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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20240122BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240122BHJP
   A61L 9/12 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
A61L9/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019214422
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084650
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒子
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124603(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013955(JP,U)
【文献】特開2003-002668(JP,A)
【文献】特開2018-203286(JP,A)
【文献】特開2018-108827(JP,A)
【文献】意匠登録第1626650(JP,S)
【文献】意匠登録第1626651(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
B65D 83/00
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円板状の底部と、
前記底部の外周縁から上方に向けて拡開して設けられ、前記底部の中心を通る架空の軸と直交する横断面が略楕円形の筒状の周部と、
前記周部の上端縁より上方で前記底部と同軸に配置した前記底部より小径な略円形の開口部と、
前記周部の前記上端縁から前記開口部に向けて上方に傾斜して設けた肩部と、
前記周部の前記上端縁と前記肩部の接合部にある波状の陵部と、を有する透明な容器と;
前記容器内に収容した薬液と;
一部を前記容器の外側に突出させた状態で前記開口部を介して前記容器内に挿入配置され、前記容器内に収容した薬液に部分的に浸漬される複数本の棒状の揮散体と;を有し、
前記肩部にドレープ状の襞面を有し、前記周部に前記襞面を有していない、
揮散装置。
【請求項2】
前記軸に沿った任意の位置における前記周部の横断面の短軸が前記底部の直径と略同じである、
請求項1に記載の揮散装置。
【請求項3】
前記容器内に収容した前記薬液の液面が前記周部の前記上端縁より下にある、
請求項1又は請求項2に記載の揮散装置。
【請求項4】
前記肩部の内面に前記襞面を有し、前記周部の横断面の長軸に対向した前記襞面が上に凸となるように湾曲している、
請求項3に記載の揮散装置。
【請求項5】
前記底部が模様を有する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の揮散装置。
【請求項6】
前記周部の外面が柱面を含む、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の揮散装置。
【請求項7】
前記肩部の前記周部と反対の上端縁から上方に延設した略円筒状の首部をさらに有し、
前記首部の上端に前記開口部を有する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芳香剤などの揮発性を有する液状の薬剤を揮散させる揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤を揮散させる揮散装置として、例えば、液状の芳香剤を収容した容器の開口部に複数本の棒状の揮散体を差し込んだ揮散装置が知られている。この種の揮散装置では、液状の芳香剤を複数本の棒状の揮散体により吸い上げて、各揮散体の容器の開口部から外方へ突出した部分から芳香剤を揮散させる。
【0003】
例えば、特許文献1の薬剤揮散器は、略円筒状の周壁部の外面に上下に延びる複数本の筋状部を有する透明な容器と、開口部を介して容器内に差し込まれる複数本の棒状の揮散体と、を有する。周壁部の外面に設けた複数本の筋状部は、薬剤揮散器の美観をよくするように、開口部を介して容器内に差し込まれた複数本の棒状の揮散体を見え難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-124603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の薬剤揮散器によると、周壁部の外面に設けた複数本の筋状部により容器内を見え難くしているため、容器内に収容した液状の芳香剤の残量も見え難く、芳香剤の揮散効果が無くなる時期を把握し辛く、芳香剤の適当な補充タイミングが分かり難い。
【0006】
また、特許文献1の薬剤揮散器によると、周壁部の全周に複数の筋状部を略均等に配置しているため、容器をどの角度から見ても略同じ見た目となり、意匠性に乏しい。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薬液の残量を容易に把握することができ、意匠性に優れた揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の揮散装置の一態様は、略円板状の底部と、底部の外周縁から上方に向けて拡開して設けられ、底部の中心を通る架空の軸と直交する横断面が略楕円形の筒状の周部と、周部の上端縁より上方で底部と同軸に配置した底部より小径な略円形の開口部と、周部の上端縁から開口部に向けて上方に傾斜して設けた肩部と、周部の上端縁と肩部の接合部にある波状の陵部と、を有する透明な容器と;容器内に収容した薬液と;一部を容器の外側に突出させた状態で開口部を介して容器内に挿入配置され、容器内に収容した薬液に部分的に浸漬される複数本の棒状の揮散体と;を有する。この揮散装置は、肩部にドレープ状の襞面を有し、周部に前記襞面を有していない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、薬液の残量を容易に把握することができ、意匠性に優れた揮散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る揮散装置を示す外観斜視図である。
図2図2は、図1の揮散装置の容器の正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)である。
図3図3は、図2の容器をF3-F3に沿って切断した断面図である。
図4図4は、図2の容器をF4-F4に沿って切断した断面図である。
図5図5は、図2の容器と薬液ボトルをブリスター容器に収納した状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る揮散装置10は、液状の芳香剤などの薬剤(以下、薬液Yと称する)を収容した容器20と、開口部21を介して容器20内に挿入配置される複数本の棒状の揮散体30と、を有する。本実施形態では、6本の揮散体30を容器20に挿入配置した。揮散体30は、断面が略円形の細長い棒状に形成されている。揮散体30の断面形状は円形に限らずいかなる形状であってもよい。揮散体30は、容器20の開口部21より十分に小さな直径を有する。
【0012】
容器20は、ガラスや樹脂など、透明な材料により形成することができる。本実施形態の容器20は、透明なガラスにより形成した。揮散体30は、ポリエステル、ポリアセタール、ラタン、葦など、薬液Yを吸い上げて揮散させることのできる材料であればいかなる材料により形成してもよい。本実施形態の揮散体30は、ポリエステルにより形成した。本実施形態では、複数本の揮散体30の直径を、容器20の略円形の開口部21の直径の1/10程度とし、複数本の揮散体30の長さを、容器20の底部22から開口部21までの軸に沿った高さの2倍より長く3倍より短い長さにした。
【0013】
図2(a)~(c)に示すように、容器20は、略円板状の底部22、底部22の外周縁22aから上方に向けて拡開した筒状の周部24、上端に略円形の開口部21を有する略円筒状の首部28、及び周部24の上端縁24bから首部28の下端縁28aに向けて上方に傾斜した肩部26を一体に有する。開口部21の直径、すなわち首部28の内径は、底部22の直径より小さい。開口部21は、周部24の上端縁24bより上方で底部22と同軸に配置されている。
【0014】
底部22の外周縁22aと周部24の下端縁24aとの間の接合部、周部24の上端縁24bと肩部26の下端縁26aとの間の接合部、及び肩部26の上端縁26bと首部28の下端縁28aとの間の接合部は、容器20の内面及び外面ともに、角の無いなだらかな形状に形成されている。容器20は、開口部21以外、液密な構造を有する。
【0015】
揮散装置10の使用開始時に、容器20内に収容する薬液Yの量は決まっている。本実施形態では、図5に示すように、薬液Yの入っていない空の容器20と、容器20内に収容する一定量の薬液Yを液密な状態で収容したボトル42を、ブリスター容器40に収納した状態で揮散装置10を流通させるようにした。そして、揮散装置10の使用時に、ボトル42内の薬液Yの全量を容器20に移し替えるようにした。このため、使用開始時における薬液Yの液面Yaは、図1に示すように、容器20の周部24の上端縁24bより下に配置される。
【0016】
図1に示すように、複数本の揮散体30は、容器20の底部22の中心を通って鉛直方向に延びる架空の軸(図示せず)に対して傾斜した(倒れた)姿勢で、開口部21を介して容器20内に差し込まれる。揮散体30の下端側は、容器20内に収容した薬液Yに部分的に浸漬される。揮散体30を開口部21を介して容器20内に差し込むと、揮散体30の下端が容器20の底部22の外周縁22aと周部24の下端縁24aとの間の接合部の内側に当接し易く、揮散体30の中途部が開口部21の縁に当接し易い。本実施形態のように、容器20の底部22と開口部21を略円形にし且つ両者を同軸に配置した場合、容器20の開口部21に挿入した複数本の揮散体30は、図1に示すように放射状に略均等に広がり易い。
【0017】
このように、複数本の揮散体30を放射状に均等に広げることにより、揮散装置10の見栄えをよくすることができ、薬液Yの揮散効率を高めることができる。つまり、複数本の揮散体30を放射状に広げることにより、揮散体30同士が接触する面積が小さくなり、揮散体30が外気に触れる面積を大きくすることができ、薬液Yの揮散効率を高めることができる。
【0018】
図3及び図4に示すように、容器20の外側表面と内側表面との間の容器20の壁の厚みは不均一である。本実施形態の容器20は、例えば、溶融したガラス材の塊を金型(図示せず)の中に配置して、ガラス材の内部に空気を送り込んで膨らませて、金型の内面形状にガラス材の外面を倣わせることにより形成されている。このため、溶融したガラス材の中に空気を送り込む位置からの距離が離れるに連れてガラスの壁厚は薄くなる。また、本実施形態では、容器20の内面は、凸凹の無い滑らかな形状ではなく、金型の内面形状に倣った形状となる。
【0019】
以下、容器20の形状について、より詳細に説明する。
図2(c)に示すように、略円板状の底部22は、模様2を有する。模様2は、例えば底部22の中心から放射状に形成されている。模様2は、本実施形態のものに限らず、いかなる形状であってもよい。模様2は、底部22の外側表面、内側表面、及び底部22の厚み内の少なくともいずれかに設けることができる。模様2は、平面的な図柄の他に、底部22の表面を起伏のある凸凹形状にしたものであってもよい。本実施形態では、底部22の外側表面に図示のような凸凹模様を形成した。このため、底部22の模様2は、底部22に入射する光をいろいろな方向に反射及び屈折させる。
【0020】
図2(a)に示すように、周部24は、底部22の外周縁22aから上方に向けて拡開した筒状に設けられている。周部24は、円板状の底部22とは異なり、略楕円形の横断面形状を有する。しかし、周部24の下端縁24aは、略円板状の底部22の外周縁22aに接続しているため略円形である。つまり、周部24は、その下端縁24aから上端縁24bに向けて、長軸と短軸の比率が徐々に大きくなるように、横断面形状が略円形から略楕円形に変化している。このため、周部24の断面形状は、下端縁24a以外は略楕円形である。ここで言う横断面とは、容器20の軸と直交する面による周部24の断面のことを言う。
【0021】
容器20を正面から見た図2(a)において周部24は上方に向けて拡開しているの対し、容器20を横から見た図2(b)において周部24は鉛直上方に延設されている。つまり、周部24の横断面における楕円形の短軸は、容器20の高さ方向の全ての位置で、底部22の直径と略同じ長さになっている。これに対し、周部24の横断面における楕円形の長軸は、周部24の下端縁24aから上端縁24bに向かうに連れて徐々に長くなる。なお、周部24の下端縁24aにおける横断面の長軸は底部22の直径と略同じである。
【0022】
また、周部24は、その外周面に、柱面24c(図2a)を含む。柱面24cは、容器20の軸と直交する面内の曲線を軸方向に移動したときに形成される面である。柱面24cは、容器20の正面及び背面の一部に設けられている。このように、容器20の正面及び背面に柱面24cを設けることにより、容器20にラベルなどを貼り付けたときに皺になり難く且つ剥がれ難くすることができる。
【0023】
図3及び図4に示すように、肩部26は、ドレープ状の襞面27a、27bを有する。ドレープ状とは、例えば、1枚の布を垂らしたときに形成される襞形状を意味するものであり、山状に湾曲した面と谷状に湾曲した面を肩部26の周方向に交互に連続させた形状を意味する。襞面27aは、肩部26の外面に設けられ、襞面27bは、肩部26の内面に設けられている。外側の襞面27aは、容器20を形成する際の金型の内面形状と略一致する形状である。内側の襞面27bは、外側の襞面27aに倣う形状ではあるが、襞面27aよりわずかに起伏が小さい形状である。
【0024】
外側の襞面27aは、周部24の上端縁24bにおける略楕円形の横断面の長軸に対向する位置に、容器20の外側に向けて山状に突出した2つの湾曲面271aを含む。また、外側の襞面27aは、周部24の上端縁24bにおける略楕円形の横断面の短軸に対向する位置に、容器20の外側に向けて山状に突出した2つの湾曲面272aを含む。
内側の襞面27bは、周部24の上端縁24bにおける略楕円形の横断面の長軸に対向する位置に、容器20の外側に向けて谷状に凹んだ2つの湾曲面271bを含む。また、内側の襞面27bは、周部24の上端縁24bにおける略楕円形の横断面の短軸に対向する位置に、容器20の外側に向けて谷状に凹んだ2つの湾曲面272bを含む。
【0025】
2つの湾曲面271aと2つの湾曲面271bはそれぞれ肩部26の厚み方向に重なる位置に配置され、2つの湾曲面272aと2つの湾曲面272bはそれぞれ肩部26の厚み方向に重なる位置に配置されている。肩部26の外側の襞面27aは、肩部26に入射する光をいろいろな方向に反射及び屈折させる。肩部26の内側の襞面27bも、肩部26に入射する光をいろいろな方向に反射及び屈折させる。このため、肩部26の外側及び内側に設けた襞面27a、27bは、肩部26を周部24や首部28と比較してより光らせるよう機能する。
【0026】
本実施形態のように、肩部26にのみ襞面27a、27bを設けて、周部24や首部28に襞面を設けないことにより、開口部21を介して容器20に挿入した揮散体30を、周部24や首部28を通して見え易くするとともに、肩部26を通して見え難くすることができる。このように、肩部26を通して揮散体30を見え難くすることで、揮散装置10の意匠性を高めることができる。また、周部24を通して液面Yaを見え易くすることで、容器20内に残った薬液Yの残量を把握し易くすることができ、薬液Yの適切な補充タイミングを容易に判断することができる。
【0027】
また、肩部26の内側に周部24の横断面の長軸に対向する2つの湾曲面271b(図3)を設けることで、この部分における容器20内の空間を上方に広げることができ、容器20に振動が与えられたときに薬液Yが開口部21から零れる不具合を抑制することができる。すなわち、上に凸となる湾曲面271bは、液面Yaに生じた波を打ち消す機能を有する。周部24の横断面の短軸に対向して肩部26の内側に設けた2つの湾曲面272bも液面Yaに生じた波を打ち消す機能を担う。
【0028】
容器20の外部から振動が与えられて液面Yaに波が発生すると、容器20の周部24の内面に波が当たって跳ね返る。この際、互いに対向する内面の間の距離が短い正面側及び背面側の周部24の内面で波が強められ易く、強められた波が、内面間の距離が比較的短い(狭い)楕円形の長軸の両端に向かう。このとき、長軸に対向する湾曲面271bが容器20の外側に向けて上方に凹んでいるため、波の勢いを吸収して打ち消すよう機能し、薬液Yが零れる不具合を抑制することができる。
【0029】
本実施形態では、肩部26の内側及び外側に襞面27a、27bを設けたため、襞面を有していない周部24と肩部26との間の接合部に、襞面27a、27bと交差する波状の稜部25が形成されている。稜部25は、容器20の美観を向上させて意匠性を高めることができる。また、肩部26に襞面27a、27bを設けない場合と比較して、稜部25を長くすることができ、容器20の機械強度を向上させる補強リブとして機能させることができる。
【0030】
上記構造の揮散装置10を使用する際には、図5に示すブリスター容器40から空の容器20とボトル42を取り出し、ボトル42内に収容されている薬液Yの全量を容器20に移し替える。そして、ブリスター容器40の裏側に収納されている複数本の揮散体30(図5では図示していない)を容器20の開口部21から差し込み、揮散体30の一部を薬液Yに浸漬させる。この状態を図1に示す。これにより、複数本の揮散体30により薬液Yが吸い上げられて、揮散体30の容器20の開口部21から上方に突出した部分から薬液Yの揮散が開始される。
【0031】
以上のように、本実施形態の揮散装置10によると、容器20の周部24が楕円形の横断面を有するため、利用者が、容器20の正面を容易に判断することができ、揮散装置10を台などの上に設置する際の向きが分かり易い。また、容器20の横断面が楕円形であるため、容器20を持ち易く取り扱いが容易である。さらに、図5に示すように、空の容器20をブリスター容器40に収納した状態で、容器20が回転する不具合を生じることがなく、容器20をブリスター容器40に収納する向きが分かり易く、図示のように楕円形の長軸を横に向けて容器20を収納することで、ブリスター容器40の厚みを薄くすることができる。
【0032】
また、本実施形態によると、容器20の周部24の横断面を楕円形にした上で、容器20の底部22を円形にしたため、容器20の安定性を確保することもできる。特に、本実施形態のように容器20の高さの2、3倍の長さを有する複数本の揮散体30を用いた場合、揮散装置10の安定性を確保することは重要となる。つまり、容器20の底部22を楕円形にするのではなく円形にして、容器20の重心をできるだけ低くして、周部24の横断面における短軸を底部22の直径と略同じ幅にすることで、容器20の設置安定性を高めている。また、容器20の周部24が正面及び背面に柱面を含むため、容器20の正面や背面にラベルなどを確実且つ綺麗に貼り付けることができ、揮散装置10としての美観をよくすることができる。
【0033】
また、本実施形態によると、揮散装置10の使用開始時において、薬液Yの液面Yaが周部24の上端縁24bより下に位置しているため、周部24を通して液面Yaを容器20の外側から見ることができ、揮散装置10としての美観を向上させることができる。つまり、液面Yaを容器20の外側から見易くすることにより、液面Yaで反射及び屈折される光を容器20の外部から見ることができ、液面Yaが揺れた際にはきらきらして綺麗に見える。また、本実施形態によると、容器20の肩部26にドレープ状の襞面27a、27bを設けたため、襞面27a、27bを設けない場合と比較して、肩部26に入射する光をいろいろな方向に反射及び屈折させることができ、肩部26の見栄えをよくすることができる。同様に、容器20の底部22に設けた模様2は、周部24を介して容器20の外側から見ることができ、底部22に入射する光をいろいろな方向に反射及び屈折させることができ、揮散装置10としての美観を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態によると、ドレープ状の襞面27a、27bを肩部26にのみ設けて周部24や首部28に襞面を設けていないため、周部24や首部28を通して容器20内の揮散体30を見ることができる一方、肩部26を通して揮散体30を見え難くすることができ、揮散体30の見え方が面白く、揮散装置10としての意匠性を高めることができる。また、本実施形態によると、肩部26が円錐面ではなく楕円推面に近い形状であるため、肩部26を見る角度によって揮散装置10の見え方(光り方)が異なり、意匠性が高められている。つまり、肩部26の襞面27a、27bを容器20の軸を中心とした対称形にしていないため、肩部26の襞面27a、27bの見え方をより面白くすることができる。さらに、周部24に襞面を設けていないことにより、容器20の底に残った薬液Yの残量を容器20の外から容易に目視判断することができ、薬液Yの適切な補充タイミングを得ることができる。
【0035】
また、本実施形態によると、容器20の周部24を底部22から上方に向けて拡開する断面楕円形状に形成したため、肩部26の面積を大きくすることができ、肩部26の特徴的な襞面27a、27bを強調することができ、意匠性を向上させることができる。また、周部24を上方に向けて拡開させるとともに周部24の横断面を略楕円形としたことにより、周部24の柱面24cを大きくとることができ、ラベルを貼り付け可能な面積を大きくすることができ、設計の自由度を高めることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、首部28を有する容器20を用いた揮散装置10について説明したが、首部28は本発明に必須の構成ではなく、肩部26の上端縁26bに開口部21を形成してもよい。この場合、開口部21の縁の直ぐ下に肩部26のドレープ状の襞面27a、27bが設けられるため、ボトル42から薬液Yを容器20に移し替えた際などに開口部21の縁から肩部26の内面を伝って流れる液だれを見え難くすることができ、揮散装置10としての美観を向上させることができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
略円板状の底部と、
前記底部の外周縁から上方に向けて拡開して設けられ、前記底部の中心を通る架空の軸と直交する横断面が略楕円形の筒状の周部と、
前記周部の上端縁より上方で前記底部と同軸に配置した前記底部より小径な略円形の開口部と、
前記周部の前記上端縁から前記開口部に向けて上方に傾斜して設けた肩部と、を有する透明な容器と;
前記容器内に収容した薬液と;
一部を前記容器の外側に突出させた状態で前記開口部を介して前記容器内に挿入配置され、前記容器内に収容した薬液に部分的に浸漬される複数本の棒状の揮散体と;を有し、 前記肩部にドレープ状の襞面を有し、前記周部に前記襞面を有していない、
揮散装置。
[2]
前記軸に沿った任意の位置における前記周部の横断面の短軸が前記底部の直径と略同じである、
[1]の揮散装置。
[3]
前記周部の前記上端縁と前記肩部の接合部に前記襞面と交差する波状の陵部を有する、
[1]又は[2]の揮散装置。
[4]
前記容器内に収容した前記薬液の液面が前記周部の前記上端縁より下にある、
[1]乃至[3]のいずれか1つの揮散装置。
[5]
前記肩部の内面に前記襞面を有し、前記周部の横断面の長軸に対向した前記襞面が上に凸となるように湾曲している、
[4]の揮散装置。
[6]
前記底部が模様を有する、
[1]乃至[5]のいずれか1つの揮散装置。
[7]
前記周部の外面が柱面を含む、
[1]乃至[6]のいずれか1つの揮散装置。
[8]
前記肩部の前記周部と反対の上端縁から上方に延設した略円筒状の首部をさらに有し、
前記首部の上端に前記開口部を有する、
[1]乃至[7]のいずれか1つの揮散装置。
【符号の説明】
【0038】
10…揮散装置、 20…容器、 21…開口部、 22…底部、 24…周部、 26…肩部、 27a、27b…襞面、 28…首部、 30…揮散体、 40…ブリスター容器、 42…ボトル、 Y…薬液。
図1
図2
図3
図4
図5