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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】部品保持状態取得装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019201265
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021077689
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 琢也
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-083997(JP,A)
【文献】特開2018-203480(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080472(WO,A1)
【文献】特開2003-023294(JP,A)
【文献】特開2008-227402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給装置によって供給された電子部品を保持して、回路基板の予め定められた位置に装着する実装機に設けられ、前記電子部品を保持する部品保持具の前記電子部品の保持状態を取得する部品保持状態取得装置であって、
前記部品保持具が、前記部品供給装置によって供給される予め定められた電子部品である対象電子部品を保持するものであり、
当該部品保持状態取得装置が、
前記部品保持具に加えられる荷重を検出する荷重センサを含み、前記荷重センサの検出値が、前記対象電子部品に基づいて決まる設定範囲から外れている場合には、前記部品保持具において前記対象電子部品が保持されていない状態であると取得するものである部品保持状態取得装置。
【請求項2】
部品供給装置によって供給された電子部品を保持して、回路基板の予め定められた位置に装着する実装機に設けられ、前記電子部品を保持する部品保持具の前記電子部品の保持状態を取得する部品保持状態取得装置であって、
前記部品保持具に加えられる荷重を検出するロードセルまたはリニアモータを含み、前記ロードセルまたはリニアモータの検出値に基づいて、前記部品保持具における前記電子部品の保持状態を取得する部品保持状態取得装置。
【請求項3】
当該部品保持状態取得装置が、前記ロードセルまたはリニアモータの検出値が第1しきい値以上変化した場合に、前記部品保持具において保持されていた前記電子部品が落下したと取得するものである請求項に記載の部品保持状態取得装置。
【請求項4】
当該部品保持状態取得装置が、前記ロードセルまたはリニアモータの検出値が第2しきい値を越えた場合に、前記部品保持具において前記電子部品が保持されていない状態にあると取得するものである請求項2または3に記載の部品保持状態取得装置。
【請求項5】
前記実装機が、
前記部品保持具を昇降させる昇降装置を備え、前記部品保持具を前記昇降装置により昇降可能に保持する実装ヘッドと、
前記実装ヘッドを水平方向に移動させるヘッド移動装置とを含み、
当該部品保持状態取得装置が、前記部品保持具が前記部品供給装置から供給された前記電子部品を保持するための作業を行った後、前記昇降装置により上昇端位置に達し、前記実装ヘッドが前記ヘッド移動装置により水平移動させられている場合の、前記ロードセルまたはリニアモータの検出値に基づいて、前記部品保持具における前記電子部品の保持状態を取得するものである請求項2ないし4のいずれか1つに記載の部品保持状態取得装置。
【請求項6】
前記実装ヘッドが、前記部品保持具に上方に向かう弾性力を付与する弾性部材を含み、
前記実装機が、前記部品保持具の被係合部に係合可能な係合部を含み、前記係合部を介して前記部品保持具に下方に向かう押付力を付与する押付力付与装置を含み、
当該部品保持状態取得装置が、前記押付力付与装置により前記部品保持具に予め定められた大きさの前記押付力が加えられ、前記係合部に反力としての前記弾性部材により上向きの弾性力が付与された状態における前記ロードセルまたはリニアモータの検出値に基づいて、前記部品保持具における前記電子部品の保持状態を取得するものである請求項に記載の部品保持状態取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品保持具における電子部品(以下、部品と略称する場合がある)の保持状態の取得に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部品を保持する吸着ノズルの下降制御中に、吸着ノズルに加えられる荷重が荷重センサにより検出され、その検出された荷重が設定値より大きい場合に、吸着ノズルが障害物に衝突したと取得することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-129718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、荷重センサを利用して、部品保持具における部品の保持状態を取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る部品保持状態取得装置において、部品保持具に加えられる荷重を検出する荷重センサの検出値に基づいて、部品保持具における部品の保持状態が取得される。例えば、部品保持具に部品が保持されている状態と保持されていない状態とで荷重センサの検出値が異なる。したがって、荷重センサの検出値に基づけば、部品保持具における部品の保持状態を取得することができる。また、荷重センサの検出値が設定値以上変化した場合には、部品が落下した状態、すなわち、保持している状態から部品が落下したことにより保持していない状態になったと取得することができる。
【0006】
部品保持具における部品の保持状態には、例えば、部品を保持している状態、部品を保持していない状態、保持していた部品が落下した状態、予め定められた部品とは異なる部品または異物を保持している状態等が該当する。部品保持状態取得装置は、部品保持具の保持状態が、これらのうちの1つ以上の状態であることを取得するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態である部品保持状態取得装置を備えた実装機を示す平面図である。
図2】上記実装機の実装ヘッドを示す正面図である。
図3】(a),(b)上記実装ヘッドに含まれる部品保持具としての吸着ノズルの周辺を示す図である。(b)吸着ノズルにおける部品保持状態を取得する場合の状態を概念的に示す図である。
図4】上記実装機の制御装置を概念的に示すブロック図である。
図5】上記実装機に設けられた荷重センサの検出値の変化を示す図である。
図6】上記制御装置の記憶部に記憶された第1しきい値決定プログラムを表すフローチャートである。
図7】上記制御装置の記憶部に記憶された保持状態取得プログラムを表すフローチャートである。
図8】上記保持状態取得プログラムとは別の保持状態取得プログラムを表すフローチャートである。
図9】上記制御装置の記憶部に記憶された装着前保持状態取得プログラムを表すフローチャートである。
図10】上記実装ヘッドに含まれる部品保持具としてのチャックの周辺を示す図である。
図11】上記荷重センサの検出値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る部品保持状態取得装置を含む実装機について図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
実装機は、図1に示すように、実装機本体2、部品供給装置4、基板搬送保持装置6、装着装置8、制御装置10等を含む。
部品供給装置4は、複数のテープフィーダ14を含む。テープフィーダ14は、それぞれ、テープを利用して電子部品(以下、部品と略称する)sを供給するものである。
基板搬送保持装置6は、回路基板20(以下、基板20と略称する)をX方向に搬送して保持するものであり、一対のコンベアである基板搬送装置22と、予め定められた位置に搬送された基板20を保持する基板保持装置24とを含む。
【0010】
装着装置8は、テープフィーダ14から部品sを受け取り基板20に装着するものであり、実装ヘッド30と、実装ヘッド30を移動させるヘッド移動装置32とを含む。ヘッド移動装置32は、実装ヘッド30を、X方向およびX方向に直交するY方向に移動させるものであり、スライダ34を移動させることにより、実装ヘッド30を、水平な一平面であるXY平面に沿って移動させる。以下、「水平な一平面であるXY平面に沿った移動」を、水平移動、XY方向への移動等と略称する場合がある。
なお、符号36はカメラを表す。カメラ36は、実装ヘッド30を下方から撮像するものである。
【0011】
実装ヘッド30は、図2に示すように、ヘッド本体50、回転体52、回転体52に保持された部品保持具の一例としての吸着ノズル60等を含む。実装ヘッド30は、ヘッド本体50においてスライダ34に取り付けられる。
回転体52は、ヘッド本体50に鉛直な回転軸線Lのまわりに回転可能に保持される。回転体52には、その回転軸線Lを中心とする一円周上の適宜の間隔を隔てた複数の位置(本実施例においては、6つの位置)にそれぞれ、回転昇降軸54が、回転軸線Lと平行な方向に相対移動可能、かつ、回転軸線Lと平行な軸線回りに自転可能に保持されている。以下、回転軸線L、または、回転軸線Lと平行な軸線を単に軸線と称し、回転軸線Lと平行な方向を単に軸線方向と称する場合がある。
【0012】
6本の回転昇降軸54の各々の、回転体52から下方へ突出した下端部には、それぞれ、吸着ノズル60が保持される。
図3(a),(b)に示すように、回転昇降軸54の本体である昇降軸本体62の下端部には、その下端面に開口して有底の嵌合穴64が設けられ、嵌合穴64の内周側に概して筒状を成す嵌合部材66が嵌合され、嵌合部材66の内周側に吸着ノズル60のノズル本体68が嵌合される。ノズル本体68は、軸線方向に伸び、上部の小径部と下部の大径部とを有する段付き形状を成す。ノズル本体68の小径部の一部が嵌合部材66の内周側に嵌合され、小径部の嵌合部材66から突出した上端部にはフランジである上部フランジ70が形成される。上部フランジ70と嵌合部材66の上面との間には、弾性部材としてのスプリング72が設けられる。
【0013】
これら回転昇降軸54の昇降軸本体62、嵌合部材66、ノズル本体68は、ピン76を介して、互いに相対回転不能、かつ、ノズル本体68が、嵌合部材66および昇降軸本体62に対して軸線方向に相対移動可能に連結される。したがって、回転昇降軸54が回転させられれば、吸着ノズル60も共に回転させられる。なお、符号78は、ピン76を下方に押し付け、ピン76の移動を防止する押付機構を示す。押付機構78は、昇降軸本体62と押付機構本体78rとの間に設けられたスプリング79を備えたものであり、スプリング79の弾性力が押付機構本体78rを介してピン76に作用し、ピン76の移動が防止される。
【0014】
図3(a)に示す状態でノズル本体68の上部フランジ70は昇降軸本体62の嵌合穴64の底面から離間し、嵌合部材66の下面80に、ノズル本体68の小径部と大径部との段面82が当接している。この嵌合部材66の下面80にノズル本体68の断面82が当接した位置が、ノズル本体68(吸着ノズル60)の昇降軸本体62(回転昇降軸54)および嵌合部材66に対する上昇端位置(以下、第2上昇端位置と称する場合がある)であり、スプリング72は、ノズル本体68を第2上昇端位置に向かって付勢する。
【0015】
昇降軸本体62の中心部には、軸線方向に伸びた圧力通路90が、嵌合穴64の底部を貫通して形成される。ノズル本体68の中心部にも、同様に、軸線方向に伸びた圧力通路92が貫通して形成され、嵌合穴64に連通している。圧力通路92はノズル本体68の上部フランジ70を貫通するとともに、下端面に開口させられる。
【0016】
一方、6個の吸着ノズル60の各々に対応してバルブ装置96(図4参照)が設けられ、圧力通路90,92には、それぞれ、バルブ装置96を介して、負圧供給源97,正圧供給源98および大気連通口99が選択的に連通させられる。バルブ装置96により、圧力通路90,92を、正圧供給源98から遮断して負圧供給源97に連通させる状態と、負圧供給源97から遮断して正圧供給源98に連通させる状態とを含む複数の状態に切り換えられる。
回転体52には、6個の吸着ノズル60の各々に対応して圧力センサ100(図4に1つを示す)が設けられている。圧力センサ100は、圧力通路90,92の圧力を検出するものである。
【0017】
実装ヘッド30は、図2に示すように、回転体52を回転軸線Lの回りに回転させる回転体回転装置110と、吸着ノズル60を自転させるノズル回転装置112と、吸着ノズル60を昇降させるノズル昇降装置114とを含む。
回転体回転装置110は、電動モータである回転体回転駆動モータ120を備え、回転体回転駆動モータ120により回転体52をヘッド本体50に対して回転軸線Lの回りに回転させる。
ノズル回転装置112は、電動モータであるノズル回転駆動モータ122と、複数のギヤ124~130とを含む。ギヤ124は、ノズル回転駆動モータ122の出力軸と一体的に回転可能に取り付けられ、ギヤ130は回転昇降軸54と一体的に回転可能に取り付けられる。これら複数のギヤ124~130の噛合により、ノズル回転駆動モータ122の回転が回転昇降軸54に伝達され、回転昇降軸54が回転させられ、吸着ノズル60が回転させられる。
【0018】
ノズル昇降装置114は、回転昇降軸54を回転体52に対して昇降させる第1昇降装置140と、ノズル本体68を回転昇降軸54に対して昇降させる第2昇降装置142とを含む。
第1昇降装置140は、電動モータである第1昇降駆動モータ144,昇降部材146,第1昇降駆動モータ144の回転を昇降部材146の昇降に変換する運動変換機構148,スプリング132等を含む。昇降部材146は、ヘッド本体50に保持部147において軸線方向の相対移動可能に保持される。また、昇降部材146は、回転昇降軸54に係合する係合部150を有する。
【0019】
スプリング132は、回転昇降軸54(ギヤ130)と回転体52の上面との間に設けられる一方、回転昇降軸54にはフランジ133が設けられる。フランジ133が回転体52の下面に当接することにより、回転昇降軸54および吸着ノズル60の回転体52およびヘッド本体50に対する上昇端位置(以下、第1上昇端位置と称する)が決まる。スプリング132は、回転昇降軸54および吸着ノズル60を第1上昇端位置に向かって付勢する。
昇降部材146の下降に伴って係合部150が下降させられ、回転昇降軸54がスプリング132の弾性力に抗して下降させられる。係合部150が上昇した場合には、スプリング132の弾性力により回転昇降軸54の上昇が許容される。回転昇降軸54の昇降に伴って吸着ノズル60が昇降させられる。
【0020】
第2昇降装置142は、図3(a),(b)に示すように、昇降部材146に設けられた第2昇降駆動モータとしてのリニアモータ152、リニアモータ152の出力軸の先端に設けられた係合部154、出力軸に設けられた荷重センサとしてのロードセル156、スプリング72等を含む。係合部154は、吸着ノズル60のノズル本体68の中間部に設けられた被係合部としての中間フランジ158に上方から係合させられる。リニアモータ152により係合部154に下向きの力が加えられた場合には、中間フランジ158を介して吸着ノズル60のノズル本体68に下向きの力が付与される。吸着ノズル60は、スプリング72の弾性力に抗して嵌合部材66および昇降軸本体62に対して下方へ移動させられるが、係合部154が上昇させられることにより、スプリング72の弾性力によりノズル本体68の上昇が許容される。
また、ロードセル156の検出値は、係合部154に加えられる上向き荷重が大きい場合は大きくなり、係合部154に加えられる下向き荷重が大きい場合は小さくなる。
【0021】
本実施例においては、吸着ノズル60が回転体52に対して第1昇降装置140により昇降させられるとともに、回転昇降軸54に対して第2昇降装置142により昇降させられる。第1昇降装置140と第2昇降装置142とは別個に作動可能であり、第1昇降装置140により回転昇降軸54がいずれの高さにあっても、第2昇降装置142により吸着ノズル60を、その回転昇降軸54に対して昇降させることができる。
【0022】
本実装ヘッド30において、テープフィーダ14からの部品sの受取りと、基板20への部品sの装着とは、ノズル昇降装置114に対応する位置に旋回させられた吸着ノズル60により行われる。この位置を、吸着・装着位置と称する。
【0023】
実装ヘッド30等は、図4に示す制御装置10等によって制御される。
制御装置10は、コンピュータを主体とするコントローラ202と、複数の駆動回路204とを含み、コントローラ202には、ロードセル156、圧力センサ100、吸着ノズル60が第1上昇端位置にあるか否かを検出する第1上昇端位置センサ208等が接続されるとともに、駆動回路204を介してしてヘッド移動装置32、回転体回転駆動モータ120を備えた回転体回転装置110、ノズル回転駆動モータ122を備えたノズル回転装置112、第1昇降駆動モータ144を備えた第1昇降装置140、リニアモータ152を備えた第2昇降装置142等が接続される。
また、リニアモータ152に設けられたリニアエンコーダ210,電流センサ212の検出値は駆動回路204を介してコントローラ202に供給される。リニアエンコーダ210はリニアモータ210の出力軸のストロークを検出するものであり、電流センサ212はリニアモータ152に流れる電流を検出するものである。コントローラ202には、さらに、報知装置214が接続される。報知装置214は例えばディスプレイとすることができる。
【0024】
以上のように構成された実装機の作動について説明する。
本実装ヘッド30はヘッド移動装置32により、テープフィーダ14の上方と、基板保持装置24により保持された基板20の上方との間を水平移動させられる。
部品sの吸着時には、バルブ装置96の制御により、圧力通路90,92に負圧が供給された状態で、第1昇降装置140により吸着ノズル60がヘッド本体50および回転体52に対して昇降させられる。
部品sの装着時には、吸着ノズル60が第1昇降装置140によりヘッド本体50および回転体52に対して昇降させられるとともに、第2昇降装置142により回転昇降軸54に対して昇降させられる。
【0025】
本実施例においては、吸着ノズル60における部品の保持状態が取得される。
吸着ノズル60における部品の保持状態は、カメラ36の撮像画像に基づいて取得されるが、カメラ36の撮像後の実装ヘッド30の水平移動中に、部品sが落下する場合がある。その場合には、部品sが基板20に装着されず、不良品が製造される。
そこで、本実施例においては、実装ヘッド30の水平移動中に、吸着・装着位置にある吸着ノズル60における部品sの保持状態、すなわち、部品sを保持している状態にあるか部品sを保持していない状態にあるか(部品sを保持している状態から部品sが落下して、保持していない状態に変わったこと)が取得される。
【0026】
吸着ノズル60による部品sの吸着に先立って、係合部154が設定位置に近づくようにリニアモータ152が制御される。係合部154の設定位置に対応するリニアモータ152の出力軸のストロークは予め取得されて記憶されている。そのため、リニアエンコーダ210の検出値に基づいて、係合部154が設定位置に近づくようにリニアモータ152を制御することができる。
係合部154の設定位置において、吸着ノズル60には予め定められた大きさの下向きの押付力が加えられ、吸着ノズル60は第2上昇端位置よりわずか下方に移動させられる。それにより、ロードセル156の検出値は、設定値F0となる。設定値F0は、押付力の反力であり、上向き荷重を表す値である。反力は、スプリング72の弾性力により加えられる。本実施例において、設定値F0を保持前検出値と称する。
【0027】
圧力通路90,92に負圧が供給され、その後、吸着ノズル60により部品sが吸着されるが、吸着ノズル60は第1昇降装置140により下降させられ、部品sに押し付けられる。このように、部品の吸着時には、吸着ノズル60が押し付けられるため、係合部154に加えられる上向き荷重が大きくなり、ロードセル156の検出値が大きくなる。
【0028】
吸着ノズル60による部品sの吸着後、吸着ノズル60が第1昇降装置140により上昇させられるとともに、実装ヘッド30がヘッド移動装置32により水平移動させられる。そして、吸着ノズル60が第1上昇端位置に達した時点におけるロードセル156の検出値が保持中検出値F1である。吸着ノズル60が第1上昇端位置に達したことにより、第1昇降装置140により吸着ノズル60に加えられた押付力が除かれたと考えることができる。そのため、吸着ノズル60が第1上昇端位置に達したタイミングで保持中検出値F1を取得することは妥当なことである。
【0029】
その後、吸着ノズル60を備えた実装ヘッド30は、ヘッド移動装置32により水平移動させられるのであり、基板20の予め定められた位置において、部品sが装着される。
【0030】
それに対して、例えば、実装ヘッド30の水平移動中に、保持している部品sが落下した場合には、ロードセル156の検出値の変化量の絶対値|ΔF|がしきい値である第1しきい値ΔFthより大きくなる。実装ヘッド30の水平移動中においてロードセル156の検出値は、ほぼ一定のはずである。それに対して、ロードセル156の検出値が第1しきい値ΔFth以上変化した場合には、部品sが落下したと推定することができる。
【0031】
第1しきい値ΔFthは、予め定められた値としたり、その都度決める値としたりすることができる。後者の場合において、第1しきい値ΔFthは、例えば、保持前検出値F0と保持中検出値F1とに基づいて取得することができる。保持前検出値F0と、保持中検出値F1との差の絶対値に比率α(0<α<1)を掛けた値
ΔFth=α*|F0-F1|
とすることができる。
【0032】
以上の場合の一例を図6,7のフローチャートで表される第1しきい値決定プログラム、部品保持状態取得プログラムに基づいて説明する。
図6のフローチャートで表す第1しきい値決定プログラムは、吸着ノズル60による部品sの装着作業の実行開始時に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする。)において、係合部154が設定位置にあるか否かが判定され、S2において、負圧供給状態であるか否かが判定される。S1,2の判定がYESになった場合には、S3において、ロードセル156の検出値である保持前検出値F0が取得され、記憶される。次に、S4,5において、吸着ノズル60により部品sが吸着保持されたか否か、吸着ノズル60が第1上昇端位置にあるか否かが判定される。例えば、吸着ノズル60が負圧供給状態いあり、かつ、第1昇降装置140により吸着ノズル60が下降させられた場合には、吸着ノズル60により部品sが吸着保持されたと判定される。S4,5の判定がYESになった場合には、S6において、ロードセル156の検出値である保持中検出値F1が取得され、記憶される。そして、S7において、第1しきい値ΔFthが、予め定められた関数fに保持前検出値F0,保持中検出値F1を代入して取得される。例えば、上述のように、保持前検出値F0と保持中検出値F1との差の絶対値に比率αを掛けることにより取得することができるのである。
【0033】
図7のフローチャートで表す部品保持状態取得プログラムは、第1しきい値ΔFthの決定後、換言すれば、吸着ノズル60が第1上昇端位置にあり、かつ、実装ヘッド30が水平移動させられている場合において、サイクルタイム毎に繰り返し実行される。
S21において、ロードセル156により検出値Fが取得され、S22において、今回の検出値から前回の検出値を引いた値である検出値の変化量の絶対値|ΔF|が取得され、第1しきい値ΔFthより大きいか否かが判定される。S22の判定がNOである場合には、部品sは保持されている状態にあると判定される。S22の判定がYESである場合には、S23において、部品sが落下した、換言すれば、部品sを保持していない状態にあると判定され、S24において、そのことが報知される。
【0034】
このように、本実施例においては、実装ヘッド30の水平移動中に、吸着・装着位置にある吸着ノズル60において、部品sが保持されている状態にあるか落下したか否かが判定される。そのため、例えば、カメラ36による撮像画像に基づき、部品sが確認された後に、部品sが落下した場合であっても、そのことを良好に取得することができ、不良品の発生を未然に防止することができる。
また、カメラ36の撮像画像に基づく場合には、色、形状等に基づいて部品sの保持状態が取得されるが、ロードセル156の検出値に基づけば、部品sの色、形状等に基づくことなく、部品sの保持状態を取得することができる。
さらに、カメラ36による撮像画像と、ロードセル156の検出値との両方に基づく場合には、部品sの保持状態を正確に取得することが可能となる。
【0035】
なお、S3の保持前検出値F0の取得は、S2の前に行うこともできる。
また、上記実施例においては、ロードセル156の実際の検出値である保持前検出値F0と保持中検出値F1とに基づいて第1しきい値ΔFthが決定される場合について説明したが、吸着ノズル60によって保持される部品sは予め決まっているため、その部品s(以下、予めJOB情報等に基づき決まっている部品sを正規の部品sと称する。正規の部品sは対象電子部品でもある。)が吸着ノズル60に保持されている状態におけるロードセル156の検出値である保持中検出値F1は予め取得できる。そのため、第1しきい値ΔFthは予め決めておくことができる。
【0036】
また、上記実施例においては、ロードセル156の検出値の変化量の絶対値|ΔF|が第1しきい値ΔFthより大きくなった場合に、部品sが落下したと判定されるようにされていたが、ロードセル156の検出値Fが第2しきい値Fthを越えて保持前検出値F0に近づいた場合に、部品sが落下して、部品sが保持されていない状態にあると判定されるようにすることができる。第2しきい値Fthは、例えば、保持前検出値F0と保持中検出値F1との中間の値
Fth=F0+β(F1-F0)=β*F1+(1-β)*F0
とすることができる。比率βは0より大きく1より小さい値であり、例えば、0.5とすることができる。また、第2しきい値Fthは、その都度決めても、予め決めておいてもよい。
【0037】
さらに、保持中検出値F1と、ロードセル156の検出値のバラツキ、部品sの荷重、形状等のバラツキ等とに基づいて設定範囲(Fa~Fb)を定めることができる。設定範囲の下限値Fa、上限値Fbを、バラツキで決まる値γに基づいて、例えば、下記のように決めることができる。
Fa=F1-γ
Fb=F1+γ
そして、ロードセル156の検出値Fが設定範囲(Fa~Fb)から外れている場合には、吸着ノズル60において、異物または正規の部品sとは異なる部品が保持されている状態にあると判定することができる。
【0038】
なお、保持中検出値F1は部品の吸着時のロードセル156の検出値より小さくなるが、保持前検出値F0より大きくなる場合と小さくなる場合とがあると考えられる。例えば、部品sが保持され、圧力通路92の開口が塞がれることに起因して上向きの力(負圧に起因する上向きの力と称することができる)が大きくなる一方、部品sの自重に起因する下向きの力が大きくなると推測される。そのため、負圧に起因する上向きの力と自重に起因する下向きの力との大小関係に基づいて保持中検出値F1の保持前検出値F0に対する大小が決まると推測されるのである。
【0039】
吸着ノズル60の径が大きく、かつ、部品sが大きく、自重が大きい場合の測定結果の一例を図5に示す。この場合には、図5に示すように、保持中検出値F1は保持前検出値F0より小さくなる。吸着ノズル60による部品sの吸着作動開始時t1からロードセル156の検出値が大きくなる(上向き荷重が大きくなる)が、部品の吸着後、吸着ノズル60が第1上昇端位置に達した時点t2のロードセル156の検出値である保持中検出値F1は、保持前検出値F0より小さくなる。負圧に起因する上向き荷重より部品sの自重により下向き荷重が大きいことに起因すると考えられる。
以下、本実施例において、保持中検出値F1が保持前検出値F0より小さい場合について説明する。
【0040】
本部品保持状態取得プログラムの一例を図8のフローチャートで表す。部品保持状態取得プログラムは、吸着ノズル60による部品sの吸着保持後、吸着ノズル60が第1上昇端位置に達し、かつ、実装ヘッド30が水平移動させられている間、予め定められた設定時間毎に繰り返し実行される。
S31において、ロードセル156の検出値Fが取得され、S32において、検出値Fが第2しきい値Fthより大きいか否かが判定される。判定がNOである場合には、さらに、S33において、検出値Fが設定範囲内Fa~Fbの間にある(Fa<F<Fb)か否かが判定される。判定がYESである場合には、吸着ノズル60において正規の部品sが保持された状態にあると判定される。
それに対して、判定がNOである場合には、S34において、吸着ノズル60において異物または正規の部品sとは異なる部品が保持されている状態にあると判定され、S35において、そのことが報知される。また、S32の判定がYESである場合には、S36において、部品sが保持されていない状態であると判定され、S35において、そのことが報知される。
【0041】
このように、本実施例においては、吸着ノズル60によって、正規の部品sとは異なる部品sまたは異物が保持されている状態にあることを良好に取得することができ、不良品の発生を未然に防止することができる。また、吸着ノズル60によって正規の部品sとは異なる部品sや異物が吸着されたことは、カメラ36の撮像画像に基づいて判定できない場合があるが、ロードセル156の検出値に基づくことにより、判定できる場合がある。
【0042】
一方、本実装ヘッド30において、6つの吸着ノズル60の各々に部品が吸着保持され、実装ヘッド30が水平移動させられつつ、6つの吸着ノズル60のうち吸着・装着位置に到達した吸着ノズル60に保持された部品sが基板20に順次装着される。実装ヘッド30において、吸着・装着位置に到達した吸着ノズル60により部品sが基板20に装着された後に、回転昇降軸54が第1上昇端位置まで上昇させられ、吸着ノズル60が第2上昇端位置まで上昇させられ、回転体52が回転させられる。そして、次の吸着ノズル60が吸着・装着位置に到達すると、その次の吸着ノズル60によって部品sの基板20への実装が行われる。
【0043】
本実施例において、吸着・装着位置に達した吸着ノズル60の各々において、それぞれ、部品sの装着前に部品sの保持状態が取得される。吸着・装着位置に達した吸着ノズル60において、リニアモータ152の制御により、リニアエンコーダ210の検出値に基づいて、係合部154が設定位置に移動させられる。その状態において、ロードセル156の検出値Fに基づいて部品sの保持状態が取得される。
【0044】
この場合の一例を図9のフローチャートで表す。
図9のフローチャートで表される部品保持状態取得プログラムは、回転体52が60°ずつ回転する毎、すなわち、間欠回転する毎に1回実行される。S41において、吸着ノズル60が第2上昇端位置にあるか否かが判定される。S41の判定がYESである場合には、S42において、係合部154が設定位置に位置するようにリニアモータ152が制御される。そして、S43において、ロードセル156の検出値Fが取得され、S44において、第2しきい値Fthより大きいか否かが判定され、判定がNOである場合には、部品sが保持されている状態であると判定され、判定がYESである場合には、S45において、部品sが保持されていない状態であると判定され、S46において、そのことが報知される。
【0045】
このように、実装ヘッド50が複数の吸着ノズル60を含む場合において、装着直前に、複数の吸着ノズル60の各々における部品sの保持状態を取得することができる。その結果、不良品の比率を低下させることができる。
【0046】
なお、上記実施例においては、昇降軸本体62に部品保持具としての吸着ノズル60が取り付けられた場合について説明したが、部品保持具としてチャックを取り付けることもできる。
その場合の一例を図10,11に示す。
チャック200は、嵌合部材66にスプリング202により上方に付勢された状態で保持される。チャック200は、一対の把持爪210a、210bと、図示を省略するが、これら一対の把持爪210a、210bを接近・離間させる駆動源(例えば、エアシリンダまたは電動モータ等とすることができる。)とを含む。一対の把持爪210a、210bを接近させることにより部品sが把持される。
【0047】
リニアモータ152の制御により係合部154を設定位置に移動させる。リニアモータ152により係合部154を介して中間フランジ212に押付力Fnが付与される。図11に示すように、この状態におけるロードセル156の検出値である保持前検出値F0はFnとなる。また、チャック200により部品sが保持された場合には、部品sの自重Fsにより下向き荷重が大きくなるため、ロードセル156の検出値が小さくなる。保持中検出値F1は(F1=Fn-Fs)となる。そして、実装ヘッド30の水平移動中にロードセル156の検出値の変化量ΔFが第1しきい値ΔFth´より大きくなった場合に、部品sが落下したと判定される。また、実装ヘッド30の水平移動中にロードセル156の検出値が第2しきい値Fth´より大きくなった場合に、部品sが落下した(部品sを保持していない状態である)と判定される。第2しきい値Fth´は、保持前検出値F0(=Fn)と保持中検出値F1(=Fn-Fs)との中間の大きさとすることができる。
その他、上記実施例における場合と同様に、図8,9のフローチャートで表される部品保持状態取得プログラムを実行することにより、チャック200における部品sの保持状態を取得することができる。
【0048】
なお、上記実施例においては、荷重センサとしてロードセル156が用いられたが、リニアモータ152に流れる電流値を利用することができる。リニアモータ152に保持電流が供給される場合において、リニアモータ152に加えられる負荷は下向き荷重が大きくなると小さくなる。そのため、部品が保持された状態においてリニアモータ152に流れる電流が小さくなり、部品が落下した場合には下向き荷重が小さくなるため、電流が大きくなる。
【0049】
以上のように、本実施例においては、制御装置10のうち部品保持状態取得プログラムを記憶する部分、実行する部分等により部品保持状態取得装置が構成され、第2昇降装置142等により押付力付与装置が構成される。また、昇降装置が第1昇降装置140に対応し、上昇端位置が第1上昇端位置に対応する。
【0050】
その他、本発明は、上記実施形態の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
30:実装ヘッド 32:ヘッド移動装置 54:回転昇降軸 60:吸着ノズル 72:スプリング 90,92:圧力通路 96:バルブ装置 152:リニアモータ 154:係合部 156:ロードセル 200:チャック 202:スプリング
図1
図2
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図4
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図11