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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】トーショナルダンパーアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/126 20060101AFI20240122BHJP
   F16F 15/10 20060101ALI20240122BHJP
   F16J 15/54 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F16F15/126 B
F16F15/10 Z
F16J15/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019205882
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021080928
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】関口 修
(72)【発明者】
【氏名】杉原 弘恵
(72)【発明者】
【氏名】庄内 しほ
(72)【発明者】
【氏名】濱本 耕吉
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-040657(JP,U)
【文献】特開2011-241891(JP,A)
【文献】特開2017-214994(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194088(WO,A1)
【文献】実開平01-174680(JP,U)
【文献】米国特許第02541645(US,A)
【文献】特開2017-067284(JP,A)
【文献】特開2017-106597(JP,A)
【文献】特開2020-176533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/10-15/18
F16J 15/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーショナルダンパーとファンを有するトーショナルダンパーアセンブリであって、
前記トーショナルダンパーは、
回転軸に固定される円筒状の金属製のハブと、
前記ハブに固定された円環状の金属製のリムと、
前記リムの外周面に固定された弾性材料製の円環状の振動減衰部と、
前記振動減衰部の外周面に固定されたダンパーマスと
前記ハブと前記リムを連結する放射状に延びる複数のスポークと、
隣り合う前記スポークの間に設けられて円周方向に間隔をおいて配置された複数の貫通孔とを有し、
前記ファンは、
前記回転軸に連結されることにより回転可能であって、前記貫通孔を覆う金属製の円板と、
前記円板に形成され、円周方向に間隔をおいて配置された金属製の複数の羽根とを有し、
前記円板は、平坦なダンパー側の面と、前記ダンパー側の面と反対の平坦な外面を有し、前記ダンパー側の面は、前記外面より前記トーショナルダンパーの近くに配置され、
前記円板は、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスの端面に重なり、
前記羽根の各々は、前記円板の前記外面から突出するほぼ扇形の平板であって、前記円板に対して傾斜しており、
前記羽根の各々は、前記円板と羽根の間の境界にある直線状の単一の折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に向けて延びる直線状の単一の端縁線と、前記折り曲げ線の径方向外端と前記端縁線の径方向外端を結ぶ円弧線で画定され、
前記円板は、前記複数の羽根に隣接する位置に複数のほぼ扇形の切り欠きを有し、前記切り欠きの各々は、この切り欠きに隣接する羽根の前記折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に延びる直線状の単一の端縁線で画定され、前記円板の外周で開口し、
前記羽根および前記円板の前記切り欠きは、前記貫通孔よりも径方向外側に設けられている
ことを特徴とするトーショナルダンパーアセンブリ。
【請求項2】
トーショナルダンパーと、ファンと、前記トーショナルダンパーと前記ファンとの間に介在させられた中間平板とを有するトーショナルダンパーアセンブリであって、
前記トーショナルダンパーは、
回転軸に固定される円筒状の金属製のハブと、
前記ハブに固定された円環状の金属製のリムと、
前記リムの外周面に固定された弾性材料製の円環状の振動減衰部と、
前記振動減衰部の外周面に固定されたダンパーマスとを有し、
前記ファンは、
前記回転軸に連結されることにより回転可能である金属製の円板と、
前記円板に形成され、円周方向に間隔をおいて配置された金属製の複数の羽根とを有し、
前記円板は、平坦なダンパー側の面と、前記ダンパー側の面と反対の平坦な外面を有し、前記ダンパー側の面は、前記外面より前記トーショナルダンパーの近くに配置され、
前記円板は、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスの端面に重なり、
前記羽根の各々は、前記円板の前記外面から突出するほぼ扇形の平板であって、前記円板に対して傾斜しており、
前記羽根の各々は、前記円板と羽根の間の境界にある直線状の単一の折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に向けて延びる直線状の単一の端縁線と、前記折り曲げ線の径方向外端と前記端縁線の径方向外端を結ぶ円弧線で画定され、
前記円板は、前記複数の羽根に隣接する位置に複数のほぼ扇形の切り欠きを有し、前記切り欠きの各々は、この切り欠きに隣接する羽根の前記折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に延びる直線状の単一の端縁線で画定され、前記円板の外周で開口し、
前記中間平板は、前記ファンの前記円板の前記ダンパー側の面に面接触し、
前記中間平板には、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、少なくとも前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスに重なる位置に開口または切り欠きが形成されていない
ことを特徴とするトーショナルダンパーアセンブリ。
【請求項3】
前記中間平板は、前記トーショナルダンパーの前記ハブが嵌め込まれる円筒に支持され、前記円筒から径方向外側に向けて広がっており、
前記ファンは、前記円筒が嵌め込まれる円筒状のボスを有し、前記ボスから前記円板が径方向外側に向けて広がっている
ことを特徴とする請求項に記載のトーショナルダンパーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーショナルダンパーアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンのクランクシャフトの一端には、クランクシャフトの捩れ振動を低減するために、トーショナルダンパーが取り付けられている。トーショナルダンパーは、ダイナミックダンパーまたはトーションバイブレーションダンパー(TVD)とも呼ばれる。
【0003】
特許文献1および2には、トーショナルダンパーとクランクケースの間に配置されて、クランクシャフトの回転に伴ってトーショナルダンパーとともに回転する回転羽根が開示されている。回転羽根が引き起こす気流によって、外部からの異物(例えば水およびダスト)がエンジンに侵入することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-67284号公報
【文献】国際公開第2019/194088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トーショナルダンパーとファンを有するトーショナルダンパーアセンブリは、容易に製造することができるのが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、容易に製造することができるトーショナルダンパーアセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係るトーショナルダンパーアセンブリは、トーショナルダンパーとファンを有する。前記トーショナルダンパーは、回転軸に固定される円筒状の金属製のハブと、前記ハブに固定された円環状の金属製のリムと、前記リムの外周面に固定された弾性材料製の円環状の振動減衰部と、前記振動減衰部の外周面に固定されたダンパーマスを有する。前記ファンは、前記回転軸に連結されることにより回転可能である金属製の円板と、前記円板に形成され、円周方向に間隔をおいて配置された金属製の複数の羽根を有する。前記円板は、平坦なダンパー側の面と、前記ダンパー側の面と反対の平坦な外面を有し、前記ダンパー側の面は、前記外面より前記トーショナルダンパーの近くに配置されている。前記円板は、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスの端面に重なる。前記羽根の各々は、前記円板の前記外面から突出するほぼ扇形の平板であって、前記円板に対して傾斜している。前記羽根の各々は、前記円板と羽根の間の境界にある直線状の単一の折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に向けて延びる直線状の単一の端縁線と、前記折り曲げ線の径方向外端と前記端縁線の径方向外端を結ぶ円弧線で画定されている。前記円板は、前記複数の羽根に隣接する位置に複数のほぼ扇形の切り欠きを有し、前記切り欠きの各々は、この切り欠きに隣接する羽根の前記折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に延びる直線状の単一の端縁線で画定され、前記円板の外周で開口する。
【0008】
この態様においては、ファンの材料となる金属製の板に切断加工を施すことによって、板に複数の羽根の端縁線(つまり複数の切り欠きの端縁線)に相当する切断線を形成し、板に折り曲げ加工を施すことによって、複数の折り曲げ線を形成することによって、各羽根を形成することができる。したがって、ファンひいてはトーショナルダンパーアセンブリを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】使用状態における本発明の実施形態に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す縦断面図である。
図2】実施形態に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す縦断面図である。
図3】実施形態に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す斜視図である。
図4】実施形態に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す側面図である。
図5】実施形態の変形例に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す縦断面図である。
図6】実施形態の変形例に係るトーショナルダンパーアセンブリを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係るトーショナルダンパーアセンブリ1は、自動車のエンジンのクランクケースのフロントカバー2の大気側に配置されている。フロントカバー2に形成された孔2aを通じて、クランクケースの内部から外部へクランクシャフト(回転軸)4が突出する。トーショナルダンパーアセンブリ1は、クランクシャフト4の一端に固定されて、クランクシャフト4とともに回転する。
【0012】
トーショナルダンパーアセンブリ1は、クランクシャフト4に固定されるトーショナルダンパー20と、トーショナルダンパー20に一体的に結合されたファン30を有する。
【0013】
トーショナルダンパー20は、互いに同心に配置されたハブ21、リム22、振動減衰部23、およびダンパーマス24を有する。
【0014】
ハブ21は、金属製の円筒であって、クランクシャフト4に固定される。クランクシャフト4の大気側の一端は、小径部4Aと大径部4Bを有しており、小径部4Aは大径部4Bより大気側に配置されている。
【0015】
小径部4Aはハブ21の孔に挿入される。小径部4Aの外周面にはキー溝4Cが形成され、ハブ21の内周面にもキー溝21Aが形成されている。キー溝4C,21Aには金属製のキー6が嵌め込まれ、キー6はハブ21とクランクシャフト4の相対回転を防止する。
【0016】
クランクシャフト4の小径部4Aには、小径部4Aの端面から軸線方向に延びるネジ孔4Dが形成されており、ネジ孔4Dにはフランジボルト8がねじ込まれている。キー6とハブ21は、フランジボルト8のフランジ8Aと大径部4Bの間に挟まれており、クランクシャフト4に対するキー6とハブ21の軸線方向の移動が防止されている。
【0017】
リム22は、金属製の円環であって、ハブ21に固定されている。具体的には、ハブ21とリム22は、放射状に延びる複数のスポーク25によって連結されている。したがって、ハブ21とリム22とスポーク25は、同じ材料から一体に形成されている。
【0018】
隣り合うスポーク25の間には、トーショナルダンパー20を貫通する貫通孔26が設けられている。複数の貫通孔26は、円周方向に間隔をおいて配置されている。貫通孔26は、トーショナルダンパー20の重量を軽減するために形成されている。
【0019】
振動減衰部23は、弾性材料、例えばゴム製の円環であって、リム22の外周面に固定されている。
【0020】
ダンパーマス24は、例えば金属製の円環であって、振動減衰部23の外周面に固定されている。実施形態に係るトーショナルダンパー20は、クランクシャフトプーリーとして使用することができる。したがって、ダンパーマス24の外周面には、ポリVベルト(図示せず)が巻かれるようになっており、ポリVベルトが噛み合うように複数のV溝24Aが形成されている。但し、トーショナルダンパー20と別個にクランクシャフトプーリーを設けてもよい。
【0021】
ファン30は、クランクシャフトに連結されることにより回転可能である金属製の円板31と、円板31に形成された複数の羽根32を有する。
【0022】
円板31は、クランクシャフトの軸線に沿って見た場合に、トーショナルダンパー20のリム22と振動減衰部23とダンパーマス24の端面に重なる。図示の実施形態では、円板31は、振動減衰部23と接触するが、リム22と振動減衰部23とダンパーマス24のいずれかに接触してもよいし、いずれにも接触しなくてもよい。
【0023】
ファン30はトーショナルダンパー20に固定されている。固定の方式は限定されないが、この実施形態では、ファン30は、円板31の中央から突出する円筒状のボス33を有しており、トーショナルダンパー20のハブ21には、エンジン側に突出するボス27が形成されている。ボス27,33は、クランクシャフト4と同心に配置される。クランクシャフト4の小径部4Aに固定されたハブ21のボス27は、ファン30のボス33の孔に締まり嵌め(圧入)されている。
【0024】
ファン30においては、ボス33から円板31が径方向外側に向けて広がっており、円板31はボス33ひいてはトーショナルダンパー20に同心である。
【0025】
後述するように、円板31、羽根32、およびボス33を含むファン30は、一枚の金属の円板をプレス成形することによって製造することができる。
【0026】
クランクケースのフロントカバー2の孔2aには、円環状のオイルシール40が固定されている。オイルシール40は、フロントカバー2とクランクシャフト4の間の間隙を封止し、エンジン側から大気側へのオイルの漏出を防止または低減するとともに、大気側からエンジン側への異物の侵入を防止または低減する。トーショナルダンパー20のハブ21のボス27の外周面は、オイルシール40に摺動可能に接触する。オイルシール40のタイプは図示に限定されない。
【0027】
非使用状態にあるトーショナルダンパーアセンブリ1を示す図2から図4を参照し、ファン30をさらに詳述する。
【0028】
図4に示すように、複数の羽根32は、円周方向に間隔をおいて配置されている。実施形態では8つの羽根32が設けられているが、羽根32の数は実施形態に限定されない。好ましくは、実施形態のように、羽根32は等角間隔をおいているが、羽根32の角間隔は等しくなくてもよい。
【0029】
図2に示すように、円板31は、平坦なダンパー側の面31A(大気側の面)と、ダンパー側の面31Aと反対の平坦な外面31B(エンジン側の面)を有し、ダンパー側の面31Aは、外面31Bよりトーショナルダンパー20の近くに配置されている。各羽根32は、円板31の外面31Bから突出するほぼ扇形の平板であって、円板31に対して傾斜している。複数の羽根32の外面31Bに対する傾斜角は、互いに等しい。
【0030】
複数の羽根32は同形同大を有する。各羽根32は、直線状の単一の折り曲げ線32a、直線状の単一の端縁線32b、および円弧線32cで画定されたほぼ扇形の形状を有する。
【0031】
各羽根32は、プレス成形によって形成することが可能であり、折り曲げ線32aは、折り曲げ成形の結果として生ずる円板31と羽根32の間の境界である。この実施形態では、折り曲げ線32aは、円板31の外端縁から中心に向けて正確に円板31の半径に沿って延びるが、円板31の半径に対して傾いていてもよい。
【0032】
端縁線32bは、ファンの材料である円板の切断の結果として生じ、折り曲げ線32aの径方向内端から径方向外側に向けて延びる。この実施形態では、端縁線32bは円板31の半径に対して傾いているが、円板31の半径に沿って延びていてもよい。
【0033】
円弧線32cは、ファンの材料である円板の外周縁に相当し、折り曲げ線32aの径方向外端と端縁線32bの径方向外端を結ぶ。
【0034】
プレス成形の結果として、円板31は、複数の羽根32に隣接する位置に複数のほぼ扇形の切り欠き34を有する。各切り欠き34は、この切り欠き34に隣接する羽根32の折り曲げ線32aと直線状の単一の端縁線34bで画定され、円板31の外周で開口する。端縁線34bは、ファンの材料である円板の切断の結果として生じ、切断の前には、この端縁線34bを有する切り欠き34に隣接する羽根32の端縁線32bにつながっていた部分である。
【0035】
ファン30は、プレス成形で製造することができる。その製造工程の例を説明する。
【0036】
まず1枚の金属製の板から打ち抜き加工によって多数の円板を形成する。好ましくは、円板の形成と同時に、各円板の中心に円形の貫通孔を形成する。
【0037】
次に、各円板に切断加工を施すことによって、複数の羽根32の端縁線32b(つまり複数の切り欠き34の端縁線34b)に相当する切断線を形成する。
【0038】
さらに、各円板に折り曲げ加工を施すことによって、複数の折り曲げ線32aを形成する。つまり、折り曲げ線32aで円板を折り曲げる。これによって、複数の羽根32が完成する。
【0039】
ボス33は、各円板における貫通孔の周辺を曲げることによって形成することができる。ボス33は、羽根32の形成の前に形成してもよいし、後または同時に形成してもよい。
【0040】
このようにして、ファン30ひいてはトーショナルダンパーアセンブリ1を容易に製造することができる。トーショナルダンパーアセンブリ1を組み立てるには、上記のように、ファン30のボス33の孔にトーショナルダンパー20のハブ21のボス27を圧入すればよい。
【0041】
ファン30は、トーショナルダンパー20のハブ21を介してクランクシャフト4に固定されており、クランクシャフト4の回転に伴ってトーショナルダンパー20とともに回転する。図3および図4の矢印は、ファン30の回転方向を示す。ファン30の羽根32が引き起こす気流によって、外部からの異物が跳ね飛ばされる。したがって、異物がエンジン側に侵入することを抑制することができる。また、気流によって、異物がオイルシール40に到達しにくくなり、オイルシール40が保護される。
【0042】
図2および図4に示すように、トーショナルダンパー20は、ハブ21とリム22を連結する放射状に延びる複数のスポーク25と、隣り合うスポーク25の間に設けられて円周方向に間隔をおいて配置された複数の貫通孔26を有する。ファン30の円板31は、これらの貫通孔26を覆い、ファン30の羽根32および円板31の切り欠き34は、これらの貫通孔26よりも径方向外側に設けられている。
【0043】
したがって、貫通孔26を通じてエンジン側に侵入しようとする異物を円板31で阻止することが可能であり、異物がエンジン側に侵入することをさらに抑制することができる。
【0044】
図5および図6は、実施形態の変形例に係るトーショナルダンパーアセンブリ50を示す。トーショナルダンパーアセンブリ50は、トーショナルダンパー20とファン30のダンパー側の面31Aの間に介在させられた中間平板52をさらに有する。
【0045】
中間平板52は、円形の平板であって、ファン30の円板31と同心に配置されている。図示の例では、中間平板52の外径は、ファン30の円板31の外径と等しいを有するが、円板31の外径より大きくても小さくてもよい。
【0046】
中間平板52は、金属または樹脂から形成されている。
【0047】
中間平板52は、ファン30の円板31のダンパー側の面31Aに面接触する。また、中間平板52は、クランクシャフトの軸線に沿って見た場合に、トーショナルダンパー20のリム22と振動減衰部23とダンパーマス24の端面に重なる。図示の例では、中間平板52は、振動減衰部23と接触するが、リム22と振動減衰部23とダンパーマス24のいずれかに接触してもよいし、いずれにも接触しなくてもよい。
【0048】
中間平板52は、その中央から突出する円筒状のボス(円筒)53を有する。換言すれば、中間平板52は、ボス53に支持されており、ボス53から径方向外側に向けて広がる。
【0049】
ボス53には、トーショナルダンパー20のハブ21のボス27が締まり嵌めされている。さらに、ファン30のボス33に、ボス53が締まり嵌めされている。したがって、中間平板52とファン30は、トーショナルダンパー20のハブ21を介してクランクシャフト4に固定されており、クランクシャフト4の回転に伴ってトーショナルダンパー20とともに回転する。図6の矢印は、中間平板52とファン30の回転方向を示す。
【0050】
ファン30の羽根32が引き起こす気流によって、外部からの異物が跳ね飛ばされる。したがって、異物がエンジン側に侵入することを抑制することができる。また、気流によって、異物がオイルシール40に到達しにくくなり、オイルシール40が保護される。
【0051】
この変形例では、中間平板52がファン30の円板31のダンパー側の面31Aに面接触することにより、トーショナルダンパー20とファン30の間を通じてエンジン側に侵入しようとする異物を中間平板52で阻止することが可能であり、異物がエンジンに侵入することをさらに抑制することができる。
【0052】
中間平板52には、クランクシャフトの軸線に沿って見た場合に、少なくともリム22と振動減衰部23とダンパーマス24に重なる位置に開口または切り欠きが形成されていない。そして、中間平板52は、トーショナルダンパー20の貫通孔26を完全に覆う。したがって、貫通孔26を通じてエンジン側に侵入しようとする異物を中間平板52で阻止することが可能である。
【0053】
トーショナルダンパーアセンブリ50を組み立てるには、ファン30のボス33の孔に中間平板52を支持するボス(円筒)53を圧入し、ボス53にトーショナルダンパー20のハブ21のボス27を圧入すればよい。これにより、容易にトーショナルダンパーアセンブリ50を組み立てることができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0055】
例えば、上記のトーショナルダンパーアセンブリ1または50は、自動車のクランクシャフトに取り付けられるが、トーショナルダンパーアセンブリ1または50の用途はこれに限定されず、例えばカムシャフトに取り付けられてもよい。また、自動車以外の機械の回転軸に取り付けられてもよい。
【0056】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
【0057】
条項1. トーショナルダンパーとファンを有するトーショナルダンパーアセンブリであって、
前記トーショナルダンパーは、
回転軸に固定される円筒状の金属製のハブと、
前記ハブに固定された円環状の金属製のリムと、
前記リムの外周面に固定された弾性材料製の円環状の振動減衰部と、
前記振動減衰部の外周面に固定されたダンパーマスを有し、
前記ファンは、
前記回転軸に連結されることにより回転可能である金属製の円板と、
前記円板に形成され、円周方向に間隔をおいて配置された金属製の複数の羽根を有し、
前記円板は、平坦なダンパー側の面と、前記ダンパー側の面と反対の平坦な外面を有し、前記ダンパー側の面は、前記外面より前記トーショナルダンパーの近くに配置され、
前記円板は、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスの端面に重なり、
前記羽根の各々は、前記円板の前記外面から突出するほぼ扇形の平板であって、前記円板に対して傾斜しており、
前記羽根の各々は、前記円板と羽根の間の境界にある直線状の単一の折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に向けて延びる直線状の単一の端縁線と、前記折り曲げ線の径方向外端と前記端縁線の径方向外端を結ぶ円弧線で画定され、
前記円板は、前記複数の羽根に隣接する位置に複数のほぼ扇形の切り欠きを有し、前記切り欠きの各々は、この切り欠きに隣接する羽根の前記折り曲げ線と、前記折り曲げ線の径方向内端から径方向外側に延びる直線状の単一の端縁線で画定され、前記円板の外周で開口する
ことを特徴とするトーショナルダンパーアセンブリ。
【0058】
条項2. 前記トーショナルダンパーは、前記ハブと前記リムを連結する放射状に延びる複数のスポークと、隣り合う前記スポークの間に設けられて円周方向に間隔をおいて配置された複数の貫通孔を有し、
前記ファンの前記円板は、前記貫通孔を覆い、前記ファンの前記羽根および前記円板の前記切り欠きは、前記貫通孔よりも径方向外側に設けられている
ことを特徴とする条項1に記載のトーショナルダンパーアセンブリ。
【0059】
この条項によれば、ファンの円板がトーショナルダンパーの貫通孔を覆い、ファンの羽根および円板の切り欠きは、貫通孔よりも径方向外側に設けられているので、貫通孔を通じてエンジン側に侵入しようとする異物を円板で阻止することが可能であり、異物がエンジンに侵入することをさらに抑制することができる。
【0060】
条項3. 前記トーショナルダンパーと前記ファンの前記ダンパー側の面の間に介在させられた中間平板をさらに有し、
前記中間平板は、前記ファンの前記円板の前記ダンパー側の面に面接触し、
前記中間平板には、前記回転軸の軸線に沿って見た場合に、少なくとも前記リムと前記振動減衰部と前記ダンパーマスに重なる位置に開口または切り欠きが形成されていない
ことを特徴とする条項1に記載のトーショナルダンパーアセンブリ。
【0061】
この条項によれば、中間平板がファンの円板のダンパー側の面に面接触することにより、トーショナルダンパーとファンの間を通じてエンジン側に侵入しようとする異物を中間平板で阻止することが可能であり、異物がエンジンに侵入することをさらに抑制することができる。
【0062】
条項4. 前記中間平板は、前記トーショナルダンパーの前記ハブが嵌め込まれる円筒に支持され、前記円筒から径方向外側に向けて広がっており、
前記ファンは、前記円筒が嵌め込まれる円筒状のボスを有し、前記ボスから前記円板が径方向外側に向けて広がっている
ことを特徴とする条項3に記載のトーショナルダンパーアセンブリ。
【0063】
この条項によれば、中間平板を支持する円筒をファンのボスに嵌め込み、中間平板を支持する円筒にトーショナルダンパーのハブを嵌め込むことによって、容易にトーショナルダンパーアセンブリを組み立てることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 トーショナルダンパーアセンブリ
2 クランクケースのフロントカバー
2a 孔
4 クランクシャフト(回転軸)
4A 小径部
4B 大径部
4C キー溝
4D ネジ孔
6 キー
8 フランジボルト
8A フランジ
20 トーショナルダンパー
21 ハブ
21A キー溝
22 リム
23 振動減衰部
24 ダンパーマス
25 スポーク
26 貫通孔
27 ボス
30 ファン
31 円板
31A ダンパー側の面
31B 外面
32 羽根
32a 折り曲げ線
32b 端縁線
32c 円弧線
33 ボス
34 切り欠き
34b 端縁線
50 トーショナルダンパーアセンブリ
52 中間平板
53 ボス(円筒)
図1
図2
図3
図4
図5
図6