する閾値を比較的大きく設定することができる。
【0110】
また、第1判定方法では、
図14(b)のように、インク色ごとに、インク色ごとの全吐出部97の数に対する、吐出異常と判定された吐出部97の数の割合を閾値として予め設定するようにしてもよい。この場合、すべてのインク色について、吐出異常と判定された吐出部97の割合が、対応する閾値以下であるときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好であると判定する。一方、少なくとも1つのインク色について、吐出異常と判定された吐出部97の割合が、対応する閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好ではないと判定する。
【0111】
なお、この場合も、全インク色において吐出異常とされた吐出部97の合計数の、全吐出部97の数に対する割合も閾値として設定する。各インク色では閾値以下であっても、吐出異常と判定された吐出部97の全インク色の合計数の割合が、当該閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好でないと判定する。一方、上記割合が当該閾値以下のときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8にいてインクの吐出状態が良好であると判定する。
【0112】
・第2判定方法
第2判定方法においては、記録ヘッド8におけるチップ(記録素子基板80a)単位での、吐出異常と判定された吐出部97の数に基づいて、記録ヘッド8全体のインクの吐出状態の良否を判定する。上述した第1判定方法の場合と同様に、記録ヘッド8として、記録素子基板80aに対応するチップ15個を直列的に配列し、個々のチップに5色のインクを吐出可能な吐出部97がインク色ごとに1024個ずつ形成されている記録ヘッドを想定する。
【0113】
図15は、第2判定方法において用いられる、チップごとに設定された閾値を示す表であり、(a)は、吐出異常と判定された吐出部97の全インク色の合計数を閾値とし、(b)は、インク色ごとに、当該吐出部97の数を閾値としている。なお、
図15(a)(b)に示す閾値については、あくまで一例であって、記録ヘッド8の構成などに応じて適宜に変更可能である。
【0114】
第2判定方法では、
図15(a)のように、0番目から14番目の計15個のチップごとに、各インクそれぞれにおいて吐出異常と判定された吐出部97の合計数を閾値として予め設定しておく。そして、チップごとに、各インクそれぞれにおいて吐出異常と判定された吐出部97の合計数と、それに対応する閾値とを比較する。すべてのチップにおいて、吐出異常と判定された吐出部97の合計数が、対応する閾値以下であるときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好であると判定する。一方、少なくとも1つのチップにおいて、吐出異常と判定された吐出部97の合計数が、対応する閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好でないと判定する。
【0115】
なお、配列方向の中央部に位置するチップにおいて、吐出部97に吐出異常が生じたときには、当該吐出異常に起因する記録画像の変化が目立ちやすい。このため、配列方向の中央部に位置するチップでは、対応する閾値を比較的小さくすることが好ましい。また、配列方向の両端部側に位置するチップにおいて、吐出部97に吐出異常が生じたときには、当該吐出異常に起因する記録画像の変化が目立ちにくい。このため、配列方向の両端部側に位置するチップでは、対応する閾値を比較的大きく設定することができる。
【0116】
また、第2判定方法では、
図15(b)のように、各チップにおけるインク色ごとに、吐出異常と判定された吐出部97の数を閾値として設定するようにしてもよい。この場合、すべてのチップにおいて、インク色ごとに吐出異常と判定された吐出部97の数が、対応する閾値以下であるときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8においてインクの吐出状態が良好であると判定する。一方、少なくとも1つのチップにおいて、インク色ごとに吐出異常と判定された吐出部97の数が、対応する閾値を超えているときには、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好でないと判定する。
【0117】
この場合、第1判定方法のように、ブラックインクは対応する閾値を比較的小さくすることが好ましく、イエローインクは対応する閾値を比較的大きくすることができる。また、ブラックインクについては、配列方向の中央部に位置するチップでは、対応する閾値を比較的小さくすることが好ましく、配列方向の両端部側に位置するチップでは、対応する閾値を比較的大きくすることができる。
【0118】
なお、第2判定方法では、各チップにおける吐出異常と判定された吐出部97の数に基づいて判定するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、各チップにおいて、第1判定方法のように、インク色ごとの吐出部97の数、あるいは、吐出部97の総数に対する、吐出異常と判定された吐出部97の数の割合に基づいて判定するようにしてもよい。
【0119】
・第3判定方法
第3判定方法においては、予め吐出異常と判定されて記憶されている吐出部97を除外し、新たに吐出異常と判定された吐出部97の数に基づいて、記録ヘッド8全体のインクの吐出状態の良否を判定する。第3判定方法では、これまでの回復動作によって吐出異常を回復(解消)できない吐出部97を異常判定吐出部として記憶しておき、こうした異常判定吐出部を、記録ヘッド8全体のインクの吐出状態の良否を判定する対象から外す。これにより、回復動作によって記録を行うことができない時間を短縮することができる。異常判定吐出部は、例えば、コントローラユニット100のROM107、あるいは、プリントエンジンユニット200のROM203などに記憶される。
【0120】
図16は、第3判定方法の具体例を説明するための図である。
図16では、理解を容易にするために、インク色ごとの吐出部の数は、吐出口番号0から9の10個とする。また、インク色ごとの閾値は、インク色ごとの全吐出部97に対する、吐出異常と判定された吐出部97の数の割合として15%が設定されている。
【0121】
実行した判定処理によって、
図16に示すような判定結果が得られたとする。この判定結果では、ブラックインクK1を吐出する吐出部97に関して、吐出部番号「2」、「6」の2個の吐出部97が吐出異常と判定されている。なお、吐出部番号「2」については、異常判定吐出部として予め記憶されている。このため、この判定処理に基づく判定では、判定対象となる吐出部97の数は、全吐出部97の数10個から異常判定吐出部の数1個を減算した9個となる。また、吐出異常と判定された吐出部97の判定対象となる数は、実際に吐出異常と判定された吐出部97の数2個から異常判定吐出部の数1個を減算した1個となる。これにより、この判定処理によって吐出異常と判定された吐出部97の割合は11%となって、対応する閾値15%以下となる。この結果、ブラックインクK1を吐出する吐出部97については、インク吐出状態は良好と判定される。なお、シアンインクC、マゼンタインクM、およびイエローインクYをそれぞれ吐出する吐出部97についてもインクの吐出状態は良好と判定される。
【0122】
また、ブラックインクK2を吐出する吐出部97に関して、吐出部番号「4」が異常判定吐出部として記憶されているが、今回の判定処理では、吐出部番号「8」、「9」の2個の吐出部97が吐出異常と判定されている。このため、判定対象の吐出部97の数は9個となり、吐出異常と判定された吐出部97の判定対象となる数は2個となる。これにより、吐出異常と判定された吐出部97の割合は22%となって、対応する閾値15%を超える。この結果、ブラックインクK2を吐出する吐出部97については、インクの吐出状態が良好でないと判定される。
【0123】
こうして、インク色ごとに、インクの吐出状態の良否を判定し、
図16のような判定結果、即ち、少なくとも1つのインク色の吐出部97において、インクの吐出状態が良好でないと判定されると、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好でないと判定される。また、すべてのインク色の吐出部97において、インクの吐出状態が良好であると判定されると、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好であると判定される。なお、
図16では、各インク色における吐出部97のインクの吐出状態について、「結果判定」として、良好でないと判定されたときは「NG」、良好であると判定されたときは「OK」と示されている。
【0124】
以上において説明したように、第1実施形態による記録装置1では、インクの循環を停止した状態で、判定処理による吐出部97の吐出状態の判定結果に基づいて、記録ヘッド8のインクの吐出状態を判定するようにした。これにより、記録装置1では、検出精度を低下させることなく、吐出部97におけるインク吐出時の残留振動を検出することができるようになり、記録ヘッド8のインクの吐出状態を正確に判定することができるようになる。
【0125】
(第2実施形態)
次に、
図17を参照しながら、第2実施形態によるインクジェット記録装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一あるいは相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0126】
第2実施形態では、記録装置1において電源を入れた際に、記録ヘッド8において回復処理を実行するようにした点において、上記した第1実施形態と異なっている。つまり、第2実施形態では、記録装置1の電源がONとなると、吐出部97の吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づく回復動作を実行する回復処理を行う。具体的には、記録装置1に対して、ホスト装置400あるいは操作パネル104から記録装置1の電源をONとする入力があると、メインコントローラ101はプリントコントローラ202に対して回復処理を実行するように指示する。そして、プリントコントローラ202は、回復処理を実行する。なお、本実施形態による回復処理については、装置起動時のみに限定されるものではなく、例えば、装置起動後に一定時間以上、記録動作が実行されていない場合に実行されるようにしてもよい。このとき、インクが循環しているのであれば、インクの循環を停止した後に、この回復処理が実行されることとなる。
【0127】
図17は、第2実施形態による記録装置1で実行される回復処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。回復処理が開始されると、まず、吐出部97の吐出状態を判定して、記録ヘッド8において吐出異常と判定された吐出部97の数が第1の値を超えたか否かを判定する(S1702)。即ち、S1702では、
図10に示す判定処理を行い、この判定処理による判定の結果に基づいて、吐出異常と判定された吐出部97の数が第1の値を超えたか否かを判定する。第1の値としては、例えば、記録画像を高画質で記録する高画質モードなどにおいて、記録画像の品質が低下する可能性が生じる、吐出異常の吐出部97の数の下限値とする。
【0128】
S1702において、吐出異常と判定された吐出部97の数が第1の値を超えてないと判定されると、吐出部97の吐出状態の判定、つまり、判定処理を所定回数だけ実行し(S1704)、回復処理を終了する。ここで、吐出部97の吐出状態を判定する際には、吐出口86から記録に寄与しないインクの吐出である予備吐出を行っている。また、電源がOFFのときには、キャップユニット10などにキャップされていても吐出口86からインクの液体成分が蒸発して、吐出口86近傍におけるインクの濃度が上昇する。こうしたインク濃度が上昇した濃縮インクは、吐出部97において吐出異常を生じさせる原因となる。吐出口86内の濃縮インクは、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理などを行うことなく、インクの予備吐出やインクの循環などによって除去することが可能である。従って、所定回数としては、例えば、吐出口86内の濃縮インクの除去に効果のある、インクの予備吐出の回数とする。
【0129】
一方、S1702において、吐出異常と判定された吐出部97の数が第1の値を超えていると判定されると、吐出異常と判定された吐出部97の数が第2の値を超えたか否かを判定する(S1706)。第2の値としては、第1の値よりも大きく、例えば、記録画像を標準的な画質で記録する標準モードなどにおいて、記録画像の品質が低下する可能性が生じる、吐出異常の吐出部97の数の下限値とする。
【0130】
S1706において、吐出異常と判定された吐出部97の数が第2の値を超えていないと判定されると、インクの循環を開始する(S1708)。即ち、S1708では、プリントコントローラ202が、インク供給制御部209とヘッドI/F206とを介して、各インクに付いて、循環経路におけるインクの循環を実行する。また、プリントコントローラ202は、時間のカウントを開始する。その後、所定時間が経過したか否かを判定し(S1710)、所定時間が経過したと判定されると、インクの循環を停止し(S1712)、回復処理を終了する。即ち、S1710では、プリントコントローラ202が、カウントした時間が所定時間を経過したか否かを判定する。また、S1712では、プリントコントローラ202が、インク供給制御部209とヘッドI/F206とを介して、各インクについて、循環経路におけるインクの循環を停止する。
【0131】
ところで、吐出異常と判定された吐出部97の数が、第1の値よりも大きい第2の値であると判定されると、電源をOFFとしている間に、吐出口86からのインク中の液体成分の蒸発が進行し、インク濃度がより上昇していることが考えられる。ここで、吐出口86内のインク濃縮の進行は、基本的には拡散現象である。このため、インクの濃縮が進行すると、圧力室85内部のインクまで濃度が上昇してしまう。こうした場合には、インクの予備吐出よりも、インクの循環により圧力室85内の濃縮インクを循環系にあるインクと混ぜてその濃度を低減させることが有効である。従って、所定時間としては、例えば、圧力室85からの濃縮インクの除去に効果のある、インクの循環時間とする。
【0132】
また、S1706において、吐出異常と判定された吐出部97の数が第2の値を超えていると判定されると、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行して(S1714)、回復処理を終了する。即ち、吐出異常と判定された吐出部97の数が第2の値を超えていると判定されると、よりインクの濃縮が進行していることが考えられる。この場合、インクの循環では、多くの時間を要する虞や、吐出異常を解消することができない虞がある。このため、回復効果のより高い、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行することとなる。
【0133】
以上において説明したように、第2実施形態による記録装置1では、電源をONとしたタイミングで、吐出部97の吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づいて、異なる回復動作を実行するようにした。これにより、回復処理に要する時間を短縮することができるようになる。
【0134】
(第3実施形態)
次に、
図18を参照しながら、第3実施形態によるインクジェット記録装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一あるいは相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0135】
第3実施形態では、記録装置1において電源を入れた際に、記録ヘッド8において回復処理を実行するようにした点において、上記した第1実施形態と異なっている。また、第3実施形態では、回復処理において、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づいて回復動作を実行するようにした点において、上記した第2実施形態と異なっている。
【0136】
具体的には、記録装置1に対して、ホスト装置400あるいは操作パネル104から記録装置1の電源をONとする入力があると、メインコントローラ101はプリントコントローラ202に対して回復処理を実行するように指示する。そして、プリントコントローラ202は、回復処理を実行する。
【0137】
ここで、上記したように、記録装置1が起動していない期間が長いときには、吐出口86からインクの液体成分が蒸発して、吐出口86近傍におけるインクの濃度が上昇する。そして、濃度上昇した濃縮インクによって、吐出部97においてインクの吐出異常が生じる虞がある。本実施形態では、こうした濃縮インクによる吐出部97の吐出異常に対応するために、記録ヘッド8の吐出状態の判定回数に基づいて、回復処理として、判定処理、つまり、インクの予備吐出またはインクの循環を実行するようにした。なお、本実施形態による回復処理については、上記第2実施形態と同様に、装置起動時のみに限定されるものではなく、例えば、装置起動後に一定時間以上、記録動作が実行されていない場合に実行されるようにしてもよい。
【0138】
図18は、第3実施形態による記録装置1で実行される回復処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。回復処理が開始されると、まず、記録ヘッド8の吐出状態を判定した回数を表す変数nを「1」に設定し(S1802)、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好か否かを判定する(S1804)。S1804の具体的な処理内容については、上記S1210と同じであるため説明を省略する。
【0139】
S1804において、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好であると判定されると、回復処理を終了する。一方、S1804において、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好でないと判定されると、記録ヘッド8の吐出状態を判定した判定回数が、設定回数を超えたか否かを判定する(S1806)。本実施形態では、例えば、判定回数が、設定回数「10」を超えたか否かを判定する。即ち、この場合、S1806では、プリントコントローラ202が「n>10」を満たすか否かを判定することとなる。設定回数としては、例えば、吐出口86内の濃縮インクの除去に効果のある、インクの予備吐出の回数とする。
【0140】
S1806において、判定回数が設定回数を超えていない、つまり、「n>10」を満たしていないと判定されると、変数nをインクリメントし(S1808)、S1804に戻る。一方、S1806において、判定回数が設定回数を超えている、つまり、「n>10」を満たしていると判定されると、インクの循環を開始する(S1810)。その後、所定時間が経過したか否かを判定し(S1812)、所定時間が経過したと判定されると、インクの循環を停止し(S1814)、回復処理を終了する。S1810からS1814の具体的な処理内容については、上記S1708からS1712と同じであるため説明を省略する。なお、所定時間としては、例えば、記録ヘッド8の吐出状態の判定を設定回数行った後に実行して濃縮インクの除去に効果のある、インクの循環時間とする。
【0141】
以上において説明したように、第3実施形態による記録装置1では、電源をONとしたタイミングで、記録ヘッド8の吐出状態を判定し、当該判定の結果に基づいて、回復動作として、再度当該判定を行う、あるいは、インクの循環を行うようにした。これにより、上記第1実施形態による作用効果に加えて、電源をONとしたタイミングで、効率的に回復動作を実行することができるようになる。
【0142】
(他の実施形態)
なお、上記した実施形態は、以下の(1)乃至(9)に示すように変形してもよい。
【0143】
(1)上記第2実施形態では、吐出異常の吐出部97の数が示す値に基づいて、判定処理、インク循環、あるいはバキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理が実行されるようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、吐出異常の吐出部97の数の、吐出部97の総数に対する割合に基づいて、上記処理が実行されるようにしてもよい。この場合、閾値となる第1の値および第2の値についても、適当な割合を示す値となる。また、インク色ごと、チップごとなどの所定の単位で判定するようにしてもよい。例えば、インク色ごとの場合には、インク色ごとに吐出異常の吐出部97の数を取得し、すべてのインク色において、取得した数が第1の値以下の場合には、判定処理を所定回数だけ実行する。一方、少なくとも1つのインク色において、取得した数が第1の値を超えている場合には、当該数が、第2の値を超えているか否かを確認し、超えていない場合にはインクの循環を行い、超えている場合には上記ワイピング処理を行う。
【0144】
(2)上記第3実施形態では、判定回数を示す変数nが設定回数を超えると、設定時間だけインクの循環を実行するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、設定回数を超える判定回数に応じて、インクの循環時間を変更するようにしてもよい。あるいは、設定回数を超えていると判定されると、さらに、設定回数よりも多い所定の回数となったか否かを判定し、当該所定の回数となったと判定されると、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行するようにしてもよい。
【0145】
(3)上記第2実施形態では、吐出異常の吐出部97の数が第1の値以下となったときには、所定回数だけ判定処理を実行するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、第1の値以下を複数段階に分割し、各段階において異なる回数だけ判定処理を実行するようにしてもよい。具体的には、例えば、
図19のように、吐出異常の吐出部97の数「m」が、「0≦m<10」では判定回数を1回とし、「10≦m<30」では判定回数を3回とし、「30≦m<50」では判定回数を5回とする。また、上記第2実施形態では、吐出異常の吐出部97の数が第1の値より大きく、かつ、第2の値以下となったときには、所定時間だけインクの循環を実行するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、第1の値よりも大きく、かつ、第2の値以下を複数段階に分割し、各段階において異なる時間だけインクの循環を実行するようにしてもよい。具体的には、例えば、
図19のように、吐出異常の吐出部97の数「m」が、「50≦m<100」ではインクの循環時間を5秒とし、「100≦m<200」ではインクの循環時間を10秒とする。また、「200≦m<500」ではインクの循環時間を25秒とし、「500≦m<1000」ではインクの循環時間を50秒とする。そして、「1000≦m」のときには、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行することとなる。なお、上記した値については、あくまで一例であって、適宜に変更することができる。
【0146】
(4)上記実施形態では特に記載しなかったが、吐出部97におけるインクの吐出状態の判定で取得した判定情報に基づいて、回復動作を決定するようにしてもよい。具体的には、例えば、判定情報が「2」である場合には、インクの循環を実行する。また、判定情報が「3」である場合には、バキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行する。また、判定情報が「4」である場合には、吐出状態の判定またはインクの循環を実行する。判定情報が「5」である場合には、インクの循環を実行する。また、上記実施形態では特に記載しなかったが、吐出状態の判定、インクの循環、および上記ワイピング処理だけでなく公知の種々の回復動作を実行するようにしてもよいし、複数の回復動作を組み合わせて実行するようにしてもよい。
【0147】
(5)上記第3実施形態では、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態が良好か否かを判定し、当該判定の結果に基づいて、再度吐出状態の判定を行う、あるいは、インクの循環を行うようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、吐出部97のそれぞれに対して、回復動作を実行するようにしてもよい。具体的には、S1804では、判定対象とした吐出部97(対象吐出部)の吐出状態が良好か否かを判定し、吐出状態が良好でないと判定されると、S1806において、対象吐出部への判定回数が設定回数を超えたか否かを判定する。S1806で判定回数が設定回数を超えたと判定されると、S1810において、対象吐出部を含む循環流路においてインクの循環を開始することとなる。
【0148】
(6)上記実施形態では特に記載しなかったが、各循環経路が独立するなどして、隣接する吐出部でのインク循環による残留振動の検出精度に影響がない構成であれば、インクの循環と、吐出状態の判定とを並行して実行してもよい。あるいは、数個先で隣接する吐出部でのインク循環による残留振動の検出精度に影響がない構成であれば、当該影響が生じる可能性のある循環経路に対するインクの循環のみを停止するようにし、他の循環経路でのインクの循環を継続するようにしてもよい。即ち、この変形例では、吐出部における残留振動の検出精度に影響がない範囲で、隣接する吐出部において限定的にインクの循環を実行することとなる。
【0149】
(7)上記第1実施形態では、記録ヘッド8におけるインクの吐出状態の判定に基づいて、回復処理としてバキュームワイパユニット172を用いたワイピング処理を実行するようにしたが、これ限定されるものではない。即ち、回復処理としては、吐出部97の吐出状態の判定を実行するようにしてもよいし、ブレードワイパユニット171を用いたワイピング処理を実行してもよいし、インクの循環を実行するようにしてもよい。あるいは、上記判定、上記循環および上記ワイピング処理を組み合わせて実行するようにしてもよい。
【0150】
(8)本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0151】
(9)上記実施形態および上記した(1)乃至(8)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
8 記録ヘッド
84 記録素子(圧電素子)
202 プリントコントローラ
209 インク供給制御部
900 判定回路