(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/63 20230101AFI20240122BHJP
G03B 13/02 20210101ALI20240122BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20240122BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20240122BHJP
H04N 23/69 20230101ALI20240122BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240122BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240122BHJP
G03B 5/00 20210101ALN20240122BHJP
【FI】
H04N23/63
G03B13/02
G03B17/56 B
G03B17/18
H04N23/69
G09G5/00 550C
G09G5/38
G03B5/00 K
(21)【出願番号】P 2019206274
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】華山 龍也
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 祐介
(72)【発明者】
【氏名】坂牧 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳史
(72)【発明者】
【氏名】戸村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】深井 陽介
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034494(JP,A)
【文献】特開2006-065103(JP,A)
【文献】特開2006-287920(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021728(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/047482(WO,A1)
【文献】特開2009-038515(JP,A)
【文献】特開2004-101342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
G03B 17/56 -17/58
G03B 5/00 - 5/08
G03B 13/00 -13/28
G03B 17/18 -17/20;17/36
G09G 5/00 - 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に固定される表示装置であって、
焦点距離を変更可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示手段と、
前記表示装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段で検出された前記姿勢の変化と、前記焦点距離とに基づいて、前記表示範囲の位置を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
ユーザの頭部に固定される表示装置であって、
被写体距離を検出する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示手段と、
前記表示装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段で検出された前記姿勢の変化と、前記撮像手段で検出された前記被写体距離とに基づいて、前記表示範囲の位置を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記撮像手段の焦点距離は変更可能であり、
前記制御手段は、前記焦点距離が第1の距離よりも長い第2の距離である場合に、前記焦点距離が前記第1の距離である場合に比べて、前記姿勢の変化による表示方向の変化が小さくなるように、前記姿勢の変化と前記焦点距離とに基づいて前記表示範囲の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記姿勢の変化による表示方向の変化が小さくなるように、前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記姿勢の変化による表示方向の変化が大きくなるように、前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記姿勢の変化による表示方向の変化を小さくするか大きくするかの設定を行う設定手段、をさらに有し、
前記制御手段は、前記設定に従って前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、さらに、前記表示装置の揺れに基づいて前記表示範囲の位置を制御する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記撮像手段の焦点距離は変更可能であり、
前記制御手段は、前記焦点距離が所定の距離よりも短い場合に、前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御することはしない
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記姿勢の変化量が第1の量よりも小さい場合に、前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御することはしない
ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記姿勢の変化量が第2の量よりも大きい場合に、前記姿勢の変化に基づいて前記表示範囲の位置を制御することはしない
ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
焦点距離を変更可能な撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示手段とを有し、ユーザの頭部に固定される表示装置の制御方法であって、
前記表示装置の姿勢を検出する姿勢検出ステップと、
前記姿勢検出ステップで検出された前記姿勢の変化と、前記焦点距離とに基づいて、前記表示範囲の位置を制御する制御ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に電子双眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
電子双眼鏡は、カメラと、使用時にユーザの目の前に配置されるディスプレイとを備え、カメラで撮影した映像をディスプレイ上にリアルタイムに表示する表示装置である。ユーザは、電子双眼鏡のディスプレイに表示された映像(望遠映像)を見ることで、双眼鏡を覗いたように遠くを観察することができる。電子双眼鏡には、ヘッドマウントディスプレイのように頭部に対して着脱可能(ウェアラブル)に構成されたものがある。
【0003】
特許文献1には、ユーザの視線位置を検出し、視線位置が撮影範囲の中心位置となるように撮影範囲を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的な電子双眼鏡の場合は、頭部の意図せぬ動きによって観察範囲(ディスプレイ上に表示される映像の被写体範囲(画角))が変化する。特に望遠倍率の高い映像を表示する場合には、頭部のわずかな振れによって、観察範囲が大きく変化する。また、撮影範囲が観察範囲となるような表示を行うように特許文献1に開示の技術を用いると、視線位置が撮影範囲の中心位置となるため、ユーザが所望の観察範囲の中で全体を見渡したい場合でも視線によって観察範囲が変化してしまう。
【0006】
このように、従来技術では、観察範囲の意図せぬ変化が発生するため、安定した観察(例えば、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察や、動きの速い観察対象を追従する観察)が行いにくい。そして、安定した観察が行いにくいことで、ユーザにストレスを与えることがある。このような課題は、ウェアラブルな電子双眼鏡の場合でも、ウェアラブルでない電子双眼鏡の場合でも生じる。
【0007】
本発明は、安定した観察を行いやすくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
ユーザの頭部に固定される表示装置であって、
焦点距離を変更可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示手段と、
前記表示装置の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段で検出された前記姿勢の変化と、前記焦点距離とに基づいて、前記表示範囲の位置を制御する制御手段と、を有することを特徴とする表示装置である。
【0009】
本発明の第2の態様は、
焦点距離を変更可能な撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示手段とを有し、ユーザの頭部に固定される表示装置の制御方法であって、
前記表示装置の姿勢を検出する姿勢検出ステップと、
前記姿勢検出手段で検出された前記姿勢の変化と、前記焦点距離とに基づいて、前記表示範囲の位置を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする制御方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、上述した制御方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定した観察を行いやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る処理フローを示すフローチャートである。
【
図2】実施例1~3に係る電子双眼鏡の外観図である。
【
図3】実施例1~3に係る電子双眼鏡のブロック図である。
【
図4】実施例1に係る表示装置の状態を示す模式図である。
【
図5】実施例1~3に係る被写体距離と移動量の関係を示す模式図である。
【
図6】実施例2に係る処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】実施例3に係る処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1について説明する。なお、ヘッドマウントディスプレイのように頭部に対して着脱可能(ウェアラブル)な電子双眼鏡に本発明を適用した例を説明するが、本発明が適用可能な表示装置はウェアラブルな電子双眼鏡に限られない。例えば、ウェアラブルでない電子双眼鏡に本発明を適用してもよいし、頭部に対して着脱可能な他のウェアラブルデバイス(例えば、VRゴーグル、ARグラス、MRグラス、スマートグラスなどのヘッドマウントディスプレイ)に本発明を適用してもよい。ユーザが周囲を肉眼で見ることができない(ユーザが両目で画像を見ることができる)ように両目を覆う表示装置(VRゴーグルなど)に、本発明を適用してもよい。ユーザが一方の目で画像を見ることができ、他方の目で周囲を肉眼で見ることができるように一方の目のみを覆う表示装置に、本発明を適用してもよい。詳細は後述するが、本発明によれば、ユーザが周囲を肉眼で見ることができない状況でも好適な観察が可能となるため、本発明は、両目を覆う表示装置に対して好適に適用できる。
【0014】
図2(A),2(B)は、実施例1に係る電子双眼鏡10のハードウェア構成を示す外観図である。
図2(A)は電子双眼鏡10を前方側から見た前面斜視図であり、
図2(B)は電子双眼鏡10を後方向から見た背面斜視図である。電子双眼鏡10は、眼鏡型の電子双眼鏡であり、頭部に対して着脱可能である。具体的には、電子双眼鏡10の左右のテンプル100で頭部を挟むことで、電子双眼鏡10が頭部に固定(装着)される。電子双眼鏡10は、テンプル100の他に、カメラ101、ディスプレイ102,103、パンニング部104、チルト部105、ジャイロセンサ106、及び、操作部材107を有する。
【0015】
カメラ101は撮像部であり、
図2(A)に矢印で示すように、パン方向とチルト方向に個別に回動可能である。つまり、カメラ101の撮像方向は、パン方向とチルト方向に個別に変更可能である。パンニング部104は、パンニング部104に内蔵されたアクチュエータを駆動することにより、カメラ101をパン方向(電子双眼鏡10に対してカメラ101を左右に傾ける方向)に回動させる。チルト部105は、チルト部105に内蔵されたアクチュエータを駆動することにより、カメラ101をチルト方向(電子双眼鏡1
0に対してカメラ101を上下に傾ける方向)に回動させる。なお、撮像方向を変更するメカニズムなどは特に限定されない。
【0016】
また、カメラ101は、その焦点距離を変更可能に構成されている。実施例1では、カメラ101の焦点距離が、電子双眼鏡10に対してユーザが行った操作(ユーザ操作)に応じて、100mmと400mm(いずれも35mmフルサイズ換算での焦点距離)の2段階で切り替えられるとする。操作部材107は、ユーザ操作を受け付ける部材(ボタンやスイッチなど)であり、例えばカメラ101の焦点距離の変更(切り替え)や、電子双眼鏡10の電源ON/OFFなどを指示するユーザ操作を受け付ける。なお、設定可能な焦点距離の数や範囲などは特に限定されない。焦点距離が所定の範囲内でシームレスに変更可能であってもよい。
【0017】
さらに、カメラ101は、オートフォーカス機能を有し、撮像範囲に含まれる被写体に対して自動的に合焦するように構成されている。ピント調整(オートフォーカス)において駆動する不図示のフォーカシングレンズの停止位置によって、ピントが合う(合焦する)被写体距離は一意に決まる。このため、フォーカシングレンズの停止位置と被写体距離との関係を示す情報(テーブルや関数)を予め電子双眼鏡10に格納することで、電子双眼鏡10において、当該情報を用いて、フォーカシングレンズの停止位置から、被写体距離を検出できるようになる。カメラ101は、このような方法で被写体距離を検出する機能も有する。なお、被写体距離の検出方法は特に限定されない。
【0018】
ディスプレイ102,103は、カメラ101によって撮像された画像の一部を表示範囲として表示する表示部である。撮像可能範囲全体を現像した画像に基づいて表示範囲が表示されてもよいし、表示範囲のみがカメラ101(撮像素子)から読み出されて、現像、表示されてもよい。電子双眼鏡10をユーザが装着することで、ディスプレイ102はユーザの右目の前に配置され、ディスプレイ103はユーザの左目の前に配置される。このため、ユーザは、ディスプレイ102に表示された画像を右目で、ディスプレイ103に表示された画像を左目で見ることになる。表示範囲は、パン方向(撮像された画像の左右方向(水平方向))とチルト方向(撮像された画像の上下方向(垂直方向))とに個別に移動可能である。なお、表示範囲の移動方向(表示範囲の位置の変更方向)などは特に限定されない。
【0019】
ジャイロセンサ106は、電子双眼鏡10の姿勢を検出する姿勢検出部であり、電子双眼鏡10の姿勢の変化(変化の有無や方向、大きさ等)を検出することもできる。電子双眼鏡10をユーザが装着している場合には、電子双眼鏡10の姿勢はユーザの頭部の姿勢に対応する。このため、ジャイロセンサ106は、頭部の姿勢や動き(振れ)を検出できる。
【0020】
図3は、電子双眼鏡10の構成を示すブロック図である。CPU201は、電子双眼鏡10の各部を制御する。CPU201は、カメラ101、ディスプレイ102,103、ジャイロセンサ106、操作部材107、カメラ回動部202などに接続されている。CPU201は、電子双眼鏡10の各部からの情報を処理したり、処理結果に応じて各部の動作を制御したりする。カメラ回動部202は、パンニング部104とチルト部105を含み、CPU201からの指示に応じて、カメラ101をパン方向やチルト方向に回動させる。
【0021】
図1は、実施例1に係る処理フロー(電子双眼鏡10の処理フロー)を示すフローチャートである。
図1の処理フローは、例えば、CPU201が不図示のROMに格納されているプログラムを不図示のRAMに展開して実行することにより実現される。電子双眼鏡10の電源ONを指示するユーザ操作が行われると、電子双眼鏡10が起動し、カメラ1
01で撮像された画像の一部を表示範囲としてディスプレイ(ディスプレイ102,103)上にリアルタイムに表示する処理が開始される。これにより、ユーザは、カメラ101によって撮像されてディスプレイに表示された画像を見て、被写体の観察を始めることができる。そして、
図1の処理フローが開始する。カメラ101の焦点距離の初期値(電源ON直後の焦点距離)は特に限定されないが、ユーザが観察対象を見つけやすいように、広角の焦点距離であることが好ましい。実施例1では、電源ON直後に焦点距離が100mmに制御されるとする。
図1では示されていないが、焦点距離の変更(切り替え)を指示するユーザ操作が
図1の処理フロー中に行われる度に、焦点距離は、100mmと400mmの一方から他方へ切り替えられる。また、実施例1では、カメラ101の光軸が電子双眼鏡10の正面方向(電子双眼鏡10を装着したユーザの顔が向いている方向)と平行になるように、カメラ101が固定されているものとする。
【0022】
図4(A)は、表示方向(表示範囲に対応するカメラ101の撮像方向;例えば、カメラ101から表示範囲の中心位置に対応する被写体位置に向かう方向)の初期方向(電源ON直後の表示方向;基準方向)を示す。
図4(A)に示すように、基準方向は、カメラ101の光軸に一致する方向であり、電子双眼鏡10の正面方向(電子双眼鏡10を装着したユーザの顔が向いている方向)と平行な方向である。
図4(A)は、表示方向のパン方向成分が分かるように、ユーザの頭上を見る視点で描かれているが、表示方向のチルト方向成分も同様である。なお、以下ではパン方向へ表示方向(すなわち表示範囲の位置)を変更する制御のみを説明するが、表示方向は、パン方向へ表示方向を変更する制御方法と同様の制御方法で、チルト方向へも変更される。
【0023】
図3のS101では、カメラ101は、撮像した画像に基づいて、オートフォーカス(AF)制御や自動露出(AE)制御を行う。
【0024】
S102では、カメラ101は、S101のAF制御の結果から、被写体距離Lを検出(取得)し、CPU201は、検出された被写体距離Lに基づいて表示範囲の移動量A1を決定(算出)する。
【0025】
図5は、被写体距離Lと移動量A1の関係を示す。
図5の星印は、ユーザの正面に存在する観察対象を示す。通常、肉眼での観察では、ユーザは、被写体に顔を向け、被写体を視界の中央にとらえる。ここで、表示方向が基準方向である場合を考える。この場合に、カメラ101の取り付け位置に依って、肉眼でユーザの視界の中央にとらえられる観察対象が、ディスプレイの中央に表示されず、ユーザが違和感を覚えてしまうことがある。S102で決定される移動量A1は、このような違和感を低減するための移動量である。実施例1では、左に向かう移動方向を正方向とし、右に向かう移動を負方向とする。
図5では、頭部の中心から右側に距離aだけずれた位置にカメラ101が取り付けられている。このため、移動量A1=φ1=arctan(a/L1)で表示範囲を移動させることで、被写体距離L1に存在する観察対象(ユーザの正面に存在する観察対象)をディスプレイの中央に表示できる。同様に、移動量A1=φ2=arctan(a/L2)で表示範囲を移動させることで、被写体距離L2に存在する観察対象(ユーザの正面に存在する観察対象)をディスプレイの中央に表示できる。このように、S102では、被写体距離が短いほど大きい移動量A1が、被写体距離Lから、関係式「A1=arctan(a/L)」に基づいて決定される。なお、この関係式によれば、被写体距離Lが比較的長い場合に、移動量A1は略0(ゼロ)になる。このため、遠距離の被写体のみの観察を前提とする場合や、被写体距離Lが所定距離よりも長い場合に、移動量A1=0としてもよい。
【0026】
図1のS103では、CPU201は、カメラ101の焦点距離が閾値(所定距離)よりも長いが否かを判断する。焦点距離が閾値よりも長い場合はS104へ処理が進められ、焦点距離が閾値以下の場合はS107へ処理が進められる。焦点距離が閾値以上の場合
にS104へ処理が進められ、焦点距離が閾値未満の場合にS107へ処理が進められてもよい。実施例1では、設定可能な焦点距離が100mmと400mmであるため、S103では、焦点距離が400mmか否かが判断され、400mmの場合にS104へ処理が進められ、100mmの場合にS107へ処理が進められる。
【0027】
S104では、CPU201は、ジャイロセンサ106を用いて電子双眼鏡10(頭部)の姿勢を検出し、当該姿勢の変化を表す角度θを検出する。
【0028】
S105では、CPU201は、S104で検出された角度θ(電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化)に応じて処理を切り替える。具体的には、電子双眼鏡10には、2つの閾値θ1,θ2が予め格納されている(0<θ1<θ2)。|θ|<θ1の場合、つまり、姿勢の変化量が第1の量よりも小さい場合には、S107へ処理が進められる。|θ|>θ2の場合、つまり、姿勢の変化量が第2の量よりも大きい場合にも、S107へ処理が進められる。θ1≦|θ|≦θ2の場合、つまり、姿勢の変化量が第1の量以上かつ第2の量以下の所定範囲内である場合には、S106へ処理が進められる。|θ|=θ1や|θ|=θ2の場合は、S106ではなく、S107へ処理が進められてもよい。
【0029】
S106では、CPU201は、S104で検出された角度θ(電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化)に基づいて、表示範囲の移動量A2を決定(算出)する。
【0030】
ここで、表示範囲の移動制御を行わない場合を考える。具体的には、常に、カメラ101の光軸に一致し、且つ、電子双眼鏡10の正面方向(電子双眼鏡10を装着したユーザの顔が向いている方向)と平行な方向が、表示方向とされる場合を考える。この場合は、
図4(B)に示すように、
図4(A)の状態から電子双眼鏡10(頭部)が角度θだけ動くと、表示方向も角度θだけ動く。
【0031】
S106では、CPU201は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化が小さくなるように、角度θに基づいて移動量A2を決定する。具体的には、
図4(C)に示すように、表示方向が角度θ/4だけ動くように、移動量A2=-3θ/4が決定される。つまり、電子双眼鏡10(頭部)が動く方向と逆方向に、電子双眼鏡10(頭部)が動く量(大きさ)の3/4の量だけ表示範囲が動くように、移動量A2が決定される。上述したように、実施例1では、左に向かう移動方向が正方向であり、右に向かう移動方向が負方向である。そのため、電子双眼鏡10(頭部)が左方向に回動した場合は、角度θは正の値となり、移動量A2=-3θ/4は負の値となる。電子双眼鏡10(頭部)が右方向に回動した場合は、角度θは負の値となり、移動量A2=-3θ/4は正の値となる。電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくすることで、観察範囲(ディスプレイ上に表示される映像の被写体範囲(画角))を維持したり、ゆっくり変更したりする観察が行いやすくなる。
【0032】
S106の処理による上記効果について、具体的に説明する。ここでは、カメラ101の撮像素子(イメージセンサ)が35mmフルサイズ(36mm×24mm)の撮像素子であり、焦点距離が400mmである場合を考える。そして、ユーザ(電子双眼鏡10;カメラ101)から20m離れた場所にいる体長0.2m程度の鳥を観察する場合を考える。焦点距離が400mmの場合には、観察範囲の水平画角(水平方向(左右方向)の画角)は5.15°程度となる。このため、20m離れた場所での観察範囲の水平幅(水平方向の幅)は、実距離で1.8m程度となり、鳥を観察範囲の中央に捉えていれば
図4(D)に示すような画像が表示される。ここで、電子双眼鏡10(頭部)が左方向に角度θ=1°だけ動いた場合を考える。この場合に、表示範囲の移動制御を行わなければ、表示方向も左方向に角度θ=1°だけ動き、20m離れた場所で0.35m程度だけ観察範囲が左方向に動くため、
図4(E)の画像が表示される。このように、角度θが小さい場合
でも、観察範囲の変化は大きいため、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察が行いにくい。実施例1では、表示方向が変化する角度が角度θの1/4に抑えられるため、
図4(F)のように、観察範囲の変化も抑えられ、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察が行いやすくなる。
【0033】
S106の処理による他の効果について説明する。実施例1では、焦点距離が100mmの場合には、表示範囲を移動させない移動量A2=0が決定される(詳細は後述)。従って、焦点距離が400mmの場合に、表示方向が変化する角度を、電子双眼鏡10(頭部)が変化した角度θの1/4とすることにより、ユーザは、焦点距離が100mmの場合と同じような感覚で観察範囲を変更できるようになる。具体的には、焦点距離が100mmの場合と400mmの場合とで、角度θが同じであれば、電子双眼鏡10(頭部)の変化による観察範囲の変化(観察範囲の移動量)を同じにすることができる。
【0034】
なお、S106で決定される移動量A2は、-3θ/4に限られない。電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくすれば、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察が行いやすくなる。電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化量に対する表示方向の変化量の比率(敏感度;上述した1/4)を1よりも小さくすれば、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくできる。表示範囲の移動制御を行わない場合には、焦点距離が長いほど、電子双眼鏡10(頭部)の変化による観察範囲の変化は大きくなる。このため、焦点距離が第1の距離よりも長い第2の距離である場合に、焦点距離が第1の距離である場合に比べて、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくすることが好ましい。換言すれば、焦点距離が第2の距離よりも短い第1の距離である場合に、焦点距離が第2の距離である場合に比べて、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくすることが好ましい。そして、焦点距離が長いほど電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化が小さくなるようにすることがより好ましい。第1の距離と第2の距離は特に限定されないが、上記の例では、第1の距離は100mmであり、第2の距離は400mmである。さらに、上記比率(敏感度)は、焦点距離に対する第1の距離の比率と略一致することが好ましい。そのようにすれば、焦点距離を第1の距離に設定して表示範囲の移動制御を行わない場合と同じような感覚で観察範囲を変更できるようになる。この場合に、設定可能な最小の焦点距離を第1の距離として用いれば、焦点距離に依らず同じ感覚で観察範囲を変更できるようになる。
【0035】
図1のS107では、CPU201は、表示範囲を移動させない移動量A2=0を決定する。一般的に、焦点距離が短い場合(広角の場合;S103のNOに相当)は、電子双眼鏡10の意図せぬ姿勢変化(頭部の意図せぬ動き)による観察範囲の変化は目立ちにくい。S105で|θ|<θ1と判断された場合は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化量は非常に小さく、観察範囲は安定している。そして、S105で|θ|>θ2と判断された場合は、観察範囲を変更するためにユーザが意図的に頭部を動かした可能性が高く、観察範囲の変化を抑制するS106の処理はユーザの意図に反する。このため、実施例1では、それらの場合にS107へ処理が進められるようにしている。
【0036】
なお、長い焦点距離(望遠の焦点距離;電子双眼鏡10の意図せぬ姿勢変化による観察範囲の変化が目立ちやすい焦点距離)が前提の場合などにおいて、焦点距離に依らずS104などへ処理が進められるように、S103の処理を省略してもよい。電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化量に依らずS106へ処理が進められるように、S105の処理を省略してもよい。
【0037】
図1のS108では、CPU201は、S102で決定した移動量A1と、S106またはS107で決定した移動量A2とから、表示範囲の最終的な移動量A=A1+A2を
決定(算出)する。なお、移動量A1=0とすることが予め決まっている場合、例えば遠距離の被写体のみの観察を前提とする場合には、被写体距離Lに依らず移動量A=A2が決定されるように、S102の処理を省略してもよい。
【0038】
S109では、CPU201は、S108で決定した移動量Aで表示範囲を移動させる。
【0039】
S110では、CPU201は、操作部材107からの情報を監視し、電子双眼鏡10の電源OFFを指示するユーザ操作が行われたか否かを判断する。電源OFFの指示があるまで、S101~S109の処理が繰り返され、電源OFFの指示があると、
図1の処理フローが終了し、電子双眼鏡10が停止する(電子双眼鏡10の電源が切られる)。
【0040】
以上述べたように、実施例1によれば、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化に基づいては表示範囲の位置が制御される。これにより、安定した観察を行いやすくすることができる。具体的には、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくすることにより、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察を行いやすくすることができる。
【0041】
なお、
図1の処理フローでの表示範囲の位置の制御とは別に、手ブレ補正のように、電子双眼鏡10の揺れに基づいて表示範囲の位置が常に制御されてもよい。具体的には、電子双眼鏡10の揺れによる表示方向の揺れを抑制するように、表示範囲の位置が常に制御されてもよい。電子双眼鏡10の姿勢が変わらずに電子双眼鏡10が前後上下左右に揺れることによる表示方向(表示位置(表示範囲に対応するカメラ101の撮像位置;例えば、表示範囲の中心位置に対応する被写体位置))の揺れが抑制されてもよい。電子双眼鏡10の姿勢の揺れによる表示方向の揺れが抑制されてもよい。それらの揺れの両方が抑制されてもよい。電子双眼鏡10の揺れは、ジャイロセンサ106で検出されてもよいし、ジャイロセンサ106とは異なる部材(センサ)で検出されてもよい。電子双眼鏡10の揺れの検出方法は特に限定されない。例えば、所定の周波数の揺れ(微振動)が検出され、当該揺れによる表示方向の揺れが抑制されてもよい。振動センサから出力された振れ信号(検出結果)に基づき、振れ信号の値が閾値未満の場合に振動(手ブレ)と判断され、振れ信号の値が閾値以上の場合に振動でない姿勢変化と判断されてもよい。特開2015-075697号公報などに記載された種々の技術を用いて、振動と、振動でない姿勢変化とを区別して検出できる。
【0042】
電子双眼鏡10の揺れに基づく表示範囲の位置の制御の代わりに、カメラ101の撮像方向の制御が行われてもよい。具体的には、電子双眼鏡10の揺れによる表示方向の揺れを抑制するように、撮像方向が制御されてもよい。
【0043】
同様に、被写体距離Lに基づく表示範囲の位置の制御(移動量A1での移動)の代わりに、撮像方向の制御が行われてもよい。
【0044】
また、パン方向へ表示範囲を移動させる制御方法は、チルト方向へ表示範囲を移動させる制御方法と異なってもよい。例えば、パン方向とチルト方向の一方への表示範囲の制御は第1の敏感度で行い、パン方向とチルト方向の他方への表示範囲の制御は第1の敏感度と異なる第2の敏感度で行ってもよい。
【0045】
<実施例2>
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくする例を説明した。このような制御により、観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察が行いやすくなる。しかしながら、ユ
ーザは、動きの速い観察対象を追従する観察を行いたいこともある。そのような観察は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくした方が行いやすい。そこで、実施例2では、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくすることが可能な例を説明する。なお、以下では、実施例1と異なる点(構成や処理など)について詳しく説明し、実施例1と同様の点については適宜説明を省略する。
【0046】
図6は、実施例2に係る処理フロー(電子双眼鏡10の処理フロー)を示すフローチャートであり、
図1のフローチャートを変形したものである。
図6において、
図1と同じ処理には、
図1と同じ符号が付されている。
【0047】
S104の次に、S201では、CPU201は、設定されている敏感度S(電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化量に対する表示方向の変化量の比率)を、不図示のメモリ(例えばROM)から読み出す。敏感度Sとして設定可能な値や、設定可能な値の数などは特に限定されないが、実施例2では、以下の5段階の値のいずれかが、敏感度Sとして設定されるとする。敏感度Sの設定方法も特に限定されないが、実施例2では、ユーザ操作に応じて敏感度Sが設定されるとする。
非常に鈍感・・・1/4
鈍感・・・・・・1/2
標準・・・・・・1
敏感・・・・・・1.2
非常に敏感・・・1.5
【0048】
詳細は後述するが、「標準」に対応する1は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化に基づく表示範囲の移動制御を行わない敏感度である。「鈍感」や「非常に鈍感」に対応する値(1よりも小さい値)は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくする敏感度であり、敏感度が小さいほど、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化が小さくなる。観察範囲を維持したり、ゆっくり変更したりする観察を行う場合には、「鈍感」(1/2)や「非常に鈍感」(1/4)を設定することが好ましい。「敏感」や「非常に敏感」に対応する値(1よりも大きい値)は、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくする敏感度であり、敏感度が大きいほど、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化が大きくなる。動きの速い観察対象を追従する観察を行う場合には、「敏感」(1.2)や「非常に敏感」(1.4)を設定することが好ましい。
【0049】
なお、設定された1つの敏感度Sが、パン方向への表示範囲の制御と、チルト方向への表示範囲の制御との両方に使用されてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、パン方向への表示範囲の制御に用いる敏感度S1と、チルト方向への表示範囲の制御に用いる敏感度S2とが個別に設定されてもよい。パン方向とチルト方向の一方への表示範囲の制御には所定の敏感度(例えば1)が用いられ、パン方向とチルト方向の他方への表示範囲の制御に用いる敏感度Sがユーザ操作などに応じて設定されてもよい。
【0050】
図6の説明に戻る。実施例1では、S105で|θ|>θ2と判断された場合に、表示範囲の移動制御を行わない移動量A2=0が決定されるように、S107へ処理を進めた。動きの速い観察対象を追従する観察では、表示範囲の移動制御を行わないと観察対象を見失う虞があるため、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化が大きくなるように、表示範囲の移動制御を行うことが好ましい。そこで、実施例2では、S105で|θ|>θ2と判断された場合に、動きの速い観察対象を追従する観察が行われている可能性を考慮して、S202へ処理を進める。S202では、CPU201は、設定されている敏感度Sが1よりも大きいか否か判断する。敏感度Sが1よりも大きい場合には、動きの速い観察対象を追従する観察が行われている可能性が高いため、S106へ処
理が進められる。敏感度Sが1以下の場合には、動きの速い観察対象を追従する観察が行われている可能性が低いため、S107へ処理が進められる。なお、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化量に依らずS106へ処理が進められるように、S105とS202の処理を省略してもよい。敏感度Sに依らずS106へ処理が進められるように、S202の処理を省略してもよい。
【0051】
S106では、実施例1と同様に、S104で検出された角度θに基づく移動量A2が決定(算出)される。実施例2では、角度θと敏感度Sから、移動量A2=-(1-S)×θが算出される。このため、敏感度S=1の場合には、表示範囲の移動制御を行わない移動量A2=0が算出される。敏感度Sが1よりも小さい場合には、敏感度Sが小さいほど絶対値が大きく且つ角度θとは正負が逆の移動量A2、すなわち敏感度Sが小さいほど電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくする移動量A2が算出される。敏感度Sが1よりも大きい場合には、敏感度Sが大きいほど絶対値が大きく且つ角度θと正負が同じ移動量A2、すなわち敏感度Sが大きいほど電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくする移動量A2が算出される。
【0052】
以上述べたように、実施例2によれば、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を大きくすることが可能であるため、動きの速い観察対象を追従する観察を行いやすくすることができる。さらに、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化による表示方向の変化を小さくするか、大きくするか、維持するかを設定できるため、利便性が向上される。
【0053】
<実施例3>
以下、本発明の実施例3について説明する。実施例1では、カメラ101の焦点距離が100mmと400mmの2段階で切り替え可能であり、焦点距離が100mmの場合に電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化に基づく表示範囲の移動制御を行わない例を説明した。実施例3では、焦点距離が100mmから400mmまでの範囲内で自由に(連続的に)変更可能な例を説明する。そして、焦点距離に応じて敏感度Sを設定し、広角端(最小の焦点距離)である100mmが設定されている場合でも、電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化に基づく表示範囲の移動制御を行うことが可能な例を説明する。なお、以下では、実施例1と異なる点(構成や処理など)について詳しく説明し、実施例1と同様の点については適宜説明を省略する。
【0054】
図7は、実施例3に係る処理フロー(電子双眼鏡10の処理フロー)を示すフローチャートであり、
図1のフローチャートを変形したものである。
図7において、
図1と同じ処理には、
図1と同じ符号が付されている。電子双眼鏡10(頭部)の姿勢の変化に基づく表示範囲の移動制御を焦点距離に依らず行うことが可能となるように、S103の処理は除かれている。
【0055】
S104の次に、S301では、CPU201は、カメラ101の焦点距離に応じて敏感度Sを決定(算出)する。S106では、実施例1と同様に、S104で検出された角度θに基づく移動量A2が決定(算出)される。実施例3では、角度θと敏感度Sから、移動量A2=-(1-S)×θが算出される。
【0056】
焦点距離と敏感度Sの対応関係を示す情報(テーブルや関数)を用いる方法など、現在の焦点距離に応じた敏感度Sの決定方法は特に限定されない。焦点距離と敏感度Sの具体的な対応関係や、焦点距離の具体的な値、焦点距離に応じた敏感度Sの具体的な値なども特に限定されない。実施例3では、人間の目の画角に対応すると言われている50mmを基準の焦点距離とし、現在の焦点距離に対する基準の焦点距離の比率が、敏感度Sとして決定されるとする。例えば、カメラ101の焦点距離が100mmに設定されている場合
には、S301で敏感度S=50/100=1/2が決定され、S106で移動量A2=-(1-(1/2))×θ=-θ/2が決定される。同様に、カメラ101の焦点距離が300mmに設定されている場合には、S301で敏感度S=50/300=1/6が決定され、S106で移動量A2=-(1-(1/6))×θ=-5θ/6が決定される。
【0057】
以上述べたように、実施例3によれば、各焦点距離で、対応する焦点距離に応じた敏感度Sが決定されて、決定された敏感度Sで表示範囲の移動制御が行われる。これにより、焦点距離に依らず安定した観察を行いやすくすることができる。
【0058】
なお、実施例1~3(変形例を含む)はあくまで一例であり、本発明の要旨の範囲内で実施例1~3の構成を適宜変形したり変更したりすることにより得られる構成も、本発明に含まれる。実施例1~3の構成を適宜組み合わせて得られる構成も、本発明に含まれる。
【0059】
<その他の実施例>
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0060】
10:電子双眼鏡 101:カメラ 102,103:ディスプレイ
104:パンニング部 105:チルト部 106:ジャイロセンサ
201:CPU 202:カメラ回動部