(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240122BHJP
H04N 1/191 20060101ALI20240122BHJP
G03B 27/54 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/191
G03B27/54 A
(21)【出願番号】P 2019216150
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊雄
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-003573(JP,A)
【文献】特開2009-238286(JP,A)
【文献】特開2004-194204(JP,A)
【文献】特開2000-134413(JP,A)
【文献】特開2007-207303(JP,A)
【文献】特開平08-122600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024- 1/207
G06T 1/00
G03B 27/50 -27/70
G11B 7/00 -7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を照明する照明手段と、
原稿からの反射光を反射
する反射面と、前記反射面の反対側に位置する裏面と、前記反射面に沿った長手方向における一方の端部に位置する第1端面と、前記長手方向における他方の端部に位置する第2端面と、を有する矩形板状の反射部材と、
前記反射部材からの反射光を読み取る読取手段と、
前記長手方向において前記第1端面に対向する第1壁部と、前記長手方向において前記第2端面に対向する第2壁部と、を有し、前記反射部材を保持する保持部材と、
を備え、
前記反射部材は、前記第1端面の前記裏面側に第1面取り部が形成され、前記第2端面の前記裏面側に第2面取り部が形成され、
前記第1壁部と前記第1面取り部とは第1接着剤によって接着され、前記第2壁部と前記第2面取り部とは、前記第1接着剤よりも硬度が低い第2接着剤によって接着される、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記保持部材は、合成樹脂によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記反射部材の前記一方の端部と前記保持部材、及び前記他方の端部と前記保持部材は、それぞれ前記第1接着
剤及び前記第2接着
剤を介して接続されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記反射部材は、第1反射部材であり、
前記画像読取装置は、原稿から前記読取手段までの光路上における前記第1反射部材の上流に配置されて原稿からの反射光を反射させる第2反射部材を備え、
前記第1反射部材は、前記第2反射部材よりも反射面の面積が小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第1接着
剤及び前記第2接着
剤は、光硬化性の合成樹脂を含有している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1接着
剤は、デュロメータ・タイプD硬度が20以上であり、
前記第2接着
剤は、デュロメータ・タイプA硬度が20以上90未満である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記第1面取り部及び前記第2面取り部は、面の幅が1.4mm以上となる面取り形状
である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第1面取り部及び前記第2面取り部は、前記第1端面及び前記第2端面の前記反射面側に形成された第3面取り部よりも、面の幅が大きい面取り形状である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項9】
原稿が載置される原稿台と、
前記照明手段と前記反射部材と前記読取手段と前記保持部材とを有する読取ユニットと、を備え、
前記読取ユニットが前記原稿台に沿って原稿を走査することにより、原稿の画像情報を読み取る、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像情報に基づいてシート上に画像を形成する画像形成部と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートの画像を読み取る画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原稿台に載置された原稿(シート)の情報を読み取り可能な画像読取装置や、この画像読取装置を備えた画像形成装置が知られている。このような画像読取装置は、原稿台に載置された原稿を照明し、原稿からの反射光をミラーやレンズを介してCCD等の撮像素子へ導き、撮像素子によって原稿の画像情報を読み取る。
【0003】
上述した画像読取装置は、構成部品の寸法誤差の累積等によって、ミラーや撮像素子の相対的な角度ずれが生じると、情報の一部が欠けてしまう等、読み取り精度が低下する場合がある。このため、従来、撮像素子とミラーとの相対的な角度精度を確保するため、ミラーの一端にこのミラーの角度調整を行うためのセットビスが設けられたものが案出されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像読取装置は、例えば、生産工程における撮像素子及びミラーの組み付け後にセットビスを回転させることによってミラーと支持台との距離を変化させ、1台ずつミラーの角度調整が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビスによってミラーの位置を固定する上述の方法では、ビスに緩みが生じるとミラーの角度が変動してしまう。ミラーの位置(角度)がずれてしまうと読み取り精度が悪化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、原稿の画像情報の読み取り精度の悪化を防ぐことができる画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、原稿を照明する照明手段と、原稿からの反射光を反射する反射面と、前記反射面の反対側に位置する裏面と、前記反射面に沿った長手方向における一方の端部に位置する第1端面と、前記長手方向における他方の端部に位置する第2端面と、を有する矩形板状の反射部材と、前記反射部材からの反射光を読み取る読取手段と、前記長手方向において前記第1端面に対向する第1壁部と、前記長手方向において前記第2端面に対向する第2壁部と、を有し、前記反射部材を保持する保持部材と、を備え、前記反射部材は、前記第1端面の前記裏面側に第1面取り部が形成され、前記第2端面の前記裏面側に第2面取り部が形成され、前記第1壁部と前記第1面取り部とは第1接着剤によって接着され、前記第2壁部と前記第2面取り部とは、前記第1接着剤よりも硬度が低い第2接着剤によって接着される、ことを特徴とする画像読取装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原稿の画像情報の読み取り精度の悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)本実施の形態に係る画像読取装置を示す斜視図、(b)読取ユニットを示す斜視図。
【
図4】(a)読取ユニットを示す調整ミラーの裏面の側から視た斜視図、(b)読取ユニットを示す(a)とは異なる方向から視た斜視図。
【
図5】(a)調整ミラーを示す断面図、(b)調整ミラーを示す(a)の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[プリンタの全体構成]
以下、本実施の形態について、図面に基づいて説明をする。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1を示す図である。
図1に示すように、プリンタ1は、装置本体2と、装置本体2の上部に設けられて原稿の画像情報を読み取る画像読取装置3と、画像読取装置3の上部に設けられた自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)5と、を備えている。装置本体2の内部にはシートに画像を形成する画像形成部10及び制御部13が設けられている。
【0011】
画像形成部10は、電子写真方式の画像形成ユニット14と、定着装置18と、を備えている。画像形成ユニット14は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した画像形成ユニット15Y~15Bkが中間転写体としての中間転写ベルト16に沿って並設されており、制御部13からの指令により画像形成動作を実行する。詳しくは、画像形成動作の開始が指令されると、各画像形成ユニット15Y~15Bkは、感光体である感光ドラムが回転し、ドラム表面が帯電装置によって一様に帯電される。すると、露光装置が、画像読取装置3又は外部のコンピュータから送信された画像情報に基づいてレーザ光を変調して出力し、感光ドラムの表面を走査して静電潜像を形成する。この静電潜像は、不図示の現像装置から供給されるトナーによって可視化(現像)され、中間転写ベルト16上にて重畳する形で順次、転写される。
【0012】
また、上記画像形成動作に並行して、シートカセット11(もしくは不図示の手差しトレイ)に積載されたシートを画像形成部10の二次転写部17に向けて給送する給送動作が実行される。シート給送部12によって給送されたシートは、画像形成ユニット15Y~15Bkの画像形成動作の進行に合わせて二次転写部17に搬送され、この二次転写部17にてトナー像がシートに転写される。未定着のトナー像が転写されたシートは、定着装置18へと受け渡され、ローラ対に挟持されて加熱及び加圧される。トナーがシートに対して溶融及び固着して画像が定着したシートは、排出ローラ対等のシート排出部19によって、排出される。
【0013】
[画像読取装置]
次に、画像読取装置3の構成について、詳しく説明をする。なお、本実施の形態において、シートとは、普通紙の他にも、コート紙等の特殊紙、封筒やインデックス紙等の特殊形状からなる記録材、及びオーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルムや布などを含むものである。また、原稿もシートの一例であり、原稿は、白紙でも、片面又は両面に画像が形成されていてもよいものとする。
【0014】
画像読取装置3は、
図2(a)、(b)及び
図3に示すように、原稿Sが載置される原稿台としてのプラテンガラス201と、プラテンガラス201の下方に配置され、副走査方向Aに移動可能な読取ユニット100と、を備えている。画像読取装置3は、固定読みと、流し読みと呼ばれる2種類の方法により原稿Sの画像情報の読み取りが可能に構成されている。
【0015】
固定読みにおいて、画像読取装置3は、読取ユニット100がプラテンガラス201に沿って副走査方向Aに一定速度で移動し、プラテンガラス201上に載置された原稿Sを走査することで、原稿Sに記録された画像情報を1ラインずつ読み取る。また、流し読みにおいて、画像読取装置3は、ADF5の不図示のリードローラの中心位置と読取ラインとが重なるように読取ユニット100が位置する状態で、ADF5が原稿トレイ5a(
図1参照)上の原稿を搬送することで、原稿の画像情報を読み取る。上記画像読取装置3によって読み取られた画像情報は、上述した画像形成部10によってシート上にトナー像として形成されたり、画像情報のまま外部のコンピュータに出力されたりする。
【0016】
読取ユニット100は、タイミングベルト212によって駆動モータ202と連結された保持部材としての筐体101を備えている。筐体101は、例えば合成樹脂によって形成されており、駆動モータ202が駆動することによって、ガイドレール213に沿ってプラテンガラス201と平行に、即ち、副走査方向Aに移動することが可能となっている。読取ユニット100は、上記固定読み時には、駆動モータ202が駆動して副走査方向Aへと移動する。
【0017】
更に、筐体101は、照明手段としての照明ユニット206、第1反射部材としてのミラー103、複数の第2反射部材としてのミラー102、レンズユニット204、及び撮像素子を有する読取手段としてのイメージセンサ205等を保持している。照明ユニット206は、例えば、LEDやキセノンランプ等の発光源を有しており、プラテンガラス201上に載置された原稿Sの下面を照明する。
【0018】
ミラー102,103は、筐体101とは異なる材料、具体的には、筐体101とは線膨張係数が異なる材料によって形成されている。より具体的には、ミラー102,103は、筐体101よりも線膨張係数が低い材料、例えばガラス等によって形成されており、表面に光の反射率が高い反射面102a,103aを有している。
【0019】
照明ユニット206から発せられて原稿の下面で反射した反射光は、複数のミラー102の反射面102a(表面)、及びミラー103の反射面103a(表面)で反射されて、レンズユニット204に導かれる。ミラー102は、原稿Sからレンズユニット204までの光路207上において、ミラー103よりも上流に配置されている。即ち、ミラー103は、原稿Sからレンズユニット204までの光路207上における複数のミラー102,103のうち最も下流に、レンズユニット204に対向して配置されている。
【0020】
また、ミラー102,103は、略矩形の板状に形成されており、原稿Sからレンズユニット204までの光路207上において、下流に向かうほど反射面102a,103aの面積が小さくなるように形成されている。具体的には、ミラー102,103は、原稿Sからレンズユニット204までの光路207上において、下流に向かうほど反射面103aに沿った長手方向L(
図3の奥行方向、
図4(a)参照)が小さくなるように形成されている。
【0021】
レンズユニット204は、原稿Sから、ミラー102,103を介して導かれた反射光をイメージセンサ205に結像し、このイメージセンサ205によって反射光が光電変換されて、原稿Sの画像が読み取られる。
【0022】
[ミラーを保持する構成]
次に、筐体101がミラー102,103を保持する構成について、詳しく説明をする。上述したように、ミラー102,103と、筐体101とは、線膨張係数が異なる。このため、ミラー102,103が筐体101に対して移動不能に固定されると、装置の温度変化によってそれぞれ異なる膨張率で寸法が変化し、筐体101やミラー102,103の反射面102a,103aに歪みが生じる場合がある。筐体101やミラー102,103の反射面102a,103aに歪みが生じると、原稿Sの画像情報を読み取る際に、良好な読み取り精度を得ることが難しい。
【0023】
このため、本実施の形態において、ミラー102は、不図示の板バネによって、筐体101に対して反射面102aと交差する方向に押圧され、反射面102aに沿う方向に移動可能に保持されている。これにより、ミラー102は、筐体101に対して反射面102aと交差する方向に位置決めされると共に、温度変化に伴う筐体101やミラー102の反射面102aの歪みを抑制し、読み取り精度の向上を図っている。
【0024】
また、本実施の形態において、ミラー103は、筐体101に対して接着されることによって保持されている。具体的には、ミラー103は、反射面103aに沿う方向の一つである長手方向Lにおける両端部が、筐体101に対して第1接着剤及び第2接着剤によって接着されることで保持されている。
【0025】
以下、ミラー103を保持する具体的な構成について説明する。
図4(a)及び(b)は、ミラー103の反射面103aとは反対側の裏面103bの側から視た斜視図であり、
図5(a)は、ミラー103の断面図である。
図4(a)、(b)及び
図5(a)に示すように、筐体101は、ミラー103の長手方向Lにおける一方側の端部103cの近傍に配置された壁部104aと、他方側の端部103dの近傍に配置された壁部104bと、を有している。
【0026】
壁部104a,104bは、ミラー103の反射面103aと交差する方向に延在しており、互いにミラー103の長手方向Lに離間して対向配置されている。また、壁部104aは、ミラー103の長手方向Lにおける一方側の端部103cよりも一方側に配置され、壁部104bは、ミラー103の長手方向Lにおける他方側の端部103dよりも他方側に配置されている。壁部104aと端部103cとは、第1接着剤が硬化した第1接着部106aを介して接続され、壁部104bと端部103dとは、第2接着剤が硬化した第2接着部106bを介して接続されている。このように、ミラー103は、壁部104aと端部103c、及び壁部104bと端部103dとが、それぞれ直接接触しないように配置されている。
【0027】
第1接着剤及び第2接着剤は、共に光硬化性の合成樹脂を含有し、硬化前の状態では流動性を有する接着剤であり、例えば、紫外線の照射等によって流動性が高い状態から流動性が低い状態に硬化する。また、第2接着剤は、第1接着剤よりも硬化時における硬度が低い。即ち、第2接着部106bは、第1接着部106aよりも硬度が低い。具体的には、第1接着部106aは、デュロメータ・タイプD硬度が20以上であり、第2接着部106bは、デュロメータ・タイプA硬度が20以上90未満かつ第1接着部106aよりも低い硬度となっている。より具体的には、第1接着部106aは、デュロメータ・タイプD硬度が70程度であり、第2接着部106bは、デュロメータ・タイプA硬度が80程度となっている。なお、デュロメータ・タイプA硬度及びデュロメータ・タイプD硬度は、JIS K 6253-3:2012、ISO 7619-1による。
【0028】
装置の温度が変化した場合、端部103cと壁部104aとの相対位置が第1接着部106aによって維持されると共に、第2接着部106bが変形して端部103dと壁部104bとの距離が変化する。即ち、ミラー103は、端部103cと壁部104aとの相対位置が第1接着部106aによって位置決めされると共に、温度変化に伴う長手方向Lにおける筐体101に対する相対的な寸法の変化が第2接着部106bによって吸収される。これにより、本実施の形態では、温度変化に伴う筐体101やミラー103の反射面103aの歪みを抑制し、読み取り精度の向上(読み取り精度の悪化の防止)を図っている。
【0029】
一般に、ガラス等で形成された板は、エッジの強度を向上させるため、所謂糸面取りと呼ばれる微小な面取り形状が形成されている。しかしながら、このような面取り形状が小さいと、ミラーを筐体に接着する際、接着剤の粘度や塗布の方法によっては接着剤がミラーと筐体の壁部との間に流れ込みにくく、十分な接着強度が得られない場合がある。
【0030】
このため、本実施の形態のミラー103は、長手方向Lと交差するエッジのうちの少なくとも一部のエッジに、他の部分よりも大きな面取り形状を有している。具体的には、ミラー103は、長手方向Lの両端における端面103e,103fのエッジのうち、第1接着部106a及び第2接着部106bによって筐体101と接続されているエッジに、他の部分よりも大きな面取り形状を有している。
【0031】
より具体的には、ミラー103は、長手方向Lに視た端面103e,103fの4本のエッジのうち、裏面103bの側のエッジ及び短手方向Wの両端の側のエッジに他の部分に形成された面取り形状107bより面の幅が大きい面取り形状107aを有する。言い換えると、ミラー103は、長手方向Lに視た端面103e,103fの4本のエッジのうち、反射面103aの側のエッジを除く3本のエッジに、他の部分に形成された面取り形状107bより面の幅が大きい面取り形状107aを有する。
【0032】
即ち、
図5(b)に示すように、面取り形状107aの面取り寸法l1,l2は、面取り形状107bの面取り寸法m1,m2よりも大きく形成されている。例えば、面取り形状107aは、面取り寸法l1,l2が1mm以上(C1以上)となっている。また、例えば、面取り形状107aは、面の幅が1.4mm以上となっている。なお、短手方向Wは、長手方向L及び板厚方向Dと交差する方向である。また、ミラーの長手方向Lにおける端面は、反射面、裏面及び短手方向Wにおける端面と直交するものに限定されず、面取り形状の面は、端面、反射面、裏面等と45°でなくてもよい。
【0033】
これにより、第1接着剤及び第2接着剤が長手方向Lにおけるミラー103と筐体101との隙間105a,105b(
図5(a)参照)に流れ込みやすくなり、ミラー103を筐体101に対して十分な接着強度で接着することが可能となる。
【0034】
[ミラーの接着手順]
次に、ミラー103を筐体101に接着する際の手順について、説明をする。まず、筐体101に対し、照明ユニット206、複数のミラー102、レンズユニット204及びイメージセンサ205を取り付けた状態で、ミラー103をマニピュレータで把持し、ミラー103を壁部104a,104bの間に位置させる。ミラー103が壁部104a,104bの間に位置している状態でマニピュレータによってミラー103の向きを調整することによって、レンズユニット204やイメージセンサ205に対するミラー103の角度が適正な角度となるように調整する。
【0035】
ミラー103の角度調整を行っている間、マニピュレータは、長手方向Lにおいてはミラー103と筐体101との間に隙間105a,105bが形成されるように、ミラー103と筐体101とが接触しない位置にミラー103を把持するように制御される。これにより、ミラー103の角度調整中にミラー103と筐体101とが接触して、ミラー103の角度がずれてしまうことを抑制している。
【0036】
ミラー103の角度調整を行った状態で、ディスペンサ等により隙間105a,105bに向けて第1接着剤及び第2接着剤を流し込むように塗布する。第1接着剤及び第2接着剤の塗布後、第1接着剤及び第2接着剤に紫外線等を照射し、第1接着剤及び第2接着剤を硬化させる。このように、本実施の形態において、ミラー103は、組立ての際に角度が調整される調整ミラーとして構成されている。なお、特許文献1によって開示されたミラーの角度調整を行う工程は、一般に作業者の手作業で行われる。本実施の形態では、ビスによってミラーの角度調整を手作業で行う代わりに、一例として紹介したようにマニピュレータによって調整した角度に把持されたミラーを接着剤で固定することができるので、ミラーを取り付ける行程の自動化に寄与できる。
【0037】
このように構成された本実施の形態において、ミラー103の長手方向Lにおける一方の端部103cと筐体101とを接着する第1接着部よりも、ミラー103の長手方向Lにおける他方の端部103dと筐体101とを接着する第2接着部は、硬度が低い。一般に、ミラーと保持部材とは異なる材料によって形成されている。よって、互いの線膨張係数の違いにより周囲の温度変化や装置内の発熱の影響でミラーや保持部材に歪みが生じ、読み取り精度の悪化を招くことがある。本実施の形態では、第1接着部よりも第2接着部は硬度が低いので、温度変化に伴う筐体101やミラー103の歪みを抑制し、原稿Sの画像情報の読み取り精度を向上させる(読み取り精度の悪化を防ぐ)ことができる。
【0038】
また、ミラー103と筐体101とが第1接着部106a及び第2接着部106bを介して接続されているので、例えば、接着前にマニピュレータ等で角度調整を行う際、互いの接触を抑制し、原稿Sの画像情報の読み取り精度を向上させることができる。ビスでミラーを固定する方式では仮にビスに緩みが生じるとミラーの角度が変動してしまう。本実施の形態ではミラーを接着剤で固定しているので、ビスの緩みに起因したミラーの角度変動の恐れはない。
【0039】
[変形例]
なお、本実施の形態において、原稿Sからの反射光の光路上において最も下流に配置されているミラー103が筐体101に対して接着される調整ミラーを構成しているが、これに限定されない。第1反射部材としての調整ミラーは、原稿から読取手段までの光路上に配置された複数の反射部材のうちのいずれの反射部材であってもよいし、この光路上に配置された複数の反射部材が筐体に対して接着されていてもよい。
【0040】
また、本実施の形態において、ミラー103は、長手方向Lにおける端部103c,103dが筐体101に対して接着されているが、これに限定されない。第1反射部材としてのミラーは、例えば、少なくとも反射面に沿う方向における一方の端部と他方の端部とが接着されていればよく、例えば、短手方向の両端部が接着されていてもよいし、3箇所以上が接着されていてもよいし、ミラーは矩形でなくてもよい。また、反射面は平面であるものに限定されず、曲面であってもよい。
【0041】
また、本実施の形態において、ミラー103は、ガラスによって形成され、筐体101は、合成樹脂によって形成されているが、これに限定されない。第1反射部材としてのミラーと、このミラーを保持する保持部材と、が互いに線膨張係数が異なる材料によって形成されていればよく、例えば、保持部材は、ステンレスやメッキ鋼板等、金属で形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施の形態において、ミラー102,103は、全て副走査方向Aに移動する読取ユニット100に設けられているが、これに限定されない。これらのミラーは、一部がプラテンガラス等を保持する画像読取装置本体203(
図3参照)等に固定されていてもよいし、画像読取装置本体203に対し、一部のミラーが互いに異なる相対速度で移動するように構成されていてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、ミラー103は、端面103e,103fのエッジのうち、第1接着部106a及び第2接着部106bによって筐体101と接続されているエッジに他の部分よりも大きな面取り形状を有しているが、これに限定されない。第1反射部材としてのミラーは、第1接着部及び第2接着部によって筐体と接続されているエッジに十分な接着強度が得られる形状を有していればよく、第1接着部及び第2接着部によって筐体と接続されない部分には面取り形状を有していなくてもよい。
【0044】
また、本実施の形態において、画像読取装置3を備えた画像形成装置としてのプリンタ1について説明をしたが、これに限定されない。画像形成装置は、外部PCから入力された画像情報や原稿から読み取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートに画像を形成する装置であればよく、例えば、複写機、ファクシミリ、複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…プリンタ(画像形成装置)/3…画像読取装置/10…画像形成部/100…読取ユニット/101…筐体(保持部材)/102…ミラー(第2反射部材)/103…ミラー(第1反射部材)/103a…反射面/103e…端面/103f…端面/106a…第1接着部/106b…第2接着部/107a…面取り形状/201…プラテンガラス(原稿台)/205…イメージセンサ(読取手段)/206…照明ユニット(照明手段)/207…光路/L…長手方向(反射面に沿う方向)/S…原稿