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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G03G21/16 119
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019200133
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071699
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 将城
(72)【発明者】
【氏名】小関 祐二
(72)【発明者】
【氏名】村山 重雄
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078967(JP,A)
【文献】特開2010-031938(JP,A)
【文献】特開2004-195689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置において、
回転する感光体を備え、前記感光体にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部を支持するフレームとの一部を形成する第1の板金と第2の板金であって、前記画像形成部の一端側に配置された前記第1の板金と前記第2の板金と、を有し、
前記第1の板金は、前記画像形成部の前記一端側と前記第2の板金の間に配置され、
前記第1の板金は、凹部を有し、
前記第2の板金は、開口部を有し、
前記第1の板金及び前記第2の板金は、前記第1の板金及び前記第2の板金を固定する固定手段と、前記凹部と前記第2の板金との間に形成された空間に前記第2の板金の前記開口部から注入された接着剤と、で固定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、前記フレームに装着されて前記フレームを覆うカバーを有し、
記カバーは、前記開口部を覆うように装着されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の板金と前記第2の板金が固定されることにより、前記凹部と前記第2の板金の断面は、前記第1の板金、前記第2の板金それぞれの平面部と、前記第1の板金の前記平面部の両側に設けられた傾斜部と、で構成された台形形状を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
水平方向において、前記固定手段と前記凹部までの距離は、30mm以内であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記開口部は、前記凹部と対向する位置に設けられ、
前記第の板金は、前記開口部の鉛直下方に前記接着剤を注入するための注入受け部が設けられ、
前記凹部の前記平面部と、前記注入受け部の鉛直上方の端部と、の間隔は、前記凹部の前記平面部と、前記平面部と対向する前記第2の板金の部分と、の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の板金と前記第2の板金が固定されることにより、前記凹部の断面は、前記第2の板金の平面部と対向する対向部と、前記対向部の両側に設けられた傾斜部と、を有し、
前記対向部には、鉛直方向に複数の溝部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記平面部の鉛直下方の端部と、前記凹部の前記対向部と対向する前記第2の板金と、を繋ぐ傾斜面を有することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記固定手段により前記第1の板金と固定された前記第2の板金の鉛直上方の端部は、前記凹部の鉛直上方の端部よりも低い位置にあり、前記凹部から離れる方向に傾斜していることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記凹部は、円錐形状または角錐形状を有し、
前記第2の板金は、前記円錐形状または前記角錐形状の頂点に対向する位置に前記開口部である丸穴を有することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記固定手段は、導電性を有するビス、リベット、溶接のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記接着剤の粘度は、3000mPa・sから10000mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像形成装置のフレーム(枠体)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、記録材に画像形成を行う画像形成部や、記録材を搬送する搬送部を支持するフレームは、板金同士をビスによって締結する構成が広く用いられている。しかしながら、画像形成装置を構成するフレームの剛性が低いと、画像ゆがみや、カラー画像形成装置の場合にあっては色ずれ、といった様々な画質低下を引き起こしてしまう。このため、画像形成装置に必要なフレーム剛性を実現するために、ビスで締結する箇所を増加させたり、使用する板金の板厚を厚い構造にしたりすることで、フレーム剛性を改善する対応が図られている。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1、2では、溶接や接着剤によって複数の板金を結合した画像形成装置のフレーム構成が提案されている。これにより、安価で、かつ高い剛性により画質低下の生じない、印刷精度の良好な画像形成装置を提供することができる。しかしながら、例えば、特許文献1で提案されている溶接により接合されたフレーム構成の場合には、溶接を行うための溶接機や溶接作業時にフレームを保持するためのフレームサイズ相当の大きな保持工具等が必要となり、多額な設備投資が必要となる。そこで、近年注目を集めているのが、特許文献2で提案されている板金同士の接合に接着剤を用いた方式である。板金同士の接合に接着剤を用いる方式は、多額な設備投資を必要としない点や軽量化に優れている点から、板金フレームの接合方法として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-98780号公報
【文献】特開2003-66670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤により板金同士を接着して画像形成装置のフレームを製造する際には、接着剤を板金と板金の間に塗布するため、組み付け作業前に板金の組み付け面に接着剤を塗布し、その後にもう一方の板金との組み付けを行う。更に、接着剤が固化して、板金同士が完全に接着されるまでその組み付け状態を維持するように仮固定しておく必要がある。しかしながら、フレームを構成する板金は、複数の部品から構成されるため、接着剤を塗布するために塗布工具を取り置いておくといった煩雑な工程を何度も繰り返し行う必要があるそのため、組立て作業効率が著しく低下し、生産性の低下を招いていた。
【0006】
また、上述した接着剤を塗布する作業を行った後に、もう一方の板金への組み付けを行う作業までの時間がかかりすぎてしてしまうと、塗布した接着剤が固化してしまい、所望の接合強度を得ることができないといった課題も生じる。そのため、作業時間の厳格な管理が必要となる。更には、一方の板金に対して、他方の板金をほぼ隙間なく面方向にスライドさせながら組み付けを行うフレーム構成の場合には、接着面をこすり擦り合わせて組み付けが行われる。そのため、組み付けを行った際に、事前に塗布している接着剤をそぎ落としてしまって所望の接着強度を得られなかったり、組み付け作業で接着剤を移動させてしまい、その結果、接着が不要な部位に接着剤が付着してしまったりする課題が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、画像形成装置の枠体を接着剤によって簡単に効率よく接着することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0009】
画像形成装置において、
回転する感光体を備え、前記感光体にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部を支持するフレームとの一部を形成する第1の板金と第2の板金であって、前記画像形成部の一端側に配置された前記第1の板金と前記第2の板金と、を有し、
前記第1の板金は、前記画像形成部の前記一端側と前記第2の板金の間に配置され、
前記第1の板金は、凹部を有し、
前記第2の板金は、開口部を有し、
前記第1の板金及び前記第2の板金は、前記第1の板金及び前記第2の板金を固定する固定手段と、前記凹部と前記第2の板金との間に形成された空間に前記第2の板金の前記開口部から注入された接着剤と、で固定されることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置やオプション装置の枠体を接着剤によって簡単に効率よく接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の画像形成装置の構成を示す斜視図
図2】実施例の画像形成装置本体及びオプション給紙デッキの構成を示す断面図
図3】実施例の画像形成装置本体のフレーム構成を示す斜視図
図4】実施例の画像形成装置本体のフレーム組立てを説明する図
図5】実施例の画像形成装置本体のフレーム組立てを説明する図
図6】実施例の画像形成装置本体の接着部を説明する断面図
図7】実施例のオプション給紙デッキのフレーム構成を示す斜視図
図8】実施例のオプション給紙デッキのフレーム組立てを説明する図
図9】実施例のオプション給紙デッキのフレーム組立てを説明する図
図10】実施例のオプション給紙デッキの接着部を説明する断面図
図11】実施例のオプション給紙デッキの接着部近傍のフレーム構成を示す斜視図
図12】実施例のオプション給紙デッキの天板の組立てを説明する図
図13】実施例のオプション給紙デッキの天板の接着部を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例
【0013】
[画像形成装置]
図1を参照して、本発明が適用された電子写真方式の画像形成装置であるレーザビームプリンタ1の全体構成について説明する。図1は、レーザビームプリンタ1の装置全体の外観形状を示す斜視図であり、外装部材であるカバーを装着させた状態の外観形状を示している。レーザビームプリンタ1は、記録材であるシートに画像形成を行う画像形成装置本体である本体Aと、オプション装置であるオプション給紙デッキB(以下、給紙デッキBという)から構成されている。本体Aは、シートが積載された積載部である給紙カセット16(図2参照)を装置内部に有している。また、給紙デッキBは、2000枚の大容量のシートを給紙可能なオプション装置であり、装置上部に本体Aを載置して連結した構成となっている。給紙デッキBの底部には、キャスター120が4つ取り付けられており、本体Aと一体化した状態で、移動可能となっている。
【0014】
[レーザビームプリンタの構成]
本実施例の本体Aは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーにより形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写した後、シートSに中間転写ベルト上のトナー像を転写することで画像形成を行う。図2に示すように、本体Aは、シートSにトナー像を転写して画像形成を行う画像形成部110と、給紙カセット16に載置されたシートSを供給する給送ローラ17等を含むシート給送部と、シートSにトナー像を定着させる定着部20を備えている。
【0015】
画像形成部110は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーの色に応じたプロセスカートリッジ100を備えている。図2において、各色のプロセスカートリッジ100を構成する部材の符号の末尾には、トナーの色を示すY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)を付している。各色のプロセスカートリッジ100の構成は同一であり、以下では、特定の色の部材を指す場合を除き、符号末尾のY、M、C、Kの記載は省略する。プロセスカートリッジ100は、感光体である感光ドラム2、感光ドラム2の表面を一様な電位に帯電させる帯電ローラ3、感光ドラム2の表面に形成された静電潜像をトナーで現像し、トナー像を形成させる現像装置5を有している。また、プロセスカートリッジ100は、感光ドラム2の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレード6も有している。
【0016】
更に、画像形成部110は、感光ドラム2の表面を走査して、静電潜像を形成する露光部であるレーザスキャナユニット4と、各色のプロセスカートリッジ100の感光ドラム2に対向して設けられた一次転写ローラ7と、中間転写ユニット40を備えている。中間転写ユニット40は、中間転写ベルト8、二次転写ローラ11、二次転写対向ローラ9、テンションローラ10を有している。中間転写ベルト8は、二次転写対向ローラ9、テンションローラ10に張架された無端状のベルトである。中間転写ベルト8は、図中矢印方向(反時計回り方向)に回転し、一次転写ローラ7と感光ドラム2に挟持されることにより、感光ドラム2上に形成されたトナー像が転写される。
【0017】
一方、給紙デッキBは、2000枚の大容量のシートSが積載可能な給紙カセット116、給紙カセット116に積載されたシートSを給送する給送ローラ117、給送ローラ117により給送されたシートSを本体Aに搬送する搬送ローラ118を備えている。また、給紙デッキBは、上部に本体Aを載置して連結可能であり、底部にはキャスター120が取り付けられており、本体Aと一体化した状態で移動可能な構成となっている。
【0018】
[画像形成動作]
次に、シートSの搬送動作を含む画像形成動作について説明する。まず、図2のプリント基板51に実装された制御部(不図示)が、外部コンピュータ(不図示)からシートSへの画像形成を指示するプリントジョブ信号を受信すると、以下に説明する画像形成動作が開始される。給紙カセット16に積載収納されたシートSが、給送ローラ17、搬送ローラ18、レジストローラ19によって、二次転写ローラ11と二次転写対向ローラ9から構成される二次転写部に搬送される。
【0019】
一方、画像形成部110では、まず、帯電ローラ3に帯電電圧が印加されることで、感光ドラム2の表面が一様な電位に帯電される。続いて、レーザスキャナユニット4が、各色のプロセスカートリッジ100の感光ドラム2の表面に、外部コンピュータ(不図示)等から送信された画像データに応じたレーザ光Lを照射することにより、感光ドラム2の表面を露光する。レーザスキャナユニット4が感光ドラム2の表面を露光することで、感光ドラム2の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置5が有する現像ローラ12に現像電圧が印加されることにより、レーザスキャナユニット4により感光ドラム2の表面に形成された静電潜像に、各色のトナーが付着することで、静電潜像が現像される。これにより、感光ドラム2の表面に、トナー像が形成される。
【0020】
次に、各プロセスカートリッジ100の感光ドラム2の表面に形成されたトナー像は、感光ドラム2に対向する一次転写ローラ7に一次転写電圧が印加されることで、中間転写ベルト8に重畳して転写される。各色のトナー像が重畳して転写されることにより、中間転写ベルト8の表面に、フルカラーのトナー像が形成される。なお、中間転写ベルト8に転写されず、感光ドラム2の表面に残留したトナーは、クリーニングブレード6に掻き取られ、除去される。
【0021】
そして、中間転写ベルト8が図中矢印方向(反時計回り方向)に周回移動することで、転写されたトナー像が、二次転写部に送られる。二次転写部では、二次転写ローラ11に二次転写電圧が印加されることで、中間転写ベルト8上のトナー像が、給紙カセット16から搬送されたシートSに転写される。トナー像が転写されたシートSは、定着部20に搬送され、定着部20において加熱、加圧処理が施され、シートS上のトナー像がシートSに定着される。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ23により排出部24に排出される。
【0022】
続いて、給紙デッキBからのシートSの搬送動作の場合について説明する。ユーザが給紙デッキBからのシート給送を設定していると、制御部(不図示)はプリントジョブ信号を受信すると、給送ローラ117は、給紙デッキBの給紙カセット116からシートSを給送する。給送されたシートSは搬送ローラ118により本体Aへと搬送され、本体Aに搬送されたシートSは本体A内の搬送ローラ18やレジストローラ19によって、二次転写部へと搬送される。画像形成部110による画像形成動作は、上述した画像形成動作と同様であり、説明を省略する。
【0023】
[本体のフレーム構成とフレームの仮組立て]
次に、本体Aに配置された各種画像形成部材を支持するフレーム構成について説明する。図3は、本体Aのフレーム(枠体)構成を示す斜視図であり、図1に示すレーザビームプリンタ1の給紙デッキBの上部に載置された本体Aのカバーや、図2に示す本体A内部に設置される画像形成部110等の部材を外した状態のフレームを示している。本体Aのフレームは、3つのステー27、28、29と、3つのステーを支持する前側板25、後側板26から構成されている。図3に示すc1~c8ようにステー27、28と前側板25、後側板26とは、接着部c1~c8で接着剤により接着されている。より詳細には、接着部c1、c2は、ステー28と前側板25とを接着するために設けられ、接着部c3、c4は、ステー27と前側板25とを接着するために設けられている。一方、接着部c1、c2と対向する位置には、ステー28と後側板26とを接着するための接着部c5、c6が設けられ、接着部c3、c4と対向する位置には、ステー27と後側板26とを接着するための接着部c7、c8が設けられている。
【0024】
図4は、図3に示した本体Aのフレームの組み立て方を説明する分解組立図である。図4に示すように、本体Aのフレームは、中央の3つのステー27、28、29を前側板25と後側板26とで、前後から挟み込むように取付け、ステー27、28、29と前側板25、後側板26とを、前後方向からビス30により締結し、仮組立てが行われる。具体的には、組立てを行う際には、ステー27、28、29は、補助工具であるフレーム組立工具(不図示)にセットされ、フレーム組立工具に支持されている。そして、前側板25と後側板26を組み付ける際、前側板25と後側板26をフレーム組立工具にセットされたステー27、28、29と位置決めをした状態で、板金を固定する固定手段であるビス30による締結(ビス留めともいう)を行う。これにより、前側板25と後側板26とを、ステー27、28、29に対して、高精度に組み付けることができる。なお、ビス締めが終了すると、ステー27、28、29を支持していたフレーム組立工具は取り外される。そして、ビス30によって締結され、仮組み立てされたフレームにおいて、ステー27、28と前側板25、後側板26との間に接着剤が注入され、固化させられることで接着部c1~c8が形成される。これにより、ステー27、28と前側板25、後側板26が強固に接合され、フレームの組み立てが終了する。
【0025】
ここで、本発明の特徴である接着部c1~c8について、接着部c1、c2を取り上げ、より詳細に説明する。図5は、図3に示すエリアCの周辺を拡大し、本体Aの組立工程(図5(a)、(b))、接着剤を注入塗布する工程(図5(c))を説明する図である。図5(a)は、前述したビス30による本体Aのフレームの仮組立てを行う前のステー28と前側板25の状態を示した図である。ステー28(第1の板金)の接着部c1、c2に対応する箇所には、前側板25(第2の板金)から離れる方向に凹んだ(突出した)凹部が形成されている。つまり、ステー28には、ビス締結された際に前側板25と接する面に、凹部31が形成されている。この凹部31により、鉛直方向と直交する水平方向におけるステー28と前側板25の断面は、対向するステー28、前側板25それぞれの平面部と、ステー28の平面部の両側に設けられた傾斜部32と、で構成された台形形状を有している(図6(c))。傾斜部32は、水平方向における断面において、ステー28(凹部31)の平面部の端部と、ステー28と接する前側板25の平面とを繋げるように構成されている。なお、凹部31は、ステー28の前側板25と接する面から約0.3mm程度の凹量で、半抜き絞り加工によって形成されている。このようにして、ビス30によりステー27が前側板25と締結される仮組み立てが行われると、ステー27に設けられた凹部と前側板25とにより、接着剤が注入される空間が形成される。
【0026】
なお本構成ではさらに、このステー27に設けられた凹部と前側板25で囲まれた空間に接着剤を注入するために、ステー27、28に設けられた凹部に対向する前側板25の箇所には、前側板25を貫通した開口部が設けられている。加えて、前側板25には、開口部33の鉛直下方に、受け口形状の注入受け部35が設けられている。注入受け部35は、板金の絞り加工によって形成されている。
【0027】
図5(b)は、本体Aのフレームを仮組み立てするために、前側板25とステー28の位置決めを行い、ドライバのビット36に取り付けたビス30によって締結する直前の状態を示している図である。前側板25に設けられたビス穴34a、ステー28に設けられたビス穴34bは、前側板25とステー28とをビス30により締結する際にビス30が通る(貫通する)ビス穴である。図5(b)に示す状態から、ビス30をビス穴34a、34bに通して締結することにより、前側板25とステー28とが仮組み立てされる。これにより、上述した、前側板25の平面と、ステー28の凹部31とにより形成された(囲まれた)空間が形成される。
【0028】
同様に、ステー27の接着部c3、c4に対応する箇所にも、前側板25から離れる方向に凹んだ凹部が形成されている。これにより、ビス30によりステー28が前側板25と締結される仮組み立てが行われると、ステー28に設けられた凹部と前側板25とにより、接着剤が注入される空間が形成される。そして本構成ではさらに、このステー28に設けられた凹部と前側板25で囲まれた空間に接着剤を注入するために、ステー28に設けられた凹部に対向する前側板25の箇所には、開口部が設けられている。
【0029】
この他、図示されていないが、ステー28の接着部c5、c6(図3)に対応する箇所には、後側板26から離れる方向に凹んだ凹部が形成されている。同様に、ステー28の接着部c7、c8に対応する箇所にも、後側板26から離れる方向に凹んだ凹部が形成されている。そして、ビス30によりステー28が後側板26と締結される仮組み立てが行われると、ステー28に設けられた凹部と後側板26とにより、接着剤が注入される空間が形成される。同様にビス30によりステー27が後側板26と締結される仮組み立てが行われると、ステー27に設けられた凹部と後側板26とにより、接着剤が注入される空間が形成される。そして本構成ではさらに、このステー28に設けられた凹部と後側板26で囲まれた空間に接着剤を注入するために、ステー27、28に設けられた凹部に対向する後側板26の箇所には、開口部が設けられている。
【0030】
[ステーと前側板、後側板との接着]
次に、ビス30による仮組立てを行った本体Aのフレームを構成するステー27、28と前側板25、後側板26とを接着するために、上述した接着部に接着剤を注入塗布する工程について説明する。
【0031】
図5(c)は、仮組み立てされた本体Aのフレームに形成された前側板25と凹部31の間の空間に前側板25の開口部33から接着剤38を接着剤塗布器37によって注入し、接着部を形成する様子を示している図である。本実施例では、接着剤38は、2液性のアクリル系接着剤を用いている。所定量の接着剤38が、接着剤塗布器37を用いて開口部33より凹部31に注入される。1ヶ所あたりの接着剤38の注入に要する作業時間は数秒程度であり、比較的短時間の容易な作業となっている。なお、図5(c)の注入受け部35の下側の破線のハッチング部分は、注入された接着剤38を示している。
【0032】
開口部33の鉛直方向における開口幅L2(開口部33の鉛直上方の端部から注入受け部35の鉛直上方の端部までの距離)は、約4mm程度である。接着剤38は、接着剤塗布器37の先端ノズルを開口部33に差し込んで、接着部を構成する凹部31に注入される。これにより、接着剤38が、ステー28の凹部31と前側板25とにより形成される接着部の空間に流れ込んでいく。本実施例で使用する接着剤38の1液目の接着剤、2液目の接着剤の粘度は、約3000mPa・s(ミリパスカル秒)~10000mPa・s(ミリパスカル秒)程度の範囲内である。
【0033】
開口部33から注入された接着剤38は、凹部31と前側板25で囲まれた空間、特にステー28の平面部の両側に設けられた傾斜部32と前側板25との間においても、接着剤38は、毛細管現象により徐々に浸透していく。更に、本実施例では、粘度の低い接着剤を用いているため、凹部31の縁部からステー28と前側板25との間の極小な隙間にも、ある程度の範囲まで接着剤38が毛細管現象によって浸透していくため、接着強度が更に増加することになる。
【0034】
なお、本実施例では、接着剤38が凹部31全域に行き渡るまでに数分程度の時間を要する。接着剤塗布器37から注入塗布した後の接着剤38が浸透する時間、及び固化するまでの時間は、後工程の実施を滞らせる時間ではないため、作業工程の時間が増加するわけではない。
【0035】
[凹部における接着剤の浸透]
図6は、図5(c)に示す状態で、接着剤38を注入したときの凹部31の状態を示す断面図である。図6は、3つの図から構成されている。図6(a)は、ステー28に設けられた凹部31を前側板25側から見たときの正面図である。図6(b)は、図6(a)に示すX-X線で切断した場合の断面を示すX-X断面視図であり、図6(c)は、図6(a)に示すY-Y線で切断した場合の断面を示すY-Y断面視図である。図6(a)の破線のハッチングは、凹部31と前側板25とにより形成される接着部の空間に注入された接着剤38を示している。
【0036】
図6(b)のX-X断面視図に示すように、水平方向において、凹部31のギャップG1(凹部31(ステー28)の平面部と、凹部31の平面部と対向する前側板25の部分との間隔)は0.3mm程度と狭く設定されている。このため、接着剤38が少ない量で、かつ接着部内の空間に浸透可能なように構成されている。一方、接着剤38が注入される開口部33のギャップG2(凹部31(ステー28)の平面部と注入受け部35(注入受け部35の鉛直上方の端部)と、の間隔)は、接着剤38の注入塗布作業がしやすいように、ギャップG1に比べて広く設定されている。上述した凹部31の構成により、開口部33から注入された接着剤38は、重力によって、開口部33から凹部31と前側板25とにより形成される接着部の狭いギャップG2内に入り込むようになっている。
【0037】
また、図6(c)のY-Y断面視図に示すように、凹部31に設けられた傾斜部32は、対向する平面である前側板25に対して、約5°程度の傾斜角θを有している。そのため、いわゆる毛細管現象によって、壁面付近の傾きに対して液面が縮まろうとする表面張力によって、接着剤38が浸透しやすくなっている。また、凹部31に傾斜部32を設けることで、接着剤38が注入される領域である凹部31全体を凹ませた形状に比べて、体積を削減することができる。その結果、注入する接着剤38の使用量を削減することができる。更に、板金(ステー28)と板金(前側板25)との距離を離して接着すると接着強度が低下してしまうため、接着強度を高めるという効果も奏することができる。このように、凹部31に傾斜部32を設けることで、上述した効果が得られる接着部の構成となっている。
【0038】
一方、接着剤38は、接着剤38により接着されている板金を剥離する方向の力に対する強度はさほど強くない。そのため、剥離方向の結合強度の強いビス30を用いて、ステー28と前側板25とを締結して密着させることにより、接着剤38の剥離を防止することができ、ビス30はステー28と前側板25とが剥離することを防止する補助的な役割を担っている。また、本実施例の接着剤38には、アクリル系接着剤を用いているため、電気的にほぼ絶縁される。そのため、板金フレームをアース接地させるための板金同士の電気的接続の役割は、導電性を有するビス30による締結が担っている。なお、導電性の接着剤も種々あるが、接着するために要する時間や接着強度、コストを満足できる、本実施例に適した通電性の接着剤はない。
【0039】
上述したように、接着剤により接着されて重なり合っている板金を剥がすような方向に剥離力を加えると、接着剤の端部に局所的な剥離力が加わるため、板金間の接着界面の剥離が生じやすい。一方、接着剤により結合された板金同士のせん断方向の強度は、ビスによるせん断強度、すなわちビスによって板金同士を挟持し、その摩擦力で維持されるせん断方向への力に比べて、5~20倍以上の強度を有することがわかっている。そのため、接着剤を用いて板金を結合することにより、ビスなどの締結部材の衝撃によるビスずれと呼ばれる現象の発生を防止することができる。
【0040】
本実施例では、ステー28の平面と繋がっている凹部31(凹部31の一端)とビス穴34(ビス穴、接合部の中心)までの水平方向の距離L1は、30mm以内としている。距離L1を30mm以内としている理由は、一般的に、板金の平面度(凹凸の度合い)は、面方向(平面方向)の距離が30mm以下では、平面度0.2mm以下を十分に満足できるためである。一方、面方向の距離が30mmを超えると、板金の平面度は0.2mmより大きくなってしまい、ビス締結した後の凹部31と前側板25との隙間が大きくなり、注入した接着剤が隙間から垂れ落ちてしまうおそれがある。その結果、注入した接着剤が接着不要な部位へ垂れ流れてしまうことがある。また、注入された接着剤が垂れ流れることにより、接着部における接着剤の量が減少してしまい、所望の接着強度を得られなくなってしまうおそれもある。そのため、ビス30により締結されるビス穴34から凹部31までの距離L1を30mm以内に設定することで、上述した課題の発生を防止している。なお、本実施例では、接着部c2~c8を構成する凹部31についても、凹部31の近傍のビス穴34までの距離は、同様の設定となっている。
【0041】
加えて本実施例の本体Aでは、本体Aのフレームに計8ヶ所の接着部c1~c8(図3)を設けている。そして、各接着部c1~c8では、接着剤を注入するための開口部33が、カバーが装着される側であるフレームの外側、すなわち前側板25側(第2の板金側)、後側板26側に設けられている。これは、接着剤38の注入塗布作業をフレーム組立ての最終工程に8ヶ所纏めて集約して行えるようにするためである。
【0042】
また、本実施例では、ビス30による締結作業も集約して行えるようになっている。従来、接着剤を使用する場合は、塗布工具を用いて被接着部材に接着剤を塗布した後、被接着部材を接着部材に組み付け、ビス締め工具を用いてビス締結作業を行っていた。この作業方法では、複数あるフレーム部材を各々組み付けるたびに、接着塗布工具とビス締め工具の取り置き動作を行わなければならず、非効率であった。
【0043】
一方、上述したように、本実施例の本体Aのフレーム構成では、ビス30等の締結部材でフレームを仮組み立てした後に、接着剤38をフレームの外側から注入塗布する作業を纏めて行うことが可能となっている。そのため、ビス締め工具や接着剤塗布工具等の工具取り置き作業を何度も繰り返す必要がなく、作業を集約化させて作業効率を高めた生産を行うことができる。
【0044】
また、本実施例では、枠体構成を製造する最後の工程で接着剤を塗布することで、互いの板金を接合させている。そのため、従来のように板金を組み付ける前に接着剤を塗布する作業工程で懸念されていた接着剤が、接着対象の相手部品と接する前に固化してしまうといったおそれがなくなる。その結果、接着剤による接合強度が低下するリスクがなくなり、接着剤の固化を防ぐための作業時間の厳格な管理も不要となる。
【0045】
更に、垂直面へ接着剤を塗布する作業は、接着剤が垂れてしまうため、非常に困難な作業となるが、本実施例の構成では、接着剤を注入するといった点で作業性に優れている。また、本実施例での接着剤の注入作業は、組み付ける2つの部品に接着剤を塗布してから組み付ける2つの部品の姿勢を変える作業を行う場合と比べても、接着剤が垂れてしまったり、垂れた接着剤が不要な部位に付着したりする懸念も少ない。なお、本実施例では、ステー28と前側板25の板金同士を締結する手段として金属性のビスを用いているが、リベットやスポット溶接などの導電性を有して、板金と板金とを挟持、又は板金と板金とを接合する手段を用いてもよい。
【0046】
[給紙デッキのフレーム構成とフレームの組立て]
次に、給紙デッキBのフレーム構成について説明する。図7は、給紙デッキBのフレーム(枠体)構成を示す斜視図であり、図1に示す給紙デッキBの外部を覆うカバーや、図2に示す装置内部に設置される給紙カセット116や給送ローラ117、搬送ローラ118等の部材を外した状態のフレームを示している。給紙デッキBのフレームも、上述した本体Aのフレームと同様に、板金を繋ぎ合わせて枠体構造を形成している。給紙デッキBのフレームは、底板アセンブリ121、左右の側板122、天板123、前面側アセンブリ125、背面板126から構成されている。また、底板アセンブリ121の底部には、4つのキャスター120が取り付けられている。なお、図中、円で囲まれたD、Eは、後述する給紙デッキBの接着部が設けられたエリアを示しており、詳細については後述する。なお、給紙デッキBにおいても、本体Aと同様に、板金と板金とを締結する手段としてビスを用いている。
【0047】
図8は、図7に示した給紙デッキBのフレームの組み立て方を説明する分解組立図である。給紙デッキBの場合には、先ず、事前に、底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125とが組み付けられる。仮組立ての組み付け順序としては、底板アセンブリ121に、上方向から、前面側アセンブリ125と背面板126とを、ビス130により締結して組み付ける。次に、前面側アセンブリ125と背面板126に、天板123を上方向からビス130により締結して組み付ける。最後に、前面側アセンブリ125と背面板126に、左右方向から側板122をビス130により締結して組み付けることで、仮組立てが行われる。また、キャスター120も、ビスにより締結することで、底板アセンブリ121に取り付けられる。そして、本体Aのフレームと同様、ビス30によって締結され、仮組み立てされたフレームにおいて、接着部に接着剤を注入し、固化させることにより、給紙デッキBを構成する板金が接合され、フレームの組み立てが終了する。
【0048】
[底板アセンブリと前面側アセンブリとの接着]
以下では、上述した本体Aのフレームにおける接着部とは異なる、給紙デッキBの接着部の特徴的な構成について説明する。図9を参照して、仮組立てを行った給紙デッキBのフレームを構成する底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125とを接着するために、接着部に接着剤38を注入塗布する工程について説明する。図9は、図7に示すエリアDの周辺を拡大し、給紙デッキBの底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125の組み付け工程(図9(a)、(b))、接着剤38を注入塗布する工程(図9(c))を説明する図である。
【0049】
図9(a)は、前述したビス130による給紙デッキBのフレームの仮組立てを行う前の底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125の状態を示した図である。図9(a)において、前面側アセンブリ125(第1の板金)には、底板アセンブリ121(第2の板金)と接する平面に、凹部124が形成されている。凹部124は、水平方向における断面において、底板アセンブリ121の平面部と対向する前面側アセンブリ125の対向部と、前面側アセンブリ125の対向部の両側に設けられた傾斜部と、を有している。また、凹部124(前面側アセンブリ125)の対向部には、凹部の延在方向(鉛直方向)に延びた、底板アセンブリ121のから前面側アセンブリ125へ向かう方向に突出した3つの溝部127(図10参照)が形成されている。更に、3つの溝部の端に位置する溝部は、傾斜部132(図10参照)の一方の端部とつながっている。また、傾斜部132の他方の端部は、底板アセンブリ121平面とつながっている。
【0050】
一方、底板アセンブリ121は、ビス130で仮組み立てした際に、前面側アセンブリ125に設けられた凹部124全体を覆うことなく、底板アセンブリ121の一端から前面側アセンブリ125の凹部124が露出するように構成されている(図9(c))。そのため、前述した本体Aのような、板金を切断して形成した開口部は設けられていない。底板アセンブリ121の上端部は、前面側アセンブリ125から遠ざかる方向の傾斜面となっており、接着剤38を凹部124に注入塗布する際に支障とならないようになっている。
【0051】
図9(b)は、図9(a)に示す状態から、底板アセンブリ121に前面側アセンブリ125を上方向(図9(a)中、白矢印方向)から擦り合わせながら組み付け、ビス130によって締結する直前の状態を示している図である。図9(b)に示す状態から、ビス130をビス穴に通して締結することにより、底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125とが仮組み立てされる。これにより、底板アセンブリ121の平面と、前面側アセンブリ125の凹部124とにより形成された(囲まれた)空間が形成される。なお、凹部124は、ビス130により仮組み立てが行われた際に、底板アセンブリ121から離れる方向に凹んだ(突出した)形状を有している。また、図9(b)に示すように、前面側アセンブリ125に設けられた凹部124の鉛直方向の上端部は、仮組み立てされた底板アセンブリ121の上端部より高い位置にあり、開口状態となっている。そのため、上述した本体Aのような、接着部に接着剤を注入するための開口部は設けられていない。
【0052】
図9(c)は、前述した本体Aの接着剤の注入塗布と同様に、接着剤塗布器37によって接着剤38を、仮組み立てされた給紙デッキBの底板アセンブリ121の上端部から前面側アセンブリ125の凹部124に注入している様子を示している図である。従来、図9(a)のように、板金間の隙間がほぼなく密着してしまう状態の部位に、接着剤を事前塗布して接着させようとすると、次のような課題が生じていた。すなわち、事前に塗布した接着剤が組み付け時にそぎ落とされてしまって所望の接着強度が得られなかったり、組み付け作業の際にフレーム同士が擦れあうことで接着剤がそぎ落とされ、接着不要な部位に接着剤が付着してしまったりする課題があった。
【0053】
一方、本実施例では、上述したように、板金(底板アセンブリ121)と板金(前面側アセンブリ125)を、ほぼ隙間なく面方向にビス130による締結により組み付けを行う構成である。そのため、仮組立てを行った後で、接着剤38を上述した接着部に注入塗布することが可能な構成となっている。これにより、接着不要な部位に接着剤が付着したりするなどの上述した課題を生じさせることなく、必要な結合強度を得ることができる。
【0054】
[凹部における接着剤の浸透]
図10は、図9(c)に示す状態で、接着剤38を注入したときの凹部124の状態を示す断面図である。図10は、3つの図から構成されている。図10(a)は、前面側アセンブリ125に設けられた凹部124を底板アセンブリ121側から見たときの正面図である。図10(b)は、図10(a)をX-X線で切断した場合の断面を示すX-X断面視図であり、図10(c)は、図10(a)をY-Y線で切断した場合の断面を示すY-Y断面視図である。
【0055】
図10(b)のX-X断面視図に示すように、底板アセンブリ121の鉛直上方の端部は、ビス130により締結された前面側アセンブリ125から遠ざかる方向の傾斜面となっており、傾斜面と前面側アセンブリ125との間は、開口部となっている。つまり凹部124は、凹部124の平面部の鉛直下方の一端と凹部124の平面部と対向する底板アセンブリ121と、また凹部124の平面部の水平方向の一端と凹部124の平面部と対向する底板アセンブリ121と、をつなぐ傾斜部132を備える。より具体的には、図10(c)のY-Y断面視図に示すように、凹部124の溝部127の水平方向の端部に設けられた傾斜部132は、対向する平面である底板アセンブリ121に対して、傾斜角θを有するように構成されている。
【0056】
また、前面側アセンブリ125の凹部124に設けられた溝部127の鉛直下方の端部は、傾斜を有する傾斜部132とつながっている。注入された接着剤38は、凹部124に流れ落ちていく際、凹部124と底板アセンブリ121とのギャップ(隙間)G1が狭いため、時間をかけて浸透していく。一方、溝部127と底板アセンブリ121とのギャップG3は、ギャップG1よりも幅が広い。そのため、凹部124に注入された接着剤38は、傾斜部132まで早く到達することができ、接着剤38が重力方向に浸透することを促進している。ギャップG1の幅が狭く、接着面積が広いほど、接着強度を増すことができるが、接着剤38の重力方向(縦方向)への浸透度合いは、ギャップG1の狭さとのトレードオフ関係となる。そのため、溝部127を設けておくことで、上述した課題を解消することができる。
【0057】
なお、上述した接着剤38が注入塗布される接着部の構成は、オプション給紙デッキBのフレームにおける左右の側板122のビス締結部の近傍や、天板123と背面板126や前面側アセンブリ125との垂直取付け面側にも適用されている。
【0058】
[天板と前面側アセンブリの垂直面との接着]
図11は、天板123が前面側アセンブリ125に組み付けられた状態を示す図である。本実施例では、天板123の曲げ部を前面側アセンブリ125の板金から一部曲げ起こしたフック部125aで挟み込む構成としている。本構成は、天板123の曲げ部と前面側アセンブリ125の側面とを密着させるビスの代替手段として用いている。これにより、前面側アセンブリ125の凹部124と天板123により形成される接着部に注入された接着剤38が垂れ落ちないようにしている。このような構成は、ビス130を用いていないため、フレームの組立て時の作業時間の削減や部品コストの削減という点に優れている。
【0059】
[天板と前面側アセンブリの水平面との接着]
次に、図12を参照して、仮組立てを行った給紙デッキBのフレームを構成する天板123と前面側アセンブリ125の水平面とを接着するために、接着部に接着剤38を注入塗布する工程について説明する。図12は、図7に示すエリアEの周辺を拡大し、給紙デッキBの前面側アセンブリ125の構成(図12(a))、天板123と前面側アセンブリ125の組み付け工程(図12(b))、接着剤38を注入塗布する工程(図12(c))を説明する図である。
【0060】
図12(a)は、前面側アセンブリ125の天板123に対向する面の構成を示した図である。前面側アセンブリ125(第1の板金)の天板123(第2の板金)に対向する面には、天板123との接着のために、接着剤38が注入塗布される円錐形状の凹部128が設けられている。なお、明細書における円錐形状には、凹部128の開口部を円形の底辺としたとき、天板123へ突出した略円錐形状であり、図12(b)に示すように、頂点が平面となった形状も含む。なお、本実施例では円錐形状としたものの、角錐形状としてもよい。同様に、明細書における角錐形状には、凹部128の開口部を多角形の底辺としたとき、天板123へ突出した略角錐形状であり、頂点が平面となった形状も含む。
【0061】
図12(b)は、ビス130による給紙デッキBのフレームの仮組立てを行う前の天板123と前面側アセンブリ125の状態を示した図である。図12(b)に示す状態から、前面側アセンブリ125に天板123を上方向(図12(b)中、白矢印方向)から組み付け、前面側アセンブリ125に天板123を組み付け、ビス130をビス穴に通して締結される。これにより、底板アセンブリ121と前面側アセンブリ125とが仮組み立てされる。ビス130により仮組み立てが行われることにより、天板123の平面と、前面側アセンブリ125の平面と、前面側アセンブリ125の凹部128とにより形成された(囲まれた)空間である接着部が形成される。なお、天板123の開口部である穴部129は、接着部を構成する前面側アセンブリ125の凹部128に接着剤38を注入するための穴である。
【0062】
図12(c)は、接着剤塗布器37によって接着剤38を、仮組み立てされた給紙デッキBの天板123の穴部129から前面側アセンブリ125の凹部128に注入している様子を示している図である。注入された接着剤38により、天板123の裏面側と前面側アセンブリ125とが接着される。これにより、板金(天板123)と板金(前面側アセンブリ125)との水平面同士の板金の組み付け後の接着工程を実施することができる。
【0063】
[凹部における接着剤の浸透]
図13は、図12(c)に示す状態で、接着剤38を注入したときの凹部128の状態を示す断面図である。図13は、前面側アセンブリ125に設けられた凹部128を天板123の穴部129方向から見たときの正面図(図13(a))と、図13(a)のY-Y線で切断した場合の断面を示すY-Y断面視図(図13(b))から構成されている。
【0064】
図13(a)において、天板123の穴部129のハッチング部分は、前面側アセンブリ125の凹部128に注入された接着剤38を示している。また、破線で示す円は、前面側アセンブリ125の凹部128の外周部を示している。接着剤38の注入口となる開口部である穴部129は、凹部128の中心部に対向する位置に設けられた、φ4mm程度の丸穴であり、接着剤塗布器37の先端部を挿入可能な大きさを有している。
【0065】
また、図13(b)に示すように、凹部128は、傾斜面133を有する円錐形状の凹部である。傾斜面133は、凹部128の中央から円錐状に5°程度の傾斜角θをもって、円周方向に設けられている。穴部129から注入塗布された接着剤38は、傾斜面133に沿って、毛細管現象により凹部128を円周方向へ広がっていく。
【0066】
以上、本実施例では、画像形成装置のフレームをビス等で仮組み立てした状態で、接着剤を後工程でフレームの外側から注入できる本体Aのフレーム構成や、給紙デッキBのフレーム構成について説明した。画像形成装置に付随するその他のオプション装置や画像読み取り装置のフレームや、排紙装置や後処理装置などのフレームについても、本実施例のフレーム構成は適用可能であり、上述した同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、接着剤には2液性の接着剤を用いた例について説明したが、1液性の接着剤を用いても同様の効果を奏することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施例によれば、画像形成装置の枠体を接着剤によって簡単に効率よく接着することができる。
【符号の説明】
【0068】
25 前側板
28 ステー
30 ビス
31 凹部
38 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13