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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G03G15/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019218042
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021089314
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】美濃部 太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202772(JP,A)
【文献】特開2019-074605(JP,A)
【文献】特開2013-231942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する複数の像担持体と、
前記複数の像担持体からトナー像が転写される移動可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架部材と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触し、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写するための二次転写部材と、
前記二次転写部材に電圧を印加する印加手段と、
前記印加手段により印加される電圧を制御し、情報を記憶する記憶手段を有する制御手段と、
前記印加手段から出力される電流を検出する検出手段と、
前記複数の張架部材のうち、前記印加手段により前記二次転写部材に電圧が印加されたときに前記中間転写ベルトを介して電流が流れる一の張架部材に電気的に接続される接触部材と、
前記接触部材に接続される定電圧素子と、
一端が前記印加手段と接続され、他端が前記接触部材と接続される分離抵抗と、
を備え、
前記記憶手段には、前記分離抵抗の抵抗値及び前記定電圧素子の電圧値が記憶されており、
前記接触部材は、前記二次転写部材を介して供給される電流と、前記印加手段から前記分離抵抗に供給される電流と、によって所定の電位に維持され
前記制御手段は、前記二次転写部材に印加する電圧を、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写ベルトに転写する場合と、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写する場合とで、変更すように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定電圧素子は、前記一の張架部材と接続されており、前記一の張架部材を介して電流が供給されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記接触部材は、各々の前記像担持体に対応して設けられ、各々の前記像担持体の近傍で前記中間転写ベルトの内周面に接触し、前記中間転写ベルトを各々の前記像担持体の方向に押圧することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の像担持体上のトナー像は、前記印加手段から前記二次転写部材に電圧が印加され、前記接触部材に電流が供給されることにより、前記中間転写ベルトに転写されることを特徴とする請求項3に記載画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記印加手段が印加する電圧と、前記検出手段により検出された前記印加手段から出力される電流値と、前記分離抵抗の抵抗値と、前記定電圧素子の電圧値とに基づいて求めた前記二次転写部材に出力される電流値が、所定の電流値と一致するように、前記印加手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記分離抵抗は、前記印加手段が出力可能な下限の電圧を出力した場合にも、前記定電圧素子に電流が供給される抵抗値を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定電圧素子は、ツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記一の張架部材は、前記二次転写部材と前記中間転写ベルトを介してニップ部を形成する対向ローラであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記接触部材は、金属ローラであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
トナー像を担持する複数の像担持体と、
前記複数の像担持体からトナー像が転写される移動可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架部材と、
前記中間転写ベルトの外周面に接触し、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写するための二次転写部材と、
前記二次転写部材に電圧を印加する印加手段と、
前記印加手段により印加される電圧を制御する制御手段と、
前記印加手段から出力される電流を検出する検出手段と、
前記複数の張架部材のうち、前記印加手段により前記二次転写部材に電圧が印加されたときに前記中間転写ベルトを介して電流が流れる一の張架部材に電気的に接続される接触部材と、
前記接触部材に接続される定電圧素子と、
一端が前記印加手段と接続され、他端が前記接触部材と接続される分離抵抗と、
を備え、
前記接触部材は、前記二次転写部材を介して供給される電流と、前記印加手段から前記分離抵抗に供給される電流と、によって所定の電位に維持され、
前記制御手段は、前記印加手段が印加する電圧と、前記検出手段により検出された前記印加手段から出力される電流値と、前記分離抵抗の抵抗値と、前記定電圧素子の電圧値とに基づいて求めた前記二次転写部材に出力される電流値が、所定の電流値と一致するように、前記印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式の画像形成装置として、中間転写体を備える画像形成装置が知られている。従来の画像形成装置では、中間転写体を介して、トナーの色に対応した感光ドラムに対向して一次転写部材が配置されており、感光ドラムと中間転写体とが接触し、一次転写部を形成している。一次転写部材は、第1の高電圧電源より高電圧を印加される。これにより、一次転写部において一次転写電位が発生し、感光ドラムと中間転写体との間に形成された電位差によって、各感光ドラムの表面に形成されたトナー像が中間転写体上に転写される。各色の感光ドラム上に形成されたトナー像が順次、中間転写体に転写されることにより、中間転写体の表面には複数色のトナー像が形成される。次に、第2の高電圧電源から二次転写部材に高電圧が印加されることにより、中間転写体の表面に形成された複数色からなるトナー像が、紙等の記録材の表面に一括して転写される。記録材の表面に一括転写されたトナー像は、定着装置により記録材に定着される。
【0003】
例えば、中間転写体として無端状の中間転写ベルトを有する画像形成装置があり、このような画像形成装置では、中間転写ベルトの内周面が複数の張架部材により張架されている。中間転写ベルトにおいて、張架部材と張架部材との間で、かつ、複数の感光ドラムからトナー像が転写される領域で、中間転写ベルトに接触する接触部材に定電圧素子を接続する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、一次転写用の高電圧電源は用いずに、二次転写用の高電圧電源から二次転写部材及び二次転写部材に対向する張架部材を介して、中間転写ベルトに接触する接触部材に接続された定電圧素子に電流を流すことで一次転写が行われている。特許文献1に提案されている画像形成装置では、定電圧素子に電流を流した際に発生する一定の電圧によって、一次転写部における一次転写電位が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-231942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した構成の画像形成装置では、二次転写部材に流れる電流は、一次転写部に流れる電流と定電圧素子に流れる電流とを合算した電流よりも大きな電流でなくてはならない。そのため、一次転写部に必要な電位を形成するための電流値が、二次転写用の高電圧電源から供給される電流値よりも大きい場合には、定電圧素子は一定の電圧を発生するのに必要な電流を流せなくなる。そのため、一次転写部において必要な一次転写電位が形成できず、その結果、記録材に転写される画像が濃度不良等となる画質の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、二次転写部材に供給される電流によらず、一次転写部において必要な一次転写電位を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0008】
(1)トナー像を担持する複数の像担持体と、前記複数の像担持体からトナー像が転写される移動可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架部材と、前記中間転写ベルトの外周面に接触し、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写するための二次転写部材と、前記二次転写部材に電圧を印加する印加手段と、前記印加手段により印加される電圧を制御し、情報を記憶する記憶手段を有する制御手段と、前記印加手段から出力される電流を検出する検出手段と、前記複数の張架部材のうち、前記印加手段により前記二次転写部材に電圧が印加されたときに前記中間転写ベルトを介して電流が流れる一の張架部材に電気的に接続される接触部材と、前記接触部材に接続される定電圧素子と、一端が前記印加手段と接続され、他端が前記接触部材と接続される分離抵抗と、を備え、前記記憶手段には、前記分離抵抗の抵抗値及び前記定電圧素子の電圧値が記憶されており、前記接触部材は、前記二次転写部材を介して供給される電流と、前記印加手段から前記分離抵抗に供給される電流と、によって所定の電位に維持され、前記制御手段は、前記二次転写部材に印加する電圧を、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写ベルトに転写する場合と、前記中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写する場合とで、変更すように制御することを特徴とする画像形成装置。
(2)トナー像を担持する複数の像担持体と、前記複数の像担持体からトナー像が転写される移動可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架部材と、前記中間転写ベルトの外周面に接触し、前記中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録材に転写するための二次転写部材と、前記二次転写部材に電圧を印加する印加手段と、前記印加手段により印加される電圧を制御する制御手段と、前記印加手段から出力される電流を検出する検出手段と、前記複数の張架部材のうち、前記印加手段により前記二次転写部材に電圧が印加されたときに前記中間転写ベルトを介して電流が流れる一の張架部材に電気的に接続される接触部材と、前記接触部材に接続される定電圧素子と、一端が前記印加手段と接続され、他端が前記接触部材と接続される分離抵抗と、を備え、前記接触部材は、前記二次転写部材を介して供給される電流と、前記印加手段から前記分離抵抗に供給される電流と、によって所定の電位に維持され、前記制御手段は、前記印加手段が印加する電圧と、前記検出手段により検出された前記印加手段から出力される電流値と、前記分離抵抗の抵抗値と、前記定電圧素子の電圧値とに基づいて求めた前記二次転写部材に出力される電流値が、所定の電流値と一致するように、前記印加手段を制御することを特徴とする画像形成装置
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次転写部材に供給される電流によらず、一次転写部において必要な一次転写電位を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1、2の画像形成装置の構成を示す概略断面図
図2】実施例1の画像形成装置の制御部を説明するブロック図
図3】従来例の画像形成装置の構成を示す概略断面図
図4】実施例1、2の画像形成時の電流経路を説明する概略回路図
図5】実施例1の画像形成時の各部の状態を示すタイミングチャート
図6】実施例2の画像形成装置の制御部を説明するブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
[カラー画像形成装置の概要]
図1は、電子写真方式のカラー画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図であり、図1を用いて、実施例1の画像形成装置の構成及び画像形成動作について説明する。本実施例の画像形成装置は、4つの画像形成ステーションa、b、c、dが設けられているタンデムタイプのプリンタである。第1の画像形成ステーションaはイエロー(Y)、第2の画像形成ステーションbはマゼンタ(M)、第3の画像形成ステーションcはシアン(C)、第4の画像形成ステーションdはブラック(Bk)のトナー像を形成する。各画像形成ステーションa~dは、収納するトナーの色が異なる点を除けば、同じ構成を有している。また、図1に示す各画像形成ステーションの部材を示す符号の添字a、b、c、dは、それぞれ第1の画像形成ステーション、第2の画像形成ステーション、第3の画像形成ステーション、第4の画像形成ステーションの部材であることを示す。以下では、特定の画像形成ステーションや部材を指す場合を除き、符号の添字を省略する。
【0013】
各画像形成ステーションa~dは、像担持体である感光ドラム1、帯電ローラ2、現像器4、クリーニング装置5を備える。感光ドラム1は、図中矢印方向(反時計回り方向)に所定の周速度(プロセススピードともいう)で回転駆動され、表面に形成されたトナー像を担持する。現像器4は、各画像形成ステーションa~dに対応したトナーを収納し、感光ドラム1上に形成された静電潜像(後述)にトナーを付着させて、現像するための装置である。クリーニング装置5は、後述する中間転写ベルト10に転写されずに感光ドラム1上に残ったトナーを回収するための部材である。本実施例では、クリーニング装置5は、感光ドラム1に当接するクリーニング部材であるクリーニングブレードと、クリーニングブレードが回収したトナーを収納する廃トナーボックスと、を有している。
【0014】
画像形成装置全体の制御を行うコントローラ100(図2参照)が、ホストコンピュータ(不図示)等から画像情報を含む印刷指令を受信すると、画像形成動作が開始され、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1は回転駆動される。各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1は、回転過程で、帯電ローラ2により所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位で、一様に帯電処理が行われる。帯電処理が行われた感光ドラム1は、画像情報に応じた光ビームを照射して感光ドラム1の表面を露光する露光装置3により、画像情報に応じた露光が行われる。これにより、感光ドラム1a上には、各トナーの色成分像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像位置において現像器4により現像され、トナー像として可視化される。なお、現像器4に収納されたトナーの極性は負極性であり、本実施例では、帯電ローラ2による感光ドラム1の帯電極性と同じ極性に帯電されたトナーにより静電潜像が反転現像されている。しかし、本発明は、感光ドラム1の帯電極性とは逆の極性に帯電したトナーにより静電潜像が正現像されるように構成された電子写真方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0015】
中間転写ベルト10は、複数の張架部材である駆動ローラ11、テンションローラ12、二次転写対向ローラ13(以下、対向ローラ13という)により張架されており、樹脂材料に導電剤を添加して導電性を付与した無端状ベルトである。中間転写ベルト10は、各感光ドラム1aと当接し、感光ドラム1の移動方向に、感光ドラム1と略同一の周速度で移動可能である。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、感光ドラム1と中間転写ベルト10との当接部(以下、一次転写部という)を通過する過程で、中間転写ベルト10の上に転写される(以下、一次転写という)。各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1上のトナー像は、各一次転写部で中間転写ベルト10上(中間転写ベルト上)に、順次重畳して転写される。また、各画像形成ステーションa~dの各接触部材14は、張架部材である対向ローラ13に電気的に接続され、感光ドラム1の近傍で、中間転写ベルト10の内周面に接触する部材である。
【0016】
本実施例では、一次転写時には、中間転写ベルト10に接触する電流供給部材である二次転写ローラ20を介して中間転写ベルト10に電流が流れる。その電流によって、中間転写ベルト10の各画像形成ステーションa~dにおける一次転写部において、一次転写電位が形成される。本実施例の一次転写電位の形成方法については後述する。なお、中間転写ベルト10に転写されずに感光ドラム1表面に残留したトナーは、クリーニング装置5により清掃され、除去される。清掃された感光ドラム1は、次の画像形成プロセスに供せられる。
【0017】
以上説明した工程によって、中間転写ベルト10上には、画像情報に対応したフルカラーのトナー像が形成される。続いて、中間転写ベルト10上に形成されたフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とにより形成される二次転写部を通過する過程で、給送ローラ50により給送された記録材Pの表面に一括転写される(以下、二次転写という)。二次転写部材である二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の外周面に対して加圧力で接触し、二次転写部を形成している。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10により従動回転している。
【0018】
印加手段である二次転写電源21は、高電圧を生成するトランスを有し、生成された高電圧を用いて、二次転写ローラ20に二次転写電圧を印加する。二次転写電源21が二次転写ローラ20に印加する二次転写電圧は、コントローラ100(図2参照)により、略一定に制御されている。なお、二次転写電源21は、1000~4000V(ボルト)の範囲の高電圧を出力することができる。
【0019】
二次転写部においてトナー像が転写された記録材Pは、定着器30によって加熱及び加圧される。これにより、記録材P上に転写されたトナーは溶融混色して、記録材Pに定着される。なお、記録材Pに転写されずに中間転写ベルト10上に残ったトナーは、クリーニングブレードを備えるクリーニング装置16により除去される。上述した画像形成動作により、記録材Pにフルカラーのプリント画像が形成される。なお、図1に示す分離抵抗17、及び定電圧素子15については後述する。
【0020】
[コントローラの概要]
次に、画像形成装置全体の制御を行うコントローラ100の構成について、図を用いて説明する。図2は、図1に示す画像形成装置の制御部であるコントローラ100の構成を説明するブロック図である。コントローラ100は、図2に示すように、制御手段であるCPU150、記憶装置であるROM151及びRAM152を有している。CPU150は、ROM151に格納されている制御プログラムに従って、転写制御部201、現像制御部202、露光制御部203、帯電制御部204を包括的に制御している。ROM151には、環境テーブルや紙厚さ対応テーブルが格納されており、必要に応じて画像形成動作の制御に反映される。RAM152は、画像形成装置内部の装置から取得した制御データを一時的に保存し、制御プログラムの実行に伴う演算処理の作業領域として用いられる。転写制御部201は、コントローラ100からの指示により二次転写電源21を制御する。現像制御部202は、コントローラ100からの指示により現像器4を制御し、感光ドラム1上に形成された静電潜像を現像する。露光制御部203は、コントローラ100からの指示により露光装置3を制御し、画像情報に応じた静電潜像を感光ドラム1上に形成する。帯電制御部204は、コントローラ100からの指示により帯電ローラ2を制御し、感光ドラム1を所定の極性の所定の電位で一様に帯電する。CPU150は、ホストコンピュータ(不図示)から画像情報及び印刷命令を受信すると、転写制御部201、現像制御部202、露光制御部203、帯電制御部204を制御し、画像形成動作を実行する。
【0021】
また、二次転写電源21は、検出手段である電流検出回路21hを有している。電流検出回路21hは、二次転写電源21が二次転写ローラ20や分離抵抗17に電圧を印加したときに、二次転写ローラ20や分離抵抗17に流れる電流を合算した合算電流を検出する。以下では、二次転写ローラ20や分離抵抗17に流れる電流を合算した合算電流を、合算電流itotal(図4参照)という。転写制御部201は、電流検出回路21hによって検出された合算電流itotalに基づいて、二次転写電源21から出力される電圧を制御する。なお、二次転写電源21から出力される電圧の制御方法については後述する。
【0022】
[中間転写ベルトの概要]
次に、中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10の張架部材である駆動ローラ11、テンションローラ12、対向ローラ13と、接触部材14について詳細に説明する。対向ローラ13は、二次転写ローラ20と中間転写ベルト10を介してニップ部を形成する部材であり、二次転写電源21から二次転写ローラ20に高電圧が印加されたときに、中間転写ベルト10を介して電流が流れる部材である。中間転写ベルト10は、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1と当接し、感光ドラム1の回転方向と同じ方向に、感光ドラム1と略同一の周速度で移動可能である。中間転写ベルト10は、駆動源(不図示)によって駆動される駆動ローラ11によって、感光ドラム1と略同一の周速度で移動する。
【0023】
図1に示すように、中間転写ベルト10の移動方向において、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1の近傍に、中間転写ベルト10に接触する接触部材14が配置されている。接触部材14は例えば金属製のローラであり、以下、金属ローラ14という。金属ローラ14は、中間転写ベルト10の内周面側に接触するように配置されたSUS丸棒で構成されている。金属ローラ14は、中間転写ベルト10を各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1に確実に接触させるように、図1において図中下側から上方向に向かって、中間転写ベルト10を押圧している。また、金属ローラ14aは、中間転写ベルト10の移動に伴い、従動して回転する。
【0024】
二次転写電源21は、二次転写ローラ20に高電圧を印加することによって、二次転写ローラ20から中間転写ベルト10を介して対向ローラ13に電流を流している。対向ローラ13側から二次転写ローラ20を見たときに、二次転写ローラ20は対向ローラ13への電流供給部材として機能する。また、図1に示すように、対向ローラ13は、金属ローラ14a~14dと電気的に接続されている。このため、対向ローラ13に流れた電流は、金属ローラ14a~14dにも流れ、金属ローラ14a~14dを介して、各画像形成ステーションa~dの一次転写部を形成する中間転写ベルト10に流れる。これにより、各画像形成ステーションa~dの一次転写部において、一次転写電位が形成される。各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1上(像担持体上)に形成されたトナー像は、各一次転写部において形成された一次転写電位と感光ドラム1上の電位との電位差によって、各感光ドラム1a~1d上から中間転写ベルト10上に移動する。これにより、各一次転写部において一次転写が行われる。このように、二次転写電源21は、二次転写ローラ20に二次転写電圧を印加する電源であると共に、各一次転写部に一次転写電位を形成するために中間転写ベルト10に電流を供給する電流供給源としても機能する。
【0025】
[一次転写電位の形成方法]
次に、本発明の特徴である一次転写を実行するための一次転写電位の形成方法について、本実施例と従来例とを比較しながら詳細に説明する。図3は、本実施例と比較するための従来例として、従来のカラー画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。図3では、図1と比べて、分離抵抗17が設けられていない点が異なるが、その他の構成は図1と同様であり、図1と同じ構成には同じ符号を付している。従来の画像形成装置の構成を示す図3では、対向ローラ13及び駆動ローラ11は定電圧素子15に電気的に接続されており、定電圧素子15を介して接地されている。二次転写電源21から二次転写ローラ20に電圧が印加されると、二次転写ローラ20から中間転写ベルト10、対向ローラ13を介して定電圧素子15に電流が流れる。これにより、定電圧素子15と接続された対向ローラ13及び駆動ローラ11は、所定の電位に維持される。ここで、所定の電位とは、各画像形成ステーションa~dの一次転写部において、所定の転写効率を得ることができる一次転写電位のことである。また、各画像ステーションa~dの感光ドラム1の近傍には、中間転写ベルト10に接触する接触部材である金属ローラ14a~14dを配置し、金属ローラ14a~14dも、定電圧素子15を介して電気的に接地されている。
【0026】
例えば、画像形成のプロセススピードが速くなると、一次転写部における転写効率である一次転写性を確保するために、一次転写電流が増える。その結果、一次転写部に必要な電流値が、二次転写ローラ20から供給される電流値より大きい場合には、定電圧素子15が一定電圧を発生するために必要な電流が供給されなくなるため、一次転写性を確保することが困難となる。
【0027】
一方、本実施例では、図1に示すように、分離抵抗17が二次転写電源21と定電圧素子15との間に接続されている。そのため、定電圧素子15には、二次転写電源21に接続された二次転写ローラ20を介して供給される電流に加えて、二次転写電源21から分離抵抗17を介して電流が供給される構成となっている。これにより、一次転写部に必要な電流値が二次転写ローラ20から供給される電流値より大きい場合にも、分離抵抗17を介して一次転写部に必要な電流が供給される。そのため、定電圧素子15は、一次転写部における一次転写電位を形成することが可能になる。なお、本実施例では、定電圧素子15にツェナーダイオードを用いている。
【0028】
[二次転写電源の電流経路]
次に、二次転写電源21からの電流供給経路について図4を用いて説明する。図4は、画像形成時の感光ドラム1から中間転写ベルト10へのトナー像の転写プロセスを実行するための電気的な回路動作を説明する図である。そのため、図4は、図1の画像形成装置の転写プロセスに関係する構成を簡易的な等価回路に置き換えた図である。図4では、直流的な電流経路を説明するために、各画像形成ステーションa~dの一次転写部のインピーダンスを合計した合計インピーダンスをZ1、二次転写部のインピーダンスをZ2としている。また、図4に示すように、二次転写電源21は、二次転写ローラ20に印加する高電圧を生成する高電圧電源回路21gと、前述した合算電流itotalを検出する電流検出回路21hと、を有している。図4において、二次転写電流i2は、二次転写電源21から二次転写ローラ20に二次転写正電圧Vt2を印加した場合に流れる二次転写電流の電流経路を示している。
【0029】
二次転写電源21から供給される電流は、後述する分離抵抗17の作用によって、二次転写ローラ20に流れる二次転写電流i2と、分離抵抗17に流れる分離電流iRSとに分岐される。そして、二次転写電流i2及び分離電流iRSは、各一次転写部に流れる一次転写電流i1と、定電圧素子15に流れる電流iZとに分岐される。そして、二次転写電源21の電流検出回路21hは、一次転写電流i1及び定電圧素子15に流れる電流iZを合算した合算電流itotalとして検出する。
【0030】
[分離抵抗の作用]
次に、分離抵抗17の作用について、図4を用いて説明する。本実施例の分離抵抗17は、図1に示すように、一端が二次転写電源21と接続され、他端が金属ローラ14と接続されている。二次転写電源21に設けられた電流検出回路21hは、分離抵抗17に流れる電流iRSと、二次転写ローラ20に流れる二次転写電流i2の合算電流itotalを検出する。なお、合算電流itotalは、各一次転写部に流れる一次転写電流i1と、定電圧素子15に流れる電流iZの合算電流でもある。ここで、分離抵抗17に流れる分離電流iRSは、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2と定電圧素子15が発生する電圧VZ、及び分離抵抗17の抵抗値RSを用いて、次の(式1)のように表される。
iRS=(Vt2-VZ)/RS・・・(式1)
一方、二次転写電流i2は、電流検出回路21hで検出される合算電流itotalと分離電流iRSを用いて、次の(式2)のように表される。
i2=itotal-iRS・・・(式2)
更に、二次転写電流i2は、(式1)、(式2)より、次の(式3)のように表される。
i2=itotal-((Vt2-VZ)/RS)・・・(式3)
このように、二次転写ローラ20に供給される二次転写電流i2は、式(3)によって求めることができる。
【0031】
[電流検出回路]
次に、二次転写電源21に設けられた電流検出回路21hについて説明する。本実施例では、転写制御部201(図2)は、二次転写ローラ20に対してATVC(Auto Transfer Voltage Control)を実行する。ここで、ATVCとは、高電圧電源回路21gから所定の電圧を二次転写ローラ20に印加して、二次転写ローラ20に流れる電流を電流検出回路21hにて検出し、検出結果に基づいて、画像形成時に二次転写ローラ20に印加する電圧を制御する機能である。なお、電流検出回路21hの構成は、本発明の構成とは関係しないため、詳細な説明は割愛する。転写制御部201は、ATVCにより、二次転写ローラ20に二次転写正電圧Vt2を印加したときに二次転写ローラ20に流れる電流値を、電流検出回路21hにより検出される合算電流itotalに基づいて求めることができる。
【0032】
[二次転写電源の電圧制御]
次に、二次転写電源21の電圧制御について説明する。転写制御部201は、ATVCを実行し、二次転写ローラ20に流れる二次転写電流i2が所望の電流値と一致する二次転写正電圧Vt2を、二次転写ローラ20に印加する。上述した分離抵抗17の作用によって、各画像形成ステーションa~dの各一次転写部に流れる一次転写電流i1は、二次転写電流i2と分離電流iRSから供給される。そのため、分離電流iRSは、次の(式4)を満足する必要がある。
iRS=i1+iZ-i2・・・(式4)
【0033】
例えば、定電圧素子15の電圧値VZが200V、一次転写電流i1の所望の電流値が20μA(マイクロアンペア)、二次転写電流i2の所望の電流値が15μAとする。そして、定電圧素子15に流したい電流iZの電流値を5μA以上とした場合には、分離電流iRSの電流値は、(式4)からiRS≧10μA(=20μA+5μA-15μA)を満たす電流値となる。すなわち、分離抵抗17の抵抗値RSは、上述した(式1)から算出される次の(式5)を満たす必要がある。
RS(=(Vt2-VZ)/iRS)≦(Vt2-200)/10×10-6
・・・(式5)
ここで、二次転写電源21が出力可能な二次転写正電圧Vt2の電圧範囲を、1000V~4000Vとすると、分離抵抗17の抵抗値RSは、二次転写正電圧Vt2の下限値である1000V時に上述する(式5)を満足するためには、80MΩ以下となる。
【0034】
以上説明したように、分離抵抗17の抵抗値RSを適正な値にすることで、定電圧素子15は、一次転写部における一次転写電位を形成することが可能となる。このように、転写制御部201は、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2から、上述した(式3)により求められる二次転写電流i2を所望の電流値に制御する。また、分離抵抗17には、定電圧素子15が一定の電圧を発生するのに必要な電流が供給される。
【0035】
[画像形成動作時の一次転写部、二次転写部における電流、電圧の変化]
次に、本実施例における画像形成動作について、画像形成動作開始から一次転写を経て、二次転写が完了するまでの二次転写電圧と一次転写部の電位、及び各部に流れる電流の関係を、図5のタイミングチャートを用いて説明する。図5(a)は各画像形成ステーションa~dの一次転写部の電位を示し、図5(b)は一次転写部に流れる一次転写電流を示し、図5(c)は定電圧素子15に流れる電流を示している。また、図5(d)は二次転写部に流れる電流を示し、図5(e)は二次転写電源21から二次転写ローラ20に印加される電圧を示している。なお、図5(a)~(d)の横軸は時間を示し、図中のt1~t5は、時間(タイミング)を示す。
【0036】
画像形成装置では、コントローラ100がホストコンピュータ(不図示)から印刷指令を受信することによって、画像形成動作が開始される。各画像形成ステーションa~dの一次転写部において一次転写が開始される前に、タイミングt1で、転写制御部201は、CPU150からの指示により、二次転写電源21から一次転写に必要な正電圧Vpreの出力を開始する(図5(e))。二次転写ローラ20及び分離抵抗17に電圧Vpreが印加されると、二次転写ローラ20には二次転写電流i2が流れ(図5(d))、分離抵抗17には分離電流iRSが流れる。そして、定電圧素子15には、二次転写電流i2と分離電流iRSとにより、一次転写部における一次転写に必要な所定の電圧VZを発生するのに必要な電流iZが流れる(図5(c))。これにより、一次転写部には、所定の電位VZが形成され、維持される(図5(a)、(b))。本実施例では、二次転写電源21から出力される電圧Vpreの電圧値を1000Vとしている。続いて、タイミングt2で、CPU150からの指示により、第1の画像形成ステーションaから順次、一次転写が開始され、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1a~1dから中間転写ベルト10上に、トナー像が順次、重畳転写される。
【0037】
タイミングt3では、中間転写ベルト10上に転写されたトナー像が二次転写部に到達し、二次転写部において二次転写が行われる。転写制御部201は、CPU150からの指示により、二次転写電源21から二次転写ローラ20に、二次転写に必要な二次転写正電圧Vt2(>電圧Vpre)を出力する(図5(e))。転写制御部201は、タイミングt3で二次転写電源21から出力される電圧を電圧Vpreから電圧Vt2に変更する。これにより、二次転写部において、中間転写ベルト10上のトナー像が記録材Pに転写される。本実施例では、二次転写時に二次転写電源21から出力される二次転写正電圧Vt2は、2500Vとしている。タイミングt3で、二次転写電流i2が増減したとしても、上述した分離抵抗17の作用により、定電圧素子15によって、一次転写部の電位は一定の電圧VZに維持される(図5(a)、(d))。
【0038】
その後、タイミングt4において一次転写が終了し、タイミングt5で二次転写が終了し、画像形成動作が終了する。タイミングt5では、転写制御部201は、CPU150からの指示により、二次転写電源21から二次転写ローラ20への電圧の印加を停止するため、二次転写正電圧Vt2の出力を停止する(図5(e))。これにより、二次転写電流i2、定電圧素子15に流れる電流iZが流れなくなり(図5(c)、(d))、一次転写部における電位も0Vとなる(図5(a))。
【0039】
このように、転写制御部201は、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1a~1d上に形成されたトナー像を中間転写ベルト10に転写する前に、電圧Vpreを二次転写ローラ20に印加するよう二次転写電源21を制御する。更に、転写制御部201は、中間転写ベルト10に転写されたトナー像を記録材Pに転写する際には、電圧Vpreよりも高い電圧Vt2を二次転写ローラ20に印加するよう、二次転写電源21を制御する。
【0040】
図5で示すように、転写制御部201は、画像形成動作に合わせて、転写制御部201の制御により二次転写電源21から出力される電圧を電圧Vpreから電圧Vt2へと変化させる。その場合でも、定電圧素子15に流れる電流iZは、一次転写部の電位を一次転写に必要な電位に維持する所定値以上の電流値となる(図5(c))。このように、分離抵抗17を接続したことにより、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2によらず、定電圧素子15に流れる電流iZは、所定値以上の電流を流すことが可能になる。その結果、定電圧素子15が発生する電圧VZによって、各感光ドラム1上に形成されたトナー像が中間転写ベルト10に転写される。
【0041】
[本実施例と従来例との比較]
次に、上述した従来例の図3、本実施例の図1における画像形成時の一次転写部の電位及び電流値を比較した結果について説明する。図3に示す従来例の構成では、定電圧素子15に電流を供給する経路は、二次転写部からの電流経路のみとなっている。そのため、一次転写部に必要な一次転写電位を形成するための電流値が、二次転写電源21から二次転写部を介して供給される電流値より大きい場合には、定電圧素子15が一次転写部で必要な所定の電圧を発生するのに必要な電流を流せなくなる。そして、一次転写部で適正な一次転写電位が確保できない(形成されない)場合には、各画像形成ステーションa~dの感光ドラム1上からトナー像を中間転写ベルト10上に適切に転写することができなくなる。その結果、記録材Pに定着された画像に濃度不良等の転写不良が生じてしまうことになる。
【0042】
表1は、図3に示す従来例と図1に示す実施例1における画像形成時の一次転写部の電位及び一次転写部に流れる電流の関係を示した表である。
【0043】
【表1】
表1は、二次転写部に流れる電流値が10μA、15μA、25μAのときの、従来例
図3)、実施例1(図1)における定電圧素子15に流れる電流(単位:μA)、一次
転写部の電位(単位:V)、一次転写部に流れる電流値(単位:μA)を示している。なお、表1では、従来例(図3)の構成で、一次転写部に必要な電流値を20μA、一次転写部における一次転写電位を形成する定電圧素子15の所定の電位を200Vとする。また、定電圧素子15が所定の電位(200V)を発生するために、定電圧素子15に供給が必要な電流値を5μAとする。
【0044】
表1において、二次転写部に流れる電流が10~25μAの幅で変動したとすると、従来例では、二次転写部に流れる電流が10μAの場合は、一次転写部に流れる電流値は10μA以下となり、定電圧素子15に流れる電流値は、略0μAとなってしまう。そのため、定電圧素子15は、一次転写部における一次転写電位を形成するのに必要な電流値5μAが供給されないため、一次転写部における一次転写電位を形成するために必要な所定の電位200Vを維持できない。また、二次転写部に流れる電流が15μAの場合にも、10μAの場合と同様に、一次転写部に流れる電流値は15μA以下となり、定電圧素子15に流れる電流値は、略0μAとなってしまう。その結果、定電圧素子15は、一次転写部における一次転写電位を形成するために必要な所定の電位200Vを維持できない。
【0045】
一方、二次転写部に流れる電流が25μAの場合には、一次転写部に流れる電流値は20μA(=25μA-5μA)となり、定電圧素子15に流れる電流値は5μAとなる。これにより、定電圧素子15は、一次転写部における一次転写電位を形成するのに必要な電流値5μAの電流が供給されるため、一次転写部における一次転写電位を形成するために必要な所定の電位200Vを維持することができる。上述したように、二次転写部に流れる電流が10μA、15μAの場合には、定電圧素子15は、一次転写部において必要な一次転写電位が形成できず、一次転写部における転写効率が低下し、上述した転写不良が発生する。このように、図3に示す従来例の、定電圧素子に電流を供給するための経路が二次転写部からの電流経路のみの構成では、二次転写部に供給される二次転写部電流によらずに、一次転写性を確保することが困難である。
【0046】
一方、図1に示す実施例1の構成では、分離抵抗17が二次転写電源21と定電圧素子15との間に接続されている。そのため、定電圧素子15は、二次転写部に流れる二次転写部電流の電流値に依存することなく、一次転写部における一次転写電位を形成するのに必要な電流値5μA以上の電流が供給される。その結果、定電圧素子15の電位は、一次転写部における一次転写電位を形成するために必要な所定の電位200Vを維持でき、一次転写部に流れる電流値は20μAとなる。このように、本実施例の構成では、表1に示すように、二次転写部電流が変動したとしても、定電圧素子15に有される流れる電流は、所定以上の電流値、例えば5μA以上が維持される。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、二次転写部材に供給される電流によらず、一次転写部において必要な一次転写電位を形成することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例1では、転写制御部201は、二次転写部に流れる二次転写電流値を、設計値を用いて求めていた。すなわち、電流検出回路21hで検出される合算電流itotalと、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2と、定電圧素子15が発生する電圧VZ(設計値)と、分離抵抗17の抵抗値RS(設計値)を用いて、二次転写電流i2を求めていた。実施例2では、予め不揮発性メモリ(例えばEEPROM)に、製造工程において測定した定電圧素子15が発生する電圧VZ、及び分離抵抗17の抵抗値RSのデータを格納しておく。そして、二次転写電流i2を算出する際に、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)から電圧VZ、抵抗値RSを取得し、より正確な二次転写電流i2を算出することを特徴としている。なお、画像形成装置の構成は、実施例1の図1と同様であり、同じ構成には同じ符号を用いることで、ここでの説明を省略する。
【0049】
[コントローラの概要]
図6は、実施例2での画像形成装置の制御部であるコントローラ100の構成を説明するブロック図である。図6では、実施例1の図2と比べて、コントローラ100に記憶手段であるEEPROM153が追加されている点が異なるが、その他の構成については、図2と同様であり、同じ構成には同じ符号を用いることで、ここでの説明を省略する。
【0050】
上述したように、二次転写電源21の製造工程において定電圧素子15が発生する電圧VZ、及び分離抵抗17の抵抗値RSのデータが取得される。画像形成装置の組立工程において、取得した電圧VZ及び抵抗値RSのデータが、EEPROM153に書き込まれる。
【0051】
[効果]
次に、実施例2の効果について述べる。表2は、電圧VZ及び分離抵抗17の抵抗値RSが、個体差によって称呼値より-5%低い値であった場合の、実施例1と実施例2における各部の電圧値、電流値の比較結果を示している。
【0052】
【表2】
表2は、実施例1と実施例2における次の電圧値、電流値を比較した表である。すなわち、表2では、二次転写電源21が出力する二次転写正電圧(二次転写電位)Vt2、定電圧素子15が発生する電圧(一次転写部電位)VZ、分離抵抗17の抵抗値RS、電流検出回路21hで検出される合算電流itotalの電流値を示している。更に、表2では、転写制御部201が前述した(式3)により算出する二次転写電流i2を示している。なお、表2中の括弧内は、各々の電位、抵抗値、電流値の単位を示している。
【0053】
実施例1では、電圧VZ及び分離抵抗17の抵抗値RSは、称呼値(設計値)の値を用いて、二次転写電流i2を求めている。例えば、ATVCを実行した際の、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2が2500V、定電圧素子15の所定の電位を200V、電流検出回路21hで検出される合算電流itotalが43.75μAとする。これに基づいて、転写制御部201は、(式3)を用いて、二次転写電流i2は15μAと算出する。
【0054】
ところが、電圧VZ(200V)及び分離抵抗17の抵抗値RS(80MΩ)が、個体差によって称呼値(設計値)より-5%低い値となっている。そのため、実際の電圧VZは190V(=(200V×(100%-5%)))となり、分離抵抗17の抵抗値RSは76MΩ(=(80MΩ×(100%-5%)))となっている。その結果、実際に流れている二次転写電流i2は13.4μAとなり、10%(≒(100%-(13.4μA/15μA)×100%))程度の誤差が生じている。このため、記録材Pに転写されるトナー像に、二次転写電流の不足による濃度不良等の転写不良を招いてしまうおそれがある。
【0055】
一方、本実施例では、転写制御部201は、EEPROM153に格納された実際の電圧VZや抵抗値Rのデータを用いて二次転写電流i2を求めているため、称呼値(設計値)に基づいて求めた電流値を実測値に応じて補正することができる。これにより、転写制御部201は、二次転写電流i2が所望の15μAになるように、二次転写電源21の二次転写正電圧Vt2を制御する。このように、本実施例では、定電圧素子15が発生する電圧VZ及び分離抵抗17の抵抗値RSのバラツキにより生じる二次転写電流i2の誤差を低減することが可能になる。
【0056】
以上説明したように、本実施例によれば、二次転写部材に供給される電流によらず、一次転写部において必要な一次転写電位を形成することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 感光ドラム
10 中間転写ベルト
13 対向ローラ
14 接触部材
15 定電圧素子
17 分離抵抗
20 二次転写ローラ
21 二次転写電源
21h 電流検出回路
150 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6