(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240122BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240122BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240122BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20240122BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 Y
B41J29/393 107
B41J2/52
H04N1/407 780
(21)【出願番号】P 2019209889
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功巳
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-230142(JP,A)
【文献】特開2003-150006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077081(US,A1)
【文献】特開2014-107648(JP,A)
【文献】特開2016-180805(JP,A)
【文献】特開2005-311644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00-15/01
G03G 21/00
B41J 29/393
B41J 2/52
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する作像手段と、
前記作像手段により形成された前記画像が転写される転写体と、
前記転写体から用紙に画像を転写する転写手段と、
前記転写体に形成された階調調整用の第1テスト画像を読み取る第1読取手段と、
前記用紙に形成され、前記第1テスト画像とは異なる階調調整用の第2テスト画像を読み取る第2読取手段と、
前記第1読取手段による前記第1テスト画像の読取結果
に基づいて第1濃度領域の階調特性の調整を行い、前記第2読取手段による前記第2テスト画像の読取結果
に基づいて前記第1濃度領域とは異なる第2濃度領域の階調特性の調整を行う制御手段と、を備えることを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記作像手段は、前記用紙の通紙方向に直交する方向に並ぶ複数の第1パッチ画像により前記第1テスト画像を形成し、前記用紙の通紙方向に並ぶ複数の第2パッチ画像により前記第2テスト画像を形成し、
前記複数の第1パッチ画像は前記第1濃度領域のそれぞれ異なる階調値で形成され、
前記複数の第2パッチ画像は前記第2濃度領域のそれぞれ異なる階調値で形成されることを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1濃度領域は前記第2濃度領域よりも低濃度の領域であることを特徴とする、
請求項
1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1濃度領域は所定の濃度よりも低濃度の領域であり、前記第2濃度領域はすべての濃度領域であることを特徴とする、
請求項
1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1テスト画像の読取結果と前記第2テスト画像の読取結果とに重み付けを行い、重み付けを行った前記第1テスト画像の読取結果と前記第2テスト画像の読取結果とに基づいて階調特性の調整を行うことを特徴とする、
請求項
4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1テスト画像の読取結果と前記第2テスト画像の前記第1濃度領域の読取結果とに重み付けを行うことを特徴とする、
請求項
5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1テスト画像の読取結果の重み付けを前記第2テスト画像の読取結果の重み付けよりも大きくすることを特徴とする、
請求項
5又は6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1テスト画像の読取結果と前記第2テスト画像の読取結果とに基づいてガンマ特性を検出し、検出したガンマ特性に応じて階調補正テーブルを生成することを特徴とする、
請求項1~
7のいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド画像形成装置の市場が拡大している。例えば、オフセット印刷市場には、電子写真方式の画像形成装置が広がりつつある。また、ラージフォーマット、低イニシャルコスト、超高速等の理由で幅広い市場開拓に成功したインクジェット方式の画像形成装置がある。しかし市場拡大は容易なものではなく、その市場を担ってきた先行の画像形成装置の画像品質(以下、「画質」と呼ぶ。)を維持しなければならない。
【0003】
画質には、階調性、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)等がある。この中で最も重要なのは色再現性であるといわれている。人間は、経験に基づいた期待する色(特に人肌、空、金属等)についての記憶があり、この記憶の許容範囲を超えた色については違和感をおぼえることがある。このような記憶された色は「記憶色」と呼ばれる。記憶色は、写真等への出力時にその再現性が重要になる。この他にも、印刷されたビジネス文書とモニタとの色の差に違和感を覚えてしまうオフィスユーザ層、コンピュータグラフィックスを扱うグラフィックアーツユーザ層等は、オンデマンド画像形成装置に対する安定性を含んだ色再現性への要求度が高い。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的に、形成する画像の階調特性が目標の階調特性に一致するように階調特性の補正を行っている。階調特性の補正には、各階調値に対して補正後の階調値が設定された階調補正デーブルが用いられる。
画像の階調特性は、画像形成装置の設置環境の変化や経時変化により変動する。そのために画像形成装置は、定期的に階調特性の調整(キャリブレーション)を行って、階調補正テーブルを最適化している。キャリブレーションは、用紙に階調調整用画像を形成することで行われる。用紙に形成された階調調整用画像はスキャナ等の読取装置で読み取られる。読み取られた階調調整画像から得られる階調特性と目標の階調特性との誤差に応じて、階調補正テーブルが更新される。
【0005】
階調調整用画像は、例えば、用紙上に、印刷ジョブに応じた画像が形成される画像領域を除いた非画像領域に形成される(特許文献1)。これにより、ユーザが所望する画像とは別紙に階調調整用画像を形成する必要がなくなり、印刷ジョブを中断する必要がなく、ヤレ紙の発生が回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
階調特性のキャリブレーションを行う場合、階調調整用画像の読取結果が変動することがある。これは、読取装置の読み取り繰り返しバラツキや、用紙の表面性(表面の凹凸)等が原因である。階調調整用画像の読取結果が変動することで、正しい目標階調が決定できない可能性がある。そのために、階調特性の監視及び調整を行った結果が正しく得られなくなり、長期間に渡る継続した適切な色の出力ができない可能性がある。
【0008】
連続して画像形成を行っている間のキャリブレーションは、用紙への画像の転写に用いられる転写体に階調調整用画像を形成し、この階調調整用画像の光学センサによる検出結果に基づいてリアルタイムで行われている。階調調整用画像は、濃度の異なる複数のパッチ画像を含んでおり、各パッチ画像の濃度に応じて階調補正テーブルが作成される。しかし、転写体には一度に複数のパッチ画像を形成することができず、また、高濃度側の画像の検出結果の精度が低下する。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、階調特性の調整を高精度で行うことができる画像形成装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置は、画像を形成する作像手段と、前記作像手段により形成された前記画像が転写される転写体と、前記転写体から用紙に画像を転写する転写手段と、前記転写体に形成された階調調整用の第1テスト画像を読み取る第1読取手段と、前記用紙に形成され、前記第1テスト画像とは異なる階調調整用の第2テスト画像を読み取る第2読取手段と、前記第1読取手段による前記第1テスト画像の読取結果に基づいて第1濃度領域の階調特性の調整を行い、前記第2読取手段による前記第2テスト画像の読取結果に基づいて前記第1濃度領域とは異なる第2濃度領域の階調特性の調整を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度な階調特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】光学センサの出力値と中間転写ベルト上の画像濃度との関係の説明図。
【
図6】(a)、(b)は、中間転写ベルトに形成された画像による反射光の説明図。
【
図8】(a)、(b)は、用紙に形成された画像による反射光の説明図。
【
図9】第1読取センサから得られる輝度値と用紙上の画像濃度との関係の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
(画像形成システム)
図1は、本実施形態の画像形成装置を含む画像形成システムの構成図である。画像形成システム1は、画像形成装置10、読取装置50、及び操作部180を備える。画像形成装置10は、用紙への画像形成を行う。読取装置50は、用紙に形成された階調調整用のテスト画像である階調調整用画像を読み取る。操作部180は、入力装置と出力装置とを有するユーザインタフェースである。入力装置は各種キーボタンやタッチパネルである。出力装置はディスプレイやスピーカである。本実施形態では、画像形成装置10と読取装置50とを別の装置として説明するが、これらは一体に構成されていてもよい。
【0015】
画像形成装置10は、4つの作像ユニット181Y、181M、181C、181K、中間転写ベルト182、二次転写ローラ183、定着器184、2つの給紙トレイ185、及び反転機構186を備えている。各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kは、中間転写ベルト182のベルト面に沿って配置される。中間転写ベルト182は、複数のローラにより巻き回されて所定方向(本実施形態では図中時計回り方向)に回転する転写体である。二次転写ローラ183及び定着器184は、給紙トレイ185から搬送される用紙の搬送経路上に配置される。給紙トレイ185には所定サイズの用紙が収容される。本実施形態では、給紙トレイ185が2つ設けられており、各給紙トレイ185に収容される用紙は、同じ種類であってもよいが異なる種類であってもよい。
【0016】
各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kは同じ構成であり、形成する画像の色が異なるのみである。作像ユニット181Yは、イエロー(Y)の色の画像を形成する。作像ユニット181Mは、マゼンタ(M)の色の画像を形成する。作像ユニット181Cは、シアン(C)の色の画像を形成する。作像ユニット181Kは、ブラック(K)の色の画像を形成する。ここでは、作像ユニット181Yの構成について説明し、他の作像ユニット181M、181C、181Kの構成の説明を省略する。
【0017】
作像ユニット181Yは、露光器18a、感光体18b、現像器18c、帯電器18d、及びクリーニング部18eを備える。感光体18bは、表面に感光層を有したドラム形状の像担持体である。感光体18bは、ドラム軸を中心にして図中反時計回りに回転する。帯電器18dは、回転する感光体18bの感光層に電圧を印加して感光体18bの表面を一様に帯電させる。露光器18aは、イエローの画像の各画素の階調値に応じたレーザビームを、帯電された感光体18bの表面に照射する。レーザビームの照射により、感光体18bの表面に静電潜像が形成される。なお、他の色の作像ユニットの露光器18aは、対応する色の画像の各画素の階調値に応じたレーザビームを照射する。これにより他の色の作像ユニットの感光体18bは、対応する色の静電潜像が形成される。
【0018】
現像器18cは、イエローのトナー等の色材により感光体18bに形成された静電潜像を現像する。静電潜像の現像により、感光体18bにイエローの画像が形成される。他の色の作像ユニットの現像器18cは、対応する色の色材により静電潜像を現像する。これにより他の色の作像ユニットの感光体18bは、対応する色の画像が形成される。
各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kのそれぞれの感光体18bに形成された画像は、中間転写ベルト182に順次重畳するように転写される。各色の画像が転写された中間転写ベルト182上には、フルカラーの画像が形成される。転写後に感光体18bに残留する色材は、クリーニング部18eにより除去される。
【0019】
用紙は、中間転写ベルト182に形成された画像が中間転写ベルト182の回転により二次転写ローラ183に搬送されるタイミングに応じて、給紙トレイ185から二次転写ローラ183まで搬送される。二次転写ローラ183は、中間転写ベルト182から用紙にフルカラーの画像を転写する転写部として機能する。画像が転写された用紙は、定着器184へ搬送される。定着器184は、画像が転写された用紙を加熱及び加圧することで、用紙に画像を定着させる。用紙の片面へ画像を形成する場合には、以上により画像形成処理が終了する。用紙の両面へ画像を形成する場合には、片面に画像が形成された用紙は、定着器184から反転機構186へ搬送されて表裏面を反転される。表裏面が反転した用紙は、再度、二次転写ローラ183へ搬送され、同様の手順で画像が形成される。
【0020】
中間転写ベルト182の近傍には光学センサ187が設けられる。光学センサ187は、中間転写ベルト182に形成されたフルカラーの画像を検出可能な位置に配置される。本実施形態では、光学センサ187は、中間転写ベルト182の回転方向で作像ユニット181Kの下流側に設けられる。
【0021】
光学センサ187は、中間転写ベルト182に形成された階調調整用画像を読み取る。階調調整用画像は、それぞれ濃度の異なる複数のパッチ画像により構成される。階調調整用画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎に形成される。階調特性の調整時には中間転写ベルト182上に階調調整用画像が形成される。光学センサ187による階調調整用画像の読取結果から各パッチ画像の濃度値が検出される。濃度値と各パッチ画像の画像形成時の階調値とによりガンマ特性が検出される。検出されたガンマ特性に応じて階調補正テーブル(γLUT)が生成される。
【0022】
画像形成装置10は、印刷ジョブに応じて上記のような画像形成処理を行う。印刷ジョブには、形成する画像を表す画像データや、使用する用紙サイズ等の画像形成条件が含まれる。露光器18aは、画像データに応じたレーザビームを感光体18bに照射することになる。
後述するように、画像形成装置10は、印刷ジョブに応じて用紙上に形成される画像の画像領域に重複して、階調調整用画像を形成するか否かを判断する。画像領域に重複して階調調整用画像を形成する場合、画像データに階調調整用画像の画像データ(以下、「テスト画像データ」という。)が付加される。階調調整用画像が形成された用紙は、読取装置50により読み取られる。階調調整用画像の読取結果に基づいて階調特性の監視及び調整が行われる。
【0023】
読取装置50は、第1搬送部51、第2搬送部52、第1読取センサ53、第2読取センサ54、及び測色部55を備える。第1搬送部51は、画像形成装置10から供給された用紙を搬送する複数の搬送ローラ対511を備えている。第2搬送部52は、読取後の用紙を搬送する複数の搬送ローラ対521を備えている。第1読取センサ53と第2読取センサ54とは、用紙が搬送される搬送経路を挟んだ位置に配置される。そのために読取装置50は、第1読取センサ53及び第2読取センサ54により、用紙の両面の画像を一度の搬送で読み取ることができる。
【0024】
第1読取センサ53は、第1搬送部51に配置され、第1搬送部51を通過する用紙の一方の面に形成された画像を読み取る。第1読取センサ53は、読取結果としてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号を出力する。第1読取センサ53は、例えば光学式センサである。第1読取センサ53は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ラインセンサやCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサ等のラインセンサが用いられる。第1読取センサ53にラインセンサを用いることで、用紙の通紙方向に直交する方向について、用紙の全体を読み取ることができる。
第2読取センサ54は、第2搬送部52に配置され、第2搬送部52を通過する用紙の他方の面に形成された画像を読み取る。第2読取センサ54は、第1読取センサ53と同様の構成であり、読取結果としてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号を出力する。
【0025】
測色部55は、第2読取センサ54よりも用紙の通紙方向の下流側に配置される。測色部55は、第2搬送部52を通過する用紙の他方の面の画像を読み取る。測色部55は、用紙上に形成された階調調整用画像の色を分光的に測定して、測色データを取得する。測色データは、XYZ等の表色系で表される。
【0026】
光学センサ187は、中間転写ベルト182に形成された画像を正反射光により検出するために、用紙に形成された画像を検出する第1読取センサ53及び第2読取センサ54よりも、低濃度領域(ハイライト領域)で分解能が高精度になる。第1読取センサ53及び第2読取センサ54は、用紙に形成された画像を検出するために、光学センサ187よりも高濃度領域で分解能が高精度になる。中間濃度領域の分解能は、用紙の余白上で1枚ごとに第1読取センサ53又は及び第2読取センサ54で検出する方が、光学センサ187を用いるよりも高精度になる。そのために本実施形態では、ハイライト領域における階調特性の調整は中間転写ベルト182上に形成された階調調整用画像により行われ、ハイライト領域以外の濃度領域における階調特性の調整は用紙上に形成された階調調整用画像を用いて行われる。
【0027】
図2は、画像形成システム1の動作を制御するコントローラの説明図である。コントローラは、制御部70、記憶部12、通信部15、画像生成部16、画像処理部17、画像形成部18、階調調整用画像付加部30、及び表裏調整用画像付加部40を備える。制御部70には、上記した操作部180及び読取装置50も接続される。操作部180は、入力装置13及び出力装置14を含む。
【0028】
制御部70は、画像形成システム1を構成する各部の動作を制御する。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、RAM(Random Access Memory)72、及びROM(Read Only Memory)73を備える。CPU71は、ROM73や記憶部12に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像形成システム1の各部の動作を制御する。RAM72は、CPU71が処理を実行する際のワークエリアを提供し、各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。
【0029】
記憶部12は、制御部70(CPU71)により実行されるコンピュータプログラムや、処理に用いられるデータ等を記憶する。記憶部12は、後述する階調特性の監視、調整、及び表裏調整に用いられる値を記憶する。記憶部12には、ハードディスク等の大容量記憶装置を用いることができる。
【0030】
通信部15は、画像形成システム1の外部に設けられるコンピュータ等の外部装置との間の通信制御を行う通信インタフェースである。例えば、通信部15は、外部装置からネットワークを介してページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータ(以下、「PDLデータ」という)を受信する。PDLデータは、例えば画像形成を指示する印刷ジョブに含まれる。
【0031】
画像生成部16は、通信部15を介して取得したPDLデータに対してラスタライズ処理を行い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎に、ビットマップ形式の画像データを生成する。画像データは、画素毎の階調値を含む。階調値は画像の濃淡を表すデータ値である。例えばデータ値が8ビットの場合、階調値は0~255階調の濃淡を表すことができる。
【0032】
画像処理部17は、画像生成部16により生成された画像データに対して、階調補正処理、中間調処理等の画像処理を行う。画像処理部17は、読取装置50により生成されたR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号を色変換して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像データを生成することもできる。
【0033】
階調補正処理は、画像データに含まれる各色の階調値を、用紙上に形成された画像の色を目標の色に一致するように補正された各色の階調値に変換する処理である。階調補正処理には、入力階調値に対応する出力階調値が定められた階調補正テーブルが用いられる。また、画像処理部17は、後述するように、制御部70により補正が有効に設定された場合に階調調整用画像による階調特性の調整処理を行い、補正が無効に設定された場合に階調調整用画像による階調特性の調整処理を行わずに、中間調処理を行う。中間調処理は、例えば誤差拡散処理、組織的ディザ法を用いたスクリーン処理等である。
【0034】
画像形成部18は、制御部70の制御により、作像ユニット181Y、181M、181C、181K、中間転写ベルト182、二次転写ローラ183、定着器184、給紙トレイ185、及び反転機構186の動作を制御する。画像形成部18により、用紙への画像形成処理が行われる。画像形成部18は、画像処理部17により画像処理された画像データの各画素の階調値に基づいて、複数の色からなる画像を用紙に形成する。本実施形態では、画像形成部18は、画像処理部17により画像処理された画像データに、テスト画像データ及び表裏調整用画像の画像データ(以下、「表裏調整用画像データ」)が付加された画像データを用いて画像形成処理を行う。画像は用紙の中央寄せで形成されるものとする。
【0035】
階調調整用画像付加部30は、階調調整用画像が形成されるように、画像データにテスト画像データを付加する。表裏調整用画像付加部40は、表裏調整用画像が形成されるように、画像データに表裏調整用画像データを付加する。
【0036】
図3は、画像形成部18により用紙に形成される画像の例示図である。
図3は、用紙80の一方の面に形成される画像を例示する。用紙80には、中央に画像領域81が設けられ、画像領域81の周囲と用紙80のエッジとの間に非画像領域82が設けられる。画像領域81には、画像処理部17により画像処理された画像データに基づく画像(印刷ジョブで指示された画像)が形成される。用紙80には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎の階調調整用画像851Y、851M、851C、851K、表裏調整用画像841、842、及び断裁用マーク83が形成される。色を区別しない場合、階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kを「階調調整用画像851」と記載する。断裁用マーク83は、ユーザにより予め付与される。断裁用マーク83は、L字形状のマークが2つ重なって構成され、画像領域81の四隅近傍に形成される。4つの断裁用マーク83により囲まれた部分(破線で囲まれた領域)が用紙80の断裁位置を形成する。なお、画像領域81を示す斜線は説明のために示したものであり、実際に用紙80上に形成されるものではない。また用紙80は、長手方向に通紙される。
【0037】
階調調整用画像851は、用紙80の一方の面に形成される。階調調整用画像851は、通常は、画像領域81に重複しないように、その外側の非画像領域82に形成されるが、制御部70により重複して形成すると判断された場合には、画像領域81に重複して形成される。本実施形態において画像領域81に重複するとは、画像領域81のみに重複して形成される場合のみならず、画像領域81と非画像領域82とに跨って形成される場合も含む。
【0038】
階調調整用画像851は、用紙80の周縁部のいずれに形成してもよいが、
図3に示すように、用紙80の通紙方向(用紙80の長手方向)に直交する方向(用紙80の短手方向)の用紙80の両端部に形成されることが好ましい。すなわち、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれか2色の階調調整用画像851が用紙80の短手方向の一端部に形成され、残りの2色の階調調整用画像851が用紙80の短手方向の他端部に形成される。本実施形態では、階調調整用画像851C及び階調調整用画像851Mが用紙80の短手方向の一端部に形成され、階調調整用画像851Y及び階調調整用画像851Kが用紙80の短手方向の他端部に形成される。用紙80の通紙方向の先端部に階調調整用画像851が形成されないため、定着処理時の用紙80の巻き付きの発生を抑制することができる。
【0039】
階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kは、それぞれ階調値を段階的に異ならせた複数の階調のパッチ画像により構成される。
図3では、階調調整用画像851は、10階調のパッチ画像により構成される。各パッチ画像は、例えば一辺が10[mm]程度の正方形である。複数のパッチ画像は、用紙80の通紙方向に一列に配列される。
階調値が255階調で表される場合、階調調整用画像851の一列に配列される複数のパッチ画像の階調値は、隣接するパッチ画像間の階調値の差が均等になるように、0~255のいずれかの値に設定される。また、両端のパッチ画像の階調値はそれぞれ0、255に設定される。なお、階調調整用画像851を構成するパッチ画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに限られるものではなく、R、G、BやプロセスBk等で形成されてもよい。
なお、本実施形態では、A3サイズの用紙を縦送り(主走査方向297mm×副走査方向420mm)したときの1枚に、4色すべての階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kが収まる範囲で階調調整用画像851のサイズが決定される。
【0040】
用紙80は、読取装置50により読み取られる。読取装置50による階調調整用画像851Y、851M、851C、851K及び表裏調整用画像841、842の読取結果は、記憶部12或いは制御部70のRAM72に記憶される。記憶された読取結果は制御部70により解析される。
【0041】
制御部70は、画像形成部18により形成された画像の階調特性の監視及び調整を行う。制御部70は、画像処理部17による補正処理の初期調整を行った後、画像形成部18に、所定枚数n枚(nは1以上の整数)の用紙80に対して印刷ジョブに応じた画像と階調調整用画像851とを形成させる。制御部70は、n枚目の用紙80に形成された階調調整用画像851を読取装置50により読み取らせ、その読取結果に基づいて階調特性の調整値を算出する。
【0042】
制御部70は、n+1枚目以降の用紙80に対して、画像形成部18により画像を形成しつつ、算出した調整値に基づく階調補正テーブルによる階調補正の有効/無効を切り替えながら階調調整用画像851を形成する。制御部70は、用紙80の1枚毎に、階調特性の監視と調整とを交互に行う。印刷ジョブの画像データに関しては、制御部70は、上記階調補正テーブルによる補正を常に有効として、画像処理部17により階調補正を行う。
【0043】
(光学センサ)
制御部70は、中間転写ベルト182に形成される階調調整用画像の光学センサ187による読取結果により、階調調整を行うことも可能である。光学センサ187の動作について説明する。
図4は、中間転写ベルト182に形成される画像の説明図である。中間転写ベルト182には、中間転写ベルト182の回転方向に所定間隔をあけて印刷ジョブに基づいた画像が形成される画像領域84が設けられる。画像領域84の間には、現像に用いられた色材の量(現像量)を測定するための画像90が形成される。中間転写ベルト182の回転方向に直交する方向において画像形成領域84を挟んで対向する位置には、階調調整用画像852が形成される。なお、階調調整用画像852は中間転写ベルト182の回転方向に直交する方向において画像領域84と異なる位置にまとめて形成される構成としてもよい。光学センサ187は、中間転写ベルト182に形成された階調調整用画像852を読み取る。制御部70は、光学センサ187による階調調整用画像852の読取結果(濃度値)に基づいて現像量(画像の濃度)を算出する。
【0044】
階調調整用画像852は、パッチ画像が中間転写ベルト182の回転方向に直交する方向に並べて配置される。用紙80に画像を転写する場合、中間転写ベルト182の回転方向と用紙80の通紙方向とは同じになる。用紙80に形成される階調調整用画像851は、パッチ画像が通紙方向に並べて配置される(
図3参照)。そのために、中間転写ベルト182に形成される階調調整用画像852と、用紙80に形成される階調調整用画像851とは、パッチ画像が並ぶ方向が異なる。具体的には、中間転写ベルト182に形成される階調調整用画像852と、用紙80に形成される階調調整用画像851とは、パッチ画像の並ぶ方向が直交する。
【0045】
光学センサ187は、中間転写ベルト182(階調調整用画像852)に向けて光を照射し、その正反射光を受光することで階調調整用画像852を読み取る。
図5は、光学センサ187から出力される読取結果である出力値(濃度値)と、中間転写ベルト182上の画像の濃度との関係の説明図である。高濃度領域では、光学センサ187の出力値の変化が小さくなる。つまり中間転写ベルト182に形成された高濃度領域の画像を読み取る場合、光学センサ187の出力値による濃度の検出精度が低くなる。一方、中間転写ベルト182に形成された低濃度領域(ハイライト領域)の画像を読み取る場合、光学センサ187の出力値の変化が大きくなる。つまりハイライト領域の画像を読み取る場合、光学センサ187の出力値による濃度の検出精度が高くなる。
【0046】
このような光学センサ187の高濃度領域とハイライト領域とによる感度の差には、以下のような理由により生じると考えられる。
図6は、中間転写ベルト182に形成された画像による反射光の説明図である。
図6(a)は、低濃度領域の画像の反射光を例示する。
図6(b)は、高濃度領域の画像の反射光を例示する。画像の濃度が低いほど、照射される光の正反射光が多くなり、乱反射光が少なくなる。逆に、画像の濃度が高いほど、照射される光の正反射光が少なくなり、乱反射光が多くなる。そのために、光学センサ187は、中間転写ベルト182に形成された画像を読み取る場合、低濃度領域では検出精度が高くなり、高濃度領域では検出精度が低くなる。
【0047】
図7は、中間転写ベルト182上に形成される階調調整用画像852の階調値の説明図である。中間転写ベルト182上に形成する階調調整用画像852を構成する複数のパッチ画像は、このような階調値により形成される。光学センサ187の高濃度領域の検出精度が低いために、高濃度領域の階調特性の調整は光学センサ187の検知結果ではなく予測値を用いて行われる。
【0048】
(読取装置)
読取装置50の第1読取センサ53及び第2読取センサ54は、用紙80に形成された階調調整用画像851を読み取る。第1読取センサ及び第2読取センサ54は、例えば解像度が600dpiで4[mm]×4[mm]の範囲を1単位として画像を読み取る。
【0049】
図8は、用紙に形成された画像による反射光の説明図である。
図8(a)は、低濃度領域の画像の反射光を例示する。
図8(b)は、中濃度領域から高濃度領域の画像の反射光を例示する。
【0050】
低濃度領域では、用紙搬送時の用紙のばたつきや用紙表面の凹凸の影響により、照射される光の乱反射光が多くなり、正反射光が少なくなる。そのために、第1読取センサ53及び第2読取センサ54は、用紙に形成された画像を読み取る場合、低濃度領域では検出精度が低くなる。
中濃度領域から高濃度領域では、用紙は、トナー等の色材により覆われる面積が大きくなり、色材により表面の凹凸状態が改善される度合いが大きい。そのために第1読取センサ53及び第2読取センサ54は、用紙に形成された画像を読み取る場合、中濃度領域から高濃度領域では検出精度が高くなる。
【0051】
図9は、第1読取センサ53による読取結果から得られる輝度値と、用紙上の画像の濃度との関係の説明図である。図示の通り、用紙上の画像の読取結果から得られる輝度値は、高濃度領域であっても高精度に保たれており、階調調整に用いることが可能である。
【0052】
(階調調整)
図10は、本実施形態の階調調整時に用いられる階調値の説明図である。本実施形態では、低濃度領域の階調調整は、中間転写ベルト182に形成した階調調整用画像852を用いて行われ、中濃度領域から高濃度領域の階調調整は、用紙80に形成した階調調整用画像851を用いて行われる。中間転写ベルト182上に形成される階調調整用画像852を構成する複数のパッチ画像の階調値は、120~300である。用紙80上に形成される階調調整用画像851を構成する複数のパッチ画像の階調値は、360~900である。
【0053】
図11は、本実施形態の階調調整処理を表すフローチャートである。
【0054】
制御部70のCPU71は、画像生成部16により用紙に形成する画像の画像データを生成する(S101)。CPU71は、階調調整用画像を用紙80に形成するか否かを判断する(S102)。階調調整用画像を用紙に形成するか否かは、ユーザにより入力装置13を用いて予め設定されている。設定内容はRAM72に格納されており、CPU71はRAM72を参照してこの判断を行う。
【0055】
階調調整用画像を用紙80に形成しない場合(S102:N)、CPU71は、画像形成部18により中間転写ベルト182に階調調整用画像852を形成する(S103)。この階調調整用画像852は、用紙に転写されない。このとき、階調調整用画像852の各パッチ画像は、
図7の階調値に基づいて形成される。CPU71は、光学センサ187による階調調整用画像852の読取結果を取得する(S104)。CPU71は、取得した読取結果に基づいて階調補正テーブルを作成する(S105)。CPU71は、作成した階調補正テーブルにより既存の階調補正テーブルを更新する(S106)。
【0056】
階調調整用画像を用紙80に形成する場合(S102:Y)、CPU71は、画像形成部18により中間転写ベルト182に階調調整用画像852を形成する。また、CPU71は、中間転写ベルト182から用紙80に階調調整用画像851を転写することで用紙に階調調整用画像851を形成する(S107)。中間転写ベルト182には、階調調整用画像851、852が形成され、用紙には階調調整用画像851のみが転写される。このとき、階調調整用画像851、852は、
図10の階調値に基づいて形成される。そのために、中間転写ベルト182には、低濃度領域(120~300)の階調調整用画像852が形成され、用紙80には中濃度領域から高濃度領域(360~1023)の階調調整用画像851が形成される。
【0057】
CPU71は、光学センサ187から中間転写ベルト182に形成された階調調整用画像852の読取結果を取得し、読取装置50(例えば第1読取センサ53)から用紙80に形成された階調調整用画像851の読取結果を取得する(S108)。CPU71は、光学センサ187から取得した読取結果に基づいて低濃度領域の階調補正テーブルを作成し、読取装置50から取得した読取結果に基づいて中低濃度領域から高濃度領域の階調補正テーブルを作成する(S109)。つまり、中間転写ベルト182に形成された階調調整用画像852の読取結果に基づいて低濃度領域の階調補正テーブルが作成される。用紙80に形成された階調調整用画像851の読取結果に基づいて中濃度領域から高濃度領域の階調補正テーブルが作成される。CPU71は、作成したこれら2つの階調補正テーブルを結合して、既存の階調補正テーブルを更新する(S106)。
【0058】
上記の通り、中間転写ベルト182に形成される階調調整用画像852は、低濃度領域で高精度に読み取られ、用紙80に形成される階調調整用画像851は、中濃度領域から高濃度領域であっても読取精度への影響が少ない。そのために、これらの階調調整用画像851、852の読取結果から生成される階調補正テーブルは、広範囲の濃度領域において精度の高い階調特性の調整を実現することができる。これにより、用紙80の表面性に関わらず安定した階調で連続した画像を出力することが可能となる。
【0059】
上記の例では、中間転写ベルト182に形成される階調調整用画像852及び用紙80に形成される階調調整用画像851は、
図10の階調値に基づいて形成されており、低濃度領域と、中濃度領域から高濃度領域と、で分けられている。これに対し、用紙80に形成される階調調整用画像851は、すべての濃度領域のパッチ画像を含む構成であってもよい。
【0060】
図12は、この場合の階調値の説明図である。中間転写ベルト182上に形成される階調調整用画像852を構成する複数のパッチ画像の階調値は、低濃度領域の120~300である。用紙80上に形成される階調調整用画像851を構成する複数のパッチ画像の階調値は、すべての濃度領域の120~1023である。
【0061】
中間転写ベルト182と用紙80とで、同じ階調値(120、180、240、300)のパッチ画像が形成される。階調調整時には、これらの読取結果が重み付けされる。重み付けは、例えば、中間転写ベルト182のパッチ画像の読取結果の重み付けを大きく(例えば70%)し、用紙80上のパッチ画像の読取結果の重み付けを小さく(例えば30%)するように行われる。それぞれ重み付けした読取結果に基づいて、階調補正テーブルが作成される。
【0062】
このような階調値により階調調整用画像を形成することで、低濃度領域において中間転写ベルト182に形成されたパッチ画像と用紙80に形成されたパッチ画像とを用いて階調が調整される。そのために、用紙80による低濃度領域の転写性(色材の飛び散りや転写効率)等の影響による読取精度の低下を防止することができ、より高精度の階調補正が実現できる。