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特許7423272原稿読取装置、原稿読取装置の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】原稿読取装置、原稿読取装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/401 20060101AFI20240122BHJP
   H04N 1/191 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H04N1/401
H04N1/191
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019209775
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021082967
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 太輔
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-368997(JP,A)
【文献】特開2013-179386(JP,A)
【文献】特開2003-234902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40 - 1/409
H04N 1/04 - 1/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する照射手段と、
前記原稿から反射した光を受光するセンサと、
基準部材と、
前記センサが前記基準部材を読み取ることにより得られた基準画像データにおける複数の輝度レベルから求める平均輝度レベルに基づいて、ノイズ除去に用いられるフィルタを選択する選択手段と、
前記輝度レベルに基づいてシェーディング補正を行う補正手段と、
前記センサによって読み取られた原稿の画像データに対して前記選択されたフィルタを用いてノイズ除去を行うフィルタ処理手段と、を有する
ことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記基準部材は、本体に備えられた白色部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記フィルタ処理手段は、前記ノイズ除去を前記原稿の画像データのすべての画素に対して行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記フィルタ処理手段は、前記原稿の画像データの対象画素に対して、前記対象画素の周囲画素の画像データを用いてノイズ除去を行う
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記平均輝度レベルに基づいて、前記ノイズ除去を行うためのフィルタの強度を選択する
ことを特徴とする請求項4に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
前記平均輝度レベル、前記フィルタの強度との関係は、予め記録されている
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記センサにより複数の原稿を読み取る場合前記複数の原稿を読み取る前に取得した前記平均輝度レベルに基づいて、前記複数の原稿に対して用いるフィルタを一括して選択する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記センサにより複数の原稿を読み取る場合第1の原稿を読み取る前に取得した第1の平均輝度レベルに基づいて第1のフィルタを選択し、第2の原稿を読み取る前に取得した第2の平均輝度レベルに基づいて第2のフィルタを選択する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項9】
前記選択手段は、工場出荷時、または前記照射手段、前記センサの交換時に取得した前記平均輝度レベルに基づいて前記フィルタを選択する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項10】
原稿に光を照射する照射手段と、
前記原稿から反射した光を受光するセンサと、
基準部材と、
を有する原稿読取装置の制御方法であって、
前記センサが前記基準部材を読み取ることにより得られた基準画像データにおける複数の輝度レベルから求める平均輝度レベルに基づいて、ノイズ除去に用いられるフィルタを選択する選択ステップと、
前記輝度レベルに基づいてシェーディング補正を行う補正ステップと、
前記センサによって読み取られた原稿の画像データに対して前記選択されたフィルタを用いてノイズ除去を行うフィルタ処理ステップと、を有する
ことを特徴とする原稿読取装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の原稿読取装置の制御方法をコンピュータにより実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像ノイズを低減するための処理を行う原稿読取装置、原稿読取装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿に記録(印字等)された画像や文字を読み取る手段として、LED等の光源から原稿に光を照射し、原稿からの反射光をイメージセンサなどの受光素子で読み取る画像読取装置が知られている。このような画像読取装置では、原稿台ガラス上に読み取り面を下向きにして原稿を載置し、原稿台ガラスの下方に備えられた読み取り部を原稿の一方向に沿ってスキャンすることで、原稿に記録された画像及び文字を読み取る方式が知られている。また、原稿に記録された画像及び文字を読み取る方式としては、読み取り部を固定して、原稿搬送機構によって搬送される原稿を読み取る自動原稿送り装置(Auto Document Feeder:ADF)を用いる構成も知られている。
【0003】
このような原稿読取装置において用いられるイメージセンサとしては、固体撮像素子(Charge Coupled Device:CCD)や密着イメージセンサ(Contact Image Sensor:CIS)などがある。一般的に、イメージセンサは、画素毎に受光感度にバラつきを有する。この感度バラつきを補正しないまま画像を読み取ると、画像にざらつきが生じたり、色味が変わってしまったりすることがある。
そこで、原稿を読み取る位置とは異なる位置に、色の基準となる白色部材を設け、原稿を読み取る前に白色部材からの反射光を読み取ることで、画素毎の感度バラつきを補正する技術(以下、「シェーディング」という)が知られている。
【0004】
また、イメージセンサを用いた画像処理装置においては、画像ノイズを除去するために、注目画素とその周辺画素の撮像信号を比較し、その差分に応じてノイズ低減処理を行うノイズリダクション方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-60774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原稿から読み取った画像データに生じる画像ノイズのレベルはイメージセンサからの出力信号レベル、すなわち受光素子の受光感度に大きく依存する。受光素子の受光感度は、例えば、画像読取装置における原稿の読み取りの速度によっても異なる。さらには、原稿読取装置において用いられるLED等の光源についても、発光の強度に不均一性があったり、点灯時間や環境温度等によって出力レベルが低下したりすることが知られている。
すなわち、画像ノイズのレベルは、イメージセンサのような受光素子やLEDのような光源などの原稿読取装置の状態によって変動するものである。このため、特許文献1のような条件を固定したノイズ低減処理では、原稿読取装置の状態の変動を抑制した画像ノイズの低減は困難であるという問題がある。
そこで、本発明は上記のような問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原稿に光を照射する照射手段と、前記原稿から反射した光を受光するセンサと、基準部材と、前記センサが前記基準部材を読み取ることにより得られた基準画像データにおける複数の輝度レベルから求める平均輝度レベルに基づいて、ノイズ除去に用いられるフィルタを選択する選択手段と、前記輝度レベルに基づいてシェーディング補正を行う補正手段と、前記センサによって読み取られた原稿の画像データに対して前記選択されたフィルタを用いてノイズ除去を行うフィルタ処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原稿読取装置の状態に依存することなく、画像ノイズのレベルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】原稿読取装置の概略図である。
図2】原稿読取装置の断面図である。
図3】原稿読取装置の制御ブロック図である。
図4】シェーディング補正について説明するための図である。
図5】フィルタ処理について説明するための図である。
図6】実施例1の原稿読み取り処理の全体を示すフローチャートである。
図7】実施例1において用いられるフィルタの選択を説明するための図である。
図8】実施例2の原稿読み取り処理の全体を示すフローチャートである。
図9】実施例2において用いられるフィルタの選択を説明するための図である。
図10】実施例3のフィルタ選択処理を示すフローチャートである。
図11】実施例3の原稿読み取り処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、各実施例を用いて説明する。
なお、各実施例に記載された装置の構成や処理の手順は、本発明の内容を説明するための一例である。本発明の技術的範囲が各実施例に記載される内容に限定されることを意図するものではない。
【0011】
<実施例1>
図1は、本実施例における原稿読取装置10の概略図である。なお、図1は、後述するカバー103が開かれた状態を示している。
原稿読取装置10の本体100は、原稿101を載置するための原稿台ガラス102を備えている。原稿台ガラス102の上方には、原稿台ガラス102を上部から覆うためのカバー103が不図示のヒンジなどにより開閉可能ように取り付けられている。カバー103の底面には、カバー103が閉じられたときに原稿101を押圧するための白色の押圧板104が貼付されている。
原稿台ガラス102の下方には、後述する光源、イメージセンサ、光学部品等を含む、画像読み取り部105が備えられている。
【0012】
原稿の端部近傍のフレーム106の裏面には、後述するシェーディング補正を行う際に用いられる白色基準板が備えられている。また、カバー103の上部には、原稿搬送部107が備えられている。なお、白色基準板や原稿搬送部107の詳細については、図2を用いて後述する。
ユーザにより原稿の読み取り開始の指示がなされると、画像読み取り部105は、光源を点灯させ、不図示のモータによって図1における右方向(以下、「副走査方向」という)に移動しながら、原稿台ガラス102に載置された原稿101の画像を読み取る。
【0013】
図2は、原稿読取装置10の断面図である。なお、図2は、図1に示した原稿読取装置10を正面から見た図であるが、ここではカバー103が閉じられた状態を示している。
原稿搬送部107は、原稿101を載置するトレイ201を備えている。トレイ201上には複数枚の原稿101を載置することが可能であり、原稿101は最上部に載置されているものから順に1枚ずつピックアップローラ202の回転によって本体100内に供給されていく。なお、ピックアップローラ202は、図示しないモータによって回転駆動される。
ピックアップローラ202は表面の摩擦力でのみ原稿101を供給するため、原稿101の摩擦係数によっては複数枚の原稿101が同時に供給されてしまうことがある。そのため、ビックアップローラ202により供給された原稿101は、分離ローラA203と分離ローラB204によって1枚ずつに分離される。なお、本実施例では、分離ローラA203は原稿を搬送する方向に回転し、分離ローラB204は回転しないように構成されている。
【0014】
分離ローラA203及び分離ローラB204により1枚ずつに分離された原稿101は、1対の前搬送ローラ205の回転によって下流側に搬送される。その後、原稿101は、1対のリードローラ206によって、画像の読み取り位置Aまで搬送される。
読み取り位置Aの下方には、透明な流し読みガラス207が配置されており、流し読みガラス207の下方には、画像読み取り部105が備えられている。読み取り位置Aまで搬送されてきた原稿101は、読み取り位置Aの原稿を読み取るための位置に停止している状態の画像読み取り部105によって画像が読み取られる。
画像読み取り部105には、LED208、イメージセンサ209、光学部品群210が備えられており、LED208が原稿101に光を照射し、イメージセンサ209がその反射光を読み取るように構成される。
【0015】
読み取り位置Aの上流には、搬送されてくる原稿101の先端を検知する原稿先端検知センサ211が配置されている。画像読み取り部105は、原稿先端検知センサ211が原稿101の先端を検知したタイミングから所定時間後に画像の読み取りを開始する。なお、画像読み取り部105は、後述するコントローラ300によって制御される。
原稿101は流し読みガラス207から浮き上がってしまうと、画像読み取り部105の焦点から離れてしまい、画像の読み取り強度が弱くなってしまう。そのため、原稿101は押さえローラ212により上方から押さえられる。なお、本実施例では、押さえローラ212は白色の部材である。
読み取られた原稿101は1対の後搬送ローラ213によりさらに下流に搬送され、最後に1対の排紙ローラ214により装置の外に排出される。排出された原稿101は、排紙トレイ215に載置される。
【0016】
一方、原稿101が、トレイ201にではなく、原稿台ガラス102に載置されている場合には、画像読み取り部105を副走査方向(図2における右方向)にスキャンさせ、原稿台ガラス102に載置されている原稿101の画像を読み取る。
また、流し読みガラス207の下流(図2における右側)には、白色部材からなる白色基準板216が備えられている。白色基準板216は、シェーディング補正を算出する際に輝度レベルの基準となる基準画像データを提供するための基準部材として用いられるとともに、本実施例では、後述のフィルタ処理に用いられるフィルタの強度を選択する際に用いられる。
なお、本実施例では、LED208及びイメージセンサ209などを有する画像読み取り部105が移動することより読み取り位置を移動させる構成を有しているが、他の構成でも構わない。例えば、イメージセンサ209は移動せずに、LED208と光学部品群210とを移動させることにより読み取り位置を移動させる構成でも構わない。
【0017】
図3は、原稿読取装置10の制御ブロック図である。
原稿読取装置10のコントローラ300には、画像読み取り部105が接続される。また、コントローラ300には、ユーザが読み取り開始等の指示をする際に用いられる操作部301が接続される。さらに、コントローラ300には、画像読み取り部105を走査させるスキャンモータ302、原稿搬送部107内の各種ローラを駆動する搬送モータ303、原稿先端検知センサ211などが接続される。
【0018】
コントローラ300は、原稿読取装置10全体を制御するメインCPU304及び各種データを保持するための不揮発性メモリ309を備えている。CPU304は、操作部301からの指示に応じて、画像読取装置10の制御を行う。また、CPU304は、後述する画像処理回路308の制御も行う。
画像読み取り部105は、原稿に光を照射するLED208、LED208によって照射された原稿101の反射光をアナログ画像信号に変換するイメージセンサ209、アナログ画像信号をデジタル画像データに変換するA/D変換部305を備えている。以後、各画素について、A/D変換部305により変換されたデジタル画像データの信号レベルを「輝度レベル」という。
なお、本実施例のイメージセンサ209は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光を受光する画素をそれぞれ主走査方向(原稿の幅方向)に7500個有している。
【0019】
A/D変換部305から出力されたデジタル画像データは、コントローラ300内にある画像メモリ306に1ライン(7500画素×3色)単位で格納される。
シェーディング回路307は、LED208の光量の不均一性や、イメージセンサ209の各画素の感度バラつき等を画素毎に補正するため、画素毎にゲインをかけてシェーディング補正を行う。
画像処理回路308は、シェーディング補正された画像データに後述するフィルタ処理などの画像処理を行い後続に出力する。
【0020】
次に、図4を用いて、シェーディング補正について説明する。
シェーディング補正は、原稿を読み取る前の所定のタイミングにおいて、白色基準板216を読み取ったときの画像データ(以下、「白色画像データ」という)の輝度レベルを基準画像データとして演算処理をする。なお、説明を簡略化するため、図4では、RGBのうち1色分の画像データについてのみ説明を行う。その他の2色分についても、同様の処理が実行される。
【0021】
まず、シェーディング回路307において、画像メモリ306に格納された1ライン単位の白色画像データを16ライン分取得し、主走査方向の同一位置における白色画像データの輝度レベルを16ライン分平均化する。平均化を行うのは、光ショットノイズ等のランダムな変動を抑制するためである。
図4における(a)及び(b)は、白色画像データを16ライン分平均化したときの主走査方向の輝度レベルのプロファイルの一例である。(a)や(b)に示されるように、シェーディング補正をしていない状態の白色画像データの輝度レベルは、LED208の光量の不均一性やイメージセンサ209の感度のバラつきなどにより、均一にはならない。また、シェーディング補正をしていない状態では、(a)に示すようにイメージセンサ209の感度やLED208の光量が高い、すなわち光感度が高い方が、(b)に示すように光感度が低い方よりも、輝度レベルが高くなる。
【0022】
次に、シェーディング回路307において、主走査方向の各画素における白色画像データの輝度レベル(16ライン平均)と、予め設定した輝度レベル(以下、「ターゲットレベル」という)とを比較する。そして、各画素における白色画像データの輝度レベルのターゲットレベルに対する比率(対ターゲットレベル比率)を算出して、対ターゲットレベル比率をシェーディング回路307内のメモリに格納する。
なお、この処理は、RGBの3色×画素数(7500画素)に対して行われる。これにより、3色×7500画素分について白色画像データの輝度レベルの対ターゲットレベル比率が得られる。ここで得られた各画素における白色画像データの輝度レベルの対ターゲットレベル比率を、RGBの色毎に、それぞれ、WRn、WGn、WBn(nは画素の位置:1~7500)とする。
【0023】
そして、シェーディング回路307は、原稿を読み取る際に、原稿を読み取ったときの画像データ(以下、「原稿画像データ」という)に対して以下の演算を実行し、後段の画像処理回路308に出力する。
原稿画像データの輝度レベルを、RGBの色毎に、それぞれ、PRn、PGn、PBn(nは画素の位置:1~7500)とすると、画像処理回路308に出力されるRGBの色毎の出力データSRn、SGn、SBnは、それぞれ、
SRn=PRn×(1/WRn)
SGn=PGn×(1/WGn)
SBn=PBn×(1/WBn)
となる。このように、シェーディング補正前の白色画像データの輝度レベルが小さいほど、シェーディング補正で行われるゲイン(以下、「シェーディング補正係数」ともいう)が高くなる。
そして、画像処理回路308において、シェーディング補正を行った原稿画像データに対してノイズを除去するためにフィルタ処理を実行し、図示しない外部機器に送信する。
【0024】
次に、図7を用いて、フィルタ処理において用いられるフィルタの選択について説明する。本実施例において、フィルタ処理とは、対象となる画素(以下、「補正対象画素」という)に対して、周囲の画素の画像データをブレンドする(これを「平滑化」という)ことにより、原稿画像データにおけるノイズを除去するために行われるものである。本実施例では、フィルタ処理において用いられるフィルタの強度は、白色画像データの輝度レベルに基づいて選択される。
【0025】
まず、主走査方向の7500画素について、白色基準板216を読み取った白色画像データの輝度レベルのプロファイル(16ライン平均)を生成する。
図7(a)は、主走査方向の7500画素についての、白色画像データの輝度レベルのプロファイルの一例である。なお、前述したように、LED208やイメージセンサ209などにバラつきがあるため、白色画像データの輝度レベルのプロファイルは一定とはならない。
次に、白色画像データの輝度レベルのプロファイルから、全画素の平均輝度レベルを算出する。図7(a)の例では、平均輝度レベル150が算出される。
【0026】
次に、算出された白色画像データの平均輝度レベルに基づいて、ノイズ除去のためのフィルタ処理において用いられるフィルタの強度を選択する。図7(b)は、白色画像データの平均輝度レベルと選択されるフィルタ強度との関係の一例を示した図である。
図7(b)に示したとおり、白色画像データの平均輝度レベルが小さいほど、強度の大きいフィルタが選択される。これは、白色画像データの平均輝度レベルが小さいほど、シェーディング補正におけるゲイン(シェーディング補正係数)が高くなり、画像ノイズが悪化するためである。図7(b)の例では、白色画像データの平均輝度レベルが0である場合、フィルタ強度として最大の10のフィルタが選択される。
逆に、白色画像データの平均輝度レベルが大きい場合、強度の小さいフィルタが選択される。図7(b)の例では、白色画像データの平均輝度レベルが255の場合、フィルタ強度として最小の1のフィルタが選択される。
【0027】
図7の例では、白色画像データの平均輝度レベルが150である場合、フィルタ強度が4のフィルタが選択されるように設定されている。
なお、選択されたフィルタの特性ついては、図5を用いて後述する。また、図7(b)に示したような白色画像データの平均輝度レベルとフィルタ強度の関係は、予めCPU304に記録されている。
【0028】
次に、図5を用いて、画像処理回路308が、前述のように選択されたフィルタを用いて、原稿画像データに対して行うフィルタ処理について説明する。
フィルタ処理は、原稿を読み取ることにより生成された原稿画像データのすべての画素に対して行われる。ここでは、図5(a)に示すように、フィルタ処理が行われる対象の1つの補正対象画素に対する処理について説明する。
【0029】
まず、補正対象画素を中心として、シェーディング補正後の原稿画像データを取得する。
そして、図5(a)に示すように、補正対象画素(D4)の輝度レベルと、周囲の8画素(D1~D3、D5~D8)の平均輝度レベルとの差分を算出する。そして、前述のとおり選択された強度のフィルタを用いて、補正対象画素の画像データの補正を行う(平滑化処理)。
なお、平滑化処理とは、前述のように、補正対象画素の画像データに周囲画素の画像データをブレンドすることにより、補正対象画素の輝度レベルを、周囲画素の輝度レベルに近づけることをいう。平滑化強度が強いほど、補正対象画素の輝度レベルは周囲の8画素の平均輝度レベルに近づけられる。逆に、平滑化強度が弱いほど、補正対象画素の輝度レベルがそのまま残される。
【0030】
図5(b)は、図7で説明したフィルタの平滑化強度に関するプロファイルを説明する図である。図示したように、フィルタは、強度に応じて異なる平滑化強度プロファイルを有する。
このようなプロファイルを有するフィルタを用いて、補正対象画素についてフィルタ処理を行うと、補正対象画素の輝度レベルが周囲画素の輝度レベルに近いほど、平滑化強度が高くなり、補正対象画素の輝度レベルは周囲画素の輝度レベルに近づけられる。逆に、補正対象画素の輝度レベルが周囲画素の輝度レベルと異なるほど、平滑化強度が低くなり、補正対象画素の輝度レベルは元々の輝度レベルに近いものとされる。
【0031】
このような平滑化強度プロファイルを有するフィルタを用いてフィルタ処理をすることで、文字や線などがないような無地の部分においては、平滑化強度を高くして、画像ノイズを除去しやすくすることができる。一方、文字や線などがあり、輝度レベルの変化が大きい部分について、平滑化強度を低くして、画像の解像度が落ちないようにすることができる。
また、図5(b)に示すように、強度が小さいフィルタが選択されると、平滑化されるのは、周囲画素との輝度レベルの差が小さい補正対象画素のみとなる。一方、強度が大きいフィルタが選択されると、周囲画素との輝度レベルの差が大きい補正対象画素についても平滑化される。
なお、各強度におけるフィルタの平滑化強度プロファイルは、予め設定されているが、変更することも可能である。
【0032】
図6は、実施例1において実行される原稿の読み取り処理の全体を示すフローチャートである。本フローチャートに示した処理は、コントローラ300内のCPU304によって実行される。
まず、ユーザからの原稿の読み取り開始指示がなされると、S601において、CPU304は、画像読み取り部105を白色基準板216の下に移動させる。そして、白色基準板216を読み取り、白色画像データの輝度レベルからシェーディング補正係数を算出する。
【0033】
次に、S602において、図7(a)で説明したように、CPU304は、シェーディング補正前の白色画像データの輝度レベルのプロファイル(16ライン平均)から、全画素の平均輝度レベルを算出する。なお、白色画像データを用いても構わないし、S602において、再度、白色基準板216を読み取り取得した白色画像データを用いても構わない。
次に、S603において、CPU304は、図7(b)で説明したように、S602で算出した白色画像データの全画素の平均輝度レベルに基づいて、フィルタ処理において用いるフィルタの強度を選択する。
【0034】
次に、S604において、CPU304は、S603で選択したフィルタ強度を画像処理部308に設定する。また、S601で算出したシェーディング補正係数を用いて、シェーディング補正を行う。
【0035】
そして、S605において、CPU304は、原稿搬送部107によって原稿を搬送させ、S606において、原稿の読み取りを開始する。なお、S606の原稿の読み取り工程において取得された原稿画像データに対して、S601において算出したシェーディング係数を用いたシェーディング補正及びS603において選択されたフィルタ強度のフィルタ処理が行われる。
そして、S607において、CPU304は、原稿の読み取りが終了したか否かを判断する。
原稿の読み取りが終了したと判断すると、S608に遷移する。そして、次の原稿がある場合はS605に戻り、次の原稿がない場合には原稿の読み取り処理の全体を終了する。
なお、図6に示したフローチャートでは原稿搬送部107によって搬送された原稿を読み取る方式を例にして説明したが、本発明は、原稿台ガラス102に載置された原稿を読み取る方式についても同様に適用可能である。
【0036】
以上のとおり、実施例1によれば、原稿の読み取りを行う前に、白色画像データの輝度レベルに基づいて、画像ノイズを除去するために行うフィルタ処理において用いられるフィルタの強度を選択する。そして、選択した強度のフィルタを用いて、原稿画像データに対してフィルタ処理を行う。これにより、イメージセンサやLEDなどの原稿読取装置の状態に依存することなく、原稿画像データにおける画像ノイズのレベルを低減させることができる。
【0037】
<実施例2>
実施例1では、フィルタ処理に用いられるフィルタの選択を、原稿の読み取りを行う前に行うように構成している。このため、実施例1では、原稿搬送部107によって搬送された複数の原稿に対して連続的に読み取り処理をする場合であっても、フィルタ処理は、原稿の読み取り前に選択されたフィルタを用いて複数の原稿に対して一括して行われる。
これに対して、本実施例では、複数の原稿に対して連続的に読み取り処理をする場合において、それぞれの原稿に対する読み取り処理をする毎にフィルタを選択するようにする。これにより、フィルタ処理において用いられるフィルタは、原稿毎に選択される。なお、原稿読取装置10の構成などについては、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
図8は、実施例2において実行される画像の読み取り処理の全体を示すフローチャートである。
まず、ユーザからの原稿の読み取り開始指示がなされると、S801において、CPU304は、画像読み取り部105を白色基準板216の下に移動させる。そして、白色基準板216を読み取り、白色画像データの輝度レベルからシェーディング補正係数を算出する。
【0039】
次に、シェーディング補正を行う前に、S802において、CPU304は、押さえローラ212を読み取り、押さえローラ212からの画像データ(以下、「押さえローラ白色画像データ」という)を取得する。
次に、S803において、押さえローラ白色画像データの輝度プロファイルから全画素の平均輝度レベルを算出する。
次に、S804において、S803で算出した押さえローラ白色画像データの平均輝度レベルに基づいて、フィルタ処理において用いるフィルタの強度を選択する。
【0040】
図9は、押さえローラ白色画像データの平均輝度レベルとフィルタ強度の関係を示す図である。なお、ともに基準画像データを提供するための基準部材である、押さえローラ212と白色基準板216との白色度には相違があるため、図9図7とでは傾きに相違がある。
図9に示したとおり、実施例1と同様に、押さえローラ白色画像データの平均輝度レベルが小さいほど、強度の大きいフィルタが選択される。図9の例では、押さえローラ白色画像データの平均輝度レベルが0である場合、フィルタ強度として最大の10のフィルタが選択される。逆に、白色画像データの平均輝度レベルが大きい場合、強度の小さいフィルタが選択される。
図9の例では、白色画像データの平均輝度レベルが190である場合、フィルタ強度が4のフィルタが選択されるように設定されている。
なお、図9に示したような押さえローラ白色画像データの平均輝度レベルとフィルタ強度の関係は、予めCPU304に記録されている。
【0041】
次に、S805において、CPU304は、S804で選択したフィルタ強度を画像処理部308に設定する。また、S801で算出したシェーディング補正係数を用いて、シェーディング補正を行う。
【0042】
そして、フィルタの強度を設定した後は、S806において、CPU304は、原稿搬送部107によって原稿を搬送させ、S807において、原稿の読み取りを開始する。なお、S807の原稿の読み取り工程において、原稿画像データに対してシェーディング補正及びフィルタ処理が行われる。
そして、S808において、CPU304は、原稿の読み取りが終了したか否かを判断する。
原稿の読み取りが終了したと判断すると、S809に遷移する。そして、次の原稿がある場合はS802に戻り、CPU304は、再度、押さえローラ白色画像データを取得する。次の原稿がない場合には原稿の読み取り処理の全体を終了する。
【0043】
以上のとおり、実施例2によれば、それぞれの原稿に対するフィルタ処理を行う際にフィルタの強度を選択する。これにより、原稿の読み取り処理中におけるLED208の光量変動などによるバラつきの影響も抑制することができる。
【0044】
<実施例3>
実施例1や実施例2では、原稿の読み取り処理を行う際に、フィルタを選択した。
これに対して、実施例3では、原稿の読み取り処理を行う際とは関係なく、原稿読取装置10の工場出荷時や画像読み取り部105の交換などの所定のタイミングにおいて、予めフィルタ強度を選択しておく。なお、原稿読取装置10の構成などについては、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
図10は、原稿読取装置10の工場出荷時や画像読み取り部105の交換時などの所定のタイミングにおいて予めフィルタ強度を選択しておく、フィルタ選択処理を示すフローチャートである。
まず、S1001において、CPU304は、画像読み取り部105を白色基準板216の下に移動させ、白色基準板216を読み取り、白色画像データを取得する。
次に、S1002において、CPU304は、白色画像データの輝度プロファイルから全画素の平均輝度レベルを算出する。
【0046】
次に、S1003において、CPU304は、S1002で算出した白色画像データの平均輝度レベルに基づいて、フィルタ処理において用いるフィルタの強度を選択する。
実施例1と同様に、白色画像データの平均輝度レベルが小さいほど、強度の大きいフィルタが選択される。なお、白色画像データの平均輝度レベルとフィルタ強度の関係は、予めCPU304に記録されている。
次に、S1004において、CPU304は、S1003で選択したフィルタの強度を不揮発性メモリ309に格納する。
【0047】
次に、S1005において、CPU304は、原稿読取装置10が他の読み取りモード(例えば、読み取り速度が異なるモード)等を備えているか否かを判断する。
他の読み取りモードを備えていない場合、そのままフィルタ選択処理を終了する。他の読み取りモードを備えている場合は、S1001に戻り、そのモードで再度、フィルタ強度を選択し、不揮発性メモリ309に書き込む。
【0048】
図11は、不揮発性メモリ309に書き込んだフィルタ強度を用いて、原稿の読み取り処理を行う場合の処理を示すフローチャートである。
まず、ユーザから原稿の読み取り開始指示がなされると、S1101において、CPU304は、画像読み取り部105を白色基準板216の下に移動させる。そして、白色基準板216を読み取り、白色画像データの輝度レベルからシェーディング補正係数を算出する。
次に、S1102において、CPU304は、不揮発性メモリ309に格納したフィルタ強度を読み出す。そして、S1103において、画像処理部308に読み出したフィルタ強度を設定する。また、CPU304は、S1101で算出したシェーディング補正係数を用いて、シェーディング補正を行う。
【0049】
そして、S1104において、CPU304は、原稿搬送部107によって原稿を搬送させ、S1105において、原稿の読み取りを開始する。なお、S1105の原稿の読み取り工程において、原稿画像データに対してシェーディング補正及びフィルタ処理が行われる。
そして、S1106において、CPU304は、原稿の読み取りが終了したか否かを判断する。
原稿の読み取りが終了したと判断すると、S1107に遷移する。そして、次の原稿がある場合はS1105に戻り、次の原稿がない場合には原稿の読み取り処理の全体を終了する。
【0050】
以上のとおり、実施例3によれば、原稿読取装置10や読み取りモード毎のフィルタ強度を予め記録しておくことにより、画像読み込み処理の際における制御を複雑にすることなく、画像ノイズを低減させることができる。
【0051】
<その他の実施例>
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。すなわち、上述の実施例及びその変形例を組み合わせた構成もすべて本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 原稿読取装置
105 読み取り部
208 LED
209 イメージセンサ
216 白色基準板
300 コントローラ
301 操作部
304 CPU
307 シェーディング回路
308 画像処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11